(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、座屈抑制エレメント109を用いた従来工法には、以下のような問題点がある。
【0009】
(1.構造的性能)
図8は、曲げひび割れが生じた橋脚115の各部を示す図である。
図8(a)は、地震荷重(水平力)を受けた橋脚115の立面図である。
図8(b)は、
図8(a)の範囲Gに示す橋脚115の基部付近の拡大断面図である。
図8(c)は、ひびわれ断面での配筋状況を示す図である。
【0010】
図8(a)に示すように、橋脚115では、矢印Fに示す方向に水平力を受けると、曲げによるひびわれ117が生じる。帯鉄筋105の存在は、コンクリート断面の断面欠損に相当するため、曲げによるひびわれ117は帯鉄筋105を含む断面に発生しやすい。よって、
図8(b)および
図8(c)に示すように、帯鉄筋105に掛けられた座屈抑制エレメント109の鉄筋113は、ひびわれ117が発生した面に一致して存在することになる。ここで、鉄筋113の先端の定着位置は、部材断面の引張域119となると考えられる。しかし、引張域119では、ひびわれ117間のコンクリートが鉛直方向に無応力状態となっており、鉄筋113の先端の定着力が不十分となる。定着力を改善するためには、定着位置が鉛直方向に圧縮応力度が作用する圧縮域121となることが望ましい。
【0011】
図9は、繰返し曲げを受けた橋脚115を示す図である。
図9(a)は、地震荷重(水平力)を受けた橋脚115の立面図である。
図9(b)および
図9(c)は、
図9(a)の範囲Iに示す橋脚115の基部付近の拡大断面図である。
【0012】
一般に、座屈抑制エレメント109の平鋼111は、板厚が軸方向鉄筋103の直径に比べ小さい。また、平鋼111の降伏強度は、軸方向鉄筋103の降伏強度よりもはるかに小さい。さらに、平鋼111は、軸方向鉄筋103よりも断面のより外縁側に配置される。
【0013】
このため、
図9(a)に示すように、橋脚115が矢印Hに示す方向に繰り返し曲げを受けた場合、
図9(b)に示すように、曲げモーメントにより、平鋼111は軸方向鉄筋103よりも早期に引張降伏する。また、
図9(c)に示すように、曲げモーメントが圧縮側に転じると、平鋼111に座屈が生じ、かぶりコンクリート123が剥落してしまう。
【0014】
さらに、鉄筋113には、帯鉄筋105を介して軸方向鉄筋103がはらみだそうとする力が作用し、引張応力度が発生する。この引張応力度は、付着作用とフックの定着作用によりコンクリートに伝達されるので、溶接位置が最も厳しい位置となる。また、上述のように平鋼111が座屈すると、溶接断面にも局部的な曲げが作用する。このため、平鋼111と鉄筋113の溶接が十分な強度を発揮できないという懸念がある。
【0015】
(2.施工性)
橋脚や柱の鉄筋を組み立てる際には、作業足場を組立て、足場上から作業を行う。軸方向鉄筋103や帯鉄筋105と作業足場の離隔は、作業員の手が届くために30〜50cm程度としている。こうした作業空間に、座屈抑制エレメント109をクレーンなどで吊り込み、軸方向鉄筋103および帯鉄筋105が組み立てられた鉄筋かごの周囲から差し込むことは不可能であり、一時的に足場の一部を解体するなどの作業が必要であった。
【0016】
また、帯鉄筋105の設置位置には施工誤差を伴うため、座屈抑制エレメント109を断面の外側から挿入して設置しても、平鋼111は最も外側にずれた帯鉄筋に当接し、他の帯鉄筋105との間には施工誤差に相当する隙間が生じてしまう。その場合に、平鋼111のかぶりはその状態で決まってしまい、平鋼111に対して耐久性上必要な所定のかぶりを確保できない事体が生じる可能性が高かった。
【0017】
(3.コスト)
座屈抑制エレメント9の鉄筋113を溶接により平鋼111に接合する際には、通常の電炉製の鉄筋では十分な強度・品質が得られない。そのため、高炉製の鉄筋を用いた異形棒鋼スタッドを用いる。しかし、こうした高炉鉄筋は高価である。また、座屈抑制エレメント9の製造手順は、高炉鉄筋搬入、鉄筋切断、鉄筋先端加工・フラックス填球、フック曲げ加工、アークスタッド溶接、運搬となり、フックの曲げ加工をした後にスタッド溶接をする必要があるため、鉄筋加工と溶接は同一の工場で行う必要があるなど、制約が多かった。
