(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに連結される一方のセグメントの接合部端面より突出した雄側継手部材と、他方のセグメントの接合部に固定された雌側継手部材とを備え、前記両接合部端面を突き合わせて前記雄側継手部材を前記雌側継手部材内に挿入し、前記雌側継手部材に前記雄側継手部材を抜け出し不能に保持させることにより前記両セグメントが連結されるようにしてなるセグメントの継手部構造において、
前記雌側継手部材は、雄側に前記雄側継手部材が挿入される開口部が形成された中空状の外殻部と、該外殻部内に配置され、前記挿入された前記雄側継手部材を挟持する一対の挟持部材とを備え、
前記挟持部材は、前記雄側継手部材の表面に当接する挟持部と、前記外殻部の側板内側面に当接する反力受面部とを有し、前記雄側継手部材を挟持した際の前記挟持部の挿抜方向位置が前記反力受面部の挿抜方向位置より挿入方向奥側に配置されるように形成され、前記挟持部と前記反力受面部とが65〜80度の傾斜角を成し、且つ、前記反力受面部及び/又は前記外殻部の側板内側面部に前記雄側継手部材の挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部が形成されていることを特徴としてなるセグメントの継手部構造。
前記外殻部に、前記雄側継手部材が挿入される挿入口を有し、且つ前記外殻部の雄側部を閉鎖する前側板と、前記外殻部の他端部を閉鎖する後側板とを備えるとともに、前記外殻部内に配置され、前記後側板に反力を取って前記両挟持部材を押圧する挟持部材保持手段とを備え、該挟持部材保持手段の押圧力により前記両挟持部材を所定の位置に保持するようにした請求項1に記載のセグメントの継手部構造。
前記雄側継手部材は、上下に前記挟持部と当接する被挟持面を有する平板状に形成され、前記挟持部の挿抜方向と交差する方向の幅を前記被挟持面の挿抜方向と交差する方向の幅に比して長く形成し、前記雄側継手部材を雌側継手部材に対し前記挿抜方向と交差する方向で移動可能とした請求項1又は2に記載のセグメントの継手部構造。
前記雄側継手部材の外側面部及び/又は前記挟持部に前記雄側継手部材の挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部が形成された請求項1、2又は3に記載のセグメントの継手部構造。
【背景技術】
【0002】
シールド工法よるトンネル構築においては、シールド掘削機の後方側で掘削孔の内周面に沿って円弧版状のセグメントを周方向に連結してセグメントリングを組み立て、このセグメントリングをシールド掘削機の進行に合わせて順次トンネル軸方向に連設することによりトンネル内に覆工がなされている。
【0003】
従来、このセグメントリング相互の連結は、セグメントリングを構成するセグメントをトンネル軸方向で相互に連結することによりなされ、このセグメント相互間を連結する継手部構造には、互いに連結される一方のセグメントの接合端面より突出したピン状の雄側継手部材と、他方のセグメントの接合部に固定された雌側継手部材部材とを備え、両接合部端面同士を突き合わせるとともに雄側継手部材を挿入口より雌側継手部材に挿入し、雌側継手部材に雄側継手部材を抜け出し不能に保持させることによりセグメント相互を連結する構造のものが知られている。
【0004】
このような継手部構造には、ピン状の雄側継手部材を雌側継手部材に圧入し、その引き抜き抵抗力によりリング軸方向で移動不能に連結されるようにしたもの(例えば特許文献1)や、雌側継手部材内に雄側継手部材の軸径方向で移動可能な係合駒を備え、雄側継手部材を雌側継手部材内に挿入した際に、この係合駒が雄側継手部材の外周部に形成された係合溝にバネの付勢力により係合してピンの軸方向の移動を規制するようにしたもの(例えば特許文献2)等がある。
【0005】
