(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958746
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20160101AFI20160719BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20160719BHJP
H01M 8/0202 20160101ALI20160719BHJP
H01M 8/24 20160101ALI20160719BHJP
H01M 8/247 20160101ALI20160719BHJP
【FI】
H01M8/02 C
H01M8/02 E
H01M8/02 R
H01M8/10
H01M8/02 B
H01M8/24 R
H01M8/24 E
H01M8/24 T
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-117777(P2012-117777)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-246895(P2013-246895A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】福山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】入月 桂太
【審査官】
太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−504140(JP,A)
【文献】
特開2012−059380(JP,A)
【文献】
特開2006−156048(JP,A)
【文献】
特表2005−505890(JP,A)
【文献】
特開2009−266533(JP,A)
【文献】
特開2010−140656(JP,A)
【文献】
特開2001−068132(JP,A)
【文献】
特開2007−265896(JP,A)
【文献】
特開平02−160371(JP,A)
【文献】
特開2006−318863(JP,A)
【文献】
特開平01−093061(JP,A)
【文献】
特開平05−335024(JP,A)
【文献】
特開平09−082344(JP,A)
【文献】
特開2002−298902(JP,A)
【文献】
特開2012−059383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/02
H01M 8/08 − 8/24
H01M 8/0202
H01M 8/247
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体を一対のセパレータで挟持して成る単セルを複数枚積層して構成される燃料電池スタックであって、
隣接する単セル同士の間に、冷却液の流通空間を形成すると共に、この流通空間に配置して単セル間の変位を吸収する板状の変位吸収部材を備え、
セパレータが、断面凹凸形状を冷却液の流通方向に連続的に有しており、
板状の変位吸収部材が、厚さ方向の変形に伴ってセパレータとの接触部分が面内方向に移動する部材であって、接触部分の移動方向がセパレータの凹凸形状の連続方向となるように配置してあると共に、セパレータの凸部に接触していることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
セパレータの凸部は、上面が平面であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記変位吸収部材が、相対向するセパレータのうちの一方に接触する基板の片面に、他方に接触する多数のばね機能部を配列した構造を有すると共に、ばね機能部が、基端を基板への固定端とし且つ先端を自由端とした片持ち梁構造であって、
ばね機能部の自由端の幅が、同ばね機能部が接触するセパレータの凸部の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記ばね機能部の自由端の幅が、同ばね機能部が接触するセパレータの凹部の幅よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記ばね機能部の自由端が、同ばね機能部が接触するセパレータの複数の凸部に接触していることを特徴とする請求項3又は4に記載の燃料電池スタック。
【請求項6】
