(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の切削工具では、径方向において一定のピッチで切れ刃の径方向位置を調整できるが、そのピッチによる切れ刃の位置調整しか行うことができない。すなわち、特許文献1の切れ刃の位置の調整機構では、任意の調整値で切れ刃の位置調整を行うことができない。
【0006】
任意の調整値で切れ刃の位置調整を行うためには、ねじ部材を用いる方法がある。ねじ部材を用いて任意の調整値で切れ刃の位置調整を行う場合、ねじ部材の回転軸線の方向に切れ刃の位置調整を行うと、簡易的な構造でその調整ができる。しかし、特許文献1に記載のように、くさび部材を用いて切削インサートを取り付ける場合、切れ刃の位置の調整方向には、切削インサートが存在する。したがって、切削インサートまたはそれに加えてくさび部材が障害物となるため、切削インサートまたはそれに加えてくさび部材を取り外さないとねじ部材をレンチなどで回すことができないという煩わしさについての問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、切削インサートを工具ボデーに取り付けるためにくさび部材を用いつつ、切削インサートの切れ刃の位置調整を任意の調整値でより容易に行うことを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
工具ボデーのインサート取付部に切削インサートを着脱自在に取り付けるためのインサート取付機構であって、
前記インサート取付部において前記切削インサートの内側に配置されて該切削インサートに作用する調整部材であって
、前記調整部材および前記インサート取付部の少なくとも一方に形成された少なくとも1つのねじ穴に
ねじ部材が螺合し、該調整部材は、該ねじ部材を回転させることにより該ねじ部材の中心軸線の方向に進退可能である、調整部材と、
前記インサート取付部において前記調整部材の外側に前記切削インサートと共に配置されるくさび部材であって、該くさび部材は、くさび用取付部材により前記切削インサートと前記インサート取付部の内壁面とに押圧力を及ぼすように取り付けられる、くさび部材と
を備え、
前記くさび部材は、前記ねじ部材に前記くさび部材の外側からアクセス可能
に構成されている、インサート取付機構が提供される。
【0009】
かかる構成を備える本発明の一態様のインサート取付機構によれば、くさび部材のくさび作用によって切削インサートをしっかりとインサート取付部に取り付けることができると共に、調整部材の位置をねじ部材で調整することにより、切削インサートの切れ刃の位置を任意の調整値で調整することができる。さらに、くさび部材の外側からねじ部材にアクセス可能にくさび部材は構成されているので、切削インサートおよびくさび部材を取り外さなくても、ねじ部材を回転させることができる。よって、本発明の一態様によれば、切削インサートおよびくさび部材をインサート取付部に配置した状態で切削インサートの切れ刃の位置の微調整をより容易に行うことができる。
【0010】
前記ねじ部材は前記くさび部材の内側に配置されている。または、前記くさび部材は、前記ねじ部材にアクセスするために溝または貫通穴を有する。
【0011】
好ましくは、前記ねじ部材は、ねじれ方向の異なる2つのねじ部分を備える。この場合、該2つのねじ部分のうちの一方は前記調整部材に形成されるねじ穴と螺合し、かつ他方は前記インサート取付部に形成されるねじ穴と螺合するとよい。
【0012】
好ましくは、前記調整部材は、前記ねじ部材の前記中心軸線の方向に該調整部材が移動することをガイドするように、前記インサート取付部に設けられた係合部と係合可能な係合部を有する。
【0013】
好ましくは、前記調整部材の前記係合部は、セレーション形状を有する。このセレーション形状は複数の凹凸を有するとよい。この係合部は、少なくとも1つの凸部または凹部を有する種々の係合形状を有し得る。
【0014】
好ましくは、インサート取付機構は、前記インサート取付部に配置されるロケータをさらに備える。この場合、前記インサート取付部の前記係合部は、該ロケータに形成されるとよい。
【0015】
