【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、パターンが形成された基板か
ら不要物をエッチングして前記基板(W)から除去する基板処理方法であって、フッ化水素の水溶液であるフッ酸を前記基板に供給することにより、
フッ酸の供給前から前記パターンの間に位置する前記不要物をウェットエッチングして除去するウェットエッチング工程と、リンス液を前記基板に供給することにより、前記基板上のフッ酸を洗い流すリンス工程と、前記リンス工程が行われた後に、前記基板を回転させることにより、前記基板を乾燥させる基板乾燥工程と、前記基板乾燥工程が行われた後に、フッ化水素を含むHFベーパと、水が溶解可能で水よりも沸点が低い溶剤を含む溶剤ベーパとを前記基板に供給することにより、前記不要物をエッチングして除去する除去工程(S2)と、前記除去工程と並行して前記基板上の前記溶剤を蒸発させる蒸発工程(S2)とを含み、前記ウェットエッチング工程は、前記不要物に含まれる積層された複数の膜のうちの上側の膜を除去する工程を含み、前記除去工程は、前記上側の膜が除去されることより露出した下側の膜を除去する工程を含む、基板処理方法である。
【0007】
HFベーパは、フッ酸の蒸気であってもよいし、フッ酸の蒸気を含む気体であってもよい。たとえば、HFベーパは、フッ酸の蒸気とキャリアガスとを含む気体であってもよい。同様に、溶剤ベーパは、溶剤の蒸気であってもよいし、溶剤の蒸気を含む気体であってもよい。
また、除去工程は、HFベーパと溶剤ベーパとを別々に基板に供給して、HFベーパと溶剤ベーパとを基板で混合させる工程であってもよいし、混合された状態のHFベーパおよび溶剤ベーパを基板に供給する工程であってもよい。
【0008】
また、蒸発工程は、基板上の溶剤を加熱する加熱工程であってもよいし、気圧を減少させる減圧工程であってもよいし、基板上の溶剤を加熱すると共に、気圧を減少させる加熱・減圧工程であってもよい。
フッ化水素(HF)を含むHFベーパを二酸化ケイ素(SiO
2)に供給すると、「SiO
2+HF→H
2SiF
6+2H
2O」の反応が生じ、ヘキサフルオロケイ酸(H
2SiF
6)と水(H
2O)とが形成される。本願発明者の研究によると、HFベーパが供給された後に、水が基板に残っていると、「H
2SiF
6・8H
2O」が副産物として形成され、この副産物が残渣として基板に残留することが分かった。ヘキサフルオロケイ酸は、水がなければ、SiF
4とHFとに分解して、昇華してしまう。したがって、二酸化ケイ素のエッチングと並行して、水を除去すれば、残渣の発生を抑制または防止できる。
【0009】
この発明の方法によれば、HFベーパと溶剤ベーパとが、基板上で液化することにより、フッ化水素の微細な液滴と溶剤の微細な液滴とが基板に供給される。不要な膜やパーティクルなどの基板の不要物は、フッ化水素の供給によってエッチングされ除去される。また、水が溶剤に溶解可能であるので、エッチングによって生じた水は、この溶剤に溶け込む。さらに、溶剤の沸点が水の沸点より低いので、溶剤は、速やかに蒸発して基板から除去される。溶剤に溶け込んだ水は、溶剤と共に基板から除去される。これにより、水の残留量が低減される。このように、不要物がエッチングされている間、水が基板上から除去され続けるので、水の残留量を低減できる。これにより、残渣の発生を抑制または防止できる。さらに、ベーパを用いて不要物を除去するので、基板表面に形成されたパターンの倒壊を抑制または防止できる。
【0010】
前記溶剤は、請求項2記載の発明のように、水が溶解可能で水よりも沸点が低いフッ素系溶剤、および水が溶解可能で水よりも沸点が低いアルコールの少なくとも一方を含んでいてもよい。
請求項3記載の発明は、前記除去工程が行われた後に、基板に対する前記HFベーパの供給を停止した状態で、前記溶剤ベーパを前記基板に供給する溶剤ベーパ供給工程(S3)をさらに含む、請求項1または2に記載の基板処理方法である。
【0011】
溶剤ベーパ供給工程において基板に供給される溶剤ベーパに含まれる溶剤と、除去工程において基板に供給される溶剤ベーパに含まれる溶剤とは、同種の溶剤であってもよいし、異なる種の溶剤であってもよい。
フッ化水素がHFベーパに含まれているので、除去工程においてHFベーパが基板に供給されると、基板上でフッ素(フッ素イオンを含む)が発生する場合がある。この方法によれば、溶剤ベーパの供給によって基板からフッ素を除去することができる。これにより、フッ素の残留量を低減することができる。したがって、基板の清浄度を高めることができる。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記除去工程は、基板に供給される前記HFベーパと前記溶剤ベーパとの比を変更する比率変更工程(S2)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、不要物の除去量に応じて溶剤ベーパの割合を増減させることができる。たとえば、不要物の除去量が増加すると、エッチングによって生じる水の量が増加する。したがって、溶剤ベーパの割合を増加させることにより、エッチングによって生じる水を基板上から確実に除去することができる。これにより、残渣の発生を抑制または防止できる。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記除去工程が行われた後に、前記HFベーパおよび溶剤ベーパに晒されている基板から当該HFベーパおよび溶剤ベーパを除去するベーパ除去工程(S4)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、除去工程において基板に供給され、基板の近傍を漂うHFベーパおよび溶剤ベーパが除去される。これにより、HFベーパおよび溶剤ベーパが基板に付着して、微細な液滴が基板上で発生することを抑制または防止できる。さらに、基板に付着している微細な液滴を除去できる。このように、基板は、除去工程からベーパ除去工程を通じて、乾燥状態、つまり、パターン間に液体が満たされていない状態に維持される。したがって、パターン間に存在する液体の表面張力によってパターンが倒壊することを抑制または防止できる。
