特許第5958743号(P5958743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958743
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】吊り天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   E04B5/58 S
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-86437(P2012-86437)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-217044(P2013-217044A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】半澤 徹也
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−050784(JP,A)
【文献】 特開2008−255735(JP,A)
【文献】 特開2007−239441(JP,A)
【文献】 特開2009−167737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具とを備える吊り天井構造において、
前記複数の野縁受けに載置した形で前記他方向に沿って延設されるとともに前記複数の野縁受けに接続して配設される水平材と、
前記水平材に一端を、前記上部構造に他端をそれぞれ直接的あるいは間接的に接続して配設された補強ブレースとを備えるとともに、
前記水平材と前記天井材とを接続する耐震補強用部材を備えて構成されていることを特徴とする吊り天井構造。
【請求項2】
水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具とを備える吊り天井構造において、
前記複数の野縁受けに載置した形で前記他方向に沿って延設されるとともに前記複数の野縁受けに接続して配設される水平材と、
前記水平材に一端を、前記上部構造に他端をそれぞれ直接的あるいは間接的に接続して配設された補強ブレースとを備えるとともに、
前記水平材と、前記天井材又は前記野縁とを接続する耐震補強用部材を備えて構成され
前記耐震補強用部材が、上下方向の力に対して弾塑性変形する反力吸収部を備えて形成されていることを特徴とする吊り天井構造。
【請求項3】
水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具とを備える吊り天井構造において、
前記野縁受けに一端を、前記上部構造に他端をそれぞれ直接的あるいは間接的に接続して配設された補強ブレースを備えるとともに、
前記野縁受けと前記天井材を接続する耐震補強用部材を備えて構成され、
前記耐震補強用部材が、上下方向の力に対して弾塑性変形する反力吸収部を備えて形成されていることを特徴とする吊り天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り天井の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばオフィスビル等の建物の天井部の構造として、吊り天井が多用されている。そして、吊り天井(吊り天井構造)Aは、例えば図7及び図8に示すように、水平の一方向T1に所定の間隔をあけて並設される複数の野縁1と、野縁1に直交し、水平の他方向T2に所定の間隔をあけて並設され、複数の野縁1に一体に接続して設けられる複数の野縁受け2と、下端を野縁受け2に接続し、上端を上階の床材(上部構造)等に固着して配設される複数の吊りボルト(吊り部材)3と、野縁1の下面にビス留めなどによって一体に取り付けられ、下階の天井面を形成する天井パネル(天井材)4とを備えて構成されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
