【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の道路閉鎖システムは、道路の車両の通行を止めるために道路を閉鎖する道路閉鎖システムであって、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両に対して道路の閉鎖を警告する警告装置と、
軟質の仮閉鎖手段で道路を閉鎖する仮閉鎖装置と、
仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路を閉鎖する本閉鎖装置と、
道路の交通状況を撮影する撮影装置と、
上記撮影装置の撮影画像を表示する表示装置と、上記仮閉鎖装置を操作する第1操作部と、上記本閉鎖装置を操作する第2操作部とを有する操作装置と
を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、警告装置により、道路を走行する車両に対して、道路が閉鎖される旨の警告が事前に行われる。一方、道路の交通状況が撮影装置で撮影され、この撮影装置の撮影画像が表示装置に表示される。表示装置に表示された撮影画像に基づき、操作者によって操作装置の第1操作部が操作される。これに応じて仮閉鎖装置が作動し、柔軟な仮閉鎖手段で道路が閉鎖される。この後、操作者により操作装置の第2操作部が操作され、これに応じて本閉鎖装置が作動し、仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路が閉鎖される。このように、上記表示装置及び操作装置の設置位置に存在する操作者により、表示装置に表示された撮影画像に基づいて操作装置が操作され、遠隔操作によって道路を閉鎖することができる。したがって、高速道路の進入路に設置された従来のゲートを閉鎖するときのように、ゲートに係員が赴く必要が無いので、道路を閉鎖する係員の安全を確保することができる。
【0010】
また、表示装置と共に設置された操作装置の操作により、仮閉鎖装置及び本閉鎖装置を作動させることができるので、従来のゲートを閉鎖するときのように、巡回員が巡回車両で進入路に赴く必要が無い。したがって、交通状況の変化に迅速に対応して仮閉鎖装置及び本閉鎖装置を作動させることができる。
【0011】
また、道路を走行する車両に対して警告装置で警告を行った後に、仮閉鎖装置の仮閉鎖手段で道路を閉鎖し、さらに、この後、本閉鎖装置の本閉鎖手段で道路を閉鎖するので、車両を確実に閉鎖位置の前方で停止させることができる。すなわち、道路が仮閉鎖手段で閉鎖されると、仮閉鎖手段が車両の運転者に確実に認識されるから、警告装置による警告の作用と併せて、車両を効果的に閉鎖位置の前方で停止させることができる。万一、警告装置による警告にもかかわらず、車両が閉鎖位置に突入しても、軟質の仮閉鎖手段で道路が閉鎖されているので、車両の損傷を防止できる。このように、仮閉鎖装置の軟質の仮閉鎖手段で、車両の通過を許容できる状態で道路を閉鎖すると共に、この仮閉鎖装置と警告装置で道路の閉鎖を認識させて車両を停止させた後、仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段を有する本閉鎖装置により、車両の通過を許容しない状態で道路を閉鎖する。したがって、衝突した場合に車両が損傷する可能性の高い本閉鎖手段への車両の衝突を防止しながら、道路を安全かつ確実に閉鎖することができる。
【0012】
上記構成において、上記警告装置としては、車両の運転者に対して視覚を通じて警告を行うものや、聴覚を通じて警告を行うものを採用することができる。視覚を通じて警告を行う警告装置としては、例えば、光を発する光源や、標識や、文字及び画像の表示装置等がある。聴覚を通じて警告を行う警告装置としては、例えば、道路周辺に設置された無線通信機と、車両に搭載された無線通信機との間で警告に関する情報を送受信し、受信した情報に基づいて、車両の無線通信機に接続された音声出力装置が警告を示す音声を出力するシステム等を採用することができる。
【0013】
また、上記仮閉鎖手段としては、可撓性を有して道路上に配置され、車両が接触しても破損しないと共に、車両を損傷せず、さらに、車両の搭乗者を負傷させることなく車両を通過させることができるものが好ましい。また、上記本閉鎖手段としては、上記仮閉鎖手段よりも可撓性が少なく、道路上に配置され、上記仮閉鎖装置よりも車両を阻止する効果の高いものが好ましい。
【0014】
上記構成において、上記撮影装置で道路の交通状況を撮影し、撮影画像を表示装置に表示したが、撮影装置に代えて、道路の閉鎖位置に接近する車両の有無を検知する車両検知装置を設置し、この車両検知装置の検知結果を、表示装置に表示してもよい。表示装置に、道路の閉鎖位置に接近する車両が無いことが表示され、これに応じて操作装置が操作者によって操作されることにより、車両の衝突を防止しながら仮閉鎖装置及び本閉鎖装置で道路を閉鎖することができる。また、この車両検知装置は、撮影装置と共に設置してもよく、例えば、撮影装置の撮影画像の画像処理により、道路の閉鎖位置に接近する車両の有無を検知してもよい。また、車両検知装置により、道路の閉鎖位置に接近する車両が有ることが検知された場合、第2操作部において本閉鎖装置で道路を閉鎖する操作が行われても、本閉鎖装置で道路を閉鎖させず、道路の閉鎖位置に接近する車両が無いと検知されるまで、仮閉鎖装置による閉鎖状態を保持するのが好ましい。
