【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公益社団法人 計測自動制御学会、第12回SICEシステムインテグレーション部門講演会論文集、2011年12月23日 (刊行物等) 2012年1月7日、http://www.ntf.or.jp/challenge/challenge11/report/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
装置本体と、少なくとも一つは駆動輪である複数の車輪と、前記駆動輪を駆動するモータと、前記装置本体から前記装置本体の周辺に存する物体までの距離を検出する距離センサと、少なくとも前記距離センサからの距離信号に基づき、モータ制御信号を演算する制御器と、バッテリに接続され前記制御器からのモータ制御信号に基づき前記モータに制御電力を供給するモータドライバと、を備える自律走行装置において、
前記駆動輪は走行方向を自在に変更できる状態にて前記装置本体に設けられており、
前記制御器には、所定の走行経路上を操作者の操作により前記装置本体が走らされる教示走行の当該装置本体周辺の点群の環境地図と自己位置状態とが予め記憶されており、
前記制御器は、自律走行時において前記距離センサからの距離信号に基づき当該装置本体周辺の点群の環境地図を生成するとともに、自己位置状態を取得し、
前記制御器は、貪欲法を用いて前記自律走行時の自己位置状態を補正するにあたり、前記教示走行時の自己位置状態と、前記自律走行時の自己位置状態との差分値から、前記自律走行時の環境地図を2次元剛体変換により変換し、変換した前記環境地図と、前記教示走行時の前記環境地図との何れか一方を固定し、微小の遷移量で他方の前記環境地図の座標及び角度を少しずつ遷移させ、前記変換した前記環境地図と前記教示走行時の前記環境地図との一致点が最大となる座標及び角度に基づいて前記自律走行時の自己位置状態を補正し、前記補正した自己位置状態に基づき略前記所定の走行経路上を走行できるよう前記駆動輪の走行方向を制御すべく前記モータ制御信号を演算し、演算された前記モータ制御信号を出力することを特徴とする自律走行装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明の実施形態の自律走行装置を
図1に基づいて説明する。ここで、
図1は、本発明の実施形態の自律走行装置1の上面図である。
【0014】
図1に示すように、自律走行装置1は、主に、装置本体2と、装置本体2の前方に配置されたモータ(6,7)と、それぞれのモータ(6,7)に取り付けられた駆動輪(12,13)と、装置本体2の後方に配置された従動輪(18,19)と、制御装置100と、バッテリBTと、回転センサ(8,9)と、距離センサ20と、舵角センサ21と、を備える。上記のように装置1は、2つの駆動輪(12,13)および2つの従動輪(18,19)からなる4つの車輪(12,13,18,19)を備える。また、制御装置100は、制御器としてのマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)30と、モータドライバ40と、を備える。
【0015】
装置本体2の前方における中央部には、軸部材3が固定配置されており、軸部材3には回転部材(ベアリング)4が回転自在に取り付けられている。そして、ベアリング4には操舵プレート5が取り付けられており、操舵プレート5は、ベアリング4を介して装置本体2に対し回転自在に取り付けられている。ここで、操舵プレート5には、舵角センサとしてのエンコーダ21が設けられており、エンコーダ21により、操舵プレート5の舵角φが計測される。
【0016】
また、操舵プレート5の両端部には、回転軸(10,11)をそれぞれ有するモータ(6,7)が取り付けられている。そして、それぞれのモータ(6,7)には、回転軸(10,11)の回転を検出する回転センサとしてのエンコーダ(8,9)が取り付けられている。また、駆動輪(12,13)はモータ(6,7)の回転軸(10,11)に一体的に取り付けられている。そして、エンコーダ(8,9)により、回転軸(10,11)及び駆動輪(12,13)の回転位置が検出される。
【0017】
上記のように駆動輪(12,13)が、モータ(8,9)を介してエンコーダ21が設けられた操舵プレート5に取り付けられる。そのため、駆動輪(12,13)は、走行方向(回転駆動方向)を装置本体2に対して自在に変更することができる状態にて、操舵プレート5を介して装置本体2に設けられておる。そして、エンコーダ21により操舵プレート5を介して駆動輪(12,13)の舵角が検出されることになる。