また、図9に示すように、野縁1と野縁受け2は、断面コ字状の溝形鋼であり、野縁1においては、開口部6を形成する両側壁部1a、1bの先端を幅方向(T1)内側にそれぞれ突出させてなる一対の係合受部7を備えて形成されている。また、このように形成された野縁1と野縁受け2は、図8及び図9に示すように、クリップ(野縁接続用金具)10を用い、互いに交差する交差部11で接続される。クリップ10は、例えば、図9に示すように、下端側に幅方向両外側に突出する係合片10aを備え、上端側に上方に突出する折り曲げ係止片10bを備えて形成されている。そして、野縁1の内部に開口部6から下端側の係合片10aを挿入するとともに野縁1の係合受部7に係合させ、開口部9を横方向(T2)に向けて野縁1上に配設された野縁受け2の上端側を巻き込むように折り曲げ係止片10bを折り曲げて係止させる。これにより、クリップ10を介して野縁1と野縁受け2を接続することができる。
【0004】
さらに、図7図8及び図10に示すように、吊りボルト3と野縁受け2は、ハンガ(吊り部材接続用金具)12を用いて接続される。ハンガ12は、例えば、図10に示すように、上端側に横方向(T2)に延びて設けられるとともに、吊り部材挿通孔13が貫設された吊り部材接続部12aと、吊り部材接続部12aの一端から下方に折れ曲がって延設された垂下部12bと、垂下部12bの下端から横方向(T2)に折れ曲がって延設された底部12cと、底部12cから上方に折れ曲がって延設されたクランプ保持部12dとを備えて、略J字状に形成されている。そして、このハンガ12を用いて吊りボルト3と野縁受け2を接続する際には、吊り部材接続部12aの吊り部材挿通孔13に吊りボルト3を挿通してナット8を締結することにより、吊り部材接続部12aに吊りボルト3を接続する。また、ハンガ12の垂下部12bとクランプ保持部12dの間に野縁受け2を挿入して底部12cで受けるとともに、クランプ保持部12dと垂下部12bで挟み込んで保持させることにより、ハンガ12に野縁受け2が接続される。これにより、ハンガ12を介して吊りボルト3と野縁受け2を接続することができる。
【0005】
ここで、このように野縁1及び野縁受け2の天井下地と天井パネル4を吊りボルト3で吊り下げ支持してなる吊り天井Aは、その構造上、地震時に作用する水平力(慣性力)によって横揺れしやすい。このため、地震時の横揺れによって、天井パネル4の端部が壁や柱、梁などに衝突し、天井パネル4に破損が生じたり、脱落が生じるおそれがあった。
【0006】
このため、一般に、この種の吊り天井Aは、図8図11に示すように、地震時に吊り天井Aの揺れを抑えるための補強ブレース14を設置して構成するようにしている。また、補強ブレース14は、複数の野縁受け2に接続して架設した水平材15(図8参照)、あるいは野縁受け2(図11参照)に下端(一端)14aを固着し、吊りボルト3の上端側あるいは床材に上端(他端)14bを固着して、野縁1や野縁受け2に沿って例えばV字状に配設される。
【0007】
そして、図8に示すように、水平材15に接続して補強ブレース14を設置してなる吊り天井Aにおいては、地震時に吊り天井Aに作用する水平力(慣性力)が、野縁1からクリップ10を通じて野縁受け2に、野縁受け2からハンガ12あるいはハンガ12と水平材15を接続する受け金具16から水平材15に、水平材15から補強ブレース14を通じて上部構造に伝達される。このように、水平材15に接続して設けた補強ブレース14によって吊り天井Aに作用する水平力を上部構造に伝達させることで、吊り天井Aの揺れを抑えることができる。
【0008】
一方、図11に示すように、野縁受け2に接続して補強ブレース14を設置してなる吊り天井Aにおいては、地震時に吊り天井Aに作用する水平力が、野縁1からクリップ10を通じて野縁受け2に、野縁受け2から補強ブレース14を通じて上部構造に伝達される。このように、野縁受け2に接続して設けた補強ブレース14によって吊り天井Aに作用する水平力を上部構造に伝達させることで、吊り天井Aの揺れを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−100358号公報
【特許文献2】特開2006−22483号公報
