特許第5958749号(P5958749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958749
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】金属粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20160719BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20160719BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20160719BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20160719BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20160719BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20160719BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20160719BHJP
   H01B 1/16 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B22F9/24 B
   B22F9/24 E
   B22F9/24 C
   B22F1/02 F
   B22F1/00 M
   B22F1/00 K
   B22F1/00 L
   H01B1/00 E
   H01B1/22 A
   H01B5/00 E
   H01B13/00 501Z
   H01B1/16 A
   H01B13/00 503C
【請求項の数】9
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2012-141164(P2012-141164)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-5491(P2014-5491A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100117477
【弁理士】
【氏名又は名称】國弘 安俊
(72)【発明者】
【氏名】中西 徹
(72)【発明者】
【氏名】緒方 直明
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−256857(JP,A)
【文献】 特開2005−060778(JP,A)
【文献】 特開2004−183027(JP,A)
【文献】 特開2005−105365(JP,A)
【文献】 特開2011−168849(JP,A)
【文献】 特開2011−252194(JP,A)
【文献】 特開2007−191771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/24
B22F 1/00
B22F 1/02
H01B 1/00
H01B 1/16
H01B 1/22
H01B 5/00
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部に酸化皮膜が形成された金属粒子を液相下において還元剤で処理した後、該還元剤が存在する液相下で、前記金属粒子と硫黄成分とを接触させて前記金属粒子と前記硫黄成分とを反応させ、前記硫黄成分を含有した金属化合物で前記金属粒子の表面の少なくとも一部を被覆することを特徴とする金属粉末の製造方法。
【請求項2】
前記金属粒子は、Ni、Ag、Cu、及びPdのうちの少なくとも1種を含んでいることを特徴とする請求項1記載の金属粉末の製造方法。
【請求項3】
前記硫黄成分は、硫黄単体、水硫化物及び多硫化物を含む硫化物群のうちの少なくとも1種以上を含有した無機硫黄含有物の形態で、前記金属粒子に添加することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属粉末の製造方法。
【請求項4】
前記金属化合物は、硫化物を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
【請求項5】
前記金属粉末中の硫黄成分は、濃度に換算して0.01〜5質量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
【請求項6】
前記金属粉末の平均粉末径は、0.01μm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
【請求項7】
前記金属粒子と前記硫黄成分との反応は、pHが2を超えた溶液中で行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
【請求項8】
前記金属粒子と前記硫黄成分との反応は、20〜200℃の温度で行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
【請求項9】
前記還元剤は、ヒドラジン、水素化ホウ素化合物、ハロゲン化チタン、次亜リン酸塩、亜リン酸塩、アルデヒド類、アスコルビン酸、水素ガス、アルコール類、多価アルコール類の中から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末の製造方法に関し、より詳しくは積層セラミック電子部品用内部電極の導電性材料に適した金属粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品は、今日では様々な電子機器に搭載されている。
【0003】
この種の積層セラミック電子部品は、従来より、通常以下のような方法で作製されている。
【0004】
すなわち、まず、セラミック原料粉末をシート状に成形加工したセラミックグリーンシートと導電性ペーストを塗布して形成された導電膜とを交互に積層するような形態でセラミック積層体を形成する。次いで、このセラミック積層体に脱脂処理(熱処理)を行い、セラミックグリーンシートや導電性ペーストに含有されているバインダ樹脂を焼失させ、該バインダ樹脂を除去した後、焼成処理を行う。そしてこれにより、内部電極が埋設されたセラミック素体を作製し、その後該セラミック素体の両端部に外部電極を形成し、積層セラミック電子部品を作製している。
【0005】
そして、導電性材料としては、AgやPdなどの貴金属材料、NiやCuなどの卑金属材料材等、良導電性を有する各種金属粉末が使用されている。
【0006】
ところで、上記積層セラミック電子部品は、上述したように製造過程で脱脂処理を行い、セラミックグリーンシートや導電膜に含有されたバインダ樹脂を除去しているが、導電膜の主成分であるAg、Pd、Ni、Cu等の金属粉末は、バインダ樹脂と接触すると燃焼反応を促進する触媒作用を有することが知られている。したがって、このような触媒作用を有する金属粉末を導電性材料に使用すると、斯かる金属粉末の触媒作用により脱脂処理時にはバインダ樹脂の急激な燃焼を促進することから、セラミック積層体の内部にはガスが発生し、このためセラミック積層体の内部圧力が増加し、クラックやデラミネーション(層間剥離)等の構造欠陥が発生するおそれがある。
【0007】
そこで、従来より、金属硫化物を金属粉末の表面に形成し、これにより脱脂処理時におけるバインダ樹脂の急激な燃焼を抑制することが行われている。
【0008】
例えば、特許文献1には、硫黄:0.01〜1.0質量%、炭素:0.01〜1.0質量%を含有し、表面に硫黄含有化合物が被覆又は付着したニッケル粉末が提案されている。
【0009】
この特許文献1では、例えば図4に示すように、Ni粉末スラリー101にチオ尿素等の硫黄含有化合物溶液102を添加した後、200〜300℃の温度で短時間、気流乾燥処理103を行い、その後、大気雰囲気等の酸化性雰囲気下、100〜400℃で熱処理104を行い、これによりニッケル粉末の表面を硫黄含有化合物(硫化ニッケル)で被覆し、又は付着させている。
【0010】
また、特許文献2には、平均粒径が0.1〜1.0μmで、かつ硫黄含有率が0.02〜1.0%であるニッケル微粉末が提案されている。
【0011】
この特許文献2では、図5に示すように、塩化ニッケルを気化させた塩化ニッケルガス111及び硫化水素ガス113を収容した反応容器にAr等のキャリアガスと共に水素ガス112を供給し、反応容器内で気相水素還元処理114を行い、硫黄成分を含有したニッケル微粉末を得ている。すなわち、前記反応容器内で塩化ニッケルガス111と水素ガス112とを反応させてニッケル粒子を作製すると同時に塩化ニッケルガス111と硫化水素ガス113とを反応させ、ニッケル粒子の表面を硫化ニッケルで被覆したニッケル微粉末を得ている。
【0012】
また、特許文献3には、ニッケル微粒子を硫黄化合物の溶液で湿式処理し、ニッケル微粒子に対して0.05〜1.0重量%の範囲の硫黄を含有させるようにしたニッケル微粒子の製造方法が提案されている。
【0013】
この特許文献3では、図6に示すように、硫黄を含有した硫酸アンモニウム等の硫黄含有化合物溶液121にニッケル微粒子122を添加し、湿式処理123し、その後加熱乾燥して硫黄化合物をニッケル微粒子中に均一に含有させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開2005/123307号(請求項1、2、段落番号〔0037〕〜〔0039〕、〔0045〕等)
【特許文献2】特開平11−80817号公報(請求項1、段落番号〔0009〕、〔0010〕等)
