【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、消泡剤は、鉱物油を主成分としたものが一般的であるところ、鉱物油の地下水系への流入や河川あるいは海域への滲出による環境負荷が懸念される。
【0008】
そのため、鉱物油を主成分とした消泡剤が添加された掘削土は、生態系に直接的な影響を及ぼす海洋投棄や、盛土や埋立土として再利用する際にこれらの成分が問題視され、産業廃棄物として扱わざるを得ない場合がある。
【0009】
これに対し、消泡剤を用いずに掘削土内の気泡を自然に消滅させれば、上述した問題は解決されるが、そのためには、掘削土を一定期間静置しておく必要があるところ、大量の掘削土が発生する気泡シールド工事では、残土処理のために広大な処理ヤードの確保が必要となり、都心部における対策としては経済性に欠ける。
【0010】
また、流動性が高い気泡混合土に固化剤を混合して、運搬性能を高めた上で処理する方法もあるが、処理費用が高価な上に場所を選ばずに処分できるものではないため、汎用性の高い対処方法とは言えない。
【0011】
上記のような点があるため、特に近年の大断面シールドのような場合、排出される掘削土の量が莫大であることから、素早く安価に気泡混合土の処理を行う方法が求められている。
【0012】
また、界面活性剤自体、最近では生分解性を有するものが用いられているものの、生分解には時間を要するため、掘削土内の界面活性剤が溶出しないようにすることで、地下水系や海域といった環境への負荷を可能な限り低減することが望ましい。特に、界面活性剤の濃度が一時的に高くなることが懸念される場合には、溶出防止の必要性はより高くなる。
【0013】
ここで、掘削土に界面活性剤が混入している場合、該掘削土の含水比をいったん高めることで界面活性剤を水に遊離させた上、その水を集水し、活性汚泥を利用した生物処理や酸化処理を行った後、掘削土の含水比を元に戻す手法も考えられるが、処理土量が多い場合には経済的な負担が大きく、現場で実施するのは難しい状況であった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、気泡シールド工事で生じた掘削土のように気泡によって流動性が高くなっている気泡土に対し、消泡剤や固化剤を用いることなくかつ速やかに流動性を低下させることが可能な気泡土の処理方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、気泡の元になっていた界面活性剤の溶出を防止することが可能な気泡土の処理方法を提供することを目的とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る気泡土の処理方法は請求項1に記載したように、気泡土を、該気泡土に対して相対移動する衝撃付与部材から衝撃が付与されるように該衝撃付与部材に接触させることにより、前記気泡土を破砕しつつ該気泡土中の気泡を破泡する
気泡土の処理方法であって、円筒状ケーシングの材軸に沿ってほぼ鉛直になるように配置されたシャフトの周面に前記衝撃付与部材をその基端側で取付け、前記シャフトをその材軸廻りに回転させつつ、その回転に伴う前記衝撃付与部材の旋回範囲に前記気泡土を自然落下させることで、該気泡土を前記衝撃付与部材に接触させるとともに、前記気泡土を自然落下させる際、下方から上方に向かう空気流を前記円筒状ケーシングの内部空間で発生させるものである。
【0018】
また、本発明に係る気泡土の処理方法は、前記衝撃付与部材を鎖部材で構成したものである。
【0019】
また、本発明に係る気泡土の処理方法は、前記シャフト、前記衝撃付与部材及び前記円筒状ケーシングからなる破砕破泡設備を土砂搬送方向に沿って列状に複数設置するとともに、それらの円筒状ケーシングのうち、上流側の円筒状ケーシングの下方に機首が位置し下流側の円筒状ケーシングの上方に尾端が位置するように該2つの円筒状ケーシングの間にベルトコンベヤを配置したものである。
【0020】
また、本発明に係る気泡土の処理方法は、前記衝撃付与部材による破砕破泡処理を行うとともに、該破砕破泡処理と同時に又は相前後して、その処理土に活性炭を添加するものである。
【0022】
また、本発明に係る気泡土の処理方法は、前記気泡土を気泡シールドのチャンバーから排出される掘削土としたものである。
【0023】
本発明に係る気泡土の処理方法においては、気泡土を衝撃付与部材に接触させることにより、該気泡土を破砕しつつ、該気泡土中の気泡を破泡しあるいは消泡する。
【0024】
このようにすると、気泡の消滅に伴い、気泡によるベアリング効果も消滅するとともに、粘性土の場合には、気泡土の破砕によって気泡土全体の表面積が増加するので、気泡の原材料である界面活性剤が土粒子に吸着保持されやすくなる。
【0025】
そのため、衝撃付与部材に接触させた後の処理土は、接触前の気泡土よりも流動性が大幅に低下することとなり、かくして搬送や積込みといった残土処理を容易に行うことが可能になる。
【0026】