一方、セグメントリングを構成する各セグメント間の連結は、ボルトにより接合する構造が一般的であったが、その他の接合構造としてフック継手等を用い、一方側セグメントのリング周方向接合部端面より突出させた雄側継手部材と、他方の接合部端面に開口した凹部内に露出させた雌側継手部材とを備え、雄側継手部材を凹部内に挿入し、セグメントをリング軸方向に相対的にスライド移動させることにより、雄側継手部材と雌側継手部材とを互いに係合させるようにした継手構造が知られている(例えば、特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の特許文献1に示す如き従来の技術では、ピン状の雄側継手部材を雌側継手部材に圧入し、その引抜き抵抗力により連結強度を確保する構造であるため、その圧入に際して高い挿入力を必要とし、作業効率が悪いという問題があった。
【0008】
また、上述の特許文献2に示す如き従来の技術では、雄側継手部材の軸径方向に作用するバネ部材の付勢力に抗して雄側継手部材を雌側継手部材内に挿入するため、高い挿入力を必要とし、一方、係合駒は、その移動方向と略直角を成す方向から雄側継手部材が挿入される構造であるため、雄側継手部材に押圧されて変形してしまうおそれがあった。
【0009】
一方、従来のセグメントリングを構成する各セグメント間の継手部構造では、雄側継手部材と雌側継手部材とのリング半径方向の位置を合わせる作業等が煩雑であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、少ない挿入力で確実に挿入することができるとともに確実にセグメント相互を連結することができ、しかも安価なセグメントの継手部構造の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、互いに連結される一方のセグメントの接合部端面より突出した雄側継手部材と、他方のセグメントの接合部に固定された雌側継手部材とを備え、前記両接合部端面を突き合わせて前記雄側継手部材を前記雌側継手部材内に挿入し、前記雌側継手部材に前記雄側継手部材を抜け出し不能に保持させることにより前記両セグメントが連結されるようにしてなるセグメントの継手部構造において、前記雌側継手部材は、雄側に前記雄側継手部材が挿入される開口部が形成された中空状の外殻部と、該外殻部内に配置され、前記挿入された前記雄側継手部材を挟持する一対の挟持部材とを備え、前記挟持部材は、前記雄側継手部材の表面に当接する挟持部と、前記外殻部の
側板内側面に当接する反力受面部とを有し、前記雄側継手部材を挟持した際の前記挟持部の挿抜方向位置が前記反力受面部の挿抜方向位置より挿入方向奥側に配置されるように形成され
、前記挟持部と前記反力受面部とが65〜80度の傾斜角を成し、且つ、前記反力受面部及び/又は前記外殻部の側板内側面部に前記雄側継手部材の挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部が形成されていることにある。
【0012】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記外殻部に、前記雄側継手部材が挿入される挿入口を有し、且つ前記外殻部の雄側部を閉鎖する前側板と、前記外殻部の他端部を閉鎖する後側板とを備えるとともに、前記外殻部内に配置され、前記後側板に反力を取って前記両挟持部材を押圧する挟持部材保持手段とを備え、該挟持部材保持手段の押圧力により前記両挟持部材を所定の位置に保持するようにしたことにある。
【0013】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記雄側継手部材は、上下に前記挟持部と当接する被挟持面を有する平板状に形成され、前記挟持部の挿抜方向と交差する方向の幅を前記被挟持面の挿抜方向と交差する方向の幅に比して長く形成し、前記雄側継手部材を雌側継手部材に対し前記挿抜方向と交差する方向で移動可能としたことにある。
【0014】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1、2又は3の何れかの構成に加え、前記雄側継手部材の外側面部及び/又は前記挟持部に前記雄側継手部材の挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部が形成されたことにある。
