(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の配管を現地にて溶接で接続する場合には、ポリエチレンは可燃物であることから、溶接部周辺はライニングを施工していない状態で溶接した後、現地にて溶接継手部の内面をライニングで覆う必要がある。現地での施工箇所において工場での施工箇所と同等の接着強さを確保するには、配管の溶接継手部を工場の施工時と同じ温度である260〜300℃程度まで加熱する必要がある。しかしながら、配管を260〜300℃程度まで加熱するには、大掛かりな装置が必要であり、また高温環境での作業となることから作業環境が悪く作業者への負担が増加してしまうという課題があった。
【0007】
特許文献1に記載の現地溶接部の防食被覆構造は、配管の外周側の被覆を対象とするものであり、配管の内面を被覆することに関して言及されていなかった。
【0008】
このようなことから、本発明は、前述した課題を解決するために為されたものであって、工場で施工した箇所と同程度の接着強さがあり、現地で施工しやすい樹脂ライニング
施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決する第1の発明に係る樹脂ライニング施工方法は、
配管の未施工部を加熱手段で施工温度まで加熱する加熱工程と、
前記配管の未施工部に直鎖低密度ポリエチレン製またはエチレン酢酸ビニル製の固形物を押し付けて当該固形物が溶融した溶融樹脂からなる下地層を作製する下地層作製工程と、
前記下地層表面に直鎖低密度ポリエチレン製の粉体またはシートを追加供給し当該粉体または当該シートにより層厚を調整する層厚調整工程と、
前記施工温度で所定時間保持する施工温度保持工程と、
前記配管を徐冷する徐冷工程と
を備える
ことを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第2の発明に係る樹脂ライニング施工方法は、前述した第1の発明に係る樹脂ライニング施工方法であって、
前記施工温度の下限は、前記直鎖低密度ポリエチレンの融点が120〜130℃である場合には200℃であり、前記直鎖低密度ポリエチレンの融点が120〜130℃以外である場合には当該直鎖低密度ポリエチレンの融点+70℃より高い
ことを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する第3の発明に係る樹脂ライニング施工方法は、前述した第1または第2の発明に係る樹脂ライニング施工方法であって、
前記シートは、スリットまたは微細孔を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、工場で施工する場合と比べて低い温度で施工した場合でも、工場で施工した場合と同等の接着強さを得ることができる。また、作業者への負担が軽減し、作業効率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る樹脂ライニング
施工方法の各実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態に係る樹脂ライニング
施工方法を
図1〜
図3に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態に係る樹脂ライニング施工方法では、ポリエチレンとして直鎖低密度ポリエチレン(以下、PE−LLDと称す)を用いることが好ましい。PE−LLDとして、チーグラー触媒やメタロセン触媒などの触媒を用いて合成したものを用いることが可能である。
チーグラー触媒で合成したPE−LLD(以下、チーグラーPEと称す)として、例えば、「フローセン」(住友精化株式会社製)などがあるが、これに限定されるものではない。メタロセン触媒で合成したPE−LLD(以下、メタロセンPEと称す)として、例えば、「ユメリット」(宇部丸善ポリエチレン株式会社製)などがあるが、これに限定されるものではない。
前記PE−LLDの密度は、0.910g/cm
3〜0.950g/cm
3であることが好ましい。
【0018】
本実施形態に係る樹脂ライニング施工方法は、現地(現場)で樹脂ライニングを施工する方法であって、
図1および
