特許第5959050号(P5959050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959050
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】道路閉鎖システム及び道路閉鎖装置
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/04 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   E01F13/04 A
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-113872(P2012-113872)
(22)【出願日】2012年5月17日
(65)【公開番号】特開2013-241730(P2013-241730A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年2月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成23年11月17日、阪神高速道路5号湾岸線路下敷地内(兵庫県西宮市甲子園浜1丁目)
(73)【特許権者】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508061549
【氏名又は名称】阪神高速技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509182065
【氏名又は名称】株式会社テクノ阪神
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】堀越 廣一
(72)【発明者】
【氏名】中野 順一
(72)【発明者】
【氏名】黒嵜 寿行
(72)【発明者】
【氏名】南 敏浩
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 実公平06−033199(JP,Y2)
【文献】 特開昭50−150242(JP,A)
【文献】 特開昭50−019230(JP,A)
【文献】 実開昭56−064500(JP,U)
【文献】 実開昭56−030217(JP,U)
【文献】 実開昭48−056986(JP,U)
【文献】 特開2008−071068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F13/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の車両の通行を止めるために道路を閉鎖する道路閉鎖システムであって、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両に対して道路の閉鎖を警告する警告装置と、
軟質の仮閉鎖手段を有し、車両が接触しても、上記仮閉鎖手段と車両が損傷することなく上記車両を通過可能に道路を閉鎖する仮閉鎖装置と、
仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段を有し、上記仮閉鎖装置が道路を閉鎖した後に道路を閉鎖する本閉鎖装置と、
道路の交通状況を撮影する撮影装置と、
上記撮影装置の撮影画像を表示する表示装置と、上記仮閉鎖装置を操作する第1操作部と、上記本閉鎖装置を操作する第2操作部とを有する操作装置と
を備えることを特徴とする道路閉鎖システム。
【請求項2】
請求項1に記載の道路閉鎖システムにおいて、
上記仮閉鎖手段が、可撓性のシート状に形成され、道路上に垂下されていることを特徴とする道路閉鎖システム。
【請求項3】
請求項1に記載の道路閉鎖システムにおいて、
上記仮閉鎖装置が、複数の短冊状のシート片が連なって上記仮閉鎖手段を形成し、上記仮閉鎖手段の複数のシート片を道路の幅方向に駆動して道路を開閉する駆動装置を有することを特徴とする道路閉鎖システム。
【請求項4】
請求項1に記載の道路閉鎖システムにおいて、
上記本閉鎖装置が、
道路上に横断方向に配置される本閉鎖手段としての棒部材と、
上記棒部材を駆動して道路を開閉する駆動装置と
を有することを特徴とする道路閉鎖システム。
【請求項5】
請求項1に記載の道路閉鎖システムにおいて、
上記撮影装置で撮影された画像に基づいて、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の有無を検知する車両検知装置と、
上記車両検知装置で検知された車両の速度を検出する速度検出装置と、
上記速度検出装置で検出された車両の速度に基づいて、上記仮閉鎖装置又は本閉鎖装置による道路の閉鎖の可否を判定する判定装置とを備えることを特徴とする道路閉鎖システム。
【請求項6】
道路の車両の通行を止めるために道路を閉鎖する道路閉鎖システムであって、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両に対して道路の閉鎖を警告する警告装置と、
軟質の仮閉鎖手段で道路を閉鎖する仮閉鎖装置と、
仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路を閉鎖する本閉鎖装置と、
道路の交通状況を撮影する撮影装置と、
上記撮影装置の撮影画像を表示する表示装置と、上記仮閉鎖装置を操作する第1操作部と、上記本閉鎖装置を操作する第2操作部とを有する操作装置と
を備え
上記仮閉鎖装置が、複数の短冊状のシート片が連なって上記仮閉鎖手段を形成し、上記仮閉鎖手段の複数のシート片を道路の幅方向に駆動して道路を開閉する駆動装置を有することを特徴とする道路閉鎖システム。
【請求項7】
道路の車両の通行を止めるために道路を閉鎖する道路閉鎖システムであって、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両に対して道路の閉鎖を警告する警告装置と、
軟質の仮閉鎖手段で道路を閉鎖する仮閉鎖装置と、
仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路を閉鎖する本閉鎖装置と、
道路の交通状況を撮影する撮影装置と、
上記撮影装置の撮影画像を表示する表示装置と、上記仮閉鎖装置を操作する第1操作部と、上記本閉鎖装置を操作する第2操作部とを有する操作装置と
を備え
上記本閉鎖装置が、
道路上に横断方向に配置される本閉鎖手段としての棒部材と、
上記棒部材を駆動して道路を開閉する駆動装置と
を有することを特徴とする道路閉鎖システム。
【請求項8】
道路の車両の通行を止めるために道路を閉鎖する道路閉鎖システムであって、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両に対して道路の閉鎖を警告する警告装置と、
軟質の仮閉鎖手段で道路を閉鎖する仮閉鎖装置と、
仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路を閉鎖する本閉鎖装置と、
道路の交通状況を撮影する撮影装置と、
上記撮影装置の撮影画像を表示する表示装置と、上記仮閉鎖装置を操作する第1操作部と、上記本閉鎖装置を操作する第2操作部とを有する操作装置と
上記撮影装置で撮影された画像に基づいて、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の有無を検知する車両検知装置と、
上記車両検知装置で検知された車両の速度を検出する速度検出装置と、
上記速度検出装置で検出された車両の速度に基づいて、上記仮閉鎖装置又は本閉鎖装置による道路の閉鎖の可否を判定する判定装置と
を備えることを特徴とする道路閉鎖システム。
【請求項9】
請求項5又は8に記載の道路閉鎖システムにおいて、
上記判定装置が、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の運転者が上記警告装置による警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する空走距離算出部と、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の制動が開始されてから停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する制動距離算出部と、