【0018】
また、装置本体2の後方の左右にはそれぞれ固定部(14、15)が設けされており、それぞれの固定部(14,15)には車軸(16,17)が一体的に取り付けられている。そして、それぞれの車軸(16,17)に従動輪(18,19)が回転自在に取り付けられている。
【0019】
装置本体2の先方の中央部には、距離センサとしてのレーザレンジファインダ(以下「LRF」という。)20が取り付けられている。LRF20は、装置本体2から装置本体2の周辺に存する物体までの距離(装置本体⇔物体)を検出する。LRF20は、略水平面内において装置本体2の前方を所定の角度範囲内において、放射方向にて所定の角度おきにスキャニングしながら、置本体2の周辺に存する物体までの距離を検出する。このように、本実施形態におけるLRF20は、走行路面に対し平行な平面内において、装置本体2の周辺に存する物体までの距離を検出する。
【0020】
そのため、LRF20により、装置1の前方および左右(一部後方も含む)に存する物体(周辺に存する物体)までの距離を所定の角度範囲内において網羅的に計測することができる。そして、このLRF20からの距離信号dにより、装置本体2周辺の環境地図を形成することができる。なお、本実施形態におけるLRF20は、所定の角度範囲として270°に設定されているとともに、0.25°の角度おきにスキャニングすることができる。また、このスキャニングにより距離信号dから環境地図信号mを形成することができる。ここで、装置1にて形成される環境地図信号mは、上述のように走行路面に対し平行な平面内において検出される物体までの距離信号dより、2次元空間内の2値画像信号(「0」または「1」)として形成される。
【0021】
制御装置100におけるモータドライバ40は、給電装置41および電流センサ(42,43)を備える。そして、給電装置41は、バッテリBT、モータ(6,7)およびマイコン30に接続されており、マイコン30からのモータ制御信号cに対応し、バッテリBTから供給される電力を制御し、制御された制御電力をモータ(6,7)に供給する。ここで、電流センサ(42,43)は給電装置41からモータ(6,7)に供給される制御電力の電流値Iを検出する。
【0022】
また、制御装置100におけるマイコン30には、エンコーダ(8,9)からの回転位置信号r、LRF20からの距離信号d、エンコーダ21からの舵角信号φ、および電流センサ(42,43)からの電流信号Iが供給され、これらの信号に基づきモータ制御信号cを演算し、出力する。
【0023】
ここで、本発明の実施形態の自律走行装置1は、自律して、すなわち操作者又は乗客により走行方向を操作することなく、自動で予め定められた所定の走行経路上を略トレースして自動で走行することができる機能を有する。
【0024】
そして、この機能は、以下のような手順により実現される。
【0025】
a)前もって所定の走行経路上を操作者の操作におり装置1を走らせる(以下「教示走行」という)。この教示走行において、デッドレコニングにより、走行時の走行長さL、位
置(x,y)、走行方向θなどの自己位置状態を記録する。また、この自己位置状態の記録とともに、LRF20からの距離信号により形成される環境地図も記録する。すなわち、各自己位置状態に対応した環境地図が予め記録される。
【0026】
b)そして、自律走行時においては、LRF20からの距離信号により形成される環境地図と、予め記録された環境地図とを比較し、駆動輪(12,13)の舵角φの目標値φrefが演算され、この目標値φrefに基づき駆動輪(12,13)を駆動する各モータ(6,7)に供給される制御電流が制御される。この制御においては、自律走行時における装置1の自己位置状態もデッドレコニングにより計測され、計測された自己位置状態に関する情報、および教示走行における自己位置状態に関する情報がそれぞれ利用される。
【0027】
上記の制御電流を決定する処理を行っているのは、マイコン30である。以下、
図2および
図3に基づきマイコン30内でなされる演算処理を、装置1の駆動状態と対比しながら説明する。
【0028】
図2に示すように、マイコン30には、外部から切替信号k、エンコーダ21からの舵角信号φ、LRF20からの距離信号d、エンコーダ(8,9)からの回転位置信号r、および電流センサ(42,43)からの電流値信号I、が供給され、これらの信号に基づきモータ制御信号cを演算し、モータドライバ40の給電装置41に供給する。
【0029】
