(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の円筒形状の石英管による真空チャンバで発生させた熱プラズマを、安定的に維持するのは難しいという問題がある。なぜなら、高温の熱プラズマが石英管に接触すると石英管を破損するからである。
【0008】
上記と異なる形状の石英管を用いるプラズマ発生装置として、廉価な石英板を張り合わせて形成される石英管と、当該石英管に巻回されたコイルとを備えるプラズマ発生装置が考えられる。このようなプラズマ発生装置の一例として、特許文献1に開示されるプラズマ発生装置がある。
図21に示されるように、特許文献1に開示されるプラズマ発生装置によって熱プラズマ1208を発生させると、熱プラズマ1208はコイルの中心軸を取り巻くような形状になる。このとき、石英管1201aの平面部分に高温の熱プラズマが接触すると、石英管が破損するおそれがある。よって、特許文献1に開示されるプラズマ発生装置においても、従来のプラズマ発生装置と同様に、その内部に発生させる熱プラズマを安定的に維持することが難しい。つまり、特許文献1に開示されるプラズマ発生装置によって、上記問題を解決することはできない。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、熱プラズマを安定的に発生させることができるプラズマ発生装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一様態に係るプラズマ発生装置は、扁平形状のチャンバであって、当該チャンバの内部に所定方向にプラズマガスが流通するチャンバと、前記チャンバに対して前記所定方向に直交する方向に交播磁界を印加することにより、前記チャンバの内部に熱プラズマを発生させる磁界印加部とを備える。
【0011】
これによれば、円筒形状でない石英板から形成される石英管のような扁平形状のチャンバを用い、当該チャンバの内部に熱プラズマを発生させることができる。また、本プラズマ発生装置によれば、扁平形状のチャンバにおける厚さ方向に直交する方向(扁平方向)に広がる熱プラズマを発生させることができる。そのため、扁平方向に十分な大きさのチャンバとすることで、石英管の平面部分に熱プラズマが接触することを防ぐことができる。よって、当該プラズマ発生装置は、熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0012】
また、前記磁界印加部は、前記チャンバに対して前記所定方向に直交する方向に交播磁界を印加するコイルを有するとしてもよい。
【0013】
これによれば、コイルによりチャンバに磁界を発生させることで、当該チャンバの内部に熱プラズマを発生させることができる。
【0014】
また、前記磁界印加部は、さらに、端部が前記チャンバの近傍に配置される磁性体コアを有し、前記コイルは、前記磁性体コアの一部に巻回されるとしてもよい。
【0015】
これによれば、チャンバがコイルから離れた位置に配置される場合において、コイルの内部に発生する磁界を磁性体コア(フェライトコア)によってチャンバの近傍へ伝えることができる。そして、フェライトコアによりチャンバの近傍に伝えられた磁界により、真空チャンバ内に熱プラズマを発生させることができる。よって、チャンバがコイルから離れた位置に配置される場合においても、当該プラズマ発生装置は、熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0016】
また、前記磁性体コアは、U字形状を有し、前記磁性体コアの両端部のそれぞれが、前記チャンバを厚さ方向から挟むように配置されるとしてもよい。
【0017】
これによれば、フェライトコアによりコイルの内部に発生する磁界をチャンバの近傍に伝えることで、チャンバの厚さ方向に一様な磁界を集中して発生させることができる。その結果、チャンバの厚さ方向の広い範囲に熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0018】
また、前記磁性体コアは、前記コイルが巻回された部分の断面積より、前記チャンバの近傍に配置される部分の断面積が小さい形状を有するとしてもよい。
【0019】