【0015】
請求項5に記載の発明の特徴は、
請求項4の構成に加え、前記抜き出し抵抗部は、前記抜き出し方向と交差する方向に向けた突条を前記抜き出し方向に平行に並べてなることにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るセグメントの継手部構造は、上述したように、互いに連結される一方のセグメントの接合部端面より突出した雄側継手部材と、他方のセグメントの接合部に固定された雌側継手部材とを備え、前記両接合部端面を突き合わせて前記雄側継手部材を前記雌側継手部材内に挿入し、前記雌側継手部材に前記雄側継手部材を抜け出し不能に保持させることにより前記両セグメントが連結されるようにしてなるセグメントの継手部構造において、前記雌側継手部材は、雄側に前記雄側継手部材が挿入される開口部が形成された中空状の外殻部と、該外殻部内に配置され、前記挿入された前記雄側継手部材を挟持する一対の挟持部材とを備え、前記挟持部材は、前記雄側継手部材の表面に当接する挟持部と、前記外殻部の内面に当接する反力受面部とを有し、前記雄側継手部材を挟持した際の前記挟持部の挿抜方向位置が前記反力受面部の挿抜方向位置より挿入方向奥側に配置されるように形成されたことにより、小さな挿入力で雄側継手部材を雌側継手部材内に挿入でき、且つ、確実に連結することができる。
【0017】
また、本発明において、前記外殻部に、前記雄側継手部材が挿入される挿入口を有し、且つ前記外殻部の雄側部を閉鎖する前側板と、前記外殻部の他端部を閉鎖する後側板とを備えるとともに、前記外殻部内に配置され、前記後側板に反力を取って前記両挟持部材を押圧する挟持部材保持手段とを備え、該挟持部材保持手段の押圧力により前記両挟持部材を所定の位置に保持するようにしたことにより、両挟持部材を外殻部内に所定の配置で保持することができ、安定した状態で接合できる。
【0018】
更に、本発明において、前記雄側継手部材は、上下に前記挟持部と当接する被挟持面を有する平板状に形成され、前記挟持部の挿抜方向と交差する方向の幅を前記被挟持面の挿抜方向と交差する方向の幅に比して長く形成し、前記雄側継手部材を雌側継手部材に対し前記挿抜方向と交差する方向で移動可能としたことにより、セグメントリングを構成する各セグメント間を連結する継手にも適用することができ、また、リング径方向の位置合わせも容易に行うことができる。
【0019】
更にまた、本発明において、前記雄側継手部材の外側面部及び/又は前記挟持部に前記雄側継手部材の挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部が形成されたこと、また、前記反力受面部及び/又は前記外殻部の内側面部に前記雄側継手部材の挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部が形成されたことにより、雄側継手部材と挟持部材との間、又は挟持部材と外殻部との間に好適に摩擦力を作用させることができ、雄側継手部材を雌側継手部材に確実に保持させることができる。
【0020】
また、本発明において、前記抜き出し抵抗部は、前記抜き出し方向と交差する方向に向けた突条を前記抜き出し方向に平行に並べてなることにより、抜け出し方向で高い抵抗力を得ることができる一方、抜き出し方向と交差する方向では互いにスライド可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係るセグメントの継手部構造の実施の態様を
図1〜
図9に示す実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1はコンクリートにより円弧版状に形成されたセグメントであって、複数のセグメント1,1...をリング周方向で連結して円環状のセグメントリングを形成するとともに、このセグメントリングをトンネル軸方向に連設することによりトンネル内に覆工をなしている。
【0023】
また、セグメントリング相互の連結は、各セグメントリングを構成するセグメント1,1...をトンネル軸方向で相互に連結することによりなされている。
【0024】