好ましくは、インサート取付機構は、前記ねじ部材の回転に伴う前記調整部材の移動方向と交差する(例えば略直交する)第2方向に前記切削インサートを動かすための第2調整部材をさらに備える。この場合、該第2調整部材は該第2方向に進退可能な第2ねじ部材を備えるとよい。
【0019】
本発明は、工具ボデーに切削インサートが着脱自在に装着される切削工具であって、上記インサート取付機構が適合された、切削工具にも存する。この切削工具は、回転軸線周りに回転される回転切削工具であるとよい。インサート取付機構が上記第2調整部材を備える場合、前記第2ねじ部材の前記第2方向は、該回転切削工具の回転軸線に略平行な方向であるとよい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る切削工具1について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1にみられるように、この実施形態の回転切削工具1は、略円盤状の工具ボデー3を備えるサイドカッタであり、より詳しくは歯切りカッタである。工具ボデー3は、略円盤形状であり、対向する2つの端面3a、3bと、これら2つの端面間に延在する外周部3cとを有する。2つの端面3a、3bを貫通するように、工具ボデー3には、貫通穴3dが形成される。貫通穴3dに図示しないアーバまたは工作機械の主軸等に設けられた軸部が嵌め込まれることにより、工具ボデー3はアーバまたは工作機械の主軸等に取り付けられる。工具ボデー3を備える回転切削工具1は、貫通穴3dの中心軸線Aを回転軸線として、回転させられる。外周部3cには、複数のインサート取付部21が形成されている。各インサート取付部21には、切削インサート2が取り付けられる。
【0023】
切削インサート2は、
図4および
図5に示され、板状とされ、2つの対向する端面2a、2bと、その2つの端面の間に延在する周側面2cとを備える。切削インサート2は、一方の端面2aと周側面2dとの交差部に延在する切れ刃2dを備える。切れ刃2dは、断面形状が湾曲する溝を切削加工できるように形成される。特に、切削インサート2は、歯切り加工に用いることができるように形成されているので、切れ刃2dは、歯形曲線形状(例えばインボリュート曲線形状)を有する。したがって、切削インサート2が取り付けられた切削工具1は、上記記載からも明らかなように、いわゆる総型工具とされる。
【0024】
切削インサート2には、右勝手の切削インサート2と左勝手の切削インサート2とがある。右勝手の切削インサート2と左勝手の切削インサート2とは、交互に工具ボデー3の外周部3cに千鳥状に配置される。切削インサート2は、工具ボデー3の端面3a、3bに関して片側6個ずつ、合計12個が工具ボデー3に配置される。したがって、2つの端面3a、3bの一方の端面3a側に位置付けられた切削インサート2は右勝手の切削インサートであり、他方の端面3b側に位置付けられた切削インサート2は左勝手の切削インサートである。
図4および
図5に示されているのは、右勝手の切削インサート2である。左勝手の切削インサート2は、右勝手の切削インサート2と鏡像対称な形状とされるため、説明を省略する。
【0025】
図5の平面図において、切削インサート2の右下に形成された曲線状の稜線部が切れ刃2dとされる。切れ刃2dが縁部に形成される端面2aは、すくい面であり、ここでは特に上面と呼ばれる。切れ刃2dが縁部に形成される周側面2cのうちの側面(ここでは湾曲側面2e)は、逃げ面となる。ただし、切れ刃2dは、曲線状稜線部以外にまで延在してもよく、よって湾曲側面2e以外の周側面2cの部分も逃げ面となってよい。なお、切れ刃の形状や、工具ボデーに取り付けられる切削インサート2の数量、配置などは、この実施形態に限定されず、被加工物の形状や切削条件に応じて、適宜調整されるとよい。
【0026】
切削工具1は、切削インサート2を工具ボデー3に固定するまたは取り付ける(つまり装着する)ために、インサート取付機構100を有する(つまりインサート取付機構100が適合されている)。インサート取付機構100は、くさび部材10と、調整部材30と、ロケータ(位置調整用部材)50と、第2調整部材60とを備え、これらはインサート取付部21に着脱自在にそれぞれ取り付けられる。
【0027】
インサート取付機構100により切削インサート2がしっかりと取り付けられた回転切削工具1が、
