特許第5958764号(P5958764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5958764揚重装置、揚重方法および建物の解体方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958764
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】揚重装置、揚重方法および建物の解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20160719BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   E04G21/16
   E04G23/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-288692(P2012-288692)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129697(P2014-129697A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 周男
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−290799(JP,A)
【文献】 特開2001−039652(JP,A)
【文献】 特開平07−026727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/14−21/22
E04G23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台に載せた部材や重機などの物品を建物の上方に揚重するための揚重装置であって、
前記建物の複数階と略同一の高さ寸法を有する外側フレーム体と、
この外側フレーム体に対して入れ子状に収容され、外側フレーム体から上方に向けて進退可能であり前記荷台を有する内側フレーム体と、
外側フレーム体と内側フレーム体との間に設けられ、内側フレーム体を外側フレーム体に対して相対的に昇降させるクライミング機構と、
外側フレーム体および内側フレーム体の各側部に出没自在に設けられ、外側フレーム体および内側フレーム体をそれぞれ前記建物に固定支持するためのアウトリガとを備えることを特徴とする揚重装置。
【請求項2】
内側フレーム体の上部に巻上機を設け、この巻上機に巻き回した吊索を介して前記荷台を昇降可能としたことを特徴する請求項1に記載の揚重装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の揚重装置を用いて前記物品を揚重する方法であって、
外側フレーム体および内側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出してそれぞれ前記建物に係止させる工程1と、
内側フレーム体の前記アウトリガを内側に退避する一方、前記クライミング機構を駆動して外側フレーム体に対して内側フレーム体を所定階数分だけ上昇させ、内側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出して前記建物に係止させる工程2と、
外側フレーム体の前記アウトリガを内側に退避する一方、前記クライミング機構を駆動して外側フレーム体を内側フレーム体に対して所定階数分だけ上昇させ、外側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出して前記建物に係止させる工程3とを含むことを特徴とする揚重方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の揚重装置を用いて建物を解体する方法であって、
前記揚重装置を地上で組み立てた後、前記建物の床の一部を解体しながら前記クライミング機構により前記揚重装置をクライミングさせることにより、この解体で生じた空間に前記揚重装置用の搬送路を形成する一方で、前記床の解体時に生じる解体部材を前記床のフロアに仮置きしておき、前記フロアを解体する際に前記揚重装置を用いて前記解体部材を地上に搬出することを特徴とする建物の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解体工事や建築工事などで部材や重機等を揚重する揚重装置、揚重方法、および、この揚重装置を用いた建物の解体方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高層ビル等の建物の解体工事において、大型ブレーカーやバックホウ等の解体用重機を建物の最上階へ揚重する方法としては、大型のオールテレーンクレーンを使用するのが一般的である。この場合、建物の高さや敷地条件によっては、重機を揚重するのが困難になる場合がある。
【0003】
また、こうした建物をブロック状に切り出して上階から下階へと順次解体する場合、解体した鉄骨やコンクリートなどの解体部材を地上へ吊り降ろすためには、タワークレーンやテルハクレーン等がどうしても必要になってくる。
【0004】
一方、建築工事における資機材の搬送技術として、例えば特許文献1に示される揚重装置や、特許文献2に示される台車システムなどが知られている。ここで、特許文献1の揚重装置は、荷台と、荷台に設けた滑車を巻き回して先端を建築物の周囲躯体に固定して配置された吊索と、この吊索を巻き取り、または送り出すことで荷台を昇降させる巻上機とを備えて構成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−290799号公報