これによれば、コイルの内部に発生する磁界をフェライトコアによりチャンバの近傍に伝え、さらに、フェライトコアの近傍において磁界を集中させることができる。つまり、電流の出力が小さい場合であってもチャンバ内に局所的に強い磁界を発生させることができる。よって、当該プラズマ発生装置は、比較的小さい電力によって熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0020】
また、前記磁界印加部は、前記チャンバを挟むように配置され、前記チャンバに対して前記所定方向に直交する方向に交播磁界を印加する複数のコイルを有するとしてもよい。
【0021】
これによれば、2つのコイルにより、チャンバの厚さ方向に一様な磁界を集中して発生させることができる。その結果、チャンバの厚さ方向の広い範囲に熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0022】
また、前記磁界印加部は、第一印加部及び第二印加部を有し、第一期間に前記第一印加部が前記チャンバに交播磁界を印加し、前記第一期間と異なる第二期間に前記第二印加部が前記チャンバに交播磁界を印加するとしてもよい。
【0023】
これによれば、複数のコイルを用いて、チャンバの扁平方向の複数の箇所に、局所的に磁界を印加することができる。ここで、複数のコイルのそれぞれには、期間を分けて、順次、高周波電流を印加するようにすることで、従来と同等の出力容量の電流源によって実現することができる。つまり、プラズマ発生装置は、高価な大出力容量の電流源を用いることなく、熱プラズマを発生させることができる。よって、当該プラズマ発生装置は、大面積の熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0024】
また、前記磁界印加部は、前記交播磁界の周波数をfとし、磁束密度をBとするとき、f×Bが3000T/s以上、6500T/s以下の範囲内である前記交播磁界を印加するとしてもよい。
【0025】
これによれば、プラズマ発生装置は、蒸気の磁束密度及び周波数の交播磁界により熱プラズマを発生させることができる。
【0026】
また、本発明の一様態に係るプラズマ発生方法は、扁平形状のチャンバであって、当該チャンバの内部に所定方向にプラズマガスが流通するチャンバを設置する設置ステップと、前記チャンバに対して前記所定方向に直交する方向に交播磁界を印加することにより、前記チャンバの内部に熱プラズマを発生させる磁界印加ステップとを含む。
【0027】
これにより、上記プラズマ発生装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、熱プラズマを安定的に発生させることができるプラズマ発生装置等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0031】
なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0032】
(実施の形態1)
実施の形態1において、従来と異なる真空チャンバの形状と、当該真空チャンバ及びコイルの位置関係とにより、従来より安定的に熱プラズマを発生させることができるプラズマ発生装置の例を示す。
【0033】
図1は、実施の形態1に係るプラズマ発生装置の斜視図である。
【0034】
図1に示されるように、実施の形態1に係るプラズマ発生装置は、真空チャンバ11と、コイル12とを備える。なお、真空チャンバは、単に「チャンバ」ともよぶ。
【0035】
真空チャンバ11は、扁平形状の石英管10(以降、単に石英管ともいう)と、上部フランジ13と、下部フランジ14とを備える。真空チャンバ11は真空ポンプ(不図示)などと接続され、内部を真空にすることができる。真空チャンバ11の内部にはプラズマガスが導入され、所定の物理条件が整うと熱プラズマが発生する。真空チャンバ11を水冷容器(不図示)内に配置することにより、真空チャンバ11をほぼ300K(ケルビン)に保つ。石英管10の寸法は、例えば、幅(y方向)120mm、奥行き(x方向)20mm、高さ(z方向)100mmである。この場合、扁平形状の厚さ方向とは、x方向のことである。石英管10の厚さは、例えば、5mmである。ここでプラズマガスとは、熱プラズマのガス成分のことであり、例えば、Ar(主成分)、CH
4及びH
2の混合ガスである。
【0036】