【0018】
一方、
図12に示すような鉄筋コンクリート部材125が用いられる場合がある。
図12は、断面が円形の鉄筋コンクリート部材125の帯鉄筋105a、105bを含む部分での断面図である。鉄筋コンクリート部材125では、二重の帯鉄筋105a、105bが円形に配置される。また、帯鉄筋105a、105bが配置される断面位置において、2本の中間帯鉄筋127が配置される。2本の中間帯鉄筋127は、例えば、鉄筋コンクリート部材125の断面中心で直交して配置され、端部のフック129が外側の帯鉄筋105aに引っ掛けられる。
【0019】
しかし、
図12に示すような、断面が円形の鉄筋コンクリート部材125の場合、2本の中間帯鉄筋127を十文字に配置しても、コアコンクリートの拘束効果に不明な点が多い。中間帯鉄筋127の配置本数をさらに増やせば拘束効果による強度・終局ひずみの増大が期待できるが、全ての中間帯鉄筋127が部材の断面中央を通過することとなるため、鉄筋太さを考慮すると、実際に多数本を配置することが不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、施工が容易で施工費が低減でき、座屈抑制部材に座屈や破断が生じることがない鉄筋コンクリート部材の補強方法を提供することである。
【0021】
前述した目的を達成するために、
第1の発明は、鉄筋コンクリート部材の補強方法であって、孔を有する保持部材と、一端にフックが加工され、他端が前記孔に挿通されナットを用いて前記保持部材に取り付られたねじ節鉄筋と、からなる座屈抑制部材を用い、鉄筋コンクリート部材を構築するための鉄筋かごの帯鉄筋
の内部から前記フックを通し、前記フックを
前記帯鉄筋に掛け、前記保持部材を前記鉄筋かごの内部に配置して、
前記フックの曲げ内面と前記帯鉄筋とが当接するように前記ナットの締め込み位置を調整し、前記ねじ節鉄筋と前記保持部材とを固定することを具備することを特徴とする鉄筋コンクリート部材の補強方法である。
【0022】
本発明では、保持部材が断面の内部のコンクリートに埋設されるため、橋脚等の鉄筋コンクリート部材が大きな塑性曲げ変形を受けた場合でも、保持部材が座屈することがない。そのため、かぶりコンクリートの損傷が生じることがない。また、ナット定着位置のねじ節鉄筋の引張応力度が、帯鉄筋に掛る部分よりも小さいので、定着が確実でナット位置で破断するようなことがない。
【0023】
本発明では、座屈抑制部材の設置時に、鉄筋かごの内部から帯鉄筋の間にねじ節鉄筋のフックを通し、フックを帯鉄筋に掛けるため、鉄筋かごの外周の足場を一旦解体するような作業を必要としない。
【0024】
本発明で用いる座屈抑制部材は、電炉鉄筋が使用できるため、従来の座屈抑制エレメントを用いた場合と比較して、材料費を低減できる。また、保持部材にねじ節鉄筋をナットで取り付ける作業や、保持部材に孔を形成する作業は、現場で容易に行えるため、製作費も低減できる。さらに、ねじ節鉄筋と保持部材を組み立てる前の状態で現場に運搬することができるため、運搬に関わる費用も低減できる。
【0026】
また、帯鉄筋の組立て精度が悪く、上下の帯鉄筋の位置が水平方向に揃わずに配置されている場合にも、ナットを回すだけで、ねじ節鉄筋のフックを確実に帯鉄筋に掛けることができる。
【0027】
第2の発明は、孔を有する保持部材と、一端にフックが加工され、他端が前記孔に挿通されナットを用いて前記保持部材に取り付られたねじ節鉄筋と、からなる座屈抑制部材を用い、鉄筋コンクリート部材を構築するための鉄筋かごの帯鉄筋に前記フックを掛け、前記保持部材を前記鉄筋かごの内部に配置して、前記ねじ節鉄筋と前記保持部材とを固定する鉄筋コンクリート部材の補強方法であって、例えば、前記保持部材として山形鋼材が用いられ、前記山形鋼材を構成する2方向の板材にそれぞれねじ節鉄筋が取り付けられ、前記山形鋼材を、前記鉄筋コンクリート部材の断面の隅角部において前記鉄筋かごの内部に配置する
ことを特徴とする鉄筋コンクリート部材の補強方法である。
【0028】