【特許文献2】特開2011−251781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、高層ビル等の建物の解体工事などにおいて、タワークレーン等の大掛かりな揚重設備を使用せずに、解体用重機の揚重や下階への盛替、解体部材の地上への搬送を容易に行える技術の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タワークレーンを使用せずに部材や重機等を容易に搬送することができる揚重装置、揚重方法、および、この揚重装置を用いた建物の解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る揚重装置は、荷台に載せた部材や重機などの物品を建物の上方に揚重するための揚重装置であって、前記建物の複数階と略同一の高さ寸法を有する外側フレーム体と、この外側フレーム体に対して入れ子状に収容され、外側フレーム体から上方に向けて進退可能であり前記荷台を有する内側フレーム体と、外側フレーム体と内側フレーム体との間に設けられ、内側フレーム体を外側フレーム体に対して相対的に昇降させるクライミング機構と、外側フレーム体および内側フレーム体の各側部に出没自在に設けられ、外側フレーム体および内側フレーム体をそれぞれ前記建物に固定支持するためのアウトリガとを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る揚重装置は、上述した請求項1において、内側フレーム体の上部に巻上機を設け、この巻上機に巻き回した吊索を介して前記荷台を昇降可能としたことを特徴する。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る揚重方法は、上述した請求項1または2に記載の揚重装置を用いて前記物品を揚重する方法であって、外側フレーム体および内側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出してそれぞれ前記建物に係止させる工程1と、内側フレーム体の前記アウトリガを内側に退避する一方、前記クライミング機構を駆動して外側フレーム体に対して内側フレーム体を所定階数分だけ上昇させ、内側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出して前記建物に係止させる工程2と、外側フレーム体の前記アウトリガを内側に退避する一方、前記クライミング機構を駆動して外側フレーム体を内側フレーム体に対して所定階数分だけ上昇させ、外側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出して前記建物に係止させる工程3とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る建物の解体方法は、上述した請求項1または2に記載の揚重装置を用いて建物を解体する方法であって、前記揚重装置を地上で組み立てた後、前記建物の床の一部を解体しながら前記クライミング機構により前記揚重装置をクライミングさせることにより、この解体で生じた空間に前記揚重装置用の搬送路を形成する一方で、前記床の解体時に生じる解体部材を前記床のフロアに仮置きしておき、前記フロアを解体する際に前記揚重装置を用いて前記解体部材を地上に搬出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る揚重装置によれば、荷台に載せた部材や重機などの物品を建物の上方に揚重するための揚重装置であって、前記建物の複数階と略同一の高さ寸法を有する外側フレーム体と、この外側フレーム体に対して入れ子状に収容され、外側フレーム体から上方に向けて進退可能であり前記荷台を有する内側フレーム体と、外側フレーム体と内側フレーム体との間に設けられ、内側フレーム体を外側フレーム体に対して相対的に昇降させるクライミング機構と、外側フレーム体および内側フレーム体の各側部に出没自在に設けられ、外側フレーム体および内側フレーム体をそれぞれ前記建物に固定支持するためのアウトリガとを備えるので、タワークレーンを使用せずに部材や重機等を容易に搬送することができるという効果を奏する。
【0013】
本発明に係る揚重方法によれば、上述した揚重装置を用いて前記物品を揚重する方法であって、外側フレーム体および内側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出してそれぞれ前記建物に係止させる工程1と、内側フレーム体の前記アウトリガを内側に退避する一方、前記クライミング機構を駆動して外側フレーム体に対して内側フレーム体を所定階数分だけ上昇させ、内側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出して前記建物に係止させる工程2と、外側フレーム体の前記アウトリガを内側に退避する一方、前記クライミング機構を駆動して外側フレーム体を内側フレーム体に対して所定階数分だけ上昇させ、外側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出して前記建物に係止させる工程3とを含むので、タワークレーンを使用せずに部材や重機等を容易に搬送することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る建物の解体方法によれば、上述した揚重装置を用いて建物を解体する方法であって、前記揚重装置を地上で組み立てた後、前記建物の床の一部を解体しながら前記クライミング機構により前記揚重装置をクライミングさせることにより、この解体で生じた空間に前記揚重装置用の搬送路を形成する一方で、前記床の解体時に生じる解体部材を前記床のフロアに仮置きしておき、前記フロアを解体する際に前記揚重装置を用いて前記解体部材を地上に搬出する。このため、揚重装置を地上で組み立てた後、クライミングしながら床を解体できることから、安全性が向上するうえに工期の短縮が可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係る揚重装置の実施例を示す立断面図である。
