(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959042
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】複素アドミッタンス値による、呼吸気道の閉塞性および開放性無呼吸の識別
(51)【国際特許分類】
A61B 5/087 20060101AFI20160719BHJP
A61M 16/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
A61B5/08 200
A61M16/00 305A
【請求項の数】31
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-243787(P2011-243787)
(22)【出願日】2011年11月7日
(62)【分割の表示】特願2009-525858(P2009-525858)の分割
【原出願日】2007年8月30日
(65)【公開番号】特開2012-86025(P2012-86025A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2011年12月5日
【審判番号】不服2015-158(P2015-158/J1)
【審判請求日】2015年1月5日
(31)【優先権主張番号】60/823,973
(32)【優先日】2006年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/916,147
(32)【優先日】2007年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ResMed Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】バッシン, デーヴィッド, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オーツ, ジョン, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ハービー, ロナルド, ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ゴールディ, ベンリア
【合議体】
【審判長】
尾崎 淳史
【審判官】
▲高▼場 正光
【審判官】
渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】
特表平6−503484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の気道の開存性の程度を確定するための器具であって、
前記患者の気道への送達のために、既知の周波数および大きさの振動圧力波形にて気流を生成するようにフロージェネレータを制御し、
前記振動圧力波形に応じて、前記患者の気道の、流量に関する複素アドミッタンスを確定し、および、
該複素アドミッタンスの、開存性を示す複素数値の領域の中心からの偏差を計算することにより、前記開存性の程度を確定する制御装置手段を備え、
前記開存性の程度が、開放性と閉塞性との間の段階的な尺度であり、前記領域が、前記開存性を示す複素数値によって特徴付けられる、器具。
【請求項2】
前記複素アドミッタンスは、アドミッタンスの角度の値およびアドミッタンスのマグニチュードの値を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記複素アドミッタンスは、インピーダンスの値の実部の値および虚部の値に基づいて確定される、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記既知の周波数は1〜16Hzの間である、請求項1〜3の何れか一項に記載の器具。
【請求項5】
前記既知の周波数は4Hzである、請求項4に記載の器具。
【請求項6】
望ましい治療圧力で持続的気道陽圧の供給を提供するための器具であって、
持続的気道陽圧の供給を提供するように適合されたフロージェネレータと、
患者の顔に密閉して係合されるように構成されたマスクと、
前記フロージェネレータと前記マスクとの間に連結される空気送達チューブと、
前記マスクでの流量および圧力を確定するための手段と、
前記確定された流量および圧力に基づいて前記フロージェネレータの操作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、使用時に、以下のステップを行うことによって無呼吸の発生を検知し且つ無呼吸の間の前記患者の気道の開存性を確定するように構成されており、
前記以下のステップが、
使用時に前記患者の気道に送達するために前記マスクに既知の周波数の振動圧力波形を印加するように前記フロージェネレータを制御するステップと、
流量および圧力を確定するための前記手段からの測定値に基づいて複素アドミッタンスの値を計算することによって、前記患者の気道の、流量に関する患者のアドミッタンスを確定するステップと、
気道の開存性を確定するステップであって、前記複素アドミッタンスの値が所定の開存性領域内にある場合に前記気道が開存していると確定するステップと、
であり、
前記複素アドミッタンスの値が、前記既知の周波数の前記振動圧力波形によって誘導され、前記所定の開存性領域が開存性を示す複素数値を備え、前記領域が、前記開存性を示す複素数値によって特徴付けられる、器具。
【請求項7】
流量および圧力を確定するための前記手段は、少なくとも1つのセンサを用いて空気の流量と圧力とを測定することを含む、請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセンサが差圧センサである、請求項7に記載の器具。
【請求項9】
前記複素アドミッタンスの値がアドミッタンスの角度の値およびアドミッタンスのマグニチュードの値である、請求項6〜8の何れか一項に記載の器具。
