特許第5958856号(P5958856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱日立パワーシステムズインダストリー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5958856-COボイラ 図000002
  • 特許5958856-COボイラ 図000003
  • 特許5958856-COボイラ 図000004
  • 特許5958856-COボイラ 図000005
  • 特許5958856-COボイラ 図000006
  • 特許5958856-COボイラ 図000007
  • 特許5958856-COボイラ 図000008
  • 特許5958856-COボイラ 図000009
  • 特許5958856-COボイラ 図000010
  • 特許5958856-COボイラ 図000011
  • 特許5958856-COボイラ 図000012
  • 特許5958856-COボイラ 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958856
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】COボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/18 20060101AFI20160719BHJP
   F23C 5/32 20060101ALI20160719BHJP
   F23C 1/08 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F22B1/18 H
   F23C5/32
   F23C1/08
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-99864(P2012-99864)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-228135(P2013-228135A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
(74)【代理人】
【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子
(72)【発明者】
【氏名】塚田 法広
(72)【発明者】
【氏名】小橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】津村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】北坂 朋生
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】長島 純
(72)【発明者】
【氏名】冠木 豊
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−292344(JP,A)
【文献】 特開昭48−035426(JP,A)
【文献】 実公平01−040981(JP,Y2)
【文献】 特開2009−097764(JP,A)
【文献】 特開2005−164227(JP,A)
【文献】 特開平07−217864(JP,A)
【文献】 特開平04−278109(JP,A)
【文献】 特開昭61−240007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/18
F23C 1/08
F23C 5/08
F23C 7/02
F23D 11/04
F23D 14/24
F23G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油精製設備から発生する一酸化炭素を含む副生ガスを燃焼する筒型の火炉を備えたCOボイラにおいて、
火炉の上部側壁に設けられ、燃焼により発生する排ガスを排出する出口部と、
該出口部より下方の出口部側の側壁に設けられ、排ガスの流路を絞るくびれ部と、
該くびれ部よりも下方で、且つくびれ部と対向する側壁にのみ設けられ、助燃燃料を燃焼用空気により燃焼する助燃バーナと、
火炉の底壁に設けられ、火炉内に前記一酸化炭素を含むガスを供給するCOガスポートと
を備えたことを特徴とするCOボイラ。
【請求項2】
前記COガスポートは助燃バーナが設けられた側壁側の底壁に設けられていることを特徴とする請求項1記載のCOボイラ。
【請求項3】
石油精製設備から発生する一酸化炭素を含む副生ガスを燃焼する筒型の火炉を備えたCOボイラにおいて、