【0015】
本明細書において、閉鎖位置とは、仮閉鎖装置と本閉鎖装置が設置されて道路の閉鎖と開放が切り替えられる位置をいい、現実に閉鎖状態であるか、開放状態であるかは問わない。また、本明細書において、道路とは、閉鎖装置が設置された道路のほか、閉鎖装置が設置された道路に接続された道路をも含む。例えば、閉鎖装置が高速道路の進入口の先端に設置された場合、進入口に連なる一般道路も本発明の道路に該当する。
【0016】
一実施形態の道路閉鎖システムは、上記仮閉鎖手段が、可撓性のシート状に形成され、道路上に垂下されている。
【0017】
上記実施形態によれば、可撓性のシート状に形成された仮閉鎖手段を道路上に垂下することにより、道路が閉鎖状態であることを車両の運転者の視覚に訴えることができる。また、可撓性のシートを用いることにより、車両の通過を許容することができる上、車両が接触しても破損し難いと共に、接触した車両の損傷及び搭乗者の負傷を防止できる。また、シート状の仮閉鎖手段に、例えば通行止を表す文字や図又は標識等のような、道路の閉鎖に関する警告を表すことにより、車両の運転者に対して効果的に警告を行うことができる。
【0018】
一実施形態の道路閉鎖システムは、上記仮閉鎖装置が、複数の短冊状のシート片が連なって上記仮閉鎖手段を形成し、上記仮閉鎖手段の複数のシート片を道路の幅方向に駆動して道路を開閉する駆動装置を有する。
【0019】
上記実施形態によれば、複数の短冊状のシート片が連なって形成されたシート状の仮閉鎖手段は、車両が接触しても容易に互いに分離するので、破損し難いと共に、接触した車両の損傷を防止できる。また、複数の短冊状のシート片が連なって形成された仮閉鎖手段は、駆動装置によって容易に開閉できる。また、道路を開放するときは、複数の短冊状のシート片を表裏が接するように重ねて、仮閉鎖手段をコンパクトに纏めることができる。
【0020】
一実施形態の道路閉鎖システムは、上記本閉鎖装置が、
道路上に横断方向に配置される本閉鎖手段としての棒部材と、
上記棒部材を駆動して道路を開閉する駆動装置と
を有する。
【0021】
上記実施形態によれば、棒部材を駆動装置で駆動し、この棒部材を道路上の横断方向に配置することにより、車両の通過を許容しないで、容易に道路を閉鎖することができる。一方、棒部材を駆動装置で駆動し、この棒部材を道路上の横断方向の配置位置から退去させることにより、道路を容易に開放できる。ここで、上記駆動装置は、棒部材を、道路の延在方向と直角を成す鉛直面の軌跡を描くように、道路の路面と平行を成して車両の通行を阻止する下方の阻止位置と、進入路の路面と直角をなして車両の通行を許容する上方の開放位置との間で駆動してもよい。また、上記駆動装置は、棒部材を、道路の路面と平行を成す水平面の軌跡を描くように、道路の延在方向と直角を成して車両の通行を阻止する阻止位置と、道路の延在方向と平行を成して車両の通行を許容する開放位置との間で駆動してもよい。また、上記駆動装置は、棒部材を、道路の延在方向と直角を成す鉛直面の軌跡を描くように、道路の路面に接近する下方の阻止位置と、道路の路面から遠ざかる上方の開放位置との間で駆動してもよい。
【0022】
一実施形態の道路閉鎖システムは、上記撮影装置で撮影された画像に基づいて、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の有無を検知する車両検知装置と、
上記車両検知装置で検知された車両の速度を検出する速度検出装置と、
上記速度検出装置で検出された車両の速度に基づいて、上記仮閉鎖装置又は本閉鎖装置による道路の閉鎖の可否を判定する判定装置とを備える。
【0023】
上記実施形態によれば、車両検知装置により、撮影装置で撮影された画像に基づいて、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の有無が検知される。速度検出装置により、上記車両検知装置で検知された車両の速度が検出される。判定装置により、上記車両の速度に基づいて、仮閉鎖装置又は本閉鎖装置による道路の閉鎖の可否が判定される。この判定装置の判定結果に応じて操作装置が操作されることにより、上記車両が仮閉鎖装置又は本閉鎖装置に衝突又は接触することを効果的に防止でき、したがって、道路を安全に閉鎖できる。ここで、上記速度検出装置及び判定装置は、専用装置で実現してもよく、プログラムをコンピュータで実行して実現してもよい。
【0024】
一実施形態の道路閉鎖システムは、
上記判定装置が、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の運転者が上記警告装置による警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する空走距離算出部と、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の制動が開始されてから停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する制動距離算出部と、