【特許文献3】特開2007−239441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、水平材15に接続して補強ブレース14を設置してなる従来の吊り天井Aにおいては、補強ブレース14から水平材15が反力を受けることに伴い、図12(a)に示すように、不可避な偏心が生じて水平材15が凹凸変形したり、図12(b)に示すように、野縁1と野縁受け2の交差部11を基点として回転・転倒の変形が生じたり、図12(c)に示すように、野縁受け2に変形が生じるなどして、補強ブレース14の効果が低減したり、補強ブレース14がある程度効果を発揮しても吊り天井Aの変形ひいては横揺れが大きくなってしまうという問題があった。
【0011】
また、野縁受け2に接続して補強ブレース14を設置してなる従来の吊り天井Aにおいても、図13(a)に示すように、クリップ10に回転・転倒の変形が生じたり、図13(b)に示すように、野縁1がクリップ10に押されて変形するなどして、やはり、補強ブレース14の効果が低減したり、補強ブレース14がある程度効果を発揮しても吊り天井Aの変形ひいては横揺れが大きくなってしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、地震時に、確実に補強ブレースの効果を発揮させて耐震性能を向上させることを可能にした吊り天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0014】
本発明の吊り天井構造は、水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具とを備える吊り天井構造において、前記複数の野縁受けに載置した形で前記他方向に沿って延設されるとともに前記複数の野縁受けに接続して配設される水平材と、前記水平材に一端を、前記上部構造に他端をそれぞれ直接的あるいは間接的に接続して配設された補強ブレースとを備えるとともに、前記水平材と前記天井材とを接続する耐震補強用部材を備えて構成されていることを特徴とする。
また、本発明の吊り天井構造は、水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具とを備える吊り天井構造において、前記複数の野縁受けに載置した形で前記他方向に沿って延設されるとともに前記複数の野縁受けに接続して配設される水平材と、前記水平材に一端を、前記上部構造に他端をそれぞれ直接的あるいは間接的に接続して配設された補強ブレースとを備えるとともに、前記水平材と、前記天井材又は前記野縁とを接続する耐震補強用部材を備えて構成され、前記耐震補強用部材が、上下方向の力に対して弾塑性変形する反力吸収部を備えて形成されていることを特徴とする。
また、本発明の吊り天井構造は、水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具とを備える吊り天井構造において、前記野縁受けに一端を、前記上部構造に他端をそれぞれ直接的あるいは間接的に接続して配設された補強ブレースを備えるとともに、前記野縁受けと前記天井材を接続する耐震補強用部材を備えて構成され、前記耐震補強用部材が、上下方向の力に対して弾塑性変形する反力吸収部を備えて形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、水平材と天井材を接続する耐震補強用部材を備えて構成されていることにより、地震時に、補強ブレースの反力を水平材から耐震補強用部材を介して天井材に伝達させることができ、吊り天井構造の剛性を高めることが可能になる。
【0016】
これにより、水平材が凹凸変形したり、野縁と野縁受けの接点を基点として回転・転倒の変形が生じたり、野縁受けに変形が生じることなどがなく、補強ブレースの効果によって確実に吊り天井構造の変形を小さく抑えることが可能になる。
【0018】
また、本発明においては、野縁受けと天井材を接続する耐震補強用部材を備えて構成されていることにより、地震時に、補強ブレースの反力を野縁受けから耐震補強用部材を介して天井材に伝達させることができ、吊り天井構造の剛性を高めることが可能になる。また、地震時に吊り天井構造に発生する慣性力の大半を直接野縁受けに伝達させることができ、野縁接続用金具(クリップ)や野縁の延設方向の変形を大幅に低減することが可能になる。
【0019】
