(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態の放電ランプについて説明するための図である。
【
図2】第1の実施形態の放電ランプの断面について説明するための図である。
【
図3】第1の実施形態の放電ランプの金属箔を第2の面側から見たときの状態について説明するための図である。
【
図4】
図3に示した範囲Aについて説明するための図である。
【
図5】第1の実施形態の電極マウントの断面について説明するための図である。
【
図6】第1の実施形態の電極マウントの一製造方法について説明するための図である。
【
図7】第1の実施形態の電極マウントのレーザ照射について説明するための図である。
【
図8】電極マウントの他の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
図1および
図2を参照して、第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の放電ランプについて説明するための図であり、
図2は、第1の実施形態の放電ランプの断面について説明するための図、
図3は、第1の実施形態の放電ランプの金属箔を第2の面側から見たときの状態について説明するための図である。
【0008】
本実施形態の放電ランプは、自動車前照灯用のヘッドランプに用いられるランプであり、気密容器として内管1を備えている。内管1は細長い形状であり、その中央付近には略楕円形の発光部11が形成されている。発光部11の両端には、ピンチシールにより形成された板状のシール部12、その両端には境界部13を介して円筒部14が連続形成されている。この内管1としては、例えば石英ガラスなどの耐熱性と透光性を具備した材料で構成されるのが望ましい。また、シール部12はシュリンクシールにより形成されることにより円柱状の形状であってもよい。
【0009】
発光部11の内部には、中央が略円柱状で、両端に向かってテーパ状となっている放電空間111が形成されている。放電空間111には、金属ハロゲン化物2および希ガスが封入されている。金属ハロゲン化物2は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化スカンジウム、ヨウ化亜鉛、臭化インジウムで構成されている。なお、この金属ハロゲン化物2の組合せはこれに限らず、スズ、セシウムのハロゲン化物を追加するなどしてもよい。
【0010】
希ガスは、キセノンが使用されている。この希ガスの圧力は、12atm〜18atm、望ましくは13atm〜16atmである。なお、希ガスとしてはキセノンとネオン、アルゴン、クリプトンなどを組み合わせた混合ガスで使用することもできる。
【0011】
ここで、本実施形態のランプは、水銀フリー放電ランプである。この「水銀フリー」とは、水銀を実質的に含んでいないという意味である。
【0012】
発光部11の両側に形成されたシール部12には、それぞれ電極マウント3が封着されている。電極マウント3は、金属箔31、電極32、コイル33およびリード線34により構成されている。
【0013】
金属箔31は、例えば、モリブデンからなる薄板状の部材であり、表裏に平坦な第1の面311と第2の面312を備えている。その平坦面の短手方向の両端は、徐々に厚みが薄くなるナイフエッジ形状になっている。本実施形態では、電極32が接続される側の第1の面311と第2の面312の半面(ただし、端部および電極32との重ね合わせ部分は除く)には、粗面313が形成されている。この粗面313は、
図4に示すように、複数の円形状の凹部313からなるものである。凹部313は例えば、直径は18μm、深さは3μmである非貫通の半円状の凹みであり、YAGレーザを照射することで形成することができる。
【0014】
電極32は、例えばタングステンに酸化トリウムをドープした、いわゆるトリエーテッドタングステンからなる棒状の部材である。その一端は金属箔31の発光部11側の端部に接続され、他端は放電空間111内に突出し、所定の距離を保って互いの先端部同士が対向するように対設されている。直径は、0.22〜0.4mmである。例えば0.38mmである。自動車前照灯の用途の場合には、電極32同士の先端間の距離を、外管5を通して観察したときに3.7mm〜4.4mmの範囲に位置決めするのが好ましい。
【0015】
コイル33は、例えば、ドープタングステンからなる金属線であって、シール部12に封着される電極32の軸部の軸周りに螺旋状に巻装されている。
【0016】
リード線34は、例えば、モリブデンからなる金属線である。リード線34の一端は、発光部11から電極接続側に対して反対側の金属箔31の端部に接続されており、他端は内管1の外部まで管軸に略平行に延出されている。ランプの前端側、すなわちソケット6から遠位側に延出されたリード線34には、例えば、ニッケルからなるL字状のサポートワイヤ35の一端がレーザ溶接により接続されている。このサポートワイヤ35には、内管1と平行に延在する部位に、例えば、セラミックからなるスリーブ4が装着されている。
【0017】
上記で構成された内管1の外側には、発光部11を覆うように筒状の外管5が内管1とほぼ同心状に設けられている。これら内外管の接続は、内管1の円筒部14付近に外管5の端部をそれぞれ溶着することにより行なわれている。内管1と外管5との間に形成された閉空間51には、ガスが封入されている。このガスには、誘電体バリア放電可能なガス、例えばネオン、アルゴン、キセノン、窒素から選択された一種のガスまたは混合ガスを使用することができる。ガスの圧力は0.3atm以下、特に0.1atm以下であるのが望ましい。なお、外管5としては、内管1に熱膨張係数が近く、かつ紫外線遮断性を有する材料で構成するのが望ましく、例えば、チタン、セリウム、アルミニウム等の酸化物を添加した石英ガラスを使用することができる。
【0018】
外管5が接続された内管1の一端には、ソケット6が接続されている。これらの接続は、外管5の外周面に金属バンド71を装着し、その金属バンド71をソケット6から4本突出形成させた金属製の舌片72で把持することで行なっている。また、ソケット6の底部には底部端子81、側部には側部端子82が形成されており、底部端子81と側部端子82には、それぞれリード線34とサポートワイヤ35が接続されている。
