(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959101
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】水素選択性ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 25/28 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
G01N25/28
【請求項の数】4
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2012-171568(P2012-171568)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-32052(P2014-32052A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087974
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】朝田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 克一
(72)【発明者】
【氏名】安田 昌英
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕樹
【審査官】
北川 創
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−099698(JP,A)
【文献】
特開2000−074866(JP,A)
【文献】
特開2008−275603(JP,A)
【文献】
米国特許第04560585(US,A)
【文献】
米国特許第03959764(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/28
G01N 27/16
G01N 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジュール熱により発熱するコイル状のヒータの表面に形成され、前記ヒータを形成する線輪を固定する固定層と、前記固定層の表面に形成された燐酸を含有する酸化触媒層とからなる水素選択性ガスセンサ。
【請求項2】
前記酸化触媒がパラジウムである請求項1に記載の水素選択性ガスセンサ。
【請求項3】
前記固定層も燐酸を含有する請求項1に記載の水素選択性ガスセンサ。
【請求項4】
前記パラジウムに対する燐酸の重量比が5対95以上である請求項2に記載の水素選択性ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を選択的に検出できるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスは、ジュール加熱素子を酸化触媒を含む感応素子で包皮した接触燃焼式ガスセンサにより検出されている。
しかしながら、洗浄等に使用られるアルコールの蒸気にも高い感度を有するため、測定誤差が発生するという問題がある。
このため非特許文献1に見られるようにシリコーンにより表面にフィルタを形成する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H2 selective gas sensor based on SnO2 Original Research Article Sensors and Actuators B: Chemical, Volume 52, Issues 1-2, 15 September 1998, Pages 30-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蒸着作業等の複雑な工数を要するという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであってその目的は比較的簡単な工程で製造することができる水素選択性ガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を達成するために本発明のセンサは、ジュール熱により発熱するコイル状のヒータの表面に形成され、前記ヒータを形成する線輪を固定する固定層と、前記固定層の表面に形成された燐酸を含有する酸化触媒層とからなる。
【発明の効果】
【0006】
燐酸によりアルコールに対する感度を抑制してアルコールが混在する環境中の水素をアルコールの影響を可及的に抑えて正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】図(a)〜(d)は本発明のセンサの製造工程を示す説明図である。
【
図2】燐酸と酸化触媒との混合比とイソプロピールアルコールとの感度の変化を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
白金線等温度抵抗係数が大きな線材をコイル状に巻回してヒータ1を構成し(
図1(a))、これの外周に水ガラスを塗布して乾燥後に1000℃程度で焼成してヒータ1を構成する線輪を固定するための固定層2を形成する。(
図1(b))。これにより外周をガラスの固定層2により固められた発熱体3が完成する。このようにヒータ1の外周にガラス層2を形成することによりヒータ1の補強と、電気絶縁が可能となる。
【0009】
この際に必要に応じて固定層2に燐酸溶液を塗布し、再度焼成して燐酸を含有した固定層2を形成する(
図1(c))。
この中間体4は通常、ガス検出素子と組み合わされて外気温による出力変動を補償する
素子、いわゆる補償素子としても使用可能である。
【0010】
参考のために燐酸溶液を塗布しない発熱体3と上記中間体4とのイソプロピールアルコールに対する出力を測定したところ、1000対1になった。このことから、燐酸を担持させた発熱体3はイソプロピールアルコールに対する感度を低減できることが判明した。
【0011】
このように構成された中間体4の表面に酸化触媒層5を形成する(
図1(d))。
すなわち、酸化触媒物質、この実施例ではパラジウムを溶解した液にγアルミナ微粒子を懸濁させて、酸化触媒物質をγアルミナに十分に吸着させて水分を除去し、粉体化する。なお、パラジウムとγアルミナ微粒子との好ましい重量比は、例えば約3対7である。
【0012】
ついで、酸化触媒物質を吸着したγアルミナと燐酸とを水で混練して泥状にし、これを前述の中間体4の表面に塗布して酸化触媒準備層を形成する。
ヒータ1に通電するなり、加熱炉に収容して酸化触媒準備層を温度500℃で加熱焼成して酸化触媒層5を形成する。これにより燐酸を含有した酸化触媒層5が形成される。
【0013】
燐酸と酸化触媒物質(酸化触媒物質を吸着したγアルミナ)との混合率(重量比)に対するイソプロピールアルコール(10000ppm)と水素(2000ppm)との感度(出力)を調査したところ、
図2に示すような結果となった。
【0014】
すなわち酸化触媒物質を吸着したγアルミナに対する燐酸の重量比が3以上、酸化触媒物質そのものとの重量比では5対95以上であれば十分にイソプロピールアルコールに対する感度を抑制しつつ水素を十分に検出できることが判明した。なお、酸化触媒物質を吸着したγアルミナに対する燐酸の重量比の上限は、水素が実用的な感度で検出できる程度、実験によれば15であった。
【0015】
なお、前記中間体を補償素子として十分な性能、つまりイソプロピールアルコールだけではなく被検出ガスに対する感度を抑制するには表面に塩化金を塗布し、これを焼成して金層を形成するのが望ましい。
【符号の説明】
【0016】
1 ヒータ 2 固定層 3 発熱体 4 中間体 5 酸化触媒層