(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
木造軸組における左右の柱の間に壁板としての横長帯板状の横架材を水平方向に相対変位可能な状態で上下方向に多段に積み重ねるとともに、前記横架材の相互間の横目地部に制震デバイスとして機能する板ダボを介装してなり、前記木造軸組の水平変形により前記横架材どうしが水平方向に相対変位した際に前記板ダボと前記横架材との間に生じる摩擦力によって制震効果を得る構成の木造軸組における制震板壁の構造であって、
前記横架材の両端部を前記柱に対して上下方向に相対回転可能にピン接合するとともに、前記横架材の両端部の木口面と前記柱との間に、前記柱に対する前記横架材の上下方向の相対回転を許容するためのクリアランスを確保してなり、
前記横架材を力貫とその上段に積み重ねてダボにより相対変位不能に一体に連結した力板とにより構成するとともに、前記柱には前記横架材の端部を装着するための縦溝を上下方向に連続せしめて形成し、
前記横架材における前記力貫の両端上部に蟻ホゾを形成するとともに、前記縦溝の底部に前記蟻ホゾに対応するホゾ穴を形成して、前記柱に対して前記横架材をピン接合するための仕口を下げ鎌とし、
前記横架材としての前記力貫および前記力板の両端部の木口面を前記蟻ホゾを中心としてその上下が漸次後退する傾斜面として形成することにより、該傾斜面としての前記木口面と前記縦溝の底面との間に前記クリアランスを形成するとともに、該クリアランスの大きさが前記縦溝の深さの範囲内で前記蟻ホゾからその上下に向かって漸次拡大するように形成されてなることを特徴とする木造軸組における制震板壁の構造。
【背景技術】
【0002】
周知のように、寺社建築に代表される我国の伝統的な木造建築は柱や貫と土壁等による木造軸組を主体とするものであり、そのような伝統的な木造軸組において構造的に有効な板壁を構成する方法についてはたとえば特許文献1〜3に開示がある。
【0003】
図9〜
図10はこの種の木造軸組および板壁の基本的な構造を示すものである。
これは、左右の柱1間にたとえば桧材からなる横長帯板状の壁板2を上下方向に多段に積み重ねた状態で装着して板壁を形成するものであるが、特に壁板2として力貫3と力板4とを交互に組み合わせて使用するものである。
具体的には、
図10(b)に示すように、柱1には各壁板2の端部を装着するための縦溝1aを上下方向に連続して形成し、力貫3の両端上部に蟻ホゾ3aを形成するとともに、その蟻ホゾ3aに対応するホゾ穴1bを縦溝1aの底部に形成している。
そして、ホゾ穴1bに対して蟻ホゾ3aを差し込んで楔5を打ち込むという下げ鎌の仕口によって力貫3を柱1に対して接合し、力板4はその両端部を縦溝1aに単に差し込んだ状態で装着するようにしている。
【0004】
この種の板壁では、各壁板2間(すなわち力貫3と力板4との間)に形成される各段の横目地に所定間隔で木製のダボ6を介装することによって、それらダボ6により上下の壁板2間の水平方向の相対変位(すなわち横ずれ)を規制するようになっている。
このような構造の木造軸組は、地震時に水平力を受けると柱1が転倒する方向に回転して軸組全体が平行四辺形状に水平変形し、その際には各段の壁板2どうしが水平方向にずれるような相対変位を生じることになるが、壁板2相互間の相対変位はダボ6により拘束されるので軸組全体が優れた水平耐力を発揮するものである。
【0005】
そして、特許文献1には上下の壁板2どうしの横ずれに対して上記のダボ6が微小変形することによる振動減衰効果が期待できるとの記載がある。
また、上記のようなダボ6による振動減衰効果をより積極的に利用するべく、特許文献2には単なる木製のダボに代えてそれよりも減衰性能に優れる制震ダボを用いる耐震板壁が提案され、特許文献2には摩擦減衰部材(すなわち摩擦ダンパー)として機能する板ダボを用いる耐震板壁が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来一般的な板壁ないし耐震板壁によれば、壁板2間に介装されるダボ6がいわば制震デバイス(制震ダンパー)として機能してそれによる制震効果が期待できるのであるが、そのような制震効果が十分に発揮されるためには木造軸組の水平変形がダボ6に対して確実に伝達されることが必要であり、そのためには木造軸組の水平変形に追随して壁板2相互間に確実かつ十分に水平変位が生じることが前提となる。