上記空走距離と上記制動距離との合計距離である判定距離と、上記警告装置による警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較し、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する判断部と、
上記判断部による判断結果を操作者に通知する結果通知部と
を有することを特徴とする道路閉鎖システム。
【請求項10】
請求項5又は8に記載の道路閉鎖システムを用いて道路の車両の通行を止めるために道路を閉鎖する道路閉鎖方法であって、
上記車両検知装置が、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両を検知する車両検知ステップと、
上記速度検出装置が、上記車両の速度を測定する速度測定ステップと、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する空走距離算出ステップと、
上記判定装置が、上記車両の速度に基づいて、上記車両の制動が開始されてから停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する制動距離算出ステップと、
上記判定装置が、上記空走距離と上記制動距離との合計距離である判定距離と、上記警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較し、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する閉鎖判断ステップと、
上記判定装置が上記道路の閉鎖が可能であると判断した場合に、上記道路を閉鎖する閉鎖ステップと
を備えることを特徴とする道路閉鎖方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項5又は8に記載の道路閉鎖システムの判定装置として機能させるプログラムであって、
上記コンピュータを、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、上記車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する空走距離算出部と、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の制動が開始されてから停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する制動距離算出部と、
上記空走距離と上記制動距離との合計距離である判定距離と、上記車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較し、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する判断部と、
上記判断部による判断結果を通知する結果通知部と
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速道路の進入路等に適用され、道路の車両の通行を止めるために使用される道路閉鎖システム、道路閉鎖方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路では、車両の通行量や事故の発生等の交通状況に応じて、車両の流入を調整する必要がある。そこで、一般道路と高速道路を接続する進入路の入口に設置された門構にゲートを設置し、高速道路の状況に応じて上記ゲートを開閉することにより、進入路の閉鎖と開放を行っている。進入路に設置されるゲートは、路側に立設された回動軸回りにゲート本体を回動させて、このゲート本体を進入路の横断方向に配置するように形成されたものが一般的である。交通状況の変化に応じて進入路を閉鎖する場合、進入路の途中に設置されている料金所の係員が、進入路の入口のゲートに赴いて、ゲートを開閉駆動するゲート装置を作動させて、ゲートを閉鎖する閉鎖作業を行う。料金所に係員が駐在しない場合や、進入路に料金所が設けられていない場合は、高速道路を巡回する交通管理員が、ゲートに赴いて閉鎖作業を行う。
【0003】
上記進入路の閉鎖は、料金所の係員が閉鎖作業を行う場合、料金所から入口まで進入路の路側を歩行する必要があり、また、車両の進入が途切れるタイミングを計ってゲート装置を作動させる必要があるので、係員が危険に晒されたり、閉鎖作業のタイミングを誤って車両をゲートに接触させてしまうという問題がある。一方、巡回員が閉鎖作業を行う場合、巡回員が閉鎖の指示を受けてから巡回車両が進入路の入口に到着し、閉鎖作業を完了するまでに時間がかかるので、交通状況の変化に迅速に対応した進入路の閉鎖を行い難いという問題がある。
【0004】
ところで、従来、車両の通行路を閉鎖する装置としては、有料道路の料金所に設置される阻止装置がある(例えば、特許文献1参照)。この阻止装置は、料金所の車両通行路の左右両側に配置された2つの阻止機と、この阻止機に端部が連結され、水平位置と鉛直位置の間で回動駆動される2つの阻止棒を備える。この阻止装置は、通常時は、2つの阻止棒が車両通行路の両側から中央に向かって水平位置に保持され、車両通行路を閉鎖する。車両通行路を走行する車両が阻止棒の前で停止し、所定の手続を行うと、阻止機が2つの阻止棒を回動駆動して鉛直位置に保持し、車両通行路を開放する。開放された車両通行路を車両が通過すると、阻止機が2つの阻止棒を回動駆動して水平位置に保持し、車両通行路を閉鎖する。上記阻止装置は、気体を圧縮充填した柔軟な袋体で阻止棒を形成することにより、車両が阻止棒に衝突したとき、阻止棒の破損と車両の破損の両方を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−52523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の阻止機は、有料道路の料金所のように、車両に一時停止を求める場所に設置されるものであり、閉鎖状態の阻止棒に対して車両が停止しない場合には、阻止棒が車両の接触に伴って屈曲し、車両の通過を許容するように形成されている。すなわち、特許文献1の阻止機は、阻止棒で車両通行路を閉鎖しても、閉鎖状態が容易に破られるので、車両を確実に止めることが難しいという問題がある。したがって、特許文献1の阻止機は、確実に車両の進入を阻止する必要のある高速道路の進入路を閉鎖する用途には適用できない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、道路を閉鎖する係員の安全を確保すると共に車両の損傷を防止しながら、車両の通行を確実に止めることができ、道路を安全、迅速かつ確実に閉鎖できる道路閉鎖システム、道路閉鎖方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の道路閉鎖システムは、道路の車両の通行を止めるために道路を閉鎖する道路閉鎖システムであって、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両に対して道路の閉鎖を警告する警告装置と、
軟質の仮閉鎖手段で道路を閉鎖する仮閉鎖装置と、
仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路を閉鎖する本閉鎖装置と、
道路の交通状況を撮影する撮影装置と、
上記撮影装置の撮影画像を表示する表示装置と、上記仮閉鎖装置を操作する第1操作部と、上記本閉鎖装置を操作する第2操作部とを有する操作装置と
を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、警告装置により、道路を走行する車両に対して、道路が閉鎖される旨の警告が事前に行われる。一方、道路の交通状況が撮影装置で撮影され、この撮影装置の撮影画像が表示装置に表示される。表示装置に表示された撮影画像に基づき、操作者によって操作装置の第1操作部が操作される。これに応じて仮閉鎖装置が作動し、柔軟な仮閉鎖手段で道路が閉鎖される。この後、操作者により操作装置の第2操作部が操作され、これに応じて本閉鎖装置が作動し、仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路が閉鎖される。このように、上記表示装置及び操作装置の設置位置に存在する操作者により、表示装置に表示された撮影画像に基づいて操作装置が操作され、遠隔操作によって道路を閉鎖することができる。したがって、高速道路の進入路に設置された従来のゲートを閉鎖するときのように、ゲートに係員が赴く必要が無いので、道路を閉鎖する係員の安全を確保することができる。
【0010】
