(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性エラストマーから作製された表層と、請求項6から9までのいずれか1項に記載の発泡体から作製された内部層と、ポリオレフィン樹脂から作製された基底層とを含む物品。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特定の実施形態、型および例を含め、本発明のそれぞれを以下でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態、型または例に限定されず、これらは、本特許における情報が利用可能な情報および技術と組み合わされた場合に、当業者が本発明を作製および使用可能にするために含まれる。
本明細書において使用される様々な用語は、以下に定義される。特許請求の範囲において使用される用語が以下に定義されていない場合、1つまたは複数の刊行物または発行された特許において示されているような、関連技術における当業者がその用語に与えた最も広い定義が与えられるべきである。
本発明は、好ましくは、均質な独立気泡構造、バランスの取れた負荷たわみおよび弾性、ならびに低い吸水率を有する発泡体を作製するための新たな組成物を提供することを目的とする。一実施形態において、本発明は、組成物、好ましくは発泡体を作製するための組成物を提供し、この組成物は、熱可塑性加硫物と、ポリマーシェルおよび前記ポリマーシェル内に封入された噴射剤を含む熱膨張性ミクロスフェアとを含む。
【0009】
「熱可塑性加硫物」(熱可塑性加硫組成物またはTPVとも呼ばれる)という用語は、熱可塑性樹脂成分内に、分散した、少なくとも部分的に加硫されたゴム成分を含む任意の材料として広範囲に定義される。TPV材料は、さらに、添加油、他の成分、他の添加剤、またはそれらの組合せを含んでもよい。
「加硫物」という用語は、加硫された何らかの成分(例えばゴム)を含む組成物を意味する。「加硫された」という用語は、任意の交付された特許、刊行物、または辞書において示されているように、その最も広い意味で本明細書において定義され、一般に、組成物(例えば、架橋性ゴム)の全てまたは一部がある程度または量の加硫に供された後の組成物の状態を指す。したがって、この用語は、部分的および完全加硫の両方を包含する。加硫の好ましい種類は、以下で説明される「動的加硫」であり、これもまた「加硫物」を生成する。また、少なくとも1つの特定の実施形態において、加硫されたという用語は、不十分ではない加硫、例えば関連する特性に測定可能な変化、例えば組成物のメルトフローインデックス(MFI)の10%以上の変化(ASTM−1238のいずれの手順にも従う)をもたらす硬化(架橋)を指す。少なくともそれに関連して、加硫という用語は、動的加硫において利用され得る熱的および化学的の両方の任意の形態の硬化(架橋)を包含する。
「動的加硫」という用語は、熱可塑性樹脂成分とブレンドされた硬化性ゴム成分の、混合物を可塑化するのに十分な温度でのせん断条件下での加硫または硬化を意味する。少なくとも1つの実施形態において、ゴム成分は、架橋されると同時に、熱可塑性樹脂成分内にマイクロサイズ粒子として分散される。硬化の程度、熱可塑性樹脂成分に対するゴム成分の比、ゴム成分および熱可塑性樹脂成分の相溶性、ニーダの種類ならびに混合強度(せん断速度)に依存して、他の形態、例えばプラスチックマトリックス内の共連続ゴム相が可能である。
【0010】
本明細書において使用される場合、「部分的に加硫された」ゴム成分という用語は、熱可塑性加硫物のゴム相の加硫(好ましくは動的加硫)、例えば架橋後に、架橋性ゴム成分の5重量パーセント(重量%)超が沸騰キシレン中に抽出可能であるものである。例えば、架橋性ゴム成分の少なくとも5重量%、および20重量%、または30重量%、または50重量%未満が、熱可塑性加硫物の検体から沸騰キシレン中に抽出され得る。抽出可能なゴム成分のパーセンテージは、米国特許第4,311,628号に記載の技術により決定され得るが、その特許のその技術に言及する部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0011】
熱可塑性加硫物のゴム成分は、当業者により「ゴム」、好ましくは架橋性ゴム成分(例えば加硫前)または架橋されたゴム成分(例えば加硫後)であるとみなされる任意の材料であってもよい。例えば、ゴム成分は、米国特許第5,177,147号に記載のように、特に有機過酸化物等のフリーラジカル生成物質を使用して加硫され得る飽和した化合物を含む、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)等の任意のオレフィン含有ゴムであってもよい。他のゴム成分は、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴム、またはEPDM型ゴムを含んでもよく、例えば、EPDM型ゴムは、2〜10個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子を有する少なくとも2つの異なるモノオレフィンモノマー、および5〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の多価不飽和オレフィンの重合から得られるターポリマーであってもよい。
【0012】
また、ゴム成分は、ブチルゴムであってもよい。「ブチルゴム」という用語は、イソブチレン由来の反復単位を主に含むが、架橋のための部位を提供するモノマーのいくつかの反復単位も含むポリマーを含む。架橋のための部位を提供するモノマーは、共役ジエンまたはジビニルベンゼン等の多価不飽和モノマーを含む。本発明の1つまたは複数の実施形態において、ブチルゴムポリマーは、架橋における反応性をさらに向上させるために、ハロゲン化されてもよい。それらのポリマーは、「ハロブチルゴム」と呼ばれる。
【0013】
さらに、ゴム成分は、4〜8個の炭素原子を有する共役ジエンのホモポリマーと4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種の共役ジエン由来の少なくとも50重量%の反復単位とを有するゴムコポリマーであってもよい。ゴム組成物はまた、コモノマーに依存して非極性または極性となり得る合成ゴムであってもよい。合成ゴムの例は、合成ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム等を含む。アミン官能化、カルボキシ官能化またはエポキシ官能化合成ゴムもまた使用され得る。それらの例は、マレイン化EPDM、およびエポキシ官能化天然ゴムを含む。