図1および
図17に示されている。
図17では、回転切削工具1の回転軸線としての貫通穴3dの中心軸線A(
図17では図示せず)が紙面平行になるように、切削工具1が示されている。したがって、
図18の断面図および
図19の断面図は、それぞれ、中心軸線Aに直交する平面での回転切削工具1の部分的な断面図である。また、
図20Aおよび
図20Bは、それぞれ、中心軸線Aに平行な平面での回転切削工具1の部分的な断面模式図である。以下、これらの組立図および断面図に基づいて、インサート取付機構100について詳細に説明する。まず、インサート取付機構100が適合された工具ボデー3のインサート取付部21について説明する。
【0028】
工具ボデー3は、外周部(または外周面)3cに、複数の支持壁部3eを備える。各支持壁部3eは、中心軸線Aに対して概ね径方向に突き出るように延在する。支持壁部3eは、貫通穴3dの中心軸線A周りの周方向に等間隔で配置されている。切削工具1では、支持壁部3eの数は、工具ボデー3に取り付けられる切削インサート2の数に一致する。したがって、ここでは、工具ボデー3は、12個の支持壁部3eを有する。しかし、支持壁部3eの数は、工具ボデー3に取り付けられる切削インサート2の数に一致しなくてもよい。
【0029】
周方向に互いに隣り合う2つの支持壁部3eにより、それらの間にインサート取付部21が形成される。つまり、インサート取付部21は、2つの隣り合う支持壁部30eに着目してそれらの一方を第1支持壁部3e1とし他方を第2支持壁部3e2とすると(
図21の下方の支持壁部参照)、中心軸線A周りの回転方向Rにおいて前方側の第1支持壁部3e1の回転方向後方を向いた後壁面3hと、中心軸線A周りの回転方向Rにおいて後方側の第2支持壁部3e2の回転方向前方を向いた前壁面3iと、これら壁面3h、3iの間に延在する底壁面3jとにより概ね区画形成される。このように、3つの壁面3h、3i、3jを内壁面として有するインサート取付部21は溝状またはポケット状であるので、以下ではポケットと称し得る。ただし、ポケット21は、径方向外側ほどその空間領域が拡張するように、形成されている。これは、主として、インサート取付機構100が、切削インサート2をしっかりと取り付けるためにくさび部材10を採用するからである。なお、各インサート取付部21は、中心軸線A方向において開いているが、中心軸線A方向において切削インサート2を支持するための1つ以上の壁面を有してもよい。なお、右勝手の切削インサート2が取り付けられるポケット21は、左勝手の切削インサート2が取り付けられるポケット21と(貫通穴3dの中心軸線Aに直交すると共に外周部3cを通過する仮想平面(不図示)に対して)概ね左右対称な関係を有する。
【0030】
各ポケット21は、後で詳述されるくさび部材10と調整部材30との位置関係に基づく段部3f、および、調整部材30の形状に適合するように段部3sに形成された凹部3gと、後述するねじ部材と係合するための複数のねじ穴とを有する。段部3fは、後壁面3hと底壁面3jとの交差領域に中心軸線A方向に延びるように形成されている。凹部3gは、段部3fを底壁面3j側に切り欠くように形成されている。このように、段部3fおよび凹部3gは、第1および第2の支持壁部のうち、中心軸線A周りの回転方向Rにおいて前方側の第1支持壁部3e1の後壁面3hに関して設けられる。
【0031】
図1から
図3にみられるように、回転切削工具1の切削インサート2は、くさび部材10を用いて取り付けられる。くさび部材10は、
図6から
図12に示され、くさび作用で、切削インサート2をポケット21に固定するように設計されている。
図3にみられるように、くさび部材10は、ポケット21に、くさび用取付部材20を用いて固定されるまたは取り付けられる。くさび用取付部材20は、締めつけねじとされる。くさび部材10は、ポケット21の中に配置される。この回転切削工具1では、ポケット21にねじ穴3kが設けられる。特に、このねじ穴3kは、段部3fに設けられていて、底壁面3jに交差する方向に延びる(