図2に示すように、配管1の内面部1aにおける工場で樹脂ライニング施工された工場施工部2A,2Bにより囲まれる未施工部3を配管1の外周部1b側から加熱器31により所定の温度(以下、施工温度と称す)まで加熱する(加熱工程S1)。なお、配管1の内面部1aは、ブラスト処理されていることが好ましい。これにより、後述する下地層作製工程S2にて配管1の内面部1aに溶融ポリエチレン(溶融樹脂)12を容易に密着させることができる。
前記配管1として、一般的に使用される金属製配管や炭素鋼配管を用いることが好ましく、コスト面などを考慮した場合には、炭素鋼配管を用いることがより好ましい。
前記未施工部3として、工場では樹脂ライニング施工されていない箇所や、工場では樹脂ライニング施工されたがその後樹脂ライニングが取り外された箇所などが挙げられる。
【0019】
未施工部3が前記施工温度であるかを、例えば、非接触で温度を計測可能な放射熱温度計を用いて確認する。未施工部3が前記施工温度になっていない場合には、前記加熱器31により加熱する。未施工部3が前記施工温度になっている場合には加熱器31で施工温度に加熱しつつ、未施工部3に対し、前記PE−LLDで作製された棒状の固形物11を配管1の内面部1aに所定の力Fで押し付ける。固形物11の先端部11aが前記熱により溶融し始めたら、固形物11の先端部11aを配管1の内面部1aに押し付けながら溶融ポリエチレン12により配管1の内面部1aが被覆されるように配管1の軸方向Aへゆっくりと動かし、このときに生じる気泡をできるだけ噛み込まないように配管1の内面部1aに溶融ポリエチレン12を塗り込む。固形物11の移動方向側にあっては、生成した溶融ポリエチレン12による盛上り部12bができ、この盛上り部12bを配管1の内面部1aに押し付けながら移動していくことになる。これにより、溶融ポリエチレン12が配管1の内面部1aに確実に密着することになる。この作業を未施工部3における配管1の軸方向全体に亘って行うことで、
図3(a)に示すように、当該未施工部3が下地層をなす溶融ポリエチレン12で覆われることになる(下地層作製工程S2)。
【0020】
前記固形物11は、例えば、15mm×15mm×150mm程度のスティック状や、円柱や角柱や錐体や短冊形や円筒状などの、施工する部位の形状、施工面積、施工しやすさなどを考慮した大きさ・形状であることが好ましい。
【0021】
なお、前記下地層作製工程S2の塗布作業は、未施工部3に溶融ポリエチレン12を押し込むように塗布することが可能であれば、作業者による手作業に限らず、機械作業とすることも可能である。
【0022】
引き続き、加熱器31で施工温度に加熱しつつ、
図3(b)に示すように、工場施工部2A,2Bの表面2Aa,2Baと同じ高さとなるように未施工部3の溶融ポリエチレン12の表面12aに、前記PE−LLDで作製された粉体13を均一に充填する(ライニング層厚調整工程S3)。すなわち、前記未施工部3の溶融ポリエチレン12の表面12aに、前記PE−LLDで作製された粉体13を追加供給する。前記ライニング層厚調整工程S3の作業を複数回分けて行うことも可能であり、この場合、粉体13間への空気の噛み込みを減らすことができ好ましい。
【0023】
引き続き、加熱器31で施工温度に加熱しつつ、
図3(c)に示すように、工場施工部2A,2Bの表面2Aa,2Ba側から粉体13が積層した粉体層14を押圧器32により1分間押え付けた後、押圧器32を取り外し、施工温度で所定時間保持する(施工温度保持工程S4)。粉体13の充填量は、一度に施工する面積を決めておき、その面積へ所定の層厚の樹脂ライニングを形成するために必要な粉体13の重さを量ることで調整可能である。これにより、粉体層14の表面14aは、工場施工部2A,2Bの表面2Aa,2Baと同じ高さとなる。
【0024】
前記所定時間は、前記施工温度における溶融粘度が低いPE−LLDでは数分から15分とし、前記施工温度における溶融粘度が高いPE−LLDでは15分〜20分とする。PE−LLDの溶融粘度は、温度230℃、シェアレート12sec
-1において測定した値であり、1500Pa・s以上であれば「高い」とし、1500Pa・s未満であれば「低い」とする。これにより、溶融ポリエチレン12と粉体層14が密着すると共に、溶融ポリエチレン12および粉体層14が工場施工部2A,2Bの端部2Ab,2Bbと密着することになる。
【0025】