火炉の上部側壁に設けられ、燃焼により発生する排ガスを排出する出口部と、
該出口部より下方の出口部側の側壁に設けられ、排ガスの流路を絞るくびれ部と、
該くびれ部よりも下方で、且つくびれ部と対向する側壁にのみ設けられ、助燃燃料を燃焼用空気により燃焼する助燃バーナと、
助燃バーナよりも下方に設けられ、火炉内に前記一酸化炭素を含むガスを供給するCOガスポートと
を備え、
前記助燃バーナの燃焼用空気に旋回力を形成する旋回装置を助燃バーナに設け、
前記旋回装置による旋回力の強さを調整する調整装置を旋回装置に設けたことを特徴とするCOボイラ。
【請求項4】
前記助燃バーナの周囲の壁を耐火材により構成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のCOボイラ。
【請求項5】
前記助燃バーナの上方に、該助燃バーナでの燃料の燃焼に不足する燃焼用空気を火炉内に噴出するアフターエアポートを設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のCOボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油精製設備から排出される高温のCO含有ガスを燃焼するCOボイラの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油産業は基幹産業の一つであり、石油精製設備などにはガソリンの需要増加に伴って、重質油からガソリンを精製する重油流動分解接触装置が設置されている。重油流動分解接触装置(以下、RFCC装置という)は、常圧残渣油を原料とし、触媒上での高温分解により、ガソリン、灯油、軽油などの高付加価値留分を精製する装置である。
【0003】
そして、このRFCC装置からは高温の一酸化炭素(CO)を含有するガスが排出されるため、重油流動分解接触装置の排ガス流路後流側にはCO含有ガスを燃料とするボイラ(以下、COボイラという)も設置されている。CO含有ガス(以下、COガスという)を燃焼することでCOの大気への排出を防止すると共に、COボイラによって高温のCOガスから熱を回収し、工場内ユーティリティ、発電などに有効利用している。
【0004】
COガスと同様の低カロリーガスである、製鉄所での生産過程で発生する高炉ガス(以下、BFGという)を利用するボイラとして、下記特許文献1がある。特許文献1には、主バーナのすぐ下に低カロリー用のガスバーナを設け、低カロリー用のガスバーナのノズルを斜め下方に向けた燃焼装置が開示されている。難燃性の低カロリーガスを主バーナ部の旋回燃焼と分離して主バーナの着火に悪影響を及ぼすことを防止し、炉底で反転した低カロリーガスを主バーナ部の高温領域で燃焼させることで燃焼効率を向上させている。
【0005】
BFGを燃焼する場合は、ボイラ投入前に熱交換器でCOガスを200℃前後に加熱するが、COガスの温度が低温であるため、一般に用いられている低カロリー用のガスバーナで、燃料とガスを同時にボイラに供給することが可能である。
【0006】
しかし、RFCC装置からは700℃前後の高温のCOガスが大量に発生するため、ガスバーナを介してボイラに供給するためには、バーナの構造を耐熱性や耐火性に設計したり、大型化したりする必要があるが、この高温のCOガス専用の新たなバーナを用いた場合、バーナ本体のコストが大幅に上昇することや、ユーザーからボイラ設備のコンパクト化を求められていることから、現実的には難しい。
【0007】
また、COボイラへの燃料の投入は、図11図12に示すように、通常の石炭焚ボイラ、油焚ボイラ、ガス焚ボイラ等と同様に、前壁からのみ(図11)又は前壁と後壁の両方(図12)から行われていた。
図11図12のCOボイラでは、COガスを助燃バーナ13によって火炉3内で燃焼させて、一般的には排ガス出口部7に設けた過熱器9により過熱した後、図示しない脱硝装置、脱硫装置、電気集塵機などを経て煙突から排出される。なお、過熱器、脱硝装置、脱硫装置、電気集塵機等は設置しない場合もある。
【0008】
多量の低カロリーのCOガスを燃焼する場合は、低カロリーガスや助燃燃料の燃焼装置及び燃焼用空気の投入口などを設置する必要があるが、バーナ本体やその配管等の付属機器を含めた燃焼装置の大型化、それに伴うボイラ設備の大型化が避けられず、配置上の制約が生じるため、COガスの処理量に制限があった。
また、このような高温のCOガスを燃料とするCOボイラとしては、下記特許文献2や特許文献3などもある。
【0009】