また、表示装置と共に設置された操作装置の操作により、仮閉鎖装置及び本閉鎖装置を作動させることができるので、従来のゲートを閉鎖するときのように、巡回員が巡回車両で進入路に赴く必要が無い。したがって、交通状況の変化に迅速に対応して仮閉鎖装置及び本閉鎖装置を作動させることができる。
【0011】
また、道路を走行する車両に対して警告装置で警告を行った後に、仮閉鎖装置の仮閉鎖手段で道路を閉鎖し、さらに、この後、本閉鎖装置の本閉鎖手段で道路を閉鎖するので、車両を確実に閉鎖位置の前方で停止させることができる。すなわち、道路が仮閉鎖手段で閉鎖されると、仮閉鎖手段が車両の運転者に確実に認識されるから、警告装置による警告の作用と併せて、車両を効果的に閉鎖位置の前方で停止させることができる。万一、警告装置による警告にもかかわらず、車両が閉鎖位置に突入しても、軟質の仮閉鎖手段で道路が閉鎖されているので、車両の損傷を防止できる。このように、仮閉鎖装置の軟質の仮閉鎖手段で、車両の通過を許容できる状態で道路を閉鎖すると共に、この仮閉鎖装置と警告装置で道路の閉鎖を認識させて車両を停止させた後、仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段を有する本閉鎖装置により、車両の通過を許容しない状態で道路を閉鎖する。したがって、衝突した場合に車両が損傷する可能性の高い本閉鎖手段への車両の衝突を防止しながら、道路を安全かつ確実に閉鎖することができる。
【0012】
上記構成において、上記警告装置としては、車両の運転者に対して視覚を通じて警告を行うものや、聴覚を通じて警告を行うものを採用することができる。視覚を通じて警告を行う警告装置としては、例えば、光を発する光源や、標識や、文字及び画像の表示装置等がある。聴覚を通じて警告を行う警告装置としては、例えば、道路周辺に設置された無線通信機と、車両に搭載された無線通信機との間で警告に関する情報を送受信し、受信した情報に基づいて、車両の無線通信機に接続された音声出力装置が警告を示す音声を出力するシステム等を採用することができる。
【0013】
また、上記仮閉鎖手段としては、可撓性を有して道路上に配置され、車両が接触しても破損しないと共に、車両を損傷せず、さらに、車両の搭乗者を負傷させることなく車両を通過させることができるものが好ましい。また、上記本閉鎖手段としては、上記仮閉鎖手段よりも可撓性が少なく、道路上に配置され、上記仮閉鎖装置よりも車両を阻止する効果の高いものが好ましい。
【0014】
上記構成において、上記撮影装置で道路の交通状況を撮影し、撮影画像を表示装置に表示したが、撮影装置に代えて、道路の閉鎖位置に接近する車両の有無を検知する車両検知装置を設置し、この車両検知装置の検知結果を、表示装置に表示してもよい。表示装置に、道路の閉鎖位置に接近する車両が無いことが表示され、これに応じて操作装置が操作者によって操作されることにより、車両の衝突を防止しながら仮閉鎖装置及び本閉鎖装置で道路を閉鎖することができる。また、この車両検知装置は、撮影装置と共に設置してもよく、例えば、撮影装置の撮影画像の画像処理により、道路の閉鎖位置に接近する車両の有無を検知してもよい。また、車両検知装置により、道路の閉鎖位置に接近する車両が有ることが検知された場合、第2操作部において本閉鎖装置で道路を閉鎖する操作が行われても、本閉鎖装置で道路を閉鎖させず、道路の閉鎖位置に接近する車両が無いと検知されるまで、仮閉鎖装置による閉鎖状態を保持するのが好ましい。
【0015】
本明細書において、閉鎖位置とは、仮閉鎖装置と本閉鎖装置が設置されて道路の閉鎖と開放が切り替えられる位置をいい、現実に閉鎖状態であるか、開放状態であるかは問わない。また、本明細書において、道路とは、閉鎖装置が設置された道路のほか、閉鎖装置が設置された道路に接続された道路をも含む。例えば、閉鎖装置が高速道路の進入口の先端に設置された場合、進入口に連なる一般道路も本発明の道路に該当する。
【0016】
一実施形態の道路閉鎖システムは、上記仮閉鎖手段が、可撓性のシート状に形成され、道路上に垂下されている。
【0017】
上記実施形態によれば、可撓性のシート状に形成された仮閉鎖手段を道路上に垂下することにより、道路が閉鎖状態であることを車両の運転者の視覚に訴えることができる。また、可撓性のシートを用いることにより、車両の通過を許容することができる上、車両が接触しても破損し難いと共に、接触した車両の損傷及び搭乗者の負傷を防止できる。また、シート状の仮閉鎖手段に、例えば通行止を表す文字や図又は標識等のような、道路の閉鎖に関する警告を表すことにより、車両の運転者に対して効果的に警告を行うことができる。
【0018】
一実施形態の道路閉鎖システムは、上記仮閉鎖装置が、複数の短冊状のシート片が連なって上記仮閉鎖手段を形成し、上記仮閉鎖手段の複数のシート片を道路の幅方向に駆動して道路を開閉する駆動装置を有する。
【0019】
上記実施形態によれば、複数の短冊状のシート片が連なって形成されたシート状の仮閉鎖手段は、車両が接触しても容易に互いに分離するので、破損し難いと共に、接触した車両の損傷を防止できる。また、複数の短冊状のシート片が連なって形成された仮閉鎖手段は、駆動装置によって容易に開閉できる。また、道路を開放するときは、複数の短冊状のシート片を表裏が接するように重ねて、仮閉鎖手段をコンパクトに纏めることができる。
【0020】
一実施形態の道路閉鎖システムは、上記本閉鎖装置が、
道路上に横断方向に配置される本閉鎖手段としての棒部材と、
上記棒部材を駆動して道路を開閉する駆動装置と
を有する。
【0021】
上記実施形態によれば、棒部材を駆動装置で駆動し、この棒部材を道路上の横断方向に配置することにより、車両の通過を許容しないで、容易に道路を閉鎖することができる。一方、棒部材を駆動装置で駆動し、この棒部材を道路上の横断方向の配置位置から退去させることにより、道路を容易に開放できる。ここで、上記駆動装置は、棒部材を、道路の延在方向と直角を成す鉛直面の軌跡を描くように、道路の路面と平行を成して車両の通行を阻止する下方の阻止位置と、進入路の路面と直角をなして車両の通行を許容する上方の開放位置との間で駆動してもよい。また、上記駆動装置は、棒部材を、道路の路面と平行を成す水平面の軌跡を描くように、道路の延在方向と直角を成して車両の通行を阻止する阻止位置と、道路の延在方向と平行を成して車両の通行を許容する開放位置との間で駆動してもよい。また、上記駆動装置は、棒部材を、道路の延在方向と直角を成す鉛直面の軌跡を描くように、道路の路面に接近する下方の阻止位置と、道路の路面から遠ざかる上方の開放位置との間で駆動してもよい。
【0022】
一実施形態の道路閉鎖システムは、上記撮影装置で撮影された画像に基づいて、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の有無を検知する車両検知装置と、
上記車両検知装置で検知された車両の速度を検出する速度検出装置と、
上記速度検出装置で検出された車両の速度に基づいて、上記仮閉鎖装置又は本閉鎖装置による道路の閉鎖の可否を判定する判定装置とを備える。
【0023】
上記実施形態によれば、車両検知装置により、撮影装置で撮影された画像に基づいて、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の有無が検知される。速度検出装置により、上記車両検知装置で検知された車両の速度が検出される。判定装置により、上記車両の速度に基づいて、仮閉鎖装置又は本閉鎖装置による道路の閉鎖の可否が判定される。この判定装置の判定結果に応じて操作装置が操作されることにより、上記車両が仮閉鎖装置又は本閉鎖装置に衝突又は接触することを効果的に防止でき、したがって、道路を安全に閉鎖できる。ここで、上記速度検出装置及び判定装置は、専用装置で実現してもよく、プログラムをコンピュータで実行して実現してもよい。
【0024】
一実施形態の道路閉鎖システムは、
上記判定装置が、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の運転者が上記警告装置による警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する空走距離算出部と、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の制動が開始されてから停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する制動距離算出部と、