【特許文献3】特開2007−191771号公報(請求項1、段落番号〔0010〕、〔0023〕等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1では、気流乾燥処理103を行った後、酸化性雰囲気下で100〜400℃の温度で熱処理104を行っており、このため前記熱処理時にニッケル微粒子同士が凝結し、粒径が粗大化するおそれがある。そして、このように粗大化したニッケル粉末を使用して導電性ペーストを作製した場合、ニッケル粉末の分散性が低下することから、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを塗布しても平滑性の良好な導電膜を形成するのが困難となり、電極被覆率が低下したりデラミネーション等の構造欠陥を招くおそれがある。
【0016】
また、特許文献2では、高温雰囲気で塩化ニッケルをガス化し、この高温雰囲気を利用して気相水素還元処理114を行い、これによりニッケル粒子の作製と同時に該ニッケル粒子の表面に硫化ニッケルを形成している。このため反応過程でニッケル微粒子同士が凝結し、粒径が粗大化するおそれがある。したがって、特許文献1と同様、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを塗布しても平滑性の良好な導電膜を形成するのが困難となり、電極被覆率が低下したりデラミネーション等の構造欠陥が発生するおそれがある。
【0017】
さらに、特許文献3では、ニッケル微粒子122を硫黄含有化合物溶液121に添加し、湿式処理123をしており、したがって、その後に加熱乾燥させても、硫黄がニッケル粒子の表面に吸着しているだけと考えられる。
【0018】
すなわち、ニッケル粒子等の金属粒子の表面の少なくとも一部は、大気と不可避的に接触するため、通常、表面は金属酸化物からなる酸化皮膜で被覆されている。この金属酸化物は硫黄化合物との間で反応が生じ難いため、ニッケル微粒子122を硫黄含有化合物溶液121に添加しても、ニッケル粒子の表面に金属硫化物が形成されることはなく、ニッケル粒子と硫黄含有化合物との混合溶液となる。したがって、その後に加熱乾燥させても硫黄化合物はニッケル粒子に吸着しているだけと考えられる。
【0019】
そして、このように表面に硫黄化合物が吸着したニッケル微粒子を使用して導電性ペーストを作製しても、硫黄化合物は導電性ペーストの作製時にニッケル粒子の表面から脱離してしまい、脱脂処理時におけるニッケル粒子の触媒作用を抑制することができなくなる。
【0020】
すなわち、特許文献3のような金属粉末の製造方法では、金属粒子の触媒作用を効果的に抑制することができず、脱脂処理時にバインダ樹脂の急激な燃焼を招き易く、セラミック積層体の内部でガスが発生して圧力が上昇し、クラックやデラミネーション等の構造欠陥を招くおそれがある。
【0021】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、良好な電極被覆率を得ることができると共に、クラックやデラミネーション等の構造欠陥の発生を抑制でき積層セラミック電子部品の内部電極用導電性材料に適した金属粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述したようにAg、Pd、Ni、Cu等の金属粒子は、大気と不可避的に接することから、通常、表面には酸化皮膜が形成されている。
【0023】
そこで、本発明者らが、鋭意研究を行なったところ、金属粒子を液相下において還元剤で処理して表面の酸化皮膜を除去した後、前記還元剤が存在する液相下で硫黄成分を添加することにより、金属粒子と硫黄成分との反応性が向上し、これにより熱処理を行なうことなく、化学反応によって金属粒子の表面に硫黄成分を含有した金属化合物を形成できるという知見を得た。
【0024】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る金属粉末の製造方法は、表面の少なくとも一部に酸化皮膜が形成された金属粒子を液相下において還元剤で処理した後、該還元剤が存在する液相下で、前記金属粒子と硫黄成分とを接触させて前記金属粒子と前記硫黄成分とを反応させ、前記硫黄成分を含有した金属化合物で前記金属粒子の表面の少なくとも一部を被覆することを特徴としている。
【0025】
これにより気相での熱処理を行うことなく、液相での化学反応によって金属粒子の表面を金属化合物で被覆することが可能となる。したがって、熱処理に起因した金属粒子同士の凝結が生じることもなく、この金属粉末を導電性材料に使用した導電性ペーストは、基材に塗布しても平滑性の高い導電膜を形成することができ、良好な電極被覆率を確保することができる。
【0026】
また、上述したように硫黄成分を含有した金属化合物で金属粒子の表面を被覆しているので、金属の触媒作用を抑制することができ、これにより積層セラミック電子部品の製造過程で脱脂処理を行なっても、バインダ樹脂が急激に燃焼するのを抑制することができ、クラックやデラミネーション等の構造欠陥が発生するのを極力回避することができる。
【0027】
また、本発明の金属粉末の製造方法は、前記金属粒子が、Ni、Ag、Cu、及びPdのうちの少なくとも1種を含んでいるのが好ましい。
【0028】
また、本発明の金属粉末の製造方法は、前記硫黄成分は、硫黄単体、水硫化物及び多硫化物を含む硫化物群のうちの少なくとも1種以上を含有した無機硫黄含有物の形態で、前記金属粒子に添加するのが好ましい。
【0029】
また、本発明の金属粉末の製造方法は、前記金属化合物が、硫化物を主成分とするのが好ましい。
【0030】
また、本発明の金属粉末の製造方法は、前記金属粉末中の硫黄成分が、濃度に換算して0.01〜5質量%であるのが好ましい。
【0031】
さらに、本発明の金属粉末の製造方法は、前記金属粉末の平均粉末径は、0.01μm以上であるのが好ましい。
【0032】
また、本発明の金属粉末の製造方法は、前記金属粒子と前記硫黄成分との反応は、pHが2を超えた溶液中で行なうのが好ましい。
【0033】
さらに、本発明の金属粉末の製造方法は、前記金属粒子と前記硫黄成分との反応は、20〜200℃の温度で行なうのが好ましい。
【0034】
また、本発明の金属粉末の製造方法は、前記還元剤が、ヒドラジン、水素化ホウ素化合物、ハロゲン化チタン、次亜リン酸塩、亜リン酸塩、アルデヒド類、アスコルビン酸、水素ガス、アルコール類、多価アルコール類の中から選択された少なくとも1種であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の金属粉末の製造方法によれば、表面の少なくとも一部に酸化皮膜が形成された金属粒子(例えば、Ni、Cu、Ag、Pd等)を液相下においてヒドラジン等の還元剤で処理した後、前記還元剤が存在する液相下で、前記金属粒子と硫黄成分(例えば、硫黄単体、硫化物等)とを接触させて前記金属粒子と前記硫黄成分とを反応させ、硫化物等の前記硫黄成分を含有した金属化合物を前記金属粒子の少なくとも一部に被覆するので、製造過程で気相での熱処理を伴うこともなく、液相での化学反応で金属表面に硫黄化合物を形成させことができる。したがって、熱処理に起因した金属粒子同士の凝結が生じることもなく、この金属粉末を導電性材料に使用した導電性ペーストは、基材に塗布しても平滑性の高い導電膜を形成することができ、良好な電極被覆率を確保することができる。
【0036】
また、上述したように硫黄成分を含有した金属化合物で金属粒子の表面の少なくとも一部を被覆しているので、金属の触媒作用を効果的に抑制することができ、これにより積層セラミック電子部品の製造過程で脱脂処理を行なっても、バインダ樹脂が急激に燃焼するのを抑制することができ、クラックやデラミネーション等の構造欠陥が発生するのを極力回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の製造方法を使用して製造された金属粉末の一実施の形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明に係る金属粉末の製造方法の製造工程を模式的に示す製造工程図である。
図3】本発明に係る積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示す断面図である。
図4】特許文献1に記載されたニッケル粉末の製造方法を示す製造工程図である。
図5】特許文献2に記載されたニッケル超粉末の製造方法を示す製造工程図である。
図6】特許文献3に記載されたニッケル微粒子の製造方法を示す製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0039】
図1は本発明の製造方法を使用して製造された金属粉末の一実施の形態を模式的に示す断面図である。
【0040】
すなわち、この金属粉末1は、金属粒子2の表面に硫黄成分を含有した金属化合物3が形成されている。
【0041】
以下、図2を参照しながら、この金属粉末の製造方法を詳述する。
【0042】
まず、図2(a)に示すように、還元剤を含有した還元剤溶液4中に金属粒子2を投入し、金属粒子2と還元剤溶液4とからなる懸濁溶液5を作製する。
【0043】
金属粒子2は、通常、大気と不可避的に接することから、表面が酸化されており、金属酸化物からなる酸化皮膜6が形成されている。そして、この酸化皮膜6は、還元剤溶液4と接することにより還元剤の作用によって還元除去され、図2(b)に示すように、懸濁溶液5は、還元剤溶液4と金属粒子1との混合溶液となる。
【0044】
次に、この懸濁溶液5に硫黄成分を含有した硫黄含有物を添加し、金属粒子2と硫黄含有物とを接触させる。すると、金属粒子2の表面で金属粒子2と硫黄含有物とが反応し、図2(c)に示すように、硫化物を主成分とした金属化合物3が金属粒子2の表面に形成され、これにより金属粉末1が形成される。
【0045】
このように還元剤の存在下で金属粒子2と硫黄含有物とを反応させることにしたのは以下の理由による。
【0046】
図2(a)及び図2(b)に示すように、金属粒子2を還元剤溶液4と接触させることにより、金属粒子2の表面に形成された酸化皮膜(金属酸化物)6は容易に還元除去することができるが、金属粒子2を還元剤の不存在下に晒すと、金属粒子2の表面には再び酸化皮膜6が形成されるおそれがある。そして、酸化皮膜6を形成する金属酸化物は硫黄含有物との間で反応が生じ難いことから、金属粒子2の表面に硫化物を形成するのが困難となる。