上記空走距離と上記制動距離との合計距離である判定距離と、上記警告装置による警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較し、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する判断部と、
上記判断部による判断結果を操作者に通知する結果通知部と
を有する。
【0025】
上記実施形態によれば、空走距離算出部により、車両の速度に基づいて、車両の運転者が警告装置による警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離が算出される。この空走距離は、運転者が警告を受けたときから、制動ペダルを踏む等の制動操作を行い、車両の制動が始まるまでにかかる反応時間に、上記車両の速度を乗じて算出される。上記反応時間は、運転者の人的要因による時間であって、運転者が警告を受けたときから警告を認識し、制動ペダルの踏圧等を開始するまでにかかる反射時間と、車両の機械的要因による時間であって、車両の制動ペダルの踏圧等がされて制動装置による制動が開始されるまでの制動反応時間との合計である。ここで、上記運転者が警告を受けたときとは、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識を視覚で認識したときをいう。また、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、運転者が警告を受けたときとは、音声を聴覚で認識したときをいう。続いて、制動距離算出部により、車両の速度に基づいて、車両の制動が開始されてから車両が停止するまでの間に車両が走行する制動距離が算出される。この制動距離は、制動が開始されるときの車両の速度のほか、道路の状態に基づいて算出するのが好ましい。上記空走距離と上記制動距離が算出されると、判断部により、空走距離と制動距離との合計距離である判定距離と、警告装置による警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とが比較される。この警告最大距離は、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識の設置位置から道路の閉鎖位置までの距離と、上記標識に記載された文字の大きさに基づいて算出された視認可能距離との合計の距離とすることができる。また、警告最大距離は、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置から道路の閉鎖位置までの距離とすることができる。上記音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置は、音声出力装置に接続された無線通信機が警告に関する情報を受信した位置に基づいて特定することができる。上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、判断部により、道路の閉鎖が可能であると判断される。一方、上記判定距離が上記警告最大距離よりも大きい場合は、判断部により、道路の閉鎖が不可であると判断される。この判断部による判断結果が、結果通知部により操作者に通知される。結果通知部による通知は、例えば、操作者が視認する表示装置に、判断結果を文字又は図で表示して行ってもよく、あるいは、操作者が聴認する音声出力装置に、判断結果を音声で出力して行ってもよい。本実施形態によれば、閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、道路の閉鎖位置までの区間で車両の運転者が警告を認識して車両を制動して車両が停止可能か否かを判断し、この判断結果を、操作装置の操作者に伝えることができる。したがって、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に応じて適切なタイミングで道路を閉鎖するように、操作者に操作装置を操作させることができる。その結果、車両が閉鎖位置までに停止できるにもかかわらず、閉鎖のタイミングを逃して閉鎖を実行できない不都合や、車両が閉鎖位置までに停止できないにもかかわらず、道路を閉鎖してしまって車両が閉鎖位置の閉鎖手段に衝突する不都合を防止できる。
【0026】
本発明の道路閉鎖方法は、道路の車両の通行を止めるために道路を閉鎖する道路閉鎖方法であって、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両を検知する車両検知ステップと、
上記車両の速度を測定する速度測定ステップと、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する空走距離算出ステップと、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の制動が開始されてから停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する制動距離算出ステップと、
上記空走距離と上記制動距離との合計距離である判定距離と、上記警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較し、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する閉鎖判断ステップと、