コイル12は、真空チャンバの厚さ方向に隣接する位置に配置される。コイル12は、電流源として動作するインバータ回路(不図示)に接続され、一定振幅の数百kHzの高周波電流を印加される。コイル12は、コイル12に流れる高周波電流により真空チャンバ11の内部に交播磁界(以降、単に磁界ともよぶ)を発生させることで、真空チャンバ11の内部に熱プラズマを発生させる。熱プラズマは、このような高周波の電界の変化に追随できず、あたかも導電性金属柱のような振る舞いをする。つまり、電磁誘導作用によりプラズマに円周方向に渦電流が流れ、この電流によって生ずるジュール熱によって熱プラズマが発生する。コイル12は、交播磁界の周波数をfとし、磁束密度をBとするとき、f×Bが3000T/s以上、6500T/s以下の範囲内である交播磁界を印加する。このような交播磁界は、例えば、周波数fを50kHz〜500kHzとし、磁束密度Bを13mT〜130mTとすることにより実現される。なお、
図1におけるコイル12は、5ターン程度の巻き数で円筒形状となっているが、巻き数及び形状はこれに限られない。巻き数は、1ターン以上の任意のターン数であってよい。また、形状は、パンケーキ形状(渦巻き形状)、のこぎり形状、星形状、多角形形状、楕円形状、ミアンダ形状、または、それらの形状の特徴を有する形状などの任意の形状であってよい。なお、コイル12は、磁界印加部に相当する。
【0037】
図2は、実施の形態1に係るプラズマ発生装置の側面図である。
図2に示される構成要素は、
図1に示される構成要素と同じであるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0038】
図3は、実施の形態1に係るプラズマ発生装置の正面図である。
図3に示される構成要素は、
図1に示される構成要素と同じであるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0039】
図4は、実施の形態1に係るプラズマ発生装置の上部フランジ13の平面図である。
【0040】
図4に示されるように、上部フランジ13には、プラズマガスをシース状に石英管10の内壁面へ流せるように直径1mm程度のガス穴13bを短辺に4個、長辺に32個の計36個有する。また、ガス穴13bへプラズマガスを供給するためのガス経路13aを有する。石英管10が、破線13cで示される位置に配置される。
【0041】
図5は、実施の形態1に係るプラズマ発生装置の下部フランジ14の平面図である。
【0042】
図5に示されるように、下部フランジ14は、真空ポンプ(不図示)などと接続され、真空チャンバ11内部を真空にするための開口部14hを有する。石英管10が、14cで示される位置に配置される。
【0043】
図6は、実施の形態1に係るプラズマ発生装置1の模式図である。
【0044】
図6に示される真空チャンバ11と、コイル12とは、
図1に示されるものと同一である。詳細な構成は省略する。
【0045】
図6に示されるように、電流源がコイル12に高周波電流17を流すことで、真空チャンバ11内部にx方向に高周波の磁界が印加される。この磁界により、この磁界を取り巻くような形状の熱プラズマ18が発生する。その際、熱プラズマ18は、真空チャンバ11内において、コイル12により印加された磁界がより強い位置であるコイル12に近い位置に発生する。
【0046】
このような構成をとることで、真空チャンバ11の内部に安定的に熱プラズマを発生することができる。その理由は以下のように説明される。第一に、熱プラズマと真空チャンバとの形状及び位置関係により、熱プラズマと真空チャンバ11の内壁面との間に十分な空間があるからである。つまり、熱プラズマが、コイルにより印加される磁界を取り巻くような形状になるように(y方向またはz方向に)膨らんだとしても、真空チャンバ11の壁面までの間に十分な空間があるからである。第二に、真空チャンバの内壁面に沿うように(シース状に)流れるプラズマガスがあることで、熱プラズマが真空チャンバの内壁面に接触しにくいからである。なお、本実施の形態に係るプラズマ発生装置の構成に類似する、低圧のプラズマを発生させるプラズマ発生装置は知られているが、本実施の形態に係るプラズマ発生装置は高温及び高圧の熱プラズマを発生させるプラズマ発生装置として新規である。
【0047】