しかし、上記従来の板壁ないし耐震板壁では柱1の回転(転倒)に対して各壁板2間に相対変位が必ずしも十分に生じず、逆に壁板2自体に圧縮ストラットが生じてその水平反力により柱1の回転(転倒)を拘束してしまうものであり、そのためダボ6による制震効果を十分に発揮させたい場合には改善の余地があるとされている。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は木造軸組の壁板相互間に介装したダボを制震デバイスとして有効に機能させて優れた制震効果が得られる有効適切な制震板壁の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、木造軸組における左右の柱の間に壁板としての横長帯板状の横架材を水平方向に相対変位可能な状態で上下方向に多段に積み重ねるとともに、前記横架材の相互間の横目地部に制震デバイスとして機能する板ダボを介装してなり、前記木造軸組の水平変形により前記横架材どうしが水平方向に相対変位した際に前記板ダボと前記横架材との間に生じる摩擦力によって制震効果を得る構成の木造軸組における制震板壁の構造であって、前記横架材の両端部を前記柱に対して上下方向に相対回転可能にピン接合するとともに、前記横架材の両端部の木口面と前記柱との間に、前記柱に対する前記横架材の上下方向の相対回転を許容するためのクリアランスを確保してな
り、前記横架材を力貫とその上段に積み重ねてダボにより相対変位不能に一体に連結した力板とにより構成するとともに、前記柱には前記横架材の端部を装着するための縦溝を上下方向に連続せしめて形成し、前記横架材における前記力貫の両端上部に蟻ホゾを形成するとともに、前記縦溝の底部に前記蟻ホゾに対応するホゾ穴を形成して、前記柱に対して前記横架材をピン接合するための仕口を下げ鎌とし、前記横架材としての前記力貫および前記力板の両端部の木口面を前記蟻ホゾを中心としてその上下が漸次後退する傾斜面として形成することにより、該傾斜面としての前記木口面と前記縦溝の底面との間に前記クリアランスを形成するとともに、該クリアランスの大きさが前記縦溝の深さの範囲内で前記蟻ホゾからその上下に向かって漸次拡大するように形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、壁板としての横架材を柱に対して相対回転可能にピン接合したうえで、横架材と柱との間にはそれらの間で生じる相対回転を拘束することなく許容するためのクリアランスを確保したことによって、柱に対する横架材の相対回転が生じやすくなって横架材相互間に横ずれが確実に生じる。したがって、木造軸組の水平変形をより効率的に制震デバイスとしての板ダボに対して伝達し得て、それによる制震効果を十分に発揮させることが可能である。
【0012】
特に、横架材を従来一般的な板壁における力貫と力板とをダボにより一体化したものとしてそれを従来の板壁の場合と同様に下げ鎌の仕口により柱に対してピン接合したうえで、力貫および力板の端部に対して僅かなテーパー加工を行ってそれらの木口面と縦溝の底面との間に僅かなクリアランスを確保することのみで、優れた耐震性能を有する制震板壁を容易にかつ安価に施工することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜
図7を参照して本発明の木造軸組における制震板壁の構造の一実施形態について説明する。
図1(a)は本実施形態の制震板壁の概略構成を示す正面図、(b)はその構造モデルであり、
図2はこの制震板壁の組み立て状態を示す分解斜視図である。
なお、本実施形態の制震板壁の基本的な構造は
図9に示した従来一般的な板壁の構造を踏襲しているので、双方に共通する構成要素については同一符号を付してある。
【0015】
本実施形態では、