特許文献2に記載の構成では、助燃バーナを挟んで、上にはCOを含む低カロリーガス用のポートを、下にはCOを含む不燃性ガス用のポートを配置することで、助燃バーナからの上向きの炎によって低カロリーガスと不燃性ガスが混合する直前に低カロリーガスを着火させることができる。
【0010】
また、特許文献3に記載の構成では、助燃ガスの流量を供給中のCOガスの比熱や発熱量などから算出されるボイラに入る正味負荷量に基づいて制御し、それをボイラの炉内温度によって補正すると共に、供給空気量も正味負荷量より算出される計算空気量と実測空気量を比較して供給空気量を制御する構成が開示されている。したがって、需要蒸気量が変化しても助燃ガスを必要最小限に抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−278109号公報
【特許文献2】特開平8−113788号公報
【特許文献3】特開平8−42801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、RFCC装置から発生するCOガスは、700℃前後の高温で且つ大量なため、燃焼装置の配置上の制約や装置の大型化などの問題があり、上記特許文献1に記載の構成のように、ガスバーナからボイラに供給することは、現実的には難しい。
【0013】
そして、上記特許文献2に記載の構成では、高温のCOを含む低カロリーガス用のポートを助燃バーナとは別に設けているものの、このポートは助燃バーナと接しているため、助燃バーナを耐火構造とするなどの配慮が必要である。また、CO含有の低カロリーガスは助燃バーナの上部から供給しているため、火炎との接触、混合する機会がないまま上向きの炎によって上方に流れてしまうため、炉内における低カロリーガスの滞留時間が確保されず、COガスが完全燃焼されないという問題も生じる。
【0014】
同様に、特許文献3に記載の構成でも、炉内におけるCOガスの滞留時間が確保されないと、燃焼性の悪いCOガスが燃え残ってしまい、火炉出口のCOガス濃度が高くなってしまう。火炉出口のCOガス濃度が高いと、エネルギー回収効率が悪くなるとともに、有害なCOガスが大気中に放出されてしまう。
【0015】
また、COガスの燃焼において、COガスの温度の低下がCOの酸化反応速度に大きく影響し、火炉の出口におけるCOガス濃度が高くなるという問題がある。COの酸化反応が促進する温度は700℃以上であり、COガスの温度低下は燃焼効率にも大きく影響する。
更に、燃料の燃焼によって生じる窒素酸化物(以下、NOxという)も低減されることが望ましい。
【0016】
本発明の課題は、COボイラの火炉内のCOガスの滞留時間を十分確保して、火炉出口のCOガス濃度を低減可能としたCOボイラの提供である。また、更に燃料の燃焼によって生じるNOxも低減できるCOボイラの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決することができる。
請求項1記載の発明は、石油精製設備から発生する一酸化炭素を含む副生ガスを燃焼する筒型の火炉を備えたCOボイラにおいて、火炉の上部側壁に設けられ、燃焼により発生する排ガスを排出する出口部と、該出口部より下方の出口部側の側壁に設けられ、排ガスの流路を絞るくびれ部と、該くびれ部よりも下方で、且つくびれ部と対向する側壁にのみ設けられ、助燃燃料を燃焼用空気により燃焼する助燃バーナと、火炉の底壁に設けられ、火炉内に前記一酸化炭素を含むガスを供給するCOガスポートとを備えたCOボイラである。
なお、筒型とは断面が円又は四角形などの多角形状のものも含む意である。
【0018】
求項記載の発明は、前記COガスポートは助燃バーナが設けられた側壁側の底壁に設けられている請求項記載のCOボイラである。
【0019】
請求項記載の発明は、石油精製設備から発生する一酸化炭素を含む副生ガスを燃焼する筒型の火炉を備えたCOボイラにおいて、火炉の上部側壁に設けられ、燃焼により発生する排ガスを排出する出口部と、該出口部より下方の出口部側の側壁に設けられ、排ガスの流路を絞るくびれ部と、該くびれ部よりも下方で、且つくびれ部と対向する側壁にのみ設けられ、助燃燃料を燃焼用空気により燃焼する助燃バーナと、助燃バーナよりも下方に設けられ、火炉内に前記一酸化炭素を含むガスを供給するCOガスポートとを備え、前記助燃バーナの燃焼用空気に旋回力を形成する旋回装置を助燃バーナに設け、前記旋回装置による旋回力の強さを調整する調整装置を旋回装置に設けたCOボイラである。
【0020】
請求項記載の発明は、前記助燃バーナの周囲の壁を耐火材により構成した請求項1から請求項のいずれか1項に記載のCOボイラである。
