特許第5959062号(P5959062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959062
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】電流リード装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/32 20060101AFI20160719BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20160719BHJP
   H02G 15/34 20060101ALI20160719BHJP
   H01L 39/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H01L35/32 Z
   H01L35/30
   H02G15/34
   H01L39/02 ZZAA
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-538735(P2012-538735)
(86)(22)【出願日】2011年10月14日
(86)【国際出願番号】JP2011073717
(87)【国際公開番号】WO2012050205
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2010-231989(P2010-231989)
(32)【優先日】2010年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(72)【発明者】
【氏名】山口 作太郎
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05183965(US,A)
【文献】 特開平03−219604(JP,A)
【文献】 特表2009−503420(JP,A)
【文献】 特開2001−024243(JP,A)
【文献】 特開2004−006859(JP,A)
【文献】 特開平08−195309(JP,A)
【文献】 特開昭63−292610(JP,A)
【文献】 特開2002−324707(JP,A)
【文献】 特開平01−112316(JP,A)
【文献】 特開平05−267728(JP,A)
【文献】 特開2000−022226(JP,A)
【文献】 特開平07−176425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/34
H01L 39/02−04
H01R 4/68
H01F 6/04
H01L 35/30−32
F25B 9/00−14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流リード装置内に組み込まれた電流リード冷却用冷凍機と、
電流リードの低温端と超伝導ケーブルを液体窒素の沸点温度77Kに冷却する第1の冷凍機と、
を備え、
前記電流リード冷却用冷凍機は、
圧縮機、熱交換器、膨張機、又は、これらに加えてさらに第2の冷凍機を含み、
前記第1の冷凍機により前記液体窒素の沸点温度77Kで冷却される前記低温端と常温端300K間に接続される前記電流リードを、一端を前記常温端300Kとし他端を前記常温端と前記低温端の間の77Kよりも高い所定温度相当の箇所まで延在されたパイプで囲み、
前記パイプの前記他端から窒素ガスを前記パイプの前記一端側に流し、前記パイプの前記一端側からの前記窒素ガスを、前記圧縮機で圧縮して前記熱交換器で熱交換させ、さらに前記膨張機で膨張させた上で直接又はさらに前記第2の冷凍機を介して前記パイプの前記他端に循環させ前記所定温度の窒素ガスを前記パイプの前記他端から流す、電流リード装置。
【請求項2】
前記電流リードが、ペルチェ素子を、前記電流リードの常温側に備えている請求項1記載の電流リード装置。
【請求項3】
前記電流リードが、長手方向の前記パイプの前記一端と前記他端に対応する位置に、それぞれ第1、第2のペルチェ素子を備えている請求項1記載の電流リード装置。
【請求項4】
前記第1の冷凍機と前記電流リード冷却用冷凍機を併せた冷凍機を、圧縮機と、複数段の熱交換器、複数の膨張機を備えた並列型冷凍機で構成してなる、請求項1記載の電流リード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願についての記載]
本発明は、日本国特許出願:特願2010−231989号(2010年10月14日出願)の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み記載されているものとする。
本発明は、超伝導用電流リードに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導線が接続される低温側端子と常温側端子を接続する電流リードの熱侵入対策として、本願発明者は、ペルチェ電流リード(PCL)を用いて熱侵入量を低減する研究を行ってきた。この種の電流リードについては以下の特許文献等が参照される。