図2に示すように基本的には従来の板壁と同様に、木造軸組における左右の柱1の間に横長帯板状の壁板2としての力貫3と力板4とをダボ6により連結して上下方向に交互に多段に積み重ねて柱1間に装着したものであって、柱1にはそれら力貫3と力板4の端部を装着するための縦溝1aを上下方向に連続せしめて形成し、力貫3の両端上部に形成した蟻ホゾ3aをそれに対応して縦溝1aの底部に形成したホゾ穴1bに対して下げ鎌の仕口により接合し、力板4は縦溝1aに対して単に差し込んだ状態で装着したことを基本とするものである。
なお、
図1(a)における符号7、8は柱1とともに木造軸組の主構成要素である地覆および頭貫であり、9,10は必要に応じて設けられる貫および長押である。
【0016】
本実施形態では、
図2に示すように、1枚の力貫3とその上段に積み重ねられる1枚の力板4とを1組としてそれらを多数のダボ6により相対変位不能(すなわち横ずれ不能)に一体に連結することにより、その全体をこの制震板壁における基本的な構造単位としての横架材20を構成している。
なお、
図10(b)に示したように従来の板壁においては力貫3と力板4とを連結するダボ6を縦姿勢で用いていたが、本実施形態の制震板壁においては力貫3と力板4とをより確実堅固に一体化するべくダボ6を横姿勢として用いており、その本数も多くしている。
【0017】
そして、本実施形態においては、そのような横架材20どうしを水平方向に相対変位可能な状態で上下方向に多段に積み重ねて、
図1(b)に構造モデルとして示すように、それぞれの横架材20の両端部を柱1に対して上下方向に相対回転可能な状態でピン接合としたうえで、上下の横架材20の相互間の横目地部に制震デバイスとして機能する板ダボ21(後述するように実質的に摩擦ダンパーとして機能するものである)を介装することにより、木造軸組の水平変形によって横架材20どうしが水平方向に相対変位した際にその板ダボ21と横架材20との間に生じる摩擦力によって制震効果を得る構成としている。
【0018】
本実施形態における制震デバイスとしての板ダボ21は、基本的には特許文献3に示されている摩擦減衰部材と同様のものであって、
図3〜
図5に示すように、矩形板状の本体部22と、その上部に形成されている溝23内に打ち込まれる楔板24とにより構成され、楔板24を溝23内に打ち込むことによって本体部22の上部が両側に押し広げられてそこでの厚さが拡大されるようになっているものである。
楔板24の長さは本体部22よりも長くされていて、楔板24が本体部22に打ち込まれた状態では楔板24の両端部が本体部22の両側に突出するようになっている。
なお、この板ダボ21の素材は特に限定されないが、本体部22としてはたとえばベイヒバ材が好適に採用可能であり、楔板24としてはたとえばケヤキ材等の堅木が好適に採用可能である。
【0019】
そして、
図3に示すように、下段側の横架材20における力板4の上面、および上段側の横架材20における力貫3の下面には、板ダボ21の下半部および上半部を嵌合させるための下部嵌合穴25および上部嵌合穴26がそれぞれ形成されている。
この場合、下部嵌合穴25は本体部22の下半部をいずれの方向にも変位不能な状態で単に密に嵌合し得る大きさとされているが、上部嵌合穴26は楔板24を変位不能な状態でその全長を嵌合可能なように下部嵌合穴25よりも横長とされ、かつその幅寸法は、楔板24を打ち込んで押し広げられた状態の本体部22の上部両面がこの上部嵌合穴26の内面に密着してそれらの間に所望の摩擦力が生じるように、本体部22および楔板24の厚さ寸法に対応して適切に設定されている。
【0020】
この板ダボ21は、
図4に示すように下段側の横架材20における力板4と上段側の横架材20における力貫3との間に打ち込まれてそれらの間の横目地部に介装され、その状態では板ダボ21の本体部22は下段側の力板4に対して固着され、楔板24は上段側の力貫3に対して固着されることになる。
したがって、木造軸組に水平変形が生じて上下の横架材20どうしが水平方向に横ずれを生じた際には、
