特許第5958790号(P5958790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5958790衝撃エネルギ吸収型アンダーランプロテクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958790
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】衝撃エネルギ吸収型アンダーランプロテクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/56 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B60R19/56
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-250798(P2011-250798)
(22)【出願日】2011年11月16日
(65)【公開番号】特開2013-103685(P2013-103685A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2014年9月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】山口 和彦
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−145113(JP,A)
【文献】 特表2006−509683(JP,A)
【文献】 特開2000−274472(JP,A)
【文献】 特開平02−088835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体フレームの前方又は後方の端部下方で車幅方向に延びるアンダーランプロテクタと、
前記アンダーランプロテクタの後面又は前面に固定される複合体一端と、前記アンダーランプロテクタの後方又は前方で前記車体フレームに固定される複合体他端と、前記複合体一端と前記複合体他端との間で車両前後方向に並ぶ3個以上の複数のエネルギ吸収部とを有するエネルギ吸収複合体と、を備え、
前記複数のエネルギ吸収部は、車両前後方向からの荷重を受けて圧潰する際の変形強度が小さい順に前記複合体一端から前記複合体他端に向かって並び、
前記複数のエネルギ吸収部は、最も複合体一端側に配置される一端側吸収部と、最も複合体他端側に配置される他端側吸収部と、前記一端側吸収部と前記他端側吸収部との間に配置される中間吸収部と、を含み、
前記中間吸収部は、前記一端側吸収部の上面よりも上方に配置される上板部と、前記他端側吸収部の前面よりも前方に配置される後板部と、前記上板部と前記後板部とに固定され、前記一端側吸収部と離間して配置される側板部とを有し、前記一端側吸収部からの荷重を受けて圧潰することにより前記一端側吸収部の変形方向を前記他端側吸収部の変形方向に変更する
ことを特徴とする衝撃エネルギ吸収型アンダーランプロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃エネルギ吸収型アンダーランプロテクタであって、
前記中間吸収部の前記側板部は、三角形状である
ことを特徴とする衝撃エネルギ吸収型アンダーランプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時に相手車両が受ける衝撃を緩和する衝撃エネルギ吸収型アンダーランプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000−296743号公報には、衝撃吸収型フロントアンダーランプロテクタが記載されている。この衝撃吸収型フロントアンダーランプロテクタは、シャシフレームに固定されるブラケットと、ブラケットに固定されるプロテクタと、ブラケットとプロテクタとの間に介設される衝撃エネルギ吸収装置とからなる。衝撃エネルギ吸収装置はエネルギ吸収体とこれを被包する管状体とからなる。衝突時に外力が作用すると、エネルギ吸収体が圧潰して衝撃エネルギを吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−296743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に配置されるエネルギ吸収体では、配置スペースの制約等の理由から外力(荷重)によって圧潰する際のストロークが制限される場合が多い。このような制限のもとでは、エネルギ吸収体の圧潰強度を高く設定すると吸収可能なエネルギの総量が大きくなり、圧潰強度を低く設定すると吸収可能なエネルギの総量は小さくなる。