前記変位吸収部材の基板が、各ばね機能部の下側に開口部を有しており、基板が接触するセパレータの凹部と前記開口部とが連通していることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項7】
前記変位吸収部材が、基板に、セパレータの凹凸形状の連続方向とこれに交差する幅方向に各ばね機能部を配列すると共に、幅方向に隣接するばね機能部同士が、凹凸形状の連続方向にオフセットしてあることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項8】
前記変位吸収部材の各ばね機能部のうちの少なくとも一つが、自由端を冷却液の流通方向下流側に向けた状態で配置してあることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項9】
流通空間における冷却液の流通方向と、膜電極接合体とセパレータの間に形成したガス流路におけるガスの流通方向とが、同一方向であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項10】
前記ガスが、アノードガスであることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池スタック。
【請求項11】
セパレータが、表裏反転形状を有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型燃料電池(PEFC)などの燃料電池に関し、とくに、積層した単セル同士の間に冷却液を流通させる構造を有する燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、上記したような燃料電池スタックとしては、例えば特許文献1に燃料電池として記載されているものがある。特許文献1に記載の燃料電池は、複数枚の燃料電池セルを積層したものである。燃料電池セルは、MEA(膜電極接合体)の両側に、断面凹凸形状を有する水素極と、同じく断面凹凸形状の排水層を含む酸素極とを備えると共に、水素極及び酸素極との間に水素流路及び酸素流路を夫々形成する平板セパレータを備えている。また、燃料電池は、酸素極側に冷媒流路部を備えている。
【0003】
冷媒流路部は、2枚の平板セパレータと、その間に挟まれた予圧プレートを備え、両平板セパレータの間を冷却水の流路としている。予圧プレートは、断面波形状を成しており、燃料電池の各構成部品の形状誤差により局所的に生じた荷重を分散することによって、各構成部品に均等な荷重を印加するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4432518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の燃料電池スタックは、自動車等の車両の電源として用いる場合、搭載スペースが狭く限られているので小型化も非常に重要である。ところが、上記したような従来の燃料電池スタック(燃料電池)では、単セル(燃料電池セル)が、断面凹凸形状を有する電極と、平板セパレータと、与圧プレートの組み合わせであることから、変位吸収機能を維持しつつ単セルを薄型にすることが難しく、燃料電池スタックの小型化を困難にしていた。
【0006】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、積層した単セル同士の間に冷却液を流通させる構造を有する燃料電池スタックであって、単セル間の変位吸収機能を良好に維持しつつ小型化を実現することができる燃料電池スタックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池スタックは、膜電極接合体を一対のセパレータで挟持して成る単セルを複数枚積層して構成される。この燃料電池スタックは、隣接する単セル同士の間に、冷却液の流通空間を形成すると共に、この流通空間に配置して単セル間の変位を吸収する
板状の変位吸収部材を備え、セパレータが、断面凹凸形状を冷却液の流通方向に連続的に有している。
【0008】
そして、燃料電池スタックは、
板状の変位吸収部材が、厚さ方向の変形に伴ってセパレータとの接触部分が面内方向に移動する部材であって、接触部分の移動方向がセパレータの凹凸の連続方向となるように配置してあると共に、セパレータの凸部に接触している構成としており、上記構成を従来の課題を解決するための手段としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る燃料電池スタックは、積層した単セル同士の間に冷却液を流通させる構造を有する燃料電池スタックにおいて、単セル間の変位吸収機能を良好に維持しつつ小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る燃料電池スタックの一実施形態を説明する凹凸幅方向の断面図(A)、及び凹凸形状の連続方向の断面図(B)である。