【0047】
そこで、本実施の形態では、還元剤の存在下で、金属粒子2と硫黄含有物とを接触させ、両者が円滑に反応するようにしている。
【0048】
このように酸化皮膜6が還元除去された金属粒子2と硫黄含有物とを接触させることにより、酸化皮膜6が残存している場合とは異なり、金属粒子1と硫黄含有物とが円滑に反応し、金属粒子2の表面には硫化物を主成分とする金属化合物3が容易に形成される。
【0049】
しかも、上記製造方法では、特許文献1や特許文献2のように気相での熱処理を行なうことなく、液相で化学反応を生じさせることにより金属化合物3を形成しているので、金属粒子2同士が凝結して粗大化することもなく、所望粒径を有する金属粉末1を容易に得ることができる。
【0050】
したがって、この金属粉末3を導電性材料に使用して導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを基材に塗布することにより、平滑性の高い導電膜を形成することができ、良好な電極被覆率を確保することができる。
【0051】
また、金属粒子2の表面が金属化合物3で被覆された金属粉末1を導電性材料に使用するので、積層セラミック電子部品の製造過程で脱脂処理を行なっても、金属の触媒作用を抑制することができる。したがって、バインダ樹脂の急激な燃焼を回避することが可能となり、セラミック積層体の内部でガスが発生するのが抑制されて内部圧力が増加するのを阻止することができ、クラックやデラミネーション等の構造欠陥が発生するのを抑制することができる。
【0052】
そして、このような硫黄成分を含有した硫黄含有物については、懸濁溶液5中で硫化物イオンが生成されるものであれば特に限定されるものではなく、硫化水素ガスを水に溶解させた硫黄含有水溶液を懸濁溶液5に添加してもよいが、硫黄単体、硫化ナトリウム、硫化アンモニウム等の硫化物、硫化水素ナトリウムや硫化水素アンモニウム等の水硫化物、多硫化ナトリウムや多硫化アンモニウム等の多硫化物の少なくとも1種以上含有した無機硫黄含有物を使用するのが好ましい。すなわち、有機硫黄化合物を懸濁溶液5に添加しても、金属粒子2の表面に硫化物を形成することができ、構造欠陥の発生を抑制することは可能であるが、この場合、有機硫黄化合物に含有される炭素成分が金属粒子の表面に残留してしまうおそれがある。したがって、このような点を考慮すると、上述した硫黄単体、硫化物、水硫化物、多硫化物を含有した無機硫黄含有物を金属粒子2に添加するのが好ましい。
【0053】
また、金属粉末1中の硫黄濃度については、特に限定されるものではないが、構造欠陥の発生をより一層抑制し、より良好な電極被覆率を確保するためには、硫黄濃度は0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%である。金属粉末1中の硫黄濃度が0.01質量%未満になると、硫黄含有量が少なくなるため、金属粒子の表面を金属化合物で被覆できなくなるおそれがある。一方、硫黄濃度が5質量%を超えると、金属粉末1中の金属粒子2の含有量が相対的に低下することから、電極被覆率の低下を招くおそれがある。
【0054】
また、還元剤についても特に限定されるものではないが、還元力の強い還元剤が好ましく、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化チタン、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、アルデヒド類、アスコルビン酸、水素ガス、1−ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール等の多価アルコール類の中から選択された少なくとも1種を好んで使用することができる。
【0055】
また、金属粉末1の平均粉末径も特に限定されるものではないが、より一層の構造欠陥を低減する観点からは、平均粉末径は0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.1μm以上である。平均粉末径が0.01μm未満になると、金属粒子2の比表面積も大きくなり、すべての金属粒子2の表面を被覆するには、硫黄濃度を増加させる必要がある。尚、平均粉末径が1μm以上になると、硫黄濃度を増加させなくても、構造欠陥の発生を十分に抑制でき、また、金属粒子の平均粒径が微粒になればなるほど、電極被覆率は向上すると考えられることから、金属粉末1の平均粉末径は1μm以下がよい。
【0056】
尚、金属粉末1の平均粉末径は、酸化皮膜6が形成された金属粒子2の平均粒径で近似されることから、還元処理前の金属粒子1の平均粒径で管理することができる。
【0057】
また、金属粒子1と硫黄含有物とが反応する懸濁溶液5のpHについても特に限定されるものではないが、金属粉末が溶解しないように炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸、酢酸、酢酸ナトリウム等のpH調整剤を使用して懸濁溶液のpHを調整するのが好ましい。具体的には懸濁溶液5のpHは2を超えているのが好ましい。このように懸濁溶液5のpHを調整することにより、金属粒子2の表面には所望の硫化物を主成分とする金属化合物を形成することができ、脱脂処理を行っても金属の触媒作用を抑制することができる。尚、硫化物イオンは、pHが7未満の酸性領域では硫化水素を発生させ得る。したがって、作業の安全性を考慮すると、懸濁溶液のpHは、7以上の中性溶液乃至アルカリ性溶液であるのがより好ましい。
【0058】
また、反応温度についても特に限定されるものではないが、構造欠陥の発生をより効果的に抑制するためには、20〜200℃が好ましく、より好ましくは60〜200℃である。すなわち、懸濁溶液5中では酸化皮膜を還元除去するための還元反応と、金属粒子と硫黄含有物との硫化物生成反応を順次進行させる必要があるが、反応温度が20℃未満になると、上述した両反応が進行し難くなり、金属粒子の表面を金属硫化物で被覆するのが困難になるおそれがある。また、反応温度が200℃を超える高温になると、金属硫化物の生成反応が局部的に進行し、このため金属粒子の表面を金属硫化物で均一に被覆するのが困難になるおそれがある。
【0059】
また、本発明で適用可能な金属粒子1の種類については、硫黄含有物との間で反応が進行し、硫化物を形成するものであれば特に限定されるものではないが、積層セラミック電子部品用内部電極の導電性材料に使用される金属種、例えばNi、Cu、Ag、及びPdを好んで使用することができる。
【0060】
次に、上記金属粉末を使用した積層セラミック電子部品について詳述する。
【0061】
図3は本発明に係る積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示す断面図である。
【0062】
該積層セラミックコンデンサは、セラミック素体7に内部電極8a〜8fが埋設されると共に、該セラミック素体7の両端部には外部電極9a、9bが形成され、さらに該外部電極9a、9bの表面には第1のめっき皮膜10a、10b及び第2のめっき皮膜11a、11bが形成されている。
【0063】
すなわち、セラミック素体7は、誘電体セラミック層12a〜12gと本発明の金属粉末1を導電性材料とする内部電極層8a〜8fとが交互に積層されており、内部電極層8a、8c、8eは外部電極9aと電気的に接続され、内部電極層8b、8d、8fは外部電極9bと電気的に接続されている。そして、内部電極層8a、8c、8eと内部電極層8b、8d、8fとの対向面間で静電容量を形成している。
【0064】
次に、上記積層セラミックコンデンサの製造方法を詳述する。
【0065】
まず、内部電極用導電性ペーストを作製する。
【0066】
すなわち、上述した金属粉末1、及び有機ビヒクルを所定の混合割合となるように秤量して混合し、三本ロールミルやサンドミル、ポットミル等を使用して分散・混練し、これにより上記金属粉末を導電性材料とした導電性ペーストを作製する。
【0067】
ここで、有機ビヒクルは、バインダ樹脂が有機溶剤中に溶解されてなり、バインダ樹脂と有機溶剤との混合比率は、例えば体積比率で、1〜3:7〜9となるように調製されている。
【0068】
また、上記バインダ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブチラール樹脂又はこれらの組み合わせを使用することができる。また、有機溶剤についても特に限定されるものではなく、α―テルピネオール、キシレン、トルエン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を単独、或いはこれらを組み合わせて使用することができる。尚、この内部電極用導電性ペーストには、必要に応じて分散剤や可塑剤等を添加するのも好ましい。
【0069】
次に、この内部電極用導電性ペーストを使用して積層セラミックコンデンサを作製する。
【0070】
すなわち、Ba化合物、Ti化合物等のセラミック素原料を用意する。そしてこれらセラミック素原料を所定量秤量し、これら秤量物をPSZ(Partially Stabilized Zirconia:部分安定化ジルコニア)ボール等の粉砕媒体及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させた後、950〜1150℃の温度で所定時間、仮焼処理を施し、これによりチタン酸バリウムを主成分とする仮焼粉末を作製する。
【0071】
次に、希土類元素Reを含有したRe化合物、Siを含有したSi化合物、アルカリ土類金属Mを含有したM化合物、Mnを含有したMn化合物及びVを含有したV化合物等の添加物を必要に応じて所定量秤量し、これら秤量物を前記仮焼粉末、粉砕媒体及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥処理を施し、これによりセラミック原料粉末を作製する。
【0072】