マイコン30は、位置状態演算手段31と、切替手段32と、第1記録手段33と、補正演算手段34と、第2記録手段35と、舵角指令演算手段36と、制御信号演算手段37と、を有する。なお、技術内容を明確に説明するため、マイコン30内を各手段(31〜38)に分けて記載し、通常マイコン30内の単一の処理装置でなされている処理を各手段(31〜38)で分担して処理されるよう記載した。また、本実施の形態は、マイコン30は、上記のように単一の処理装置で構成されてよく、複数の処理装置で構成されてよい。
【0030】
位置状態演算手段31は、いわゆるデッドレコニングを行う処理部である。位置状態演算手段31には、所定のサンプリング周期において、装置1の走行時における舵角信号φおよび回転位置信号rとが取り込まれる。そして、これらの信号(φ,r)に基づき、所定の起点(スタート地点)から走行している装置1の自己位置状態が計測される。
【0031】
位置状態演算手段31によるデッドレコニングでは、自己位置状態として、イ)スタート地点を原点(0,0)とする装置1のxy座標位置(x,y)、ロ)装置1の走行方向θ、および、ハ)スタート地点からの走行距離Lが、演算される。
【0032】
切替手段32は、教示走行若しくは自律走行に対応する外部からの切替信号kに基づき、マイコン30内での信号の供給先を切り替える。すなわち、切替信号kに基づき、LRF20からの距離信号d、位置状態演算手段31からのイ)位置信号(x,y)、ロ)走行方向信号θ、およびハ)走行距離信号Lの供給先を切り替える。
【0033】
(教示走行)
次に、教示走行時、すなわち、教示走行に対応する切替信号kが外部から切替手段32に供給された場合におけるマイコン30での処理について説明する。ここで、教示走行時には、位置状態演算手段31からは、位置信号(xm,ym)、走行方向信号θmおよび走行距離信号Lmが供給される。また、距離信号dに基づき環境地図信号mmがマイコン30内で形成される。
【0034】
第1記録手段33には、位置信号(xm,ym)、走行方向信号θmおよび環境地図信号
mmが供給され、位置状態信号(xm,ym,θm)と、その位置状態における環境地図信号mmとが、互いに関連づけられて記憶される。すなわち、各位置状態における環境地図が、第1記録手段33に記録される。
【0035】
第2記録手段35には、教示走行時の走行距離信号Lm、走行方向信号θmおよび指令速度信号vrefが記録される。ここで、走行方向信号θmおよび指令速度信号vrefは、走行距離信号Lmに関連づけられて記録されている。すなわち、所定のサンプリングで記録される各走行距離信号Lmに対して、各走行方向信号θmおよび各指令速度信号vrefは一義的に定まる。
【0036】
(自律走行)
次に、自律走行時、すなわち、自律走行に対応する切替信号kが外部から切替手段32に供給された場合におけるマイコン30での処理について説明する。ここで、自律走行時には、位置状態演算手段31からは、位置信号(xa,ya)、走行方向信号θaが供給される。また、距離信号dに基づき環境地図信号maがマイコン30内で形成される。
【0037】
上記のように自律走行時においても、教示走行時と同様に位置状態演算手段31によりデッドレコニングが行われ、エンコーダ(8,9)からの回転位置信号rおよびエンコーダ21からの舵角信号φに基づき、自己位置状態が位置信号(xa,ya)・走行方向信号θaとして大凡推定される。しかし、駆動輪(12,13)の路面との滑りなどにより、位置信号(xa,ya)・走行方向信号θaからでは、正確に自己位置状態が推定できない場合がある。
【0038】
そこで、補正演算手段34により、教示走行時の環境地図信号mmと、自律走行時の環境地図信号maとが、比較解析され、この比較解析により自律走行時の自己位置状態が補正され正確に推定される。そして、補正演算手段34により正確に推定された自己位置状態は、位置信号(xa’,ya’)・走行方向信号θa’として、出力される。なお、補正演算手段34による自己位置状態の補正方法の詳細については後述する。
【0039】
補正演算手段34により補正・推定された自己位置状態(xa’,ya’,θa’)は、舵角指令演算手段36に供給される。
図2および
図3に示すように、舵角指令演算手段36では、自己位置状態(xa’,ya’,θa’)と、第2記憶手段35に記憶されている教示走行時における走行距離信号Lmと走行方向信号θmとに基づき、参照走行距離Laが算出される。ここで、参照走行距離Laは、
図3に示すように、自律走行時の装置1の位置(xa’,ya’)と所定の走行経路とを、最短の距離にて結んだ線(垂線)の交点を求め、起点からこの交点までの教示走行時における走行距離である。
