特許第5959035号(P5959035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アグリクラスターの特許一覧

<>
  • 特許5959035-熱交換システム 図000002
  • 特許5959035-熱交換システム 図000003
  • 特許5959035-熱交換システム 図000004
  • 特許5959035-熱交換システム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5959035
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   F24J 3/08 20060101AFI20160719BHJP
   F25B 30/06 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F24J3/08
   F25B30/06 T
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-257707(P2015-257707)
(22)【出願日】2015年12月29日
【審査請求日】2015年12月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514081427
【氏名又は名称】株式会社アグリクラスター
(74)【代理人】
【識別番号】100160990
【弁理士】
【氏名又は名称】亀崎 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】福宮 健司
(72)【発明者】
【氏名】福宮 淳司
(72)【発明者】
【氏名】松澤 市太郎
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−021621(JP,A)
【文献】 特開2015−152236(JP,A)
【文献】 特開2009−264721(JP,A)
【文献】 特開2005−207718(JP,A)
【文献】 特許第5067956(JP,B2)
【文献】 特許第5690960(JP,B2)
【文献】 特開2015−218935(JP,A)
【文献】 特開2009−109072(JP,A)
【文献】 特開2013−181676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 3/08
F25B 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯水層に達する深井戸と、
前記深井戸から地下水をくみ上げる揚水手段と、
前記深井戸と比較して深度が小さい穴であって、前記揚水手段によって前記深井戸からくみ上げられた地下水を蓄え、蓄えた地下水の水位が前記深井戸の自然水位と比較して高位となる貯水穴と、
地上のヒートポンプから前記貯水穴の内部に引き込まれて下方に向けて通されると共に、上方に折り返して前記貯水穴の外部に引き出され、前記ヒートポンプから送り出される液体を循環させる循環管と、
前記揚水手段によって前記深井戸からくみ上げられた地下水を、前記貯水穴の相対的に深い位置に注ぐ注水手段と、
前記貯水穴内の地下水を、前記貯水穴の相対的に浅い位置から排出することで、前記貯水穴内に下方から上方に向けた対流を生じさせる排水手段と、
前記揚水手段によって前記深井戸からくみ上げられた地下水を、前記貯水穴の相対的に浅い位置に注ぐ第2注水手段と、
前記貯水穴内の地下水を、前記貯水穴の相対的に深い位置からくみ上げることで、前記貯水穴内に上方から下方に向けた対流を生じさせる第2排水手段と、
前記ヒートポンプが温熱を利用する場合に前記注水手段及び前記排水手段を機能させる一方で、前記ヒートポンプが冷熱を利用する場合に前記第2注水手段及び前記第2排水手段を機能させる制御手段と、を備え、
前記貯水穴内の地下水と、前記循環管を流れる液体と、の間で熱を移動させることを特徴とする
熱交換システム。
【請求項2】
前記排水手段として、
前記貯水穴からオーバーフローした地下水が自然に流れる排水流路と、
前記貯水穴内の地下水をくみ上げる排水ポンプと、を備えていることを特徴とする