【0005】
従って、上記特許文献1の衝撃吸収型フロントアンダーランプロテクタにおいて、エネルギ吸収体の圧潰強度を高く設定すると、吸収可能な衝撃エネルギの総量は大きくなるが、軽自動車等の変形強度の小さい車両や、相対速度が小さい車両との衝突のように入力する荷重が小さい場合、エネルギ吸収体が圧潰せず、相手車両が受ける衝撃を十分に緩和することができないおそれがある。一方、エネルギ吸収体の圧潰強度を低く設定すると、上記の不都合は解消するが、エネルギ吸収体が吸収可能なエネルギの総量が小さいため、RV車等の変形強度が大きい車両や、相対速度が大きい車両との衝突のように入力する荷重が大きい場合、入力する衝撃エネルギに対して吸収可能なエネルギの総量が不足し、相手車両が受ける衝撃を十分に緩和することができないおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、衝突時の相手車両の変形強度や相対速度が大きく異なる場合であっても、相手車両が受ける衝撃を十分に緩和することができる衝撃エネルギ吸収型アンダーランプロテクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の車両の衝撃エネルギ吸収型アンダーランプロテクタは、アンダーランプロテクタと、エネルギ吸収複合体と、を備える。アンダーランプロテクタは、車両の車体フレームの前方又は後方の端部下方で車幅方向に延びる。エネルギ吸収複合体は、アンダーランプロテクタの後面又は前面に固定される複合体一端と、アンダーランプロテクタの後方又は前方で車体フレームに固定される複合体他端と、複合体一端と複合体他端との間で車両前後方向に並ぶ3個以上の複数のエネルギ吸収部とを有する。複数のエネルギ吸収部は、車両前後方向からの荷重を受けて圧潰する際の変形強度が小さい順に複合体一端から複合体他端に向かって並ぶ。複数のエネルギ吸収部は、最も複合体一端側に配置される一端側吸収部と、最も複合体他端側に配置される他端側吸収部と、一端側吸収部と他端側吸収部との間に配置される中間吸収部と、を含む。中間吸収部は、一端側吸収部の上面よりも上方に配置される上板部と、他端側吸収部の前面よりも前方に配置される後板部と、上板部と後板部とに固定され、一端側吸収部と離間して配置される側板部とを有し、一端側吸収部からの荷重を受けて圧潰することにより一端側吸収部の変形方向を他端側吸収部の変形方向に変更する。
中間吸収部の側板部は、三角形状であってもよい。

【0008】
上記構成では、車両に他の車両が前方又は後方から衝突し、アンダーランプロテクタに車両前後方向から荷重が入力すると、アンダーランプロテクタの後面又は前面に固定されているエネルギ吸収複合体の複合体一端に荷重が負荷される。複合体他端は車体フレームに固定されているので、荷重によってエネルギ吸収複合体が車両後方又は前方に向かって圧潰し衝撃エネルギを吸収する。エネルギ吸収複合体は、圧潰する際の変形強度が小さい順に複合体一端から複合体他端に向かって並んでいるので、アンダーランプロテクタに荷重が入力すると、複合体一端に位置する変形強度が最も小さいエネルギ吸収部から圧潰が開始し、入力した衝撃エネルギが全て吸収されるまでエネルギ吸収部の圧潰が順次進行する。このため、入力する荷重が小さい場合であっても変形強度が小さいエネルギ吸収部が圧潰して衝撃エネルギを吸収する。また、入力する荷重が増大すると、変形強度が小さいエネルギ吸収部から順次圧潰して衝撃エネルギを吸収するので、広範囲での衝撃エネルギの吸収が可能となる。従って、衝突時の相手車両の変形強度や相対速度が大きく異なる場合であっても、衝突時の荷重に応じて衝撃エネルギが好適に吸収され、相手車両が受ける衝撃を十分に緩和することができる。
【0009】
また、エネルギ吸収複合体には変形強度が異なる複数のエネルギ吸収部が変形強度が小さい順に並んでいるので、エネルギ吸収複合体は、荷重の入力位置に最も近いエネルギ吸収部から圧潰し、入力位置から離れる方向に圧潰が順次進行する。このため、複数のエネルギ吸収部が変形強度に係わりなく混在して並び、圧潰する部分と圧潰しない部分とが前後方向に混在して圧潰が進行する場合に比較して、エネルギ吸収複合体の変形モードが安定する。従って、広い範囲の衝撃エネルギを安定して吸収でき、相手車両が受ける衝撃を確実に緩和することができる。
【0010】