【0040】
そして、舵角指令演算手段36は、参照走行距離Laと第2記憶手段35とを照会し、参照走行距離Laにおける走行方向信号θmを求め、この走行方向信号θmを目標とする方向を参照走行信号θrefとする。そして、さらに、この参照走行方向信号θrefから駆動輪(12,13)が旋回すべき目標舵角信号φrefを算出する。
【0041】
そして、制御信号演算手段37では、エンコーダ21からの舵角信号φ、第2記憶手段35からの目標速度信号vref、舵角指令演算手段36からの目標舵角信号φref、回転位置信号rを速度信号vに変換する速度変換手段38からの速度信号v、電流センサ(42,43)からの電流値信号Iに基づき、モータ制御信号cを演算し、モータドライバ40に供給する。
【0042】
そして、モータドライバ40は、モータ制御信号cに基づき、バッテリBTから供給される電力を制御し、制御された制御電力をモータ(6,7)に供給する。
【0043】
(貪欲法)
次に、補正演算手段34による装置1の自己位置状態の推定について、
図3、並びに、
図4および
図5に基づき説明する。なお、
図4および
図5は、補正演算手段34における情報の処理の内容を示すフローチャートである。
【0044】
補正演算手段34では、教示走行時に予め記録された環境地図信号mmと、それに対応する自律走行時における環境地図信号maとが、比較解析される。装置1の教示走行・自律走行における自己位置状態は、これまでに説明したように、ともにデッドレコニングによりにより把握される。そして、補正演算手段34により、比較解析される環境地図信号(mm,ma)は、それぞれデッドレコニングにより推定される位置状態((xm,ym,θam)、(xa,ya,θa))における環境地図信号である。
【0045】
ここで、上記の自律走行時の自己位置状態は、デッドレコニングのよりある程度の確からしさをもって、教示走行時の自己位置状態と略同程度の自己位置状態であると認識されるものである。本実施形態の補正演算手段34は、このある程度の確からしいと判断される自律走行時の自己位置状態(xa,ya,θa)を、相互の環境地図信号(mm,ma)をそれぞれ比較解析にすることにより、デッドレコニングにより把握される自己位置状態(xa,ya,θa)を補正し、すなわち、自律走行時の自己位置状態をより正確に把握し、把握されたより正確な自己位置状態(xa’,ya’,θa’)を求めるものである。
【0046】
上記の環境地図信号(mm,ma)の比較解析による自律走行時の自己位置状態の貪欲法による推定は、概ね下記の考え方に基づき行われる。
【0047】
例えば、
図3に示されるように装置1の右舷前方の物体Oを環境地図信号(mm,ma)として計測する場合について説明する。デッドレコニングにより把握される自律走行時の自己位置状態(xa,ya,θa)が、正確に自己位置状態を推定するものである場合、自律走行時に計測される物体Oに関する環境地図信号maは、教示走行時に計測される物体Oに関する環境地図図信号mmを、双方の自己位置状態の差分を加算すれば、加算された環境地図図信号mmと略一致したものとなる。
【0048】
しかしながら、駆動輪(12,13)の滑り等により、デッドレコニングにより把握される自律走行時の自己位置状態(xa,ya,θa)が真の自己位置状態からずれている場合、上記のように環境地図図信号mmに双方の自己位置状態の差分を加算したとしても、双方の環境地図信号(mmとma)は、一致点は少ないものとなってしまう。
【0049】
そこで、補正演算手段34では、とりあえず、デッドレコニングにより把握される相互(教示走行および自律走行時)の自己位置状態の差分を用いて、この環境地図信号maを2次元剛体変換により変換する。そして、双方の環境地図信号(mm,(変換後の)ma)の何れか一方を固定し、他の一方を微小の「長さ」および「角度」にて少しずつ遷移させる。
【0050】
ここで、前記の微小の「長さ」および「角度」による遷移は、双方の環境地図信号(mm,ma)の一致点が、より大きくなるように検査しながら行われる。そして、この一致点が最大となる「長さ(座標)」および「角度」を補正位置状態量(dx,dy,dθ)として把握し、この補正位置状態をデッドレコニングにより把握される自律走行時の自己位置状態(xa,ya,θa)に加算(若しくは減算)することにより、補正された自律走行時の自己位置状態(xa’,ya’,θa’)を求める。
【0051】
次に、
図4および
図5に示されるフローチャートに基づき、補正演算手段34にける情報の処理の内容を具体的に説明する。