請求項記載の発明は、前記助燃バーナの上方に、該助燃バーナでの燃料の燃焼に不足する燃焼用空気を火炉内に噴出するアフターエアポートを設けた請求項1から請求項のいずれか1項に記載のCOボイラである。
【0021】
(作用)
火炉の構造と、助燃バーナとCOガスポートの配置を工夫して、火炉内のCOガスの滞留時間を確保することで、火炉内を酸化性の雰囲気とし、COを二酸化炭素(CO)に酸化して無害化できる。
【0022】
火炉の上部側壁には排ガスの出口部があり、その下方の側壁には排ガスの流路を絞るくびれ部がある。助燃燃料を燃焼用空気により燃焼する助燃バーナをくびれ部よりも下方で、且つくびれ部と対向する側壁に設け、COガスポートを助燃バーナよりも下方に設ける。ボイラの火炉に投入されたCOガスは、上方の出口部に向かって流れるが、その間の流路にある助燃バーナからの噴射火炎によって、COガスはその高温の噴射火炎に伴いながらCOが燃焼されつつ、まずくびれ部側の側壁に流れ、更にくびれ部に沿って上方に流れた後、火炉上部の出口部から排出される。
【0023】
助燃バーナよりも上方にCOガスポートがあると、ボイラに投入されたCOガスは助燃バーナからの火炎の上昇気流によってすぐに上昇するため、助燃バーナの火炎と接触する時間が短く燃焼が十分に行われない。また、COガスはくびれ部に沿って流れずに上昇し、速い速度でくびれ部を通過してしまう。従って、火炉内のCOガスの滞留時間を十分確保できない。また、COガスは助燃バーナよりも下方の空間には流れにくいため、火炉内の助燃バーナよりも下方の空間は火炉内のCOガスの滞留時間の確保に十分に有効利用されていない。
【0024】
また、助燃バーナが火炉の前壁と後壁などの対向する両壁面に設置されている場合は、COガスポートを助燃バーナよりも下方に設けても、COガスが前壁と後壁の助燃バーナ間をすり抜ける際に両側からの助燃バーナの火炎によって舞い上がり上昇速度が増加するため、助燃バーナの火炎と接触する時間が短くなる。また燃焼ガスの上昇流が強くなることからCOガスが火炉内で滞留しにくいため、燃焼が十分に行われない。
【0025】
しかし、COガスポートを助燃バーナよりも下方に設けることで、COガスは助燃バーナの下方から投入されるため、COガスは助燃バーナから噴出する火炎の下側に接触し、その火炎に同伴して、その火炎に巻き込まれながら燃焼されつつ、その燃焼ガスはくびれ部側の側壁に流れた後、くびれ部に沿って再度助燃バーナを設けた側の壁側に流れ、火炉内を迂回しながら上方の火炉出口部に流れるので、COガスの流路が長くなり、燃焼反応の時間を確保することができる。
【0026】
また、助燃バーナの火炎よりも下方の空間にもCOガスが滞留するため、火炉内の空間は有効に利用され、火炉内のCOガスの滞留時間を十分確保でき、かつ火炎からの輻射熱でCOガスを高温に維持できることから、COガスの燃焼を十分に行うことが可能となる。
【0027】
更に、助燃バーナがくびれ部に対向する側壁にだけ設置されていることで、COガスは助燃バーナの噴射方向に沿ってくびれ部側へと流れた後、上昇するため、助燃バーナを対向する両壁面に設けた場合に生じる、火炎同士の衝突による上昇流が形成されないことから、上昇速度が抑えられ、比較的ゆっくりとした流れになる。
【0028】
したがって、請求項1記載の発明によれば、助燃バーナをくびれ部よりも下方でくびれ部に対向する側壁にのみ設置し、助燃バーナよりも下方にCOを含むガスを投入するCOガスポートを設けることで、COガスの火炉内の滞留時間が確保され、COガスの燃焼を十分に行うことが可能となる。
【0029】
また、COガスポートを火炉の底壁に設けることで助燃バーナの火炎に対して、COガスが直交する形で衝突することになり、その火炎への混合が速やかにかつ十分に行われることからCOガスの燃焼が促進される。
【0030】
また、炉底には燃焼装置等の装置や部材等がないため、配置上の制約が無くなるので、この部分を有効利用することでCOガスの処理量が多くても処理量に制限されずに、COガスポートの開口面積を大きくとることが可能である。
【0031】
請求項記載の発明によれば、請求項に記載の発明の作用に加えて、COガスポートを助燃バーナの備えられた側壁側の底壁に設けることで、COガスポートから投入されるCOガスは助燃バーナの火炎の根元側から火炎への混合が行われるため、COガスの燃焼反応時間を更に確保できる。
【0032】
請求項記載の発明によれば、助燃バーナをくびれ部よりも下方でくびれ部に対向する側壁にのみ設置し、助燃バーナよりも下方にCOを含むガスを投入するCOガスポートを設けることで、COガスの火炉内の滞留時間が確保され、COガスの燃焼を十分に行うことが可能となる。