【0019】
これらで構成された箔シールランプは、底部端子81が高圧側、側部端子82が低圧側になるように点灯回路(図示なし)と接続され、始動時はランプ電力が75W、安定点灯時は35Wとなるように点灯される。
【0020】
ここで、金属箔31と電極32の接続について説明する。金属箔31と電極32は、第1の面311と電極32の少なくとも一部が重なり合うように配置された状態で溶接されている。その溶接により、重なり合った部分には金属箔31側から電極32の内部に延伸するような形状の溶接痕36、および凹部37が形成されている。溶接痕36は、略楕円錐状である。すなわち、第2の面312側から見たときの形状は、
図4に示すように長丸である。その長丸は、例えば短辺の長さL1は200μm、長辺の長さL2は300μmである。L1とL2の比であるL2/L1は、接合強度を向上させるために、1.3〜2.0が好適である。また、金属箔31の短手方向に沿う断面における形状は、
図5(a)に示すように、中心線B−B’(溶接痕36の電極32の最も内部に位置する頂点付近を通り、溶接痕36の面積を略二分する線)が第2の面312と略直交する略三角形状である。金属箔31の長手方向に沿う断面における形状は、
図5(b)に示すように、中心線B−B’が第2の面312の垂線方向に対して傾斜した略三角形状になっている。例えば、傾斜角α1は25°、傾斜角α2は40°である。傾斜角αは、接合強度を向上させるために、10°〜50°が好適である。また、凹部37の頂点は、溶接痕36が傾いた方向とは反対の方向に偏在している。なお、金属箔31とリード線35も同様の構造をしている。
【0021】
次に、金属箔31と電極32の溶接方法について説明する。まず、
図6に示すように、電極32およびリード線35が溝911に嵌るように、治具91に配置する。次に、電極32およびリード線35の一部に第1の面311が重複するように金属箔31を配置したのち、第2の面312の四隅に抑え部材92を配置して金属箔31を固定する。そして、
図7に示すように、YAGレーザ照射装置のレーザ照射部93で、金属箔31と電極32の重ね合わせ部分に、第2の面312側からレーザを照射する。その際、
図7(b)に示すように、レーザ照射部93を第2の面312の垂線方向に対してリード線32側に傾斜させて、レーザを照射する。その時の傾斜角β1は、例えば35°である。傾斜角βは、接合強度を向上させるため、また溶接しやすくするため、10°〜50°が好適である。このレーザ照射工程を、位置を変えて複数回行い、金属箔31と電極32の重ね合わせ部分に複数の溶接痕36を形成する。
【0022】
このように、金属箔31と電極32の重ね合わせ部分にレーザを斜めに照射することにより、第2の面312側から見た溶接痕36の形状が長丸になるため、同じ径のレーザを用い、第2の面312に対して垂直にレーザを照射する場合(従来方法)に形成される円形の溶接痕と比較して、サイズが大きくなる。サイズが大きくなると、電極32と溶接痕36の接触面積が大きくなるため、金属箔31と電極32の接合強度を強化することができる。
【0023】
なお、従来方法で金属箔31と電極32の接合強度を強化したい場合、一般的にはレーザの出力を上げる方法が用いられてきた。この方法の場合、電極に与えるダメージが大きくなり、電極の結晶粗大化や脆化を引き起こしてしまう。また、電極32内部における溶接痕36の高さhが高くなりすぎることを起因とする電極折れが発生するおそれがある。また、レーザの照射径を大きくする方法もあるが、使用可能なレーザの照射径は電極の直径に依存するため、場合によってはレーザの照射径を大きくすることはできない。これに対して、本実施形態の方法は、レーザの出力を上げることなく、上記のような問題の発生を抑制しつつ、金属箔31と電極32の接合強度を強化することができる。
【0024】
第1の実施形態においては、金属箔31と電極32の重なり合った部分に、第2の面312の垂線方向に対して傾斜させた状態で、第2の面312側からその重なり合った部分にレーザを照射して溶接することで、その重なり合った部分に、第2の面312側から見たときの形状は長丸で、第2の面312の垂線方向に対して中心線B−B’が傾斜している溶接痕36を形成することができる。そのため、レーザの出力を上げることなく、金属箔31と電極32の接合強度を強化することができる。
【0025】
本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0026】
例えば、金属箔3a1、3b1の材料としては、モリブデンに限らず、レニウムモリブデン、タングステン、レニウムタングステンなどで構成しても本発明の効果を得ることができ、材料に限定されない。また、表面に薄膜や層を形成したものであってもよい。
【0027】
電極32の形状は、先端の径を基端の径よりも大きくした段付き状であるもの、先端が径大の球状であるもの、一方の電極径と他方の電極径が異なる形状であってもよい。また、電極材料は、純タングステン、タングステンにアルミニウム、珪素、カリウムを微量にドープしたドープタングステン、タングステンにレニウムをドープしたレニウムタングステンなどであってもよい。
【0028】
溶接痕36は、
図8(a)のように、第2の面312の垂線方向に対して金属箔31の短手方向に傾斜させた形状にしてもよい。また、
図8(b)のように、第2の面312の垂線方向に対して発光部11側に傾斜させた溶接痕361と、リード線34側に傾斜させた溶接痕362を、一の金属箔31と電極32の重ね合わせ部分に形成してもよい。この形状では、溶接痕361、362が電極32をホールドするため、さらに接合外れを抑制することができる。
【0029】
金属箔31と電極32(およびリード線34)の溶接に用いるレーザは、YAGレーザに限らず、CO2レーザなどであってもよい。
【0030】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。