【
図2】変位吸収部材を説明する斜視図(A)、及びばね機能部の動作を説明する側面図(B)である。
【
図3】本発明に係る燃料電池スタックのさらに他の実施形態を説明する各々断面図(A)(B)である。
【
図4】本発明に係る燃料電池スタックのさらに他の実施形態を説明する各々断面図(A)(B)である。
【
図5】本発明に係る燃料電池スタックのさらに他の実施形態を説明する斜視図である。
【
図6】本発明に係る燃料電池スタックのさらに他の実施形態を説明する凹凸形状の連続方向の断面図(A)及び斜視図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1(A)(B)に示す燃料電池スタックFSは、発電要素である単セルCを複数枚積層したものである。この燃料電池スタックFSは、隣接する単セルC同士の間に、冷却液の流通空間Fを形成すると共に、前記流通空間Fに配置して単セルC間の変位を吸収する変位吸収部材10を備えている。
【0012】
単セルCは、膜電極接合体1を一対のセパレータ2,2で挟持した構造を有している。膜電極構造体1は、一般に、MEA(Membrane Electrode Assembly)と呼ばれるものであって、詳細な図示を省略したが、固体高分子膜から成る電解質層を一対の電極層であるアノード層及びカソード層で挟持したものである。アノード層及びカソード層は、触媒層や適数のガス拡散層を積層した構造である。
【0013】
セパレータ2,2は、例えばステンレス製であって、少なくとも膜電極接合体1に対応する部分が断面凹凸形状に形成してある。セパレータ2,2は、その断面凹凸形状を冷却液の流通方向(
図1Bにおける矢印A方向)に連続的に有しており、膜電極接合体1との間に、波形の凹部によりアノードガス(水素含有ガス)及びカソードガス(酸素含有ガス:空気)のガス流路3,3を形成する。また、図示例のセパレータ2は、いずれも断面四角形の凸部2A及び凹部2Bを有している。よって、凸部2Aの上面は平面である。
【0014】
そして、燃料電池スタックFSでは、流通空間Fにおける冷却液の流通方向(矢印A方向)と、各ガス流路3,3におけるアノードガスの流通方向(矢印B方向)及びカソードガスの流通方向(矢印C方向)とが、同一方向になっている。
【0015】
上記のセパレータ2は、表裏反転形状を有している。したがって、セパレータ2は、流通空間F側に突出した凸部2Aが、その反対側では凹部となり、流路空間F側に開放した凹部2Bが、その反対側では凸部となる。このようなセパレータ2は、例えばプレス加工によって製造することができ、その凹凸形状により、機械的強度が増すうえに、両面側に流路を形成することができるので、膜電極接合体1の薄型化や単セルCの薄型化を実現し得るものである。
【0016】
なお、膜電極接合体1と各セパレータ2との間や、隣接する単セルC同士の間すなわち流路空間Fは、外周部に適宜のガスシールが施してあり、各層間には、図示しない供給路及び排出路を通して、アノードガス、カソードガス及び冷却液を流通させる。
【0017】
変位吸収部材10は、概略的には、厚さ方向の変形に伴ってセパレータ2との接触部分が面内方向(
図1Bにおいて左右方向)に移動する部材である。この変位吸収部材10は、接触部分の移動方向がセパレータ2の凹凸形状の連続方向となるように配置してある。なお、凹凸形状の連続方向とは、凹凸形状の断面が連続している方向(凸部2A及び凹部2Bの長手方向)であり、凹凸が順に連なる方向ではない。
【0018】
この実施形態の変位吸収部材10は、
図2(A)にも示すように、薄い金属プレートを素材とし、単セルC間のコネクタを兼用するために導電性を有し、基板10Aの片面に多数のばね機能部10Bを縦横に配列した構造である。これにより、変位吸収部材10は、流通空間Fを介して相対向する一対のセパレータ2,2のうちの一方のセパレータ2(
図1中で単セルCの下側のセパレータ)に基板10Aが接触し、他方のセパレータ2(
図1中で単セルCの上側のセパレータ)にばね機能部10Bが接触する。
【0019】
ばね機能部10Bは、基端を基板10Aへの固定端とし且つ先端側を自由端とした片持ち梁構造の舌片状を成している。このばね機能部10Bは、