また、調整装置によって助燃バーナの燃焼用空気の旋回力の強弱を調整することができる。例えば、燃焼用空気の旋回力を弱めることで、燃焼用空気の直進方向の流速を大きくできるため、この燃焼用空気流によってCOガスはくびれ部側の側壁への流れが促進され、その流れに同伴するCOガス量が大幅に増える。したがって、多量のCOガスの火炉内の滞留時間をより確保でき、火炉出口のCO濃度を大幅に低く抑えることができる。
【0033】
請求項記載の発明によれば、上記請求項1から請求項のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、助燃バーナの周囲の壁を耐火材によって構成すると、周囲の壁からの熱放散を抑えることができ、助燃バーナの火炎周囲の温度を高温に維持できることから、燃焼用空気による火炎の温度低下を防止でき、高温に保つことが可能となるため、COガスとの混合に際して、COガス温度を高いまま維持することにより、COの酸化反応の速度を増加させることでCOガスの燃焼性が良好となる。
【0034】
請求項記載の発明によれば、上記請求項1から請求項のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、助燃バーナでの燃料の燃焼に不足する燃焼用空気を火炉内に噴出するアフターエアポートを設置することで、二段燃焼を行え、燃焼効率が向上する。
【0035】
すなわち、助燃バーナでの空気比(理論空気量に対する実際空気量の割合)を1以下として、COを燃焼するが、急激な燃焼を抑えることにより、サーマルNOxの発生を抑制する。サーマルNOxとは、燃焼用空気の中に含まれている窒素と酸素とが高温状態において反応し、NOとなることで生成するNOxを言う。
【0036】
その後、火炉出口においてCOと未燃分を含む燃焼ガスに対して、アフターエアポートから残りの燃焼空気を噴出して、火炉を上昇してきた燃焼ガスに燃焼空気の一部を供給することにより緩やかな燃焼が行えることから、サーマルNOxの発生の抑制を行いつつ、COと未燃分とを完全燃焼させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、COボイラの火炉内のCOガスの滞留時間を十分確保することで、火炉出口のCOガス濃度を低減できる。具体的には以下の効果を有する。
請求項1記載の発明によれば、助燃バーナよりも下方に設置されたCOガスポートからのCOを含むガスが火炉内を迂回しながら上方に流れるので、COを含むガスの流路が長くなることで、COガスの火炉内の滞留時間が確保され、COガスの燃焼を十分に行うことが可能となる。
【0038】
また、COガスポートを火炉の底壁に設けることで、COガスの燃焼が促進されると共に、COガスポートの開口面積を大きくとれるため、COガスの処理量が多くても処理できる。
請求項記載の発明によれば、請求項に記載の発明の効果に加えて、COガスポートを助燃バーナの備えられた側壁側の底壁に設けることで、COガスの燃焼反応時間を更に確保できる。
【0039】
請求項記載の発明によれば、助燃バーナよりも下方に設置されたCOガスポートからのCOを含むガスが火炉内を迂回しながら上方に流れるので、COを含むガスの流路が長くなることで、COガスの火炉内の滞留時間が確保され、COガスの燃焼を十分に行うことが可能となる。また、調整装置によって助燃バーナの燃焼用空気の旋回力の強弱を調整することで、燃焼用空気の直進方向の流速を増減できるため、COガスのくびれ部側の側壁への流れを促進することが可能となり、COガスの火炉内の滞留時間をより確保することができる。
【0040】
請求項記載の発明によれば、上記請求項1から請求項のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、燃焼用空気の温度を高温に維持することが可能となるため、COガスの燃焼性をより良好にできる。
請求項記載の発明によれば、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、アフターエアポートを設置して二段燃焼を行うことで、助燃燃料の燃焼時に発生するNOxを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の一実施例のCOボイラの正面図である。
図2図1のCOボイラの側面図である。
図3図1のCOボイラの底面図である。
図4】助燃バーナの一部断面を示す平面図である。
図5図3のCOガスポートの位置を変えた場合のCOボイラの底面図である。
図6】本発明の他の実施例のCOボイラの平面図である。
図7図6のCOボイラの底面図である。