上記空走距離と上記制動距離との合計距離である判定距離と、上記警告装置による警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較し、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する判断部と、
上記判断部による判断結果を操作者に通知する結果通知部と
を有する。
【0025】
上記実施形態によれば、空走距離算出部により、車両の速度に基づいて、車両の運転者が警告装置による警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離が算出される。この空走距離は、運転者が警告を受けたときから、制動ペダルを踏む等の制動操作を行い、車両の制動が始まるまでにかかる反応時間に、上記車両の速度を乗じて算出される。上記反応時間は、運転者の人的要因による時間であって、運転者が警告を受けたときから警告を認識し、制動ペダルの踏圧等を開始するまでにかかる反射時間と、車両の機械的要因による時間であって、車両の制動ペダルの踏圧等がされて制動装置による制動が開始されるまでの制動反応時間との合計である。ここで、上記運転者が警告を受けたときとは、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識を視覚で認識したときをいう。また、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、運転者が警告を受けたときとは、音声を聴覚で認識したときをいう。続いて、制動距離算出部により、車両の速度に基づいて、車両の制動が開始されてから車両が停止するまでの間に車両が走行する制動距離が算出される。この制動距離は、制動が開始されるときの車両の速度のほか、道路の状態に基づいて算出するのが好ましい。上記空走距離と上記制動距離が算出されると、判断部により、空走距離と制動距離との合計距離である判定距離と、警告装置による警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とが比較される。この警告最大距離は、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識の設置位置から道路の閉鎖位置までの距離と、上記標識に記載された文字の大きさに基づいて算出された視認可能距離との合計の距離とすることができる。また、警告最大距離は、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置から道路の閉鎖位置までの距離とすることができる。上記音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置は、音声出力装置に接続された無線通信機が警告に関する情報を受信した位置に基づいて特定することができる。上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、判断部により、道路の閉鎖が可能であると判断される。一方、上記判定距離が上記警告最大距離よりも大きい場合は、判断部により、道路の閉鎖が不可であると判断される。この判断部による判断結果が、結果通知部により操作者に通知される。結果通知部による通知は、例えば、操作者が視認する表示装置に、判断結果を文字又は図で表示して行ってもよく、あるいは、操作者が聴認する音声出力装置に、判断結果を音声で出力して行ってもよい。本実施形態によれば、閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、道路の閉鎖位置までの区間で車両の運転者が警告を認識して車両を制動して車両が停止可能か否かを判断し、この判断結果を、操作装置の操作者に伝えることができる。したがって、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に応じて適切なタイミングで道路を閉鎖するように、操作者に操作装置を操作させることができる。その結果、車両が閉鎖位置までに停止できるにもかかわらず、閉鎖のタイミングを逃して閉鎖を実行できない不都合や、車両が閉鎖位置までに停止できないにもかかわらず、道路を閉鎖してしまって車両が閉鎖位置の閉鎖手段に衝突する不都合を防止できる。
【0026】
本発明の道路閉鎖方法は、道路の車両の通行を止めるために道路を閉鎖する道路閉鎖方法であって、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両を検知する車両検知ステップと、
上記車両の速度を測定する速度測定ステップと、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する空走距離算出ステップと、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の制動が開始されてから停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する制動距離算出ステップと、
上記空走距離と上記制動距離との合計距離である判定距離と、上記警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較し、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する閉鎖判断ステップと、
上記道路の閉鎖が可能であると判断した場合に、上記道路を閉鎖する閉鎖ステップと
を備えることを特徴としている。
【0027】
上記構成によれば、車両検知ステップで、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両を検知した後、速度測定ステップで、上記車両の速度を測定する。空走距離算出ステップで、車両の速度に基づいて、車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する。この空走距離は、運転者が警告を受けたときから、制動ペダルを踏む等の制動操作を行い、車両の制動が始まるまでにかかる反応時間に、上記車両の速度を乗じて算出する。上記反応時間は、運転者の人的要因による時間であって、運転者が警告を受けたときから警告を認識し、制動ペダルの踏圧等を開始するまでにかかる反射時間と、車両の機械的要因による時間であって、車両の制動ペダルの踏圧等がされて制動装置による制動が開始されるまでの制動反応時間との合計である。ここで、上記運転者が警告を受けたときとは、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識を視覚で認識したときをいう。また、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、運転者が警告を受けたときとは、音声を聴覚で認識したときをいう。続いて、制動距離算出ステップで、車両の速度に基づいて、車両の制動が開始されてから車両が停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する。この制動距離は、制動が開始されるときの車両の速度のほか、道路の状態に基づいて算出するのが好ましい。上記空走距離と上記制動距離が算出されると、閉鎖判断ステップで、空走距離と制動距離との合計距離である判定距離と、警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較する。この警告最大距離は、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識の設置位置から道路の閉鎖位置までの距離と、上記標識に記載された文字の大きさに基づいて算出された視認可能距離との合計の距離とすることができる。また、警告最大距離は、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置から道路の閉鎖位置までの距離とすることができる。上記音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置は、音声出力装置に接続された無線通信機が警告に関する情報を受信した位置に基づいて特定することができる。閉鎖判断ステップは、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する。一方、上記判定距離が上記警告最大距離よりも大きい場合は、道路の閉鎖が不可であると判断する。閉鎖判断ステップで道路の閉鎖が可能であると判断した場合に、閉鎖ステップで道路を閉鎖する。一方、道路の閉鎖が不可であると判断した場合に、道路の閉鎖を延期する。