図2(B)に示すように、厚さ方向の変形に伴って基板10Aとの角度が変化し、セパレータ2との接触部分である自由端の先端が、矢印で示す如く面内方向である凹凸形状の連続方向に変位する。
【0020】
また、変位吸収部材10は、各ばね機能部10Bが、基板10Aから切り起した状態に形成してある。これにより、基板10Aは、各ばね機能部10Bの下側に、ばね機能部10Bの切り起しにより形成された開口部10Cを有している。さらに、変位吸収部材10は、各ばね機能部10Bのうちの少なくとも一つが、自由端を冷却液の流通方向下流側に向けた状態で配置してあり、図示例では全てのばね機能部10Bが同じ向きである。
【0021】
上記構成を備えた燃料電池スタックFSは、単セルCが、断面凹凸形状を有するセパレータ2と、変位吸収部材10の組合わせであるから、ガス流路3や冷却液の流通空間Fが所定の流路面積で効率的に配置され、単セルCの薄型化を実現する。
【0022】
また、燃料電池スタックFSは、変位吸収部材10によって単セルC間の変位を吸収する。この際、燃料電池スタックFSは、変位吸収部材10のばね機能部10Bの向きと、セパレータ2の凹凸形状の連続方向とを合わせて配置すると共に、ばね機能部10Bが接触するセパレータ2の凸部2Aの上面が平面である。
【0023】
これにより、燃料電池スタックFSでは、変位吸収部材10の厚さ方向の変形に伴って、
図1(B)に示す如くばね機能部10Bの自由端とセパレータ2との接触部分が移動しても、ばね機能部10Bの自由端が、常に凸部2Aの上面に接触して、凹部2Bに落ち込むことがないので、変位吸収部材10の変位吸収機能を充分に発揮させることができる。しかも、ばね機能部10Bの自由端とセパレータ2の凸部2Aとが面接触しているので、セパレータ2と変位吸収部材10との間の接触抵抗を低減することができる。
【0024】
このようにして、燃料電池スタックFSは、積層した単セルC同士の間に冷却液を流通させる構造を有すると共に、単セルC間の変位吸収機能を良好に維持しつつ小型化を実現することができる。
【0025】
また、燃料電池スタックFSは、流通空間Fにおいて、変位吸収部材10が、各ばね機能部10Bの自由端を冷却液の流通方向下流側に向けた状態にして配置してあるので、冷却液が流れやすくなり、冷却液の圧力損失を低減することができる。
【0026】
さらに、燃料電池スタックFSは、流通空間Fにおける冷却液の流通方向(矢印A方向)と、ガス流路3,3におけるガスの流通方向(矢印A,B方向)とが同一方向であり、とくに、冷却液の流通方向(矢印A方向)とアノードガスの流通方向(矢印B方向)とを同一方向にしたので、膜電極接合体1の反応面の温度制御、すなわち反応面のガス流れ方向の温度場の制御を容易にすることができる。
【0027】
図3〜
図6は、本発明の燃料電池スタックの他の実施形態を説明する図である。なお、以下の各実施形態において、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0028】
図3(A)に示す燃料電池スタックの変位吸収部材10は、ばね機能部10Bの自由端の幅Waが、同ばね機能部10Bが接触するセパレータ2の凸部2Aの幅Wbよりも大きいものとなっている。
【0029】
上記構成を備えた燃料電池スタックは、先の実施形態と同様の効果を得ることができるうえに、ばね機能部10Bの自由端が、凸部2Aの上面に必ず接触することになり、凹部2Bへの落ち込みが阻止され、しかも、電気的な接触面積を大きく得ることができる。
【0030】
図3(B)に示す燃料電池スタックの変位吸収部材10は、ばね機能部10Bの自由端の幅Waが、同ばね機能部10Bが接触するセパレータ2の凹部2Bの幅Wcよりも大きいものとなっている。
【0031】
上記構成を備えた燃料電池スタックにあっても、先の実施形態と同様の効果を得ることができるうえに、ばね機能部10Bの自由端が、凸部2Aの上面に必ず接触することになり、凹部2Bへの落ち込みが阻止され、しかも、電気的な接触面積を大きく得ることができる。
【0032】
図4(A)に示す燃料電池スタックの変位吸収部材10は、ばね機能部10Bの自由端が、同ばね機能部10Bが接触するセパレータ2の複数の凸部2Aに接触している。図示例では、隣接する二つの凸部2A,2Aにばね機能部10Bの自由端が接触している。
【0033】
