特許第5958748号(P5958748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958748
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】吊り天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   E04B5/58 S
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-140813(P2012-140813)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-5627(P2014-5627A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 記彦
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−001954(JP,A)
【文献】 特開2009−167737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平の一方向に延設されるとともに、前記一方向に直交する水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の支持部材と、
上部構造に上端側を接続し、前記支持部材に下端側を接続して配設された複数の吊り部材と、
前記支持部材に支持されて天井面を形成する板状の天井材と、
上部構造に上端側を接続し、前記支持部材に一端を接続して突設されたガセットプレートに下端側を接続して斜設された補強ブレースと
前記ガセットプレート及び前記補強ブレースと前記天井材との上下方向の間に設けられ、横揺れが発生した際に前記ガセットプレートが前記天井材に食い込むことを防止するための板状の介装部材とを備えており、
前記介装部材は、前記ガセットプレートの突出方向先端側の端部が上下方向に重なるように、且つ前記ガセットプレートの端部よりも前記突出方向外側に延出するようにして前記ガセットプレート及び前記補強ブレースと前記天井材との上下方向の間に介装されていることを特徴とする吊り天井構造。
【請求項2】
請求項1記載の吊り天井構造において、
前記介装部材が弾性体であることを特徴とする吊り天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り天井の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の天井部の構造として、吊り天井が多用されている。さらに、図3に示すように、例えば、クリーンルームのようにファンフィルターユニット等の大重量の設備機器を天井部に設置する必要がある吊り天井(吊り天井構造)Aには、水平の一方向T1に延び、一方向T1に直交する他方向T2に所定の間隔をあけて並設された複数のTバー(断面逆T型の支持部材)1と、上端側を上階の床材(上部構造)等に固着し、下端側をTバー1に接続して配設された複数の吊りボルト(吊り部材)2と、他方向T2に隣り合うTバー1に架け渡すように配設された天井材(システム天井、天井パネル)3とを備えて構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、この種の吊り天井Aにおいては、天井材3に大重量の設備機器が取り付けられるため、規模の大きな地震時に応答が大きくなって、大きな振り幅で横揺れるとともに周囲の壁などに衝突し、この天井材3や設備機器に破損が生じるおそれがある。
【0004】
このため、従来、このような吊り天井Aにおいては、図3及び図4に示すように、上部構造などに上端側を接続し、下端側をTバー1に接続して補強ブレース4を設けることにより、地震時の天井材3の横揺れを抑えるようにしている。
【0005】
また、このとき、板面が上下方向T3に沿うように、且つTバー1に直交して突出するように、一端をTバー1に接続してガセットプレート5を設け、補強ブレース4は、このガセットプレート5に下端側をビス留めすることにより、Tバー1に接続して設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−350950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようにガセットプレート5に下端側を接続して補強ブレース4を設置した場合には、図4に示すように、地震時によって天井材3に横揺れが発生した際に、ガセットプレート5を回転させる力Mが作用する。そして、横揺れによってガセットプレート5が回動すると、ガセットプレート5の突出方向先端5aの角部5bが天井材3に食い込み(ガセットプレート5と天井材3の間に大きな摩擦が発生し)、この食い込みと同時に急激に横揺れを抑えるような力がガセットプレート5や補強ブレース4に作用する。
【0008】
これにより、地震時にガセットプレート5と補強ブレース4の接合部のビス6に過大な力が作用するとともにビス6の緩みや破断が発生し、その結果として、補強ブレース4による天井材3の揺れを抑さえる効果が発揮されなくなって、天井材3や設備機器に破損が生じるおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、地震時に、ガセットプレートが天井材に食い込むことを防止でき、確実に補強ブレースの効果を発揮させて耐震性能を向上させることを可能にした吊り天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
本発明の吊り天井構造は、水平の一方向に延設されるとともに、前記一方向に直交する水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の支持部材と、上部構造に上端側を接続し、前記支持部材に下端側を接続して配設された複数の吊り部材と、前記支持部材に支持されて天井面を形成する板状の天井材と、上部構造に上端側を接続し、前記支持部材に一端を接続して突設されたガセットプレートに下端側を接続して斜設された補強ブレースと前記ガセットプレート及び前記補強ブレースと前記天井材との上下方向の間に設けられ、横揺れが発生した際に前記ガセットプレートが前記天井材に食い込むことを防止するための板状の介装部材とを備えており、前記介装部材は、前記ガセットプレートの突出方向先端側の端部が上下方向に重なるように、且つ前記ガセットプレートの端部よりも前記突出方向外側に延出するようにして前記ガセットプレート及び前記補強ブレースと前記天井材との上下方向の間に介装されていることを特徴とする。
なお、本発明における「横揺れが発生した際にガセットプレートが天井材に食い込む」は、「横揺れが発生した際にガセットプレートが天井材に接触してガセットプレートと天井材の間に大きな摩擦が発生する」ことを意味する。
【0012】
