(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の無機塗料、および、第2の無機塗料は、一液性で無溶剤の塗料であり、且つ、不燃性であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法。
前記第1の無機塗料は、前記アルコキシシロキサンが33〜41重量%、前記オルガノシランが8.3〜10.3重量%であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法。
前記第2の無機塗料は、前記アルコキシシロキサンが77〜95重量%、前記オルガノシランが5〜11.3重量%であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法を、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法を施した壁面(塗装物1)の一例を示す図であり、詳細には
図1(a)は壁面の正面図、
図1(b)は壁面の断面図を示す。
【0011】
本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法は、
図1(a)、
図1(b)に示したように、塗装対象物としてのコンクリート建造物の側壁などに、タイル目地模様に目地5を形成した塗装を施す。
目地5により区画されたタイルに相当する疑似タイル部6は、下地9上に形成されたモルタル層2と、無機顔料を含有する無機塗料3T(第1の無機塗料)を塗布して形成された有色層3と、有色層3および目地5に無機塗料4T(第2の無機塗料)を塗布して形成された保護層4とを有する。
【0012】
モルタル層2は、下地9上にモルタルなどが塗布され、矩形状に形成されている。
有色層3は、
図1(b)に示したように、下地9に第1の無機塗料としての無機塗料3T(第1の無機塗料)が塗布されて矩形状に形成されている。
無機塗料3Tは、アルコキシシロキサンを主成分とし、オルガノシランおよび無機顔料を含有している。
アルコキシシロキサンは、Si−O結合(シロキサン結合)を有し、且つ、分子内にアルコキシ基を有する。アルコキシシロキサンは、空気中の水分などと反応することで、高硬性のガラス質材となる。オルガノシランは、ケイ素化合物であり、空気中の水分などと反応することで、高硬性のガラス質材となる。無機顔料としては、赤、白、緑、オレンジなどの所定の色の無機材料を採用することができる。
【0013】
無機塗料3Tは、例えば、アルコキシシロキサンが33〜41重量%、オルガノシランが8.3〜10.3重量%であり、好ましくは、アルコキシシロキサンが35〜39重量%、オルガノシランが9.0〜9.5重量%である。
【0014】
無機塗料3Tは、不燃性、耐久性、耐候性などの各種条件を考慮すれば、無機塗料(例えば、(株)シクソン社製の中塗り用TSコートKT(色付))を用いることが好ましい。この無機塗料3Tは、一液性で無溶剤の塗料であり、不燃性である。また、この無機塗料3Tは、空気中の水分などと反応して高硬性のガラス質材となる。
【0015】
保護層4は、
図1(b)に示したように、有色層3に無機塗料4T(第2の無機塗料)が塗布されて形成されている。保護層4は、厚さが20μm〜100μm程度である。
【0016】
この無機塗料4T(第2の無機塗料)は、アルコキシシロキサンを主成分とし、オルガノシランを含有しており、透光性を有する。
無機塗料4Tは、例えば、アルコキシシロキサンが77〜95重量%、オルガノシランが5〜11.3重量%であり、好ましくは、アルコキシシロキサンが82〜90重量%、オルガノシランが2.0〜5.0重量%である。
【0017】
無機塗料4Tは、不燃性、耐久性、耐候性などの各種条件を考慮すれば、無機塗料(例えば、(株)シクソン社製の上塗り用TSコートKT(クリア))を用いることが好ましい。この無機塗料4Tは、一液性で無溶剤の塗料であり、不燃性である。この無機塗料4Tは、空気中の水分などと反応して高硬性のガラス質材となる。
【0018】
<タイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法>
図2は、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法の一例を示す図であり、詳細には、
図2(a)は下地9としての壁面の断面図、
図2(b)は目地材8等の断面図、
図2(c)はモルタル層2等の断面図、
図2(d)は有色層3等の断面図、
図2(e)は目地材8除去時の有色層3等の断面図、
図2(f)は保護層4等の断面図をそれぞれ示す。
【0019】
図3は、タイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法の一例を示す図であり、詳細には(a)はタイル貼付部とタイル剥落部を有する壁の一例を示す正面図、
図3(b)は下地9を平坦化した壁面の正面図、
図3(c)はタイル目地模様を有する塗装を施した壁の正面図をそれぞれ示す。
図4は、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法のフローチャートである。
【0020】
図2、
図3、
図4などを参照しながら、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法の一例を説明する。本実施形態では、塗装対象物は、トンネルなどのコンクリート製構造物の側壁などである。詳細には、