これにより、野縁接続用金具に回転・転倒の変形が生じたり、野縁が野縁接続用金具に押されて変形することなどがなく、補強ブレースの効果によって確実に吊り天井構造の変形を小さく抑えることが可能になる。
【0021】
さらに、本発明においては、吊り天井構造の剛性を高め、補強ブレースの効果によって吊り天井構造の変形を小さく抑えるための耐震補強用部材に過大な外力が作用するとともに、耐震補強用部材の反力吸収部が弾塑性変形し、この外力を吸収することができる。これにより、耐震補強用部材を通じて、過大な外力(補強ブレースからの反力)が天井材や野縁に伝達されることを防止でき、天井材や野縁など、吊り天井構造に破損が生じることを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の吊り天井構造においては、水平材と天井材、あるいは水平材と野縁、あるいは野縁受けと天井材を接続する耐震補強用部材を備えることで、従来と比較し、吊り天井に大きな揺れが発生することを防止でき、天井材の大きな破損や脱落などが生じることを防止(抑止)でき、耐震性能を向上させることが可能になる。
【0023】
また、既設の吊り天井構造に対し、耐震補強用部材を設置することによって、既設の吊り天井構造の耐震性能を向上させることも可能になり、既設の吊り天井構造を比較的容易に耐震改修することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る吊り天井構造を示す天井裏側からの斜視図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る吊り天井構造を示す天井裏側からの斜視図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る吊り天井構造の耐震補強用部材を示す斜視図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る吊り天井構造を示す斜視図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る吊り天井構造の耐震補強用部材の変更例を示す斜視図である。
図6】本発明の第1及び第3実施形態に係る吊り天井構造の耐震補強用部材の変更例を示す斜視図である。
図7】吊り天井構造を示す室内側からの斜視図である。
図8】従来の吊り天井構造を示す天井裏側からの斜視図である。
図9】クリップ(野縁接続用金具)を示す斜視図である。
図10】ハンガ(吊り部材接続用金具)を示す斜視図である。
図11】従来の吊り天井構造を示す天井裏側からの斜視図である。
図12図8に示した従来の吊り天井構造の地震時の変形状態の例を示す図である。
図13図11に示した従来の吊り天井構造の地震時の変形状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1、及び図7から図10図12を参照し、本発明の第1実施形態に係る吊り天井構造について説明する。ここで、本実施形態は、例えばオフィスビルなどの建物の天井部として用いられる吊り天井の構造に関し、特に優れた耐震性能を備えた吊り天井の構造に関するものである。
【0026】
本実施形態の吊り天井(吊り天井構造)Bは、図1及び図7に示すように、野縁1と天井材4と野縁受け2と吊り部材(吊りボルト)3と補強ブレース14と野縁接続用金具(クリップ)10と吊り部材接続用金具(ハンガ)12と耐震補強用部材20とを備えて構成されている。
【0027】
野縁1は、図1及び図9に示すように、溝形鋼であり、一対の側壁部1a、1bと両側壁部1a、1bに連設された底板部1cとを備えて断面コ字状(断面C字状)に形成されている。また、野縁1は、開口部6を形成する各側壁部1a、1bの先端が幅方向(T1)内側に突出して形成され、この先端の突出部分が係合受部7とされている。そして、野縁1は、水平に延設され、開口部6を上方に向け、且つ水平の一方向T1に所定の間隔をあけて平行に複数配設されている。
【0028】
本実施形態の天井材(天井パネル)4は、2枚のボードを貼り付けて一体に積層形成したものであり、例えば1mあたり20kg程度の重量で形成されている。そして、この天井材4は、複数の野縁1の下面にビス留めなどして設置され、天井面を形成している。なお、天井材4は、1枚のボードで構成されていてもよい。