また、複数のエネルギ吸収部は、第1エネルギ吸収部と、第2エネルギ吸収部としてのアンダーランプロテクタブラケットと、第3エネルギ吸収部とを含んでもよい。第1エネルギ吸収部は、アンダーランプロテクタの後面又は前面に固定される複合体一端を有し、複合体一端から車両後方又は車両前方に延びる。第2エネルギ吸収部としてのアンダーランプロテクタブラケットは、第1エネルギ吸収部の他端に固定され、第1エネルギ吸収部を介して前記アンダーランプロテクタを前記車体フレームに支持する。第3エネルギ吸収部は、アンダーランプロテクタブラケットの後面又は前面に固定される一端と、車体フレームに固定される集合体他端と、一端が集合体他端に向かって後上方又は前上方に傾斜して延びる傾斜部とを有する。
【0011】
上記構成では、アンダーランプロテクタを車体フレームに支持するためのアンダーランプロテクタブラケットを第2エネルギ吸収部として利用し、アンダーランプロテクタブラケットよりも変形強度の小さい第1エネルギ吸収部をアンダーランプロテクタとアンダーランプロテクタブラケットとの間に介設し、アンダーランプロテクタブラケットと車体フレームとを結合する傾斜部をアンダーランプロテクタブラケットよりも変形強度の大きい第3エネルギ吸収部とすることによって、3個のエネルギ吸収部が変形強度の小さい順に並んだエネルギ吸収複合体が形成される。このように、アンダーランプロテクタブラケットを利用しているので、コストの上昇や部品点数の増大を抑制することができる。
【0012】
また、車両の前方又は後方に他の車両が衝突する際の態様は必ずしも一様ではなく荷重の入力の態様によっては、例えば第1エネルギ吸収部の圧潰が不十分なうちに、第2エネルギ吸収部であるアンダーランプロテクタブラケットも変形を開始する場合等が想定される。このような場合であっても、第3エネルギ吸収部が圧潰して第1及び第2エネルギ吸収部で吸収が不十分であった衝撃エネルギを吸収できる可能性がある。このように、エネルギ吸収複合体は、3個の構造の異なるエネルギ吸収部によって構成されているので、一部のエネルギ吸収部が十分に機能しない場合であっても、他のエネルギ吸収部による衝撃エネルギの吸収が可能となり、衝撃エネルギ吸収の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、衝突時の相手車両の変形強度や相対速度が大きく異なる場合であっても、相手車両が受ける衝撃を十分に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係わる衝撃エネルギ吸収型フロントアンダーランプロテクタを備えたキャブオーバートラックの模式側面図である。
図2】本発明の実施形態に係わる衝撃エネルギ吸収型フロントアンダーランプロテクタの模式側面図である。
図3】本発明の実施形態に係わる衝撃エネルギ吸収型フロントアンダーランプロテクタの模式斜視図である。
図4】本発明に係わる衝撃エネルギ吸収型リアアンダーランプロテクタを備えたキャブオーバートラックの模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、図中FRは車両前方を、図中UPは車両上方を、図中INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明における前後方向は、車両の前後方向を意味し、左右方向は、車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0016】
図1〜3に示すように、本実施形態に係わる車両1は、キャブ2が概ねエンジン(図示省略)よりも前方に位置するキャブオーバー型の車両であり、メインフレーム3と、フロントアンダーランプロテクタ(アンダーランプロテクタ)5と、フロントアンダーランプロテクタブラケット(アンダーランプロテクタブラケット)6と、第1エネルギ吸収部7と、第3エネルギ吸収部8等を備えている。
【0017】
メインフレーム3は、車両1の車幅方向両側で車両前後方向に延びており、クロスメンバ4によって、左右各メインフレーム3の前端部間が連結されている。フロントアンダーランプロテクタ(以下、FUPと称する)5は、矩形筒状に形成されてメインフレーム3の前端部下方で車幅方向に延びている。キャブ2の前端下部にはフロントバンパ部30が設けられFUP5の前端部を覆っている。また、キャブ2に乗員が乗降する際の足場となるステップ部31が、キャブ2の車幅方向外側の下端部からフロントバンパ部30の後端部に沿って下方に延びている。フェンダ32は、キャブ2の下部に固定されてフロントタイヤ33の斜め前方上半分を覆っている。
【0018】
なお、フロントアンダーランプロテクタブラケット(以下、FUPブラケットと称する)6と、第1エネルギ吸収部7と、第3エネルギ吸収部8とは、右側と左側とがそれぞれ同様の構成を有するため、以下ではその一方(左側)について説明し、他方(右側)についての説明を省略する。
【0019】