図8】本発明の他の実施例のCOボイラの正面図である。
図9図8のCOボイラの側面図である。
図10図8のCOボイラの底面図である。
図11】従来のCOボイラ(バーナを前壁にのみ設置した場合)の側面図である。
図12】従来のCOボイラ(バーナを両壁に設置した場合)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0043】
図1には、本発明の一実施例のCOボイラ1の正面図を示し、図2には、図1のCOボイラ1の側面図を示し、図3には、図1のCOボイラの炉底(底壁)の平面図(底面図)を示す。
火炉3は水平断面が四角形であり、後壁19上部に設けたくびれ部であるノーズ5と、ノーズ5よりも上方に設けた排ガス出口7と、排ガス出口7に設けた過熱器9などから構成される。
【0044】
火炉3の前壁11には助燃燃料を燃焼用空気により燃焼する助燃バーナ13が設けられ、助燃バーナ13よりも下方にCOを含むガスを投入するCOガスポート15が設けられている。
【0045】
図4には、助燃バーナ13を油バーナとした場合の一例(一部断面を示す平面図)を示す。
助燃バーナ13は、円筒状のスリーブ29を備え、スリーブ29の内部には、一次空気流路33と、中心軸に設けた助燃用の燃料ノズル31とを備えている。また、一次空気流路33の外周部には燃焼用二次空気流路35が設けられている。一次空気流路33と燃焼用二次空気流路35には火炉側壁の外側に配置される風箱39から燃焼用空気が供給される。一次空気流路33にスライド式に開閉自在に設けられたダンパ41によりスリーブ29の開口部の開閉度合を調整して一次空気流が形成され一次空気が供給される。二次空気流路35にはエアレジスタ37を設け、エアレジスタ37によって燃焼用空気流が形成されて燃焼用空気が供給される。
【0046】
エアレジスタ37は、燃焼用空気を流したり止めたりする仕切り(ダンパ)であり、バーナから噴射される燃料に燃焼用空気を供給するが、燃焼用空気を燃料と混合する際、燃焼用空気に旋回を与え、火炎手前では極力空気の混合を抑制したり、火炎手前より少しずつ混合したりして、燃焼性を調整したり、火炎を安定させるための空気流を調整する機能をもつ。なお、エアレジスタ37には案内羽根を利用する軸流式など種々のものがある。
【0047】
そして、エアレジスタ37は図示しない開閉機構や制御装置などにより作動することで、旋回力(スワール数)の強弱や燃焼用空気の流量及び流速を調整、制御可能である。ダンパ41も同様に、一次空気の流量とそれらの流速が制御される。なお、スワール数とは、旋回を伴う流れにおいて、旋回の強さを表す無次元数であり、スワール数が大きいほど旋回の強い流れとなる。
【0048】
RFCC装置から発生するCOを含むガスは、組成がN:70%、CO:12%、CO:4%、HO:13%、その他:1%(vol%)であり、温度が700℃、流量が1時間あたり500トンの条件でCOガスポート15から火炉3(奥行7m、高さ10m、巾10m程度の燃焼炉)に投入される。
【0049】
COを含むガスは低カロリーであり且つ低濃度であるため、安定燃焼を保持するために助燃燃料による補助燃焼が必要となる。助燃バーナ13からは助燃燃料が燃焼用空気と共に火炉3に投入される。なお、図4では油バーナの例を示しているが、ガスバーナでも良く、また助燃燃料としては、油、ガス、副生油、副生ガス等特に指定はないが、例えばLPGなどで良い。
【0050】
火炉3内の燃焼によって発生する排ガスは、出口7から過熱器9を通り矢印A方向に流れて、図示しない脱硝装置、脱硫装置、電気集塵機などを経て煙突から排出される。
COガスポート15は助燃バーナ13よりも下方の前壁11、側壁17、後壁19、炉底21などに設けることで、火炉3に投入されたCOガスが、上方の排ガス出口7に向かって流れる間に助燃バーナ13の火炎と接触するため、燃焼が十分に行われる。また、助燃バーナ13よりも下方の空間にもCOガスが滞留するため、火炉3内の空間は有効に利用される。
【0051】
また、助燃バーナ13が前壁11にのみ設置されていることで、COガスは助燃バーナ13の噴射方向(矢印Bで示す)に沿って火炎に同伴しながら、COは燃焼され、その燃焼ガスは、ノーズ5のある後壁19側へと流れた後、後壁19に沿って上昇し、その後ノーズ5に沿って再度助燃バーナ13を取り付けた前壁11に向かいながら上昇する。
【0052】
したがって、COガスの火炉3内の滞留時間が確保され、COガスの燃焼を十分に行うことが可能となる。なお、助燃バーナ13は前壁11の下部に設置すると、火炉3の下部空間を有効に利用でき、つまり、その空間に一時滞留するCOガスは、助燃バーナの火炎からの輻射熱により、COガスを高温に維持でき、そのCOガスの燃焼を促進することができる。
