(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作業口には、手を挿入するための主筒と、前記主筒から分岐し作業道具を挿入するための副筒を備えていることを特徴とする請求項4に記載の鉄骨の表面処理用ブース。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔は建設時に鋼材の表面に溶融亜鉛めっきを施すことにより、防食処理が施されている。しかし、自然環境の様々な腐食性因子の影響を受け、めっき層が消耗することで補修が必要となる。特に、海塩粒子の影響を受ける地域や化学物質の濃度が高い重工業地域では、鋼材の孔食や減肉を生じやすい。
【0003】
腐蝕によってめっき層が消滅して鉄地が露出すると、錆は急速に進行する。そこで、錆を発見すると補修を行う(錆が生じるまでは、減肉の程度はわからない)。従来の補修は、素地調整(錆び落とし)をしてから、防錆塗装を行う。防錆塗装は下塗り塗料(防錆剤)と上塗り塗料(色彩・光沢保持、耐候性維持)を塗布するのが一般的である(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、補修は当然ながら現地で行うものであるため、素地調整にはワイヤーブラシ、サンダーやジェットタガネなどが用いられる。これらの手段では2種ケレン(古い塗膜や亜鉛メッキ上の表面錆を除去する程度のケレン)程度しか行うことができず、1種ケレン(錆を完全に除去し、光沢面を出す程度のケレン)は行うことができない。そして、2種ケレン程度の素地調整では、凹凸部や狭隘部の錆を除去することができず、また、塗装の下に残留した錆により腐蝕が進行してしまう。
【0005】
また、現地で行う塗装施工は工場内で行う塗装施工に比べ、施工環境も悪く、素地調整を含む品質確保が難しいことから、塗膜の密着性能や遮蔽効果が弱いという問題もある。これらの要因から、従来の不完全な素地調整(2種ケレン)と塗装による補修の効果はさほど大きくなく、わずか数年で再補修が必要になってしまう。またその際に鋼材の減肉も伴うため、部材取替の時期も早まってしまう。
【0006】
なお、塗装による補修の代わりとしては、部分的または全面的な部材取替や鉄塔建替がある。しかし部材取替は、一時的に荷重を支持する治具を作成したり、足場を組んで大がかりで長期な工事となるため、多額のコストが必要になる。特に取り替える部材が主柱材や腕金主材(応力材)などである場合には送電の長期停止を伴ってしまうため、できる限り回避したい対処である。
【0007】
鉄骨が露出した構造物は、鉄塔ばかりではなく、ビルの非常階段、電波塔、信号や電柱の鋼管柱、ガードレールなど、様々なものが設置されている。そしてこれらは、みな同様の課題を擁している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
鉄塔の部材劣化を防止し長寿命化を図る上で、補修の効果を高めることが重要である。そのためには、平面部はもとより凹凸部や狭隘部まで限りなく1種に近い程度のケレンを行うこと、および遮蔽効果が高く耐久性が高い防錆皮膜を作ることが重要である。
【0010】
ここで、1種ケレンはオープンブラストで行うことになっている。オープンブラストとは、作業と同時に研削材を回収しないブラスト処理のことである。すなわち、鉄塔におけるケレンもオープンブラストで行うことが考えられる。実際に、橋梁の塗り替えの際にオープンブラストでケレンを行った例がある(石川県の犀川大橋:2008年の塗替工事)。
【0011】
しかしながら、現地で鉄骨に対してオープンブラストを行うとなると、多量の研削材が周囲に飛散してしまうという環境問題がある。工場内で施工するのであれば研削材が飛散しても問題は解決できるが、鉄塔は地上に設置される建造物であり、かつ高所で作業を行うことため、飛散した研削材が風に乗って居住区、道路上、田畑や河川に広く降りそそいでしまうおそれがある。このため、鉄塔においてオープンブラスト等によってケレンを行うことは不可能に等しかった。
【0012】
一般的に養生が出来ない現地での補修用ブラストは、バキュームブラストが使われている。投射された研削材を即バキュームで回収していく方法のブラスト装置であるが、平面部のみに対応可能であり、端部や凹凸部や狭隘部では研削材が予想外の方向に飛び散るため、バキュームで回収することができず、鉄塔での使用は困難である。
【0013】
一方、遮蔽効果が高く耐久性が高い皮膜としては、溶射皮膜を形成することが考えられる。溶射装置は電気式溶射とガス式溶射に大別できるが、電気式アーク溶射機の一種として、出願人らは低温で溶射可能な溶射機を提案している(特願2010−114614)。溶射であれば犠牲防食効果のある亜鉛を基本にアルミや、アルミマグネシウム、錫などの皮膜を形成することができるため、以後の防食に有効である。
