(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958891
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】カバー付栓蓋
(51)【国際特許分類】
E03C 1/22 20060101AFI20160719BHJP
E03C 1/23 20060101ALI20160719BHJP
A47K 1/14 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
E03C1/22 B
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
A47K1/14 G
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-280435(P2011-280435)
(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公開番号】特開2013-119769(P2013-119769A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100090619
【弁理士】
【氏名又は名称】長南 満輝男
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍馬
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−238980(JP,A)
【文献】
特開2003−074102(JP,A)
【文献】
特開2008−008124(JP,A)
【文献】
特開2010−053539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12 − 1/33
A47K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、それを被覆する合成樹脂製のカバーと、その弁体の下部に排水口を閉鎖するパッキンが備えられて構成され、該弁体にカバーを被覆するに当って、弁体の外周端縁の狭い幅の周端面に少なくとも3以上のスリット溝を刻設し、カバーには、該スリット溝に嵌込む突起が弁体を被覆するカバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面に形成され、該突起が前記スリット溝に係合されてカバーを弁体に一体化することを特徴とするカバー付栓蓋。
【請求項2】
カバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面に形成される突起が嵌込む前方を傾斜面とし、後方を直角面とした鋸歯状にし、その幅が先端に向けて弁体のスリット溝の横幅よりも先細りに形成されていることを特徴とする請求項1記載のカバー付栓蓋。
【請求項3】
カバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面に形成される突起が合成樹脂製カバーの折曲端縁部の下端部よりも多少上方位置に形成され、該突起のスリット溝への係合で弁体に隠れることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載のカバー付栓蓋。
【請求項4】
取付け止め代である折曲端縁部が、切欠きを入れない一連のリングであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカバー付栓蓋。
【請求項5】
少なくとも取付け止め代である折曲端縁部より内側の肉厚を均一にすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカバー付栓蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体の下部に排水口を閉鎖するパッキンが備えられて構成される栓蓋のその弁体の上面に、合成樹脂製のカバーが被覆されるカバー付栓蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴槽、洗面器等の排水栓は、水槽底面に設けられた排水口に排水口金具が排水継手の螺合による締着で取付けられ、該排水口金具に嵌着された支持部材でレリースワイヤの作動部を支持し、該作動部のシャフトの押し引きで、弁軸を介して取付けられている栓蓋が昇降され、排水口の開閉がされるものである。
【0003】
浴槽、洗面器等の水槽底面の排水口には、取付けられる排水口金具が露出しているので、汚れが付着し易く、付着した汚れが目立って外観を損うことになる。
それを解決する為に、水槽底面の窪み部に形成された排水口に排水口金具を取付け、排水口を開閉する栓蓋が、排水口金具を覆うようにされ、閉鎖状態の際、該排水口金具が栓蓋に隠れて見えないようにしたものがある(特許文献1)。
栓蓋が閉鎖状態の際、排水口金具を栓蓋で隠れるようにするには、栓蓋がそれに相応した大径のものにされることになる。
【0004】
また、浴槽、洗面器等の栓蓋は、弁体と、その弁体の下部には排水口の閉鎖が水密にされるパッキンを備えて構成されている。
栓蓋の弁体は、合成樹脂で一体成形する場合、肉厚が均等でないので、その弁体の成形で、表面にひけ、光沢不良とくもり等を生じ易く、弁体の表面に生じるひけ、光沢不良とくもり等は、大径の弁体になると目立ち易い。
【0005】