図21参照)。締めつけねじ20は、ねじ穴3kと螺合し、ポケット21において、その中心軸線周りの回転に伴いその中心軸線の方向に進退可能とされる。締めつけねじ20をポケット21の奥側または径方向内側に向けて動かすように締めつけることで、くさび部材10はポケット21の奥側または内側に押し込まれる。くさび部材10が、ポケット21の後壁面3hと、工具回転方向Rの前方側を向いた当接面としての切削インサート2の上面2aとの間に押し込まれてそれらに押圧力を及ぼすことで、切削インサート2は、工具ボデー3へ強固に固定される。切削インサート2を取り外すためにくさび部材10を緩めるときは、締めつけねじ20はポケット21の径方向外側に向けて動かすように緩められる。くさび部材10の進退方向は、締めつけねじ20の進退方向と略平行な方向である。この回転切削工具1では、
図19から明らかなように、締めつけねじ20の進退方向が、切削インサート2の上面2aに対して傾斜する方向とされる。特に、締めつけねじ20の傾斜方向(つまりねじ穴3kの中心軸線の傾斜方向)は、締めつけねじ20が径方向外側に後退するほど切削インサート2の上面2aから離れるように定められていて、中心軸線Aに直交する仮想平面(
図19)に沿って定められる。このように締めつけねじ20の進退方向が、切削インサート2の上面2a対して傾斜する方向とされると、締めつけねじ20を緩めたときに、くさび部材10が切削インサート2から離れやすくなる。なお
図6から
図12に示すくさび部材10の形状については、後述するため、ここではその説明を省略する。
【0032】
図13および
図14に調整部材30を示す。調整部材30は、切削インサート2と接触し(に作用し)、切削インサート2の切れ刃の位置を調整するための部材である。調整部材30は、略直方体状の本体部30aと、該本体部の長手方向の略中央位置に設けられたねじ穴部30bと、このねじ穴部30bと対向する位置関係を有する係合部としてのセレーション31とを備える。
【0033】
本体部30aは長手方向にそれぞれが延在する4つの面と、これら4つの面の間に延在する相対的に小さな2つの面とを有する。本体部30aの4つの長手方向の面のうち、2つの対向する面に関して、ねじ穴部30bと、セレーション31とが形成されている。セレーション31は、ねじ穴部30bが突き出すように形成されている面30dに対向する面30eに形成されている。ここで、本体部30aの長手方向に延びて本体部30aを略2等分する第1仮想面S1を
図14に示すように定める。第1仮想面S1は2つの面30d、30eに略平行に延びる。ねじ穴部30bは、第1仮想面S1の一方の側(面30d側)に本体部30aから突き出るように形成され、第1仮想面S1に対して、セレーション31と略反対側に位置する。第1仮想面S1に直交すると共に、本体部30aを2等分するように延びる第2仮想面S2を定めるとき、第2仮想面S2は、ねじ穴部30bのねじ穴30cの中心軸線30fを含むように延在する。セレーション31が形成されている面30eおよびねじ穴部30bが突き出るように形成されている面30dの2つの対向する面以外の面は、平面として構成されている。特に、
図14において紙面平行に表される面30gは、調整部材30の切削インサート2との当接面として構成され、平面とされているが、平面でなくてもよい。なお、ねじ穴部30bの本体部30aからの突き出した形状は、ポケット21の凹部3gにねじ穴部30bが嵌まり込むように設計される。
【0034】
セレーション31は、複数の凹凸を有し、より詳しくはセレーション形状(鋸歯状)を有する。セレーション31は、1つの凸部、または1つの凹部のみとされても構わないが、複数の凹凸を有する。セレーション31の凹部(谷溝)および凸部(山部)は、第2仮想平面S2に略平行に延び、ねじ穴30cの中心軸線30fに略平行に延びている。セレーション31の凸部または凹部は、ポケット21における調整部材30の進退方向を定める。したがって、セレーション31は、後述するロケータ50の係合部としてのセレーションと互いに係合して、調整部材30のガイド部としての機能を担う。なお、セレーション31はポケット21での調整部材30の傾きを防止できる形状であれば(つまりしっかりと調整部材30をガイドできる形状であれば)、どのような形状でも構わない。
【0035】