【0014】
請求項6記載の発明は、前記除去工程は、前記不要物の種類に応じた水分濃度を有する前記HFベーパと前記溶剤ベーパとを基板に供給する工程である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、不要物の種類に応じた水分濃度を有するHFベーパが基板に供給される。不要物の種類によっては、水が存在しない環境下では、エッチングレート(単位時間当たりの除去量)が低い場合がある。したがって、このような不要物を含む基板に対して、水分濃度が高いHFベーパを供給することにより、処理時間を短縮することができる。一方、不要物の種類によっては、エッチングレートが高く、エッチング時における単位時間あたりの水の発生量が多い場合がある。したがって、このような不要物を含む基板に対して、水分濃度の低いHFベーパを供給することにより、基板上の水分量を減少させて、残渣の発生を抑制または防止することができる。
【0015】
請求項7記載の発明は、パターンが形成された基板か
ら不要物をエッチングして前記基板から除去する基板処理装置であって、フッ化水素の水溶液であるフッ酸を前記基板に供給するエッチングノズルと、リンス液を前記基板に供給することにより、前記基板上のフッ酸を洗い流すリンス液ノズルと、前記基板を回転させることにより、前記基板上の液体を除去する基板回転手段と、基板(W)を保持する基板保持手段(14)と、フッ化水素を含むHFベーパと、水が溶解可能で水よりも沸点が低い溶剤を含む溶剤ベーパとを前記基板に供給するベーパ供給手段(7b1、7b2、11、33)と、前記基板上の前記溶剤を蒸発させる蒸発手段(14)と、制御手段(4)とを含む、基板処理装置(1)である。
前記制御手段は、フッ酸を前記エッチングノズルから前記基板に供給することにより、
フッ酸の供給前から前記パターンの間に位置する前記不要物をウェットエッチングして除去するウェットエッチング工程と、リンス液を前記リンス液ノズルから前記基板に供給することにより、前記基板上のフッ酸を洗い流すリンス工程と、前記リンス工程が行われた後に、前記基板回転手段に前記基板を回転させることにより、前記基板を乾燥させる基板乾燥工程と、前記基板乾燥工程が行われた後に、フッ化水素を含むHFベーパと、水が溶解可能で水よりも沸点が低い溶剤を含む溶剤ベーパとを前記ベーパ供給手段から前記基板に供給することにより、前記不要物をエッチングして除去する除去工程と、前記除去工程と並行して、前記蒸発手段に前記基板上の前記溶剤を蒸発させる蒸発工程とを実行する。前記ウェットエッチング工程は、前記不要物に含まれる積層された複数の膜のうちの上側の膜を除去する工程を含み、前記除去工程は、前記上側の膜が除去されることより露出した下側の膜を除去する工程を含む。
この構成によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記ベーパ供給手段は、水が溶解可能で水よりも沸点が低いフッ素系溶剤、および水が溶解可能で水よりも沸点が低いアルコールの少なくとも一方を含む前記溶剤ベーパと、前記HFベーパとを
前記基板に供給する、請求項7に記載の基板処理装置である。この構成によれば、請求項2の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0017】
請求項9記載の発明は、
前記基板に前記溶剤ベーパを供給する溶剤ベーパ供給手段(33)をさらに含み、前記制御手段は、前記ベーパ供給手段および溶剤ベーパ供給手段を制御することにより、前記除去工程が行われた後に、基板に対する前記HFベーパの供給を停止させた状態で、前記溶剤ベーパを基板に供給させる溶剤ベーパ供給工程をさらに実行する、請求項7または8に記載の基板処理装置である。この構成によれば、請求項3の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0018】
請求項10記載の発明は、前記ベーパ供給手段は、基板に供給される前記HFベーパと前記溶剤ベーパとの比を変更する比率変更手段(25、35)を含み、前記制御手段は、前記比率変更手段を制御することにより、前記除去工程において基板に供給される前記HFベーパと前記溶剤ベーパとの比を変更する比率変更工程を実行する、請求項7〜9のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、請求項4の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0019】