このように、断面の隅角部において山形鋼材を使用することで、二方向のねじ節鉄筋を一度に配置することができる。この場合、ねじ節鉄筋と帯鉄筋により4辺閉鎖の状態となるため、これらに囲まれた部分のコンクリートは、拘束効果により圧縮強度とじん性の向上が期待でき、隅角部の圧縮特性が向上する。
【0029】
第3の発明は、孔を有する保持部材と、一端にフックが加工され、他端が前記孔に挿通されナットを用いて前記保持部材に取り付られたねじ節鉄筋と、からなる座屈抑制部材を用い、鉄筋コンクリート部材を構築するための鉄筋かごの帯鉄筋に前記フックを掛け、前記保持部材を前記鉄筋かごの内部に配置して、前記ねじ節鉄筋と前記保持部材とを固定する鉄筋コンクリート部材の補強方法であって、前記保持部材として鋼板が用いられ、前記鋼板の表裏の2面にそれぞれ第1のねじ節鉄筋、第2のねじ節鉄筋が取り付けられ、前記第1のねじ節鉄筋のフック、前記第2のねじ節鉄筋のフックを、環状の前記帯鉄筋の対向する部分にそれぞれ掛ける
ことを特徴とする鉄筋コンクリート部材の補強方法である。
【0030】
これにより、対向する二面に配置するねじ節鉄筋を、1枚の鋼板に定着することができる。なお、鋼板の孔は、断面欠損による強度の低下が問題とならない程度に近接させ、二本のねじ節鉄筋を交差してナット用いて定着する。
【0031】
第4の発明は、孔を有する保持部材と、一端にフックが加工され、他端が前記孔に挿通されナットを用いて前記保持部材に取り付られたねじ節鉄筋と、からなる座屈抑制部材を用い、鉄筋コンクリート部材を構築するための鉄筋かごの帯鉄筋に前記フックを掛け、前記保持部材を前記鉄筋かごの内部に配置して、前記ねじ節鉄筋と前記保持部材とを固定する鉄筋コンクリート部材の補強方法であって、前記保持部材として鋼板が用いられ、前記鋼板を、前記鉄筋かごに設けられた中間帯鉄筋に掛けて前記鉄筋かごの内部に配置する
ことを特徴とする鉄筋コンクリート部材の補強方法である。
【0032】
これにより、鋼板によるねじ節鉄筋の定着がより確実なものとなるため、鋼板の幅や板厚を減じることができる。また、コンクリートの打設に対して鋼板を固定することが容易になる。
【0033】
本発明では、前記帯鉄筋が円形である場合、少なくとも5つの前記座屈抑制部材を、前記帯鉄筋の任意の位置にそれぞれ配置する。
【0034】
これにより、帯鉄筋が円形である場合にも、座屈抑制部材が適切に配置される。そのため、軸方向鉄筋の座屈抑制やコアコンクリートの拘束効果による圧縮強度を増加させ、終局ひずみを増大させて、鉄筋コンクリート部材の耐震性能を向上させることができる。
【0035】
本発明では、例えば、前記ナットと固定用ナットとで前記保持部材を挟みこむことにより、前記ねじ節鉄筋を前記保持部材に固定する。
また、前記ナットを前記保持部材に点溶接することにより、前記ねじ節鉄筋を前記保持部材に固定する場合もある。
【0036】
これらの方法により、ねじ節鉄筋と保持部材との固定がより確実なものとなるため、コンクリート打設時に、ナットと保持部材との間の隙間の発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、施工が容易で施工費が低減でき、座屈抑制部材に座屈や破断が生じることがない鉄筋コンクリート部材の補強方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、座屈抑制部材13の概要を示す図である。
図1(a)は、座屈抑制部材13の各構成部材を示す。
図1(b)は、フック加工11付近の拡大図を示す。
図1(c)は、組み立て後の座屈抑制部材13の鋼板3付近の拡大図を示す。
【0040】
図1(a)に示すように、座屈抑制部材13は、保持部材である鋼板3、ねじ節鉄筋1、ナット7、固定用ナット9等からなる。鋼板3は、複数の孔5を有する。ねじ節鉄筋1は、一般に流通している電炉製でよい。ねじ節鉄筋1は、一端にフック加工11が施される。フック加工11は、例えば、
図1(b)に示すような半円形とする。なお、
図1(a)では、上下2段のねじ節鉄筋1および孔5を示したが、座屈抑制部材13を形成するねじ節鉄筋1および孔5の段数はこれに限らない。
【0041】
座屈抑制部材13では、