請求項に記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記貯水穴は、井戸であることを特徴とする
請求項1又は2に記載の熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水を利用した熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原油価格の高騰やCO2削減に対する意識の高まりにより、ランニングコストが安くクリーンエネルギーである地中熱を利用したヒートポンプ(以下、地中熱ヒートポンプという。)が開発され、市場に導入されつつある。
【0003】
特許文献1及び2に開示されている地中熱ヒートポンプは、井戸に建て込んだUチューブに水などの液体を流し、井戸内の地下水とUチューブを流れる液体との間で熱のやり取りをすることで、地中熱を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5067956号公報
【特許文献2】特許第5690960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多量の地下水が消雪用としてくみ上げられる地域(例えば、新潟県長岡市)では、自然水位が低下するので、上述の地中熱ヒートポンプの場合、機能させることができない恐れがある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、自然水位の高低とは無関係に地中熱ヒートポンプを機能させることができる熱交換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、帯水層に達する深井戸と、前記深井戸から地下水をくみ上げる揚水手段と、前記深井戸と比較して深度が小さい穴であって、前記揚水手段によって前記深井戸からくみ上げられた地下水を蓄え、蓄えた地下水の水位が前記深井戸の自然水位と比較して高位となる貯留穴と、地上のヒートポンプから前記貯留穴の内部に引き込まれて下方に向けて通されると共に、上方に折り返して前記貯留穴の外部に引き出され、前記ヒートポンプから送り出される液体を循環させる循環管と、前記揚水手段によって前記深井戸からくみ上げられた地下水を、前記貯水穴の相対的に深い位置に注ぐ注水手段と、前記貯水穴内の地下水を、前記貯水穴の相対的に浅い位置から排出することで、前記貯水穴内に下方から上方に向けた対流を生じさせる排水手段と、前記揚水手段によって前記深井戸からくみ上げられた地下水を、前記貯水穴の相対的に浅い位置に注ぐ第2注水手段と、前記貯水穴内の地下水を、前記貯水穴の相対的に深い位置からくみ上げることで、前記貯水穴内に上方から下方に向けた対流を生じさせる第2排水手段と、前記ヒートポンプが温熱を利用する場合に前記注水手段及び前記排水手段を機能させる一方で、前記ヒートポンプが冷熱を利用する場合に前記第2注水手段及び前記第2排水手段を機能させる制御手段と、を備え、前記貯留穴内の地下水と、前記循環管を流れる液体と、の間で熱を移動させることを特徴とする熱交換システムである。
【0008】
本発明によれば、深井戸からくみ上げられた地下水を、深井戸と比較して深度が小さい貯留穴に蓄え、貯留穴内の地下水と、循環管を流れる液体と、の間で熱を移動させるので、深井戸の自然水位が低下している場合であっても、地中熱ヒートポンプを機能させることができる。
そして、上記発明によれば、貯留穴内に生じた対流により、貯留穴内の地下水と、循環管を流れる液体と、の間で熱を効率的に移動させることができる。
また、上記発明によれば、貯留穴の適切な箇所に注水することができると共に、貯留穴の適切な箇所から排水することができる。
さらに、上記発明によれば、ヒートポンプが温熱を利用する場合には、温熱を有する地下水を貯留穴の相対的に深い位置に注ぐと共に、貯留穴の相対的に浅い位置から地下水を排出することになり、貯留穴内に下方から上方に向けた対流を生じさせることができる。
一方、ヒートポンプが冷熱を利用する場合には、冷熱を有する地下水を貯留穴の相対的に浅い位置に注ぐと共に、貯留穴の相対的に深い位置から地下水をくみ上げることになり、貯留穴内に上方から下方に向けた対流を生じさせることができる。