次いで、上記セラミック原料粉末を有機バインダや有機溶剤、粉砕媒体と共にボールミルに投入して湿式混合し、セラミックスラリーを作製し、リップ法やドクターブレード法等を使用してセラミックスラリーをシート状に成形加工し、セラミックグリーンシートを作製する。
【0073】
次いで、上述した内部電極用導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施し、前記セラミックグリーンシートの表面に所定パターンの導電膜を形成する。
【0074】
次いで、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層し、導電膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持し、圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製する。そしてこの後、温度300〜500℃で脱バインダ処理を行ない、さらに、大気雰囲気下、又は還元性雰囲気下、所定の焼成プロファイルでもって約2時間焼成処理を行なう。これにより導電膜とセラミックグリーンシートとが共焼結され、内部電極8a〜8fが埋設されたセラミック素体7が得られる。
【0075】
次に、セラミック素体7の両端面に外部電極用導電性ペーストを塗布し、600〜800℃の温度で焼付処理を行い、外部電極9a、9bを形成する。
【0076】
尚、外部電極用導電性ペーストに含有される導電性材料は、特に限定されるものではないが、低コスト化の観点から、AgやCu、或いはこれらの合金を主成分とした材料を使用するのが好ましい。
【0077】
そして、最後に、電解めっきを施して外部電極9a、9bの表面にNi、Cu、Ni−Cu合金等からなる第1のめっき皮膜10a、10bを形成し、さらに該第1のめっき皮膜10a、10bの表面にはんだやスズ等からなる第2のめっき皮膜11a、11bを形成し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0078】
このように形成された積層セラミックコンデンサは、内部電極の導電性材料に上記金属粉末が使用されているので、金属粒子同士が凝結することもなく、粒子の粗大化が抑制された金属粉末を導電性材料に使用していることから、導電性ペーストをセラミックグリーンシートに塗布しても平滑性の高い導電膜を形成することができ、良好な電極被覆率を有する積層セラミック電子部品を得ることができる。また、金属粉末1は、金属粒子2の表面に硫化物を主成分とする金属化合物3が効果的に形成されていることから、金属の触媒作用が抑制され、脱脂処理時に導電性ペースト中のバインダ樹脂が急激に燃焼して内部圧力の上昇を招くこともなく、クラックやデラミネーション等の構造欠陥が発生するのを抑制することができる信頼性の良好な積層セラミック電子部品を得ることができる。
【0079】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、積層セラミックコンデンサを例示したが、脱脂処理を伴う他の積層セラミック電子部品、例えば積層型の圧電部品等にも適用可能なのはいうまでもない。
【0080】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0081】
〔試料の作製〕
(試料番号1)
還元剤としてヒドラジン(HNNH)を含有した還元剤溶液(ヒドラジン濃度:5重量%、及び金属粒子として平均粒径0.4μmのPd粒子を用意した。そして、Pd粒子を還元剤溶液に投入し、懸濁溶液を調製した。
【0082】
次いで、pH調整剤として水酸化ナトリウムを使用し、pHが13となるように懸濁溶液のpHを調整し、さらに該懸濁溶液を湯浴上で60℃に加温した。
【0083】
次に、硫黄化合物として硫化ナトリウムを用意した。そして、撹拌羽根を使用して懸濁溶液を撹拌しながら硫化ナトリウムを前記懸濁溶液に添加し、Pdと硫化ナトリウムとを30分間反応させ、その後ろ過し、水洗した後、乾燥させ、これにより試料番号1の金属粉末を得た。
【0084】
次に、この金属粉末を導電性材料とした内部電極用導電性ペーストを作製した。
【0085】
まず、バインダ樹脂としてエチルセルロース樹脂、有機溶剤としてα―テルピネオールを用意し、エチルセルロース樹脂とα―テルピネオールとの混合比率が、体積比率で、1:9となるようにエチルセルロース樹脂をα―テルピネオール中に溶解させ、これにより有機ビヒクルを作製した。
【0086】
次に、金属粉末が45重量%となるように、金属粉末と有機ビヒクルとを混合し、三本ロールミルを使用して分散・混練させ、これにより上記金属粉末を導電性材料とした内部電極用導電性ペーストを作製した。
【0087】
次に、この内部電極用導電性ペーストを使用して積層セラミックコンデンサを作製した。
【0088】
すなわち、まず、チタン酸バリウムを主成分とするセラミック原料粉末を用意した。
【0089】
次に、このセラミック原料粉末をポリビニルブチラール系の有機バインダ、エタノール等の有機溶剤、及びPSZボールと共に、ボールミルに投入して湿式混合し、セラミックスラリーを作製した。次いで、ドクターブレード法を使用してセラミックスラリーを成形加工し、セラミックグリーンシートを作製した。
【0090】
次いで、上述した内部電極用導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施し、前記セラミックグリーンシートの表面に所定パターンの導電膜を形成した。
【0091】
次いで、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層し、導電膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持し、圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製した。そしてこの後、温度350℃で脱バインダ処理を行ない、さらに、大気雰囲気中、焼成温度1200℃で約2時間焼成処理を行なった。これにより導電膜とセラミックグリーンシートとが共焼結され、内部電極が埋設されたセラミック素体が得られた。
【0092】
次に、セラミック素体の両端面にAgを主成分とする外部電極用導電性ペーストを塗布し、700℃の温度で焼付処理を行い、外部電極を形成した。その後、電解めっきを施し、外部電極の表面にNi皮膜及びSn皮膜を順次形成し、これにより試料番号1の試料(積層セラミックコンデンサ)を作製した。得られた試料の外形寸法は、長さL:2.0mm、幅W:1.2mm、厚みT:1.2mmであり、有効積層数は100層であった。
【0093】
(試料番号2)
平均粒径0.4μmのPd粒子と水酸化ナトリウム溶液を混合した後、pH調整剤を添加してpHが13の懸濁溶液を作製し、湯浴上で60℃に加温した。次いで、この懸濁溶液をろ過した後、水洗し、乾燥して試料番号2の金属粉末を作製した。
【0094】
その後はこの金属粉末を導電性材料に使用し、試料番号1と同様の方法・手順で導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを使用して試料番号2の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0095】
(試料番号3)
試料番号1と同様の方法・手順で、Pd粒子を還元剤溶液に投入し、pH調整剤を使用してpHが13となるように調整された懸濁溶液を作製した。次いで、この懸濁溶液を湯浴上で加温して60℃の温度に保持した後、ろ過し、水洗した後乾燥し、試料番号3の金属粉末を得た。
【0096】
その後は、試料番号1と同様の方法・手順で、試料番号3の金属粉末を導電性材料とした導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを使用して試料番号3の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0097】
(試料番号4)
平均粒径0.4μmのPd粒子を水酸化ナトリウム溶液に溶解させ、pH調整剤を添加してpHが13の懸濁溶液を作製し、湯浴上で60℃に加温した。次いで、この懸濁溶液に硫化ナトリウムを添加し、Pd粒子と硫化ナトリウムとを接触させた。その後ろ過した後、水洗し、乾燥して試料番号4の金属粉末を作製した。
【0098】
その後はこの金属粉末を導電性材料に使用し、試料番号1と同様の方法・手順で導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを使用して試料番号4の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0099】
(試料番号5)
Pd粒子をスラリー化してPd粉末スラリーを作製した後、該Pd粉末スラリーにNaSを添加し、その後、250℃の温度で気流乾燥を行い、次いで、大気中、200℃で加熱処理を行い、試料番号5の金属粉末を作製した。
【0100】
その後は、試料番号1と同様の方法・手順で、金属粉末を導電性材料に使用した導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを使用して試料番号5の試料を作製した。
【0101】
〔試料の評価〕
試料番号1〜5の各試料について、金属粉末中の硫黄濃度、Pd粒子表面における硫化物形成の有無、内部電極の電極被覆率を測定し、構造欠陥の発生状態を評価した。
【0102】
ここで、金属粉末中の硫黄濃度はCS計を使用して測定した。
【0103】
また、前記硫化物形成の有無は、以下の方法で確認した。
【0104】
X線光電子分光分析装置(XPS装置)(フィジカル・エレクトロニクス社製クオンタム2000)を使用し、金属粉末中の硫黄の化学状態を分析した。すなわち、XPS装置で得られるS2pスペクトルから、S2-の状態を示す第1のピークとSO2- の状態を示す第2のピークとを求め、(第1のピーク)/(第1のピーク+第2のピーク)が30%以上の試料を硫化物が形成されていると判断した。