【0014】
遮蔽効果が高く耐久性が高い溶射皮膜を現地の鉄骨に確実に付着させるために粗面化が必要になる。特許文献2(特許第4502622号)ではディスク状やベルト状の基盤に砥粒を固着した電動工具等で被溶射体の表面に平均粗さ(Ra)が2〜10μmの素地が得られれば、溶射皮膜が密着するとされている。しかし、ディスク状やベルト状の電動工具等では平面部でしか粗面化できず、段差や凹凸部、狭隘部では粗面化は困難である。また特許文献2では粗面の粗さについて厳密に管理しようとしているが(平均粗さRaが2〜10μm、より望ましくは5〜8μmの範囲が最適であると述べている)、オープンブラストでは、容易に平均粗さ(Ra)が20μm以上の素地を得ることができるため、研削材の粒径さえ適切なものを選択すれば粗さの管理が要らず、強い密着度も得ることができる。しかしながら特許文献2においても、高所でのブラスト処理は研削材や粉塵の回収が困難であるため適用しにくいことが記載されている(段落0009など)。
【0015】
また溶射においても、溶融して吹き付ける金属の全てがワークに付着するわけではなく、しかも鉄塔のアングル材や鋼管ではむしろ散逸する材料の方が多い。したがって、オープンブラストほどではないにしても、多量の粉塵が発生する。このためオープンブラストと同様に、鉄塔の補修に溶射粉塵を飛散させずに溶射皮膜を形成することは難しい。
【0016】
ここで、補修を行う対象物が小さければ、全体を養生シート等で覆うことにより粉塵の飛散防止を図ることも考えられる。しかし、鉄塔のような大きな構造物では、全体を隙間なく覆うことも非現実的である。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑み、鉄骨が露出した構造物においてケレンやオープンブラストの粉塵の飛散を防止し、オープンブラスト、溶射や塗装等の表面処理における環境汚染を回避し、作業員の安全な作業環境を確保することが可能とする鉄骨の表面処理用ブースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明にかかる鉄骨の表面処理用ブースの代表的な構成は、鉄骨に取り付けられ作業空間の端面を形成する複数の端面部材と、複数の端面部材に張り渡されて鉄骨の周囲に作業空間を形成するシートと、端面部材の外周部に配置されシートを固定するクリップと、を備え、シートは鉄骨を巻回する方向に分割された複数の分割シートからなり、分割シートの端辺に取り付けられた面ファスナによって互いに接合することを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、鉄骨に沿って、粉塵の飛散を防止できる空間を極めて簡単に構築することができ、作業者はブースの外にいて、シートに作業用穴を設けてノズル等の機械を挿入し、鉄骨に処理を施すことができる。したがって、補修を行う箇所にこのブースを取り付け、補修が済んだら取り外し、また次の補修を行う箇所に取り付けることを繰り返すことにより、鉄骨が露出した構造物の全体について粉塵を発する作業を行うことができる。すると、鉄塔のように屋外の高所作業であってもオープンブラストによる素地調整および金属溶射を行うことが可能となり、信頼性・耐久性の高い補修を行うことができる。これにより補修の間隔を長くし、また部材取替までの期間を大幅に延長させることができるため、保守上必要なコストを大幅に低減させることが可能となる。また、刷毛ではなくスプレーによる塗装も可能になり、利便性を飛躍的に向上させることができる。
【0020】
ここで、鉄塔は複数の鉄骨や補助材(ブレース材)を接合して構成されているため、作業箇所は、鉄骨が1本だけの箇所もあればそうでない箇所もあり、鉄骨と補助材(ブレース材)が接合された接点部にもブースの設置が必要とされることがある。このとき、従来は1枚もののシートを鉄塔に巻きながら適宜カッターで切り、余分な切れ目は養生テープで塞いでいた。しかしながら、この方法であると、手間がかかる上に、密封が難しくブラスト材の漏れが生じやすかった。
【0021】
上記従来の手法に対し、本願では、作業空間を形成するシートは複数の分割シートからなる。このように予め分割された分割シートを用いることにより、作業現場において切断する必要がなく、面ファスナによって容易かつ確実に接合可能であるため、隙間を解消してブラスト材の漏れを防止できる。また分割シートの合わせ目が面ファスナで接合されるため、ブースの長手方向(鉄骨の軸方向)に沿って任意の箇所で任意の範囲を開閉可能である。したがって、後述するのぞき窓や作業口の開口作業が不要となり、作業の省力化が図れる。更に、上記構成によれば、ブラスト作業位置が上部から下部部材へ多少移動しても容易にのぞき窓や作業口の位置変更が可能となるため、ブースの配置換え作業が不要となり、作業をより省力化することが可能となる。
【0022】