このように、貯留穴内に生じた対流により、貯留穴内の地下水と、循環管を流れる液体と、の間で熱を効率的に移動させることができる。
【0011】
)本発明はまた、前記排水手段として、前記貯留穴からオーバーフローした地下水が自然に流れる排水流路と、前記貯留穴内の地下水をくみ上げる排水ポンプと、を備えていることを特徴とする上記()に記載の熱交換システムである。
【0012】
上記発明によれば、排水ポンプによって貯留穴内の地下水を積極的にくみ上げることで、注水手段によって貯留穴内へ注ぐ地下水の量を増やすことができる。これにより、貯留穴内の地下水と、循環管を流れる液体と、の間で移動させる熱の量を増やすことができる。
【0019】
)本発明はまた、前記貯水穴は、井戸であることを特徴とする上記(1)又は記載の熱交換システムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記(1)〜()に記載の熱交換システムによれば、自然水位の高低とは無関係に地中熱ヒートポンプを機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る熱交換システムの概略図である。
図2】制御盤の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る熱交換システムの概略図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る熱交換システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る熱交換システムについて詳細に説明する。
【0023】
[第1実施形態]まず、図1及び図2を用いて、第1実施形態に係る熱交換システム1の構成について説明する。図1は、熱交換システム1の概略図である。図2は、制御盤21の構成を示すブロック図である。なお、各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。
【0024】
図1に示す熱交換システム1は、地中熱を利用したヒートポンプ(地中熱ヒートポンプ)システムである。この熱交換システム1は、制御盤21によって統括的に制御される。すなわち、熱交換システム1は、制御盤21の制御下において動作して、その動作状況が制御盤21によって管理される。具体的に、熱交換システム1は、各所に配置された温度計の計測結果などに基づいて、各部の動作が所望する状況となるようにフィードバック制御される。
【0025】
このような熱交換システム1は、深井戸2と、揚水管(注水手段)3と、揚水ポンプ(揚水手段)4と、浅井戸5と、循環管6と、循環ポンプ7と、地下水温度計測管8と、循環液温度計9と、ヒートポンプ10と、排水流路(排水手段)11と、制御盤21等を備えている。
【0026】
深井戸2は、地中GRDの帯水層WBLに達する穴であり、例えば、当該穴に筒体(図示省略)が埋設されている。帯水層WBLは、地下水を含む地層である。帯水層WBLの上面は、一般的に、地上から100m程度の深さDに位置する。このため、筒体が埋設されている場合、当該筒体の長さは、帯水層WBLに達するように100m程度で適宜設定されている。なお、深井戸2は細く深いものであり、その内径は、120mm以上250mm以下が好ましい。
【0027】
深井戸2の内部には、帯水層WBLから地下水が浸入している。深井戸2の内部に浸入している地下水の自然水位h1は、一般的には地表面から10m以内の深さとなるが、地下水のくみ上げ等によって下がっているものとし、ここでは、例えば、地表面から80m程度とする。このような深井戸2には、揚水管3と揚水ポンプ4等が挿入されている。
【0028】
揚水管3は、その一端が深井戸2の内部に引き込まれていると共に、その他端が浅井戸5の内部に引き込まれている。この揚水管3は、揚水ポンプ4の動力によって深井戸2から取り込まれた地下水を、浅井戸5まで流す。
【0029】
揚水ポンプ4は、深井戸2の内部において、揚水管3の一端に取り付けられている。この揚水ポンプ4は、深井戸2から揚水管3に地下水を取り込んで、揚水管3内の地下水に動力を付与する。
【0030】