以上のように、本発明の一態様に係るプラズマ発生装置によれば、円筒形状でない石英板から形成される石英管のような扁平形状の真空チャンバを用い、当該真空チャンバの内部に熱プラズマを発生させることができる。また、本プラズマ発生装置によれば、扁平形状の真空チャンバにおける厚さ方向に直交する方向(扁平方向)に広がる熱プラズマを発生させることができる。そのため、扁平方向に十分な大きさの真空チャンバとすることで、石英管の平面部分に熱プラズマが接触することを防ぐことができる。よって、当該プラズマ発生装置は、熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0048】
これによれば、コイルによりチャンバに磁界を発生させることで、当該チャンバの内部に熱プラズマを発生させることができる。
【0049】
(実施の形態2)
実施の形態2において、真空チャンバを挟むようにコイルを配置することで、実施の形態1より安定的に熱プラズマを発生させることができるプラズマ発生装置の例を示す。
【0050】
図7は、実施の形態2に係るプラズマ発生装置2a及び2bの模式図である。
【0051】
図7の(a)に示されるように、実施の形態2に係るプラズマ発生装置2aは、真空チャンバ21と、コイル22aと、コイル22bとを備える。
【0052】
真空チャンバ21は、真空チャンバ11と同じものであってよい。コイル22aには高周波電流27aが印加される。また、コイル22bには高周波電流27aが印加される。高周波電流27aと高周波電流27とは、周期及び位相が等しくなるように制御される。
【0053】
なお、
図7の(b)に示されるように、コイル22a及びコイル22bが直列に接続され、単一の電流源から高周波電流27を供給されるプラズマ発生装置2bとしてもよい。この場合、上記の高周波電流27aと高周波電流27とが、周期及び位相だけでなく、振幅も等しくなるように制御された場合に相当する。以下では、コイル22a及びコイル22bが直列に接続され、単一の電流源から高周波電流27を供給される場合について説明する。
【0054】
図7の(b)に示されるように、コイル22a及びコイル22bに高周波電流27が印加されると、真空チャンバ21内に熱プラズマ28が発生する。高周波電流27などの所定の物理条件については後述する。
【0055】
このような構成をとることにより、真空チャンバ21内にx方向の比較的強い磁界が発生するため、熱プラズマ28は、実施の形態1における熱プラズマ18よりx方向において広い範囲に発生する。よって、真空チャンバ21の内部により安定的に熱プラズマを発生させることができる。
【0056】
図8Aは、実施の形態2におけるプラズマ発生条件及びプラズマ発生中の物理量の一例である。
【0057】
図8Aの(a)は、インバータ回路(電流源)に入力する直流電圧VDC及び直流電流IDCの条件、インバータ回路(電流源)が出力する交流電流の周波数f、有効電力P、並びに、真空チャンバ21内の圧力及びガス流量を示す。
図8Aの(b)〜(e)は、熱プラズマが発生しているときの電源応答及び温度の時間変化の一例である。具体的には、(b)コイル22a及びコイル22bに印加される電圧Vinv及び電流Iinv、(c)コイル22a及びコイル22bに印加される電圧の実効値Vrms及び電流の実効値Irms、(d)有効電力P、及び、(e)温度[K]である。
図8Aに示されるように、本実施の形態に係るプラズマ発生装置は、6.8kWの出力で6600Kの熱プラズマを発生及び維持できることが確認される。
【0058】
なお、コイルに印加する高周波電流の振幅を2通り設定し、所定の条件でこれらの振幅を繰り返すことにより、被処理物に与えるダメージを抑制しながら高速に熱プラズマによる表面処理を行うことも可能である。より詳細には、コイルに第一の振幅を有する交流電流を流すことによって第一の磁界を熱プラズマに印加する第一印加ステップと、コイルに第一の振幅とは異なる第二の振幅を有する交流電流を流すことによって第二の磁界を熱プラズマに印加する第二印加ステップとを含み、熱プラズマ中に配置された被処理物の表面温度を所定範囲内に維持し、かつ、熱プラズマの発光スペクトルに含まれる第一の波長成分の強さが、当該第一印加ステップと、当該第二印加ステップとでは、所定値以上異なるように、当該第一印加ステップと当該第二印加ステップとが繰り返されるようにしてもよい。このようにすることで、被処理物の表面温度を、被処理物が熱的ダメージを受けない温度に維持される。また、熱プラズマ中の活性化学種(ラジカル)を増加させ、熱プラズマに印加される磁場の変化に同期して、効率よく表面処理を行うための2つの工程を交互に行うことができる。よって、被処理物に与える熱的ダメージを抑制するとともに、より高速に熱プラズマによる表面処理を行うことができる。このように発生させる熱プラズマの発生条件等について