セグメント1,1...相互のリング軸方向(トンネル軸方向)を連結する継手部構造Aは、
図3に示すように、互いに連結される一方のセグメント1,1...の接合部端面2aに突設された雄側継手部材3と、他方のセグメント1,1...の接合部に固定された雌側継手部材4とをもって構成され、両セグメント1,1...の接合部端面2a,2bを突き合わせ、雄側継手部材3を挿入口5より雌側継手部材4内に挿入し、雌側継手部材4に雄側継手部材3を抜け出し不能に保持させることにより、両セグメント1,1...をリング軸方向で移動不能に連結するようになっている。
【0025】
雄側継手部材3は、セグメント1,1...のリング軸方向両端の接合部端面2aよりリング軸方向に突出した丸棒状に形成され、リング周方向に間隔を置いて配置されている。
【0026】
この雄側継手部材3は、一方の端部が必要に応じてコンクリート内に埋設された鉄筋6,6に溶接により固定され、それにより接合部端面2aより他方端部が突出した状態にセグメント1に固定されている。
【0027】
この雄側継手部材3の先端部には、先端を面取りした形状のテーパ部3aが形成され、雌側継手部材4への挿入を容易に行えるようになっている。
【0028】
また、雄側継手部材3の外周面部には、挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部が形成され、この抜き出し抵抗部は、粗面処理や鉄筋棒の如き凹凸面が形成される等の処理が施されることにより形成され、後述する挟持部材10の挟持部11との間に摩擦による高い抵抗力が得られるようになっている。
【0029】
雌側継手部材4は、
図4に示すように、雄側に雄側継手部材3が挿入される開口部が形成された中空状の外殻部7と、外殻部7内に配置された一対の挟持部材10,10とを備え、外殻部7内に挿入された雄側継手部材3を両挟持部材10,10で挟持することにより抜き出し方向で移動不能に保持するようになっている。
【0030】
外殻部7は、平板状の鋼板材からなる上下左右の側板7a〜7dと、前側板8と、後側板9とを備え、各側板7a〜7d、前側板8及び後側板9をもって囲まれた中空箱状に形成されている。
【0031】
左右の側板7c,7dは、リング周方向に互いに間隔を置いて対向するように配置され、この左右の側板7c,7d間に上下の側板7a,7bがリング径方向に間隔を置いて対向するように配置され、上下側板7a,7bの両側縁部が左右側板7c,7dの内側面部に溶接等により固定されている。
【0032】
また、この上下左右の側板7a〜7dに囲まれた部分の雄側端内側面部には、前側板8が配置され、この前側板8の周縁部が前後左右の側板7a〜7dの内側面部に溶接等により固定されることにより、外殻部7の前側部、即ち雄側部が閉鎖されている。
【0033】
この前側板8の中央部には、雄側継手部材3が挿入される円形状の挿入口5が形成され、この挿入口5を通して雄側継手部材3が雌側継手部材4内に挿入されるようになっている。
【0034】
一方、この上下左右の側板7a〜7dに囲まれた部分の他端部内側面部には、後側板9が配置され、この後側板9の周縁部を上下左右の側板の内側面部に溶接等に固定することにより、外殻部7の後側部が閉鎖されている。
【0035】
尚、上下の側板及び左右の側板7a〜7dの外側面には、必要に応じてセグメント1内に埋設された鉄筋6,6の端部が溶接により固定されている。
【0036】
挟持部材10は、雄側継手部材3の表面に当接する挟持部11と、外殻部7の内面、即ち、上下側板7a,7bの内面に当接する反力受面部12とを有し、挟持部11側を互いに対向させた対称配置に外殻部7内に収容され、雌側継手部材4に挿入された雄側継手部材3を挟持するようになっている。
【0037】
また、この挟持部材10は、雄側継手部材3を挟持した際、挟持部11の挿抜方向位置が反力受面部12の挿抜方向位置より挿入方向奥側に配置されるように形成されている。即ち、挟持部11が雄側継手部材3から受ける反力が作用する中心位置と反力受面が上下側板より受ける反力の作用中心位置とを結ぶ線と雄側継手部材3の中止軸とが雄側継手部材3の挿入方向で所定の傾きを成すように形成されている。尚、その傾斜角θは、65度〜80度であることが好ましい。