図5に示すように本体部22は下段側の力板4と一体に挙動するが楔板24は上段側の力貫3と一体に挙動するから、それら本体部22と楔板24との間には相対変位が生じ、その際には楔板24の両面と本体部22の溝23の内面との間、および本体部22の上半部の両面と上部嵌合穴26の内面との間の全4面において摩擦力が生じることになり、その摩擦力が上下の横架材20どうしの間に生じる相対変位(横ずれ)に対する減衰力となってこの板ダボ21は実質的に摩擦ダンパーとして機能して優れた制震効果を発揮するものである。
なお、必要に応じて上記の摩擦力すなわちこの板ダボ21による制震効果を適切に調整するべく、各摩擦面に対して所望の摩擦係数となるような適宜の加工や処理を施しておくことも好適である。
【0021】
但し、上記のような板ダボ21が摩擦ダンパーとして有効に機能するためには、上述したように木造軸組の水平変形に追随して上下の横架材20間に水平変位(横ずれ)が確実かつ十分に生じ、その水平変位が板ダボ21に対して確実に伝達される必要があるから、そのために本実施形態においては横架材20を
図6に示す構造により柱1に対して接合するようにしている。
すなわち、本実施形態においては、力貫3と力板4とにより構成される横架材20の全体の柱1に対する接合の形式を、上記のように蟻ホゾ3aとホゾ穴1bとによる下げ鎌の仕口とすることによって上下方向に相対回転可能な実質的にピン接合としたうえで、横架材20の両端部の木口面20aと柱1との間には柱1に対する横架材20の上下方向の相対回転を許容するためのクリアランス30を確保している。
【0022】
具体的には、
図6に示すように、横架材20を構成している力貫3および力板4の両端部の木口面20aを蟻ホゾ3aを中心としてその上下がそれぞれ後方に漸次後退する傾斜面として形成しており、これによりその傾斜面としての上下の木口面20aと縦溝1aの底面との間にクリアランス30が確保されるとともに、そのクリアランス30の大きさが縦溝1aの深さの範囲内で蟻ホゾ3aの位置からその上下に向かって漸次拡大するように形成されている。
この場合、この種の木造軸組においては安全限界とされる許容変形角(すなわち柱1が転倒する際の鉛直に対する回転角)がγ=1/30程度とされることが通常であるから、そのような変形が生じた際にも横架材20が縦溝1aから外れてしまうことのない範囲でクリアランス30の大きさを設定しておくことが好ましい。
例えば、力貫3および力板4の見つけ高さがそれぞれ225mmであり、縦溝1aの深さが15mmであるとした場合、クリアランス30の最大寸法を縦溝1aの深さの半分程度の8mm程度としておけば、そのクリアランス30の範囲で許容される相対回転角は 8/225≒1/28に留まるから、上記のように許容変形角γ=1/30に相当する水平変形が木造軸組に生じた場合でも横架材20が縦溝1aから外れてしまうことなく相対回転が自由に許容されることになる。
【0023】
これにより、木造軸組が水平力を受けて平行四辺形に変形した際、すなわち柱1が倒れるように回転して傾斜状態となった際には、横架材20の全体が蟻ホゾ3aを中心として柱1に対して上下方向に自由に相対回転し、かつその際には縦溝1aの底面と横架材20の木口面20aとの間に確保されているクリアランス30の範囲内においては縦溝1aの底面と木口面20aとが接触することがないから、従来のように横架材20に圧縮ストラットが生じてその水平反力により柱1の回転を無用に拘束してしまうようなことが回避される。
すなわち、上記のクリアランス30の確保により柱1に対する横架材20の相対回転が生じやすくなり、それにより木造軸組の水平変形に追随して横架材20間に確実かつ十分に水平変位(横ずれ)が生じることになり、それによって板ダボ21を摩擦ダンパーとして確実に作動せしめて優れた制震効果を得ることが可能となる。
しかも、本実施形態の制震板壁おける横架材20は従来一般的な板壁ないし耐震板壁における力貫3と力板4とを単に一体化したもので良く、本実施形態の制震板壁は実質的に特許文献3に示される耐震板壁における力貫3および力板4の端部に対して僅かにテーパー加工を行って上記のクリアランス30を確保するだけで良いから、本発明の制震板壁を施工するに要するコスト増や加工手間は殆ど問題にならない。
【0024】