【0003】
しかしながら、電流リードには、更なる熱侵入低減が求められている。
【0004】
図1は、関連技術の電流リードを説明する図であり、常温端(300K)と低温端(77K)の間を銅ワイヤー(電流リード)で結んでいる。
【0005】
温度勾配によって熱が流れるため、銅リード内で発生するオーム発熱は、全て、77Kの低温端に入る。
【0006】
銅ワイヤーの断面を太くするかワイヤー長を短くすると、電流によるオーム発熱は減少するが、熱伝導による低温への熱侵入は増大する。
【0007】
一方、銅ワイヤーの断面積を小さくするか、ワイヤー長を長くすると、熱伝導による熱侵入は低減するが、オーム発熱は増大する。
【0008】
したがって、ワイヤーの長さと、断面積には最適値が存在することになる。
【0009】
このため、電流リードの設計では、熱流束の方程式を解き、最適解を求めることが必要になる。本発明者は、このようなソフト開発を行い、複数の論文を発表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−236342号公報
【特許文献2】特開2003−51625号公報
【特許文献3】特開2003−46150号公報
【特許文献4】特開2004−6859号公報
【特許文献5】特開2003−217735号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】R. Bromberg et al, “Current Lead Optimaization for Cryogenic Operation at Intermediate Temperature”, PSFC/JA-09-23, MIT Plasma Science and Fusion Center, Sept. 22, 2009. インターネット<URL:http://www.sankikeiso.co.jp/TechnicalInformation/Informationrefrigeratingcycle.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1−5及び非特許文献1の全開示内容はその引用をもって本書に繰込み記載する。
以下に、関連技術の分析を与える。
【0013】
図1に対応する最適解をリードの長さ方向に対する温度分布を図2に、熱流束を図3に示す。図2において、横軸は銅リードの規格化された長さ、縦軸は温度[K]、図3において、横軸は銅リードの規格化された長さ、縦軸は熱流束[W]である。ここでは、電流値を100Aとしている。リード長は77K側が原点であり、ゼロにしていて規格化を行い、300Kに対応する長さが1となっている。温度が300Kに近づくと温度分布の微係数がゼロに近づく。これは、外部からの熱伝導による熱侵入を最小化する。銅リードに電流を流すと発熱するが、温度勾配のため、この発熱は、全て低温側へ流れていく。図3にはこのことが示されている。
【0014】
このため、低温側の熱流束が大きくなる。したがって、常温端での熱侵入と電流リード全体の発熱の和が全て77Kの冷凍機への熱負荷となる。
【0015】
最適設計の結果、電流当たりの熱侵入量は、Q=42.5W/kAであるが、通常の設計値では50W/kAとして行うことが一般的である。したがって、電流が1kAでは、77Kへの熱侵入は50W(42.5W)であり、77Kでの改良型冷凍機のCOP(Coefficient of Performance:1Wあたりの冷却/加熱能力)を0.1とすると、この熱を常温側に組み上げるためには、50/0.1=500[W]の電力を消費する(COPを=0.067のスターリング冷凍機(アイシン精機社製)では50/0.067=746[W])。
【0016】
したがって、本発明の目的は、低温側への熱侵入の低減を図る電流リードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、低温側端子と常温側端子間に接続される電流リードを囲むパイプに冷媒ガスを低温側から高温側に流して熱交換させ、常温側で排出された冷媒ガスを複数段の冷凍機を介して前記パイプの低温側に循環させる、電流リードが提供される。
【0018】
本発明によれば、前記電流リードが、電流が流れることによって吸熱するペルチェ素子を、前記電流リードの常温側、又は、常温側と低温側に備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低温側への熱侵入の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】関連技術の電流リードの構成を示す図である。
図2】リード長に対する温度分布を示す図である。
図3】リード長に対する熱流速分布を示す図である。
