(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958884
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】D/A変換装置、D/A変換方法及び電子楽器
(51)【国際特許分類】
H03M 1/82 20060101AFI20160719BHJP
H03M 1/06 20060101ALI20160719BHJP
H03M 1/08 20060101ALI20160719BHJP
H03M 3/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
H03M1/82
H03M1/06
H03M1/08 B
H03M3/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-58360(P2014-58360)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-185900(P2015-185900A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】坂田 吾朗
【審査官】
及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2003/030373(WO,A1)
【文献】
特表2008−544726(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/094255(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/081887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00−1/88
H03M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータが入力される減算器と、
前記減算器から出力されるデジタルデータをΔΣ変調するΔΣ変調器と、
前記ΔΣ変調器の出力を量子化する量子化器と、
前記量子化器からの量子化された出力に基づくデューティ比を有するパルス幅変調信号を出力するPWM出力器と、
前記PWM出力器からのパルス幅変調信号のデューティ比に対応するレベルを有するアナログ信号を出力する出力素子と、
前記出力素子の駆動特性に起因して生じるパルス幅変調信号の誤差分を複数種記憶したメモリから、前記出力素子の出力電圧に近似できる入力データ及び前記量子化器の出力に応じた前記パルス幅変調信号の誤差分を選択する選択器と、
を備え、
前記選択器は、前記選択された前記パルス幅変調信号の誤差分を前記減算器に供給するとともに、前記減算器は、前記入力されるデジタルデータから前記パルス幅変調信号の誤差分を減算して前記ΔΣ変調器に供給する、D/A変換装置。
【請求項2】
前記出力素子の出力電圧に近似できる入力データは、前記減算器に入力されるデジタルデータである、請求項1記載のD/A変換装置。
【請求項3】
前記出力素子の動作温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出される出力素子の動作温度に応じて、前記メモリから読み出されるパルス幅変調信号の誤差分を温度補償する温度補償部と
を更に備える請求項1記載のD/A変換装置。
【請求項4】
デジタルデータが入力される減算器と、前記減算器から出力されるデジタルデータをΔΣ変調するΔΣ変調器と、前記ΔΣ変調器の出力を量子化する量子化器と、前記量子化された前記ΔΣ変調器の出力に基づくデューティ比を有するパルス幅変調信号を出力するPWM出力器と、このPWM出力器からのパルス幅変調信号のデューティ比に対応するレベルを有するアナログ信号を出力する出力素子と、前記出力素子の駆動特性に起因して生じるパルス幅変調信号の誤差分を複数種記憶したメモリから、前記出力素子の出力電圧に近似できる入力データ及び前記量子化器の出力に応じた前記パルス幅変調信号の誤差分を選択する選択器と、
を有するD/A変換装置で実行される方法であって、
前記選択器は、前記選択された前記パルス幅変調信号の誤差分を前記減算器に供給し、
前記減算器は、前記前記入力されるデジタルデータから前記パルス幅変調信号の誤差分を減算して前記ΔΣ変調器に供給する、D/A変換方法。
【請求項5】
請求項1に記載のD/A変換装置と、
演奏操作に応じて演奏情報を出力する鍵盤部と、
前記鍵盤部から出力される演奏情報に応じた楽音をデジタルデータ生成するとともに、当該生成されたデジタルデータを前記D/A変換装置に出力する音源部と、