図8Bに示す。
【0059】
図8Bは、実施の形態2におけるプラズマ発生条件及びプラズマ発生中の物理量の他の一例である。
図8Bの(a)は、インバータ回路(電流源)に入力する直流電圧VDC及び直流電流IDCの条件、インバータ回路(電流源)が出力する交流電流の周波数f、有効電力P、真空チャンバ21内のガス流量、高周波電流の変調信号、並びに、変調信号周波数を示す。ここで、変調信号におけるSCL(Shimmer Current Level)とは、2通り設定された高周波電流の振幅の一方に対する他方の比率である。また、変調信号におけるDF(Duty factor)とは、変調周期に対する振幅が大きい電流を印加する時間の割合である。
図8Bの(b)〜(f)は、熱プラズマが発生しているときの電源応答及び温度の時間変化の一例である。具体的には、(b)変調信号電圧、(c)コイル22a及びコイル22bに印加される電圧Vinv及び電流Iinv、(d)コイル22a及びコイル22bに印加される電圧の実効値Vrms及び電流の実効値Irms、(e)有効電力P、及び、(f)真空チャンバ内の3箇所((1)、(2)及び(3))の温度[K]である。
図8Bに示されるように、本実施の形態に係るプラズマ発生装置は、2通りの振幅の高周波電流を切り替えながらコイルに印加することにより、8.9kWの出力でおよそ9000Kの熱プラズマを発生及び維持できることが確認される。
【0060】
以上のように、本発明の一態様に係るプラズマ発生装置によれば、2つのコイルにより、真空チャンバの厚さ方向に一様な磁界を集中して発生させることができる。その結果、真空チャンバの厚さ方向の広い範囲に熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0061】
(実施の形態3)
実施の形態3において、真空チャンバに隣接する複数の箇所にコイルを配置することで、実施の形態1より広い空間に熱プラズマを発生させることができるプラズマ発生装置の例を示す。
【0062】
図9は、実施の形態2に係るプラズマ発生装置3の模式図である。
【0063】
図9に示されるように、実施の形態2に係るプラズマ発生装置3は、真空チャンバ31と、コイル32aと、コイル32bと、コイル32cとを備える。真空チャンバ31は、真空チャンバ11よりz方向に幅広な形状である。なお、真空チャンバ31は、真空チャンバ11よりy方向に幅広な形状であってもよい。
【0064】
コイル32aには高周波電流37aが印加される。また、コイル32bには高周波電流37aが印加される。また、コイル32cには高周波電流37cが印加される。高周波電流37aと高周波電流37bと高周波電流37cとは、周期及び位相が等しくなるように制御される。
【0065】
なお、コイル32a、コイル32b及びコイル32cが、直列に接続され、単一の電流源から高周波電流37を供給されるようにしてもよい。この場合、上記の高周波電流37aと高周波電流37bと高周波電流37cとが、周期及び位相だけでなく、振幅も等しくなるように制御された場合に相当する。以下では、コイル32a、コイル32b及びコイル32cが直列に接続され、単一の電流源から高周波電流37を供給される場合について説明する。
【0066】
図9に示されるように、コイル32a、コイル32b及びコイル32cに高周波電流37が印加されると、真空チャンバ31内に熱プラズマ38が発生する。
【0067】
ここで、従来のプラズマ発生装置との比較しながら、本実施の形態のプラズマ発生装置の特徴を説明する。従来のプラズマ発生装置において、大型の真空チャンバ及びコイルを用いたとしても、本実施の形態のように広い面積に熱プラズマを発生させることは難しい。なぜなら、大型のコイルが発生させる磁界、および、磁界が発生させる電界が大型石英管内の広い空間に存在するため、磁界および電界の密度が低下し、熱プラズマを発生することができないためである。これに対し、本実施の形態のプラズマ発生装置では、真空チャンバ内の広い空間のうちの局所的な領域に電界および磁界を印加することで局所的に熱プラズマを発生させる。複数の箇所に、この局所的な熱プラズマを発生させることで、広範囲な熱プラズマを発生させることができる。このように、本実施の形態に係るプラズマ発生装置は、従来のプラズマ発生装置では実現できなかった処理面積の大面積化を実現し得る。