【0038】
挟持部11は、挟持部材10の一方の端部を雄側継手部材3の外周面形状に合わせて円弧状に凹ませた形状に形成され、雄側継手部材3が雌側継手部材4に挿入された際に当該雄側継手部材3が両挟持部11,11間に嵌め込まれ、挟持部11内面が雄側継手部材3の外側面と互いに当接するようになっている。
【0039】
挟持部11の内側面部には、挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部が形成され、この抜き出し抵抗部には、粗面処理等の処理が施されることにより雄側継手部材3の外側面との間に摩擦による高い抵抗力が生じるようになっている。
【0040】
一方、反力受面部12は、挟持部11の中心軸と平行な平坦状に形成され、雄側継手部材3が挿入された際、上下側板の内側面に当接し、両挟持部材10,10は、上下側板7a,7bの内側面に反力を取って雄側継手部材3を挟持するようになっている。
【0041】
この反力受面部12には、挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部が形成され、この抜き出し抵抗部には、粗面処理等の処理が施されることにより、上下側板の内側面との間に抜き出し方向で摩擦による高い抵抗力が得られるようになっている。
【0042】
なお、反力受面部12が当接される上下側板7a,7bの内面にも、同様に挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部を形成することが好ましい。
【0043】
この挟持部材10の前側板側部には、軸方向奥側且つ中央側に向けて傾斜した傾斜部13が形成され、雄側継手部材3が未挿入の状態にあっては、挟持部材保持手段14により両挟持部材10,10が前側板8側に押圧されることにより、
図4に示すように、奥側部を互いに突き合わせるとともに、傾斜部13を前側板8内面に押し当てた状態で保持されるようになっている。
【0044】
挟持部材保持手段14は、例えば、弾性を有する金属板材の上下両端に内側に巻き込んだ形状の円弧部を有する板ばねを使用し、この板ばねが外殻部7内の挿入方向奥側に配置され、後側板9に反力を取って両挟持部材10を前側板8側に押圧するようになっている。
【0045】
このように構成されたセグメントの継手部構造では、雄側継手部材3を挿入口5より雌側継手部材4に挿入すると、雄側継手部材3のテーパ部3aにより挟持部11の内側面を押して、挟持部材保持手段14による付勢力に抗して両挟持部材10,10を互いに離反する方向に移動させ、雄側継手部材3が両挟持部材10,10間に挿入されるとともに、反力受面部12が側板7a,7bの内側面に当接する。
【0046】
これにより雄側継手部材3が上下側板7a,7bに反力を取った両挟持部材10,10に挟持され、その状態から更に両セグメント1,1の接合部端面2a,2bが突き合わされる位置まで雄側継手部材3を更に押し込む。
【0047】
その際、挟持部材10は、挟持部11の挿抜方向位置が反力受面部12の挿抜方向位置より挿入方向奥側に配置されるように形成されたことにより、挿抜方向では、挟持部材10,10に
図5(a)に示すようにせん断応力が作用し、挟持部−反力受面部間方向で引張応力が作用する。
【0048】
よって、雄側継手部材3と両挟持部材10とが固定されていない状態にあるので、雄側継手部材3を押し込む際、挟持部11を介して雄側継手部材3に作用する反力は小さく、小さな力で雄側継手部材3をスムースに挿入することができる。
【0049】
一方、
図3の如き両セグメント1,1の接合部端面2a,2bが突き合わされた状態では、雄側継手部材3に引き抜き方向の力が作用すると、挟持部11の挿抜方向位置が反力受面部12の挿抜方向位置より挿入方向奥側に配置されるように形成されたことにより、挿抜方向で両挟持部材10,10に
図5(b)に示すようにせん断応力が作用し、挟持部−反力受面部間方向で圧縮応力が作用する。
【0050】