上記道路の閉鎖が可能であると判断した場合に、上記道路を閉鎖する閉鎖ステップと
を備えることを特徴としている。
【0027】
上記構成によれば、車両検知ステップで、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両を検知した後、速度測定ステップで、上記車両の速度を測定する。空走距離算出ステップで、車両の速度に基づいて、車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する。この空走距離は、運転者が警告を受けたときから、制動ペダルを踏む等の制動操作を行い、車両の制動が始まるまでにかかる反応時間に、上記車両の速度を乗じて算出する。上記反応時間は、運転者の人的要因による時間であって、運転者が警告を受けたときから警告を認識し、制動ペダルの踏圧等を開始するまでにかかる反射時間と、車両の機械的要因による時間であって、車両の制動ペダルの踏圧等がされて制動装置による制動が開始されるまでの制動反応時間との合計である。ここで、上記運転者が警告を受けたときとは、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識を視覚で認識したときをいう。また、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、運転者が警告を受けたときとは、音声を聴覚で認識したときをいう。続いて、制動距離算出ステップで、車両の速度に基づいて、車両の制動が開始されてから車両が停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する。この制動距離は、制動が開始されるときの車両の速度のほか、道路の状態に基づいて算出するのが好ましい。上記空走距離と上記制動距離が算出されると、閉鎖判断ステップで、空走距離と制動距離との合計距離である判定距離と、警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較する。この警告最大距離は、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識の設置位置から道路の閉鎖位置までの距離と、上記標識に記載された文字の大きさに基づいて算出された視認可能距離との合計の距離とすることができる。また、警告最大距離は、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置から道路の閉鎖位置までの距離とすることができる。上記音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置は、音声出力装置に接続された無線通信機が警告に関する情報を受信した位置に基づいて特定することができる。閉鎖判断ステップは、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する。一方、上記判定距離が上記警告最大距離よりも大きい場合は、道路の閉鎖が不可であると判断する。閉鎖判断ステップで道路の閉鎖が可能であると判断した場合に、閉鎖ステップで道路を閉鎖する。一方、道路の閉鎖が不可であると判断した場合に、道路の閉鎖を延期する。
【0028】
本発明の道路閉鎖方法によれば、閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、道路の閉鎖位置までに、車両の運転者が警告を認識した後に車両を制動操作して車両が停止可能かを正確に判断することができる。したがって、道路を走行する車両の速度に応じて、道路を閉鎖すべきか否かを正確に判断できるので、車両が閉鎖位置までに停止できるにもかかわらず、閉鎖のタイミングを逃して閉鎖を実行できない不都合や、車両が閉鎖位置までに停止できないにもかかわらず、道路を閉鎖してしまって車両が閉鎖位置の閉鎖手段に衝突する不都合を防止できる。
【0029】
一実施形態の道路閉鎖方法は、上記閉鎖ステップは、軟質の仮閉鎖手段で道路を閉鎖した後に、仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路を閉鎖する。
【0030】
上記実施形態によれば、軟質の仮閉鎖手段で道路を閉鎖して、仮閉鎖手段を車両の運転者に確実に認識させることにより、車両を効果的に閉鎖位置の前方で停止させることができる。ここで、仮閉鎖手段は柔軟であるので、万一、車両が閉鎖位置の前で停止せずに仮閉鎖手段に接触しても、仮閉鎖手段と車両が損傷することなく、かつ、搭乗者が負傷することなく、安全に車両の通過を許容することができる。このように、仮閉鎖手段によって車両の運転者に道路の閉鎖を確実に認識させた後に、仮閉鎖手段よりも硬質の本閉鎖手段で道路を閉鎖するので、衝突した場合に車両が損傷する可能性の高い本閉鎖手段への車両の衝突を防止しながら、道路を安全かつ確実に閉鎖することができる。
【0031】
本発明のプログラムは、コンピュータを、
道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、上記車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離を算出する空走距離算出部と、