【0028】
本発明の道路閉鎖方法によれば、閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、道路の閉鎖位置までに、車両の運転者が警告を認識した後に車両を制動操作して車両が停止可能かを正確に判断することができる。したがって、道路を走行する車両の速度に応じて、道路を閉鎖すべきか否かを正確に判断できるので、車両が閉鎖位置までに停止できるにもかかわらず、閉鎖のタイミングを逃して閉鎖を実行できない不都合や、車両が閉鎖位置までに停止できないにもかかわらず、道路を閉鎖してしまって車両が閉鎖位置の閉鎖手段に衝突する不都合を防止できる。
【0029】
一実施形態の道路閉鎖方法は、上記閉鎖ステップは、軟質の仮閉鎖手段で道路を閉鎖した後に、仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路を閉鎖する。
【0030】
上記実施形態によれば、軟質の仮閉鎖手段で道路を閉鎖して、仮閉鎖手段を車両の運転者に確実に認識させることにより、車両を効果的に閉鎖位置の前方で停止させることができる。ここで、仮閉鎖手段は柔軟であるので、万一、車両が閉鎖位置の前で停止せずに仮閉鎖手段に接触しても、仮閉鎖手段と車両が損傷することなく、かつ、搭乗者が負傷することなく、安全に車両の通過を許容することができる。このように、仮閉鎖手段によって車両の運転者に道路の閉鎖を確実に認識させた後に、仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路を閉鎖するので、衝突した場合に車両が損傷する可能性の高い本閉鎖手段への車両の衝突を防止しながら、道路を安全かつ確実に閉鎖することができる。
【0031】
本発明のプログラムは、コンピュータを、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、上記車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する空走距離算出部と、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の制動が開始されてから停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する制動距離算出部と、
上記空走距離と上記制動距離との合計距離である判定距離と、上記車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較し、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する判断部と、
上記判断部による判断結果を通知する結果通知部と
して機能させるためのプログラムである。
【0032】
上記構成のプログラムによれば、空走距離算出部として機能するコンピュータにより、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離が算出される。ここで、車両の速度は、車両の走行状況が撮影された画像に基づいて検出するのが好ましく、この場合、プログラムは、コンピュータを速度検出部として機能させるのが好ましい。上記空走距離は、運転者が警告を受けたときから、制動ペダルを踏む等の制動操作を行い、車両の制動が始まるまでにかかる反応時間に、上記車両の速度を乗じて算出される。上記反応時間は、運転者の人的要因による時間であって、運転者が警告を受けたときから警告を認識し、制動ペダルの踏圧等を開始するまでにかかる反射時間と、車両の機械的要因による時間であって、車両の制動ペダルの踏圧等がされて制動装置による制動が開始されるまでの制動反応時間との合計である。ここで、上記運転者が警告を受けたときとは、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識を視覚で認識したときをいう。また、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、運転者が警告を受けたときとは、音声を聴覚で認識したときをいう。続いて、制動距離算出部として機能するコンピュータにより、車両の速度に基づいて、車両の制動が開始されてから車両が停止するまでの間に車両が走行する制動距離が算出される。この制動距離は、制動が開始されるときの車両の速度のほか、道路の状態に基づいて算出するのが好ましい。上記空走距離と上記制動距離が算出されると、判断部として機能するコンピュータにより、空走距離と制動距離との合計距離である判定距離と、警告装置による警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とが比較される。この警告最大距離は、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識の設置位置から道路の閉鎖位置までの距離と、上記標識に記載された文字の大きさに基づいて算出された視認可能距離との合計の距離とすることができる。また、警告最大距離は、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置から道路の閉鎖位置までの距離とすることができる。上記音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置は、音声出力装置に接続された無線通信機が警告に関する情報を受信した位置に基づいて特定することができる。上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、判断部として機能するコンピュータにより、道路の閉鎖が可能であると判断される。一方、上記判定距離が上記警告最大距離よりも大きい場合に、判断部により、道路の閉鎖が不可であると判断される。この判断結果が、結果通知部として機能するコンピュータにより通知される。コンピュータにより通知される対象は、道路を閉鎖する道路閉鎖装置を操作する操作者であってもよく、道路閉鎖装置を駆動する駆動装置であってもよい。結果通知部として機能するコンピュータが操作者に判断結果を通知する場合、例えば、操作者が視認する表示装置に、判断結果を文字又は図で表示して行ってもよく、あるいは、操作者が聴認する音声出力装置に、判断結果を音声で出力して行ってもよい。結果通知部として機能するコンピュータが道路閉鎖装置の駆動装置に判断結果を通知する場合、道路の閉鎖が可能又は不可の旨を示す信号を駆動装置に入力する。駆動装置は、閉鎖可能の信号を受けた場合に道路閉鎖装置の閉鎖手段を閉じる側に駆動する一方、閉鎖不可の信号を受けた場合に道路閉鎖装置の閉鎖手段を開いたままに保持する。
【0033】
本発明のプログラムによれば、コンピュータにより、閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、道路の閉鎖位置までの区間で車両の運転者が警告を認識して車両を制動して車両が停止可能かを正確に判断し、この判断結果を、道路閉鎖装置の操作者や、道路閉鎖装置の駆動装置に伝えることができる。したがって、道路を走行する車両の速度に応じて適切なタイミングで道路を閉鎖させることができる。その結果、車両が閉鎖位置までに停止できるにもかかわらず、閉鎖のタイミングを逃して閉鎖を実行できない不都合や、車両が閉鎖位置までに停止できないにもかかわらず、道路を閉鎖してしまって車両が閉鎖位置の閉鎖手段に衝突する不都合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態の道路閉鎖装置を示す正面図である。
図2】道路閉鎖装置の主要部を示す正面図である。
図3】道路閉鎖装置を含む道路閉鎖システムを示すブロック図である。
図4】操作端末の構成を示すブロック図である。
図5】道路の閉鎖位置と走行車両の関係を模式的に示す側面図である。
図6】道路の閉鎖方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施形態の道路閉鎖装置を示す正面図であり、図2は、実施形態の道路閉鎖装置の主要部を示す正面図である。実施形態の道路閉鎖装置1は、高速道路の入路門構や、進入路の上部に架設された梁等に設置され、高速道路の交通状況に応じて、遠隔操作により、進入路の閉鎖と開放を行うものである。この道路閉鎖装置1は、後述する操作装置10に接続されて道路閉鎖システムSを構成する。この道路閉鎖装置1は、仮閉鎖装置2と、本閉鎖装置3と、警告装置としての情報表示パネル52及び点滅ランプ53と、撮影装置としてのビデオカメラ7を備える。