【0052】
補正演算手段34での処理が開始されると(S1)、デッドレコニングにより計測される教示および自律走行時の自己位置状態の差分により、補正位置状態量(dxcur,dycur,dθcur)を算出する(dxcur=xa−xm,dycur=ya−ym,dθcur=θa−θm)(S2)。そして、算出された補正位置状態量(dxcur,dycur,dθcur)を計算位置状態量(dxtry,dytry,dθtry)に設定する(S3)。そして、この計算位置状態量により環境地図信号maの位置角度を2次元剛体変換により変換させ、環境地図信号mmと変換後の環境地図信号maの比較のより初期スコアSを求め、求められた初期スコアSを記憶する(S4)。
【0053】
ここで、スコアSは、教示走行時の環境地図信号mmと変換後の環境地図信号maの一致率を示すものであり、以下の式にて求められる。
S=|(環境地図信号mm)∩(遷移後の環境地図信号ma)|/|環境地図信号mm|ここで、Sの分母は、環境地図信号mmにおいて、物体の存在を示す画素(=1)の画素数を示す。Sの分子は、双方の環境地図信号(mm,ma)における物体の存在を示す画素(=1)において、ともに重なる画素の画素数を示す。
【0054】
次に、環境地図信号mmを微小の「長さ」および「角度」において遷移するための「遷移量」が設定される(S5)。なお、この「遷移量」によって環境地図信号mmを遷移させることによって、双方の環境地図信号(mm,(変換後の)ma)の一致状況から適正な補正位置状態量を把握することができる。ここで、微小の「長さ」として、ΔxおよびΔyはともに200mmに、微小の「角度」としてΔθは1°に初期設定される。また、フラグは、スコアSが上昇したことを示す値として初期的に「1」が設定される(S5)。
【0055】
ここで、本実施の形態における貪欲法では、「遷移量」を三段階に精密化する手法が用いられる(S6A〜S6B)。すなわち、初期的には「遷移量」として、Δx・Δyを200mmに、Δθを1°に設定して(S5)、1回目の遷移処理(S100)を行う。そして、1回目の遷移処理(S100)の後に、「遷移量」を半分(Δθ=Δθ/2,Δx=Δx/2,Δy=Δy/2)にして(S8)、2回目の遷移処理を行う(S100)。そして、2回目回の遷移処理(S100)の後に、「遷移量」をさらに半分(Δθ=Δθ/2,Δx=Δx/2,Δy=Δy/2)にして(S8)、3回目の遷移処理を行う(S100)。
【0056】
次に、本実施の形態における貪欲法における遷移処理(S100)について説明する。なお、上記に示す1回目から3回目までの遷移処理(S100)は、スコアSが上昇しなくなるまで実効される(while(flg==1))(S7A〜S7B)。すなわち、遷移処理(S100)において、教示走行時の環境地図信号mmと変換後の環境地図信号maの一致率が上昇しなくなるまで環境地図信号mmを遷移させる処理がなされる。すなわち、これにより適正な補正位置状態量を把握することができる。
【0057】
図5に示すように、本実施の形態における貪欲法における遷移処理(S100)は、フラグを「0」に設定する処理から始まる(S101)。そして、θ、x、yの順に計算位置状態量(dθtry→dxtry→dytry)を遷移させ、スコアSの上昇の有無が判断される(S102〜S108,S109〜S115,S116〜S122)。
【0058】
以下、
図5に基づき、計算位置状態量について、dθcur→dxcur→dycurの順に説明する。
【0059】
(dθcurについて)
まず、θの計算位置状態量dθtryが、補正位置状態量dθcurに遷移量Δθを加算した値として設定される。ここで、x、yの計算位置状態量(dxtry,dytry)は、補正位置状態量(dxcur,dycur)がそのまま設定される(S102)。そして、スコアSが計算され(S103)、スコアSが上昇したか否か判断される(S104)。
【0060】
ここで、スコアSが上昇したと判断された場合には、θの補正位置状態量dθcurとして、上記の計算位置状態量dθtryが設定され、フラグが「1」に設定される。一方、スコアSが上昇したと判断されない場合には、処理S106が行われる。
【0061】
処理S106では、θの計算位置状態量dθtryが、補正位置状態量dθcurに遷移量Δθを減算した値として設定される。ここで、x、yの計算位置状態量(dxtry,dytry)は、補正位置状態量(dxcur,dycur)がそのまま設定される(S106)。そして、スコアSが計算され(S107)、スコアSが上昇したか否か判断される(S108)。