続いて、前記加熱器31を未施工部3から離れた箇所に移動し、徐冷する。これにより、溶融ポリエチレン12と粉体層14が一体化した現地施工部15となる。現地施工部15の端部15b,15cが工場施工部2A,2Bの端部2Ab,2Bbと密着することになる。現地施工部15の表面15aは、工場施工部2A,2Bの表面2Aa,2Baと同じ高さとなる。
【0026】
未施工部3の周方向全体が現地施工部15で覆われるように、上述した加熱工程S1、下地層作製工程S2、ライニング層厚調整工程S3、施工温度保持工程S4および徐冷工程S5の作業を繰り返し行う。
なお、
図3(a)〜(c)にて、符号Hは、加熱器31による加熱を示している。
【0027】
ここで、上述した施工温度は、以下のように管理することが好ましい。
前記PE−LLDの融点が120〜130℃である場合には、前記施工温度は、配管1の内面部1aにおける未施工部3が220±20℃に管理することが好ましく、210±10℃に管理することがより好ましい。これは、前記施工温度が200℃未満になると、前記PE−LLDの接着強さが急激に低下してしまい、所望の接着強さ(工場で施工したときと同程度の接着強さ)を得ることができない可能性があるからである。これにより、施工温度を工場での施工時の260〜300℃よりも低温であり、前記ポリエチレンが溶融する210℃程度まで下げることができ、リボンヒータなどの簡易ヒータで加熱可能な温度範囲となることから、大掛かりな装置が不要となる。
【0028】
前記PE−LLDの融点が120〜130℃以外である場合には、前記施工下限温度は、配管1の内面部1aにおける未施工部3が融点+70℃を超えるように管理することが好ましい。これは、前記施工下限温度が融点+70℃を超えないと、所望の接着強さ(工場で施工したときと同程度の接着強さ)を得ることができない可能性があるからである。前記施工上限温度は、前記施工下限温度+40℃以内が好ましく、前記施工下限温度+20℃以内がより好ましい。これは、配管1の温度管理がし易いからである。
【0029】
上述した粉体13は、安息角が40°以下であり、中位粒度が170μm以上270μm以下であることが好ましい。また、前記粉体13は、上記範囲(0.910g/cm
3〜0.950g/cm
3)の密度を有する前記PE−LLDの他に、カーボンブラック、酸化防止剤などの添加物を含有してもよい。
【0030】
したがって、本実施形態によれば、工場で施工する場合と比べて低い温度で施工した場合でも、工場で施工した場合と同等の接着強さ、水分遮断性、化学的安定性を得ることができる。また、作業者への負担が軽減し、作業効率を高めることができる。
【0031】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態に係る樹脂ライニング
施工方法について、
図1、
図2および
図4に基づいて説明する。本実施形態は、上述した第一の実施形態に係る樹脂ライニング
施工方法にてライニング層厚調整工程のみを変更している。本実施形態では、第一の実施形態と同一部材には同一符号を付記している。
【0032】
本実施形態では、上述した第一の実施形態と同様、未施工部3を加熱器31により前記施工温度まで加熱し(加熱工程S1)、未施工部3を前記施工温度に加熱した状態にて、前記PE−LLDで作製された棒状の固形物11を配管1の内面部1aに所定の力Fで押し付ける。固形物11の先端部11aが前記熱により溶融し始めたら、固形物11の先端部11aを配管1の内面部1aに押し付けながら当該配管1の内面部1aに溶融ポリエチレン(溶融樹脂)12を塗り込む。この作業を未施工部3における配管1の軸方向全体に亘って行うことで、
図4(a)に示すように、当該未施工部3が下地層をなす溶融ポリエチレン12で覆われることになる(下地層作製工程S2)。
【0033】
引き続き、加熱器31で施工温度に加熱しつつ、
図4(b)に示すように、工場施工部2A,2Bの表面2Aa,2Baと同じ高さとなるように未施工部3の溶融ポリエチレン12の表面12aに、前記PE−LLDで作製されたシート23を貼り付ける(ライニング層厚調整工程S3)。すなわち、前記未施工部3の溶融ポリエチレン12の表面12aに、前記PE−LLDで作製されたシート23を追加供給する。このとき、溶融ポリエチレン12の表面12aとシート23の間に空気が噛み込まないようにすることが好ましい。