図2図2は、本発明に係る揚重方法の工程1を示す図である。
図3図3は、本発明に係る揚重方法の工程2の前半部分を示す図である。
図4図4は、本発明に係る揚重方法の工程2の後半部分を示す図である。
図5図5は、本発明に係る揚重方法の工程3の前半部分を示す図である。
図6図6は、本発明に係る揚重方法の工程3の後半部分を示す図である。
図7図7は、本発明に係る建物の解体方法の工程1を示す図である。
図8図8は、本発明に係る建物の解体方法の工程2を示す図である。
図9図9は、本発明に係る建物の解体方法の工程3を示す図である。
図10図10は、本発明に係る建物の解体方法の工程4を示す図である。
図11図11は、本発明に係る建物の解体方法の工程5を示す図である。
図12図12は、本発明に係る建物の解体方法の工程6を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る揚重装置、揚重方法および建物の解体方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
[揚重装置の構成]
まず、本発明に係る揚重装置の構成について図1等を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明に係る揚重装置10は、荷台18に載せた部材や重機などの物品(不図示)を建物1の上方に揚重するためのものであって、建物1の複数階と略同一の高さ寸法を有する外側フレーム体12と、この外側フレーム体12に対して入れ子状に収容され、外側フレーム体12から上方に向けて進退可能であり荷台18を有する内側フレーム体14とを備える。
【0019】
外側フレーム体12は、図1に示すように、左右の縦フレーム材12aと、上下の横フレーム材12bとで四角枠状をなすように構成したものである。
【0020】
内側フレーム体14は、左右の縦フレーム材14aと、上下の横フレーム材14bとで四角枠状をなすように構成したものである。なお、上下の横フレーム材14bの間には中間フレーム材14cが設けてある。
【0021】
外側フレーム体12の側部上下の左右には、アウトリガ20a、20bが水平方向に出没自在に設けてある。また、内側フレーム体14の側部中央の左右には、アウトリガ22が水平方向に出没自在に設けてある。これらアウトリガ20a、20b、22は、外側フレーム体12、内側フレーム体14をそれぞれ建物1の梁3に固定支持するためのものである。
【0022】
また、外側フレーム体12の下部の左右内側には、油圧シリンダ16(クライミング機構)が上下方向に沿って配置してある。各油圧シリンダ16は、外側フレーム体12と内側フレーム体14との間に設けてあり、内側フレーム体14を外側フレーム体12に対して相対的に昇降させるものである。
【0023】
より具体的には、各油圧シリンダ16は、図2に示すように、ピストンロッド16aとシリンダチューブ16bとからなり、ロッド端部17aは外側フレーム体12の横フレーム材12bに固定され、シリンダチューブ端部17bは内側フレーム体14の横フレーム材14bに固定されている。各油圧シリンダ16を同期して駆動することで、内側フレーム体14を外側フレーム体12に対して相対的に昇降させることが可能である。
【0024】
また、内側フレーム体14の中間フレーム材14cの上部の左右両側にはウインチ24(巻上機)が、その中央には1台の電動機26が配置してある。各ウインチ24にはワイヤーロープ30(吊索)が巻き回してあり、荷台18の左右両側に取り付けたシーブ32を介して荷台18を吊り下げている。電動機26の出力は分岐して、図示しない伝達手段を介して各ウインチ24を同期して駆動するようにしてある。このため荷台18は、ウインチ24およびワイヤロープ30を介して搬送路4内を上下方向に昇降移動可能であり、例えば地上GLから上層階のフロア2へと部材や重機などの物品を揚重することができる。
【0025】
[揚重方法]
次に、本発明に係る揚重方法について図2図6を参照しながら説明する。
本発明に係る揚重方法は、上述した揚重装置10を用いて物品を揚重する方法であって、工程1と工程2と工程3とを含むものである。
【0026】
工程1は初期のスタート状態を示すものである。図2に示すように、外側フレーム体12および内側フレーム体14のアウトリガ20a、20b、22を外側に張り出してそれぞれ建物1の梁3に係止させる。
【0027】
次に、工程2では、図3に示すように、油圧シリンダ16のピストンロッド16aを若干伸長して内側フレーム体14を外側フレーム体12に対して僅かに上昇させ、内側フレーム体14のアウトリガ22を内側に退避させる。このようにしてアウトリガ22に垂直荷重が加わらないようにする。
【0028】
そして、図4に示すように、油圧シリンダ16を駆動して外側フレーム体12に対して内側フレーム体14を所定階数分(例えば1フロア分)だけ上昇させ、内側フレーム体14のアウトリガ22を外側に張り出して建物1の上階(N+1)の梁3に係止させる。
【0029】
続いて、工程3では、図5に示すように、外側フレーム体12のアウトリガ20a、22bを内側に退避する一方、油圧シリンダ16を駆動して外側フレーム体12を内側フレーム体14に対して所定階数分(例えば1フロア分)だけ上昇させる。
【0030】
そして、図6に示すように、外側フレーム体12のアウトリガ20a、20bを外側に張り出してそれぞれ上階(N+3)(N+1)の梁3に係止させる。
【0031】
以後、上記の工程1〜3を繰り返して揚重装置10をクライミングする。
【0032】
このように、本発明の揚重方法によれば、揚重装置10をクライミングすることで、解体用重機の揚重や他の階への盛替、解体した部材を地上へ搬送することができる。このため、タワークレーンを使用せずに部材や重機等を容易に搬送することができる。