好ましいゴム成分のリストは、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、p−アルキルスチレン(alkystyrene)と4〜7個の炭素原子を有する少なくとも1種のイソモノオレフィンとのハロゲン化ゴムコポリマー、イソブチレンとジビニルベンゼンとのコポリマー、4〜8個の炭素原子を有する共役ジエンのゴムホモポリマー、4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種の共役ジエン由来の少なくとも50重量%の反復単位と8〜12個の炭素原子を有するビニル芳香族モノマー、もしくはアクリロニトリルモノマー、もしくは3〜8個の炭素原子を有するアルキル置換アクリロニトリルモノマー、もしくは不飽和カルボン酸モノマー、もしくはジカルボン酸の不飽和無水物とを有するゴムコポリマー、またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、ゴム成分は、ゴム成分および熱可塑性樹脂成分の総重量に対して約15重量%〜約95重量%の量で存在する。1つまたは複数の好ましい実施形態において、ゴム成分は、ゴム成分および熱可塑性樹脂成分の総重量に対して約45重量%〜約90重量%の量で存在する。1つまたは複数のさらに好ましい実施形態において、ゴム成分は、ゴム成分および熱可塑性樹脂成分の総重量に対して約60重量%〜約88重量%の量で存在する。
【0015】
熱可塑性加硫物の熱可塑性樹脂成分は、「ゴム」ではなく、当業者により本質的に熱可塑性であるとみなされるポリマーまたはポリマーブレンド、例えば熱に暴露されると軟化し、室温に冷却されるとその元の状態に戻るポリマーである、任意の材料であってもよい。熱可塑性樹脂成分は、ポリオレフィンホモポリマーおよびポリオレフィンコポリマーを含む、1種または複数種のポリオレフィンを含有してもよい。別段に指定されない限り、「コポリマー」という用語は、2種以上のモノマーから得られるポリマー(ターポリマー、テトラポリマー等を含む)を意味する。本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性樹脂成分は、i)2〜7個の炭素原子を有するオレフィンモノマーから調製されたポリマー、ならびにii)2〜7個の炭素原子を有するオレフィンモノマーおよび(メタ)アクリレートまたは酢酸ビニルから調製されたコポリマーの少なくとも1つを含む。例示的ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、それらの混合物を含むがこれらに限定されないモノオレフィンモノマー、ならびにそれらと(メタ)アクリレートおよび/または酢酸ビニルとのコポリマーから調製され得る。1つまたは複数の好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂成分は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマーまたはそれらの組合せを含む。好ましくは、熱可塑性樹脂成分は、加硫されていない、または架橋されていない。
【0016】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性樹脂成分は、ポリプロピレンを含有する。「ポリプロピレン」という用語は、本明細書において使用される場合、(少なくとも1つの特許または出版物において示されているように)当業者により「ポリプロピレン」とみなされる任意のポリマーを広く意味し、プロピレンのホモ、インパクト、およびランダムポリマーまたはコポリマーを含む。1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性樹脂成分は、アイソタクチックポリプロピレンであるか、またはそれを含む。本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性樹脂成分は、プロピレンモノマーのみから得ることができる(すなわち、プロピレン単位のみを有する)、または主としてプロピレン(75%超のプロピレン)および他のコモノマーから得ることができるポリプロピレンであるか、またはそれを含む。本明細書に記載のように、高いMFR(例えば、10、または15、または20dg/分の下の値から25または30dg/分の上の値まで)を有するある特定のポリプロピレンが使用されてもよい。好ましくは、熱可塑性樹脂成分は、DSCにより測定される少なくとも105℃の融点を有するプロピレンの1種または複数種の結晶性プロピレンホモポリマーまたはコポリマーを含有する。ポリプロピレンの好ましいコポリマーは、プロピレンのターポリマー、プロピレンのインパクトコポリマー、ランダムポリプロピレン、プロピレンのランダムコポリマー、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。好ましいコモノマーは、2個の炭素原子、または4〜12個の炭素原子を有する。好ましくは、コモノマーは、エチレンである。そのような熱可塑性樹脂成分、および該成分を作製するための方法は、米国特許第6,342,565号に記載されている。
【0017】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、本発明による組成物中の熱可塑性加硫物の量は、組成物の総重量に対して少なくとも約80重量%、または少なくとも約85重量%、または少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%である。
本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性加硫物は、50重量%未満、または30重量%未満、または10重量%未満、または1重量%未満の、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)またはスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)の水素化中間ブロックを有するスチレンブロックコポリマーを含有する。一実施形態において、本発明の熱可塑性加硫物は、いずれのSEBSも含有せず、またはいずれのSEPSも含有しない。
【0018】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性加硫物に添加油が添加されてもよい。「添加油」という用語は、「プロセス油」および「エクステンダー油」の両方を含む。例えば、「添加油」は、炭化水素油および可塑剤、例えば有機エステルおよび合成可塑剤を含んでもよい。通常の技術を有する化学者は、特定のゴムと共にどの種類の油が使用されるべきかを認識し、また油の好適な量を決定することができるが、添加油の添加は、組成物の発泡能力に影響しないものとする。
【0019】
ゴム成分を硬化または架橋することができる任意の硬化剤が使用され得る。例示的な硬化剤は、フェノール樹脂、過酸化物、マレイミド、およびケイ素含有硬化剤を含むが、これらに限定されない。使用されるゴム成分に依存して、ある特定の硬化剤が好ましくなり得る。例えば、ビニルノルボルネンから得られる単位を含有するエラストマー性コポリマーが使用される場合、過酸化物硬化剤が好ましくなり得るが、これは、必要量の過酸化物が、熱可塑性加硫物の熱可塑性相の工学的特性に有害な影響を及ぼさないためである。しかしながら、他の状況において、過酸化物硬化剤がある特定のレベルで熱可塑性加硫物の熱可塑性樹脂成分を劣化させ得るため、過酸化物硬化剤を使用しないことが好ましくなり得る。