一方、浴槽、洗面器等の栓蓋は、高級感、金属質感を満たす為に、弁体の上面に金属薄板のカバーが施され、弁体の外周端縁にカシメ代でカシメ取付けされている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2010−053539
【特許文献2】 特開2004−238980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
栓蓋は、全体を合成樹脂一体で成形できれば、簡単で、それに越したことがないが、合成樹脂による栓蓋の成形には、弁体の肉厚が均一でないので、その弁体の表面にひけ、光沢不良とくもり等を生じ易く、弁体が大径であると一層目立ち易くなる。
そこで、弁体の化粧面である表面に生じるひけ、光沢不良とくもり等の解決と、コスト、質感等の理由で弁体を合成樹脂製の表面としたい場合があって、これらを解決するために弁体の上面に合成樹脂製のカバーが被覆される。
しかし、合成樹脂製のカバーを弁体に取付けるには困難があった。
【0008】
よって、本発明は、好ましいコスト、質感が叶えられ、ワンタッチで弁体に合成樹脂製のカバーが取付けられ、外れ難いカバー付栓蓋を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカバー付栓蓋は、浴槽、洗面器等の栓蓋が、弁体と、それを被覆する合成樹脂製のカバーと、その弁体の下部に排水口を閉鎖するパッキンが備えられて構成され、該弁体にカバーを被覆するに当って、弁体の外周端縁の狭い幅の周端面に少なくとも3以上のスリット溝を刻設し、カバーには、該スリット溝に嵌込む突起が弁体を被覆するカバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面に形成され、該突起が前記スリット溝に係合されてカバーを弁体に一体化するものである。
【0010】
本発明のカバー付栓蓋は、合成樹脂製のカバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面に形成される突起が嵌込む前方を傾斜面とし、後方を直角面とした鋸歯状にし、その幅が先端に向けて弁体のスリット溝の横幅よりも先細りに形成されているものである。
【0011】
本発明のカバー付栓蓋は、合成樹脂製のカバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面に形成される突起が前記折曲端縁部の下端部よりも多少上方位置に形成され、弁体のスリット溝への係合で弁体に隠れるものである。
【0012】
本発明のカバー付栓蓋は、カバーが合成樹脂製であって、取付け止め代である折曲端縁部が、切欠きを入れない一連のリングであるものである。
【0013】
本発明のカバー付栓蓋は、カバーが合成樹脂製であって、少なくとも取付け止め代である折曲端縁部より内側の上面の肉厚を均一にするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカバー付栓蓋は、弁体の外周端縁の周端面の幅が狭く、該弁体に被覆する合成樹脂製のカバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面が浅くても、弁体の外周端縁の狭い幅の周端面に、少なくとも3以上のスリット溝を刻設し、該スリット溝にカバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面に形成された突起を嵌込み、係合することによって、弁体よりカバーが外れなく、しかも、ワンタッチで、安易に、且つ、確実に取付けることができることになる。
そして、カバー付栓蓋は、栓蓋の成形で表面に生じるひけ、光沢不良とくもり等の問題を解決するため、弁体上面に施された合成樹脂製のカバーが容易に取付けられ、それも、弁体よりカバーが外れないようにでき、見栄え良く出来る。
【0016】
本発明のカバー付栓蓋は、合成樹脂製のカバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面に形成される突起が、嵌込む前方を傾斜面とし、後方を直角面とした鋸歯状にし、且つ、その幅が先端に向けて弁体のスリット溝の横幅よりも先細りに形成されているので、弁体の狭い幅の外周端縁、そしてカバーの浅い折曲端縁部であっても、カバーの弁体への係合が容易にでき、且つ確実で、外れ難い。
【0017】
本発明のカバー付栓蓋は、合成樹脂製のカバーの取付け止め代である折曲端縁部の内周面に形成される突起が、カバーの折曲端縁部の下端部よりも多少上方位置に形成されるので、弁体のスリット溝への係合で係合部分が弁体に隠れて見栄え良く、且つ、汚れが付着し難く、衛生的である。
【0018】
本発明のカバー付栓蓋は、カバーが合成樹脂製であるので、その弾性変形により取付け止め代である折曲端縁部が切欠きを入れない一連のリングであっても、ワンタッチで弁体の外周端縁のスリット溝に合成樹脂製カバーの折曲端縁部の突起を係合し、また、折曲端縁部が一連のリングであるので外れ難い、堅固で、確実な一体化の取付けをすることが出来る。
【0019】
本発明のカバー付栓蓋は、カバーが合成樹脂製であって、少なくとも取付け止め代である折曲端縁部より内側の上面の肉厚が均一であるので、化粧面である合成樹脂製カバー上面には、成形時に生じるひけ等がないように出来、また、ひけ等を生じ易い大径になっても、ひけ等を生じない合成樹脂製カバーで弁体を覆うことができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】 浴槽、洗面器等の排水口がカバー付栓蓋により閉鎖された状態図である。