図7は本実施形態の制震板壁におけるせん断変形角−荷重関係図のイメージを示すものである。従来一般的な制震板壁の場合にはせん断変形角が大きくなると壁板2による水平反力によって剛性が高まるために破線で示すように荷重が増大するようなループとなるが、本実施形態による場合には柱1と横架材20との間にクリアランス30を確保することでそのような剛性の増大がなくなり、実線で示すようなほぼ完全塑性のループとなる。
【0025】
以上のように、本発明の制震板壁の構造によれば、横架材20を柱1に対して相対回転可能にピン接合したうえで、横架材20と柱1との間の相対回転を拘束することなく許容するためのクリアランス30を確保したことによって、柱1に対する横架材20の相対回転が生じやすくなり、それにより木造軸組の水平変形をより効率的に制震デバイスとしての板ダボ21に対して伝達してその制震効果を十分に発揮させることが可能である。
したがって、特許文献3に示される従来の耐震板壁と比較した場合、従来と同数の板ダボ21でより大きな制震効果を得ることができるし、あるいは同等の制震効果を得るための板ダボ21の所要数を削減することができる。その結果、建築計画上、制震板壁を平面的に偏心の生じないようにバランスよく配置することが難しいような場合においても、剛性や耐力の増加が生じる変形量をコントロールできるため、より信頼性の高い構造計画が可能となる。
【0026】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜の設計的変更や応用が可能である。
【0027】
たとえば、上記実施形態では制震板壁を構成するための基本的な構造要素としての横架材20を力貫3と力板4とをダボ6により一体に接合したものとしたが、原理的には横架材20を単一の壁板により形成した場合であっても、その横架材20を柱1に対して自由に相対回転可能な状態でピン接合したうえで柱との間にクリアランスを確保すれば同様に機能するものとなるから、そのように構成することも妨げるものではない。
勿論、横架材20間に介装する制震デバイスとしての板ダボ21についても、その板ダボ21と横架材20との間に生じる摩擦力によって制震効果を得る構成のもの、すなわち実質的に摩擦ダンパーとして機能するものであれば良く、その限りにおいて板ダボ21の具体的な構成は任意である。
【0028】
また、上記実施形態では柱1に対して横架材20を下げ鎌仕口によってピン接合としたうえで横架材20の木口面20aを傾斜面とすることで柱1との間にクリアランス30を確保するとともに、そのクリアランス30をピン接合部としての仕口部の上下において漸次拡大するようにしたが、要は木造軸組の水平変形時に横架材20がその変形を拘束してしまうことを回避して柱に対する自由な相対回転を保証すれば良いのであって、その限りにおいて横架材の端部を柱に対してピン接合とするための具体的な構成や、それらの間にクリアランス30を確保するための横架材20の端部の具体的な形状や寸法については任意である。
【0029】
なお、本発明の制震板壁の施工に際しては、従来一般的な手法と同様に、力貫3と力板4とを1枚づつ交互にかつそれらの間にダボ6および板ダボ21を装着していきつつ柱1間に順次組み付けていくことでも良いが、あるいは予め力貫3と力板4とをダボ6により一体に連結して横架材20を組み立てておき、その横架材20を板ダボ21を介して柱1間に順次組み付けていくことでも良い。
【0030】
さらには、
図8に示すように、下段側の横架材20における力貫3と上段側の横架材20における力板4とを板ダボ21を介して接合したユニット40を予め組み立てておき、そのユニット40を現場にてダボ6を介して柱1間に順次組み付けていくことでも良く、それによっても完成状態では上記実施形態のものと全く同一の制震板壁となる。
この場合、上記のユニット40はそれ自体が減衰要素としての板ダボ21を予め備えた制震ダンパーとして機能するものとなるから、そのような制震ダンパーとしてのユニット40を予め工場にて所定規格で大量製作することによりそれを安価にかつ精度良く組み立てることができるし、本発明の制震板壁を効率的に施工することができる。
なお、従来のように板の木口にテーパーを設けずに、耐力板壁と制震板壁の両方の性質を有する壁として構成することも目的に応じて採用することもできる。