【0037】
仮閉鎖装置2は、軟質の仮閉鎖手段としての閉鎖カーテン22と、閉鎖カーテン22を支持する支持枠体21を有する。支持枠体21は、正面視において門型をなし、水平方向に延在して閉鎖カーテン22を吊り下げる梁部分21aと、鉛直方向に延在して進入路の両脇に立設されると共に上記梁部分21aの両端に連なる2つの柱部分21bを有する。閉鎖カーテン22は、複数のシート片としてのカーテン片23で形成されている。カーテン片23は、例えば、3mm厚の塩化ビニル製のシートで作製され、細長の矩形状を有し、上端縁の幅方向の中央に連結された吊り具によって支持枠体21の梁部分21aから垂下されている。支持枠体21の梁部分21aには、この梁部分21aの延在方向にカーテン片23を移動させる開閉装置が内蔵されている。上記開閉装置は、梁部分21a内に設置されたレールに沿って走行する2つの駆動ランナー25,25を有し、各駆動ランナー25が、閉鎖カーテン22の右側部分と左側部分を夫々駆動するように形成されている。なお、駆動ランナー25の設置個数は1つであってもよく、この場合は、閉鎖カーテン22の全部を左右いずれか一方に向かって駆動するように形成される。閉鎖カーテン22が閉じて道路を閉鎖するとき、複数のカーテン片23が幅方向に連なり、正面視において、支持枠体21の内側の略全部を塞ぐように配列される。閉鎖カーテン22には、進入路を閉鎖したときに車両に視認される警告表示24が設けられている。この警告表示24は、例えば、通行止を示す文字及び図であり、例えば、塗料やシールによって表されている。なお、警告表示24は、カッティングシートで表されてもよく、また、発光体や光反射体を用いて表されてもよい。この閉鎖カーテン22は、可撓性を有するカーテン片23で形成されることにより、車両が接触したときの破損を防止すると共に、車両の損傷と共に搭乗者の負傷を防止するようになっている。また、閉鎖カーテン22の警告表示24は、閉鎖カーテン22が進入路を閉鎖したときに、一般道路を走行する車両に、進入路が閉鎖されている旨の警告を行うようになっている。
【0038】
進入路を閉鎖した状態の閉鎖カーテン22を開くときは、幅方向に連なって配置された複数のカーテン片23が、駆動ランナー25で柱部分21bに向かって駆動される。カーテン片23は、駆動ランナー25の駆動力により、柱部分21bに向かって移動すると共に、上端縁の吊り具を通る鉛直軸回りに略90度回転する。これにより、複数のカーテン片23は、法線が柱部分21bを向き、表裏が重なり合った状態で柱部分21bの近傍に集められる。こうして、支持枠体21の内側から閉鎖カーテン22が退去し、進入路を開放する。進入路を開放した状態の閉鎖カーテン22を閉じるとき、柱部分21bの近傍に集められた複数のカーテン片23が、駆動ランナー25で支持枠体21の幅方向の中央に向かって駆動される。カーテン片23は、支持枠体21の中央に向かって駆動される力により、柱部分21bの近傍から引き出され、上端縁の吊り具を通る鉛直軸回りに略90度回転する。これにより、複数のカーテン片23は、法線が進入路の延在方向を向き、幅方向に連なる状態で支持枠体21の内側に配列されて、シート状の閉鎖カーテン22を形成する。上記閉鎖カーテン22のカーテン片23が、吊り具を通る鉛直軸を中心に回動する方向は、隣り合うカーテン片23毎に互いに反対回りに設定される。
【0039】
上記閉鎖カーテン22は、短冊状の複数のカーテン片23で形成する以外に、長辺と短辺の長さの差が比較的小さい2枚のカーテン片で形成し、これら2枚のカーテンを両側の柱部分21bに引き寄せて、又は、鉛直方向に捲き上げて進入路を開放してもよい。また、仮閉鎖手段は、閉鎖カーテン22で形成する以外に、圧縮空気が供給及び排出されて膨張及び収縮する可撓性の袋体で形成してもよい。この場合、仮閉鎖手段としての袋体と、袋体に圧縮空気を供給するコンプレッサと、袋体の給排気とコンプレッサを制御する制御部で閉鎖装置を構成する。上記袋体を進入路の側部に配置し、制御部による制御の下、袋体に圧縮空気を供給して膨張させて、膨張した袋体で進入路を塞ぐことにより、進入路を閉鎖する。圧縮空気が供給されて膨張した袋体で進入路を閉鎖することにより、車両が接触したときの破損を防止すると共に、車両の損傷を防止することができる。また、袋体に、交通標識の通行止を示す文字及び図等の警告表示を設けることにより、膨張した袋体で進入路を閉鎖したときに、進入路や一般道路を走行する車両に、進入路が閉鎖されている旨の警告を行うことができる。
【0040】
本閉鎖装置3は、本閉鎖手段としての棒部材32と、棒部材32の一端を回動可能に支持し、先端を上下方向に駆動する駆動装置31を有する。棒部材32は、駆動装置31により、進入路の延在方向と直角を成す鉛直面の軌跡を描くように、進入路の路面と平行を成して車両の通行を阻止する下方の阻止位置と、進入路の路面と直角を成して車両の通行を許容する上方の開放位置との間で駆動されるようになっている。棒部材32は、仮閉鎖装置2の閉鎖カーテン22よりも硬質の材料で形成され、進入路に向けて点滅する発光体33が設けられている。本閉鎖装置3は、棒部材32が駆動装置31で下方に駆動されると、棒部材32が進入路を横切ると共に路面と略平行である水平方向に延在するように配置され、進入路を閉鎖する。進入路を閉鎖した棒部材32が駆動装置31で先端が上方に駆動されると、棒部材32が駆動装置31の上に鉛直方向に延在するように配置され、進入路を開放する。本閉鎖装置3は、仮閉鎖装置2が進入路を閉鎖した後に、進入路を閉鎖するように作動する。発光体33は、駆動装置31が棒部材32を駆動するときから進入路の開放が行われるまで点滅する。これにより、本閉鎖装置3による進入路の閉鎖が行われていることを、車両の運転者に知らせるようになっている。なお、棒部材32には発光体33を設けなくてもよい。また、駆動装置31による棒部材32の駆動方向は、進入路の路面と平行を成す水平面の軌跡を描くように駆動されてもよい。この場合、駆動装置31は、棒部材32を、進入路の延在方向と直角を成して車両の通行を阻止する阻止位置と、進入路の延在方向と平行を成して車両の通行を許容する開放位置との間で駆動する。また、駆動装置31は、棒部材32を、進入路の延在方向と直角を成す鉛直面の軌跡を描くように、進入路の路面に接近する下方の阻止位置と、進入路の路面から遠ざかる上方の開放位置との間で駆動してもよい。
【0041】
仮閉鎖装置2の支持枠体21には、進入路が閉鎖状態又は開放状態であることを示す情報表示パネル52と、進入路が閉鎖したときに点滅する点滅ランプ53と、進入路の規制内容を示す標識装置6が設置されている。情報表示パネル52は、LEDを用いた表示パネルや、情報が記載された光透過幕を背面側から投光する表示幕装置等を用いて形成される。点滅ランプ53は、LEDを用いた高輝度のフラッシュライトで形成される。標識装置6は、交通標識の図が描かれた円形パネルが回転駆動されて表示が変更される可変型の標識装置である。この標識装置6は、背面側に投光ランプが設置され、複数の交通標識の図が描かれた光透過幕を巻き出して表示を変更する表示幕装置等を用いて形成されてもよい。
【0042】
ビデオカメラ7は、高所支持台50の上に設置され、一般道路から進入路に進入する車両を、一定距離にわたって撮影可能なように設置されている。このビデオカメラ7の撮影画像は、操作装置10と共に遠隔位置に設置された表示装置18に表示される。
【0043】
図3は、道路閉鎖装置1を含んで構成された道路閉鎖システムSを示すブロック図である。道路閉鎖システムSは、高速道路の進入路に設置された道路閉鎖装置1と、この道路閉鎖装置1から遠隔の位置に設置された操作装置10を有する。
【0044】
道路閉鎖装置1には、上記情報表示パネル52、点滅ランプ53及び標識装置6を制御する警告制御装置11と、上記仮閉鎖装置2を制御する仮閉鎖制御装置12と、上記本閉鎖装置3を制御する本閉鎖制御装置13が設けられている。上記警告制御装置11と、上記仮閉鎖制御装置12と、上記本閉鎖制御装置13と、上記ビデオカメラ7は、遠隔位置の操作装置10と通信を行うための通信装置15に接続されている。
【0045】