【
図3】 カバー付栓蓋における合成樹脂製のカバーと栓蓋との分解図である。
【
図4】 弁体の外周端縁の周端面に刻設されたスリット溝へ合成樹脂製のカバーの折曲端縁部の内周面に形成された突起を嵌込み係合させた拡大状態図である。
【
図5】 弁体のスリット溝へ合成樹脂製カバーの折曲端縁部内周面に形成された突起が嵌込み係合される水平面断面での拡大状態図である。
【
図6】 合成樹脂製のカバーの折曲端縁部の内周面下端に爪部を形成し、弁体の外周端縁の周端面下部にスリット溝を刻設し、スリット溝に爪部が係合された状態を示す断面図である。
【
図7】 合成樹脂製のカバーの折曲端縁部の内周面下端に爪部を形成し、弁体の外周端縁の周端面下部にスリット溝を刻設し、スリット溝に爪部が係合された状態を示す下視図である。
【0022】
浴槽、洗面器等の排水栓は、
図1に示す如く、水槽3底面の窪み部301に形成された排水口30へ排水口金具31を排水管継手32の螺合で締着されて取付けし、排水口金具31に嵌着された支持部材33でレリースワイヤの作動部34を支持し、該作動部のシャフト35の押し引きで弁軸101を介して取付けられている栓蓋1が昇降され、排水口30の開閉をするものである。
ガイド軸102は、排水口30の開閉をするために昇降される栓蓋1が、支持部材33にガイドされて摺動する。
【0023】
本発明のカバー付栓蓋は、弁体10に合成樹脂製のカバー2が被覆された栓蓋1であって、該栓蓋は、弁体10とそれに垂下する弁軸101及びガイド軸102とでなり、開閉する栓蓋1の閉鎖状態の際、弁体10の下部に排水口金具31と当接して止水するパッキン4が備えられている。
【0024】
カバー付栓蓋は、
図2乃至
図3に示す如く、弁体10に、その成形時に生じるひけ、光沢不良とくもり等の問題を解決させるため、合成樹脂製のカバー2が被覆される。
【0025】
カバー付栓蓋は、カバー2が合成樹脂製であるので、少なくとも取付け止め代である折曲端縁部20より内側の肉厚22が均一であるようにし、成形時のひけ等を生じないようにする。
【0026】
そこで、弁体10より合成樹脂製のカバー2が外れ難くするために、カバー2に止め代である折曲端縁部20を形成すると共に、弁体10の外周端縁11の狭い幅の周端面に少なくとも3以上のスリット溝111を刻設し、該スリット溝に嵌込み係合させる突起21が弁体10を被覆するカバー2の折曲端縁部20の内周面に形成され、前記スリット溝に該突起21が係合されて弁体10にカバー2をワンタッチで一体化させることになる。
【実施例1】
【0027】
カバー付栓蓋は、
図4乃至
図5に示すが如く、合成樹脂製のカバー2の折曲端縁部20の内周面に形成される突起21が嵌込む前方を傾斜面211とされ、後方を直角面212とした鋸歯210に形成し、傾斜面211により嵌込み易くし、直角面212により抜け難くしたその鋸歯210の幅が先端に向けて弁体10のスリット溝111の横幅よりも先細り213になるように形成され、先細り213であるので、突起21を嵌込む際に、突起21とスリット溝111とが多少ずれていても嵌込み易くしている。
よって、突起21の根元までもがスリット溝111に嵌込まれ、浮き上ることなく、確実に係合させることができる。
【0028】
カバー付栓蓋は、合成樹脂製のカバーの止め代である折曲端縁部20の内周面に形成される突起21が、その折曲端縁部20の下端部201よりも僅か上方位置に形成され、この僅か上方位置にされることによって、弁体10にカバー2が被覆され、弁体10のスリット溝111にカバー2の突起21が嵌込み係合されると、この係合部分であるスリット溝111及び突起21が弁体10によって見えないように隠れて、更に、隙間が表面に顕われず、汚れが目立たなく、見栄えよくできるものである。
【0029】
カバー付栓蓋は、カバー2が合成樹脂製であるので、その弾性変形により取付け止め代である折曲端縁部20が切欠きを入れない一連のリングであっても、合成樹脂の弾性により弁体10の外周端縁11を押込むことができ、ワンタッチで、弁体10の外周端縁11のスリット溝111に合成樹脂製カバー2の折曲端縁部20の突起21を嵌込み係合することができる。
【0030】
なお、カバー付栓蓋は、弁体10の外周端縁11下部に、環状段部12を設け、金属薄板のカバーがカシメ取付けで弁体10に被覆されるとき、金属薄板のカバーのカシメ代による底面部分の端部が嵌め込まれ、栓蓋1の弁体10が金属薄板のカバーで被覆されるものに共用できるようにする。
【実施例2】
【0031】
カバー付栓蓋は、
図6乃至
図7に示す如く、合成樹脂製のカバー2の折曲端縁部20の内周面下端に爪部23を形成し、弁体10の外周端縁11の周端面下部にスリット溝111を刻設し、該スリット溝に爪部23が係合されて、弁体10にカバー2をワンタッチで一体化させるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 栓蓋
10 弁体
101 弁軸
102 ガイド軸
11 外周端縁
111 スリット溝
12 環状段部
2 カバー
20 折曲端縁部
201 下端
21 突起
210 鋸歯
211 傾斜面
212 直角面
213 先細り
22 肉厚
23 爪部
3 水槽
301 窪み部
30 排水口
31 排水口金具
32 排水管継手
33 支持部材
34 作動部
35 シャフト
4 パッキン