図4】関連技術の2段電流リードの構成を示す図である。
図5】銅リードの熱流速と温度の関係を示す図である。
図6】3段電流リードの構成を示す図である。
図7】本発明の実施形態の一例(ガス熱交換型3段電流リード)を示す図である。
図8】本発明の実施形態の一例(ガズ熱交換型2段ペルチェ電流リード)を示す図である。
図9】冷凍機の原理を説明する図である。
図10】本発明の実施形態の一例(電流リード組む込み型冷凍機)を示す図である。
図11】関連技術の多段プレイトンサイクル冷凍機(並列型)の構成を示す図である。
図12】本発明の実施形態の一例(多段プレイトンサイクル冷凍機の電流リードへの組み込み)を示す図である。
図13】本発明の実施形態の一例(冷凍機を組み込んだペルチェ電流リード)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、まず、本発明の前提を説明し、つづいて実施形態を説明する。MIT(マサチューセッツ工科大学)のMinervini等のチームでは、現在、多段電流リード(Multi−stage Current Lead)の検討を進めている。図4に、現在検討されている構造を示す(非特許文献1)。これは、電流リードの途中に熱アンカー(thermal anchor:TA)を設置し、そこに冷凍ガス(液体)を循環させる方式である。この例では、150KにTAを置き、そこには、別の冷凍機から、150Kのガスを供給し、少し温度が上がったガスを循環させ、再度冷凍機で冷やし、温度を一定に保っている。この構造では、TAより高温側からの熱侵入は全てこのTAで吸収され、冷凍機2の熱負荷になる。
【0022】
そして、この温度より低い電流リードの部分でのオーム発熱よる熱侵入が77Kの冷凍機への熱負荷となる。したがって、77Kの冷凍機への熱負荷は減少する。
【0023】
温度が下がると、銅の電気抵抗は下がるので、150K以下の発熱は300K以下の発熱に比べてかなり小さくなる。
【0024】
一方、150Kへの熱侵入量Q2と77Kへの熱侵入量Q1と、図1での77Kへの熱侵入量Q0の関係は、
Q0=Q1+Q2 ・・・(1)
となる。
【0025】
2つの冷凍機が吸収する熱負荷の和は変化しないが、冷凍温度の高い冷凍機のCOPは大きくなるので、2つの冷凍機の消費電力の和は減少する。この効果を実際に見積もってみる。図5に、電流リードの熱流束に対する温度の関係を示す。横軸が温度であり、縦軸は熱流束である。図5は、図2図3のデータを書き直して得たものである。図5において、
77Kでの電流あたりの熱流束は42.5W/kAであり、
123Kでの電流あたりの熱流束は40.7W/kAである。
【0026】
このため、電流を1kAとすると、冷凍機1には1.8W(=42.5−40.7)の熱負荷となる。冷凍機2には40.7Wの熱負荷となる。冷凍機のCOPは温度によって異なり、温度が高いと、COPは大きくなる。
【0027】
例えば冷凍機型番MDF−1156AT(三洋電機社製)は、−152℃(=123K)まで冷却可能であり、COP=0.221となっている。また、型番MDF−793では−85℃(=188K)まで冷却可能であり、COP=0.75となっている。このため、図5には、それぞれの温度での熱流束を記入した。
【0028】
図4では、TA(Thermal Anchor)温度を150Kとしているが、2つのケース(TA温度が123Kと188Kの2つ)について検討を行う。
【0029】
ケース1(TA温度=123Kの場合)、
前提条件として、77Kまで冷却する冷凍機はスターリング冷凍機とし、COP=0.067とする。図5から、123Kまでの熱流束は40.7Wであるので、これを常温まで汲み上げるために必要な電力は、40.7/0.221=184.2Wとなる。
【0030】
また、77Kへの熱負荷は1.8Wであるため、この冷凍機の消費電力は1.8/0.067=26.9Wとなる。したがって、その合計は211.1Wの電力が消費される。
【0031】
77K冷凍機のみで冷却(単段冷却)を行うと、42.5/0.067=634.4Wとなる。図4の場合の消費電力211.1Wは、単段冷却の場合の消費電力634.4Wのほぼ1/3になる。
【0032】
ケース2(TA温度=188Kの場合)
188Kまでの熱流束は35.2Wであるので、これを常温まで汲み上げるために必要な電力は、35.2/0.75=46.9Wとなる。
【0033】
また、77Kへの熱負荷は7.3Wであるため、この冷凍機の消費電力は、7.3/0.067=109Wとなる。したがって、合計は155.6Wの電力が消費される。すなわち、消費電力は単段冷却の場合の24.5%程度にまで減少する。
【0034】
したがって、段数を増やせば、消費電力の低減に、より効果的であることが期待できる。
【0035】
以下では、3段構成について説明する。つまり、TA(Thermal Anchor)を電流リード2カ所に取り付ける。
【0036】
<実施形態1>