【0105】
内部電極の電極被覆率は、試料各5個について、以下の方法で測定した。
【0106】
すなわち、焼結後の各試料を積層方向の中央部で切断し、切断面を光学顕微鏡で観察し、画像解析を行なって内部電極の理論面積に対する実測面積の面積比率を算出し、その平均値を求め、電極被覆率とした。
【0107】
構造欠陥の発生状態は、試料1〜5の各試料400個について、以下の方法でクラックやデラミネーションが発生しているか否かを確認して評価した。
【0108】
すなわち、まず、各試料について目視で外観検査を行い、クラックが生じているか否かを確認した。
【0109】
次に、長さL、厚みTを有する試料のLT面が上面となるように、試料を超音波顕微鏡の所定位置に配し、該超音波顕微鏡で異常が生じているか否かを確認した。そして、該超音波顕微鏡で観察した結果、異常が生じていると判断した場合は、更に研磨処理を行ない、内部の異常状態を確認した。そして、L方向に10μm以上のデラミネーション及びクラックのうちの少なくともいずれか一方が生じている試料個数を計数し、全試料に対する比率を算出して構造欠陥発生率を求めた。
【0110】
そして、構造欠陥発生率が、1%未満の試料を優(◎)、1%以上3%未満を良(○)、3%以上5%未満を可(△)、5%以上を不良(×)と判断し、構造欠陥の発生状態を評価した。
【0111】
表1は、試料番号1〜4の各試料について、金属粉末の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0112】
【表1】
【0113】
試料番号2は、還元処理も硫黄含有物の添加処理も行なっていないPd粒子を使用しているため、構造欠陥の発生個数が多くなり、評価結果が不良となった。これは、Pd粒子の表面に硫化物が形成されていないため、脱脂処理時にPd粒子の触媒作用によってバインダ樹脂の急激な燃焼が生じ、その結果、試料の内部圧力が上昇してデラミネーションやクラック等の構造欠陥の発生個数が多くなったものと思われる。
【0114】
試料番号3は、還元処理は行っているものの、Pd粒子に対して硫黄含有物の添加処理を行なっていないため、試料番号2と同様の理由から構造欠陥の発生個数が多くなり、評価結果は不良となった。
【0115】
試料番号4は、硫黄含有物の添加処理は行っているものの、構造欠陥の発生個数が多くなり、評価結果が不良となった。すなわち、試料番号4では、Pd粒子に対し還元処理を行なっていないため、Pd粒子の表面にはPd酸化物が形成されていると考えられる。そして、Pd酸化物と硫黄化合物とは反応し難いことから、Pd粒子の表面には硫化物が形成されず、その結果、試料番号2や試料番号3と同様、構造欠陥の発生個数が多くなったものと思われる。
【0116】
試料番号5は、電極被覆率が58%と低く、構造欠陥の発生個数も多く、評価結果が不良となった。これはPd粒子の表面に硫黄化合物が形成されているものの、熱処理を行っているため、Pd粒子同士が凝結し、このため導電性ペースト中に粒径が粗大化したPd粒子が混在し、良好な平滑性を有する導電膜を形成することができず、電極被覆率の低下や構造欠陥の発生個数が多くなったものと思われる。
【0117】
これに対し試料番号1は、Pd粒子に還元処理を行った後にヒドラジン(還元剤)の存在下、硫化ナトリウム(硫黄含有物)を添加し、これによりPd粒子の表面に硫化パラジウム(硫化物)を形成しているので、電極被覆率は72%と大きく、また構造欠陥発生率も1%未満と良好であり、信頼性の良好な積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【実施例2】
【0118】
試料番号1と同様の方法・手順で還元剤としてのヒドラジン及び金属粒子としてのPd粒子を含有した懸濁溶液を作製し、次いで、試料番号1と同様、pHが13となるようにpH調整剤でpH調整を行ない、さらに該懸濁溶液を60℃の温度に保持した。
【0119】
次に、表2に示す硫黄含有物を用意した。そして、撹拌羽根を使用して懸濁溶液を撹拌しながら硫黄含有物を前記懸濁溶液に添加し、Pdと硫黄含有物とを反応させ、その後ろ過し、水洗した後、乾燥し、これにより試料番号11〜16の金属粉末を得た。
【0120】
そしてその後は、この金属粉末を使用し、試料番号1と同様の方法・手順で、試料番号11〜16の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0121】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0122】
表2は、試料番号11〜16の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0123】
【表2】
【0124】
この表2から明らかなように、硫黄含有物として、硫化アンモニウム、硫黄単体、水硫化ナトリウムや水硫化アンモニウムなどの水流化物、多硫化ナトリウムや多硫化アンモニウムなどの多流化物等、各種硫化物や硫黄単体を使用した場合であっても、硫化ナトリウムを硫黄含有物に使用した場合と同様、Pd粒子の表面に硫化物が形成され、構造欠陥発生率も1%未満であり、良好な結果が得られることが分かった。
【実施例3】
【0125】
試料番号1と同様の方法・手順で表3に示す還元剤と金属粒子としてのPd粒子を含有した懸濁溶液を作製し、次いで、pHが13となるようにpH調整剤でpH調整を行ない、さらに該懸濁溶液を60〜150℃の温度に保持した。
【0126】
次に、撹拌羽根を使用して懸濁溶液を撹拌しながら硫化ナトリウムを前記懸濁溶液に添加し、Pdと各種硫黄含有物とを反応させ、その後、ろ過し、水洗した後、乾燥し、これにより試料番号21〜29の金属粉末を得た。
【0127】
そしてその後は、この金属粉末を使用し、試料番号1と同様の方法・手順で、試料番号21〜29の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0128】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0129】
表3は、試料番号21〜29の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0130】
【表3】
【0131】
この表3から明らかなように、還元剤として、三塩化チタン、次亜リン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素ガス、1−ブタノール、及びジエチレングリコールを使用した場合であっても、ヒドラジンを還元剤に使用した場合と同様、Pd粒子の表面に硫化物が形成され、構造欠陥発生率も1%未満であり、良好な結果が得られることが分かった。
【実施例4】
【0132】
金属粒子として平均粒径0.3μmのAg粒子、平均粒径0.5μmのCu粒子、平均粒径0.2μmのNi粒子を用意した。
【0133】
次いで、試料番号1と同様の方法・手順で還元剤としてのヒドラジンと前記各金属粒子を含有した懸濁溶液を作製し、次いで、試料番号1と同様、pHが13となるようにpH調整剤でpHを調整し、さらに該懸濁溶液を60℃の温度に保持した。
【0134】
次に、撹拌羽根を使用して懸濁溶液を撹拌しながら硫黄成分含有物としての硫化ナトリウムを前記懸濁溶液に添加し、各金属粒子と硫化ナトリウムとを反応させ、その後ろ過し、水洗した後乾燥させ、これにより試料番号41〜43の金属粉末を得た。
【0135】
また、金属粒子として、いずれも平均粒径0.2μmのAg粒子、Cu粒子、及びNi粒子を用意した。
【0136】
そして、これらの金属粒子を使用し、試料番号2と同様の方法・手順で還元処理や硫黄含有物の添加処理を行なわなかった試料番号44〜46の金属粉末を作製した。
【0137】
次いで、試料番号41〜46の金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号41〜46の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。ただし、金属粉末がNi粉末及びCu粉末の各試料については、酸素分圧が10-10MPaに調整されたH−N−HOガスからなる還元雰囲気下で焼成処理を行った。
【0138】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0139】
表4は、試料番号41〜46の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0140】
【表4】
【0141】
試料番号44〜46は、還元処理も硫黄含有物の添加処理も行なっていない金属粒子(Ag粒子、Cu粒子、Ni粒子)を使用しているため、金属粒子の表面に硫化物が形成されることはなく、試料番号2(実施例1参照)と同様の理由から、構造欠陥の発生個数が多くなり、評価結果は不良となった。
【0142】
これに対し試料番号41〜43は、還元処理及び硫化ナトリウムの添加処理を行なった金属粒子(Ag粒子、Cu粒子、Ni粒子)を使用していることから、試料番号1と同様、金属粒子の表面に硫化物が形成され、その結果、構造欠陥発生率も1%未満であり、良好な結果が得られた。
【0143】
そして、このようにPd以外のAg、Cu、Niについても、Pdと同様、本発明の製造方法を適用できることが確認された。
【実施例5】
【0144】
硫黄含有物としての硫化ナトリウムの添加量を種々異ならせた以外は、試料番号1と同様の方法・手順で試料番号51〜59の金属粉末を作製した。
【0145】
そしてその後は、これらの金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号51〜59の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0146】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに電極被覆率を測定し、構造欠陥の発生状態を評価した。