【0020】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性加硫物に他の添加剤が添加されてもよい。「他の添加剤」という用語は、熱可塑性改質剤、潤滑剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、安定剤、劣化防止剤、帯電防止剤、ワックス、発泡剤、顔料、加工助剤、接着剤、粘着付与剤、可塑剤、ワックス、および不連続繊維(例えば世界のセルロース繊維)を含み得るが、これらに限定されない。例示的な微粒子充填剤は、カーボンブラック、シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、着色顔料、粘土、およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。非黒色充填剤(non−black filler)が使用される場合、非黒色充填剤とポリマーとの間の界面を適合させるために、カップリング剤を含めることが望ましくなり得る。通常の技術を有する化学者は、特性要件に基づき、どの種類の添加剤が使用され得るかを認識し、また添加剤の量を決定することができるが、添加油の添加は、組成物の発泡能力に影響しないであろう。
【0021】
本発明による組成物に好適な熱可塑性加硫物は、様々なメルトフローレート(MFR、例えばASTM D−1238 Condition Lにより決定される)を有し得る。いくつかの実施形態において、TPVは高いMFRを有し、一方いくつかの他の実施形態において、TPVは低いMFRを有してもよい。良好な発泡能力のためには、本発明による組成物において高いMFRが好ましいことが、当業者に明らかである。
本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性樹脂成分は、ゴム成分および熱可塑性樹脂成分の総重量に対して約5重量%〜約85重量%の量で存在する。1つまたは複数の好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂成分は、ゴム成分および熱可塑性樹脂成分の総重量に対して約10重量%〜約55重量%の量で存在する。1つまたは複数のさらに好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂成分は、ゴム成分および熱可塑性樹脂成分の総重量に対して約12重量%〜約40重量%の量で存在する。
【0022】
TPVを作製するための任意の知られたプロセスを使用することができる。例えば、1種または複数種のゴム、熱可塑性樹脂成分、熱可塑性改質剤、硬化剤、添加油、および他の添加剤等の個々の材料および成分は、溶融物を形成するために、熱可塑性樹脂成分の融点を超える温度で混合され得る。例示的な混合機器は、1つまたは複数の混合チップまたはフライトを有するニーダまたは混合要素を有する押出機、1つまたは複数のスクリューを有する押出機、および同方向回転または逆方向回転型の押出機を含む。また、好適な混合機器は、例えば、Brabender(登録商標ミキサー)、Banbury(登録商標ミキサー)、Bussミキサーおよびニーダ、ならびにFarrell Continuousミキサーを含む。押出機を含むそれらの混合機器の1つまたは複数が、直列で使用されてもよい。TPVを作製するためのいくつかの追加的な詳細は、米国特許第4,594,390号を参照することができるが、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本発明による組成物中の熱膨張性ミクロスフェアは、発泡剤として機能し得る。熱膨張性ミクロスフェアは、熱可塑性ポリマーシェルおよびその中に封入された噴射剤を含むミクロスフェアとして広く定義される。例は、当該技術分野において知られており、例えば、米国特許第6,582,633号および米国特許第3,615,972号、WO99/46320、ならびにWO99/43758に記載されているが、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。そのような熱膨張性ミクロスフェアの例は、例えば、Akzo Nobel N.V.から市販されているEXPANCEL(商標)製品を含む。
【0024】
ポリマーシェルは、ポリマーから作製された任意のシェル様構造である。ポリマーシェルは、中空でもよく、噴射剤等が充填されていてもよく、または部分的に充填されていてもよい。ポリマーシェルは、一般に、ニトリル含有モノマーを含むエチレン性不飽和モノマーのホモまたはコポリマーで作製されてもよく、噴射剤は、熱可塑性ポリマーシェルの軟化温度以下の沸点を有する任意の液体であってもよい。熱可塑性ミクロスフェアの膨張は、典型的には、元来物理的である。噴射剤が加熱されると、噴射剤は膨張して内部圧力を増加させ、同時にシェルが軟化し、このようにして通常その直径の約2〜約8倍、または体積の約30〜約80倍のミクロスフェアの膨張を引き起こし、ポリマーシェルの厚さは、0.1μmまで、またはさらにより薄く減少し得ると考えられている。ミクロスフェアの膨張性に影響し得る因子は、封入された噴射剤の揮発性、ガス透過性、およびポリマーシェルの粘弾性を含む。
【0025】
様々なモノマーがポリマーシェルの調製に好適であり、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−ハロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマルニトリル(fumarc nitrile)、アクリルエステルまたはそれらの任意の組合せを含み得る。1つの好ましい実施形態において、モノマーは、ポリアクリロニトリルから作製される。ポリマーシェルは、約80℃〜約200℃の範囲の軟化温度、すなわちガラス転移温度(T
g)を有してもよい。
熱膨張性ミクロスフェアの噴射剤の調製に好適な液体は、通常、大気圧下でのポリマーシェルの軟化温度未満の沸点を有する。好適な液体は、イソブタン、2,4−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、またはそれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
熱膨張性ミクロスフェアは、加熱されると、ある特定の温度で膨張し始める。膨張が開始する温度はT
startと呼ばれ、最大膨張に達する温度はT
maxと呼ばれる。T
startおよびT
maxは、熱膨張特性の熱機械分析(TMA)により測定され得る。本発明の組成物に好適な熱膨張性ミクロスフェアは、少なくとも約100℃、好ましくは少なくとも約110℃、または少なくとも約120℃、または少なくとも約130℃、または少なくとも約140℃のT
start、および好ましくは300℃未満、より好ましくは約260℃未満、または約240℃未満、または約220℃未満、または約210℃未満のT
maxを有してもよい。
【0026】
膨張前の本発明の組成物に好適な熱膨張性ミクロスフェアは、様々な平均粒子サイズを有し得る。いくつかの実施形態において、平均粒子サイズは、約1μmから約500μm、好ましくは約2μmから約300μm、より好ましくは約4μmから約100μm、最も好ましくは約5μmから約50μmの範囲であってもよい。膨張後の膨張性ミクロスフェアの平均粒子サイズは、好ましくは約50μm以上、好ましくは約80μm以上、より好ましくは約100μm以上、最も好ましくは約120μm以上である。