上記分割シート同士の接合部は、両側の分割シートの端辺が共に外側に突出する向きに接合されるとよい。これにより、面ファスナをつまんで圧着させることができるため、複数の分割シートを容易且つ確実に接合することができる。
【0023】
当該表面処理用ブースは、透明の板材の端面に面ファスナを取り付けたのぞき窓を更に備え、のぞき窓を前記分割シートの合わせ目に挿入して、該のぞき窓の面ファスナと前記分割シートの面ファスナを接合しているとよい。これにより、表面処理用ブース内を観察するためののぞき窓を容易に設置することができ、良好な作業性が得られる。
【0024】
当該表面処理用ブースは、筒体の外周面に面ファスナを取り付けた作業口を更に備え、作業口を分割シートの合わせ目に挿入して、作業口の面ファスナと分割シートの面ファスナを接合しているとよい。これにより、作業時に手やブラストホースを挿入するための挿入口を容易に確保することができ、良好な作業性が得られる。
【0025】
上記作業口には、手を挿入するための主筒と、主筒から分岐し作業道具を挿入するための副筒を備えているとよい。仮に1つの作業口に手およびブラストホースの両方を挿入する場合、それらの間に隙間が生じ、ブラスト材が漏れ出てしまうことが懸念される。これに対し、上記のように手およびブラストホースを別々に挿入する構成とすることにより、隙間の発生、ひいてはブラスト材の漏れを防ぐことが可能となる。
【0026】
上記クリップは、端面部材の側面に設けられていて、端面部材の側面に近づくように斜めに移動可能なスライダからなり、スライダと端面部材の側面によって分割シートを挟持するとよい。かかる構成により、クリップ(スライダ)を上下させるだけで分割シートを挟持可能となるため、シートの取付および取外し、ひいては表面処理用ブースの設置および解体作業を容易に行うことができる。
【0027】
上記端面部材は複数のパーツに分割されていて、複数のパーツを組み合わせることによって鉄骨を挟み込んでこれに固定する構成であって、組み合わされるパーツの一方には締結用のボルトを有し、他方のパーツにはボルトの頭を挿通させるダルマ孔を有するとよい。かかる構成により、鉄骨を中心とする全方向に端面を張り出させることができる。特に、締結用のボルトを用いる場合において、上記のように他方のパーツ(受け側の部材)にダルマ孔を設けることにより、受け側の部材において高い強度を得ることができ、強固な締結が可能となる。また、締結用ボルトは鉄骨の幅に応じて締結位置を調整することができるように端面部材に設けられたスリット内をスライド可能であり、幅の異なる鉄骨であっても柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、鉄骨が露出した構造物においてケレンやオープンブラストの粉塵の飛散を防止し、オープンブラスト、溶射や塗装等の表面処理における環境汚染を回避し、作業員の安全な作業環境を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0031】
図1は本実施形態にかかる鉄骨の表面処理用ブース(以下、単に「ブース100」という。)の構成を説明する図である。ブース100は、大別して上端面部材110および下端面部材130、これらの間に張り渡されるシート150、ならびにかかるシート150を上端面部材110および下端面部材130に固定するクリップ128・148から構成される。ブース100は鉄骨に取り付けて使用されるものであり、
図1では鉄骨の例として、鉄塔10(
図9参照)の鉄骨12(主柱材)と補助材14(いずれも山形鋼)を描いている。
【0032】
上端面部材110および下端面部材130は、いずれも鉄骨12に取り付けられ、鉄骨12の軸方向にほぼ直交する作業空間の端面112・132を形成する。なお、上端面部材110、下端面部材130の外周の形状は、本実施形態に例示した四角形のほか、丸、多角形など、いずれの形状であってもよい。
【0033】
上端面部材110の外周面には全周に亘って複数のクリップ128が配列されていて、これにシート150の上縁を挟み込んで固定(把持)することができる。同様に、下端面部材130の外周面には全周に亘って複数のクリップ148が配列されていて、これにシート150の下縁を挟んで固定することができる。なお、クリップ128・148の数(間隔)については限定するものではなく、内部から粉塵が噴出しない程度の数(間隔)とすればよい。
【0034】
図2は上端面部材110の構成を説明する図である。
図2(a)は上端面部材110を上方から観察した斜視図であり、
図2(b)は上端面部材110を下方から観察した斜視図である。
図2(a)に示すように、本実施形態において上端面部材110は複数のパーツ、すなわちL字型をした第1部材114と、ほぼ正方形の第2部材116とから構成されている。