【0029】
野縁受け2は、溝形鋼であり、上板部2aと、下板部2bと、これら上板部2aと下板部2bに連設された側壁部2cとを備えて断面コ字状(断面C字状)に形成されている。そして、野縁受け2は、水平に延設され、開口部9を横方向(T2)に向け、且つ水平の他方向T2に所定の間隔をあけて平行に複数配設されている。また、このとき、野縁受け2は、野縁1と交差するように配設されるとともに、複数の野縁1上に載置した状態で配置される。また、各野縁受け2は、野縁1と交差する交差部11で、野縁接続用金具10を使用することにより野縁1に接続されている。
【0030】
吊り部材3は、図1及び図10に示すように、円柱棒状に形成されるとともに外周面に雄ネジの螺刻を有する吊りボルトであり、一端を上階の床材等の上部構造に固着、または鋼製の根太等に緊結して垂下され、その下端側を、吊り部材接続用金具12を用いて野縁受け2に接続して複数配設されている。これにより、野縁1と天井材4と野縁受け2が吊り部材3によって吊り下げ支持されている。また、本実施形態では、複数の吊り部材3は、所定の間隔をあけて分散配置されている。
【0031】
本実施形態の補強ブレース14は、図1に示すように、水平材15を介して一端14aを野縁受け2に固着し、他端14bを上部構造に直接的あるいは間接的に固着して設けられている。このとき、水平材15は、野縁受け2に直交する水平の他方向T2に延設され、複数の野縁受け2に載置した形で配置されている。また、水平材15は、受け金具16を用い、野縁付け2との交点部分で吊り部材接続用金具12ひいては野縁受け2に固定して設けられている。そして、本実施形態では、一対の補強ブレース14が、水平材15と野縁受け2の交点部分(水平材15と吊り部材接続用金具12の接続部)を間にして水平材15の延設方向に沿う他方向T2に並設され、且つ前記一方向T1の正面視で、V字状を呈するように並設されている。なお、本実施形態では、一対の補強ブレース14がV字状を呈するように並設されているものとしているが、これに限定する必要はなく、ハの字、ノの字などの配置、これらの組み合わせなどとして補強ブレース14を設けるようにしてもよい。
【0032】
次に、本実施形態の吊り天井Bにおいては、水平材15と天井材4が耐震補強用部材20を用いて接続されている。本実施形態の耐震補強用部材20は、T字状に形成され、逆T字状となるように配して天井材4の裏面(天井裏面)に載置し、下端側を天井材4に、上端側を水平材15にそれぞれ、ビス留めするなどして固設されている。また、本実施形態では、複数の耐震補強用部材20が所定の間隔をあけて設けられ、これら複数の耐震補強用部材20によって水平材15と天井材4が接続されている。
【0033】
なお、本実施形態において、耐震補強用部材20は、例えばL字状などであってもよく、水平材15と天井材4を接続することが可能であれば、特にその形状を限定する必要はない。
【0034】
そして、上記のように耐震補強用部材20を備えてなる本実施形態の吊り天井Bにおいては、地震時に、補強ブレース14の反力が水平材15に伝達し、この水平材15の反力が耐震補強用部材20を介して天井材4に伝達する。このように水平材15に補強ブレース14から作用する反力が耐震補強用部材20を通じて天井材4に伝達されることで、吊り天井Bの剛性が高まり、地震時に、野縁1の延設方向(他方向T2)の変形ひいては横揺れが大幅に低減することになる。
【0035】
したがって、本実施形態の吊り天井Bにおいては、水平材15と天井材4を接続する耐震補強用部材20を備えて構成されていることにより、地震時に、補強ブレース14の反力を水平材15から耐震補強用部材20を介して天井材4に伝達させることができ、吊り天井Bの剛性を高めることが可能になる。
【0036】
これにより、図12(a)〜(c)に示したように水平材15が凹凸変形したり、野縁1と野縁受け2の交差部11を基点として回転・転倒の変形が生じたり、野縁受け2に変形が生じることなどがなく、補強ブレース14の効果によって確実に吊り天井Bの変形、横揺れを小さく抑えることが可能になる。
【0037】