【0034】
引き続き、加熱器31で施工温度に加熱しつつ、
図4(c)に示すように、工場施工部2A,2Bの表面2Aa,2Ba側からシート23を押圧器32により1分間押え付けた後、押圧器32を取り外し、施工温度で所定時間保持する(施工温度保持工程S4)。これにより、シート23の表面23aは、工場施工部2A,2Bの表面2Aa,2Baと同じ高さとなる。また、溶融ポリエチレン12とシート23が密着すると共に、溶融ポリエチレン12およびシート23が工場施工部2A,2Bの端部2Ab,2Bbと密着することになる。
【0035】
続いて、前記加熱器31を未施工部3から離れた箇所に移動し、徐冷する。これにより、溶融ポリエチレン12とシート23が一体化した現地施工部25となる。現地施工部25の端部25b,25cが工場施工部2A,2Bの端部2Ab,2Bbと密着することになる。現地施工部25の表面25aは、工場施工部2A,2Bの表面2Aa,2Baと同じ高さとなる。
【0036】
未施工部3の周方向全体が現地施工部25で覆われるように、上述した加熱工程S1、下地層作製工程S2、ライニング層厚調整工程S3、施工温度保持工程S4および徐冷工程S5の作業を繰り返し行う。
なお、
図4(a)〜(c)にて、符号Hは、加熱器31による加熱を示している。
【0037】
したがって、本実施形態によれば、上述した第一の実施形態と同様、工場で施工する場合と比べて低い温度で施工した場合でも、工場で施工した場合と同等の接着強さ、水分遮断性、化学的安定性を得ることができる。また、作業者への負担が軽減し、作業効率を高めることができる。さらに、ライニング層厚調整工程S3にて、シート23を用いることから、粉体13を用いる場合と比べて、作業しやすく、作業効率をさらに高めることができる。
シート23は、粉体13と同様に、上記範囲(0.910g/cm
3〜0.950g/cm
3)の密度を有する前記PE−LLDの他に、カーボンブラック、酸化防止剤などの添加物を含有してもよい。
【0038】
[他の実施形態]
なお、上記では、シート23を用いた場合について説明したが、シート23の代わりに
図5(a)に示すように、全面に均等にスリット23Aaが設けられたシート23Aや、
図5(b)に示すように、全面に均等に微細孔23Baが設けられたシート23Bを用いることも可能である。この場合、溶融ポリエチレン12の表面12aにシート23A,23Bを貼り付けたときに、スリット23Aaまたは微細孔23Baを通って外側へ空気が排出されることから、スリット23Aaまたは微細孔23Baがないシート23と比べて、溶融ポリエチレン12とシート23の間に空気が残留しにくく、溶融ポリエチレン12とシート23の熱融着をより確実に高めることができる。
【0039】
上記では、配管1の未施工部3にPE−LLDで作製された固形物11を押し付けて当該固形物11が溶融した溶融ポリエチレン12からなる下地層を作製する下地層作製工程S2を備える樹脂ライニング施工方法について説明したが、前記PE−LLDで作製された固形物11の代わりにエチレン酢酸ビニルで作製された固形物を押し付けて当該固形物が溶融した溶融エチレン酢酸ビニル(溶融樹脂)からなる下地層を作製する下地層作製工程S2を備える樹脂ライニング施工方法とすることも可能である。このような樹脂ライニング施工方法によれば、融点が80〜100℃のエチレン酢酸ビニルを使用することにより、前記エチレン酢酸ビニルが前記施工温度で融けて、次工程のライニング層厚調整工程S3で用いる粉体13やシート23を容易に接着することから、上述の第一,第二の実施形態の場合と比べて、作業しやすくなり、作業効率をより一層高めることができる。
なお、前記エチレン酢酸ビニルとして、例えば、「ノバテックEVA」(日本ポリエチレン株式会社製)、「HM224」(セメダイン株式会社製)などがあるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
本発明に係る樹脂ライニング
施工方法の作用効果を確認するために行った実施例を以下に説明するが、本発明は、各種データに基づいて説明する以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
[確認試験]