【請求項10】
前記複素アドミッタンスの値が、インピーダンスの値の実部の値および虚部の値に基づいて確定される、請求項6〜8の何れか一項に記載の器具。
【請求項11】
前記既知の周波数が1〜16Hzの間である、請求項6〜10の何れか一項に記載の器具。
【請求項12】
前記既知の周波数が2〜8Hzの間である、請求項11に記載の器具。
【請求項13】
前記既知の周波数が4Hzである、請求項11に記載の器具。
【請求項14】
前記所定の開存性領域は、−1.5〜0.9ラジアンの間のアドミッタンスの値の角度を含む、請求項13に記載の器具。
【請求項15】
前記制御装置は、開存性気道の確定に応じて前記治療圧力を減少させるように更に構成されている、請求項6〜14の何れか一項に記載の器具。
【請求項16】
前記制御装置は、前記既知の周波数の前記振動圧力波形によって誘導された前記複素アドミッタンスの値が少なくとも1つの所定の閉塞性領域内にある場合に、前記気道を閉塞性として確定するステップであって、前記閉塞性領域が、閉塞された気道を示す複素数値によって特徴付けられる、ステップを更に行う、請求項6〜15の何れか一項に記載の器具。
【請求項17】
前記少なくとも1つの所定の閉塞性領域は、−2ラジアンよりも小さいアドミッタンスの値の角度を含む、請求項16に記載の器具。
【請求項18】
前記少なくとも1つの所定の閉塞性領域は、1.2ラジアンよりも大きいアドミッタンスの値の角度を含む、請求項16に記載の器具。
【請求項19】
前記制御装置は、閉塞性気道の確定に応じて治療圧力を増加させるように更に構成されている、請求項16〜18の何れか一項に記載の器具。
【請求項20】
前記制御装置は、前記既知の周波数の前記振動圧力波形によって誘導された前記複素アドミッタンスの値が所定の識別領域内にある場合に、前記気道開存性を未決定として確定するステップであって、前記識別領域が、未決定の気道状態を示す複素数値によって特徴付けられる、ステップを更に行う、請求項6〜19の何れか一項に記載の器具。
【請求項21】
前記所定の識別領域は、平均漏出流量の関数として確定される、請求項20に記載の器具。
【請求項22】
患者の気道の開存性を確定するための呼吸器具であって、
マスクを通して前記患者の気道に既知の周波数の振動圧力波形を印加するように構成されたフロージェネレータと、
流量を測定する流量測定手段と、
前記フロージェネレータでの圧力を測定する圧力測定手段と、
前記フロージェネレータを制御し、前記流量測定手段および前記圧力測定手段に接続された制御装置であって、
前記既知の周波数において、2ポートインピーダンスモデルから前記マスクにおける流量および圧力のAC値を計算し、
流量および圧力の前記AC値から、前記患者の気道の、流量に関する複素アドミッタンスを確定し、
前記複素アドミッタンスが、開存性を示す複素数値によって特徴付けられる領域内にあるかどうかを確定することによって気道の開存性を確定する、
ように構成された制御装置と、を備える呼吸器具。
【請求項23】
前記複素アドミッタンスは、流量および圧力の前記AC値の比から確定される、請求項22に記載の呼吸器具。
【請求項24】
前記制御装置は、前記複素アドミッタンスを、前記気道が開存していることが明らかな前記複素数値の範囲と比較することにより、前記気道の開存性を確定する、請求項22又は23に記載の呼吸器具。
【請求項25】
患者の気道の開存性の程度を確定するための呼吸器具であって、
前記開存性の程度が、開放性と閉塞性との間の段階的な尺度であり、
既知の周波数、大きさ、および位相の振動圧力波形を、患者の気道と連通しているマスクに印加するように構成されたフロージェネレータと、
前記マスクからの流量を測定する流量測定手段と、
前記フロージェネレータを制御し、前記流量測定手段に接続された制御装置であって、
前記既知の周波数の前記振動圧力波形によって誘導される、前記流量の容量分の大きさ、及び位相を確定し、
開存性を示す複素数値の領域内における複素アドミッタンスの位置として前記開存性の程度を確定する、
ように構成された制御装置と、を備え、
前記複素アドミッタンスが、前記流量の容量分の大きさ、及び位相から確定され、
前記領域が、前記開存性を示す複素数値によって特徴付けられる、呼吸器具。
【請求項26】
前記制御装置は、前記マスクにおける圧力波形の大きさを計算し、前記マスクにおける望ましい大きさを生成できるように前記フロージェネレータでの大きさを調整する、ように更に構成されている、請求項25に記載の呼吸器具。
【請求項27】
前記制御装置は、望ましい治療圧力で持続的気道陽圧を前記マスクに供給するように前記フロージェネレータを制御するように更に構成されている、請求項25又は26に記載の呼吸器具。
【請求項28】
前記制御装置は、無呼吸の発生を検知し、前記無呼吸の発生の間、前記振動圧力波形を印加するように前記フロージェネレータを制御するように更に構成されている、請求項25〜27の何れか一項に記載の呼吸器具。
【請求項29】
前記制御装置は、前記複素アドミッタンスの位置に基づいて開放性又は閉塞性の無呼吸として、無呼吸を識別するように更に構成されている、請求項28に記載の呼吸器具。
【請求項30】
前記制御装置は、前記無呼吸が閉塞性の無呼吸と識別された場合に治療圧力を増加させるように前記フロージェネレータを制御するように更に構成されている、請求項29に記載の呼吸器具。
【請求項31】
前記制御装置は、前記無呼吸が開放性の無呼吸と識別された場合に治療圧力を減少させるように前記フロージェネレータを制御するように更に構成されている、請求項29に記載の呼吸器具。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2006年8月30日出願の米国仮出願第60/823,973号、および2007年5月4日出願の米国仮出願第60/916,147号の優先権を主張し、それらの明細書および図面は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、開放性および閉塞性の無呼吸の識別(すなわち、呼吸の完全停止)に関する。開放性の無呼吸において、気道は開存している一方で、閉塞性の無呼吸においては、気道は完全に閉塞している。そのような無呼吸の識別は、ヒトの健康に悪影響を及ぼす呼吸状態の診断および治療に有利である。