操作装置10は、道路閉鎖装置1の通信装置15と通信を行う通信装置16と、通信装置16に接続された操作端末17と、操作端末17に接続された表示装置18と、操作端末17に接続された入力装置19を有する。道路閉鎖装置1の通信装置15と、操作装置10の通信装置16は、IP−VPN(IP Virtual Private Network)等の専用有線網を介して通信を行う。なお、通信装置15,16は、専用無線網や、公衆有線又は無線網を介して通信を行ってもよい。操作端末17は、CPU、記憶装置、入出力装置及び通信モジュール等で構成された汎用的なコンピュータで形成され、道路閉鎖装置1の操作に関するプログラムをCPUで実行し、後述する各部の機能を実現するように構成されている。表示装置18は、液晶ディスプレイ等で形成され、操作に関する情報を表示すると共に、道路閉鎖装置1の通信装置15と操作装置10の通信装置16を経て受信したビデオカメラ7の撮影画像を表示する。入力装置19は、汎用的なキーボードで形成され、道路閉鎖装置1の操作に関する入力を行うようになっている。なお、操作端末17は、道路閉鎖装置1の操作を行うための専用回路を備える専用機で形成してもよく、入力装置19は、道路閉鎖装置1の操作を専ら行うための専用装置で形成してもよい。
【0046】
図4は、操作端末17の構成を示すブロック図である。操作端末17は、仮閉鎖指令部71、本閉鎖指令部72、警告指令部73及び閉鎖判定部74を有する。仮閉鎖指令部71は、操作者による入力装置19への入力に基づいて、仮閉鎖装置2の動作を指令する信号を生成する。本閉鎖指令部72は、操作者による入力装置19への入力に基づいて、本閉鎖装置3の動作を指令する信号を生成する。警告操作部73は、操作者による入力装置19への入力に基づいて、情報表示パネル52、点滅ランプ53及び標識装置6の動作を指令する信号を生成する。上記各信号は、通信装置16によって道路閉鎖装置1に送信される。閉鎖判定部74は、車両検知部80、速度検出装置又は速度検出部としての速度算出部75、空走距離算出部76、制動距離算出部77、判断部78及び結果通知部79を有する。閉鎖判定部74は、ビデオカメラ7が撮影した車両の速度に基づいて、この車両が道路閉鎖装置1に到達するまでに停止可能か否かを判断して、進入路の閉鎖の可否を判定する。なお、車両検知部80と速度算出部75は、操作端末17の閉鎖判定部74に設けなくてもよく、道路閉鎖装置1に設けてもよい。例えば、道路閉鎖装置1に、ビデオカメラ7の撮影画像を処理する画像処理部を設け、この画像処理部により、閉鎖位置に接近する車両の有無を検知すると共に、存在が検知された車両の速度を算出してもよい。
【0047】
図5は、閉鎖判定部74が、道路閉鎖装置1に到達するまでに停止可能か否かの判断を行う対象車両と、道路閉鎖装置1との位置関係を模式的に示した側面図である。図5において、P1は、情報表示パネル52を含む道路閉鎖装置1が設置された閉鎖位置であり、P2は、車両Cの運転者が、情報表示パネル52に表示される警告情報を視認可能な最も遠い最遠視認可能位置である。また、閉鎖位置P1から所定の距離にわたって、ビデオカメラ7による撮影ができない不検知帯D4が生じる。なお、不検知帯D4は、ビデオカメラを増設して解消してもよい。
【0048】
図6は、道路閉鎖装置1で進入路を閉鎖する方法を示すフローチャートである。以下、図6のフローチャートに沿って、道路閉鎖システムSで進入路を閉鎖する方法を説明する。
【0049】
まず、一般道路を走行する車両に対して、進入路の閉鎖に関する警告を開始する(ステップS1)。進入路の閉鎖に関する警告は、警告を行う旨の入力を操作者が入力装置19に行うことにより、開始される。操作者が入力装置19に警告開始の入力を行うと、警告指令部73が、警告の実行を指令する信号を生成し、この信号が通信装置16によって道路閉鎖装置1に送信される。上記信号は、道路閉鎖装置1の通信装置15を通じて警告制御装置11に送られて、警告制御装置11が、情報表示パネル52、点滅ランプ53及び標識装置6による警告を開始する。すなわち、警告制御装置11は、情報表示パネル52に通行止を表す文字を表示させ、点滅ランプ53の点滅を行い、標識装置6の表示を車両通行止の規制標識に変更する。
【0050】
情報表示パネル52等による警告を開始すると、その旨が表示装置18に表示され、この表示を視認した操作者が、仮閉鎖を開始する旨を入力装置19に入力し、仮閉鎖装置2による進入路の仮閉鎖を開始する(ステップS2)。仮閉鎖を開始する旨の入力を操作者が入力装置19に行うと、操作端末17の閉鎖判定部74が起動し、進入路の仮閉鎖が可能か否かの判断に関する一連の動作が開始される。
【0051】
閉鎖判定部74が起動すると、まず、速度算出部75がビデオカメラ7の撮影画像の画像処理を行い、道路閉鎖装置1に向かって走行する車両Cの速度を算出する。続いて、空走距離算出部76が、速度算出部75が算出した車両Cの速度に基づいて、情報表示パネル52の警告情報を車両の運転者が視認したときから、車両Cの制動が開始されるまでの間に車両Cが走行する空走距離d1を算出する。すなわち、運転者が情報表示パネル52を視認したときから、車両Cの制動ペダルを踏む等の制動操作を行って車両Cの制動が始まるまでにかかる反応時間に、速度算出部75が算出した速度を乗じて空走距離を算出する。空走距離d1は、次の式(1)に基づいて算出する。
d1=V×t・・・(1)
ここで、Vは、速度算出部75が算出した車両Cの速度であり、tは、運転者の反応時間である。反応時間tとしては、例えば、平成15年1月29日 神戸地方裁判所 平成13年(わ)第1198号判決文に示される0.7〜1.0秒の範囲内の値を採用することができる。
【0052】
続いて、制動距離算出部77が、車両Cの制動が開始されてから車両Cが停止するまでにかかる制動距離d2を算出する。制動距離d2は、次の式(2)に基づいて算出する。
d2=V/(2×g×μ)・・・(2)
ここで、gは、重力加速度であり、μは、道路の状態を表す値としての路面の摩擦係数である。路面の摩擦係数は、水又は氷の存在や、気温及び天候等に応じて適宜設定される。
【0053】
上記空走距離d1と制動距離d2が算出されると、判断部78が、空走距離d1と制動距離d2との合計距離である判定距離D2と、情報表示パネル52の警告情報を視認可能な最も遠い距離であって、警告最大距離である視認可能距離D1とを比較する。上記視認可能距離D1は、進入路の閉鎖位置P1と、情報表示パネル52の最遠視認可能位置P2との間の距離である。視認可能距離D1は、次の式(3)に基づいて算出する。
D1=5.67×C1×h・・・(3)
ここで、C1は文字の種類に応じた係数であり、hは情報表示パネル52に表示される文字の高さである。係数の5.67は、日本道路協会により出版された道路標識設置基準・同解説に基づくが、他の係数を採用してもよい。
なお、視認可能距離D1は、他の式に基づいて算出してもよく、少なくとも、情報表示パネル52及び標識装置6に記載された最も大きい文字又は図の寸法に基づいて算出すればよい。
【0054】
上記判断部78は、判定距離D2が視認可能距離D1よりも小さい場合に、道路の仮閉鎖が可能であると判断する。すなわち、図5において、D1とD2の差であるD3が正の値となる場合に、車両Cは閉鎖位置P1に至る前に停止できるので、進入路の仮閉鎖が可能であると判断する。一方、判定距離D2が視認可能距離D1よりも大きい場合に、車両Cは閉鎖位置P1に至る前に停止できないので、進入路の仮閉鎖が不可であると判断する。このようにして、車両Cの速度Vに基づいて算出した判定距離D2が視認可能距離D1よりも大きいか否かを判断することにより、この車両Cが閉鎖位置までに停止可能か否かを判断する(ステップS3)。
【0055】
上記判断部78による判断結果は、結果通知部79により操作者に通知される。結果通知部79は、表示装置18に、判断結果を表す文字及び/又は図を表示して、操作者に判断結果を通知する。また、操作端末17に内蔵又は接続されたスピーカから、判断結果を表す音声を出力してもよい。
【0056】