FUPブラケット6は、上板部12、前板部13、下板部15、後板部14及び左右の側板部16、17を備えた略箱形状であり、フロントタイヤ33よりも前方のメインフレーム3の前端部に固定されている。上板部12は、メインフレーム3の下面3aに締結されている。前板部13及び後板部14は、上板部12の前端及び後端からそれぞれ下方に相対向して延びる。下板部15の前端及び後端は、前板部13と後板部14のそれぞれ下端に結合している。左右の側板部16,17は略直角三角形状である。左側の側板部16は、三角形の底辺部が車幅方向外側の上板部12の端縁及び後板部14の端縁に接合され、右側の側板部17は、三角形の底辺部が車幅方向内側の上板部12の端縁及び後板部14の端縁にそれぞれ接合され、FUPブラケット6に開口部21を形成する。FUPブラケット6は、第2エネルギ吸収部として機能し、後方への移動が規制されている場合、前板部13側から予め設定された荷重以上の荷重が負荷されると変形し、FUPブラケット6に入力する衝撃エネルギを吸収する。本実施形態では、FUPブラケット6は、200kN(キロニュートン)以上の荷重を受けて変形する変形強度を有している。
【0020】
第1エネルギ吸収部7は、前後方向に延びる円筒状であり、本体9と前板(エネルギ吸収複合体一端)10と後板(第1エネルギ吸収部他端)11とを有し、FUPブラケット6とFUP5との間に介設されている。前板10の後面は、本体9の前端部に固定され、前板10の前面は、FUP5の後面に固定されてFUP5を支持する。後板11の前面は、本体9の後端部に固定され、後板11の後面は、FUP5ブラケットの前板部13の前面に固定されている。本体9の内部には、前後方向に延びる格子状の仕切版(図示省略)が挿入されてハニカム構造を形成している。仕切板の端部は、それぞれ本体9の内周面及び前板10,後板11の内面に接合されている。第1エネルギ吸収部7は、後方への移動が規制されている場合、FUP5側から予め設定された荷重以上の荷重が負荷されると圧潰し、第1エネルギ吸収部7に入力する衝撃エネルギを吸収する。本実施形態では、第1エネルギ吸収部7は、FUPブラケット6の設定荷重よりも小さい150kN以上の荷重を受けて変形する変形強度を有している。
【0021】
第3エネルギ吸収部8は、FUPブラケット6の後方から斜め上方に延びる円筒状であり、本体(傾斜部)18と前板(第3エネルギ吸収部一端)19と後板(エネルギ吸収複合体他端)20とを有している。前板19の後面は、本体19の前端部に固定され、前板19の前面は、FUPブラケット6の後板部14の後面に固定される。後板20の前面は、本体18の後端部に固定され、後板20の後面はメインフレーム3の下面3aに固定される。本体18の内部には、前後方向に延びる格子状の仕切版(図示省略)が挿入されてハニカム構造を形成している。仕切板の端部は、それぞれ本体18の内周面及び前板19,後板20の内面に接合されている。第3エネルギ吸収部8は、メインフレーム3によって後方への移動が規制されているので、FUPブラケット6側から予め設定された荷重以上の荷重が負荷されると圧潰し、第3エネルギ吸収部8に入力する衝撃エネルギを吸収する。本実施形態では、第3エネルギ吸収部8は、FUPブラケット6の設定荷重よりも大きい250kN以上の荷重を受けて変形する変形強度を有している。
【0022】
すなわち、第1エネルギ吸収部7と第2エネルギ吸収部としてのFUPブラケット6及び第3エネルギ吸収部8の3個のエネルギ吸収部によって、衝突時の荷重の入力位置であるFUP5の後面から変形強度の小さい順に並ぶエネルギ吸収複合体22が形成されている。
【0023】
本実施形態では、車両1の前方から他の車両が衝突すると、FUP5に負荷された衝突時の荷重がFUP5の後面に固定された第1エネルギ吸収部7に入力する。第1エネルギ吸収部7は変形強度が低く設定されており、また第1エネルギ吸収部7よりも変形強度の大きいFUPブラケット6によって後方への移動が規制されている。このため、例えば普通車両よりも変形強度の小さい軽自動車等の車両や、相対速度が小さい車両との衝突のように入力する荷重が小さい場合であっても、第1エネルギ吸収部7が後方に圧潰して衝撃エネルギが吸収される。
【0024】
また、普通車両相当の変形強度の車両や、相対速度が中程度の車両との衝突のように入力する荷重がより増大すると、先ず第1エネルギ吸収部7が圧潰するが、第1エネルギ吸収部7の吸収可能なエネルギの総量よりも大きな衝撃エネルギが入力した場合は、第1エネルギ吸収部7の圧潰だけでは衝撃エネルギの吸収量が不足し、FUPブラケット6に荷重が負荷される。FUPブラケット6は、FUPブラケット6よりも変形強度の大きい第3エネルギ吸収部8によって後方への移動が規制されているので、入力する荷重によってFUPブラケット6が変形して衝撃エネルギが吸収される。