調整部材30のねじ穴30cには、ねじ部材40が螺合する。ねじ穴30cは、その内面に、ねじ山を備える。ねじ部材40は、ポケット21とも接触する。具体的には、ねじ部材40は、ポケット21に形成されたねじ穴3mにも螺合するように形成されている。ねじ穴3mは凹部3gに位置付けられていて、底壁面3jに交差するように、特にここでは直角を成すように延びる。そして調整部材30は、ねじ部材40の中心軸線方向(つまりねじ穴3mの中心軸線方向)においてポケット21に対して進退可能とされる。この回転切削工具1のねじ部材40は、ねじれ方向の異なる2つのねじ部分40a、40bを備え、いわゆる左右ねじとして構成されている。
図18から明らかなように、ねじ部材40の2つのねじ部分はねじ部材40の軸線40cの方向に並んで配置されていて、2つのねじ部分の一方のねじ部分40aは調整部材30のねじ穴30cに螺合し、他方のねじ部分40bはポケット21のねじ穴3mに螺合する。ねじ部材40の2つのねじ部分のねじれ方向が互いに対して異なるため、調整部材30とポケット21とに係合した状態のねじ部材40をその中心軸線40c周りに回すことで、調整部材30は、ポケット21において、ねじ部材40の中心軸線40cの方向に進退可能とされる。ねじ部材40の中心軸線40c(つまりねじ穴3mの中心軸線)は
図18において紙面に平行であるので、ここでは、ねじ穴3mとの係合によるねじ部材40の進退は、貫通穴3dの中心軸線Aに直交する仮想平面に沿って生じる。なお、ねじ部材40は、中心軸線40c周りのねじの回転角度に対してその進退移動量を自由に設定でき、例えば相対的に大きくできるため、ねじ部材40の一端(中心軸線40c方向のねじ部分40a側の端部)の係合部に係合するレンチを回すスペースが狭いような場合でも、調整部材30の位置調整が容易である。この回転切削工具1の調整部材30の全長(第1仮想面に沿った長さ)は、約70mmとされる。調整部材30の厚さ(第2仮想面に沿ったねじ穴部30での最大長さ)は、約15mmとされる。しかし、調整部材30の大きさは、これに限定されない。
【0036】
図6から
図12にみられるように、くさび部材10は、全体としてはくさび形状を有し、略6面体の外形を有して構成されている。くさび部材10は、さらに、くさび部材を取り付けるためのねじ係合部10aと、溝11とを有する。くさび部材10は、ポケット21を区画形成する支持壁部3eの後壁面3hに当接可能な前当接面10cと、この前当接面10cに概ね対向して切削インサート2の上面2aに当接可能な後当接面10dとを備える。溝11は後当接面10cに設けられている。ねじ係合部10aは溝11に対して前当接面10c寄りに位置付けられ、特にここでは前当接面10cに開くように形成されている。
【0037】
くさび部材10の前当接面10cと後当接面10dとは、ポケット21において、工具回転方向Rにおいて切削インサートをしっかりと固定するためにくさび形状に形成され、互いに対して非平行になっている。さらに、
図3に示されるように、くさび部材10の前当接面10cと後当接面10dとは、ポケット21に配置されたとき、中心軸線A方向において切れ刃2d側ほど先細りするように互いに対して傾斜付けられている。したがって、くさび部材10は、ポケット21において、切れ刃2d側にずれ動くことが防止される。
【0038】
ねじ係合部10aは、
図6に示されるように、くさび用取付部材である締めつけねじ20の頭部20aが収容されて係合し、かつ、締めつけねじ20のねじ部20bがくさび部材10の外側に向けて突き出すように構成されている。締めつけねじ20はポケット21のねじ穴3kに螺合する(
図19参照)。ねじ係合部10aの締めつけねじ20へのアクセスは、くさび部材10に形成されたアクセス穴10bを介してレンチまたはドライバを挿し込むことで行われる。レンチまたはドライバは、締めつけねじ20の頭部20aの係合凹部に係合する。なお、アクセス穴10bは、締めつけねじ20の頭部20aが通過できない大きさを有する。
【0039】
くさび部材10の溝11は、調整部材30用のねじ部材40を回すためのレンチまたはドライバをとおすための溝とされる。したがって、後述するように、ポケット21の径方向内側(または奥側)に調整部材30を配置し、その径方向外側にくさび部材10を配置したとき、溝11は、ねじ部材40の回転軸(中心軸線40c)の延長線上に延び、作業空間を与える。溝11は、レンチまたはドライバが出入りできる大きさに形成され、例えばそれらの軸部よりも大きな断面積を有する溝とされる。