図6は、3段電流リードの構成を示す図である。つまり、3つの冷凍機1、2、3を用いる。この場合、冷凍機1(77K)への熱負荷は、1.8Wであり、消費電力は26.9Wである。冷凍機3(188K)への熱負荷は35.2Wであり、消費電力は46.9Wである。
【0037】
そして、冷凍機2(123K)の熱負荷は5.5Wであり、消費電力は24.9W(=5.5/0.221)となる。したがって、消費電力合計は98.7Wを得る。
【0038】
これは、現状の電流リードからの熱を常温に組み上げるために使われる消費電力の15%となる。
【0039】
このように、多段化することによって、実効的に熱侵入を低減することができる。
【0040】
ガス冷却電流リードは、1970年代に提案されたものであり、これによって初めて実験室レベルでも超伝導マグネットが使えるようになった。電流リードからの熱侵入によって超伝導マグネット等を冷却している液体冷媒が気化し、そのガスが電流リード内を流れて常温部から外に排出されるシステムになっている。このため、常に冷媒を供給する必要があるため実験用の機器に使えても、送電線のようなシステムには利用できなかった。
【0041】
しかし、このガスを再度、冷却に回せば、定常システムとして利用できる。更に、この考えは、電流リードは電位が高くなるため、熱交換器であるTAは、冷凍機との電気絶縁を行うために構造が複雑化するが、このような問題は対応可能である。特に、3段以上のシステムでは対応可能となる。
【0042】
<実施形態2>
図7は、本発明によるガス熱交換型3段電流リードの構成を示す図である。図7において、冷凍機2からの冷媒ガスは、電流リード11を囲んでいるパイプ12中を低温側から高温側に流れ、その間で熱交換をして、常温(300K)で排出される。それが、冷凍機3を経て、冷凍機2に至る経路で循環する。すると、冷凍機3は、少なくとも電気絶縁処理をガス冷却路で行う必要がなく、新たにTA(サーマルアンカー)を高圧の電流リードに設ける必要がない。このため、電流リードの構造が単純化される。更に、冷媒ガスは常温まで温度が上がってから冷却する。よって、冷凍機2、冷凍機3の熱交換器が小型になる。このため、熱侵入量は、図6と同等であるが、システム全体は工学的に容易になる。
【0043】
以上のガス循環システムの他の特徴は、電流に応じて循環ガス量を制御することにより、電流に応じた最適運転が可能になることである。
【0044】
電圧は一定に保持されるが、電流は機器の負荷によって変化するのが一般的である。このため、電流リードから低温側に入る熱量は、電流によって変化する。これを循環ガス量を変えることによって、常に最適運転を行うことができるようになる。
【0045】
<実施形態3>
ペルチェ電流リード(PCL)に対しても適用できる。図8に、その一例(ガス熱交換型2段ペルチェ電流リード)を示す。電流リード11の常温部には、ペルチェ材料(Peltier Material)13が配設されている。この部分(ペルチェ材料部)を通じて電流が流れ、ペルチェ効果により熱侵入が低減できる。この構成において、冷却ガス循環させるのである。これによって、ペルチェ電流リード(PCL)に熱侵入を低減することができる。なお、図7図8について、電流値に応じて循環ガスの流量調整を行うシステムを組み込み、電流値に応じてガス量の増減を制御する機構を導入してもよい。これによって、システム全体の効率を向上させる。
【0046】
この場合には、ペルチェ材料13は薄く作られる。しかし、温度差は、100K程度発生する。ここで、十分にガスが熱交換するのは困難になる可能性が高い。この問題を避けるためには、循環ガスを液体にすることが良い。液体は、気体に比べて熱伝達率が2桁近く高いからである。具体的にはフロン系や炭化水素系等の冷媒を加圧して利用する手段が一般的になろう。図4に示す構造では、150Kで冷却したガス(Cold Gas)の行き先が書かれていない。つまり、今までに発表されてきた論文、例えばMITの論文では、ガス循環については記述がない。このため、冷媒ガス循環について、図7図8で具体的に示してきた。しかし、このような循環は、冷凍機それ自身の内部で行われている。
【0047】
<冷凍機>
ここで、本発明で用いられる冷凍機の一例について説明する。図9に、関連技術の冷凍機の原理を示す。冷凍機は、圧縮機、膨張弁及び2つの熱交換器からなっている。圧縮機で高温高圧のガスが生成される。これが熱交換器を通じて高圧常温に冷却される。次に、膨張弁で高圧ガスが低圧になると同時に温度が下がる。等エンタルピー過程と言われ、断熱膨張過程である。そして、低温になったガスが熱交換器を通じて冷却対象物を冷却する。尚、図9では、「熱の移動」と書かれている矢印の方向が逆である。このような冷凍機の問題点は、低温側で熱交換した低圧ガスはまだ温度が低いにもかかわらず、圧縮機で高温高圧ガスになることである。可能なら常温まで使いたいのであるが、これでは通常は冷凍機の役割に合わない。このため、ここでは、エクセルギー損失があり、冷凍機システムの効率を下げる。しかしながら、図7及び図8をその観点で見ると、冷凍機への入力は、常温ガスになっている。