よって、本実施形態の吊り天井Bによれば、水平材15と天井材4を接続する耐震補強用部材20を備えることで、従来と比較し、吊り天井Bに大きな揺れが発生することを防止でき、天井材4の大きな破損や脱落などが生じることを防止(抑止)でき、耐震性能を向上させることが可能になる。
【0038】
また、既設の吊り天井に対し、水平材15と天井材4を接続するように耐震補強用部材20を設置することによって、この既設の吊り天井の耐震性能を向上させることも可能になる。すなわち、既設の吊り天井を比較的容易に耐震改修することが可能になる。
【0039】
次に、図2図3、及び図7から図10図12を参照し、本発明の第2実施形態に係る吊り天井構造について説明する。
【0040】
はじめに、本実施形態の吊り天井(吊り天井構造)Cは、第1実施形態と同様、図2及び図7に示すように、野縁1と天井材4と野縁受け2と吊り部材(吊りボルト)3と補強ブレース14と野縁接続用金具(クリップ)10と吊り部材接続用金具(ハンガ)12と耐震補強用部材21とを備えて構成されている。また、補強ブレース14は、水平材15を介して一端14aを野縁受け2に、他端14bを上部構造にそれぞれ固着して設けられている。
【0041】
一方、本実施形態の吊り天井Cにおいては、図2に示すように、吊り部材接続用金具12が野縁1と野縁受け2の交差部11付近(交差部11上)に配置され、吊り部材3が交差部11付近で野縁受け2に接続されている。また、このとき、水平材15は、第1実施形態と同様に、野縁受け2に直交する水平の他方向T2に延設され、複数の野縁受け2に載置した形で配置されている。そして、受け金具16を用い、交差部11付近で吊り部材接続用金具12ひいては野縁受け2に固設されている。これにより、本実施形態では、水平材15が野縁1の直上あるいは野縁1の直上付近に配設されている。
【0042】
また、本実施形態の吊り天井Cにおいては、耐震補強用部材21を用いて水平材15と野縁1を接続している。そして、本実施形態の耐震補強用部材21は、図3(a)に示すように、水平材15にビス留めするなどして固着する上側平板部22と、野縁1にビス留めするなどして固着する下側平板部23と、上側平板部22と下側平板部23との間に設けられ、上側平板部22や下側平板部23の一方の板面から凹んで他方の板面側の外側に突出する反力吸収部24とを備えて形成されている。また、本実施形態では、反力吸収部24が円弧状に形成されている。
【0043】
図2及び図3(a)に示すように、この耐震補強用部材21は、上側平板部22と下側平板部23をそれぞれ水平材15や野縁1に固着した状態で、反力吸収部24が水平材15と野縁1の上下方向T3の間に配されるように形成されている。なお、この反力吸収部24は、必ずしも円弧状に形成されていなくてもよく、図3(b)に示すように三角状に形成するなどしてもよい。
【0044】
そして、上記のように耐震補強用部材21を備えてなる本実施形態の吊り天井Cにおいては、地震時に、補強ブレース14の反力が水平材15に伝達し、この水平材15の反力が耐震補強用部材21を介して野縁1に伝達する。このように水平材15に補強ブレース14から作用する反力が耐震補強用部材21を通じて野縁1に伝達されることで、吊り天井Cの剛性が高まり、地震時に、野縁1の延設方向(他方向T2)の変形、横揺れが大幅に低減することになる。
【0045】
これにより、第1実施形態と同様に、図12(a)〜(c)に示したように水平材15が凹凸変形したり、野縁1と野縁受け2の交差部11を基点として回転・転倒の変形が生じたり、野縁受け2に変形が生じることがなく、補強ブレース14によって確実に吊り天井Cの変形、横揺れを小さく抑える効果が発揮されることになる。
【0046】
一方、本実施形態のように水平材15と野縁1を耐震補強用部材21で接続した場合には、補強ブレース14から作用する鉛直方向(上下方向T3)の力が耐震補強用部材21によって直接野縁1に作用し、野縁1が変形して天井材4に損傷が生じるおそれがある。
【0047】
これに対し、本実施形態では、耐震補強用部材21が、水平材15と野縁1にそれぞれ固着する上側平板部22と下側平板部23の間に反力吸収部24を備えて形成されている。このため、本実施形態の吊り天井Cにおいては、補強ブレース14から過大な鉛直方向の力(外力)が作用した場合に、耐震補強用部材21の反力吸収部24が弾塑性変形してこの力を吸収する。