【0040】
溝11は、貫通穴とされても構わない。また、くさび部材10は、複数に分割されて配置されても構わない。くさび部材10が複数の部材から構成される場合、ねじ部材40の回転軸の延長線上を、くさび部材10の構成部材が覆わないでまたは塞がないでねじ部材40に対する作業空間を確保できればよい。くさび部材10が複数の部材から構成される場合、くさび用取付部材20も複数とされることが好ましい。しかし、これに限定されない。くさび部材10の複数の構成部材を一体的に取り付けることができるのであれば、くさび用取付部材20は1つの部材とされても構わない。すなわち、くさび用取付部材20は、くさび部材10のパーツ数よりも少ない個数の部材で構成することができる。この回転切削工具1の溝11の幅は、約8mmとされる。しかし、これに限定されない。くさび部材10は、くさび作用を発揮し、かつ、ねじ部材40を回すためのレンチまたはドライバが作業可能にくさび部材10を通過する形状であれば、どのような形状または分割形状とされても構わない。
【0041】
図1から
図3にみられるように、回転切削工具1の工具ボデー3のポケット21には、
図15に示すロケータ50が取り付けられる。ロケータ50は、工具ボデー3の工具回転方向R(つまり周方向)において、切削インサート2の後方側に配置され、ポケット21を区画形成する前壁面3iと切削インサート2の下面2bとの間に配置される。ロケータ50は、ねじを用いてロケータ50をポケット21に取り付けるためのねじ係合部(当接部)50a、50bと、後述される第2の調整部材60をとりつけるためのねじ穴50c、50dとを備える。なお、
図18、19に示すように、ねじ係合部50a、50bには、ねじ部材53、54がそれぞれ係合する。
【0042】
ロケータ50は、板状であり、2つの対向する端面50e、50fと、これらの間に延在する周側面50gとを備える。そして、ロケータ50は、切削インサート2の形状に類似した形状を有する。ロケータ50は、
図1に示すように切削インサート2が配置されたとき、切削インサート2の切れ刃2dが工具ボデー3の径方向外周側かつ回転軸線A方向に所定量だけロケータ50の外方に突き出るように、切削インサート2の初期設定位置を実質的に定めるように設計されている。ロケータ50の2つの端面のうちの一方の端面50eは、切削インサート2の(すくい面としての上面2aに対向する)下面2bと接触する当接面として構成されている。ロケータ50は、端面50eに、調整部材30のセレーション31に対応するセレーション51を備える。セレーション51は、調整部材30のセレーション31と係合するようにセレーション形状に形成されていて、係合部を構成する。セレーション51は、種々の凹部または凸部、あるいはそれらの複合体として構成されることができるが、セレーション形状とされることが好ましい。しかし、セレーション51はこれに限定されない。ロケータ50のセレーション51は、調整部材30のセレーション31に対応し、調整部材30の進退方向を定め、調整部材30の傾きを防止できれば、どのような形状とされても構わない。なお、ロケータ50の端面50fはポケット21の前壁面3iに接触する当接面として構成されている。そして、ねじ係合部50a、50bは、それぞれ、2つの端面50e、50fを貫通する段付き穴として形成されている。また、ねじ穴50c、50dは、それぞれ、周側面50gに形成され、互いに平行である2つの端面50e、50fに略平行に延びる。なお、セレーション51は、全体的に端面50eから、端面50e、50fの対向方向において外側に突き出すように形成されている突出し部分に形成されている。
図19に示すように、ポケット21において、ロケータ50のこの突出し部分と調整部材30との上に、ここでは主に調整部材30の上に、切削インサート2は載ることができる。
【0043】
ロケータ50は、