【0147】
表5は、試料番号51〜59の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0148】
【表5】
【0149】
試料番号51は、硫化物が形成され、電極被覆率も72%と良好であり、構造欠陥発生率も5%未満であったが、金属粉末中の硫黄濃度が0.001質量%と低いため、構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干多くなった。これは金属粉末中の硫黄濃度が0.001質量%と低くなると、Pd粒子の表面を硫化物で被覆するのが困難となり、表面露出したPd粒子がバインダ樹脂と接触し、Pd粒子の触媒作用によってバインダ樹脂の急激な燃焼を招くためと思われる。
【0150】
これに対し試料番号52〜59は、金属粉末中の硫黄濃度が0.01〜5質量%の範囲にあるので、構造欠陥発生率を3%未満に抑制できた。また、硫黄濃度が0.05〜2質量%の範囲で構造欠陥発生率を1%未満に抑制でき、より信頼性の良好な積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【0151】
このように構造欠陥の発生率をより一層抑制する観点からは、金属粉末中の硫黄濃度は、0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%であることが確認された。
【0152】
尚、硫黄濃度が5質量%になると電極被覆率が67%に低下している。したがって、硫黄濃度が5質量%を超えると電極被覆率は更に低下するものと考えられるが、これは硫黄濃度が多くなると、導電性材料中で硫黄成分が増加して金属成分の比率が低下することから、電極被覆率の低下を招くものと思われる。
【実施例6】
【0153】
金属粒子として、平均粒径が種々異なるPd粒子を使用した以外は、試料番号1と同様の方法・手順で試料番号61〜67の金属粉末を作製した。
【0154】
そしてその後は、これらの金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号61〜67の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0155】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物の形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0156】
表6は、試料番号61〜67の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0157】
【表6】
【0158】
試料番号61は、硫化物が形成され、構造欠陥発生率も5%未満であったが、Pd粒子の平均粒径が0.005μmと小さく、このため構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干多くなった。これは平均粒径が0.005μm程度に小さくなると、Pd粒子の比表面積が増加し、すべてのPd粒子の表面を硫化物で被覆するには、硫黄濃度を増加させる必要がある。そのため試料番号61では硫黄濃度を1.0質量%に増加させているが、それでもPd粒子の全表面を硫化物で被覆するのが困難になることが分かった。
【0159】
これに対し試料番号62〜67は、Pd粒子の平均粒径は0.01〜2μmの範囲にあるので、硫黄濃度が0.1〜0.5質量%であっても構造欠陥発生率を3%未満に抑制できた。また、平均粒径が0.05〜2質量%の範囲で構造欠陥発生率を1%未満に抑制でき、構造欠陥の発生個数がより低減された信頼性の良好な積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【0160】
このように構造欠陥の発生率をより一層抑制する観点からは、Pd粒子の平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.1μm以上であることが確認された。
【0161】
尚、試料番号66と試料番号67との対比から明らかなように、平均粒径が1μm以上になると硫黄濃度を増加させなくても、構造欠陥の発生について良好な結果が得られていることから、金属粒子の平均粒径は1μm以下が好ましいと考えられる。
【実施例7】
【0162】
金属粒子として、平均粒径が0.2μm、0.4μmのNi粒子を使用し、pH調整剤を使用して懸濁溶液のpHを種々異ならせた以外は、試料番号1と同様の方法・手順で試料番号71〜76の金属粉末を作製した。
【0163】
そしてその後は、これらの金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号71〜76の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0164】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物の形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0165】
表7は、試料番号71〜76の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0166】
【表7】
【0167】
試料番号71は、硫化物が形成され、構造欠陥発生率も5%未満であったが、懸濁溶液のpHが2と小さく、このため構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干多くなった。これは試料番号71では懸濁溶液が強酸性であるため、Ni粒子の一部が懸濁溶液中に溶解し、Ni粒子の表面を硫化物で被覆されない金属粉末が生じたためと思われる。
【0168】
これに対し試料番号72〜76は、懸濁溶液のpHを5以上に調整しているので、構造欠陥発生率を3%未満に抑制できた。また、懸濁溶液のpHが7以上の範囲で構造欠陥発生率を1%未満に抑制でき、構造欠陥の発生個数がより低減された信頼性の良好な積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【0169】
このように構造欠陥の発生率をより一層抑制する観点からは、pHは金属粒子が懸濁溶液に溶解しない範囲、すなわちpHは2を超えているのが好ましく、より好ましくは5を超えているのが良いことが確認された。
【実施例8】
【0170】
Pd粒子と硫化ナトリウムとの反応温度を種々異ならせた以外は、試料番号1と同様の方法・手順で試料番号81〜87の金属粉末を作製した。
【0171】
そしてその後は、これらの金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号81〜87の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0172】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0173】
表8は、試料番号81〜87の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0174】
【表8】
【0175】
試料番号81は、硫化物が形成され、構造欠陥発生率も5%未満であったが、反応温度が10℃と低く、このため構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干多くなった。これは反応温度が10℃と低いため、懸濁溶液内での還元反応や硫化物の生成反応が進行し難く、このためPd粒子の全表面を硫化物で被覆できなかったものと考えられる。
【0176】
一方、試料番号87も、硫化物が形成され、構造欠陥発生率も5%未満であったが、反応温度が300℃と高く、このため構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干多くなった。これは反応温度が300℃と高いため、硫化物の生成反応が局部的に進行し、このためPd粒子の表面を硫化物で均一に被覆できなかったものと考えられる。
【0177】
これに対し試料番号82〜86は、反応温度を20〜200℃と適度な温度範囲に調整しているので、構造欠陥発生率を3%未満に抑制できた。また、60〜200℃の範囲では構造欠陥発生率を1%未満に抑制でき、構造欠陥の発生個数がより低減された信頼性の良好な積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【0178】
このように構造欠陥の発生率をより一層抑制する観点からは、反応温度は20〜200℃が好ましく、より好ましくは60〜200℃であるのがあるのが確認された。
【参考例】
【0179】
上述した本発明では、金属粒子2の表面に形成された酸化皮膜6を還元除去し、その後還元剤の存在下、金属粒子2と硫黄含有物とを反応させているが、金属塩溶液と還元剤溶液とを接触させて酸化還元反応を生じさせ、これにより金属粒子を生成し、その後還元剤の存在下、金属粒子と硫黄含有物とを反応させてもよい。
【0180】
この場合、以下のような方法で金属粉末を作製することができる。
【0181】
まず、金属塩を用意する。ここで、金属塩としては還元剤により還元されて容易に金属粒子に還元できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、硫酸ニッケル・6水和物(NiSO・6HO)、硝酸銀(AgNO)、硫酸銅・五水和物(CuSO・5HO)、硫酸パラジウム(PdSO)等を使用することができる。
【0182】
そして、錯化剤等を含有した水溶液中に前記金属塩を溶解させ、これにより金属塩水溶液を作製する。ここで、錯化剤としては特に限定されるものではなく、例えば、クエン酸三ナトリウム、マロン酸、グリシン、ニトリロ三酢酸等を使用することができる。
【0183】
次に、本発明と同様、還元剤を含有した還元剤溶液を用意する。
【0184】