【0068】
このような構成をとることにより、真空チャンバ31内において、z方向(または、y方向)の広い範囲において熱プラズマ38を発生させることができる。このような広い範囲に渡る熱プラズマを利用すれば、広い表面積を有する試料に対して、熱プラズマを利用した表面処理を施すことが可能である。
【0069】
なお、
図9においてコイルの数を3として説明したが、コイルの数は2以上の任意の数であってよい。その場合、各コイルに対して同様の制御を行うことが可能である。その結果、真空チャンバ内のより広い空間に熱プラズマを発生させることができ、より広い表面積を有する試料に対する表面処理を施すことが可能となる。
【0070】
なお、本実施の形態において、真空チャンバ31の長尺方向の寸法が比較的長い場合には、真空チャンバ31の内部に、強度を維持するための支え棒又は仕切り板を挿入してもよい。これにより、真空チャンバ31内外の温度差、圧力差、または、外力などにより真空チャンバ31が破損することを未然に防ぐことができる。
【0071】
なお、本実施の形態において、真空チャンバ11より幅広な真空チャンバ31を用いたが、真空チャンバ11を複数並べて配置することで幅広な真空チャンバ(不図示)を形成することも可能である。幅広な真空チャンバでは、同等のサイズの真空チャンバ31と比較して石英管の厚さを抑えることができる。具体的には、例えば、1000mm×100mm×20mmの石英管の真空チャンバ31には、10mm厚の石英管を用いる必要がある。それに対して、100mm×100mm×20mmの真空チャンバ11を10個並べて形成される1000mm×100mm×20mmの石英管を用いた幅広な真空チャンバに用いられる石英管は約3mm厚でよい。また、幅広な真空チャンバでは、同等のサイズの真空チャンバ31と比較して、水冷が容易である。さらに、幅広な真空チャンバによれば、長尺方向の長さが数メートルを超える熱プラズマを発生させることも可能となる。
【0072】
このような幅広な真空チャンバを有するプラズマ発生装置によっても、従来のプラズマ発生装置では実現できなかった処理面積の大面積化を実現し得る。
【0073】
以上のように、本発明の一態様に係るプラズマ発生装置によれば、複数のコイルを用いて、真空チャンバの扁平方向の複数の箇所に、局所的に磁界を印加することができる。ここで、複数のコイルのそれぞれには、期間を分けて、順次、高周波電流を印加するようにすることで、従来と同等の出力容量の電流源によって実現することができる。つまり、本プラズマ発生装置では、高価な大出力容量の電流源を用いることなく、熱プラズマを発生させることができる。よって、当該プラズマ発生装置は、大面積の熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0074】
(実施の形態4)
実施の形態4において、真空チャンバに隣接する複数の箇所にコイルを配置し、その複数のコイルに対して順次電流を印加することで、従来と同等の出力容量のインバータ回路(電流源)を用いて実施の形態1のプラズマ発生装置1より広い面積に熱プラズマを発生させることができるプラズマ発生装置の例を示す。
【0075】
図10は、実施の形態3に係るプラズマ発生装置3におけるプラズマ発生方法の模式図である。
【0076】
図10に示されるプラズマ発生装置3は、実施の形態2で説明したものと同一である。コイル32a、コイル32b及びコイル32cに、それぞれ、高周波電流37a、高周波電流37b及び高周波電流37cが印加される。
【0077】
実施の形態3に係るプラズマ発生方法では、まず、
図10の(a)に示されるように、コイル32aに高周波電流37aが印加される。これにより、真空チャンバ31内のコイル32aに近い位置に熱プラズマ38aが発生する。
【0078】
次に、
図10の(b)に示されるように、コイル32bに高周波電流37bが印加される。これにより、真空チャンバ31内のコイル32bに近い位置に熱プラズマ38bが発生する。
【0079】
次に、
図10の(c)に示されるように、コイル32cに高周波電流37cが印加される。これにより、真空チャンバ31内のコイル32cに近い位置に熱プラズマ38cが発生する。
【0080】
次に、
図10の(a)に戻り、上記と同様の方法を実行する。
【0081】
以上により、真空チャンバ31の中の複数の部分に順次、熱プラズマを発生させることができる。
【0082】