【0062】
ここで、スコアSが上昇したと判断された場合には、θの補正位置状態量dθcurとして、上記の計算位置状態量dθtryが設定され、フラグは「1」に設定される。一方、スコアSが上昇したと判断されない場合には、次に処理S109が行われる。
【0063】
(dxcurについて)
同様に、まず、xの計算位置状態量dxtryが、補正位置状態量dxcurに遷移量Δxを加算した値として設定される。ここで、y、θの計算位置状態量(dytry,dθtry)は、補正位置状態量(dycur,dθcur)がそのまま設定される(S109)。そして、スコアSが計算され(S110)、スコアSが上昇したか否か判断される(S111)。
【0064】
ここで、スコアSが上昇したと判断された場合には、xの補正位置状態量dxcurとして、上記の計算位置状態量dxtryが設定され、フラグは「1」に設定される。一方、スコアSが上昇したと判断されない場合には、処理S113が行われる。
【0065】
処理S113では、xの計算位置状態量dxtryが、補正位置状態量dxcurに遷移量Δxを減算した値として設定される。ここで、y、θの計算位置状態量(dytry,dθtry)は、補正位置状態量(dycur,dθcur)がそのまま設定される(S113)。そして、スコアSが計算され(S114)、スコアSが上昇したか否か判断される(S115)。
【0066】
ここで、スコアSが上昇したと判断された場合には、xの補正位置状態量dxcurとして、上記の計算位置状態量dxtryが設定され、フラグが「1」に設定される。一方、スコアSが上昇したと判断されない場合には、次に処理S116が行われる。
【0067】
(dycurについて)
同様に、まず、yの計算位置状態量dytryが、補正位置状態量dycurに遷移量Δyを加算した値として設定される。ここで、x、θの計算位置状態量(dxtry,dθtry)は、補正位置状態量(dxcur,dθcur)がそのまま設定される(S116)。そして、スコアSが計算され(S117)、スコアSが上昇したか否か判断される(S118)。
【0068】
ここで、スコアSが上昇したと判断された場合には、yの補正位置状態量dycurと
して、上記の計算位置状態量dytryが設定され、フラグは「1」に設定される。一方、スコアSが上昇したと判断されない場合には、処理S120が行われる。
【0069】
処理S120では、yの計算位置状態量dytryが、補正位置状態量dycurに遷移量Δyを減算した値として設定される。ここで、x、θの計算位置状態量(dxtry,dθtry)は、補正位置状態量(dxcur,dθcur)がそのまま設定される(S120)。そして、スコアSが計算され(S121)、スコアSが上昇したか否か判断される(S122)。
【0070】
ここで、スコアSが上昇したと判断された場合には、yの補正位置状態量dycurとして、上記の計算位置状態量dytryが設定され、フラグが「1」に設定される。
【0071】
上記の遷移処理(S100)はスコアSが「0」になるまで繰り返され(S7A)、前述のように「遷移量」を三段階に精密化して行われる(S6A〜S6B)。
【0072】
そして、上記の一連の処理(S2〜S6B)がなされた後に、スコアSが予め定められた設定スコアtsを超えるか否か判断する(S9)。ここで、スコアSが設定スコアtsを超えると判断された場合には、上記の一連の処理(S2〜S6B)により得られた補正位置状態量(dxcur,dycur,dθcur)を用い、この補正位置状態量のより自律走行時の自己位置状態(xa,ya,θa)が適正に推定され(S10)、処理を終了する(S11)。なお、本実施の形態では、設定スコアtsは「0.3」に設定されている。
【0073】
ここで、スコアSが設定スコアtsを超えないと判断された場合には、上記の一連の処理(S2〜S6B)のより得られた補正位置状態量(dxcur,dycur,dθcur)を用いることなく、デッドレコニングにより求められた値により自己位置状態(xa,ya,θa)を推定する。
【0074】
本実施形態のマイコン30内で処理される環境地図信号(mm,ma)は、上述のように2次元空間内の2値画像信号である。そのため、かかる信号(mm,ma)にて行われる貪欲法を用いた本実施形態における論理積演算は、3次元空間内の環境信号に基づく従来の論理積演算に比して、処理すべき情報量が少なく、通常の処理装置においても、非常に高速に演算されることが可能である。
【0075】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。