そして、これら金属塩水溶液と還元剤溶液とを所定温度下で加温しながら混合させ、酸化還元反応を生じさせる。すると、金属イオンが金属に還元され、これにより、微粒の金属粒子が生成される。その後はこの還元剤の存在下、上記実施の形態と同様の方法で金属粒子と硫黄含有物とを反応させ、これにより硫化物を主成分とする金属化合物で被覆された金属粉末を作製することができる。
【0185】
このように表面に酸化皮膜6が形成された金属粒子2に代えて金属塩を出発原料とした場合であっても、金属粒子同士が凝結することもなく、金属化合物で被覆された金属粉末を得ることができる。
【0186】
そしてこの金属粉末を導電性材料に使用することにより、上述したように平滑性の良好な導電膜を得ることができ、良好な電極被覆率を有する積層セラミックコンデンサを得ることができる。また、金属の触媒作用を抑制できることから脱脂処理時にバインダ樹脂が急激な燃焼を生じることもなく、クラックやデラミネーション等の構造欠陥の発生が抑制された積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0187】
下の参考例1〜8では、金属粒子に代えて金属塩を使用し、効果を確認した。
【0188】
[参考例1]
〔試料の作製〕
(試料番号91)
まず、水酸化ナトリウム:240gを水:700mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液に、抱水ヒドラジン:300g(ヒドラジン濃度:60重量%)を添加し、さらに水を加えて、全量が1500mLの還元剤水溶液を調整した。
【0189】
また、硫酸ニッケル・六水和物(NiSO・6HO):517gおよび硫酸銅・五水和物(CuSO・5HO):0.05g、錯化剤としてクエン酸三ナトリウム:0.9molを水に溶解させ、これによりニッケルイオン及び錯化剤を含有した全量が1500mLの金属塩溶液を調製した。
【0190】
そして、これら還元剤溶液及び金属塩溶液を湯浴上でそれぞれ60℃に加温し、その後還元剤溶液に金属塩溶液を添加し、ヒドラジンと硫酸ニッケル・六水和物とを反応させてニッケルイオンを還元し、Ni粒子が生成された懸濁溶液を作製した。
【0191】
この後、懸濁溶液のpHが13となるようにpH調整剤を使用して調整し、湯浴上で60℃に加温しながら硫化ナトリウムを添加し、これによりNi粒子と硫化ナトリウムとを反応させ金属粉末を含有した反応溶液を得た。そして、この反応溶液をろ過し、水洗した後、乾燥させて試料番号91の金属粉末を得た。
【0192】
そして、この反応後の金属粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析して平均粉末径を求めたところ、平均粉末径は0.2μmであった。
【0193】
その後はこの金属粉末を使用し、試料番号1と同様の方法・手順で導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを使用して試料番号91の積層セラミックコンデンサを得た。
【0194】
(試料番号92)
試料番号91と同様の方法・手順で、硫酸ニッケル・六水和物をヒドラジンで還元させてNi粒子を作製し、その後、湯浴上で60℃に加温し、pH調整剤を使用してpHを13に調整して懸濁溶液を得た。次いで、この懸濁溶液をろ過し、水洗した後、乾燥させて試料番号92の金属粉末を得た。
【0195】
この金属粉末についても試料番号91と同様、平均粉末径を求めたところ、0.2μmであった。
【0196】
その後は実施例1と同様の方法・手順で導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを使用して試料番号92の積層セラミックコンデンサを得た。
【0197】
(試料番号93)
試料番号91と同様の方法・手順で硫酸ニッケル・六水和物をヒドラジンで還元させてNi粒子を作製した。
【0198】
次いで、このNi粒子の粉末にヒドラジン溶液(ヒドラジン濃度:5重量%)を添加し、その後、湯浴上で60℃に加温し、pH調整剤を使用してpHを13に調整し、懸濁溶液を得た。その後、この懸濁溶液をろ過し、乾燥させて試料番号93の金属粉末を得た。
【0199】
そして、この金属粉末についても、試料番号91と同様、平均粉末径を求めたところ、平均粉末径は0.2μmであった。
【0200】
その後はこの金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを使用して試料番号93の積層セラミックコンデンサを得た。
【0201】
(試料番号94)
試料番号91と同様の方法・手順で硫酸ニッケル・6水和物をヒドラジンで還元させてNi粒子を作製し、その後、湯浴上で60℃に加温し、pH調整剤を使用してpHを13に調整して懸濁溶液を得た。
【0202】
そして、この懸濁溶液を湯浴上で60℃に加温しながら硫化ナトリウムを添加し、これによりNi粒子と硫化ナトリウムとを反応させ金属粉末を含有した反応溶液を得た。そして、この反応溶液をろ過し、水洗した後、乾燥させて試料番号94の金属粉末を得た。
【0203】
この金属粉末についても試料番号91と同様、平均粉末径を求めたところ、0.2μmであった。
【0204】
その後は実施例1と同様の方法・手順で導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを使用して試料番号94の積層セラミックコンデンサを得た。
【0205】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物の形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0206】
表9は、試料番号91〜94の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0207】
【表9】
【0208】
試料番号92は、還元処理も硫黄化合物の添加処理も行なっていないNi粒子を使用しているため、Ni粒子の表面に硫化物が形成されることはなく、実施例1の試料番号2と同様の理由から構造欠陥の発生個数も多くなり、評価結果は不良となった。
【0209】
試料番号93は、還元処理は行っているものの、Ni粒子に対して硫黄含有物の添加処理を行なっておらず、上記試料番号2と同様の理由から構造欠陥の発生個数も多くなり、評価結果は不良となった。
【0210】
試料番号94は、硫化ナトリウムの添加処理は行っているものの、Ni粒子に対し還元処理を行なっていないため、実施例1の試料番号4と同様の理由から構造欠陥の発生個数も多くなり、評価結果は不良となった。
【0211】
これに対し試料番号91は、硫酸ニッケル・6水和物に還元処理を行った後に還元剤の存在下、硫化ナトリウムを添加し、これによりNi粒子の表面に硫化物を形成しているので、構造欠陥発生率は1%未満と良好であり、したがって、良好な電極被覆率を有し、かつ構造欠陥の発生個数が低減された信頼性の高い積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【0212】
[参考例2]
試料番号91と同様の方法・手順でNi粒子を還元生成し、pHが13となるようにpH調整剤でpH調整を行ない、さらに該懸濁溶液を60℃の温度に保持した。
【0213】
次に、表10に示す硫黄含有物を用意した。そして、撹拌羽根を使用して懸濁溶液を撹拌しながら硫黄成分含有物を前記懸濁溶液に添加し、Ni粒子と硫黄含有物とを反応させ、その後ろ過して水洗した後、乾燥させ、これにより試料番号101〜106の金属粉末を得た。
【0214】
そしてその後は、この金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号101〜106の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0215】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0216】
表10は、試料番号101〜106の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0217】
【表10】
【0218】
この表10から明らかなように、硫黄含有物として、硫化アンモニウム、硫黄単体、水硫化ナトリウムや水硫化アンモニウムなどの水流化物、多硫化ナトリウムや多硫化アンモニウムなどの多硫化物等、各種硫化物や硫黄単体を使用した場合であっても、硫化ナトリウムの場合と同様、Ni粒子の表面に硫化物が形成され、構造欠陥発生率も1%未満となり、良好な結果が得られることが分かった。
【0219】
[参考例3]
表11に示す還元剤を使用してNi粒子を作製した以外は、試料番号91と同様の方法で試料番号111〜114の金属粉末を作製した。ただし、Ni粒子と硫化ナトリウムの反応は、試料111〜113では温度を60℃に保持し、試料番号114では温度を150℃に保持して行なった。
【0220】
そしてその後は、この金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号111〜114の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0221】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0222】
表11は、試料番号111〜114の各試料の作製条件、及び測定結果を示している。
【0223】
【表11】
【0224】
この表11から明らかなように、還元剤として、三塩化チタン、次亜リン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム、水素ガスを使用した場合であっても、ヒドラジンの場合と同様、Ni粒子の表面に硫化物が形成され、構造欠陥発生率も1%未満となり、良好な結果が得られることが分かった。
【0225】
[参考例4]
金属塩として硝酸銀(AgNO)、硫酸銅・五水和物(CuSO・5HO)、硫酸パラジウム(PdSO)を用意した。