【0033】
[建物の解体方法]
次に、本発明に係る建物の解体方法について図7図12を参照しながら説明する。
【0034】
本発明に係る建物の解体方法は、上述した揚重装置10を用いて建物1を解体する方法であって、揚重装置10を地上で組み立てた後、建物1の床2の一部を解体しながら油圧シリンダ16により揚重装置10をクライミングさせることにより、この解体で生じた空間に揚重装置用の搬送路を形成する一方で、床の解体時に生じる解体部材を床のフロアに仮置きしておき、フロアを解体する際に揚重装置を用いて解体部材を地上に搬出するものである。以下にこの方法を詳述する。
【0035】
まず、図7に示すように、油圧シリンダ16(不図示)により揚重装置10をクライミングさせる。
【0036】
次に、図8に示すように、内側フレーム体14を上昇させて上部の横フレーム材14bを床2の下側に配置する。床2と横フレーム材14bとの間にはH型鋼等を介在させておき、床2の一部を揚重装置10が通過可能な大きさに切り出す。
【0037】
次に、図9に示すように、油圧シリンダ16(不図示)により内側フレーム体14をさらに上昇させる。ここで、図10に示すように、床2の解体時に生じる解体部材5を床2と同じフロア6に仮置きしておく。また、内側フレーム体14のアウトリガ22を梁3に支持させる。
【0038】
次に、図11に示すように、外側フレーム体12を内側フレーム体14に対して上昇させ、アウトリガ20a、20bを梁3に支持させる。
【0039】
次に、図12に示すように、内側フレーム体14を上昇させてゆき、図8図10の工程と同様にして、床2の一部の切り出す。このようにして、床2の一部の解体で生じた空間に揚重装置10用の搬送路を形成していく。各フロア6に仮置きした解体部材5(図示を省略)については、当該フロア6を解体する際に揚重装置10の荷台18に積載して地上に搬出するようにする。
【0040】
このように、本発明の建物の解体方法によれば、揚重装置を地上で組み立てた後、クライミングしながら床を解体できることから、安全性が向上するうえに工期の短縮が可能である。
【0041】
上記の実施の形態において、クライミング機構として油圧シリンダ16を例にとり説明したが、これに限るものではなく、内側フレーム体14を外側フレーム体12に対して昇降可能な機構であれば、電動式の昇降装置など他の方式によるクライミング機構を用いてもよい。
【0042】
以上説明したように、本発明に係る揚重装置によれば、荷台に載せた部材や重機などの物品を建物の上方に揚重するための揚重装置であって、前記建物の複数階と略同一の高さ寸法を有する外側フレーム体と、この外側フレーム体に対して入れ子状に収容され、外側フレーム体から上方に向けて進退可能であり前記荷台を有する内側フレーム体と、外側フレーム体と内側フレーム体との間に設けられ、内側フレーム体を外側フレーム体に対して相対的に昇降させるクライミング機構と、外側フレーム体および内側フレーム体の各側部に出没自在に設けられ、外側フレーム体および内側フレーム体をそれぞれ前記建物に固定支持するためのアウトリガとを備えるので、タワークレーンを使用せずに部材や重機等を容易に搬送することができる。
【0043】
本発明に係る揚重方法によれば、上述した揚重装置を用いて前記物品を揚重する方法であって、外側フレーム体および内側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出してそれぞれ前記建物に係止させる工程1と、内側フレーム体の前記アウトリガを内側に退避する一方、前記クライミング機構を駆動して外側フレーム体に対して内側フレーム体を所定階数分だけ上昇させ、内側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出して前記建物に係止させる工程2と、外側フレーム体の前記アウトリガを内側に退避する一方、前記クライミング機構を駆動して外側フレーム体を内側フレーム体に対して所定階数分だけ上昇させ、外側フレーム体の前記アウトリガを外側に張り出して前記建物に係止させる工程3とを含むので、タワークレーンを使用せずに部材や重機等を容易に搬送することができる。
【0044】
本発明に係る建物の解体方法によれば、上述した揚重装置を用いて建物を解体する方法であって、前記揚重装置を地上で組み立てた後、前記建物の床の一部を解体しながら前記クライミング機構により前記揚重装置をクライミングさせることにより、この解体で生じた空間に前記揚重装置用の搬送路を形成する一方で、前記床の解体時に生じる解体部材を前記床のフロアに仮置きしておき、前記フロアを解体する際に前記揚重装置を用いて前記解体部材を地上に搬出する。このため、揚重装置を地上で組み立てた後、クライミングしながら床を解体できることから、安全性が向上するうえに工期の短縮が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る揚重装置、揚重方法および建物の解体方法は、解体工事や建築工事などで部材や重機等を揚重するのに有用であり、特に、タワークレーンを使用せずに部材や重機等を容易に搬送するのに適している。
【符号の説明】
【0046】
1 建物
2 床
3 梁
4 搬送路
5 解体部材
6 フロア
N,N+1,N+2,N+3 フロア階
GL 地上
10 揚重装置
12 外側フレーム体
12a 縦フレーム材
12b 横フレーム材
14 内側フレーム体
14a 縦フレーム材
14b 横フレーム材
14c 中間フレーム材
16 油圧シリンダ(クライミング機構)
16a ピストンロッド
16b シリンダチューブ
17a ロッド端部
17b シリンダチューブ端部
18 荷台
20a,20b,22 アウトリガ
24 ウインチ(巻上機)
26 電動機
30 ワイヤロープ(吊索)
32 シーブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12