【背景技術】
【0003】
本明細書に使用される場合、「気道」という表現は、気管を含む鼻孔と気管支との間の呼吸器系の解剖学的部位として理解されるものとする。「呼吸」という表現は、吸気(吸い込み)、続いて呼気(吐き出し)の連続的繰り返し事象として理解されるものとする。
【0004】
睡眠時無呼吸症候群において、ヒトは睡眠中に呼吸を停止する。10秒を超える空気流の停止は、「無呼吸」と呼ばれる。無呼吸は、血液酸素化の減少を引き起こし、したがって睡眠障害を引き起こす。無呼吸は、従来、呼吸努力がない中枢性、または呼吸努力がある閉塞性のいずれかに分類される。ある種の中枢性無呼吸では気道は開存しており、対象は、単に呼吸をしようとしないだけである。逆に、他の中枢性無呼吸およびすべての閉塞性無呼吸では、気道は開存していない(すなわち、閉塞している)。閉塞は通常、舌または軟口蓋のレベルで存在する。気道もまた、部分的に閉塞している(すなわち、狭窄または部分的に開存している)。これもまた、換気の減少(呼吸低下)、血液酸素化の低下、および睡眠障害を引き起こす。
【0005】
睡眠中の閉塞性呼吸の危険性は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)症候群との関連でよく知られている。無呼吸、呼吸低下、および重度のいびきは、睡眠障害の原因、および、ある種類の心臓病の危険因子として認識される。いびきまたは睡眠時無呼吸を伴わない、睡眠中の上気道抵抗の増加(上気道抵抗症候群)もまた、睡眠断片化および日中の眠気を引き起こす可能性がある。
【0006】
これらの症候群の一般的治療形態は、持続的気道陽圧法(CPAP)の実行である。簡単に述べると、CPAP治療は、通常4〜20cmH2Oの範囲の陽圧の提供により、気道の空気の副木としての機能を果たす。出口が、空気送達ホースを介して、患者の顔に密閉して係合される、鼻(または鼻および/もしくは口腔)マスクまで通る、電動ブロワまたは他のフロージェネレータ(FG)によって、空気が気道に供給される。排気ポートは、マスク近接の送達チューブ内に設けられる。バイレベルCPAPおよびオートCPAP等のより高度な形態のCPAPは、米国特許第5,148,802号、および第5,245,995号にそれぞれ記載されている。
【0007】
前述のように、中枢性無呼吸は、必ずしも気道の閉塞を伴うものではなく、非常に浅い睡眠中に、かつ上気道の状態とは無関係の様々な心臓、脳血管、および内分泌疾患を有する患者において発生する場合が多い。無呼吸が気道の閉塞を伴わずに発生するそれらの場合において、CPAP等の技術による疾患の治療における利点はほとんどない。自動CPAPシステムにおいて、CPAP空気圧副木を不適切に増加させることを回避するために、開放性気道を有する無呼吸を、閉塞性気道を有する無呼吸と正確に識別することが重要である。そのような不必要の圧力増加は、呼吸を反射的に阻害し、さらに、呼吸障害を悪化させる。
【0008】
米国特許第5,245,995号は、睡眠中の吸気および呼気の圧力測定により、いびきおよび異常呼吸のパターンの検出が可能であり、それにより、閉塞の前症状の出現または他の型の呼吸障害の早期指摘をもたらす方法について記載している。特に、理想的には、閉塞症状の出現または他の型の呼吸障害の発生を防止するために、呼吸パラメータのパターンが監視され、所定パターンの検出によって、CPAP圧力が上昇し、気道内圧の増加を提供する。
【0009】
強制振動法の従来における使用
米国特許第5,704,345号、発明の名称「Detection Of Apnea And Obstruction Of The Airway In The Respiratory System」は、既知の周波数の振動圧力波形が、患者の気道に印加され、該振動圧力波形により誘導される既知の周波数における空気流量信号成分の振幅が計算され、閾値と比較される強制振動法(FOT)による、気道開存性の測定を含む、閉塞性呼吸を示す異常呼吸パターンを検知および検出するための様々な技術について記載している。本発明は、第5,704,345号の特許に開示される方法および器具の改良形態である。
【0010】
気道開存性を確定するための約4Hzの周波数での圧力振動の使用は、ResMed AutoSet Clinical自動CPAP装置およびPII Plusで用いられた。FOTを使用したこれらの機械において、圧力は、マスクにおいて測定され、流量は、マスクの通気孔の患者側で、マスクに非常に近接して測定された。本発明は、少なくとも強制振動法の効果を分析するために、フロージェネレータで、またはフロージェネレータの近傍での圧力および流量の測定に利点を見出す。
【0011】
フロージェネレータと患者との間の空気通路に、中程度の漏出および中程度の「抵抗」が存在する場合、FOTの従来技術の実施は、閉塞性および開放性の無呼吸の識別においてそれほど正確ではない。例えば、3〜4cmH2O/(l/s)抵抗から成る受動的患者シミュレーションは、調整可能な漏出により、15l/minの漏出における開放性気道、および20l/minの漏出における閉塞性気道を示すであろう。求められているものは、開放性および閉塞性の無呼吸をより正確に識別するシステムである。具体的には、求められているものは、単なる非線形抵抗としての、空気通路の成分を扱うだけではなく、空気通路のインピーダンスの容量分および誘導分を考慮するアルゴリズムを利用するシステムである。
【発明の概要】
【0012】