を有する電子楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、D/A変換装置、D/A変換方法及び電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より可聴帯域のSN比を向上させる為、量子化ノイズを高域側へシフトさせるノイズシェーピング効果を有するΔΣ変調器を用いたD/A変換装置が知られている。この種の装置として、例えば特許文献1には、第1のクロックに従って入力信号をΔΣ変調してΔΣ変調出力を発生するΔΣ変調手段と、前記第1のクロックと当該第1のクロックとは非同期の第2のクロックとに基づき前記ΔΣ変調手段の1サンプル当たりの処理時間として割り当てられるタイムスロットの開始を表す開始信号および前記ΔΣ変調手段のΔΣ変調処理の完了を表す完了信号を発生するタイミング発生手段と、前記タイミング発生手段が発生する開始信号および完了信号に従い、前記ΔΣ変調手段から前記第1のクロックに同期して出力されるΔΣ変調出力を、前記第2のクロックに同期した出力信号(PWM出力信号)に変換する出力変換手段とを備え、ASIC(特定用途向けIC)やFPGA(ゲートアレイ)等の上位システムに容易に搭載できる上、装置構成の複雑化を招致することなくジッタ(時間軸誤差)の影響を回避可能にしたD/A変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4888837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示の技術のように、ΔΣ変調とPWM(パルス幅変調)とを併用するD/A変換装置では、次に述べる問題がある。以下、
図7〜
図9を参照して説明を進める。
【0005】
通常、デジタル回路で構成されるD/A変換装置と、その後段となるアナログ回路部とのインタフェースには、出力素子となるバッファを設けてD/A変換装置から出力されるPWM出力信号を後段のアナログ回路部へ供給することが多い。
【0006】
PWM出力信号を駆動するバッファは、
図7(a)に図示するように、電流を引き込んで「H」レベルから「L」レベルにプルダウンする駆動特性と、
図7(b)に図示するように、電流を吐き出して「L」レベルから「H」レベルにプルアップする駆動特性とが相違する。つまり、バッファは「H」レベルから「L」レベルへ遷移させるドライブ能力と、「L」レベルから「H」レベルへ遷移させるドライブ能力とが異なる。
【0007】
ところで、D/A変換装置が理想的な動作をする為には、
図8に図示するように、遷移前の電圧に係わらず「引き込む」電流量(
図8中の斜線領域a)と「吐き出す」電流量(
図8中の斜線領域b)とが一致することが望ましいが、上述したように、プルダウン/プルアップの駆動特性(ドライブ能力)が相違すると、
図9に図示する通り、「L」レベルから「H」レベルに遷移する際の遅延時間Δt1と、「H」レベルから「L」レベルに遷移する際の遅延時間Δt2とが異なり、これによりPWM出力信号におけるデューティ誤差を招致して結果的に変換精度が劣化する。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、PWM出力信号のデューティ誤差を排除して変換精度の向上を図ることが出来るD/A変換装置
、D/A変換方法
及び電子楽器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のD/A変換装置は、
デジタルデータが入力される減算器と、
前記減算器から出力されるデジタルデータをΔΣ変調するΔΣ変調器と、
前記ΔΣ変調器の出力を量子化する量子化器と、
前記量子化器からの量子化された出力に基づくデューティ比を有するパルス幅変調信号を出力するPWM出力器と、
前記PWM出力器からのパルス幅変調信号のデューティ比に対応するレベルを有するアナログ信号を出力する出力素子と、
前記出力素子の駆動特性に起因して生じるパルス幅変調信号の誤差分を複数種記憶したメモリから、前記出力素子の出力電圧に近似できる入力データ及び前記量子化器の出力に応じた前記パルス幅変調信号の誤差分を選択する選択器と、
を備え、
前記選択器は、前記選択された前記パルス幅変調信号の誤差分を前記減算器に供給するとともに、前記減算器は、前記入力されるデジタルデータから前記パルス幅変調信号の誤差分を減算して前記ΔΣ変調器に供給する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のD/A変換方法は、
デジタルデータが入力される減算器と、前記減算器から出力されるデジタルデータをΔΣ変調するΔΣ変調器と、前記ΔΣ変調器の出力を量子化する量子化器と、前記量子化された前記ΔΣ変調器の出力に基づくデューティ比を有するパルス幅変調信号を出力するPWM出力器と、このPWM出力器からのパルス幅変調信号のデューティ比に対応するレベルを有するアナログ信号を出力する出力素子と、
前記出力素子の駆動特性に起因して生じるパルス幅変調信号の誤差分を複数種記憶したメモリから、前記出力素子の出力電圧に近似できる入力データ及び前記量子化器の出力に応じた前記パルス幅変調信号の誤差分を選択する選択器と、
を有するD/A変換装置で実行される方法であって、
前記
選択器は、前記選択された前記パルス幅変調信号の誤差分を前記減算器に供給し、