【0048】
これにより、野縁1を変形させるような過大な力が耐震補強用部材21を通じて天井材4に作用することがなく、天井材4(吊り天井C)に損傷が生じることが防止される。
【0049】
したがって、本実施形態の吊り天井Cにおいては、水平材15と野縁1を接続する耐震補強用部材21を備えて構成されていることにより、地震時に、補強ブレース14の反力を水平材15から耐震補強用部材21を介して野縁1及び天井材4に伝達させることができ、吊り天井Cの剛性を高めることが可能になる。
【0050】
これにより、図12(a)〜(c)に示したように水平材15が凹凸変形したり、野縁1と野縁受け2の交差部11を基点として回転・転倒の変形が生じたり、野縁受け2に変形が生じることがなく、補強ブレース14の効果によって確実に吊り天井Cの変形、横揺れを小さく抑えることが可能になる。
【0051】
よって、本実施形態の吊り天井Cによれば、水平材15と野縁1を接続する耐震補強用部材21を備えることで、従来と比較し、吊り天井Cに大きな揺れが発生することを防止でき、天井材4の大きな破損や脱落などが生じることを防止(抑止)でき、耐震性能を向上させることが可能になる。
【0052】
また、既設の吊り天井に対し、水平材15と野縁1を接続するように耐震補強用部材21を設置することによって、既設の吊り天井の耐震性能を向上させることも可能になり、既設の吊り天井を比較的容易に耐震改修することが可能になる。
【0053】
さらに、本実施形態の吊り天井Cにおいては、耐震補強用部材21が反力吸収部24を備えて形成されているため、水平材15と野縁1に固着して耐震補強用部材21を設置するように構成した場合であっても、補強ブレース14から過大な鉛直方向の力(外力)が作用するとともに反力吸収部24が弾塑性変形してこの力を吸収することができる。これにより、野縁1を変形させるような過大な力が耐震補強用部材21を通じて天井材4に作用することがなく、天井材4や野縁1など、吊り天井Cに損傷が生じることを確実に防止できる。
【0054】
次に、図4、及び図7図9図10図11図13を参照し、本発明の第3実施形態に係る吊り天井構造について説明する。
【0055】
本実施形態の吊り天井(吊り天井構造)Dは、第1、第2実施形態と同様、図4及び図7に示すように、野縁1と天井材4と野縁受け2と吊り部材(吊りボルト)3と補強ブレース14と野縁接続用金具(クリップ)10と吊り部材接続用金具(ハンガ)12と耐震補強用部材25とを備えて構成されている。
【0056】
一方で、第1、第2実施形態のように水平材15を備えず、補強ブレース14は、一端14aを直接的に野縁受け2に固着し、他端を上部構造に直接的あるいは間接的に固着して設けられている。また、本実施形態では、一対の補強ブレース14が、平面視で、野縁1と野縁受け2の交差部11を間にして野縁受け2の延設方向に沿う一方向T1に並設され、且つ前記他方向T2の正面視で、V字状を呈するように並設されている。勿論、前述と同様、ハの字、ノの字などの配置、これらの組み合わせなどとして補強ブレース14を設けるようにしてもよい。
【0057】
一方、本実施形態の吊り天井Cにおいては、図4に示すように、耐震補強用部材25を用いて、野縁受け2と天井材4を接続している。本実施形態の耐震補強用部材25は、野縁受け2の側面に面接触して配設され、ビス留めするなどして野縁受け2に固着される平板部26と、平板部26の下端側に一体にして例えば断面方形状に形成されるとともに、野縁受け2と天井材4の上下方向T3の間に係合して配設され、ビス留めするなどして天井材4に固着される係合部27とを備えて形成されている。
【0058】
なお、本実施形態において、耐震補強用部材25は、平板部26と係合部27を備えて形成されているものとしたが、例えば、図5に示すように野縁受け2と天井材4の上下方向T3の間に係合するように断面方形状に形成され、野縁受け2と天井材4の上下方向T3の間に係合させるとともに野縁受け2と天井材4にそれぞれビス留めするなどして固着するように構成してもよい。すなわち、本実施形態における耐震補強用部材25は、野縁受け2と天井材4を接続することが可能であれば、特にその形状を限定する必要はない。