図18、19に示すように、ねじ部材53、54をロケータ50の穴を介してポケット21のねじ穴に螺合させることで工具ボデー3に取り付けられ、工具ボデー3の一部として機能する。ロケータ50が用いられず、工具ボデー3の前壁面3iに直接切削インサート2や調整部材30が接触するようにされても構わない。しかし、ロケータ50を用いると、セレーション51のような係合部を精度よく形成することが容易となる。なお、ロケータ50の係合部50a、50bは、段付き貫通穴であることに限定されず、溝または凹部など、既知の様々な形状が適用できる。
【0044】
図1、
図3および
図16にみられるように、インサート取付機構100は、第2の調整部材60をさらに備える。第2の調整部材60は、平板形状を有する本体部60dを備える。第2の調整部材60は、切れ刃2dの位置調整のための調整ねじ61をさらに備え、それ故にこの調整ねじ61が螺合するねじ穴60aを本体部60dに備える。必要に応じて調整ねじ61を切削インサート1と接触させることで、切れ刃2dの位置調整を行うことができる。第2の調整部材60は、第2ねじ部材である調整ねじ61の中心軸線が中心軸線Aに略平行になるように、かつ、調整ねじ61が切削インサート2に作用できるように取り付けられる。第2の調整部材60の本体部60dは、取付ねじ(
図1参照)を、工具ボデー3に取り付けられたロケータ50のねじ穴50c、50dに螺合させて締め付けることで、工具ボデー3(ここではロケータ50)に取り付けられる。したがって第2の調整部材60は、取付ねじによって取り付けるための係合部(当接部)60b、60cを本体部60dに備える。第2の調整部材60の係合部60b、60cは、ロケータ50の係合部50a、50bと同様に、段付き貫通穴であるが、溝または凹部など、既知の様々な形状が適用できる。また第2の調整部材60による切れ刃の位置調整の方法は、調整ねじ61による方法に限定されない。ただし、この実施形態のような調整ねじによる調整方法は、後述されるように簡便な方法であり好ましい。なお
図16において、第2の調整部材60のねじ穴60aの内面にねじ山が形成されている。
【0045】
切削インサート2の切れ刃2d周辺の材料は、超硬合金、サーメット、セラミック、立方晶窒化ほう素等の硬質材料又はこれら硬質材料の表面にPVD又はCVDコーティング膜を被膜したもの、又はダイヤモンドの中から選ばれるとよい。また切れ刃以外の部分の材料も、同様の硬質材料などとされることが好ましい。
【0046】
以上説明した、インサート取付機構100を用いての切削インサート2の取付手順の一例を次に説明する。しかし、以下の説明は他の順序を排除するものではない。
【0047】
まず、ポケット21にロケータ50が取り付けられる。なお、ロケータ50には、この時点で、第2の調整部材60が取り付けられていてもよい。そして、調整部材30が位置付けられる。調整部材30は、ねじ穴部30bがポケット21の凹部3gに位置付けられると共に、セレーション31がロケータ50のセレーション51と係合するように配置される。これにより、調整部材30は、セレーション31、51との係合に従って工具ボデー3の略径方向の所定方向(ねじ部材40の中心軸線40cの方向)にのみ実質的に動くことができ、例えばポケット21の底壁面3jに当接することができる。なお、調整部材30を配置するとき、ねじ部材40は上記構成を備えるので、調整部材30のねじ穴30cとポケット21のねじ穴3mに螺合する。そして、くさび部材10が調整部材30のねじ穴部30bの径方向外側に配置される。そして、切削インサート2がポケット21の調整部材30の本体部30aの径方向外側(つまり工具ボデー3の径方向において本体部30aの外側)に、その上面2aが工具回転方向Rを向くように配置される。つまり、切削インサート2がくさび部材10の工具回転方向後方かつロケータ50の工具回転方向前方の空間に調整部材30に当接するまで挿入される。なお、切削インサート2の配置後に、くさび部材10が調整部材30のねじ穴部30bの径方向外側に配置されてもよい。
【0048】
このように、切削インサート2の周囲に各種部材が配置された状態で締めつけねじ20をしっかりと締めることで、くさび部材10のくさび作用により、切削インサート2をポケット21にしっかりと取り付けることができる。なお、このとき、切削インサート10を、ロケータ50、調整部材30、および第2調整部材60に対して押圧しつつ、締めつけねじ20が締められ、よって切れ刃2dの位置はそれらの相対的な位置関係により定まる。
【0049】