COガスポート15は複数の壁に設けても良い。
【0053】
燃焼用空気である二次空気はバーナ火炎を包み込んで燃焼を安定化させるために必要であるが、エアレジスタ37により燃焼用空気である二次空気の旋回力を弱める、すなわちスワール数を減少させることで、燃焼用空気の直進方向の流速を大きくすることができる。
【0054】
スワール数Sは、燃焼工学ハンドブック(初版、日本機械学会発行、1995年7月25日、応用編158頁)で示される下記(1)式により定義されている。
S = Gφ/(G・r) (1)
ただし、Gφは噴流の角運動量(周方向の角運動量)、Gは噴流の軸運動量(軸方向の運動量)、rはバーナの出口径である。
【0055】
スワール数を0.6の強い旋回とした場合は出口7のCOガス濃度は500ppmを超えたが、それよりも弱い旋回である、例えば0.1〜0.35とした場合は出口7のCOガス濃度が約60ppm以下に抑えられ、COガス濃度の削減効果が顕著であることが分かった。
【0056】
燃焼用空気の直進方向の流速が大きいと、COガスのノーズ5側の後壁19への流れが促進され、助燃バーナ13の火炎に沿って後壁19へ流れるCOガス量が増え、COガスの火炉3内の滞留時間がより確保される。したがって出口7のCOガス濃度を更に低下させることができる。
【0057】
なお、COガスポート15を助燃バーナ13の下方の前壁11に設ける場合は、炉底に設ける場合と比べて、助燃バーナ13との配置上の制約があるが、助燃バーナ13の噴出方向に沿ってCOガスが投入され、直進方向の流速が大きい助燃バーナ13から噴射される火炎に同伴されながらCOガスは燃焼され、後壁19側へと流れながら上昇するようになり、COガスポート15を炉底に設けた場合と同様な効果が得られる。
【0058】
図3には、炉底21にCOガスポート15を設置した例を示しているが、この場合は特にCOガスが炉底21にも溜まるため、火炉3の下部の空間をより有効に利用できる。また、炉底21には燃焼装置等の装置や部材等がないため、この部分を有効利用することでCOガスの処理量が多くても処理量に制限されず、COガスポート15の開口面積を大きくとることが可能である。
【0059】
図2にはCOガスの流れ(矢印C)を示す。炉底21から投入されるCOガスは、助燃バーナ13からの助燃燃料と燃焼用空気、また排ガスの流れによって後壁19側に流される。そして火炉3内を上昇しながら、燃焼用空気からの酸素、着火源である火炎、高温雰囲気などの燃焼条件が確保された状態で、後壁上部のノーズ5に当たり、火炉3内を循環して出口7へと流れる。したがって、COガスポート15を炉底21に設けた場合は、火炉3内のCOガス流路が長く確保されるため、更なるCOガスの滞留時間の確保が可能となり、出口7におけるCOガス濃度を低下させることができる。
【0060】
特に、COガスポート15を炉底21の前壁11側に設けると、COガスが投入直後に助燃バーナ13からの火炎と直交する形で接触するため火炎と混合しながら後壁19まで流れ、炉底21の前壁11側から後壁19側への流路が確保できる。したがって、COの酸化反応時間を最大限確保でき、燃焼効率が良好となる。
また、図5に示すように、平面視における助燃バーナ13とCOガスポート15との左右方向の位置(点線Dで示す)を揃えると、COガスと助燃バーナ13からの火炎がより接触しやすくなるため好適である。
【0061】
また、COガスポート15の開口面積は、火炉3へのCOガスの投入速度が速くなりすぎないように設定すると良い。COガスの投入速度は、助燃バーナ13から投入する燃焼空気速度よりも遅く設定することにより、助燃バーナ13の火炎がCOガスを同伴しやすくする。したがって、一般的には20m/s前後の燃焼空気投入速度とし、COガスの投入速度はそれ以下の20m/s以下となり、COガスの処理量に応じてCOガスポート15の開口面積は決定される。
【0062】
火炉3へのCOガスの投入速度が速いと助燃バーナ13の火炎を貫通してしまうので、火炉3内のCOガスの滞留時間が確保できないが、火炉3へのCOガスの投入速度を20m/s以下等の適正な速度にすることで、COガスが助燃バーナ13の火炎に直交する形で衝突し、燃焼空気ともよく混合されながら同伴して十分に燃焼が可能となるので、CO濃度の低減が達成できる。
【0063】
更に、前壁11の助燃バーナ13の上方に、助燃バーナ13での燃料の燃焼に不足する燃焼用空気を火炉3内に噴出するアフターエアポート27を設置して二段燃焼を行えば助燃燃料の燃焼時に発生するNOxを低減できる。