なお、実施の形態3と同様、コイルの数は2以上の任意の数であってよい。
【0083】
このようにすることで、実施の形態1のプラズマ発生装置1と同等の出力容量のインバータ回路(電流源)を用いて、真空チャンバ内の広い空間に熱プラズマを発生させることができ、より広い表面積を有する試料に対する表面処理を施すことが可能となる。
【0084】
(実施の形態5)
実施の形態5において、コイルと真空チャンバとを離れた位置に配置する場合に、コイルが発生させる磁界を真空チャンバ内に伝え、真空チャンバ内に熱プラズマを発生させることができるプラズマ発生装置の例を示す。
【0085】
図11は、実施の形態4に係るプラズマ発生装置4の模式図である。
【0086】
図11に示されるプラズマ発生装置4は、真空チャンバ41と、コイル42と、フェライトコア45を備える。真空チャンバ41とコイル42とは、それぞれ、実施の形態1における真空チャンバ11とコイル12と同等のものである。
【0087】
フェライトコア45は、U字形状であり、その両端部が真空チャンバ41の近傍に配置される。また、フェライトコア45の一部にコイル42が巻回される。このように構成することで、コイル42が発生させる磁界を真空チャンバ41の近傍へ伝えることができる。なお、U字形状のフェライトコアの両端部のそれぞれが真空チャンバ41の両側面のそれぞれの近傍に配置されている構成の他、フェライトコアの一方の端部だけが、真空チャンバ41の近傍に配置される構成も本発明の技術的範囲に含まれる。また、フェライトコア45は、U字形状でなくてもよく、直線形状、曲線形状、又は、それらを組み合わせた任意の形状であってもよい。フェライトコア45は、磁性体コアの一例である。なお、フェライトコア45は、一例として、強磁性酸化物のソフトフェライトで実現される。ソフトフェライトの仕様の一例を
図15に示す。
【0088】
図12は、実施の形態5に係るプラズマ発生装置の側面図である。
図12に示される構成要素は、
図11に示される構成要素と同じであるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0089】
図13は、実施の形態5に係るプラズマ発生装置の正面図である。
図13に示される構成要素は、
図11に示される構成要素と同じであるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0090】
図14は、実施の形態5に係るプラズマ発生装置4の模式図である。
【0091】
図14に示される真空チャンバ41と、コイル42と、フェライトコア45とは、
図11に示されるものと同一である。詳細な構成は省略する。
【0092】
図15及び図16は、実施の形態5におけるプラズマ発生条件及びプラズマ発生中の物理量の一例である。
【0093】
図
16の(a)は、インバータ回路(電流源)に入力する直流電圧VDC及び直流電流IDCの条件、インバータ回路(電流源)が出力する交流電流の周波数f、有効電力P、真空チャンバ41内の圧力及びガス流量を示す。図
16の(b)〜(e)は、熱プラズマが発生しているときの電源応答及び温度の時間変化の一例である。具体的には、(b)コイル42に印加された電圧Vinv及び電流Iinv、(c)コイル42に印加された電圧の実効値Vrms及び電流の実効値Irms、(d)有効電力P、及び、(e)温度[K]である。図
16に示されるように、本実施の形態に係るプラズマ発生装置は、1.9kWの出力で5000Kの熱プラズマを発生及び維持できることが確認される。
【0094】
このように構成することにより、コイルと真空チャンバとが離れた位置に配置される場合にも、コイルが発生させる磁界をフェライトコアにより真空チャンバ内に伝えることができ、真空チャンバ内に熱プラズマを発生させることができる。よって、コイルを真空チャンバと離れた位置に配置する場合にも、真空チャンバ内に安定的に熱プラズマを発生させることができる。また、フェライトコアは廉価に入手することができ、また、容易に加工することができるので、本実施の形態に係るプラズマ発生装置の製造コストは、実施の形態1に係るプラズマ発生装置の製造コストと同等となる。すなわち、本実施の形態に係るプラズマ発生装置によれば、製造コストを大幅に増加させることなく、コイルを真空チャンバと離れた位置に配置することができる。
【0095】