熱膨張性ミクロスフェアの生成は、噴射剤の存在下で水性懸濁液中のモノマーを重合させるステップを含む任意の方法であってもよく、以前の出版物、例えば米国特許第3,615,972号、WO99/46320およびWO99/43758に記載のように知られており、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
本発明による組成物中の熱膨張性ミクロスフェアの量は、組成物の総重量に対して0.1重量%〜約10重量%の範囲であってもよい。典型的には、熱膨張性ミクロスフェアの量が0.1重量%未満である場合、発泡効果および発泡体特性が悪影響を受ける可能性がある。一方、典型的には、熱膨張性ミクロスフェアの量が10重量%超である場合、発泡体の機械的特性が損なわれる可能性がある。本発明のいくつかの実施形態において、組成物中に含有される熱膨張性ミクロスフェアは、好ましくは、組成物の総重量に対して少なくとも約0.2重量%、約0.3重量%、約0.5重量%、約1重量%、または約1.5重量%であり、好ましくは、8重量%、約6重量%、約5重量%、約3重量%、または約1.5重量%未満である。
【0028】
熱膨張性ミクロスフェアの物理的膨張は、典型的には、独立した均質な気泡構造を有する発泡体をもたらし、これは、本発明による発泡組成物の低い吸水率を提供する。熱膨張性ミクロスフェアの使用による他の利点は、本発明の概念に従い当業者に明らかとなるであろう。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明による組成物は、改善された相溶性、分散、および熱膨張性ミクロスフェアと熱可塑性加硫物との間の安定な結合を提供することができ、したがって成型発泡体の特性、特に引裂抵抗性および物理的特性の損失を最小限化することができる、ポリオレフィンベースグラフトコポリマーをさらに含む。
【0029】
ポリオレフィンベースグラフトコポリマーは、当業者に知られており、ポリオレフィンを含有するポリマーブレンド組成物用の相溶化剤として有用である。例示的ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、それらの混合物等の、2〜7個の炭素原子を有するモノマーを含むがそれらに限定されないモノオレフィンモノマー、ならびにそれらと(メタ)アクリレートおよび/または酢酸ビニルとのコポリマーから調製され得る。好ましくは、ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、またはエチレン−プロピレンコポリマーから調製される。
【0030】
グラフトモノマーは、任意のエチレン性不飽和カルボン酸またはカルボン酸誘導体、例えば酸無水物、エステル、塩、アミドまたはイミドであってもよい。そのようなグラフトモノマーの実例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、4−メチルシクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ(2.2.2)オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−オキサ−1,3−ジケトスピロ(4.4)ノナ−7−エン、ビシクロ(2.2.1)ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ノルボルナ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ナド酸無水物、メチルナド酸無水物、ヒム酸無水物、メチルヒム酸無水物、およびx−メチルビシクロ(2.2.1)ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(XMNA)を含む。
無水マレイン酸は、好ましいグラフトモノマーである。本明細書において使用される場合、「グラフト」という用語は、グラフトモノマーのポリオレフィン鎖への共有結合を示す。本発明による組成物中の好ましいポリオレフィン−無水マレイン酸グラフトコポリマーにおいて、グラフトされた無水マレイン酸の濃度は、一般に、約0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.8重量%、または1重量%の下の値から、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、約1.5重量%、約1.2重量%、または約1重量%の上の値までの範囲内である。
【0031】
ポリオレフィンベースグラフトコポリマーは、所望により、当該技術分野において知られた任意の方法、例えば流動床反応器または溶融グラフトにより調製され得る。好ましくは、ポリオレフィンベースグラフトコポリマーは、従来通りに、実質的に溶媒の非存在下で、グラフトされていないポリオレフィン組成物を、過酸化物触媒等のフリーラジカル生成触媒と、押出反応器等のせん断付与反応器(shear−imparting reactor)内で、グラフトモノマーの存在下で溶融ブレンドすることにより調製され得る。単軸、ただし好ましくは二軸押出反応器、例えば同方向回転噛合型押出機または逆方向回転非噛合型押出機、さらには同方向回転ニーダ、例えばBussにより販売されているものが、特に好ましい。
【0032】
グラフト反応に使用される好ましい一連の工程は、ポリオレフィン組成物の溶融、グラフトモノマーの添加および分散、過酸化物の導入、ならびに未反応モノマーおよび過酸化物分解から生じる副生成物の放出からなる。他の一連の工程は、溶媒中に予め溶解したモノマーおよび過酸化物の供給を含んでもよい。
グラフト反応は、触媒およびモノマーの急速な蒸発およびその結果としての損失を最小限化または回避し、過酸化物の半減期の約6〜7倍の滞留時間を有するように選択される温度で行うことができる。ポリオレフィン溶融物の温度が、反応器の長さに沿って徐々に上昇して反応器のグラフト反応ゾーン内で最大値に至り、次いで反応器出口に向けて低下する温度プロファイルが好ましい。押出機の最後のセクションでの温度減衰は、生成物をペレット化する目的で望ましい。
グラフト反応において使用される過酸化物の実例は、過酸化ベンゾイル等のジアシル過酸化物;tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシアセテート、OO−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート等のペルオキシエステル;n−ブチル4,4−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール;および1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、過酸化ジクミル、tert−ブチルクミルペルオキシド、a,a’−ビス(tert−ブチルペルオキシ−イソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキサン等の過酸化ジアルキル等を含む。