浅井戸5は、深井戸2と比較して深度が小さい貯水穴であり、例えば、当該穴に筒体(図示省略)が埋設されている。筒体が埋設されている場合、当該筒体の長さは、50m程度で適宜設定されている。このような浅井戸5には、揚水管3と、循環管6と、地下水温度計測管8等が挿入されている。なお、浅井戸5は細く(深井戸2と比較して深度が小さいが)深いものであり、その内径は、120mm以上250mm以下が好ましい。
【0031】
浅井戸5の内部には、揚水ポンプ4によって深井戸2からくみ上げられ揚水管3を介して注がれた地下水が蓄えられている。浅井戸5の内部に蓄えられている地下水の水位h2は、深井戸2の自然水位h1と比較して高位となり、例えば、地表面から10m以内の深さとなる。なお、水位h2は、排水流路11の口(符号省略)の高さと略一致する。
【0032】
循環管6は、地上のヒートポンプ10から浅井戸5の内部に引き込まれて下方に向けて通されていると共に、浅井戸5における下方で上方に折り返して浅井戸5の外部に引き出されている。この循環管6は、循環ポンプ7の動力によって、ヒートポンプ10から送り出される水などの液体を循環させる。これにより、浅井戸5内の地下水と、循環管6を流れる液体と、の間で熱の移動が可能になる。すなわち、熱交換システム1は、浅井戸5内の地下水が循環管6を流れる液体よりも低温の場合、循環管6を流れる液体を冷却する。一方、熱交換システム1は、浅井戸5内の地下水が循環管6を流れる液体よりも高温の場合、循環管6を流れる液体を加熱する。
【0033】
循環ポンプ7は、循環管6の途中に設けられ、地下水温度計測管8を構成する温度計8a及び循環液温度計9の計測結果などに基づいて動作する。これにより、循環ポンプ7は、循環管6内の液体に動力を付与することで、循環管6内の液体を循環させる。
【0034】
地下水温度計測管8は、浅井戸5内に挿入されている。この地下水温度計測管8は、管本体8aと、複数の温度計8bと、を備えている。複数の温度計8bは、互いに所定の間隔(例えば、10m間隔)をおいて管本体8aに取り付けられている。これら複数の温度計8bは、浅井戸5内の地下水の温度を計測し、その計測結果を信号にして出力し、その信号を制御盤21に入力する。
【0035】
循環液温度計9は、循環管6の途中に設けられている。この循環液温度計9は、浅井戸5内の地下水と熱の移動をする前の循環管6内の液体の温度を計測し、その計測結果を信号にして出力し、その信号を制御盤21に入力する。
【0036】
ヒートポンプ10は、循環管6等が接続されている。このヒートポンプ10は、循環管6を流れる液体の冷熱又は温熱をかき集め、かき集めた冷熱又は温熱を冷暖房や給湯などに利用可能にする。すなわち、ヒートポンプ10は、浅井戸5において循環管6内の液体に移動していた地下水の冷熱又は温熱を取り出して、冷暖房や給湯などに利用可能にする。
【0037】
排水流路11は、浅井戸5からオーバーフローした地下水が、重力等によって自然に流れる排水流路であり、浅井戸5からオーバーフローした地下水を河川や下水道に流す。
【0038】
揚水管3が、揚水ポンプ4によって深井戸2からくみ上げられた地下水を、浅井戸5の相対的に深い位置に注ぐ注水手段である一方、排水流路11は、浅井戸5内の地下水を、浅井戸5の相対的に浅い位置から排出することで、浅井戸5内に下方から上方に向けた対流を生じさせる排水手段である。
【0039】
図2に示すように、制御盤21は、データロガー22とCPU(Central Processing Unit)23とを有する。
【0040】
データロガー22は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記録媒体によって構成されている。このデータロガー22には、CPU23が各種処理を実行するための処理プログラムと各種処理を実行する際に用いられる各種データ(判定部25が判定に用いるデータを含む。)及び各種フラグが記憶されている。
【0041】
CPU23は、データロガー22に記憶された処理プログラムを実行することによって、通信部24、判定部25及び制御部26として機能する。
【0042】
通信部24は、熱交換システム1の各部との間で信号を送受信する。具体的に、通信部24は、地下水温度計測管8を構成する温度計8b、及び循環液温度計9等から出力された信号を、判定部25に転送する。そして、通信部24は、制御部26が出力する制御信号を、揚水ポンプ4、循環ポンプ7及びヒートポンプ10に転送する。