2006年8月30日出願の、先出願された米国仮特許出願第60/823,973号において、呼吸気道の閉塞性および開放性無呼吸を識別するための効果的な方法は、患者の気道の複素アドミッタンスを確定し、複素アドミッタンスの絶対値を閾値と比較することによる、と開示された。その開示は、患者の圧力および流量を確定するために、患者回路を考慮し、各成分(患者回路、換気流、および漏出)をモデリングするアルゴリズムを用いた。具体的には、小信号ホース圧力降下が、2ポートネットワークとして、モデリングされ、そこでは、パラメータが平均流量の関数であった。本発明は、開放性および閉塞性の無呼吸の識別において、その複素量からのさらなる情報、すなわち、アドミッタンスの位相角、または複素量の実成分および虚数成分の両方を含むことによる、その技術の改良形態である実施形態を含む。具体的には、意外にも、アドミッタンスの位相角が考慮されると、データの分離が著しく優れることが、開放性および閉塞性の無呼吸で、すでに識別されたデータを分析することによって見出された。さらに、流動範囲にわたって患者回路のACインピーダンスを測定する必要なく、圧力降下をモデリングすることにより、これまでのシステムが単純化される。
【0013】
アドミッタンスの位相に対するアドミッタンスの大きさのグラフは、開放性または閉塞性気道を示すグラフのはっきりと区別できる領域を提供する。あるいは、アドミッタンスの実部は、アルガン図内の虚部に対して示され得て、この場合もやはり、開放性および閉塞性の無呼吸に関連している、図のはっきりと区別できる領域をもたらす。
【0014】
本発明は、無呼吸になりやすい患者を治療するための、改善された方法および器具を提供する。具体的には、本発明は、それぞれ開放性または閉塞性の無呼吸の特徴を示す、患者の複素アドミッタンスの値の組を識別することにより、無呼吸が閉塞性であるか、または開放性であるかを確定するための改善された方法に依存する。アドミッタンスは、例えば、流量インピーダンスの2ポートモデルとしてパラメータ化されるか、または実験的に導かれた抵抗定数および理論的に決定された流量のイナータンス定数を用いる理論モデルから、抵抗および慣性成分を確定する、器具の複素インピーダンスの逆数である。
【0015】
正弦波(例えば、4Hz)圧力振動が、空気通路への入口で印加される一方で、流量および圧力は、空気通路の入口および出口の両方で測定される。2ポートモデルまたはより理論的なホース圧力降下モデルに基づき、アドミッタンスは、患者の空気流のAC成分(換気流および漏出のAC成分を引くことにより得られる)、およびマスク圧力のAC成分から確定される。また、換気流は、次いで、2ポートモデルの場合、マスク圧力への改善された二次関係から、またはより理論的なホース圧力降下モデルの場合、線形化計算から確定される。漏出は、推定される漏れ係数から確定される。これらの量のAC成分の計算は、方形波で正規直交関数の組を近似するのではなく、入力振動数でフーリエ正弦および余弦成分を使用することにより、従来の推定よりも改善される。
【0016】
本発明は、患者の気道の開存性を確定するための方法を開示し、方法は、
患者の気道に既知の周波数の振動圧力波形を印加するステップと、
フロージェネレータにおいて、呼吸気流量および圧力を測定するステップと、
2ポートインピーダンスモデルから、マスクで流量および圧力のAC値を計算するステップと、
複素アドミッタンスが、開存性の特徴を示す領域内にあるかどうか確定することにより、気道が開存していることを確定するステップと、
を含む。
【0017】
アドミッタンスは、患者の流量とマスク圧力とのAC値の比から有利に確定され、また、複素アドミッタンスの値を、気道が開存していることが明らかな値の範囲と比較するステップがある。
【0018】
本発明は、患者の気道の開存性の程度を確定するための方法をさらに開示し、方法は、
患者の気道への入口で、既知の周波数、大きさ、および位相の振動圧力波形を印加するステップと、
患者からの呼吸気流量を測定するステップと、
該振動圧力波形により誘導される、該既知の周波数における該空気流の成分の大きさおよび位相を確定するステップと、
開存性を示す領域内の複素アドミッタンスの位置として、開存性の程度を確定するステップと、
を含む。
【0019】
上記の方法において、所定の波形を供給しない送達システムの影響を最小限に抑えるために、実際に生成される圧力波形が測定される。この技術において、最初に、フロージェネレータにおいて特定の振幅の波形を印加し、マスクで圧力波形の振幅を計算または観察し、次に、マスクで望ましい振幅を生成するために、フロージェネレータで振幅を調整する(典型的は増加させる)。システムが、これらの小信号に対してほぼ直線であると仮定すると、駆動波形をどれほど増加させるかに関する計算は、マスクでの実際の圧力の大きさに対する望ましい圧力の大きさの比の計算である。この方法の利点は、信号対ノイズ比の改善である。
【0020】
本発明は、大気圧を上回るように上昇させた選択可能な圧力で、継続的に患者の気道に呼吸可能な空気を制御可能に供給することにより、患者の気道へのCPAP治療の実行を制御するための方法をさらに開示し、方法は、
時間の関数として患者からの呼吸気流量を測定するステップと、
開存性の領域の中心から、該アドミッタンスの偏差を確定するステップと、
により、無呼吸が発生していると確定される場合、CPAP治療圧を開始するか、または増加させるステップと、
を含む。
【0021】
本発明は、患者の気道の開存性を決定するための器具をさらに開示し、器具は、
患者の気道に既知の周波数の振動圧力波形を印加するための手段と、
患者からの呼吸気流量を測定するための手段と、
アドミッタンスが、該振動圧力波形により誘導される該既知の周波数で、開存性領域内にある場合、気道が開存していることを確定するための手段と、
を備える。
【0022】
本発明は、患者の気道の開存性の程度を決定するための器具をさらに開示し、器具は、
患者の気道に、既知の周波数および振幅の振動圧力波形を印加するための手段と、
患者からの呼吸気流量の複素アドミッタンスを確定するための手段と、