【0226】
次いで、試料番号91と略同様の方法・手順で金属粒子を還元生成し、次いで、試料番号91と同様、pHが13となるようにpH調整剤でpH調整を行ない、さらに該懸濁溶液を60℃の温度に保持した。
【0227】
次に、撹拌羽根を使用して懸濁溶液を撹拌しながら硫黄成分含有物としての硫化ナトリウムを前記懸濁溶液に添加し、金属粒子と硫化ナトリウムとを反応させ、その後、ろ過して水洗し、乾燥し、これにより試料番号121〜123の金属粉末を得た。
【0228】
また、上記金属塩を使用し、試料番号92と同様の方法・手順で還元処理や硫黄含有物の添加処理を行なわなかった試料番号124〜126の金属粉末を作製した。
【0229】
次いで、この金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号121〜126の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0230】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物の形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0231】
表12は、試料番号121〜126の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0232】
【表12】
【0233】
試料番号124〜126は、還元処理も硫黄化合物の添加処理も行なっていない無垢の金属粒子(Ag粒子、Cu粒子、Ni粒子)を使用しているため、金属粒子の表面に硫化物が形成されることはなく、試料番号2(実施例1参照)と同様の理由から、構造欠陥の発生個数も多く、評価結果は不良となった。
【0234】
これに対し試料番号121〜123は、還元処理及び硫化ナトリウムの添加処理を行なった金属粉末を使用していることから、試料番号1と同様、金属粒子の表面に硫化物が形成され、その結果構造欠陥発生率も1%未満となり、良好な結果が得られることが分かった。
【0235】
このようにPd以外のAg、Cu、Niについても、本発明の製造方法を適用できることが確認された。
【0236】
[参考例5]
硫黄含有物としての硫化ナトリウムの添加量を種々異ならせた以外は、試料番号91と同様の方法・手順で試料番号131〜138の金属粉末を作製した。
【0237】
そしてその後は、これらの金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号131〜138の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0238】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに電極被覆率を測定し、構造欠陥の発生状態を評価した。
【0239】
表13は、試料番号131〜138の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0240】
【表13】
【0241】
試料番号131は、硫化物が形成され、電極被覆率も74%と良好であり、構造欠陥発生率も5%未満であったが、金属粉末中の硫黄濃度が0.001質量%と低いため、実施例5の試料番号51と同様の理由から、構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干大きくなった。
【0242】
これに対し試料番号132〜138は、金属粉末中の硫黄濃度が0.01〜5質量%の範囲にあるので、構造欠陥発生率を3%未満に抑制できた。また、硫黄濃度が0.05〜2質量%の範囲で構造欠陥発生率を1%未満に抑制でき、構造欠陥の発生個数がより低減された信頼性の良好な積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【0243】
このように出発原料に金属塩を使用した場合も、実施例5と同様の結果が得られた。
【0244】
[参考例6]
懸濁溶液に含有される錯化剤(クエン酸三ナトリウム)の添加量を異ならせ、これにより平均粉末径の異なる試料番号141〜146の金属粉末を作製した。
【0245】
そしてその後は、これらの金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号141〜146の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0246】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物の形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0247】
表14は、試料番号141〜146の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0248】
【表14】
【0249】
試料番号141は、硫化物が形成され、構造欠陥発生率も5%未満であったが、金属粉末の平均粉末径が0.005μmと小さく、実施例6の試料番号61と同様の理由から構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干大きくなった。
【0250】
これに対し試料番号142〜146は、Ni粉末の平均粉末径は0.01〜1μmの範囲にあるので、構造欠陥発生率を3%未満に抑制できた。また、平均粉末径が0.1〜1質量%の範囲で構造欠陥発生率を1%未満に抑制でき、構造欠陥の発生個数がより低減された信頼性の良好な積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【0251】
[参考例7]
pH調整剤を使用して懸濁溶液のpHを種々異ならせた以外は、試料番号91と同様の方法・手順で試料番号151〜157の金属粉末を作製した。
【0252】
そしてその後は、これらの金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号151〜157の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0253】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0254】
表15は、試料番号151〜157の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0255】
【表15】
【0256】
試料番号151、152は、硫化物が形成され、構造欠陥発生率も5%未満であったが、懸濁溶液のpHが2以下と小さく、実施例7の試料番号71と同様の理由から構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干大きくなった。
【0257】
これに対し試料番号153〜157は、懸濁溶液のpHを5以上に調整しているので、構造欠陥発生率を3%未満に抑制できた。また、懸濁溶液のpHが7以上の範囲で構造欠陥発生率を1%未満に抑制でき、構造欠陥の発生個数がより低減された信頼性の良好な積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【0258】
このように実施例7と同様、構造欠陥の発生率をより一層抑制する観点からは、pHは2を超えているのが好ましく、より好ましくは5を超えているのが良いことが確認された。
【0259】
[参考例8]
Ni粒子と硫化ナトリウムの反応温度を種々異ならせた以外は、試料番号91と同様の方法・手順で試料番号161〜167の金属粉末を作製した。
【0260】
そしてその後は、これらの金属粉末を使用し、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号161〜167の導電性ペースト、及び積層セラミックコンデンサを作製した。
【0261】
次いで、実施例1と同様の方法・手順で硫黄濃度を測定し、硫化物形成の有無を確認し、さらに構造欠陥の発生状態を評価した。
【0262】
表16は、試料番号161〜167の各試料の作製条件、及び測定・評価結果を示している。
【0263】
【表16】
【0264】
試料番号161は、硫化物が形成され、構造欠陥発生率も5%未満であったが、反応温度が10℃と低く、実施例8の試料番号81と同様の理由から構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干大きくなった。
【0265】
一方、試料番号167も、硫化物が形成され、構造欠陥発生率も5%未満であったが、反応温度が300℃と高く、実施例8の試料番号87と同様の理由から構造欠陥発生率は3%以上となり、構造欠陥の発生個数が若干多くなった。
【0266】
これに対し試料番号162〜166は、反応温度を20〜200℃と適度な温度範囲に調整しているので、構造欠陥発生率を3%未満に抑制できた。また、さらに60〜200℃の範囲では構造欠陥発生率を1%未満に抑制でき、構造欠陥の発生個数がより低減された信頼性の良好な積層セラミックコンデンサが得られることが分かった。
【0267】
このように実施例8と同様、構造欠陥の発生率をより一層抑制する観点からは、反応温度は20〜200℃が好ましく、より好ましくは60〜200℃であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0268】
積層セラミック電子部品用内部電極の導電性材料に使用しても、金属粉末作製時に金属粒子が凝結したり、脱脂処理時にバインダ樹脂が急激な燃焼を生じることもなく、良好な電極被覆率を確保し、かつ構造欠陥の発生を抑制できるようにした。
【符号の説明】
【0269】
1 金属粉末
2 金属粒子
3 金属化合物
6 酸化皮膜
7 セラミック素体
8a〜8f 内部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6