【0043】
判定部25は、地下水温度計測管8を構成する温度計8b、及び循環液温度計9等から出力された信号に基づいて各種判定を行うことで、揚水ポンプ4、循環ポンプ7及びヒートポンプ10等のそれぞれの運転状況を決定する。そして、判定部25は、判定結果を信号にして制御部26に出力する。
【0044】
制御部26は、揚水ポンプ4、循環ポンプ7及びヒートポンプ10等のそれぞれに対して、通信部24を介して、判定部25から出力された信号に基づく制御信号を出力し、それぞれの運転状況を制御する。
【0045】
次に、熱交換システム1における熱の流れを図1に基づいて説明する。
【0046】
まず、夏季などに冷房を行う場合を説明する。ヒートポンプ10は、循環管6を流れる液体から冷熱をかき集め、かき集めた冷熱を冷房に利用する。循環管6を流れる液体は、ヒートポンプ10において加熱される。ヒートポンプ10で加熱された循環管6内の液体は、浅井戸5内の地下水を加熱する際に冷却されて、ヒートポンプ10で再び利用可能となる。循環管6を流れる液体によって加熱された浅井戸5内の地下水は、深井戸2からの地下水の移動や、排水流路11による排水、あるいは、大気との接触等によって冷却される。
【0047】
続いて、冬季などに暖房や給湯を行う場合を説明する。ヒートポンプ10は、循環管6を流れる液体から温熱をかき集め、かき集めた温熱を暖房や給湯に利用する。循環管6を流れる液体は、ヒートポンプ10において冷却される。ヒートポンプ10で冷却された循環管6内の液体は、浅井戸5内の地下水を冷却する際に加熱されて、ヒートポンプ10で再び利用可能となる。循環管6を流れる液体によって冷却された浅井戸5内の地下水は、深井戸2からの地下水の移動や、排水流路11による排水、あるいは、大気との接触等によって加熱される。
【0048】
このように、熱交換システム1によれば、深井戸2からくみ上げられた地下水を、深井戸2と比較して深度が小さい浅井戸5に蓄え、浅井戸5内の地下水と、循環管6を流れる液体と、の間で熱を移動させるので、深井戸2の自然水位h1が低下している場合であっても、地中熱ヒートポンプを機能させることができる。すなわち、熱交換システム1によれば、自然水位h1の高低とは無関係に地中熱ヒートポンプを機能させることができる。
【0049】
また、深井戸2からくみ上げられた地下水を浅井戸5の相対的に深い位置に注ぐと共に、浅井戸5の相対的に浅い位置から地下水を排出することで、浅井戸内に下方から上方に向けた対流を生じさせるので、当該対流により、浅井戸5内の地下水と、循環管6を流れる液体と、の間で熱を効率的に移動させることができる。
【0050】
[第2実施形態]次に、図3を用いて、第2実施形態に係る熱交換システム31の構成について説明する。図3は、熱交換システム31の概略図である。
【0051】
なお、ここでは、第2実施形態に係る熱交換システム31の特徴部分のみを説明し、第1実施形態に係る熱交換システム1と同様の構成、作用及び効果についての説明は適宜省略する。この次に説明する第3実施形態についても同様に扱う。
【0052】
熱交換システム31は、第1実施形態に係る熱交換システム1(図1参照)の構成に加え、排水管32及び排水ポンプ(排水手段)33等を備えている。
【0053】
排水管32は、先端が浅井戸5の内部に引き込まれていると共に、基端が排水ポンプ33に接続されている。この排水管32は、排水ポンプ33の動力によって浅井戸5から地下水を取り込む。
【0054】
排水ポンプ33は、浅井戸5内の地下水をくみ上げる排水手段であり、排水管32の基端に接続されている。この排水ポンプ33は、浅井戸5内の地下水に動力を付与し、浅井戸5から排水管32に地下水を取り込む。これにより、水位h2は、排水流路11の口(符号省略)の高さよりも若干低くなる。
【0055】
揚水管3が、揚水ポンプ4によって深井戸2からくみ上げられた地下水を、浅井戸5の相対的に深い位置に注ぐ注水手段である一方、排水ポンプ33は、排水流路11と同様、排水管32を利用して、浅井戸5内の地下水を浅井戸5の相対的に浅い位置から排出することで、浅井戸5内に下方から上方に向けた対流を生じさせる。
【0056】