該誘導されたアドミッタンスの、開存性領域の中心からの偏差として、開存性の程度を確定するための手段と、
を備える。
【0023】
本発明は、患者の気道の開放性および閉塞性無呼吸を識別する方法をさらに開示し、
(i)空気送達チューブと患者との接触面を介して、患者に呼吸装置を接続するステップと、
(ii)空気送達チューブを介して呼吸装置から患者に、患者への交流圧力波形を送達するステップと、
(iii)呼吸装置における空気の流量および圧力を測定するステップと、
(iv)空気送達チューブのインピーダンスの容量分を確定するステップと、
(v)該測定された空気の流量と圧力ならびに該容量分から、患者のアドミッタンスを確定するステップと、
(vi)該患者のアドミッタンスに基づき、気道の開放性および閉塞性無呼吸を識別するステップと、
を含む。
【0024】
本発明は、患者の気道の開放性および閉塞性無呼吸を識別する方法をさらに開示し、
(i)空気送達チューブと患者との接触面を介して、患者に呼吸装置を接続するステップと、
(ii)空気送達チューブを介して呼吸装置から患者に、患者への交流圧力波形を送達するステップと、
(iii)呼吸装置における空気の流量および圧力を測定するステップと、
(iv)空気送達チューブのインピーダンスの誘導分を確定するステップと、
(v)該測定された空気の流量と圧力ならびに該容量分から、患者のアドミッタンスを確定するステップと、
(vi)該患者のアドミッタンスに基づき、気道の開放性および閉塞性無呼吸を識別するステップと、
を含む。
【0025】
本発明の別の形態において、気道の開存性は、未定義、または「未決定」領域内にあることが確定される。本発明の別の態様は、開存性は、開放性から閉塞性への段階的な尺度を有すると定義されることである。別の態様は、無呼吸の識別領域は、複素平面内に画定され、領域は必ずしも隣接していないことである。さらなる改良点は、識別領域は、平均漏出レベルの関数であり得て、具体的には、「未決定」領域は、恐らく漏出の増加とともにその大きさが増大することである。
【0026】
本発明のさらなる形態は、特許請求の範囲に示される通りである。
【0027】
本発明の実施形態が、ここで添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】本発明の2ポート解析の電子的な類似形態を示す。
【
図4】詳細なアルゴリズムに基づいた、複素アドミッタンスの値を示す。
【
図5】単純化アルゴリズムに基づいた、複素アドミッタンスの値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するシステム
本発明は、全体として参照することによって組み込まれる、米国特許第5,704,345号に開示される実施形態の改良形態である。
図1は、本発明の一実施形態の基本的技法のフロー図である。本発明の第1のステップ10は、無呼吸が発生している間の、フロージェネレータ近傍の点での、経時的な呼吸流量および圧力の測定である。この情報は、その後の処理のための定性的測定値として使用されるアドミッタンス値を生成するために、ステップ12において処理される。ステップ14〜16は、時間窓内の複素アドミッタンス値を開存性領域と比較することにより、閉塞性、開放性、または混合性無呼吸が発生しているかどうかを検出する。
【0030】
無呼吸が進行中である場合、次に、無呼吸が開放性であるか、または閉塞性であるかの確定が続く。開放性気道を有する無呼吸が発生している場合、かつ必要に応じて、事象は、ステップ18で記録される。ステップ16の結果が、閉塞性気道を有する無呼吸が発生しているとする場合、CPAP治療圧の増加が、ステップ20で行われる。必要に応じて、ステップ20は、検出された異常を任意に記録することを含み得る。
【0031】
開放性気道を有する無呼吸の場合、無呼吸の発生を未然に防ぐか、または少なくとも軽減するために必要とされる、最小圧力を設定しようとする一般的方法論に従い、CPAP治療圧は減少される。ステップ22における減少量は、必要に応じて、ゼロであり得る。
【0032】
図1に表される技法は、患者のCPAP圧力が、適宜に経時的に制御される、臨床的実施形態の技法である。純診断的実施形態は、それぞれ、ステップ20およびステップ22における、CPAP圧力増加および圧力減少の動作を省略する以外は、同一の方法で機能する。
【0033】
図2は、
図1の技法を実施するための一実施形態に従った、臨床CPAP器具を図式で示す。マスク30は、鼻マスク、および/または顔マスクのいずれであっても、患者の顔に密閉して係合される。新鮮な空気または酸素富化空気は、可撓性管32を介してマスク30に入り、可撓性管32は、次いで、電動タービン(フロージェネレータ)34に接続され、そこに、空気入口36が提供される。CPAP治療として、マスク30に供給される空気の圧力を増加あるいは減少させるために、タービン用のモータ38は、モータサーボユニット40により制御される。マスク30はまた、管34とマスク30との接合部に近接する排気ポート42を含む。
【0034】
流動抵抗要素44は、フロージェネレータ34に隣接する。これは、差圧が存在するアイリス絞り形状を取ることが可能である。流動抵抗要素44のマスク側は、小口径管46を介して、圧力トランデューサ48と、差圧トランデューサ50の入力に接続される。流動抵抗要素44の反対側の圧力は、もう1つの小口径管52を介して、差圧トランデューサ50の他の入力に移動する。
【0035】
圧力トランデューサ48は、流動圧力に比例した電気信号を生成し、それは、増幅器56により増幅され、マルチプレクサ/ADCユニット58とモータサーボユニット40との両方に移動する。モータサーボユニット40に提供される信号は、静圧が、定値圧力に近似するように制御されることを確実にするための、フィードバックとしての機能を果たす。
【0036】