図2(b)に示すように、本実施形態の第1部材114および第2部材116は、底面が開放された箱形をしている。これらの第1部材114の天面114aと第2部材116の天面116aが、あわせて上端面部材110の端面112(
図1参照)を構成する。
【0035】
本実施形態では、第2部材116において第1部材114と隣接する面(側面116b・116c)には、水平方向に延びる第2スリット孔124a・124bと、かかる第2スリット孔124a・124bに挿通された締結用のボルト126a・126b(蝶ボルト)がそれぞれ設けられている。このボルト126a・126bは、第2スリット124a・124b内において水平方向にスライド可能である。一方、第1部材114において第2部材116と隣接する面(側面114b・114c)には、ボルト126a・126bの頭を挿通可能な径を有する挿通孔121a・121bと、その挿通孔121a・121bから水平方向に延びる第1スリット孔122a・122bとからなるダルマ孔120a・120bが形成されている。
【0036】
更に本実施形態では、第1部材114の天面114aに、集塵用の開口部118が設けられている。この開口部118にバキューム式の集塵機(不図示)を取り付けることで、ブース100内に発生した粉塵を作業中に逐次集塵することが可能となる。これにより、ブース100内における塵埃の舞い上がりを防ぎ、ブース100内の視界を良好に確保することができる。
【0037】
図3は下端面部材130の構成を説明する図である。
図3(a)は下端面部材130を上方から観察した斜視図であり、
図3(b)は下端面部材130を下方から観察した斜視図である。
図3(a)に示すように、下端面部材130は上端面部材110と同様に、複数のパーツ、すなわちL字型をした第1部材134と、ほぼ正方形の第2部材136とから構成されている。
図3(b)に示すように、下端面部材130においても第1部材134と第2部材136は、天面が開放された箱形をしていて、これらの第1部材134の底面134aと第2部材136の底面136aが、あわせて下端面部材130の端面132(
図1参照)を構成する。
【0038】
本実施形態では、第2部材136においても上端面部材110の第2部材116と同様に、第1部材134と隣接する面(側面136b・136c)に第2スリット孔144a・144b、およびそれに挿通された締結用のボルト146a・146bがそれぞれ設けられている。このボルト146a・146bにおいても、第2スリット孔144a・144b内において水平方向にスライド可能である。また第1部材134においても上端面部材110の第1部材114と同様に、第2部材136と隣接する面(側面134b・134c)に、ボルト146a・146bの頭を挿通可能な径を有する挿通孔141a・141bおよび第1スリット孔142a・142bをそれぞれ組合わせてなるダルマ孔140a・140bが設けられている。
【0039】
更に、第1部材134の底面134aには集塵用の2つの開口部138a・138bが設けられ、第2部材136の底面136aには集塵用の開口部138cが設けられている。下端面部材130においては粉塵が重力で落下してくるため、開口部138a・138b・138cには単に集塵袋を接続すれば足りる。
【0040】
図4は、第1部材134および第2部材136の結合を説明する図である。なお、上端面部材110の第1部材114および第2部材116の隣接する側面同士、ならびに下端面部材130の第1部材134および第2部材136の隣接する側面同士はすべて同一の構造を有し、同一の方法によって結合される。したがって、以下、第1部材134の側面134cと第2部材136の側面136cを結合する場合を例示して説明する。
【0041】
図4に示すように、第1部材134のダルマ孔140bの挿通孔141bに第2部材136のボルト146bの頭を挿通し、かかるボルト146bの軸を第1スリット孔142bおよび第2スリット孔144b(
図3(a)参照)内に配置してボルト146bを締め付ける。これにより、
図1に示すように第1部材134および第2部材136からなる下端面部材130が、鉄骨12を挟み込んだ状態でそれに固定される。このように、下端面部材130を第1部材134および第2部材136からなる複数のパーツに分割した構成としたことにより、鉄骨12を中心とする全方向に端面132を張り出させることができ、上端面部材110においても同様の効果が得られる。また第1スリット孔142bおよび第2スリット孔144bによってボルト146bが水平方向にスライド可能であるため、鉄骨12の幅に応じて締結位置を調整することが可能となる。
【0042】