請求項11記載の発明は、ベーパを除去するベーパ除去手段(19、29)をさらに含み、前記制御手段は、前記ベーパ除去手段を制御することにより、前記除去工程が行われた後に、前記HFベーパおよび溶剤ベーパに晒されている基板から当該HFベーパおよび溶剤ベーパを除去するベーパ除去工程をさらに実行する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、請求項5の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0020】
請求項12記載の発明は、前記ベーパ供給手段は、フッ化水素を含む第1HFベーパと前記溶剤ベーパとを前記基板に供給する第1ベーパ供給手段(7b1)と、フッ化水素と水とを含み前記第1HFベーパよりも水分濃度が高い第2HFベーパと前記溶剤ベーパとを前記基板に供給する第2ベーパ供給手段(7b2)とを含み、前記制御手段は、前記不要物の種類に応じて前記第1ベーパ供給手段および第2ベーパ供給手段を制御することにより、前記除去工程において、前記第1HFベーパまたは第2HFベーパと前記溶剤ベーパとを基板に供給させる、請求項7〜11のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、請求項6の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項13記載の発明は、
パターンが形成された基板から不要物をエッチングして
前記基板から除去する基板処理方法であって、フッ化水素の水溶液であるフッ酸を、基板処理装置に備えられたエッチングノズルから前記基板に供給することにより、
フッ酸の供給前から前記パターンの間に位置する前記不要物をウェットエッチングして除去するウェットエッチング工程と、リンス液を前記基板に供給することにより、前記基板上のフッ酸を洗い流すリンス工程と、前記リンス工程が行われた後に、前記基板を回転させることにより、前記基板を乾燥させる基板乾燥工程と、前記基板乾燥工程が行われた後に、フッ化水素を含むHFベーパと、水が溶解可能で水よりも沸点が低い溶剤を含む溶剤ベーパとを、前記基板処理装置に備えられたベーパ供給手段から前記基板に供給することにより、前記不要物をエッチングして除去する除去工程と、前記除去工程と並行して前記基板上の前記溶剤を蒸発させる蒸発工程とを含む、基板処理方法である。
請求項14記載の発明は、前記基板処理方法は、搬送ロボットに前記基板を第1基板保持手段に搬送させる第1搬送工程と、前記搬送ロボットによって搬送された前記基板を前記第1基板保持手段に保持させる第1保持工程と、前記搬送ロボットに前記基板を前記第1基板保持手段から前記第1基板保持手段とは異なる第2基板保持手段に搬送させる第2搬送工程と、前記搬送ロボットによって搬送された前記基板を前記第2基板保持手段に保持させる第2保持工程とをさらに含み、前記ウェットエッチング工程、リンス工程、および基板乾燥工程は、前記第1保持工程と並行して実行される工程であり、前記除去工程および蒸発工程は、前記第2保持工程と並行して実行される工程である、請求項13に記載の基板処理方法である。
請求項15記載の発明は、
パターンが形成された基板から不要物をエッチングして
前記基板から除去する基板処理装置であって、フッ化水素の水溶液であるフッ酸を前記基板に供給するエッチングノズルと、リンス液を前記基板に供給することにより、前記基板上のフッ酸を洗い流すリンス液ノズルと、前記基板を回転させることにより、前記基板上の液体を除去する基板回転手段と、フッ化水素を含むHFベーパと、水が溶解可能で水よりも沸点が低い溶剤を含む溶剤ベーパとを前記基板に供給するベーパ供給手段と、前記基板上の前記溶剤を蒸発させる蒸発手段と、制御手段とを含む、基板処理装置である。
前記制御手段は、フッ酸を前記エッチングノズルから前記基板に供給することにより、
フッ酸の供給前から前記パターンの間に位置する前記不要物をウェットエッチングして除去するウェットエッチング工程と、リンス液を前記リンス液ノズルから前記基板に供給することにより、前記基板上のフッ酸を洗い流すリンス工程と、前記リンス工程が行われた後に、前記基板回転手段に前記基板を回転させることにより、前記基板を乾燥させる基板乾燥工程と、前記基板乾燥工程が行われた後に、フッ化水素を含むHFベーパと、水が溶解可能で水よりも沸点が低い溶剤を含む溶剤ベーパとを前記ベーパ供給手段から前記基板に供給することにより、前記不要物をエッチングして除去する除去工程と、前記除去工程と並行して、前記蒸発手段に前記基板上の前記溶剤を蒸発させる蒸発工程とを実行する。
請求項16記載の発明は、前記基板処理装置は、前記基板を保持する第1基板保持手段と、前記第1基板保持手段とは異なるものであり、前記基板を保持する第2基板保持手段と、前記基板を搬送する搬送ロボットとをさらに含む、請求項15に記載の基板処理装置である。
前記制御手段は、前記搬送ロボットに前記基板を前記第1基板保持手段に搬送させる第1搬送工程と、前記搬送ロボットによって搬送された前記基板を前記第1基板保持手段に保持させる第1保持工程と、前記搬送ロボットに前記基板を前記第1基板保持手段から前記第2基板保持手段に搬送させる第2搬送工程と、前記搬送ロボットによって搬送された前記基板を前記第2基板保持手段に保持させる第2保持工程とをさらに実行する。前記ウェットエッチング工程、リンス工程、および基板乾燥工程は、前記第1保持工程と並行して実行される工程であり、前記除去工程および蒸発工程は、前記第2保持工程と並行して実行される工程である。
【0021】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。