流動抵抗要素44にわたって検知される差圧は、差圧トランデューサ50から電気信号として出力され、もう1つの増幅器60により増幅される。したがって、増幅器56からの出力信号は、マスクまたは呼吸の空気流量の測定値を表す。制御装置62は、多くの処理機能を実行するようにプログラムされる。
【0037】
圧力および流量は、定常値およびAC値から成ると考えられ得て、後者は、4Hzの周波数を有する圧力への強制振動信号の影響を示す。以下において、「定常」量は、(a)例えば、フィルタリング操作により、振動成分が意図的に除去されている量、または(b)振動成分が除去されている量に部分的または完全に基づいた、計算結果、または(c)フロージェネレータで測定される圧力および流量等の瞬間量(したがって、振動成分を含む)に基づき計算される量のいずれか、およびシステムの無効分を部分的あるいは完全に無視し、それを、単に(場合により非線形の)抵抗システムとして扱う、空気通路および患者の漏出のモデルである。管32に沿った定常圧力損失は、チューブを通る流量、および例えばテーブル索引による、管の静圧流量特性の知識から計算される。次に、マスクにおける定常圧力は、チューブの圧力損失を引くことにより計算される。次に、チューブ32に沿った圧力損失は、圧力ジェネレータ34で望ましい瞬間圧力を得るために、マスクにおける望ましい設定圧力に加えられる。排気口42を通る流量は、例えばテーブル索引による、排気口の圧力流量特性からの、マスクにおける圧力から計算される。定常マスク流量は、管32を通る流量から、排気口42を通る流量を引くことにより計算される。次に、定常患者流量は、例えば、入力が瞬間マスク流量である、10秒の時定数を有する一次ローパスフィルタにより、CPAP装置において確定され得る推定定常漏出を、定常マスク流量から引くことにより計算される。
【0038】
制御装置62により実行される技法を、ここで
図2の器具を参照して説明する。患者呼吸流量が、非常に低い、またはゼロである場合(漏出があれば、患者が無呼吸である場合、マスクの流動は停止しないことに留意する)、外部から誘導された振動技術を使用することにより、気道開存性の確定(ステップ14〜16)が行われる。気道が開放性であるが、呼吸筋が弛緩している場合(すなわち、開放性気道を有する中枢性無呼吸)、外部に起因するマスク圧力の小さい変動が、肺を膨張および収縮させることにより、かつ肺内のガスを圧縮および減圧することにより、小さい呼吸気流を誘導する。反対に、気道が閉塞性である場合、空気流は誘導されない。これは、以下のように定量化される。
【0039】
アドミッタンスの閾値による無呼吸の識別
アドミッタンスYは、
Y=G+iB
により与えられ、Gは、コンダクタンスであり、Bは、サセプタンスである。
【0040】
気道が開放性であるかどうかを判断するために、患者のアドミッタンスYの複素数値は、値の領域と比較される。この閾値の値は、以下の考察に基づき選択され得る。
【0041】
マグニチュードよりもよりよい分類指標である角度に関する説明は、回路内の複素インピーダンスの相互作用に関連付けられ得る。漏出および換気流は、本質的に複素(j)成分がない非線形抵抗である。患者は、基本的に接地された、直列の抵抗およびコンプライアンス(キャパシタンス)である。ホース圧力降下もまた、流動のイナータンスの形で複素成分を有する。したがって、インピーダンス全体の大きさは、すべての成分(ホース、漏出、換気流、患者の気道)が実部を有するため、それらに影響される。しかしながら、虚数成分は、慣性ホース圧力降下と容量肺との間の相互作用である。それは、慣性と容量性リアクタンスとの相対的な「強度」を比較している。
【0042】
また、角度および振幅ではなく、インピーダンスの実部および虚部を使用することも可能である。これは、CPU負荷の減少という利点を有する。振幅の計算は、平方根を必要とし、角度の計算は、逆タンジェントを伴う。(これらの両方は、計算コストの低い、ルックアップテーブルを伴う技術により、必要とされる精度で容易に行われ得る。)実および虚の両方、または振幅および角度の両方を使用することにより、よりロバストな分類が得られる。開放性および閉塞性の値のグループ化は、はるかに明らかとなる。
【0043】
図4の値から確定される通り、可能な閾値の組は、
角度=ARG(患者_アドミッタンス)
if(角度<−2 OR 角度>1.2)
気道状態=閉塞性;
else if(角度<0.9 AND 角度>−1.5)
軌道状態=開放性;
else
気道状態=未定義;
end if
となり、角度は、ラジアン単位である。閾値に対する許容値は、
図4から確定される開放性および閉塞性の無呼吸を表す値の区別を可能にする任意の値であり得る。
【0044】
4Hzにおける患者抵抗も、気道の状態を示す。この抵抗は、上記の方程式におけるコンダクタンスの逆数ではない。4Hzにおける患者のインピーダンスは、
Z=R+iX
であり、Y=1/Zである。患者抵抗Rは、
R=Re(Z)=Re(1/Y)
により与えられる。
【0045】
代替実施形態では、Rが、|Y|よりも、気道の状態を特徴付けるために使用され得る。
【0046】
アドミッタンスの計算
患者のアドミッタンスは、方程式
【数1】
により計算され、分子は、AC患者流量のマグニチュードであり、実質的に患者流量の(時間に関する)微分の測定値である。分母は、マスク圧力の同一の微分である。
【0047】
換気流および漏出の補正
患者の空気流量は、マスクへの流入量から、換気口を通る流量と漏れ流量を引くことにより確定される。
【数2】
【0048】
平均換気流量は、測定中の平均マスク圧力、またはより好ましくは、測定中のマスク圧力の平方根の平均の平方(漏出の計算を行うためにも使用され得る)のいずれかから、確定される。マスク圧力自体は、空気通路のAC動作を無視して、従来の方法で計算される。
【0049】
AC換気流は、動作点の線形近似を使用して計算される。
【数3】
【0050】
マスクにおけるAC流量を確定するための、マスク圧力のモデリング
マスク圧力は、換気流の関数として換気口を通じた圧力降下を得る方程式において、係数k