前記減算器は、前記前記入力されるデジタルデータから前記パルス幅変調信号の誤差分を減算して前記ΔΣ変調器に供給する、ことを特徴とする。
さらに、本発明の電子楽器は、
請求項1に記載のD/A変換装置と、
演奏操作に応じて演奏情報を出力する鍵盤部と、
前記鍵盤部から出力される演奏情報に応じた楽音をデジタルデータ生成するとともに、当該生成されたデジタルデータを前記D/A変換装置に出力する音源部と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、PWM出力信号のデューティ誤差を排除して変換精度の向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の一形態の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】D/A変換部17の構成を示すブロック図である。
【
図3】ΔΣ変調器30の構成を示すブロック図である。
【
図4】PWM部50から出力されるパルス幅データ(PWM出力信号)を示す図である。
【
図5】量子化器40の構成を示すブロック図である。
【
図6】フィードバック値FBV0〜FBV4を説明するためのグラフである。
【
図7】バッファのプルダウン/プルアップ駆動特性の一例を示すグラフである。
【
図8】バッファの「引き込む」電流量(斜線領域a)と「吐き出す」電流量(斜線領域b)とを示す図である。
【
図9】PWM出力信号に生じる遅延時間Δt1および遅延時間Δt2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施の一形態によるDA変換装置(DA変換部17)を備える電子楽器100の全体構成を示すブロック図である。この図において、CPU10は、スイッチ部11から出力されるスイッチイベントに応じて装置各部の処理動作を設定したり、鍵盤部13から出力される演奏情報に応じた楽音を生成するよう音源部16に指示する。また、CPU10は、パワーオン後のイニシャライズの際に、RAM15のデータエリアから閾値データ(閾値TH0〜TH4)およびフィードバックデータFBV群を、量子化器40(後述する)に転送する。
【0014】
スイッチ部11は、操作パネルに設けられる電源スイッチや音色選択スイッチなどから構成され、スイッチ操作に応じた種類のスイッチイベントを発生する。スイッチ部11が発生するスイッチイベントはCPU10に取り込まれる。表示部12は、液晶表示パネルなどから構成され、CPU10の制御の下に、装置各部の設定状態や動作状態などを画面表示する。鍵盤部13は、押離鍵操作(演奏操作)に応じたキーオン/キーオフイベント、ノートナンバ(又は鍵番号)およびベロシティを含む演奏情報を発生してCPU10に供給する。
【0015】
ROM14は、上記CPU10が実行する各種プログラムを記憶する。RAM15は、ワークエリアおよびデータエリアを備える。RAM15のワークエリアには、CPU10の処理に用いられる各種レジスタ・フラグデータが一時記憶される。データエリアには、後述する量子化器40に転送する閾値データ(閾値TH0〜TH4)およびフィードバックデータFBV群が格納される。閾値データ(閾値TH0〜TH4)およびフィードバックデータFBV群が意図するところについては追って述べる。音源部16は、周知の波形メモリ読み出し方式にて構成される複数の発音チャンネルを備え、CPU10から供給されるノートオン/ノートオフイベントに従って楽音波形データWを発生する。
【0016】
DA変換部17は、音源部16から出力される楽音波形データWをアナログ形式の楽音信号に変換して出力する。DA変換部17の後段には、RC積分回路が設けられ、当該RC積分回路によってDA変換部17から出力される楽音信号から不要な高域ノイズを除去するローパスフィルタリングを施した後、アンプ18で信号増幅してスピーカ19から発音させる。
【0017】
次に、
図2〜
図6を参照して、本発明の実施の一形態によるDA変換部17の構成を説明する。
図2は、DA変換部17の全体構成を示すブロック図である。この図において、減算器20は、入力データDinから帰還入力されるフィードバック値FBVn(後述する)を減算して出力する。ΔΣ変調器30は、
図3に図示する一例の場合、積分器31、乗算器32、加算器33、積分器34、乗算器35、積分器36、加算器37および乗算器38から構成され、入力信号inを3次ΔΣ変調符号化してΔΣ変調出力outを発生する。
【0018】
量子化器40は、ΔΣ変調器30から出力されるΔΣ変調出力outを、「0」〜「4」の5値に量子化して出力する。量子化器40の構成については追って述べる。PWM部50は、量子化器40の出力値が「0」〜「4」の5値の場合、
図4に図示するパルス幅データを発生する。すなわち、1タイムスロットが8クロック(Fs/128)分で形成される場合に、量子化器40の出力値が「0」ならば、8クロック分全てが「0」のパルス幅データを発生し、量子化器40の出力値が「1」ならば、8クロック中の中央2クロック分が「1」のパルス幅データを発生する。以後、量子化器40の出力値が「2」、「3」および「4」の各場合には、8クロック中の中央4クロック分、中央6クロック分および全クロックがそれぞれ「1」となるパルス幅データを発生する。