上記構成を備えた燃料電池スタックは、先の実施形態と同様の効果を得ることができるうえに、冷却液の圧力損失を低減することができる。つまり、燃料電池スタックでは、先述したように、各ばね機能部10Bの自由端を冷却液の流通方向下流側に向けた状態にして、冷却液を流し易くしているが、冷却液の流通にばね機能部10Bが干渉すること自体は避けられない。
【0034】
そこで、燃料電池スタックでは、セパレータ2の複数の凸部2Aにばね機能部10Bの自由端を接触させることで、ばね機能部10Bの配置部分にセパレータ2の凹部2Bによる流路を確保する。すなわち、ばね機能部10Bが接触する複数の凸部2A,2A間の凹部2Bを、同ばね機能部10Bの配置部分の流路として確保する。これにより、燃料電池スタックは、ばね機能部10Bの配置部分に冷却液を分配して、同配置部分での流通性を高め、全体として冷却液の圧力損失を低減することができる。
【0035】
図4(B)に示す燃料電池スタックの変位吸収部材10は、
図2(A)に基づいて先述したように、変位吸収部材10の基板10Aが、各ばね機能部10Bの下側に開口部10Cを有している。そして、燃料電池スタックは、基板10Aが接触するセパレータ2の凹部2Bと前記開口部10Cとが連通したものとなっている。
【0036】
上記の燃料電池スタックは、基板10Aが接触するセパレータ2側において、ばね機能部10Bの配置部分に凹部2B及び開口部10Cによる流路を確保する。これにより、燃料電池スタックは、ばね機能部10Bの配置部分に冷却液を分配して、同配置部分での流通性を高め、全体として冷却液の圧力損失を低減することができる。
【0037】
なお、
図4(A)(B)に示す実施形態を組合わせれば、変位吸収部材10の上下両側のセパレータ2,2において、上下の凹部2B,2B及び開口部10Cにより流路が確保され、ばね機能部10Bの配置部分での流通性をより一層高めることができる。
【0038】
図5に示す燃料電池スタックの変位吸収部材10は、基板10Aに、セパレータ2の凹凸形状の連続方向(図中で上方向)とこれに交差する幅方向(図中で左右方向)に各ばね機能部10Bを配列すると共に、幅方向に隣接するばね機能部10B同士が、凹凸形状の連続方向にオフセット(矢印OS)してある。図示例のオフセット量は、おおよそばね機能部10B一つ分である。セパレータ2の凹凸形状の連続方向は、冷却液の流通方向と同じである。
【0039】
上記の燃料電池スタックでは、面内方向においては、図中の矢印で示すように、冷却液がばね機能部10Bを左右に迂回して流通することとなり、冷却液の淀む点が少なくなるので、冷却液の圧力損失を低減することができる。また、上記の燃料電池スタックは、例えば、
図4に示す変位吸収部材10及びセパレータ2の構成と組合わせれば、面内方向及び厚さ方向の流通性を低減して、全体として冷却液の圧力損失を大幅に低減し得るものとなる。
【0040】
図6(A)(B)に示す燃料電池スタックFSは、先の実施形態では、基板10Aの片側に多数のばね機能部10Bを配列した変位吸収部材10を採用したのに対して、断面波形状の変位吸収部材20を採用している。この変位吸収部材20にあっても、厚さ方向の変形に伴ってセパレータ2との接触部分が面内方向(波形の進行方向)に移動する。なお、
図6(B)には、変位吸収部材20の波形状のみを示している。
【0041】
上記の燃料電池スタックFSは、隣接する単セルC同士の間に、冷却液の流通空間Fを形成すると共に、この流通空間Fに上記の変位吸収部材20を備え、セパレータ2が、断面凹凸形状を冷却液の流通方向(
図1Aで左右方向)に連続的に有している。そして、変位吸収部材20は、接触部分の移動方向がセパレータ2の凹凸形状の連続方向、すなわち
図6(A)に示す如く波形の進行方向がセパレータ2の凹凸形状の連続方向となるように配置してあり、上下のセパレータ2の凸部2Aに夫々接触している。
【0042】
上記の変位吸収部材20を備えた燃料電池スタックにあっても、先の実施形態と同様に、積層した単セルC同士の間に冷却液を流通させる構造を有すると共に、単セルC間の変位吸収機能を良好に維持しつつ小型化を実現することができる。
【0043】
なお、本発明に係る燃料電池スタックは、その構成が上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の細部を適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
C 単セル
F 流通領域
FS 燃料電池スタック
1 膜電極接合体
2 セパレータ
2A 凸部
2B 凹部
10 変位吸収部材
10A 基板
10B ばね機能部
10C 開口部
20 変位吸収部材