【0048】
したがって、冷凍機の循環冷媒を直接電流リードに循環させると、上記したような問題は生じない。このため、効率が高くなる。さらに、冷凍機で利用している熱交換器が不要となるため、熱交換器損失が減少し、システムの全体の効率を向上させる。
【0049】
<実施形態4>
図10に、本発明の実施形態4の一例を示す。図10では、冷凍機自身が電流リード内に組み込まれていることが分かる。つまり、低温側の熱交換器15自体が電流リードでの熱交換器を兼ねており、常温端から出てきた冷媒ガスは、圧縮機14で高温高圧になり、熱交換器15で温度が下がる。そして、膨張弁16で、低圧低温ガスになり、電流リード11のパイプ12に導かれる。例えば、高圧窒素ガスボンベからの高圧常温ガスを市販のJT弁(ジュール・トムソン弁)と呼ばれる膨張弁に導くと容易に−120℃程度の低温ガスを作ることができる。このため、圧縮機は市販されている窒素ガスボンベに貯める程度の機器で良い。
【0050】
図10には、図示されていないが、熱交換器から膨張弁の間に、高圧ガスボンベ等のガス・リザーバー等のガス貯蔵設備を設け、更に、常温端からのガスもリザーバーを設けると、圧縮機は常に稼動させる必要が無く、システム全体の信頼性を向上させることができる。なお、図10では、電流リードに入るガス温度が188Kであるが、実際には、冷凍機のCOP及び電流リードの熱侵入等を考慮して決められる。また膨張弁16は、電流によって制御する機構を取り付けてもよいことは勿論である。すなわち、電流値によって変化する熱流束に合わせて冷媒循環量を変化させる。これによって、システムの全体の効率を向上させる。
【0051】
以上では、冷凍機1と電流リード冷却用の冷凍機が別々としていたが、効率の良い冷凍機に多段ブレイトン冷凍機がある。
【0052】
<多段ブレイトン冷凍機>
図11に多段ブレイトン冷凍機の一例を示す。図11は、並列型と呼ばれるタイプで、Qrが低温で吸熱を行う熱交換器部分である。また、放熱器も熱交換器である。膨張機は2つあり、低温用と中温用であり、これによって最適化を行う。極低温の冷凍機では、低温熱交換器を通じてQr熱量を吸収した後の循環ガス温度はまだ低温のため、これを熱交換器(3)、(2)、(1)を通じて、膨張を行う前の高圧ガスを冷却する。
【0053】
これによって冷凍機の熱効率を向上させている。つまり、冷凍機と言っても、内部には複数の温度で熱交換を行う構成になっていて、低温用の冷凍機はこの様な構成が一般的である。
【0054】
<実施形態5>
そこで、本発明の実施形態5として、図12のような冷凍機を提案する。図12は、多段プレイトンサイクル冷凍機の電流リードへの組み込みを示す図である。膨張機(2)では、液体窒素温度まで冷却を行い、電流リードの低温端から超伝導ケーブルを含むシステムを冷却するために用いる。つまり、図6において、冷凍機1に対応させる。
【0055】
一方、中間温度の熱交換器(2)と熱交換器(1)については、冷凍機2、冷凍機3にそれぞれ対応させる。熱交換器を少し大きくして、この部分に、電流リードの中間ステージ(TA:サーマルアンカー)冷却用の冷凍機を兼ねる。具体的には、電流リード11のTA(サーマルアンカー)と、熱交換器の間で冷媒を循環させる。
【0056】
他の方法としては、ブレイトンサイクル冷凍機内の作動ガスをそのまま電流リードのTA(サーマルアンカー)に流し込むようにして循環させるようにしてもよい。この場合、構成上、一台の冷凍機で、図6に示した複数の冷凍機を兼ねることができる。
【0057】
上記したように、熱交換器(2)は、膨張機(1)によって、低温ガス量が増えているので、この部分で熱吸収は大きくすることができる。このため、工学的な合理性が高くなる。
【0058】
本実施形態では、並列型ブレイトンサイクル冷凍機を例に説明したが、直列型や膨張機の他にJT弁を利用した多段子予冷型クロードサイクル冷凍機(コリンズ型)等の冷凍機もある。
【0059】
<実施形態6>
本発明の実施形態6においては、低温でのみ性能が向上するペルチェ材料として、低温での性能指数の高いBiSbを用いる(超格子を利用した材料が知られている)。このような構成は、流すガス量を変化させることによって最適設計が可能になる。図13は、本実施形態の構成を示す図である。図13に示すように、電流リード11の低温側にペルチェ材料2(17)を備えている。その他の構成は図8と同様であり、電流リード11の常温側にペルチェ材料1(13)を備えている。
【0060】
なお、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
11 電流リード
12 パイプ
13、17 ペルチエ材料
14 圧縮機
15 熱交換器
16 膨張弁
Q0〜Q4、Q6 熱流速
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13