1およびk
2を求めることにより確定される。
【数4】
したがって、特定のマスク圧力における換気流を計算するために、そのマスク圧力における換気流に対する二次方程式を解く。
【0051】
【数5】
は、先の方程式の微分により得られ、
【数6】
を与える。
【0052】
【数7】
であるため、小信号の近似は、
【数8】
を得て、そこから、
【数9】
が、妥当な近似として得られる。
【0053】
漏れ流量の計算
患者の空気流の計算を完全にするために、マスクへの流入からの漏れ流量を計算することも必要である。実際の漏出は、患者の4Hzのアドミッタンスが計算される間、計算される。典型的な漏れ係数推定は、少し前に起こったことに関連し、従来技術のAutoSet CSおよびAutoVPAP装置におけるように、
【数10】
から漏れ係数K
leakを推定し得て、上線は、測定期間にわたる平均値を示す。無呼吸中、漏出は、全非換気流量に等しく、
【数11】
呼吸中、漏出は、平均非換気流に(よい近似で)等しい。上記のK
leakの推定において、すべての量は、瞬間値に基づき、空気通路のAC特性を参照することなく計算され、空気通路を非線形抵抗器として扱う。
【0054】
DC(K
leakに対する上記の式に基づく)とACとの両方の、瞬間漏出に対するモデルは、
【数12】
であり、換気流と同様に、漏れ流量の(4Hzにおける)AC成分は、小信号近似
【数13】
を使用して得られ、上記の方程式を直接微分することにより、
【数14】
を計算し得て、
【数15】
を得る。
【0055】
【数16】
の平均は、
【数17】
または
【数18】
のいずれかであり得る。後者が好ましく(P
maskが定数ではない場合、それが、
【数19】
の平均値の不偏推定値を得るため、かつK
leakを推定するために、それをすでに計算したため)、
【数20】
を得る。
【0056】
AC値の確定
この説明を通して、一貫して参照されるAC値は、測定から、励振周波数における三角フーリエ成分として確定される。これは、正規直交関数の組として方形波を使用していた強制振動法の、従来技術の使用の改良形態である。
【0057】
すべてのAC量は、複素数として計算される。具体的には、マスクにおけるAC圧力および流量は、正弦および余弦関数のそれぞれを有する積和を使用して、測定中、瞬間圧力および流量の正弦および余弦成分を得ることにより計算され、それにより、成分係数c
sおよびc
cを得て、次に、AC値としてc
s+ic
cまたはc
c+ic
sのいずれかを記述する。(これらの2つの式のいずれも使用され、2つの式は、単に位相シフトの点で異なるが、1つの式は、初めから終わりまで一貫して使用される)。あるいは、正弦および余弦の最小二乗法等の、励振周波数における圧力および流量の正弦波成分の振幅および位相を推定する、他の標準的方法が使用され得る。
【0058】
明確には、
【数21】
を得、励振周波数は、T/2Bであり、Tは、正規化係数であり、積分は、正弦および余弦の離散的な標本値を使用した総和により置き換えられ得る。f(t)は、フーリエ係数が必要とされるいかなる関数でもある。
【0059】
すべての量は、t=0として象徴的に示される、6秒スライディングウィンドウ(「アドミッタンスウィンドウ」)上で確定される。アドミッタンス計算は、原則として、アルゴリズムのサンプリング周波数(例えば、50Hz)で行われ得るが、臨床目的では、これは必須ではなく、計算は、毎4Hzサイクルの終わりに、効果的に実行され得る。あるいは、2Hz、あるいは1Hz周波数においてでも、アドミッタンスの計算は、臨床目的では妥当である。
【0060】
モータ制御装置の遅延により、圧力波形の第1のサイクル(250ms)は、正弦波ではない場合があり、空気通路内の定常の設定に多少の遅延が出るため、データの最初の250msは、無視され得る。
【0061】
正弦および余弦値は、起動時に生成されるテーブル内に記憶されるか、またはソースコード内の定数として特定され得る。もちろん、合計のオーバーフローが発生しないと仮定して、乗算は、32ビットの結果を有する、16ビット*16ビットの固定小数点であり、かつこの方法の数値安定性において問題がない場合、十分な精度が提供される。したがって、計算コストは、比較的小さい。
【0062】
2ポートネットワーク上のインピーダンスのモデリング
マスクにおけるAC圧力およびマスクに入るAC流量の計算は、一実施形態では、特定の周波数における、システム内の流動の2ポート電気ネットワークへの類似から確定される。
【0063】
図3から、ルーチン回路解析は、
【数22】
を得て、もちろん、これらは、マスクにおける圧力、ならびにマスクに入る流量のそれぞれに対応する。明確には、
【数23】
である。
【0064】
インピーダンスZ
inoutおよびZ
outgndは、平均流量の関数とみなされる。これらのインピーダンスは、多くの平均流量レベルで、特定の空気通路に対して測定される(詳細は以下を参照)。アドミッタンスウィンドウ中の、またZ
inoutおよびZ
outgndのそれぞれに対する、フロージェネレータの総流量の平均が、測定されたインピーダンス間を線形補間してその平均流量レベルにおけるインピーダンスを確定するために使用される。
【0065】
入口および出口のAC流量およびAC圧力は、フーリエ係数の計算に関して上記に記載される標準的な積和方法を使用して、(ノイズを減少させるために)30秒間にわたって確定され、複素数値を得る。これらの値は、以下により2ポートパラメータを計算するために使用される(
図1を参照。その図中の電圧および電流は、以下における圧力および流量のそれぞれに対応する)。
【数24】
分母が非常に小さいか、またはゼロである場合、インピーダンスは、典型的な空気通路のインピーダンスとの関連で、特定の数値的に非常に大きい値を有するとみなされる。
【0066】
ホース圧力降下の理論モデル