通信部24(図2参照)は、制御部26(図2参照)が出力する制御信号を、排水ポンプ33等に転送する。判定部25(図2参照)は、排水ポンプ33等のそれぞれの運転状況を決定する。制御部26は、排水ポンプ33等のそれぞれに対して、通信部24を介して、判定部25から出力された信号に基づいて制御信号を出力し、それぞれの運転状況を制御する。
【0057】
このように、熱交換システム31によれば、排水ポンプ33によって浅井戸5内の地下水を積極的にくみ上げることで、揚水管3によって浅井戸5内へ注ぐ地下水の量を増やすことができる。これにより、浅井戸5内の地下水と、循環管6を流れる液体と、の間で移動させる熱の量を増やすことができる。
【0058】
[第3実施形態]次に、図4を用いて、第3実施形態に係る熱交換システム41の構成について説明する。図4は、熱交換システム41の概略図である。
【0059】
熱交換システム41は、第2実施形態に係る熱交換システム31(図3参照)の構成に加え、注水管(第2注水手段)42と、切替弁43と、第2排水管44と、切替弁45等を備えている。
【0060】
注水管42は、その一端が切替弁43を介して揚水管3の途中に接続されていると共に、その他端が浅井戸5の内部に引き込まれている。この注水管42は、揚水ポンプ4の動力によって深井戸2から取り込まれた地下水を、浅井戸5まで流す。
【0061】
切替弁43は、揚水管3と注水管42との分岐点に設けられ、揚水管3に取り込まれた深井戸2の地下水の送り先を、そのまま揚水管(第1注水手段)3とするか、注水管(第2注水手段)42とするかで切り替える。
【0062】
第2排水管44は、先端が浅井戸5の内部に引き込まれていると共に、基端が切替弁45を介して排水管32の途中に接続されている。この第2排水管44は、排水ポンプ33の動力によって浅井戸5から地下水を取り込む。これにより、水位h2は、排水流路11の口(符号省略)の高さよりも若干低くなる。
【0063】
注水管42が、揚水ポンプ4によって深井戸2からくみ上げられた地下水を、浅井戸5の相対的に浅い位置に注ぐ第2注水手段である一方、排水ポンプ33は、第2排水管44を利用して、浅井戸5内の地下水を浅井戸5の相対的に深い位置からくみ上げることで、浅井戸5内に上方から下方に向けた対流を生じさせる第2排出手段である。
【0064】
通信部24(図2参照)は、制御部(制御手段)26(図2参照)が出力する制御信号を、切替弁43,45等に転送する。判定部25(図2参照)は、切替弁43,45等のそれぞれの運転状況を決定する。
【0065】
制御部26は、切替弁43,45等のそれぞれに対して、通信部24を介して、判定部25から出力された信号に基づいて制御信号を出力し、それぞれの運転状況を制御する。具体的に、制御部26は、ヒートポンプ10が温熱を利用する場合に切替弁43,45を切り替えて、注水手段である揚水管3を機能させると共に、排水管32を利用して、排水手段である排水ポンプ33を機能させる。そして、制御部26は、ヒートポンプ10が冷熱を利用する場合に切替弁43,45を切り替えて、第2注水手段である注水管42を機能させると共に、第2排水管44を利用して、第2排水手段である排水ポンプ33を機能させる。
【0066】
次に、熱交換システム31における熱の流れを図3に基づいて説明する。
【0067】
まず、冬季などに暖房や給湯を行う場合を説明する。温熱を有する地下水は、深井戸2から、第1注水手段である揚水管3を介して、浅井戸5内の相対的に深い位置に注がれる。そして、浅井戸5内の地下水は、排水管32を介して、浅井戸5内の相対的に浅い位置から排水される。浅井戸5内に注がれた温熱を有する地下水は、浅井戸5内に下方から上方に向けた対流を生じさせる。
【0068】
続いて、夏季などに冷房を行う場合を説明する。冷熱を有する地下水は、深井戸2から、第2注水手段である注水管42を介して、浅井戸5内の相対的に浅い位置に注がれる。そして、浅井戸5内の地下水は、第2排水管44を介して、浅井戸5内の相対的に深い位置から排水される。浅井戸5内に注がれた冷熱を有する地下水は、浅井戸5内に上方から下方に向けた対流を生じさせる。
【0069】
このように、熱交換システム41によれば、深井戸2からくみ上げられた地下水を、浅井戸5の相対的に深い位置に注ぐ揚水管3と、深井戸2からくみ上げられた地下水を、浅井戸5の相対的に浅い位置に注ぐ注水管42と、を備えているので、浅井戸5の適切な箇所に注水することができる。