衝撃付与部材は、気泡土に対して相対移動することにより、該気泡土に接触して衝撃を付与し得るもので
あって、材軸がほぼ鉛直になるようにかつ該材軸廻りに回転自在となるように保持されたシャフトの周面に衝撃付与部材をその基端側で取付け、シャフトを回転させつつ、その回転に伴う衝撃付与部材の旋回範囲に気泡土を自然落下させる
構成とする。
【0027】
衝撃付与部材は、シャフトの回転に伴って該シャフトの材軸回りに旋回することにより、自然落下する気泡土に衝撃を付与し得るものであれば、その構造や形状は任意であって、全体を剛体で形成する、全体を可撓性材料で形成する、複数の鋼製ピースを長尺状に連結するといった構成が可能であり、具体的には鋼製のロッド材で衝撃付与部材を構成したり、鋼製の鎖部材、すなわち鋼製チェーンで構成することが可能である。ちなみに、鋼製の鎖部材で構成した場合、鎖部材は、シャフト静止時には該シャフトから垂れ下がった状態であるが、シャフト回転時には該シャフトの材軸廻りに旋回し、その旋回力によって、気泡土を粉砕しつつ、該気泡土内の気泡を破泡する。
【0028】
シャフトは、円筒状ケーシングの内部空間であってその材軸に沿うように
配置する。このようにすれば、衝撃付与部材の旋回による気泡土への衝撃の際、該気泡土が周囲に飛散するのを防止することができる。
ここで、衝撃付与部材による破砕破泡処理において気泡土を自然落下させる際、下方から上方に向かう空気流を円筒状ケーシングの内部空間で発生させることにより、処理土の流動性がさらに低下することがわかった。
これは、衝撃付与部材による衝撃力に加えて、空気流による空気圧が気泡土に作用することにより、該気泡土中に存在していた気泡がより確実に破泡しあるいは消泡するからであると思われる。
【0029】
衝撃付与部材は、旋回の際、所定角度ごとに放射方向に延びるよう、複数設置することができるとともに、自然落下する気泡土が次々に衝撃力を受けることができるよう、鉛直方向に沿って複数段に配置することが可能である。
【0030】
気泡土は、円筒状ケーシングの上部開口から投入し、シャフトの回転によって衝撃付与部材を旋回させながら、円筒状ケーシング内を自然落下させ、しかる後、円筒状ケーシングの下方から気泡が破泡された処理土を回収すればよく、気泡土を連続的に投入するのか、間欠的に投入するのか、あるいは、ベルトコンベヤの尾端を円筒状ケーシングの上方に位置決めすることで気泡土を投入するのか、ホッパーを用いて円筒状ケーシングの上方から自然落下させるのかといった選択も任意である。
【0031】
ここで、シャフト、衝撃付与部材及び円筒状ケーシングからなる破砕破泡設備を土砂搬送方向に沿って列状に複数設置するとともに、それらの円筒状ケーシングのうち、上流側の円筒状ケーシングの下方に機首が位置し下流側の円筒状ケーシングの上方に尾端が位置するように該2つの円筒状ケーシングの間にベルトコンベヤを配置するようにすれば、気泡土を搬送しながら、その破砕破泡処理を並行してかつ繰り返し行うことが可能となる。
【0032】
上述したように、衝撃付与部材による破砕破泡処理によって処理土の流動性を低下させ、気泡が加わる前の状態に戻すことができるが、衝撃付与部材による破砕破泡処理を行うとともに、該破砕破泡処理と同時に又は相前後して、その処理土に活性炭を添加するようにすれば、処理土内の界面活性剤が活性炭に吸着保持されることにより、搬送や積込みといった残土処理がさらに容易になる。
【0033】
また、界面活性剤自体が処理土から溶出しなくなるため、海洋投棄した場合や盛土あるいは埋立土として再利用した場合において、界面活性剤の海域への滲出や地下水系への流入が確実に防止される。特に、生分解可能な界面活性剤を用いるようにすれば、溶出防止作用と相俟って、環境への影響をより確実に回避することが可能となる。
【0034】
界面活性剤は、活性炭によって吸着され得るものであれば、その種類は任意であり、例えば、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(以下、AOS)も含まれる。AOSは、魚の生息する水域に高濃度で溶け出すと、魚のエラに付着して呼吸困難を起こさせることで魚毒性を示す性質があるが、本発明によれば、活性炭に吸着されることでその溶出が防止されるため、生分解性が良好であることとも相俟って、埋立土としての再利用や海中投棄が可能となる。
【0035】
活性炭は、処理土に含まれる界面活性剤が確実に吸着保持されるように、原材料の種類や粉末や粒体といった形態を適宜選択すればよい。例えば、おがくず由来の粉末活性炭を用いることが可能であり、活性炭を粉末状とすることで、処理土内への均一な添加混合が容易となる。
【0038】
上述した衝撃付与部材による破砕破泡処理は、建築土木工事において発生するすべての気泡土に適用することが可能であるが、気泡シールド工事で発生する掘削土に適用するようにすれば、大量に発生する掘削土の運搬を効率よく行うことができるとともに、活性炭を添加する場合においては、界面活性剤の溶出が防止されるため、その大量の処理土を海中投棄したり、盛土や埋立土として再利用することも可能となる。