【0025】
また、普通車両よりも変形強度の大きいRV車等の車両や、相対速度が大きい車両との衝突のように入力する荷重がさらに増大すると、第1エネルギ吸収部7が圧潰し、FUPブラケット6が変形するが、第1エネルギ吸収部7の圧潰とFUPブラケット6の変形によって吸収可能なエネルギの総量よりも大きな衝撃エネルギが入力した場合は、第1エネルギ吸収部7の圧潰とFUPブラケット6の変形だけでは衝撃エネルギの吸収量が不足し、第3エネルギ吸収部8に荷重が負荷される。第3エネルギ吸収部8はメインフレームによって他端が固定され後方への移動が規制されているので、入力した全ての衝撃エネルギが吸収されるまで斜め後上方へ圧潰する。
【0026】
このように、本実施形態によれば、衝突時の相手車両の変形強度や相対速度が大きく異なる場合であっても、衝突時の荷重に応じて衝撃エネルギが好適に吸収され、相手車両が受ける衝撃を十分に緩和することができる。
【0027】
また、本実施形態では、第1エネルギ吸収部7とFUPブラケット6と第3エネルギ吸収部8とが変形強度の小さい順に並んでいる。このため、衝突時には、荷重の入力位置に最も近い第1エネルギ吸収部7から圧潰し、荷重の増大に応じてFUPブラケット6及び第3エネルギ吸収部8へと荷重の入力位置から離れる方向に順次圧潰が進行するので、エネルギ吸収複合体22の変形モードが安定する。従って、広い範囲の衝撃エネルギを安定して吸収でき、相手車両が受ける衝撃を確実に緩和することができる。
【0028】
また、車両1の前方から他の車両が衝突する際の態様は必ずしも一様ではなく荷重の入力の態様によっては、例えば第1エネルギ吸収部7の圧潰が不十分なうちに、FUPブラケット6も変形を開始する場合等が想定されるが、このような場合であっても、第3エネルギ吸収部8が圧潰して第1エネルギ吸収部7及びFUPブラケット6では吸収が不十分であった衝撃エネルギを吸収できる可能性がある。このように、エネルギ吸収複合体22は、3個の構造の異なるエネルギ吸収部によって構成されているので、一部のエネルギ吸収部が十分に機能しない場合であっても、他のエネルギ吸収部による衝撃エネルギの吸収が可能となり、衝撃エネルギ吸収の信頼性が向上する。
【0029】
また、3個のエネルギ吸収部からなるエネルギ吸収複合体22を形成する際に、FUPブラケット6を第2エネルギ吸収部として利用しているので、コストの上昇や部品点数の増大を抑制することができる。
【0030】
なお、各エネルギ吸収部に予め設定される荷重は、FUPブラケット6の変形強度が第3エネルギ吸収部8の変形強度よりも小さく、第1エネルギ吸収部7の変形強度がFUPブラケット6の変形強度よりも小さく設定されていれば、個々のエネルギ吸収部への荷重の設定は任意であり、本実施形態で設定した荷重に限定されない。
【0031】
また、第1エネルギ吸収部7及び第3エネルギ吸収部8の形状は円筒形状に限定されず、例えば矩形状等であってもよい。また、第1エネルギ吸収部7及び第3エネルギ吸収部8のエネルギ吸収構造はハニカム構造に限定されることはなく、例えば中空円筒が圧潰するエネルギ吸収構造等であってもよい。また、FUPブラケット6の形状は本実施形態の形状に限定されず、例えば開口部21等を有しなくてもよい。
【0032】
また、エネルギ吸収部の数は3個以上であってもよい。この場合は、衝突時の相手車両の変形強度や相対速度が大きく異なる場合であっても、衝突時の荷重に応じて衝撃エネルギがより好適に吸収され、相手車両が受ける衝撃を十分に緩和することができる。
【0033】
また、本実施形態では、エネルギ吸収複合体22を、車両1の前方に配置されるFUP5に適用したが、図4に示すように、車両1の後方(メインフレーム3の後部下方)に配置されるリアアンダーランプロテクタ34に適用することも可能である。
【0034】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、大型車両のフロントアンダーランプロテクタ又はリアアンダーランプロテクタとして広く適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 車両
2 キャブ
3 メインフレーム(車体フレーム)
5 フロントアンダーランプロテクタ(アンダーランプロテクタ)
6 フロントアンダーランプロテクタブラケット(アンダーランプロテクタブラケット)
7 第1エネルギ吸収部
8 第3エネルギ吸収部
22 エネルギ吸収複合体
34 リアアンダーランプロテクタ(アンダーランプロテクタ)
図1
図2
図3
図4