【0059】
そして、上記のように耐震補強用部材25を備えてなる本実施形態の吊り天井Dにおいては、地震時に、補強ブレース14の反力が野縁受け2に伝達し、この野縁受け2の反力が耐震補強用部材25を介して天井材4に伝達する。このように野縁受け2に補強ブレース14から作用する反力が耐震補強用部材25を通じて天井材4に伝達されることで、吊り天井Dの剛性が高まり、また、地震時に吊り天井Dに発生する慣性力の大半が直接野縁受け2に伝達され、野縁接続用金具10、野縁1の延設方向(一方向T1)の変形、横揺れが大幅に低減することになる。
【0060】
したがって、本実施形態の吊り天井Dにおいては、野縁受け2と天井材4を接続する耐震補強用部材25を備えて構成されていることにより、地震時に、補強ブレース14の反力を野縁受け2から耐震補強用部材25を介して天井材4に伝達させることができ、吊り天井Dの剛性を高めることが可能になる。また、地震時に吊り天井Dに発生する慣性力の大半を直接野縁受け2に伝達させることができ、野縁接続用金具10、野縁1の延設方向の変形、横揺れを大幅に低減することが可能になる。
【0061】
これにより、図13(a)、(b)に示したように野縁接続用金具(クリップ)10に回転・転倒の変形が生じたり、野縁1が野縁接続用金具10に押されて変形することなどがなく、補強ブレース14の効果によって確実に吊り天井Dの変形、横揺れを小さく抑えることが可能になる。
【0062】
よって、本実施形態の吊り天井Dによれば、野縁受け2と天井材4を接続する耐震補強用部材25を備えることで、従来と比較し、吊り天井Dに大きな揺れが発生することを防止でき、天井材4の大きな破損や脱落などが生じることを防止(抑止)でき、耐震性能を向上させることが可能になる。
【0063】
また、既設の吊り天井に対し、野縁受け2と天井材4を接続するように耐震補強用部材25を設置することによって、既設の吊り天井の耐震性能を向上させることも可能になる。
【0064】
以上、本発明に係る吊り天井構造の第1、第2、第3実施形態について説明したが、本発明は上記の第1、第2、第3実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
例えば、第2実施形態の耐震補強用部材21が反力吸収部24を備えているのに対し、第1及び第3実施形態の耐震補強用部材20、25は反力吸収部24を備えていないものとして説明を行ったが、勿論、第1及び第3実施形態の耐震補強用部材20、25を、例えば図6に示すように反力吸収部24を備えて形成し、過大な力(外力)が作用した際に反力吸収部24が弾塑性変形して力を吸収できるようにしてもよい。そして、この場合においても、反力吸収部24を備えることで、第2実施形態と同様、耐震補強用部材20、25を通じて過大な外力(補強ブレース14からの反力)が天井材4や野縁1に伝達されることを防止でき、天井材4や野縁1など、吊り天井構造B、Dに破損が生じることを防止できる。
【符号の説明】
【0066】
1 野縁
1a 側壁部
1b 側壁部
1c 底板部
2 野縁受け
2a 上板部
2b 下板部
2c 側壁部
3 吊り部材(吊りボルト)
4 天井材(天井パネル)
6 野縁の開口部
7 係合受部
8 ナット
10 野縁接続用金具(クリップ)
10a 係合片
10b 折り曲げ係止片
11 交差部
12 吊り部材接続用金具(ハンガ)
12a 吊り部材接続部
12b 垂下部
12c 底部
12d クランプ保持部
13 吊り部材挿通孔
14 補強ブレース
14a 一端(下端)
14b 他端(上端)
15 水平材
16 受け金具
20 耐震補強用部材
21 耐震補強用部材
22 上側平板部
23 下側平板部
24 反力吸収部
25 耐震補強用部材
26 平板部
27 係合部
A 従来の吊り天井構造(吊り天井)
B 吊り天井構造(吊り天井)
C 吊り天井構造(吊り天井)
D 吊り天井構造(吊り天井)
T1 一方向(横方向)
T2 他方向(横方向)
T3 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13