下記の試験体1〜5および比較体1〜7に関し、所定の温度で施工したときの接着強さについて確認試験を行った。
【0042】
<試験体1〜5の作製>
各試験体1〜5は、表面をブラスト処理した炭素鋼板を下記表1に示す施工温度範囲内となるように加熱し、この温度を保持した状態でスティックの塗布により下地層を作製し、この下地層上に下記表1に示す形態の固体のポリエチレン(PE: Polyethylene)を置き施工温度範囲を13分間保持した。その後、徐冷した。なお、前記施工温度範囲に保持した最初の1分間は押圧器にて固体のポリエチレンを押し付けた。
【0043】
試験体1,2では、下地層およびこの下地層上を覆う固形物(シートおよび粉体)として、直鎖低密度ポリエチレンであって、宇部丸善社製のポリエチレン(商品名「ユメリット(UM 1380)」)を用いた。
【0044】
試験体3,4では、下地層およびこの下地層上を覆う固形物(シートおよび粉体)として、直鎖低密度ポリエチレンであって、宇部丸善社製のポリエチレン(商品名「ユメリット(UM 1380)」)の融点を126℃に調整したものを用いた。
【0045】
試験体5では、下地層およびこの下地層上を覆う固形物(シートおよび粉体)として、直鎖低密度ポリエチレンであって、宇部丸善社製のポリエチレン(商品名「ユメリット」)の融点を115℃に調整したものを用いた。
【0046】
<比較体1〜7の作製>
各比較体1〜7は、表面をブラスト処理した炭素鋼板を下記表1に示す施工温度範囲内となるように加熱し、この温度を保持した状態でスティックを塗布せず下地層が無い状態で13分間保持した、または、スティックの塗布により下地層を作製し、この下地層上に下記表1に示す形態の固体のポリエチレン(PE: Polyethylene)を置き施工温度範囲を13分間保持した。その後、徐冷した。なお、前記施工温度範囲に保持した最初の1分間は押圧器にて固体のポリエチレンを押し付けた。
【0047】
比較体1,2,6では、上述の試験体1,2と同様、固形物(シートおよび粉体)として、直鎖低密度ポリエチレンであって、宇部丸善社製のポリエチレン(商品名「ユメリット(UM 1380)」)を用いた。
【0048】
比較体3,4では、上述の試験体3,4と同様、固形物(シートおよび粉体)として、直鎖低密度ポリエチレンであって、宇部丸善社製のポリエチレン(商品名「ユメリット(UM 1380)」)の融点を126℃に調整したものを用いた。
【0049】
比較体5,7では、上述の試験体5と同様、固形物(シートおよび粉体)として、直鎖低密度ポリエチレンであって、宇部丸善社製のポリエチレン(商品名「ユメリット」)の融点を115℃に調整したものを用いた。
【0050】
【表1】
【0051】
<試験>
上述した試験体1〜5および比較体1〜7に対して、日本水道協会の規格であるJWWA K-132 WS-039「水道用ポリエチレン粉体鋼管」に記載の180℃ピーリング試験に準拠して接着強さを測定したところ、下記表2に示す結果が得られた。なお、工場で施工したPE−LLDライニングの接着強さは、16N/mm〜17N/mmであった。
【0052】
【表2】
【0053】
<評価>
試験体1〜5および比較体1〜5の試験結果から、下地層が接着強さの向上に有効であることが確認された。
【0054】
試験体1および比較体6の試験結果から、ポリエチレンの融点が120〜130℃である場合、施工温度を210±10℃で管理することで、工場で施工した工場施工部よりも大きな接着強さを保持できることが確認された。
【0055】
試験体5および比較体7の試験結果から、ポリエチレンの融点が120〜130℃以外である場合、施工下限温度を融点+70℃を超える190℃に設定することで、工場で施工した工場施工部と同程度の接着強さを保持できることが確認された。
【0056】
試験体1〜5および比較体1〜5の試験結果から、下地層が接着強さに貢献することが
を有することが確認された。
【0057】
したがって、本試験によれば、ポリエチレンの下地層の作製が接着強さの向上に有効であり、ポリエチレンの融点が120〜130℃である場合には施工温度を210±10℃で管理することで工場施工と同等以上の接着強さを保持でき、ポリエチレンの融点が120〜130℃以外である場合には施工温度を融点+70℃で管理することで工場施工と同程度の接着強さを保持できることが明らかとなった。