従って、上下側板7a,7bに反力を取った両挟持部材10,10に挟持された雄側継手部材3には挟持部11を介して締め付け方向に反力が作用し、強固に挟持されるので両セグメント1,1がリング軸方向で強固に連結される。
【0051】
次に、セグメントリングを構成するセグメント1,1...相互を連結する継手部構造Bは、
図6〜
図8に示すように、互いに連結される一方のセグメント1,1...の周方向接合部端面20aに突設された雄側継手部材21と、他方のセグメント1,1...の周方向接合部に固定された雌側継手部材22とをもって構成され、雄側継手部材21を雌側継手部材22に挿入した状態でセグメント1,1をリング軸方向に相対的にスライド移動させることができるようになっている。
【0052】
雄側継手部材21は、セグメント1,1...周方向両端の接合部端面20aより突出した上下に被挟持面23,23を有する平板棒状に形成され、リング軸方向に間隔を置いて配置されている。
【0053】
この雄側継手部材21は、一方の端部が必要に応じてコンクリート内に埋設された鉄筋6,6に溶接により固定され、それにより接合部端面20aより他方端部が突出した状態にセグメント1,1...に固定されている。
【0054】
この雄側継手部材21の先端部には、先端を面取りした形状のテーパ部が形成され、雌側継手部材22への挿入を容易に行えるようになっている。
【0055】
また、雄側継手部材21の上下被挟持面23,23には、挿抜方向の力に対抗するための抜き出し抵抗部24が形成されている。
【0056】
この抜き出し抵抗部24は、抜き出し方向と交差する方向に向けた突条25,25...を抜き出し方向に平行に並べることにより形成され、抜き出し方向に対しては高い抵抗力を発揮する一方、抜き出し方向と交差する方向では抵抗が少ないようになっている。
【0057】
雌側継手部材22は、雄側に雄側継手部材21が挿入される開口部が形成された中空状の外殻部27と、外殻部27内に配置された一対の挟持部材28,28とを備え、外殻部27内に挿入された雄側継手部材21を両挟持部材28,28で挟持することにより抜き出し方向で移動不能に保持するようになっている。
【0058】
外殻部27は、平板状の鋼板材からなる上下左右の側板27a〜27dと、前側板29と、後側板30とを備え、各側板、前側板29及び後側板30をもってリング軸方向に長い中空直方体状に形成されている。また、前側板29の中央部には、リング軸方向に向けたスリット状の挿入口31が形成されている。
【0059】
挟持部材28,28は、雄側継手部材21の被挟持面23,23に当接する挟持部32と、外殻部27の内面、即ち、上下側板27a,27bの内面に当接する反力受面部33とを有し、挟持部32と反力受面部33とが互いに平行な側面視平行四辺形状であってリング軸方向に長い形状に形成され、挟持部32側を互いに対向させた対称配置に外殻部27内に収容され、雌側継手部材22に挿入された雄側継手部材21を挟持するようになっている。
【0060】
この挟持部材28,28のリング軸方向の長さ、即ち、挿抜方向と交差する方向の幅は、雄側継手部材21の被挟持面23,23の挿抜方向と交差する方向の幅に比して長く形成されている。尚、挟持部材28のリング軸方向の長さと被挟持面23,23の挿抜方向と交差する方向の幅との比率はセグメント1,1のリング軸方向のスライド量により決定される。
【0061】
また、この挟持部材28,28は、雄側継手部材21を挟持した際、挟持部32の挿抜方向位置が反力受面部33の挿抜方向位置より挿入方向奥側に配置されるように形成されている。即ち、挟持部32が雄側継手部材21から受ける反力が作用する中心位置と反力受面が上下側板より受ける反力の作用中心位置とを結ぶ線と雄側継手部材21の中止軸とが雄側継手部材21の挿入方向で所定の傾きを成すように形成されている。尚、その傾斜角は、65度〜80度であることが好ましい。
【0062】
尚、図中符号34は、バネ材からなる挟持部材保持手段であって、後側板30に反力を取って両挟持部材28,28を押圧することにより、両挟持部材28,28を互いに挟持部32側を対向させた配置に外殻部27内に保持するようになっている。