【0019】
バッファ60は、PWM部50から出力されるパルス幅データ(PWM出力信号)を、後段のアナログ回路部(RC積分回路)に供給する。このバッファ60では、前述したように、プルダウン/プルアップの駆動特性(ドライブ能力)が相違し、これにより
図9に図示する通り、「L」レベルから「H」レベルに遷移する際の遅延時間Δt1と、「H」レベルから「L」レベルに遷移する際の遅延時間Δt2とが異なる結果、パルス幅データ(PWM出力信号)のデューティ誤差が生じて変換精度の劣化を招く。
【0020】
そこで、本発明では、量子化器40がデューティ誤差を補償する構成を備えてD/A変換精度の向上を図るようになっている。以下、こうした量子化器40の構成について、
図5〜
図6を参照して説明する。
図5は、量子化器40の構成を示すブロック図である。量子化器40は、閾値メモリ41、比較器42、フィードバック値メモリ43および遅延器44から構成される。
【0021】
閾値メモリ41には、CPU10の制御の下に、RAM15のデータエリアから転送される閾値TH0〜TH4が格納される。閾値TH0〜TH4の値は、ΔΣ変調出力を5値に量子化するための整数「0」〜「4」である。比較器42は、閾値メモリ41に記憶される閾値TH0〜TH4に対してΔΣ変調出力を大小比較して比較結果(「0」〜「4」)を発生する。この比較結果は次段のPWM部50に供給されると共に、フィードバック値メモリ43の読み出しアドレス(下位)となる。
【0022】
フィードバック値メモリ43には、CPU10の制御の下に、RAM15のデータエリアから転送されるフィードバックデータFBV群が格納される。フィードバックデータFBV群は、複数組のフィードバック値FBV0〜FBV4から構成される。一組のフィードバック値FBV0〜FBV4は、ある出力電圧で駆動するバッファ60の駆動特性に基づき予め実験的に得られる値である。
【0023】
具体的には、バッファ60におけるプルダウン/プルアップの駆動特性(ドライブ能力)の相違で生じるパルス幅データ(PWM出力信号)のデューティ誤差に相当する変動分を含む量子化器出力値である。すなわち、
図6に図示するように、デューティ誤差の無い理想的な量子化器出力値は、階段状の太線で示される量子化器出力値となるが、実際には閾値TH0〜TH4に対応する各量子化器出力値にデューティ誤差に相当する変動分が含まれ、この変動分を含んだ閾値TH0〜TH4毎の量子化器出力値がフィードバック値FBV0〜FBV4として用いられる。
【0024】
遅延器44は、CPU10の制御の下に、入力データDinを遅延出力させる。遅延器44から遅延出力される入力データDinは、フィードバック値メモリ43の読み出しアドレス(上位)となる。入力データDinは、バッファ60の出力電圧に近似できる為、これをフィードバック値メモリ43の読み出しアドレス(上位)として用いる。
【0025】
したがって、フィードバック値メモリ43は、複数組のフィードバック値FBV0〜FBV4の内、上記読み出しアドレス(上位)に基づきバッファ60の出力電圧に対応した組のフィードバック値FBV0〜FBV4が選択され、更に上述の比較器42の比較結果を読み出しアドレス(下位)として、選択された組のフィードバック値FBV0〜FBV4の内、何れかをフィードバック値FBVnとして読み出す。
【0026】
フィードバック値メモリ43から読み出されたフィードバック値FBVnは、前述した減算器20(
図2参照)に帰還入力される。これにより、前述したΔΣ変調器30では、入力データDinからデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を減算した差分が最小になるように動作する結果、PWM出力信号のデューティ誤差を排除して変換精度の向上を図ることが可能になる。
【0027】
以上のように、本実施形態では、バッファ60のプルダウン/プルアップの駆動特性(ドライブ能力)の相違で生じるパルス幅データ(PWM出力信号)のデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を、フィードバック値FBV0〜FBV4としてフィードバック値メモリ43に記憶しておき、ΔΣ変調出力の量子化に応じて当該フィードバック値メモリ43から読み出されるフィードバック値FBVnを減算器20に帰還入力させて入力データDinからデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を減算し、その差分が最小になるようΔΣ変調を施してパルス幅データ(PWM出力信号)のデューティ誤差を補償する為、PWM出力信号のデューティ誤差を排除して変換精度の向上を図ることができる。
【0028】