また、本発明の吊り天井構造においては、前記介装部材が弾性体であってもよい。
なお、この発明における「弾性体」は「粘弾性体」も含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吊り天井構造においては、ガセットプレート及び補強ブレースと天井材との上下方向の間に板状の介装部材が設けられていることによって、地震時に吊り天井構造に横揺れが発生し、ガセットプレートを回転させる力が作用した場合であっても、ガセットプレートの突出方向先端側の角部(突出方向先端側の端部)が介装部材によって天井材に食い込むことを防止できる。
【0014】
これにより、ガセットプレートの天井材への食い込みに伴って急激に横揺れを抑えるような力がガセットプレートや補強ブレースに作用することがなく、ビスの緩みや破断が発生することを防止できる。よって、吊り天井構造の揺れを抑制する補強ブレースの効果を確実に発揮させ、耐震性能を向上させることが可能になる。
【0015】
また、本発明の吊り天井構造においては、介装部材を弾性体(粘弾性体を含む)とすることによって、ガセットプレートの突出方向先端側の角部が天井材に食い込むことを防止できるとともに、介装部材の弾性体によってガセットプレートと天井材の間に作用する力を吸収して減衰させ、吊り天井構造の横揺れをより抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る吊り天井構造を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る吊り天井構造の補強ブレースの接合部分を示す断面図である。
図3】従来の吊り天井構造を示す斜視図である。
図4】従来の吊り天井構造の補強ブレースの接合部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1及び図2を参照し、本発明の一実施形態に係る吊り天井構造について説明する。ここで、本実施形態は、優れた耐震性能を備えた吊り天井の構造に関するものである。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の吊り天井(吊り天井構造)Bは、例えば、クリーンルームのように、ファンフィルターユニット等の大重量の設備機器を天井部に設置してなる吊り天井であり、従来の吊り天井Aと同様、水平の一方向T1に延び、一方向T1に直交する他方向T2に所定の間隔をあけて並設された複数の支持部材1と、上端側を上階の床材等の上部構造に接続し、下端側を支持部材1に接続して配設された複数の吊りボルト(吊り部材)2と、他方向T2に隣り合うTバー1に架け渡すように配設されて天井面3aを形成する天井材(システム天井、天井パネル)3と、上部構造に上端側を接続し、支持部材1に一端を接続して突設されたガセットプレート5に下端側を接続して斜設された補強ブレース4とを備えて構成されている。
【0019】
また、本実施形態では、支持部材1として、断面逆T型のいわゆるTバーが適用されている。補強ブレース4は、ガセットプレート5に下端側をビス留め(ビス6)して、Tバー1に接続されている。
【0020】
一方、本実施形態の吊り天井Bにおいては、ガセットプレート5及び補強ブレース4と、天井材3との上下方向T3の間に介設された板状の介装部材7を備えている。また、本実施形態において、この介装部材7は、金属製で平板状に形成され、板面を上下方向T3に向け、且つガセットプレート5の突出方向先端5aよりも外側に延出するようにして配設されている。また、本実施形態の介装部材7は、ガセットプレート5と天井材の上下方向T3の間の隙間寸法とほぼ同等の厚さ寸法を備えて形成され、天井材3に例えばタッピングビスなどを用いて一体に取り付けられている。なお、介装部材7は、天井材3ではなく、ガセットプレートやTバー1に接続して配設されていてもよい。
【0021】
そして、このように構成した本実施形態の吊り天井Bにおいては、図1及び図2に示すように(図4参照)、規模の大きな地震が発生し、吊り天井Bに水平力が作用して横揺れが生じ、ガセットプレート5に回転させるような力Mが作用した際に、ガセットプレート5及び補強ブレース4と天井材3との間に介装部材7が介設されているため、言い換えると、地震時に横揺れとともに変移するガセットプレート5の先端5aの角部5bと天井材3との上下方向T3の間に、常に介装部材7が介設されているため、従来のようにガセットプレート5の先端5aの角部5bが横揺れとともに天井材3に接触することがない。
【0022】
このため、従来のように、地震によってガセットプレート5の先端5aの角部5bが天井材3に食い込むおそれがなく、この食い込みに伴って急激に横揺れを抑えるような力がガセットプレート5や補強ブレース4に作用することがない。
【0023】
したがって、本実施形態の吊り天井(吊り天井構造)Bにおいては、ガセットプレート5及び補強ブレース4と天井材3との上下方向T3の間に板状の介装部材7が設けられていることによって、地震時に吊り天井Bに横揺れが発生し、ガセットプレート5を回転させる力が作用した場合であっても、ガセットプレート5の角部5bが介装部材7によって天井材3に食い込むことを防止できる。
【0024】
これにより、ガセットプレート5の天井材3への食い込みに伴って急激に横揺れを抑えるような力がガセットプレート5や補強ブレース4に作用することがなく、ビス6の緩みや破断が発生することを防止できる。よって、吊り天井Bの揺れを抑制する補強ブレース4の効果を確実に発揮させ、耐震性能を向上させることが可能になる。
【0025】
以上、本発明に係る吊り天井構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0026】
例えば、本実施形態では、介装部材7が平板状に形成されているものとしたが、介装部材7は、ガセットプレート5の先端5aの角部5bが天井材3に食い込むことを防止する板状部分を備えていれば、必ずしも平板状に形成されていなくてもよい。さらに、介装部材7がガセットプレート5の下端と天井材3の間の隙間と同等の厚さで形成されているものとしたが、前記隙間よりも厚さを小さくして形成されていても構わない。
【0027】
また、介装部材7が弾性体(粘弾性体を含む)であってもよい。この場合には、介装部材7によってガセットプレート5の角部5bが天井材3に食い込むことを防止できるとともに、吊り天井構造Bの横揺れに伴い、ガセットプレート5と天井材3の間に作用する力を弾性によって吸収して減衰させることが可能になり、吊り天井構造Bの横揺れをより確実に抑えることが可能になる。
【符号の説明】
【0028】
1 Tバー(支持部材)
2 吊りボルト(吊り部材)
3 天井材(システム天井、天井パネル)
3a 天井面
4 補強ブレース
5 ガセットプレート
5a 先端
5b 角部
6 ビス
7 介装部材
A 従来の吊り天井構造(吊り天井)
B 吊り天井構造(吊り天井)
T1 水平の一方向
T2 水平の他方向
T3 上下方向
図1
図2
図3
図4