【0033】
本発明による組成物中のポリオレフィンベースグラフトコポリマーの量は、組成物の総重量に対して、0.1重量%〜約10重量%の範囲であってもよい。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、組成物に含有されるポリオレフィンベースグラフトコポリマーは、組成物の総重量に対して、好ましくは少なくとも約0.2重量%、約0.5重量%、約0.8重量%、または約1重量%であり、好ましくは約9重量%、約8重量%、約7重量%、または約6重量%未満である。
典型的には、熱可塑性加硫物自体は、本発明の概念の範囲内で、いくつかの添加油または他の添加剤を既に含んでいてもよいが、発泡体が調製され得る限り、ある特定の用途におけるいくつかの具体的な特性を達成するために、本発明による組成物中に、上述のようなさらなる添加油または他の添加剤が添加されてもよい。
本発明の別の態様は、本発明による組成物により調製された発泡体を提供する。
本発明の別の態様は、(i)熱可塑性加硫物と、ポリマーシェルおよび前記ポリマーシェル内に封入された噴射剤を含む熱膨張性ミクロスフェアとを組み合わせ、さらにポリオレフィンベースグラフトコポリマーを組み合わせてもよい、組成物を形成するステップと、(ii)組成物を発泡させて発泡体を形成するステップとを含む、本発明の発泡体の調製方法を提供する。
【0034】
本発明の発泡体は、標準的な射出成型プロセスまたは標準的な押出プロセスにおいて、本発明の組成物を成型することにより調製され得る。
射出成型プロセスにおいて、熱可塑性加硫物、熱膨張性ミクロスフェア、および含有される場合はポリオレフィンベースグラフトコポリマーが、加熱されたバレルおよびスクリュー中に導入される。成分が十分に可塑化されたら、成分は、十分な圧力および射出速度で密閉金型内に射出される。溶融ポリマーが冷却されるのに十分な時間が経過した後、最終発泡体を金型から取り出すことができる。
【0035】
押出プロセスにおいて、全ての成分は予めブレンドされ、ホッパ内に供給され得る。スクリューにより生成されるせん断は、全ての成分を可塑化および混合し、ダイに対する圧力を蓄積し、溶融物を所与の形状に押し出す。ダイの外では、熱膨張性ミクロスフェアが膨張し、発泡体構造を形成するであろう。ポリマーシェル内のガス圧がポリマーの弾性率より低くなると、膨張プロセスは停止するであろう。
押出機は、例えば、単一成分押出から、少なくとも2種から最大5種の材料を組み合わせた多成分押出までの、当該技術分野において知られた任意の好適な機器であってもよい。本発明の1つまたは複数の実施形態において、押出機は、滑らかなバレルを有する。さらに他の実施形態において、押出機は、溝付バレルを有する。
【0036】
押出機内で高せん断作用を発生させることが好ましい。スクリューは、押出機内で適切なせん断を提供し得る限り、当該技術分野において知られた任意の好適な機器、例えばピンスクリュー、Maddock型スクリュー、またはバリアスクリューであってもよい。好ましい実施形態において、スクリューは、バリアスクリューである。別の好ましい実施形態において、Maddock型スクリューが使用され得る。また、20を超える直径に対する長さの比を有する押出機を選択することが好ましい。熱膨張性ミクロスフェアの発泡は、温度のみに依存するプロセスであるため、本発明による発泡体の調製は、スクリュー速度(RPM)とは無関係であり、例えば、押出プロセスにおいて、スクリュー速度は、約5、約10、約15、約20、または約30の下の値から、約50、約60、約70、約80、または約100の上の値まで変動し得る。しかしながら、著しく高いスクリュー速度は、高せん断によりミクロスフェアを破壊する可能性があることを、当業者は認識するはずである。
押出機内での材料のブレンドは、一般に、約400℃以下、好ましくは約300℃以下、より具体的には約250℃以下の温度で行われる。溶融ブレンドが行われる最低温度は、一般に、約130℃以上、好ましくは約150℃以上、より具体的には約180℃超である。
【0037】
本発明による調製された発泡体は、低減された密度および硬度、ならびに負荷たわみと弾性との間の適正なバランスを提供し、これはソフトタッチ用途に好適である。
本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱膨張性ミクロスフェアを使用しない熱可塑性加硫物材料と比較して、本出願による組成物から作製された発泡体は、ISO1183により決定される、約0.4g/cm
3〜約0.9g/cm
3、約0.5g/cm
3〜約0.85g/cm
3、または約0.6g/cm
3〜約0.8g/cm
3の低減された密度を有し得る。
【0038】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱膨張性ミクロスフェアを使用しない熱可塑性加硫物と比較して、本出願による組成物から作製された発泡体は、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35の、および約50、約60または約70未満の低減されたショアA硬度を有し得る。1つまたは複数の実施形態において、発泡体は、約20、約30、または約40の下の値から、約50、約60または約70の上の値までの範囲のショアA硬度を有し得る。1つまたは複数の実施形態において、発泡体は、約25、約30、または約35の下の値から、約40、約50または約60の上の値までの範囲のショアD硬度を有し得る。これらのショアAおよびショアD硬度は、ISO868に従い測定される。
【0039】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱膨張性ミクロスフェアを使用しない熱可塑性加硫物と比較して、本出願による組成物から作製された発泡体は、伸びが約200%〜約400%、または約250%〜約350%の範囲の低減された破断点伸びと、張力が約1MPa〜約6MPa、または約1.5MPa〜約5MPaの範囲の低減された引張強度とを有し得る。それらの引張特性は、ISO37に従い測定される。
本発明の1つまたは複数の実施形態において、熱膨張性ミクロスフェアを使用しない熱可塑性加硫物と比較して、本発明による組成物から作製された発泡体は、約15%〜約30%、または約20%〜約25%の増加した発泡体圧縮比を有し得る。発泡体圧縮比は、キャリバーゲージで測定され得る厚さによる、元の発泡体の厚さに対する発泡体の圧縮の比である。圧縮比は、発泡体のソフトタッチおよびリラクゼーション性能を示す。
【0040】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、純粋な熱可塑性加硫物と比較して、本発明による発泡体は、約3kN/m、約3.5kN/m、約4kN/mの下の値から、約6kN/m、約6.5kN/m、または約7kN/mの上の値までの相対的引裂抵抗性を有する。本発明の1つまたは複数の他の実施形態において、発泡体は、約5kN/m、約8kN/m、約10kN/mの下の値から、約15kN/m、約20kN/m、または約25kN/mの上の値までの相対的引裂抵抗性を有する。引裂抵抗性は、ISO6383−1に従い測定されるトラウザー引裂強度により表される。驚くべきことに、ポリオレフィンベースグラフトコポリマーが組成物中に含有される1つまたは複数の実施形態において、それにより調製された発泡体は、純粋な熱可塑性加硫物と比較して改善された引裂抵抗性を有する。