図3(a)に示したように、トンネルのコンクリート構造物の側壁などに、タイル20を貼付したタイル貼付部21が形成されている。経年劣化などにより、コンクリート構造物の側壁に、タイル20が剥がれ落ちたタイル剥落部22が形成されている。このタイル剥落部22に、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法を実施する。
【0021】
ステップS11において、
図3(a)、
図2(a)に示したように、塗装対象物である下地9の表面を洗浄処理する。詳細には、タイル剥落部22の下地9に残ったタイルなどを除去し、下地9のレイタンス、油分、汚れなどをワイヤブラシ、サンダー、サンドペーパーなどで除去し、水洗い洗浄処理、または、高圧洗浄処理を行う。レイタンスとは、セメントの主に石灰石などの微粒子や骨材の微粒分が、ブリーディング水とともにコンクリートの上面に上昇して堆積した多孔質な泥膜層である。
【0022】
ステップS13において、
図3(b)、
図2(a)に示したように、タイル剥落部22(タイル20を剥がした後の面を含む)の下地9に素地調整工程を行う。詳細には、下地9の表面に欠損、ピンホールなど平坦でない部分が形成されている場合、セメント材などで素地調整、平坦化処理などを行う。
【0023】
ステップS15において、
図2(b)、
図3(c)に示したように、タイル目地模様に、養生テープや型枠などの目地材8を剥離可能に貼付する。この際、タイル貼付部21の目地と同じ間隔のタイル目地模様となるように、目地材8を剥離可能に貼付する。
【0024】
ステップS17において、
図2(b)に示したように、平滑化処理を施した下地9のうち目地材8の貼付された領域以外の領域に、モルタルをその目地材8と略同じ厚みに塗布して、モルタル層2を形成する。所定時間だけ放置することにより、モルタル層2が乾燥して、硬化する。
【0025】
ステップS19において、中塗り工程を行う。詳細には、
図2(d)に示したように、顔料を含有した無機塗料3T(例えば(株)シクソン社製の中塗り用TSコートKT(色付))をローラー、刷毛などにより、モルタル層2のモルタル上に、また僅かに目地材8上に1、2回塗布して有色層3を形成する。標準的な塗布量は、0.15kg/m
2程度である。
【0026】
ステップS21において、
図2(e)に示したように、第1の無機塗料3Tの硬化前に、養生テープや型枠などの目地材8を剥離(除去)して目地溝5aを形成した後、所定時間だけ常温で放置して、無機塗料3Tを硬化させる。詳細には、有色層3では、無機塗料3Tが塗布された後、常温で所定時間放置すると、無機塗料3Tが空気中の水分などと反応して硬化し、高い硬性を有するガラス質の有色層3となる。
【0027】
ステップS23において、
図2(f)に示したように、上塗り工程を行う。詳細には、透光性を有する無機塗料4T(第2の無機塗料)を、有色層3と目地溝5aとに、有色層3よりも薄い厚みとなるように塗布して保護層4とする。詳細には、ローラー、刷毛などにより上塗り用TSコートKT(クリア)を有色層3に1、2回塗布する。標準的な塗布量は、0.06kg/m
2〜0.12kg/m
2である。
【0028】
ステップS25において、硬化工程を行う。詳細には、無機塗料4T(第2の無機塗料)を塗布後、常温で所定時間放置すると、無機塗料4Tが空気中の水分などと反応して硬化し、透光性且つ硬性のガラス質の保護層4となる。
【0029】
次に、塗装の塗りムラ、塗り残しなどを検査する。その後、必要に応じて塗膜性能確認の試験、付着強度試験、塗膜硬度試験、密着性試験、拡散反射率試験などを実施して、塗装状態を検査する。
【0030】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法は、平滑化処理を施した下地9に、タイル目地模様に目地材8を剥離可能に貼付する工程(S11、S13、S15)と、平滑化処理を施した下地9のうち目地材8の貼付された領域以外の領域に、モルタルを該目地材8と略同じ厚みに塗布する工程(S17)と、アルコキシシロキサンを主成分とし、オルガノシランおよび無機顔料を含有する無機塗料3T(第1の無機塗料)を、少なくともモルタル層2のモルタルに塗布して、無機塗料3Tによる有色層3を形成する工程(S19)と、無機塗料3Tの硬化前に、目地材8を剥離して目地溝5aを形成した後、無機塗料3Tを硬化させる工程(S21)と、アルコキシシロキサンを主成分とし、オルガノシランを含有し且つ透光性を有する無機塗料4T(第2の無機塗料)を、有色層3と目地溝5aとに、有色層3よりも薄い厚みとなるように塗布したのち、無機塗料4Tを硬化させて、透光性且つ硬性のガラス質の保護層4を形成する工程(S23、S25)と、を有する。
このため、トンネルの内壁などに対して、メンテナンスが容易で、良好な視認性のタイル目地模様を有する塗装(疑似タイル塗装)の施工方法を提供することができる。
【0031】
また、無機塗料3T、および無機塗料4Tは、アルコキシシロキサンを主成分とし、オルガノシランを含有するので、塗布後、常温でも空気中の水分などと反応して、所定時間経過すると、硬性のガラス質の物質となる。このため、有色層3と保護層4は、硬性のガラス質の層(ホーロー層)となる。このため、コンクリート構造物の壁面(塗装物1)などが良好な耐久性を有する。