なお、本実施形態では、第1部材にダルマ孔を形成し、第2部材にボルトを設ける構成を例示したが、これに限定するものではなく、逆の構成とすることも可能である。また複数のパーツの結合構造は、第1部材または2部材において、一方のパーツのうち他方と隣接する面にフックを設け、そのフックに他方のパーツの側面を噛み合わせる、いわゆる嵌め合い固定としてもよいし、Cクランプで締めたり、パッチン錠で固定してもよい。更に、複数のパーツを蝶番で接続しておき、開閉して鉄骨12を挟み込むように構成してもよい。ただし、上記のようにフックを噛み合わせる等の構成であると、剛性が低く、固定時にガタつきが生じるおそれがある。したがって、好ましくは、本実施形態のようにボルト締めによって固定することが好ましい。
【0043】
ここで、単なるボルト締めであると、作業時にボルトの落下事故を招くおそれがある。このため、ボルトを用いる際には、ボルトが一方のパーツに係合された状態とする必要がある。すると、他方のパーツにボルトを挿通するためには、かかる他方のパーツにおいてスリットの一端近傍を切り欠かなければならず、スリット近傍の剛性の低下が生じてしまう。
【0044】
これに対し、本実施形態では第1部材(組み合わされる他方のパーツ)にボルトの頭を挿通可能なダルマ孔を形成しているため、切り欠きを形成することなく第1部材にボルトを挿通することができる。したがって、ボルトの落下事故を防ぎ、作業上の安全を確保しながらも、第1部材(他方のパーツ)において高い強度を得ることができ、第1部材および第2部材(複数のパーツ)を強固に締結することが可能となる。
【0045】
図5は、シート150の詳細について説明する図であり、
図5(a)はシート150を上端面部材110に固定する作業について説明する図であり、
図5(b)は水平方向におけるシート150の断面図である。シート150は、上端面部材110と下端面部材130の外周に張り渡されることによって、鉄骨12の周囲に作業空間を形成する(
図1参照)。シート150は、内部で溶射を行う場合には、耐熱性の高いポリプロピレンや塩化ビニルなどを主材とした樹脂を用いることが好ましい。後述するように、本実施形態のシート150は、鉄骨12を巻回する方向に分割された複数の分割シート152a〜152fからなり、分割シート152a〜152fのそれぞれの端辺に取り付けられた面ファスナ154a〜154lによって互いに接合される。
【0046】
シート150によって作業空間を形成する際には、まずシート150(厳密には分割シート152a〜152f)の上端を上端面部材110に取り付ける。上述したように、上端面部材110の外周面(側面)にはクリップ128が複数配列されていて、この複数のクリップ128によってシート150の上端を上端面部材110に取付可能となる。
【0047】
特に本実施形態では、クリップ128を、端面部材(上端面部材110および下端面部材130)の側面に近づくように斜めに移動可能なスライダとしている。そして、
図5(a)に示すように、シート150の上端を上端面部材110の側面に当接させ、かかる上端面部材110の側面に近づくようにクリップ128を下方にスライドさせる。これにより、クリップ128の下辺と上端面部材110の側面とによって挟持されることで、シート150の上端が上端面部材110に固定される。なお、図示はしていないが、下端面部材130にシート150の下端を取り付ける際には、シート150の下端を下端面部材130の側面に当接させ、かかる下端面部材130の側面に近づくようにクリップ148を上方にスライドさせる。
【0048】
上記構成のようにクリップ128・148をスライダとしたことにより、それを上下させるだけでシート150を挟持し、端面部材に固定することが可能となる。また上端面部材110ではクリップ128を上方に、下端面部材130ではクリップ148を下方にスライドすることによりシート150を端面部材から取り外すことができる。したがって、本実施形態の構成によれば、クリップ128・148を上下に移動させるだけでシート150の取り付けおよび取り外し作業を容易に行うことが可能である。
【0049】
クリップ128・148によって、シート150(分割シート152a〜152f)の上端および下端を上端面部材110および下端面部材130に固定したら、複数の分割シート152a〜152fを接合する。上述したように、本実施形態では分割シート152a〜152fの端縁に面ファスナ154a〜154lが取り付けられていて(
図5(b)参照)、その隣接する分割シート152a〜152fそれぞれの端縁をつまみ、面ファスナ154a〜154lをそれぞれ圧着させることにより、複数の分割シート152a〜152fが接合され、1つの大きなシート150となる。
【0050】
なお、分割シート同士の接合部は、
図5(b)に示すように両側の分割シート152a〜152fの端辺が共に外側に突出する向きに接合されるとよい。仮に、隣接する分割シート同士の接合部が、一方の分割シートの外面に他方の分割シートを被せる、すなわち引き違いに接合されると、分割シート同士の接合部を両側(外側および内側)から押さえ込めないため、圧着が不十分になり、接合部に隙間が生じる可能性がある。