【0041】
本発明による組成物または発泡体は、ソフトタッチが望ましい物品の調製、例えばアームレスト、ドアパネルまたは中央コンソールにおける自動車用途、ならびに例えばマウスパッド、グリップまたは包装材料、靴、潜水器具、衝撃吸収材、パイプ絶縁材、ケーブル絶縁材、カーペット、マット、シール、およびガスケットにおける非自動車用途に好適である。
したがって、本発明の別の態様は、本発明による組成物により調製される、または本発明による発泡体を含む物品を提供する。物品は、包装材料、自動車用発泡体、アームレスト、ドアパネル、中央コンソール、靴、潜水器具、衝撃吸収材、ホイール、グリップ、絶縁材、カーペット、マット、パッド、シール、ガスケットからなる群から選択され得る。
【0042】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、物品は、本発明による組成物または発泡体のみから作製されてもよく、一方1つまたは複数の実施形態において、物品は、少なくとも1つが本発明による組成物から作製された複数層構造を有する。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明による物品は、表層、内部層および基底層を備える複数層構造を有する。これらの実施形態において、表層は、熱可塑性エラストマー、具体的には熱可塑性加硫物から作製されてもよく、内部層は、本発明による発泡体から作製され、基底層は、ポリオレフィン樹脂、例えば、タルク、ガラス繊維等の充填剤が充填された、または充填されていないポリプロピレンから作製される。この複数層構造物品は、表面の「クッション様の」変形を提供することができ、これは感触およびリラクゼーション性能を改善する。
複数層構造物品を調製する成型プロセスは、当該技術分野において知られた任意の方法、例えば、第1の空洞内で基底層を別個に成型するステップと、サンドイッチ(共射出)金型の第2の空洞に基底層を挿入するステップと、第2の空洞内に表層を射出し、続いて本発明の組成物から作製された内部層を、第2の空洞が充填されるまで射出するステップと、最終ツール形状(例えばダイ)上の表層材料を成形するステップとを含むサンドイッチ成型プロセスであってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、以下に関する。
第1項。a)熱可塑性加硫物と、
b)ポリマーシェルおよび前記ポリマーシェル内に封入された噴射剤を含む熱膨張性ミクロスフェアと
を含む組成物であって、前記組成物の重量に対して約0.1重量%〜約10重量%の前記熱膨張性ミクロスフェアを含む組成物。
第2項。前記組成物の重量に対して少なくとも80重量%の前記熱可塑性加硫物を含む、第1項に記載の組成物。
第3項。組成物の重量に対して約0.5重量%〜1.5重量%の前記熱膨張性ミクロスフェアを含む、第1項または第2項に記載の組成物。
第4項。前記熱可塑性加硫物が、熱可塑性樹脂成分およびゴム成分の総重量に対して、i)約5重量%〜約85重量%の前記熱可塑性樹脂成分と、ii)約15重量%〜約95重量%の、分散され、少なくとも部分的に加硫された前記ゴム成分とを含む、第1項から第3項までのいずれかに記載の組成物。
【0044】
第5項。前記ゴム成分が、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、p−アルキルスチレン(alkystyrene)と4〜7個の炭素原子を有する少なくとも1種のイソモノオレフィンとのハロゲン化ゴムコポリマー、イソブチレンとジビニルベンゼンとのコポリマー、4〜8個の炭素原子を有する共役ジエンのゴムホモポリマー、4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種の共役ジエン由来の少なくとも50重量%の反復単位と8〜12個の炭素原子を有するビニル芳香族モノマー、もしくはアクリロニトリルモノマー、もしくは3〜8個の炭素原子を有するアルキル置換アクリロニトリルモノマー、もしくは不飽和カルボン酸モノマー、もしくはジカルボン酸の不飽和無水物とを有するゴムコポリマー、またはそれらの組合せを含む、第4項に記載の組成物。
【0045】
第6項。前記熱可塑性樹脂成分が、i)2〜7個の炭素原子を有するオレフィンモノマーから調製されたポリマー、ならびにii)2〜7個の炭素原子を有するオレフィンモノマーおよび(メタ)アクリレートまたは酢酸ビニルから調製されたコポリマーの少なくとも1つを含む、第4項または第5項に記載の組成物。
第7項。前記熱可塑性樹脂成分が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、またはそれらの組合せを含む、第4項から第6項のいずれかに記載の組成物。
第8項。前記熱膨張性ミクロスフェアが、少なくとも100℃のT
start、および300℃未満のT
maxを有する、第1項から第7項までのいずれかに記載の組成物。
第9項。前記熱膨張性ミクロスフェアが、少なくとも120℃のT
start、および240℃未満のT
maxを有する、第1項から第8項までのいずれかに記載の組成物。
【0046】
第10項。c)ポリオレフィンベースグラフトコポリマーをさらに含む、第1項から第9項までのいずれかに記載の組成物。
第11項。前記組成物の重量に対して約0.1重量%〜約10重量%の前記ポリオレフィンベースグラフトコポリマーを含む、第1項から第10項までのいずれかに記載の組成物。
第12項。前記組成物の重量に対して約1重量%〜約6重量%の前記ポリオレフィンベースグラフトコポリマーを含む、第1項から第11項までのいずれかに記載の組成物。
第13項。前記ポリオレフィンベースグラフトコポリマーが、ポリプロピレン−無水マレイン酸グラフトコポリマーを含む、第1項から第12項までのいずれかに記載の組成物。
第14項。熱可塑性加硫物が、50重量%未満、もしくは30重量%未満、もしくは10重量%未満、もしくは1重量%未満の、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)もしくはスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)の水素化中間ブロックを有するスチレンブロックコポリマーを含有するか、または該ポリマーを含有しない、第1項から第14項までのいずれかに記載の組成物。
【0047】
第15項。組成物の重量に対して、
a)熱可塑性樹脂成分およびゴム成分の総重量に対してi)約5重量%〜約85重量%の前記熱可塑性樹脂成分と、ii)約15重量%〜約95重量%の、分散され、少なくとも部分的に加硫された前記ゴム成分とを含む、少なくとも80重量%の熱可塑性加硫物と、