【0032】
また、上述したように、無機塗料3Tと無機塗料4Tは、アルコキシシロキサンを主成分とし、オルガノシランを含有しており、略同じ成分である。このため、有色層3と保護層4とが良好な密着性を有する。また、有色層3と保護層4の間で熱膨張率の差による歪が小さいので、温度変化による有色層3と保護層4が剥がれることを低減することができる。
【0033】
また、トンネルのコンクリート構造物の側壁の下地9に、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法を実施すれば、トンネルのコンクリート構造物に、良好な視認性、耐久性、および、不燃性の塗装(疑似タイル塗装)を行うことができる。
【0034】
また、本発明の実施形態では、
図3に示したように、トンネルのコンクリート構造物の側壁にタイル20を貼付したタイル貼付部21とタイル剥落部22とが形成されており、そのタイル剥落部22の下地9に平滑化処理を施し、タイル貼付部21の目地と同じ間隔のタイル目地模様となるように、目地材8を剥離可能に貼付し、上記塗装(疑似タイル塗装)を行う。
このため、タイル貼付部21と、疑似タイル塗装部とで、視覚的に違和感のない塗装を行うことができる。
図5は、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有する塗装の施工方法を施した壁面の一例を示す図である。例えば、
図5に示したように、図中の左部分のタイル貼付部と、図中の中央部分の疑似タイル部とで、視覚的に違和感がない。
【0035】
また、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有するトンネル壁面の塗装方法では、無機塗料3T(第1の無機塗料)、および、無機塗料4T(第2の無機塗料)が、一液性で無溶剤の塗料であり、且つ、不燃性であるので、不燃性の塗装(疑似タイル塗装)の施工方法を提供することができる。
【0036】
また、本発明の実施形態によれば、無機塗料3Tは、アルコキシシロキサンが33〜41重量%、オルガノシランが8.3〜10.3重量%である。また、無機塗料4Tは、アルコキシシロキサンが77〜95重量%、オルガノシランが5〜11.3重量%である。このような重量比の無機塗料3T、および、無機塗料4Tを用いることで、耐久性、および、不燃性の塗装(疑似タイル塗装)を簡単に行うことができる。
【0037】
また、第1の無機塗料3TとしてのTSコートKT(色付)、第2の無機塗料4TとしてのTSコートKT(クリア)は、100%無機質の一液性溶剤であり、有機溶剤を含んでいないので、延焼による有毒ガスを発生しない。また、略密閉空間であるトンネル内で、本発明の実施形態に係るタイル目地模様を有する塗装の施工方法を行った場合であっても、作業者の人体に対して無害である。
【0038】
また、疑似タイル部6および目地5の表面に高硬性のガラス質のホーロー被膜(保護層4)が形成されており、繰り返し表面洗浄を行った場合であっても、反射率の低下が少ない。また、疑似タイル部6は、表面に高硬性のガラス質のホーロー被膜(保護層4)が形成されているので、容易に清掃することができ、低コストで清掃などの維持管理を行うことができる。
【0039】
また、本願発明者は、無機塗料4Tとして(株)シクソン社製上塗り用TSコートKT(クリア)を用い、上記本発明に係る疑似タイル塗装を行い、疑似タイル部分に関して、首都高速道路株式会社によるトンネル構造物設計要領に従った要求性能に対する検証試験を行った。
詳細には、火災時に有毒なガスを発生しない要求性能に関する試験として、(財)日本建築総合試験所「防耐火性能試験・評価業務方法書」ガス有害性試験を行い、有毒ガスが発生しないことを確認した。
【0040】
また、長期耐久性に関する促進試験として、拡散反射率の測定を行った。詳細には、(株)シクソン社製上塗り用TSコートKT(クリア)にて保護層を形成した試験片に、トンネル内における汚染物質を塗布し、規定の回転ブラシで、1測定につきブラシ回転数75回転にて洗浄した。測定機器は、分光測色計CM−3500dを用いた。測定条件標準光はD65光源、視野条件は10°、測定径は直径30mmである。照射および受光の幾何学的条件は、条件c、光トラップあり(d/8,SCE)に準拠している。
拡散反射率(Y値)測定の結果、第1の試験体について、初期拡散反射率は90.1%、洗浄測定300回目の拡散反射率は65.9%であった。
第2の試験体について、初期拡散反射率は89.8%、洗浄測定300回目の拡散反射率は64.0%であった。
いずれの場合も規格値よりも良好な結果が得られた。詳細には、上記設計要領による、初期拡散反射率の規格値は60%以上、洗浄測定後の拡散反射率の規格値は40%以上であり、いずれの場合よりも良好な結果を得た。
【0041】
また、JIS K 5600−8−4〜5に従い、はがれ、われ及び顕著な磨滅に関する試験を行った。その試験の結果、はがれ、われ、磨滅が認められないことを確認した。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、上述の各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【0043】
上記実施形態では、タイル目地模様の塗装を行ったが、この形態に限ら得るものではなく、例えば、目地模様を図柄模様となるようにしてもよい。