【0051】
これに対し、本実施形態の構成によれば、分割シート同士の接合部が共に外側に突出しているため、かかる接合部を両側からつまんで圧着させることができ、複数の分割シート152a〜152fを容易且つ確実に接合可能である。また本実施形態のブース100では、後述するように分割シート同士の接合部にのぞき窓160や作業口170が設けられるが(
図1参照)、上記のように分割シート同士の接合部が共に外側に突出していることにより、のぞき窓や作業口を設置した際の隙間の発生を防ぐことが可能である。
【0052】
上記説明したように、本実施形態のブース100によれば、クリップ128・148によってシート150(分割シート152a〜152f)の上端および下端を上端面部材110および下端面部材130に固定し、分割シート152a〜152fの端縁の面ファスナ154a〜154lを接合することで、ブース100によって囲まれた作業空間を鉄骨12の周囲に容易に形成することが可能となる。したがって、従来のように1枚もののシートを鉄塔10に巻きながら適宜カッターで切り、余分な切れ目を養生テープで塞ぐという手間のかかる作業が不要であり、作業効率を大幅に向上させることができる。また面ファスナ154a〜154lによって分割シート152a〜152fを接合することにより、それらの接合部を容易且つ確実に封止することができるため、従来の手法において生じがちであったブラスト材の漏れを好適に防ぐことが可能である。
【0053】
ここで、作業空間を形成するシート150の材質は、内部の様子がわかりやすいように透明であることが望ましいが、シートに粉塵が付着すると視界が悪くなりやすく、また内部でブラスト処理を行うと研削材で傷ついてすぐに透明性が失われる。このためシート150は、透明性よりもむしろ丈夫さを優先させて網目状に繊維を含有させた複合シートであってもよい。その場合、
図1に示すように、分割シート同士の接合部に、ブース100内を観察するためののぞき窓160を設けるとよい。
【0054】
図6は、のぞき窓160を説明する図であり、
図6(a)は160の正面図および側面図であり、
図6(b)はのぞき窓160の取付作業について説明する図である。
図6(a)に示すように、のぞき窓160は、透明の板材162と、その端面に取り付けた面ファスナ164とから構成される。板材162としては、硬質で傷つきにくいポリカーボネートやアクリルなどの透明な樹脂板を好適に用いることができる。また、透明の板材162のかわりに、研削材が通過できないような細かい網目状の金属を用いても、傷つくことによる視認性の低下がないため好適である。
【0055】
のぞき窓160をシート150(
図6(b)では、分割シート152c・152dを例示)に取り付ける際には、まず
図6(b)に示すように、分割シート152c・152dの接合部(合わせ目)を一部開口し、その開口にのぞき窓160を挿入し、のぞき窓160の面ファスナ164と、分割シート152c・152dの面ファスナ154d・154eを接合する。これにより、のぞき窓160が分割シート152c・152dの接合部に取り付けられる(
図1参照)。このように本実施形態の構成によれば、従来1枚もののシートを切断して穴を開け、その穴にのぞき窓を配置してその周囲をテープで目張りするというような煩雑な作業を行うことなく、のぞき窓160を容易に取り付けることが可能である。
【0056】
なお、本実施形態では、のぞき窓160(厳密には板材162)の形状を菱形としたが、これに限定するものではない。ただし、のぞき窓160の上部および下部の角度は鋭角であることが好ましい。仮に鋭角ではない場合、例えばのぞき窓160が円形であった場合、分割シート152c・152dの面ファスナ154d・154eの開口角度が広くなってしまうため、隙間が生じやすくなることが懸念されるからである。
【0057】
図7は、作業口170を説明する図であり、
図7(a)は作業口170の正面図および側面図であり、
図7(b)は作業口170の使用態様図である。
図1に示すように、本実施形態ではのぞき窓160の下方に更に、作業時に手やブラストホースを挿入するための挿入口となる作業口170を設けている。
図7(a)に示すように、作業口170は、筒体172、およびその外周面に取り付けられる面ファスナ178とを備える。
【0058】
上記構成によれば、のぞき窓160をシート150に取り付ける場合と同様に、分割シート152c・152dの接合部(合わせ目)を一部開口し、その開口に作業口170を挿入し、それらの面ファスナを接合することにより、
図7(b)に示すように、分割シート152c・152dの接合部に作業口170を取り付けることができる。したがって、シートの切断やテープによる目張りを必要とすることなく、作業口170を容易に取付可能である。
【0059】