b)ポリマーシェルおよび前記ポリマーシェル内に封入された噴射剤を含む、約0.3〜約6重量%の熱膨張性ミクロスフェアであって、少なくとも100℃のT
startおよび300℃未満のT
maxを有する熱膨張性ミクロスフェアと、
c)組成物の重量に対して約1重量%〜約6重量%のポリプロピレンベースグラフトコポリマーと
を含む組成物。
【0048】
第16項。熱可塑性加硫物と、ポリマーシェルおよび前記ポリマーシェル内に封入された噴射剤を含む熱膨張性ミクロスフェアとを組み合わせるステップであって、さらにポリオレフィンベースグラフトコポリマーを組み合わせてもよいステップ
を含む組成物の作製方法。
【0049】
第17項。第1項から第15項までのいずれかに記載の組成物から作製された発泡体。
第18項。ISO868により決定される約20〜約70のショアA硬度を有する、第17項に記載の発泡体。
第19項。ISO1183により決定される約0.4g/cm3〜約0.9g/cm3の密度を有する、第17項または第18項に記載の発泡体。
第20項。ISO37により決定される、約200%〜400%の最終破断点伸びおよび約1MPa〜6MPaの最終引張強度を有する、第17項から第19項までのいずれかに記載の発泡体。
第21項。キャリバーゲージで測定される厚さによる、約15%〜約35%の圧縮比を有する、第17項から第20項までのいずれかに記載の発泡体。
【0050】
第22項。(i)熱可塑性加硫物と、ポリマーシェルおよび前記ポリマーシェル内に封入された噴射剤を含む熱膨張性ミクロスフェアとを組み合わせ、さらにポリオレフィンベースグラフトコポリマーを組み合わせてもよい、組成物を形成するステップと、
(ii)組成物を発泡させて発泡体を形成するステップと
を含む発泡体の調製方法。
第23項。第17項から第21項のいずれかに記載の発泡体または第22項に記載の方法により調製された発泡体を含む物品。
第24項。熱可塑性エラストマーから作製された表層と、請求項17に記載の発泡体から作製された内部層と、ポリオレフィン樹脂から作製された基底層とを備える、第23項に記載の物品。
第25項。包装材料、自動車用発泡体、アームレスト、ドアパネル、中央コンソール、靴、潜水器具、衝撃吸収材、ホイール、グリップ、絶縁材、カーペット、マット、パッド、シール、およびガスケットからなる群から選択される、第23項または第24項に記載の物品。
【実施例】
【0051】
ここで、本発明のいくつかの利点を実証するために実例を説明するが、本発明の他の利点は、当業者に明らかとなるはずである。
便宜上、密度、伸び破断、引張強度、トラウザー引裂強度、圧縮比、ショアA硬度等の特性を決定するための様々な具体的試験手順が、表1に特定される。しかしながら、当業者は、この特許を読み、組成物またはポリマーが特許請求の範囲において特定される具体的特性を有するかどうかを決定することを望む場合、その特性を決定するために、公開または十分に認識された任意の方法または試験手順に従うことができるが、具体的に特定された手順が好ましい。各請求項は、異なる手順が異なる結果または測定値をもたらすとしても、そのようないずれの手順の結果も包含するものと解釈されるべきである。全ての数値は、一般的な試験の性質を考慮して、「約」または「近似的に」記載された値であると考えることができる。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1〜8は、本発明の組成物から作製された発泡体に関する。
ただし、実施例1及び6は本発明の参考例である。比較例AおよびBは、熱膨張性ミクロスフェアを使用しない熱可塑性加硫物材料に関する。実施例において使用された材料は、以下の通りである。
熱可塑性加硫物:共にExxonMobil Chemical Companyから入手可能であり、ポリプロピレン連続相中に分散した硬化エチレン−プロピレンゴムを含む、Santoprene(商標)121−73W175(TPV−A)およびSantoprene(商標)121−58W175(TPV−B)。
【0054】
熱膨張性ミクロスフェア:Akzo Noble N.V.から市販されており、140℃のT
startおよび205℃のT
maxを有すると報告されている、Expancel(商標)950−120。
ポリオレフィンベースグラフトコポリマー:ExxonMobil Chemical Companyから市販されており、ポリプロピレン−無水マレイン酸グラフトコポリマーである、Exxelor(商標)1020。
【0055】
実施例の組成を以下の表2に示す。
【表2】
【0056】
発泡体の調製は、標準的押出プロセスにより行った。処理条件を表3に記載する。
【表3】
【0057】
ISO標準に従い材料特性を測定するために、押出発泡体を約10mmの外径および約8mmの内径を有する管として成形した。調製された発泡体の弾性および機械的特性等の材料特性を評価するために、表1に示される方法により、密度、破断点伸び、引張強度、トラウザー引裂強度を測定した。結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
上記試験結果から、発泡体の密度が大幅に低減され、また破断点伸びおよび引張強度が低減されたが、発泡体はまだ良好な弾性特性を示したことが確認され得る。また、本発明に従い調製された発泡体のトラウザー引裂強度等の機械的特性が、比較例の熱可塑性加硫物の機械的特性に匹敵していたことが確認され得る。実施例2において、トラウザー引裂強度はさらに、少なくとも比較例の熱可塑性加硫物(比較例2)のトラウザー引裂強度でさえあった。
【0060】
実施例9〜15は、自動車用アームレストに適用される三層物品に関する。実施例9〜15の物品は、ExxonMobil Chemical Companyから入手可能な熱可塑性加硫物である、Santroprene(商標)8211−75M300から作製された表層と、ExxonMobil Chemical Companyから入手可能な熱可塑性加硫物である、Santroprene(商標)8211−45(TPV−C)または8211−25(TPV−D)のブレンドから作製された発泡コア層と、Akzo Nobel N.V.から入手可能な熱膨張性ミクロスフェアである、120℃のT
startおよび205℃のT
maxを有するExpancel(商標)930MB120、または140℃のT
startおよび200℃のT
maxを有する950MB80と、20重量%のタルクが充填されたポリプロピレンから作製された基底ポリプロピレン層(PPインサート)とを備えていた。射出プロセスは、Ferromatik Milacron GmbHにより製造された2Kサンドイッチ成型機で行い、3つのステップにより実行した。第1の空洞内でポリプロピレンから作製された基底層を別個に成型し、サンドイッチ金型で第2の空洞に基底層を挿入し、第2の空洞内に表層を射出し、続いて表5のように配合された組成物から作製された内部層を、第2の空洞が充填されるまで射出し、最終ツール形状の3層物品を所望の形状として成形した。いくつかの処理条件は、表5に示されるような約170℃〜約205℃の範囲の溶融温度、室温のツール温度、0バールの保持圧力を含み、内部層のための射出時間は約3〜約5秒であり、射出速度は約100mm/秒〜約300mm/秒の範囲であり、これはランナー、ゲートおよび少なくとも部品設計により変動し、コアショットサイズは75%であった。