車両Cが閉鎖位置までに停止できないと判断され、道路の仮閉鎖が不可との判断結果が通知されると、操作者は仮閉鎖装置2の閉鎖を指令せず、道路閉鎖装置1は開放状態に保持される。道路閉鎖装置1が開放状態に保持されると、テレビカメラ7で撮影された後続の車両Cについて、閉鎖判定部74が順次判定を行う。後続の車両Cについて、進入路の仮閉鎖が可能であると判断部78が判断し、その判断結果が結果通知部79によって操作者に通知されると、操作者は、仮閉鎖装置2により進入路を閉鎖する旨の入力を入力装置19に行う。操作者による入力装置19への入力に基づき、仮閉鎖指令部71が、仮閉鎖装置2の動作を指令する信号を生成し、この信号が通信装置16によって道路閉鎖装置1に送信される。ここで、入力装置19と仮閉鎖指令部71が、第1操作部として機能する。上記仮閉鎖装置2の動作を指令する信号は、道路閉鎖装置1の通信装置15を通じて仮閉鎖制御装置12に送られ、この信号を受けた仮閉鎖制御装置12は、仮閉鎖装置2の閉じ動作を行う。すなわち、仮閉鎖装置2の駆動ランナー25が、支持枠体21の柱部分21bに集められた複数のカーテン片23を、駆動ランナー25で支持枠体21の幅方向の中央に向かって駆動する。なお、1つの駆動ランナー25が閉鎖カーテン22の全部を駆動する場合は、複数のカーテン片25を、引き集められた柱部分21bから他の柱部分21bに向かって駆動する。これにより、複数のカーテン片23が支持枠体21の内側に幅方向に連なって配列され、シート状の閉鎖カーテン22が進入路上を横切るように配置されて、進入路を仮閉鎖する。こうして、仮閉鎖手段としての閉鎖カーテン22が閉鎖駆動される(ステップS4)。
【0057】
仮閉鎖手段による進入路の閉鎖が確認されると(ステップS5)、本閉鎖手段による進入路の閉鎖を開始する(ステップS6)。本閉鎖を開始する旨の入力を操作者が入力装置19に行うと、操作端末17の閉鎖判定部74が起動し、進入路の本閉鎖が可能か否かの判断に関する一連の動作が開始される。進入路の本閉鎖が可能か否かの判断は、進入路の仮閉鎖が可能か否かの判断と、実質的に同じ方法によって行う。
【0058】
すなわち、閉鎖判定部74が起動し、車両検知部80がビデオカメラ7の撮影画像の画像処理を行い、閉鎖位置に向かって走行する車両Cの存在を検知する。車両検知部80が車両Cの存在を検知すると、速度算出部75が上記車両Cの速度を算出する。続いて、空走距離算出部76が、速度算出部75が算出した車両Cの速度に基づいて、情報表示パネル52の警告情報を車両の運転者が視認したときから、車両Cの制動が開始されるまでの間に車両Cが走行する空走距離d1を算出する。空走距離d1は、上記式(1)に基づいて算出する。続いて、制動距離算出部77が、車両Cの制動が開始されてから車両Cが停止するまでにかかる制動距離d2を算出する。制動距離d2は、上記式(2)に基づいて算出する。上記空走距離d1と制動距離d2が算出されると、判断部78が、空走距離d1と制動距離d2との合計距離である判定距離D2と、視認可能距離D1とを比較する。視認可能距離D1は、上記式(3)に基づいて算出する。上記判断部78は、判定距離D2が視認可能距離D1よりも小さい場合に、道路の本閉鎖が可能であると判断する。一方、判定距離D2が視認可能距離D1よりも大きい場合に、車両Cは閉鎖位置P1に至る前に停止できないので、進入路の本閉鎖が不可であると判断する。このようにして、車両Cの速度Vに基づいて算出した判定距離D2が視認可能距離D1よりも大きいか否かを判断することにより、この車両Cが閉鎖位置までに停止可能か否かを判断する(ステップS7)。上記判断部78による判断結果は、結果通知部79により、表示装置18を介して操作者に通知される。
【0059】
車両Cが閉鎖位置までに停止できないと判断され、道路の本閉鎖が不可との判断結果が通知されると、操作者は本閉鎖装置3の閉鎖を指令せず、道路閉鎖装置1は、仮閉鎖装置2で閉鎖された仮閉鎖状態に保持される。閉鎖位置までに停止できないと判断された車両Cは、閉鎖位置P1に至る前に停止できない可能性が高い。上記車両Cが現実に閉鎖位置P1に至る前に停止できない場合は、仮閉鎖手段2の閉鎖カーテン22に接触して閉鎖位置P1を通過する。ここで、閉鎖カーテン22は複数のカーテン片23が吊り下げられて形成されているので、閉鎖カーテン22と車両Cは、いずれも損傷が防止される。
【0060】
道路閉鎖装置1が仮閉鎖状態に保持されると、テレビカメラ7で撮影された後続の車両Cについて、閉鎖判定部74が順次判定を行う。後続の車両Cについて、進入路の本閉鎖が可能であると判断部78が判断し、その判断結果が結果通知部79によって操作者に通知されると、操作者は、本閉鎖装置3により進入路を閉鎖する旨の入力を入力装置19に行う。操作者による入力装置19への入力に基づき、本閉鎖指令部72が、本閉鎖装置3の動作を指令する信号を生成し、この信号が通信装置16によって道路閉鎖装置1に送信される。ここで、入力装置19と本閉鎖指令部72が、第2操作部として機能する。上記本閉鎖装置3の動作を指令する信号は、道路閉鎖装置1の通信装置15を通じて本閉鎖制御装置13に送られ、この信号を受けた本閉鎖制御装置13は、本閉鎖装置3の閉じ動作を行う。すなわち、本閉鎖装置3の駆動装置31が、鉛直方向に保持していた棒部材32を下方に駆動すると共に、発光体33の点滅を開始させる。これにより、棒部材32が進入路を横切るように水平に配置され、進入路を閉鎖する。こうして、本閉鎖手段としての棒部材32が閉鎖駆動される(ステップS8)。本閉鎖手段による進入路の閉鎖が確認されると(ステップS9)、道路閉鎖装置1による進入路の閉鎖過程が終了する。
【0061】
このように、本実施形態の道路閉鎖システムSによれば、操作端末17の閉鎖判定部74により、閉鎖位置P1に向かって走行する車両Cの速度に基づいて、この車両Cが閉鎖位置P1に達するまでに停止可能であることが確認され、この確認結果が結果通知部79で操作者に通知される。したがって、仮閉鎖装置2の閉鎖カーテン22又は本閉鎖装置3の棒部材32への車両Cの衝突を効果的に防止しながら、進入路を安全に閉鎖することができる。
【0062】
また、本実施形態の道路閉鎖システムSによれば、速度算出部75で算出した車両Cの速度に基づいて判断部78で仮閉鎖装置2及び本閉鎖装置3による閉鎖の可否を判断するので、例えば、一般道路の制限速度に基づいて一律に判断するよりも、確実かつ迅速に仮閉鎖装置2及び本閉鎖装置3により道路を閉鎖できる。
【0063】
また、本実施形態の道路閉鎖システムSによれば、仮閉鎖装置2の軟質の仮閉鎖手段としての閉鎖カーテン22で進入路を閉鎖した後に、閉鎖カーテン22よりも硬質の本閉鎖手段としての棒部材32で進入路を閉鎖するので、仮閉鎖手段2の閉鎖カーテン22の存在により、効果的に運転者の視覚を通じて警告を行いながら仮閉鎖を行って車両Cを停止させた後に、本閉鎖手段3の棒部材32で物理的に車両Cの走行を阻止して確実に進入路を閉鎖することができる。万一、仮閉鎖装置2による閉鎖中に車両Cが閉鎖位置に突入しても、閉鎖カーテン22は柔軟な材質で形成されているから、閉鎖カーテン22と車両Cのいずれの損傷も防止できる。
【0064】
また、本実施形態の道路閉鎖システムSによれば、操作端末17が設置された遠隔位置の操作者により、操作端末17及び入力装置19を通じて仮閉鎖装置2及び本閉鎖装置3を操作できるので、従来のゲートを閉鎖する場合のように係員が進入路を歩行してゲートに赴く必要が無いので、進入路の閉鎖作業を従来よりも大幅に安全に行うことができる。また、従来のゲートを閉鎖する場合のように交通管理員が巡回車でゲートに赴く必要が無いので、交通状況に応じて進入路を迅速に閉鎖することができる。
【0065】
なお、上記実施形態では、閉鎖判定部74で車両Cの速度に基づいて仮閉鎖装置2及び本閉鎖装置3の閉鎖の可否を判断したが、閉鎖判定部74による閉鎖の可否の判断は行わなくてもよい。例えば、表示装置18に表示されたビデオカメラ7による進入路や一般道路の撮影画像に基づき、操作者が閉鎖の可否を判断して仮閉鎖装置2及び本閉鎖装置3を操作してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、閉鎖判定部74の判断部78による判断結果を結果通知部79で操作者に通知したが、閉鎖判定部74の判断部78が進入路を閉鎖可能と判断した場合、判断結果を操作者に通知することなく、仮閉鎖指令部71又は本閉鎖指令部72が仮閉鎖装置2又は本閉鎖装置3の閉鎖指令を生成してもよい。つまり、判断部78が進入路を閉鎖可能と判断すると、操作者による操作を介することなく、自動的に仮閉鎖装置2又は本閉鎖装置3を作動させて進入路を閉鎖してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、道路閉鎖システムSを高速道路の進入路に設けた例について説明したが、本発明は、高速道路の本線や一般道路等の他の道路にも適用可能であり、車両の通行を止める必要がある道路であれば、適用する道路の種類は限定されない。
【符号の説明】
【0068】
C 車両
S 道路閉鎖システム
1 道路閉鎖装置
2 仮閉鎖装置
3 本閉鎖装置
7 ビデオカメラ
10 操作装置
18 表示装置
19 入力装置
22 閉鎖カーテン
52 情報表示パネル
71 仮閉鎖指令部
72 本閉鎖指令部
図1
図2
図3
図4
図5
図6