上述したように複数の分割シートの接合部に作業口170を取り付けることにより、手やブラストホースをブース100内から抜き出した場合においても接合部が閉じることがないため、良好な作業性を確保することができる。また
図7(a)に示すように、筒体172の横幅が長いことにより、作業口170の開口からのブラスト材の漏れを抑制することが可能である。
【0060】
更に本実施形態では、作業口170の筒体172を、手230を挿入するための主筒174と、主筒174から分岐し、作業道具であるブラストホース216を挿入するための副筒176とから構成している。仮に筒体172が主筒のみからなり、かかる主筒に手230およびブラストホース216の両方を挿入する構成であると、手230とブラストホース216との間に隙間が生じた際にそこからブラスト材が漏れ出る可能性がある。これに対し、本実施形態のように手230およびブラストホース216を別々に挿入する構成とすることにより、それらの間に隙間が生じることがなく、ブラスト材の漏れを好適に防ぐことが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態では、
図7(b)において副筒176からブラストホース216を挿入する場合を例示して説明しているが、ブラストホース216に限定されるものではなく、溶射用のガントーチ224やスプレー(不図示)などの作業道具を挿入して作業を行うことも可能である。
【0062】
図8は、鉄骨12と補助材14との接点部近傍における分割シートの接合を説明する図である。なお、
図8では分割シート152e・152fを例示している。ここで、一般に鉄塔10は複数の鉄骨や補助材(ブレース材)を接合して構成される(
図9参照)。このため、鉄塔10において表面処理を行う箇所、すなわちブース100を設置する箇所は、鉄骨12が1本だけの箇所の場合もあるし、鉄骨12と補助材14が接合されている接点部近傍の場合もある。また、鉄塔10に限らず鉄骨で構成された構造物は、補助材14(ブレース材)や梁が随所に設けられていることが多く、ブース100を設置する箇所に補助材14がある場合も十分に想定される。
【0063】
従来のように1枚もののシートを用いる方法であると、上述したように鉄骨12が1本だけの箇所であっても1枚もののシートを鉄塔に巻きながら適宜カッターで切り、余分な切れ目を養生テープで塞ぐという手間がかかるのに、ブース100の設置箇所が鉄骨12と補助材14との接点部近傍であると、補助材14を通すために更にシートを切り、そこに補助材14を通して更に養生テープによって目張りするという作業が必要となる。このため、鉄骨12と補助材14との接点部近傍にブースを設置する場合、設置作業が一層煩雑になり、また更に密閉が難しくなるためブラスト材の漏れがより生じやすくなるという課題があった。加えて従来の方法であると、補助材14を通す開口を形成するためにシートを切断する作業を行うため、ブースは上下方向で2m程度の範囲に留めざるを得ず、広い範囲を一度に覆うことは困難であった。
【0064】
これに対し本実施形態では、作業空間を形成するシート150は複数の分割シート152a〜152fからなる。このため、
図8(a)に示すように分割シート152e・152fの接合部を一部開口させて補助材14を配置し、分割シート152e・152fの面ファスナ154j・154k(
図5(b)参照)を接合すれば、補助材14の周囲にも容易にシート150を張り巡らすことができる。したがって、補助材14を通す開口を形成するためにシートを切断する作業が不要となり、作業性の改善を図ることができ、且つブースを上下方向に5〜6mほどの高さとして一度に広範囲を覆うことが可能となる。またシート150を切断せずにすむため、シート150を再利用することが可能となる。
【0065】
ここで、上記のように分割シート152e・152fの接合部を一部開口させて補助材14を配置する場合、補助材14の形状によっては分割シート152e・152fとの間に隙間が生じることが想定される。そこで、本実施形態では、補助材14と分割シート152e・152fとの間に封止材180(
図8(a)中、ハッチングにて図示)を配置する。これにより、補助材14と分割シート152e・152fとの隙間を好適に封止してブース100の密閉性を高めることができ、ブラスト材の漏れを防止可能である。
【0066】
封止材180としては、例えばウレタンフォームなどの発泡樹脂やゴムなどを用いることができる。ただしこれに限定するものではなく、他の材料を用いることも可能である。また本実施形態では封止材180を用いて隙間を封止したが、これにおいても限定されず、養生テープによって目張りすることによって補助材14と分割シート152e・152fとの隙間を解消してもよい。
【0067】
図8(b)は、鉄骨12と補助材14との接点部近傍における分割シートの接合の他の例を示している。