上記車両の速度に基づいて、上記車両の制動が開始されてから停止するまでの間に車両が走行する制動距離を算出する制動距離算出部と、
上記空走距離と上記制動距離との合計距離である判定距離と、上記車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とを比較し、上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、道路の閉鎖が可能であると判断する判断部と、
上記判断部による判断結果を通知する結果通知部と
して機能させるためのプログラムである。
【0032】
上記構成のプログラムによれば、空走距離算出部として機能するコンピュータにより、道路の閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、車両の運転者が道路の閉鎖の警告を受けたときから車両の制動が開始されるまでの間に車両が走行する空走距離が算出される。ここで、車両の速度は、車両の走行状況が撮影された画像に基づいて検出するのが好ましく、この場合、プログラムは、コンピュータを速度検出部として機能させるのが好ましい。上記空走距離は、運転者が警告を受けたときから、制動ペダルを踏む等の制動操作を行い、車両の制動が始まるまでにかかる反応時間に、上記車両の速度を乗じて算出される。上記反応時間は、運転者の人的要因による時間であって、運転者が警告を受けたときから警告を認識し、制動ペダルの踏圧等を開始するまでにかかる反射時間と、車両の機械的要因による時間であって、車両の制動ペダルの踏圧等がされて制動装置による制動が開始されるまでの制動反応時間との合計である。ここで、上記運転者が警告を受けたときとは、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識を視覚で認識したときをいう。また、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、運転者が警告を受けたときとは、音声を聴覚で認識したときをいう。続いて、制動距離算出部として機能するコンピュータにより、車両の速度に基づいて、車両の制動が開始されてから車両が停止するまでの間に車両が走行する制動距離が算出される。この制動距離は、制動が開始されるときの車両の速度のほか、道路の状態に基づいて算出するのが好ましい。上記空走距離と上記制動距離が算出されると、判断部として機能するコンピュータにより、空走距離と制動距離との合計距離である判定距離と、警告装置による警告を受ける位置から道路の閉鎖位置までの距離である警告最大距離とが比較される。この警告最大距離は、警告が、例えば標識により視覚を通じて行われる場合は、標識の設置位置から道路の閉鎖位置までの距離と、上記標識に記載された文字の大きさに基づいて算出された視認可能距離との合計の距離とすることができる。また、警告最大距離は、警告が、例えば音声出力装置により聴覚を通じて行われる場合は、音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置から道路の閉鎖位置までの距離とすることができる。上記音声出力装置から音声が出力されたときの車両の走行位置は、音声出力装置に接続された無線通信機が警告に関する情報を受信した位置に基づいて特定することができる。上記判定距離が上記警告最大距離よりも小さい場合に、判断部として機能するコンピュータにより、道路の閉鎖が可能であると判断される。一方、上記判定距離が上記警告最大距離よりも大きい場合に、判断部により、道路の閉鎖が不可であると判断される。この判断結果が、結果通知部として機能するコンピュータにより通知される。コンピュータにより通知される対象は、道路を閉鎖する道路閉鎖装置を操作する操作者であってもよく、道路閉鎖装置を駆動する駆動装置であってもよい。結果通知部として機能するコンピュータが操作者に判断結果を通知する場合、例えば、操作者が視認する表示装置に、判断結果を文字又は図で表示して行ってもよく、あるいは、操作者が聴認する音声出力装置に、判断結果を音声で出力して行ってもよい。結果通知部として機能するコンピュータが道路閉鎖装置の駆動装置に判断結果を通知する場合、道路の閉鎖が可能又は不可の旨を示す信号を駆動装置に入力する。駆動装置は、閉鎖可能の信号を受けた場合に道路閉鎖装置の閉鎖手段を閉じる側に駆動する一方、閉鎖不可の信号を受けた場合に道路閉鎖装置の閉鎖手段を開いたままに保持する。
【0033】
本発明のプログラムによれば、コンピュータにより、閉鎖位置に向かって走行する車両の速度に基づいて、道路の閉鎖位置までの区間で車両の運転者が警告を認識して車両を制動して車両が停止可能かを正確に判断し、この判断結果を、道路閉鎖装置の操作者や、道路閉鎖装置の駆動装置に伝えることができる。したがって、道路を走行する車両の速度に応じて適切なタイミングで道路を閉鎖させることができる。その結果、車両が閉鎖位置までに停止できるにもかかわらず、閉鎖のタイミングを逃して閉鎖を実行できない不都合や、車両が閉鎖位置までに停止できないにもかかわらず、道路を閉鎖してしまって車両が閉鎖位置の閉鎖手段に衝突する不都合を防止できる。