また、本実施形態では、バッファ60の出力電圧に対応した複数組のフィードバック値FBV0〜FBV4をフィードバック値メモリ43に記憶させておき、バッファ60の出力電圧に近似できる入力データDinに応じて、複数組のフィードバック値FBV0〜FBV4の内から該当する組のフィードバック値FBV0〜FBV4を選択する。そして、選択された組のフィードバック値FBV0〜FBV4の内からΔΣ変調出力の量子化に応じて読み出されるフィードバック値FBVnを減算器20に帰還入力させて入力データDinからデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を減算し、その差分が最小になるようΔΣ変調を施してパルス幅データ(PWM出力信号)のデューティ誤差を補償する為、PWM出力信号のデューティ誤差を排除して変換精度の向上を図ることができる。
【0029】
なお、上述した実施形態では、バッファ60の動作温度に応じて変化するプルダウン/プルアップの駆動特性(ドライブ能力)の相違について言及していないが、バッファ60の動作温度を検出する温度検出手段と、当該温度検出手段により検出されるバッファ60の動作温度に応じて、フィードバック値メモリ43から読み出されるフィードバック値FBVnを温度補償する手段とを設け、バッファ60の動作温度の変化に追随してパルス幅データ(PWM出力信号)のデューティ誤差を補償する態様とすることも可能になる。
【0030】
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、本願出願の特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下では、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された各発明について付記する。
【0031】
(付記)
[請求項1]
入力デジタルデータをΔΣ変調するΔΣ変調手段と、
このΔΣ変調手段の出力を量子化する量子化手段と、
この量子化手段からの量子化出力に基づくデューティ比を有するPMW信号を出力するPMW出力手段と、
このPMW出力手段からのPMW信号のデューティ比に対応するレベルを有するアナログ信号を出力する出力素子と、
前記出力素子の駆動特性に起因して生じるPWM出力信号のデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を記憶する記憶手段と、
ΔΣ変調出力の量子化に応じて前記記憶手段から読み出されるPWM出力信号のデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を帰還入力させて前記入力データから減算して前記ΔΣ変調手段に供給する減算手段と、
を備えることを特徴とするD/A変換装置。
【0032】
[請求項2]
前記記憶手段に、前記出力素子の駆動特性で生じるPWM出力信号のデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を、当該出力素子の出力電圧に対応した複数組み分記憶させておき、
前記出力素子の出力電圧に近似できる入力データDinに応じて、前記記憶手段に記憶される複数組の内から該当する組の量子化器出力値を選択する選択手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のD/A変換装置。
【0033】
[請求項3]
前記出力素子の動作温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出される出力素子の動作温度に応じて、前記記憶手段から読み出されるPWM出力信号のデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を温度補償する温度補償手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1記載のD/A変換装置。
【0034】
[請求項4]
入力デジタルデータをΔΣ変調するΔΣ変調手段と、このΔΣ変調手段の出力を量子化する量子化手段と、この量子化手段からの量子化出力に基づくデューティ比を有するPMW信号を出力するPMW出力手段と、このPMW出力手段からのPMW信号のデューティ比に対応するレベルを有するアナログ信号を出力する出力素子と、を有するD/A変換装置で実行される方法であって、
前記D/A変換装置は、
ΔΣ変調出力の量子化に応じて、前記出力素子の駆動特性で生じるPWM出力信号のデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を記憶したメモリから読み出されるPWM出力信号のデューティ誤差に相当する変動分を含んだ量子化器出力値を帰還入力させて入力デジタルデータから減算して前記ΔΣ変調手段に供給することを特徴とするD/A変換方法。
【符号の説明】
【0035】
10 CPU
11 スイッチ部
12 表示部
13 鍵盤部
14 ROM
15 RAM
16 音源部
17 D/A変換部
18 アンプ
19 スピーカ
R,C 積分回路