ホース圧力降下は、マスク内圧とFG圧力との間の圧力差である。それは、マスクの前に配置されるすべての要素にわたる圧力損失である。これは、マフラ、加湿器、ABフィルタ、およびマスク接続ホースを含む。
【0067】
完全なホース圧力降下は、抵抗ホース圧力降下および慣性圧力降下で構成される。
【数25】
K
1、K
2=実験的に導かれた定数
K
L=理論的に決定された流量のイナータンス定数
Q
FG=FG流量
K
L=ρl/A
ρ=空気密度(1.19kg/m
3)
l=チューブ長(2または3m)
A=断面積(πd
2/4、d=0.019m)
【0068】
ResMed ActivaおよびSwiftマスクなどのマスクの場合、主要ホースとマスクとの間に別のチューブがある。これもまた、慣性定数において考慮されなければならない。
【0069】
平均ホース圧力降下は、抵抗部のみで構成される(上線は平均を示す)。
【数26】
K
1、K
2=実験的に導かれた定数
【数27】
【0070】
ACホース圧力降下を計算するために、ある種の線形化が必要である。抵抗および慣性成分は分離される。抵抗成分は、動作点に関して、上記の平均ホース圧力降下の式を線形化することにより得られる。
【数28】
【0071】
したがって、ACホース圧力降下は、AC流量に、周囲に微小振動が発生する位置における、ホースの非線形抵抗の勾配を乗じたものである。導出のために、振動は、ホース抵抗の勾配の変化と比較して、小さい振幅の振動であると仮定する。
【0072】
慣性成分は、FG流量を導関数で乗じる定数である。標準的な線形回路理論により、インダクタンスLは、インピーダンスsLを有し、周波数ωにおける正弦波信号に対して、jωLである。次に、慣性ホース圧力降下の成分は、
【数29】
となり、2つの組み合わせは、
【数30】
を得る。
【0073】
マスク圧力
マスク圧力は、FG圧力からホース圧力降下を減じたものである。
P
mask=P
FG−P
hosedrop
P
mask,AC=P
FG,AC−P
hosedrop,AC
【実施例】
【0074】
図4では、太線が、開放性無呼吸を表し、細線が、閉塞性無呼吸を表すグラフが表される。横軸が、アドミッタンスの絶対マグニチュードを表す一方で、縦軸は、複素アドミッタンスの位相を表す。図面から理解され得るように、1つは起点近傍、他方はy軸の最上値にある、2つのより細い曲線領域により表される閉塞性無呼吸と、グラフの中心の太い曲線により表される開放性無呼吸が完全に分離されている。実質的に、データのすべてをx軸に投影することにより、アドミッタンスの絶対値のみを見ると、細い(閉塞性無呼吸)曲線が、太い(開放性無呼吸)データと接触し、データの分離は、失われる。
【0075】
図4は、上記の式に従って計算された患者のアドミッタンスデータの、プロッティング結果を示す。x軸の値は、患者のアドミッタンスの平均絶対値である。y軸の値は、患者のアドミッタンスの位相角である。
図4から理解され得るように、閉塞性無呼吸および開放性無呼吸に対する値の完全な分離が見られる。
【0076】
図5は、先のアドミッタンスの計算の代わりに、複素アドミッタンスに対する値が、モデリングにおけるマスクまたは換気回路の任意の特定構成の詳細から、本質的に独立したモデルから確定される、患者のアドミッタンスのプロットの結果を示す。具体的には、
図5のデータは、単純漏出オリフィスモデル、P=(KQ)
2を使用することにより確定された。開放性および閉塞性の無呼吸は、複素アドミッタンスのグラフにおいて分離した領域をもたらすことが、
図5から理解され得る。
【0077】
適度な(近似された患者のアドミッタンス)アルゴリズム
第3のアルゴリズムは、患者回路を総称的にモデリングし、漏出および換気流を組み合わせることにより、患者のアドミッタンスを近似しようと試みる。
【0078】
患者回路は、上記の複素アルゴリズムと同様の方法でモデリングされるが、定数は、ABフィルタを有する2mホースに対する定数で固定される。
【0079】
漏出および換気流のモデリングは、非患者流量である1つのパラメータに組み合わされる。これは、
漏出+換気流
としてモデリングされる。
【0080】
漏出および換気流は、組み合わされ、以下の方程式を使用する際にモデリングされる。
【0081】
漏出オリフィスは、
【数31】
を使用して、ランタイムで近似され得る。
【0082】
次に、瞬間漏出は、
【数32】
を使用して計算される。
【0083】
小信号近似を使用すると、
【数33】
であると言うことができ、式中
【数34】
であり、K
leakに置換して、
【数35】
を得て、小さい平均P
maskの変化を扱っているので、
【数36】
で近似することができ、したがって、AC漏出は、
【数37】
となる。
【0084】
近似された患者流量
次に、患者流量は、
Q
patient,AC=Q
FD,AC−Q
leak,AC
である。
【0085】
Q
leakは、換気流と組み合わされる漏れ流量である(すべての非患者流量)。
【0086】
分類
近似アドミッタンスを使用して、気道状態を分類する多くの方法がある。アドミッタンスの角度対マグニチュードをプロットすると、角度のみにおけるよい分離を見出し得る。したがって、単純分類は、2つの閾値を有するものとなるが、純粋に角度の上のみである。しかしながら、角度の計算は、除算および逆タンジェントを伴い、さらなる計算を必要とする。代わりに、使用されるアドミッタンスの実部および虚部を有することが好ましいことが示唆される。
【0087】
閾値
よい分類精度を提供する最も単純な閾値は、単純な対角直線である。これらは、y>x+bおよびy<x+cの式である。この場合、アドミッタンスの虚部(y)対実部(x)をプロットすると、閉塞性は、y>x+bであり、開放性は、y<x+cである。浮動小数点アルゴリズムに基づき、定数に対する値は、b=0、c=−0.03であった。これは、何の誤分類も与えない。データ領域を分離させる他の任意の曲線が使用され得るが、線形分離は、閾値計算の複雑さを減少させ、その理由から好ましい。