【0061】
3層物品の組成および発泡内部層のいくつかおよび発泡体性能を、表5に列挙する。発泡体膨張、発泡体圧縮比、および硬度の試験結果を表6に列挙する。表層を切り取った後に発泡体外観を観察した。
図1は、射出金型のゲートに近い位置(a)、射出金型のゲートまでの中間位置(b)、および射出金型のゲートに対し反対の位置(c)での、実施例9における発泡体の断面を示す。
図2は、熱可塑性加硫物から作製された表層のみを備える物品と比較した、実施例9〜15による発泡体を含む物品の硬度および圧縮性能を示す。
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
実施例9〜15の物品の表層の硬度および発泡体圧縮比もまた測定した。硬度は75であり、圧縮比は3%未満であった。上記結果ならびに
図1および2から、本発明の発泡体を含む物品が、非常に良好な圧縮およびレスポンス特性、ならびに均質な気泡構造を提供し、クッション様の性能を示したことが確認され得る。
また、本発明は以下の態様であり得る。
〔1〕
a)熱可塑性加硫物と、
b)ポリマーシェルおよび前記ポリマーシェル内に封入された噴射剤を含む熱膨張性ミクロスフェアと
を含む組成物であって、前記組成物の重量に対して約0.1重量%〜約10重量%の前記熱膨張性ミクロスフェアを含む組成物。
〔2〕
前記組成物の重量に対して少なくとも80重量%の前記熱可塑性加硫物を含む、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕
組成物の重量に対して約0.5重量%〜1.5重量%の前記熱膨張性ミクロスフェアを含む、〔1〕または〔2〕に記載の組成物。
〔4〕
前記熱可塑性加硫物が、熱可塑性樹脂成分およびゴム成分の総重量に対して、
i)約5重量%〜約85重量%の前記熱可塑性樹脂成分と、
ii)約15重量%〜約95重量%の、分散され、少なくとも部分的に加硫された前記ゴム成分と
を含む、〔1〕から〔3〕までのいずれか1項に記載の組成物。
〔5〕
前記ゴム成分が、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、p−アルキルスチレン(alkystyrene)と4〜7個の炭素原子を有する少なくとも1種のイソモノオレフィンとのハロゲン化ゴムコポリマー、イソブチレンとジビニルベンゼンとのコポリマー、4〜8個の炭素原子を有する共役ジエンのゴムホモポリマー、4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種の共役ジエン由来の少なくとも50重量パーセントの反復単位と、8〜12個の炭素原子を有するビニル芳香族モノマー、もしくはアクリロニトリルモノマー、もしくは3〜8個の炭素原子を有するアルキル置換アクリロニトリルモノマー、もしくは不飽和カルボン酸モノマー、もしくはジカルボン酸の不飽和無水物とを有するゴムコポリマー、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む、〔4〕に記載の組成物。
〔6〕
前記熱可塑性樹脂成分が、i)2〜7個の炭素原子を有するオレフィンモノマーから調製されたポリマー、およびii)2〜7個の炭素原子を有するオレフィンモノマーと(メタ)アクリレートまたは酢酸ビニルとから調製されたコポリマーの少なくとも1つを含む、〔4〕または〔5〕に記載の組成物。
〔7〕
前記熱可塑性樹脂成分が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、またはそれらの組合せを含む、〔4〕または〔5〕に記載の組成物。
〔8〕
前記熱膨張性ミクロスフェアが、少なくとも100℃のTstart、および300℃未満のTmaxを有する、〔1〕から〔7〕までのいずれか1項に記載の組成物。
〔9〕
前記熱膨張性ミクロスフェアが、少なくとも120℃のTstart、および240℃未満のTmaxを有する、〔1〕から〔8〕までのいずれか1項に記載の組成物。
〔10〕
c)ポリオレフィンベースグラフトコポリマーをさらに含む、〔1〕から〔9〕までのいずれか1項に記載の組成物。
〔11〕
前記組成物の重量に対して約0.1重量%〜約10重量%の前記ポリオレフィンベースグラフトコポリマーを含む、〔10〕に記載の組成物。
〔12〕
前記組成物の重量に対して約1重量%〜約6重量%の前記ポリオレフィンベースグラフトコポリマーを含む、〔10〕または〔11〕に記載の組成物。
〔13〕
前記ポリオレフィンベースグラフトコポリマーが、ポリプロピレン−無水マレイン酸グラフトコポリマーを含む、〔10〕から〔12〕までのいずれか1項に記載の組成物。
〔14〕
熱可塑性加硫物が、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンまたはスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンの水素化中間ブロックを有する、50重量%未満のスチレンブロックコポリマーを含有する、〔1〕から〔13〕までのいずれか1項に記載の組成物。
〔15〕
〔1〕から〔14〕までのいずれか1項に記載の組成物から作製された発泡体。
〔16〕
ISO868により決定される約20〜約70のショアA硬度を有する、〔15〕に記載の発泡体。
〔17〕
ISO1183により決定される約0.4g/cm3〜約0.9g/cm3の密度を有する、〔15〕または〔16〕に記載の発泡体。
〔18〕
ISO37により決定される、約200%〜400%の最終破断点伸びおよび約1MPa〜6MPaの最終引張強度を有する、〔15〕から〔17〕までのいずれか1項に記載の発泡体。
〔19〕
キャリバーゲージで測定される厚さによる、約15%〜約35%の圧縮比を有する、〔15〕から〔18〕までのいずれか1項に記載の発泡体。
〔20〕
〔15〕から〔19〕までのいずれか1項に記載の発泡体を含む物品。
〔21〕
熱可塑性エラストマーから作製された表層と、〔15〕から〔19〕までのいずれか1項に記載の発泡体から作製された内部層と、ポリオレフィン樹脂から作製された基底層とを備える、〔20〕に記載の物品。
〔22〕
包装材料、自動車用発泡体、アームレスト、ドアパネル、中央コンソール、靴、潜水器具、衝撃吸収材、ホイール、グリップ、絶縁材、カーペット、マット、パッド、シール、およびガスケットからなる群から選択される、〔20〕または〔21〕に記載の物品。
〔23〕
a)熱可塑性加硫物と、b)ポリマーシェルおよび前記ポリマーシェル内に封入された噴射剤を含む熱膨張性ミクロスフェアとを組み合わせるステップであって、さらにc)ポリオレフィンベースグラフトコポリマーを組み合わせてもよいステップ
を含む組成物の作製方法。
〔24〕
(i)熱可塑性加硫物と、ポリマーシェルおよび前記ポリマーシェル内に封入された噴射剤を含む熱膨張性ミクロスフェアとを組み合わせ、さらにポリオレフィンベースグラフトコポリマーを組み合わせてもよい、組成物を形成するステップと、
(ii)組成物を発泡させて発泡体を形成するステップと
を含む発泡体の調製方法。