【0070】
そして、浅井戸5内の地下水を、浅井戸5の相対的に浅い位置から排出する排水管32と、浅井戸5内の地下水を、浅井戸5の相対的に深い位置から排出する第2排水管44と、を備えているので、浅井戸5の適切な箇所から排水することができる。
【0071】
また、ヒートポンプ10が温熱を利用する場合(暖房時、給湯時)には、温熱を有する地下水を浅井戸5の相対的に深い位置に注ぐと共に、浅井戸5の相対的に浅い位置から地下水を排出することとなり、浅井戸5内に下方から上方に向けた対流を生じさせることができる。
【0072】
一方、ヒートポンプ10が冷熱を利用する場合(冷房時)には、冷熱を有する地下水を浅井戸5の相対的に浅い位置に注ぐと共に、浅井戸5の相対的に深い位置から地下水をくみ上げることとなり、浅井戸5内に上方から下方に向けた対流を生じさせることができる。
【0073】
このように、浅井戸5内に生じた対流により、浅井戸5内の地下水と、循環管6を流れる液体と、の間で熱を効率的に移動させることができる。
【0074】
本発明は、上記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。すなわち、各構成の位置、大きさ、長さ、数量、形状、材質、タイミングなどは適宜変更できる。
【0075】
すなわち、上記第3実施形態では、1台の揚水ポンプ3と、切替弁43と、を備えることで、注水手段である揚水管4と、第2注水手段である注水管42と、を実現しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、2台の揚水ポンプと、各揚水ポンプに一対一で対応した注水手段及び第2注水手段と、を備えるようにしたものであってもよい。
【0076】
また、上記第3実施形態では、1台の排水ポンプ33と、切替弁45と、を備えることで、1台の排水ポンプ33で排水手段と第2排水手段とを実現しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、2台の排水ポンプと、各排水ポンプに一対一で対応した2本の排水管と、を備えるようにしたものであってもよい。
【0077】
また、上記各実施形態では、深井戸2と比較して深度が小さい貯水穴として、浅井戸5の場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明における貯水穴は、貯水槽等であってもよく、深さ2m〜3m程度の浅いものであってもよいし、上面視で方形のものであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 熱交換システム
2 深井戸
3 揚水管(注水手段)
4 揚水ポンプ(揚水手段)
5 浅井戸(貯水穴、井戸)
6 循環管
7 循環ポンプ
8 地下水温度計測管
8a 管本体
8b 温度計
9 循環液温度計
10 ヒートポンプ
11 排水流路(排水手段)
21 制御盤
22 データロガー
23 CPU
24 通信部
25 判定部
26 制御部(制御手段)
31 熱交換システム
32 排水管
33 排水ポンプ(排水手段,第2排水手段)
41 熱交換システム
42 注水管(第2注水手段)
43 切替弁
44 第2排水管
45 切替弁
GRD 地中
WBL 帯水層
D 深さ
h1 自然水位
h2 水位
【要約】
【課題】自然水位の高低とは無関係に地中熱ヒートポンプを機能させる。
【解決手段】熱交換システム1は、帯水層WBLに達する深井戸2と、深井戸2から地下水をくみ上げる揚水ポンプ4と、深井戸2と比較して深度が小さい井戸であって、揚水ポンプ4によって深井戸2からくみ上げられた地下水を蓄え、蓄えた地下水の水位h2が深井戸2の自然水位h1と比較して高位となる浅井戸5と、地上のヒートポンプ10から浅井戸5の内部に引き込まれて下方に向けて通されると共に、上方に折り返して浅井戸5の外部に引き出され、ヒートポンプ10から送り出される液体を循環させる循環管6と、を備え、浅井戸5内の地下水と、循環管6を流れる液体と、の間で熱を移動させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4