【0063】
このように構成されたセグメントの継手部構造では、
図2(a)〜(b)に示すように、隣り合う両セグメント1,1...をリング軸方向でずらした状態で、雄側継手部材21を挿入口31より雌側継手部材22のリング軸方向手前側部に挿入する。
【0064】
それに伴い、雄側継手部材21のテーパ部により挟持部32の内側面を押して、挟持部材保持手段34,34による付勢力に抗して両挟持部材28,28を互いに離反する方向に移動させ、雄側継手部材21が両挟持部材28,28間に挿入されるとともに、反力受面部33が上下側板27a,27bの内側面に当接する。
【0065】
これにより雄側継手部材21が上下側板27a,27bに反力を取った両挟持部材28,28に挟持され、その状態から更に両セグメント1,1...の接合部端面20a,20bが突き合わされる位置まで雄側継手部材21を更に押し込む。これにより、隣り合う両セグメント1,1のリング径方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0066】
その際、挟持部材28は、挟持部32の挿抜方向位置が反力受面部33の挿抜方向位置より挿入方向奥側に配置されるように形成されたことにより、挿抜方向では、挟持部材28,28に
図5(a)に示す場合と同様に、せん断応力が作用し、挟持部−反力受面部間方向で引張応力が作用する。
【0067】
よって、雄側継手部材21と両挟持部材28とが固定されていない状態にあるので、雄側継手部材21を押し込む際、挟持部32を介して雄側継手部材21に作用する反力が小さくなり、小さな力で雄側継手部材21をスムースに挿入することができる。
【0068】
一方、
図2(b)の如き両セグメント1,1の接合部端面20a,20bが突き合わされた状態では、雄側継手部材21に引き抜き方向の力が作用すると、挟持部32の挿抜方向位置が反力受面部33の挿抜方向位置より挿入方向奥側に配置されるように形成されたことにより、挿抜方向で両挟持部材28,28に
図5(b)に示す場合と同様に、せん断応力が作用し、挟持部−反力受面部間方向で圧縮応力が作用する。
【0069】
従って、上下側板27a,27bに反力を取った両挟持部材28,28に挟持された雄側継手部材21には挟持部32を介して締め付け方向に反力が作用し、強固に挟持されるので両セグメント1,1がリング軸方向で強固に連結される。
【0070】
そして、
図2(b)〜(c)に示すように、隣り合うセグメント1,1をリング軸方向でスライド移動させ、雄側継手部材3を雌側継手部材4に挿入させ、リング軸方向を連結させる。
【0071】
その際、挟持部32の挿抜方向と交差する方向の幅を被挟持面23,23の挿抜方向と交差する方向の幅に比して長く形成したことで、雌側継手部材22に対し雄側継手部材21が抜き出し方向の移動が規制された状態でリング軸方向に移動できる。
【0072】
尚、上述の実施例では、外殻部を中空の直方体状に形成した例について説明したが、外殻部40は、
図9に示すように前後方向に向けた円筒状とし、その前後部を前側板41及び後側板42で閉鎖したものであってもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
その場合、両挟持部材43,43は、円筒内側面に当接する外側面部と、雄側継手部材3の外側面と当接する内側面とを有する奥側に膨出した中空円盤を上下に半割した形状に形成され、外側面部が反力受面部44、内側面部が挟持部45をそれぞれ形成している。
【0074】
尚、上述の実施例では、挟持部材保持手段14を板バネにより構成した例について説明したが、挟持部材保持手段は、コイルばね等で構成してもよく、その形状も上記の如き限定されるものではなく、挟持部材を互いに雄側継手部材をその間に挿入させることができる状態に保持できるように押圧するものであればよい。
【0075】
また、
図8に示すように、挟持部材保持手段としてゴム等の弾性材からなる押さえ部材50,51を使用し、両挟持部材43,43を挿抜方向で挟みこむことにより所定の位置に保持させるようにしてもよい。