図8(b)では、補助材14の両側に位置する分割シート152e・152fのうち、分割シート152eに、かかる補助材14の水平方向に延設された部位(以下、水平部位14aと称する)に対応する切込153aを形成している。この構成によれば、切込153aに補助材14の水平部位14aを挿入し、補助材14の上下は分割シート152e・152fの面ファスナ154j・154kを接合することにより封止し、それ以外の箇所のみを養生テープによって目張りすることにより、封止材を必要とすることなくブース100を密閉することができる。
【0068】
なお、
図8(b)の構成では分割シート152eに切込153aが形成されるため、分割シート152eの再利用は難しいものの、他の分割シートは再利用可能であり、切込153aが形成された分割シート152eのみを交換すれば足りる。このため、従来のように1枚もののシートに切込を設けていた場合のようにシート全体を交換する必要がないため、コストの削減を図ることができる。
【0069】
上記説明した如く、本実施形態にかかるブース100によれば、鉄骨12に沿って、粉塵の飛散を防止できる空間を極めて簡単に構築することができ、作業者は、ノズル等の作業道具をブース100内に挿入し、ブース100の外から鉄骨12に処理を施すことが可能である。そして、補修を行う箇所にこのブース100を取り付け、補修が済んだら取り外し、また次の補修を行う箇所に取り付けることを繰り返すことにより、鉄骨12が露出した構造物の全体について粉塵を発する作業を行うことができる。これにより、鉄塔のように屋外の高所作業であってもオープンブラストによる素地調整、粗面化および金属溶射を行うことが可能となり、耐久性の高い補修を行うことができる。したがって、補修の間隔を長くし、また部材取替までの期間を大幅に延長させることができ、保守に必要なコストを大幅に低減させることが可能となる。また、刷毛ではなくスプレーによる塗装も可能になり、利便性を飛躍的に向上させることができる。
【0070】
更に本実施形態の構成によれば、分割シート152a〜152fの合わせ目が面ファスナ154a〜154lで接合されているため、ブース100の長手方向(鉄骨12の軸方向)に沿って任意の箇所で任意の範囲を開閉可能である。したがって、ブラスト作業位置が上下方向において多少移動しても、複数の分割シート同士を接合している面ファスナの開口位置を変更するだけで、のぞき窓160や作業口170の位置を容易に変更可能であり、また補助材14の位置に応じて開口位置を変えることが可能である。これにより、ブースの配置換え作業を必要とすることなくブラスト作業を継続することができ、作業の省力化が図られる。
【0071】
なお、上記実施形態において鉄骨12は主柱材であるため、上端面部材110と下端面部材130は上下に配置されていたが、上端面部材110および下端面部材130は当然ながら梁(横方向)や補助材14(斜め方向)に取り付けることもできる。梁に取り付ける場合には上端面部材110および下端面部材130は横に並ぶことになるが、この場合にも全く同様にシート150を張って、粉塵の飛散を防止できる空間を極めて簡単に構築することができる。
【0072】
図9は、ブース100を用いた表面処理方法を説明する図である。ブース100を用いた表面処理としては、オープンブラスト、溶射、スプレー塗装などを例示することができる。
図9では、鉄塔10の梁16の上に足場200を構築し、鉄骨12にブース100を上記説明したように取り付けている。上端面部材110の開口部118(
図2参照)にはバキューム式の集塵機(不図示)が取り付けられ、下端面部材130の開口部138a〜138c(
図3参照)には集塵袋(不図示)が取り付けられる。
【0073】
足場200には、ブラスト機212、アーク溶射用のワイヤーフィーダ220および溶射電源222を設置している。オープンブラスト用または溶射用のコンプレッサ(不図示)は地上に設置していて、ホース(不図示)によってブラスト機212または溶射電源222に接続している。溶射用の発電機(不図示)も地上に設置されていて、電気ケーブル(不図示)によって溶射電源222に接続されている。そして、作業口170からブース100の内部にオープンブラストのブラストノズル214(
図7参照)を挿入してブラスト処理を行い、次にアーク溶射のガントーチ224を挿入して金属溶射を行う。
【0074】
これらオープンブラストによるケレン、粗面化および金属溶射は、いずれも多量の粉塵を生じるものである。しかし、上記のブース100の中で処理を行うことにより、粉塵の飛散を防止することができる。したがって、鉄塔10のように屋外の高所作業であっても処理を行うことが可能となり、耐久性の高い補修を行うことができる。
【0075】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。