つまり、助燃バーナの空気比を1.0より少なくして、燃料に燃焼用空気を供給することにより、緩慢燃焼を行いサーマルNOxの発生を抑制しつつCOガスを燃焼させ、火炉3の出口7において、アフターエアポート27から燃焼に必要な空気量の残りの燃焼空気を、火炉3を上昇してきた燃焼ガスに供給して、その燃焼ガスに含まれるCOと未燃分を燃焼させる。この燃焼により、NOxの発生量の抑制とCO濃度の低減を合わせて達成することができる。
【実施例2】
【0064】
図6には、本発明の他の実施例として、COボイラの平面図を示し、図7には図6のCOボイラの底面図を示す。本実施例では火炉3の水平断面が円形の場合を示しており、その他の構成は実施例1と同じであるため、同じ部材の説明は省略する。また、COボイラの正面図と側面図は概ね図1図2と同じである。
【0065】
火炉3の水平断面が円形の場合は、ノーズ5と対向する位置に助燃バーナ13を設ける。本実施例でも実施例1と同様の作用効果を奏する。なお、実施例1のようにCOガスポート15を炉底21の前側に設けたり、平面視における助燃バーナ13とCOガスポート15との左右方向の位置を揃えたり、エアレジスタ37による燃焼用空気の旋回力を調整したり、COガスポート15の開口面積をCOガスの流速を調整するために適宜変更したり、アフターエアポート27を設置して二段燃焼を行っても良いことは言うまでもない。
【実施例3】
【0066】
図8には、本発明の他の実施例のCOボイラ1の正面図を示し、図9には、図8のCOボイラ1の側面図を示し、図10には、図8のCOボイラ1の底面図を示す。なお、分かりやすいように、図10には耐火材23の設置箇所を示している。
本実施例は、火炉3の側壁19の一部と前壁11の下部に耐火材23を設置したものであり、その他の構成は実施例1と同じであるため、同じ部材の説明は省略する。
【0067】
助燃バーナ13の周囲の壁を耐火構造とし、壁自体を耐火材23によって構成したり、壁面に耐火材23を設けたりしても良い。耐火材23は、助燃バーナ13の周囲を取り囲むように設ける。耐火材23を設置することで壁からの熱放散を抑制することができ、火炉3内の助燃バーナ13の火炎の周辺部に高温域を形成することができる。
【0068】
燃焼用空気は空気予熱器(図示せず)により250〜350℃に予熱した後、助燃バーナ13に供給する。また、耐火材23を前壁11や側壁17の下端部から設置するので、炉底21のCOガスポート15から流入するCOガスの温度低下を防止できる。
【0069】
耐火材23としては、JIS R 2001で規定されている耐火煉瓦、耐火モルタルなどがある。例えば、シリカ・アルミナを主成分としたキャスタブル耐火材(キャスターともいう)やプラスティック耐火物などがある。
耐火材23はCOガス含有ガス温度やその成分によって、火炉3における施工範囲を調整することとなる。
【0070】
このような耐火構造により高温域が維持できることから、助燃バーナ13から供給される250〜350℃の燃焼用空気が燃料と混合される際の温度降下は小さく、瞬時にCOの酸化反応速度が促進される温度の700℃以上を確保でき、更にCOガスの混合時点でもCOガスの速度が700℃であることから温度降下は生じず、COの酸化反応速度が増加するため、COガスの濃度を大幅に下げることができる。
【0071】
なお、実施例1のようにCOガスポート15を炉底21の前壁11側に設けたり、平面視における助燃バーナ13とCOガスポート15との左右方向の位置を揃えたり、エアレジスタ37による燃焼用空気の旋回力を調整したり、COガスポート15の開口面積をCOガスの流速を調整するために適宜変更したり、アフターエアポート27を設置して二段燃焼を行っても良いことは言うまでもない。また、実施例2のように火炉3の水平断面が円形の場合は、助燃バーナ13周囲の側壁に耐火材23を設置すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、石油精製プラントなどの各種化学プラント等における高温のCOを含むガスを燃焼するボイラに利用可能性がある。
【符号の説明】
【0073】
1 COボイラ 3 火炉
5 ノーズ 7 出口
9 過熱器 11 前壁
13 助燃バーナ 15 COガスポート
17 側壁 19 後壁
21 炉底 23 耐火材
25 天井 27 アフターエアポート
29 スリーブ 31 燃料ノズル
33 一次空気流路 35 二次空気流路
37 エアレジスタ 39 風箱
41 ダンパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12