以上のように、本発明の一態様に係るプラズマ発生装置によれば、真空チャンバがコイルから離れた位置に配置される場合において、コイルの内部に発生する磁界をフェライトコアによって真空チャンバの近傍へ伝えることができる。そして、フェライトコアにより真空チャンバの近傍に伝えられた磁界により、真空チャンバ内に熱プラズマを発生させることができる。よって、真空チャンバがコイルから離れた位置に配置される場合においても、当該プラズマ発生装置は、熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0096】
また、フェライトコアによりコイルの内部に発生する磁界を真空チャンバの近傍に伝えることで、真空チャンバの厚さ方向に一様な磁界を集中して発生させることができる。その結果、真空チャンバの厚さ方向の広い範囲に熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0097】
(実施の形態6)
実施の形態6において、コイルが発生させる磁界を集中させて真空チャンバ内に伝え、真空チャンバ内に熱プラズマを発生させることができるプラズマ発生装置の例を示す。
【0098】
図
17は、実施の形態6に係るプラズマ発生装置5の模式図である。
【0099】
図
17に示されるプラズマ発生装置5は、真空チャンバ51と、コイル52と、フェライトコア55を備える。真空チャンバ51とコイル52とは、それぞれ、実施の形態1における真空チャンバ11とコイル12と同等のものである。
【0100】
フェライトコア55は、実施の形態5のフェライトコア45と同様に端部が真空チャンバ51の近傍に配置され、一部にコイル52が巻回される。フェライトコア55が、フェライトコア45と異なる点は、真空チャンバ51の近傍に配置される端部の断面積が、コイル52が巻回される位置における断面積より小さい点である。つまり、フェライトコア55は、コイルが巻回される位置よりも真空チャンバ51の近傍の位置において細くなっている。
【0101】
このように構成することで、真空チャンバ51の一部の領域に対して、実施の形態5のフェライトコア45の場合よりも磁界を集中させて印加することができる。これにより、コイル52に印加する高周波電流57として、高周波電流47と等しい高周波電流を印加した場合に、より強い磁界を真空チャンバに印加することができる。また、コイル52により振幅の小さい高周波電流57を印加することで熱プラズマを発生させることもできる。
【0102】
以上のように、本発明の一態様に係るプラズマ発生装置によれば、コイルの内部に発生する磁界をフェライトコアにより真空チャンバの近傍に伝え、さらに、フェライトコアの近傍において磁界を集中させることができる。つまり、電流の出力が小さい場合であっても真空チャンバ内に局所的に強い磁界を発生させることができる。よって、当該プラズマ発生装置は、比較的小さい電力によって熱プラズマを安定的に発生させることができる。
【0103】
(実施の形態7)
実施の形態7において、コイルが発生させる磁界を分散させて真空チャンバの複数の箇所に磁界を発生させ、真空チャンバ内の広い空間に熱プラズマを発生させることができるプラズマ発生装置の例を示す。
【0104】
実施の形態7に係るプラズマ発生装置の模式図である。
【0105】
図
18に示されるプラズマ発生装置6は、真空チャンバ61と、コイル62と、フェライトコア65とを備える。真空チャンバ61は、真空チャンバ11よりz方向に幅広な形状である。なお、真空チャンバ61は、真空チャンバ11よりy方向に幅広な形状であってもよい。フェライトコア65は、真空チャンバを挟むように互いに対向するように配置される3組(6個)の突起部(65a、65b、65c、65d、65e及び65f)を有する。
【0106】
このように構成することで、コイル62が生じさせる磁界を、真空チャンバ61の複数の箇所に集中させて印加することができる。その結果、真空チャンバ61内において、z方向の広い範囲において熱プラズマ68を発生させることができる。
【0107】
なお、本実施の形態において、真空チャンバとして石英管を用いる例を示したが、真空チャンバの材料は石英管に限られない。石英管の他に、例えば、強度及び耐熱衝撃性のあるセラミック(例えば、Si
3O
4)、アルミナを用いることも可能である。
【0108】
以上、本発明のプラズマ発生装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。