そして、切削インサート2の切れ刃2dの位置を工具ボデー3の中心軸線(回転軸線)Aに対して略径方向において調整するとき、くさび部材10を緩めた状態で、くさび部材10の溝11に、レンチまたはドライバをねじ部材40に向けて挿入する。そして、調整部材30を径方向外側に移動させるようにねじ部材40を回転させることで、調整部材30により切削インサート2は径方向外側に動かされ、切削インサート2の切れ刃2dの位置を変えることができる。同様に、調整部材30を径方向内側に移動させるようにねじ部材40を回転させることで、調整部材30の動きに追従して切削インサート2は径方向内側に動き、切削インサート2の切れ刃2dの位置を変えることができる。そして、切れ刃2dの位置を調整後、くさび部材10はしっかりとポケット21に固定され、これにより切削インサート2の取り付けが完了する。このように、くさび部材10および切削インサート2を配置した状態で、切削インサート2の切れ刃2dの位置を容易に調整することができる。
【0050】
また、切削インサート2の切れ刃2dの位置を工具ボデー3の中心軸線Aの方向において変えるとき、くさび部材10を緩めた状態で、第2の調整部材60の調整ねじ61は例えばドライバで回転させられる。例えば、切削インサート2の切れ刃2dを中心軸線A方向で外側に動かすとき、調整ねじ61をねじ穴60aにさらにねじ込むようにその中心軸線周りに回転させることで、
図20Aの状態から、
図20Bに矢印で示すように、切削インサート2は動かされる。なお、この移動は、
図20Aにおいて切削インサート2が第2の調整部材60の本体部60dに当接しているが、
図20Bにおいて切削インサート2が調整ねじ61には接触するが第2の調整部材60の本体部60dから離れていることから容易に理解できよう。なお、
図20Aおよび
図20Bにおいては、正確には、
図18、
図19と同様に、調整部材30は工具ボデー3の底壁面3jから離れているが、調整ねじ61の動きおよびそれによる作用の理解をより容易にするように調整部材30を底壁面31に当接させている。
【0051】
以上述べたように、本実施形態の切削工具1では、くさび部材10を配置した状態で、調整部材30を取り付けると共に動かすためのねじ部材40に、くさび部材10の径方向外側からアクセス可能である。よって、くさび部材10および切削インサート2を配置した状態で、調整部材30の位置(特に径方向位置)を調整でき、切削インサート2の切れ刃2dの位置を容易かつ迅速に調整することができる。さらに、この切れ刃2dの位置調整が、ねじ部材40を作動させることで行われるので、切れ刃の位置調整量を任意に設定することができる。よって、切れ刃を研磨したときなどに、より好適に、切れ刃の位置を調整することができる。
【0052】
さらに、調整部材30による切れ刃の位置の調整方向(つまり径方向の調整方向)とは交差する、特にここでは略直交する調整方向(つまり中心軸線A方向の調整方向)において、第2の調整部材60で、切れ刃2dの位置を調整できる。この第2の調整部材60の調整ねじ61による切れ刃の位置調整も、ねじ機構による位置調整であるので、切れ刃の位置調整量を任意に設定することができる。そして、このように2つの互いに略直交する方向(つまり径方向および軸方向)に切れ刃の位置を調整できるので、切れ刃をより精度よく位置づけることができる。なお、調整部材30による切れ刃の位置の調整方向が第2の調整部材60による切れ刃の位置の調整方向と交差するが直交しないように、インサート取付機構は変更されてもよい。
【0053】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々のその他の実施形態を包含する。上記実施形態に対しては、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更及び追加が可能である。例えば、本発明に係る切削工具で加工される溝の形状は、歯車の歯型に限定されない。またサイドカッタにも限定されず、正面フライスなどの、切削インサートの取付用にくさび部材を用いる回転切削工具などにも本発明は適用できる。
【0054】
本発明には、請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。