図1(c)に示すように、ねじ節鉄筋1の直線側の端部が、鋼板3の孔5に挿通される。そして、ねじ節鉄筋1にねじ込んだナット7と固定用ナット9とで鋼板3を挟みこむことにより、ねじ節鉄筋1が鋼板3に固定される。
【0042】
図2は、変断面橋脚15に座屈抑制部材13を設置した状態を示す図である。
図2(a)は、変断面橋脚15の垂直方向の断面図である。
図2(a)は、
図2(b)に示す矢印B−Bによる断面図である。
図2(b)は、変断面橋脚15の水平方向の断面図である。
図2(b)は、
図2(a)に示す矢印A−Aによる断面図である。
【0043】
図2に示す変断面橋脚15では、軸方向鉄筋17と帯鉄筋19とからなる鉄筋かごに、補強のための座屈抑制部材13が設置される。変断面橋脚15の帯鉄筋19を含む断面では、座屈抑制部材13のねじ節鉄筋1が、所定の間隔をおいて設置される。
【0044】
鉄筋かごに座屈抑制部材13を設置するには、2つの方法がある。1つ目の方法では、鉄筋かごの組み立てと並行して、
図1に示すような座屈抑制部材13を、地上で組み立てる。座屈抑制部材13を組み立てるには、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を鋼板3の孔5に挿通する。そして、ねじ節鉄筋1にねじ込んだナット7と固定用ナット9とで鋼板3を挟みこむ。このとき、ナット7と固定用ナット9の締め込みは、座屈抑制部材13がばらけない程度でよい。
【0045】
次に、組み立てた状態の座屈抑制部材13を、クレーン等を用いて鉄筋かごの内部に吊り込む。そして、ねじ節鉄筋1を鉄筋かごの帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に掛ける。また、鋼板3を鉄筋かごの内部に配置して、座屈抑制部材13を鉄筋かごに任意の手段で固定する。その後、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とが当接するようにナット7を微調整して締め込む。さらに、固定用ナット9も締め込んで、ねじ節鉄筋1と鋼板3とを固定する。
【0046】
2つ目の方法では、軸方向鉄筋17と帯鉄筋19とからなる鉄筋かごを組み立てた後、鋼板3のみを鉄筋かごの内部に吊りこんで配置し、任意の手段で固定する。次に、鉄筋かごの内部から、ねじ節鉄筋1のフック加工11を一本ごとに帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に引っ掛ける。そして、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を鋼板3の孔5に挿入し、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とを当接させ、ナット7および固定用ナット9を締め込んで、ねじ節鉄筋1と鋼板3とを固定する。この場合、クレーンなどを必要とせず、人力での施工も可能である。
【0047】
鉄筋かごに座屈抑制部材13を設置した後、コンクリート21を所定の高さ毎に打設する。
なお、座屈抑制部材13の各構成部材は、組み立てる前の状態で現場に運搬することが望ましい。鋼板3に孔5を形成する作業は、現場への搬入前・搬入後のいずれに行なってもよい。
【0048】
第1の実施の形態によれば、鋼板3が断面の内部のコンクリート21に埋設されるため、変断面橋脚15が大きな塑性曲げ変形を受けた場合でも、鋼板3が座屈することがない。そのため、かぶりコンクリートの損傷が生じることがない。また、ナット7の定着位置のねじ節鉄筋1の引張応力度が、帯鉄筋19に掛る部分よりも小さいので、定着が確実で、ナット7の位置で破断するようなことがない。
【0049】
第1の実施の形態では、鉄筋かごの内部から、帯鉄筋19の間にねじ節鉄筋1のフック加工11を通し、フック加工11を帯鉄筋19に掛けるため、鉄筋かごの外周の足場を一旦解体するような作業を必要としない。
【0050】
座屈抑制部材13のねじ節鉄筋1は、電炉鉄筋が使用できるため、従来の座屈抑制エレメントを用いた場合と比較して、材料費を低減できる。また、鋼板3にねじ節鉄筋1をナット7および固定用ナット9で取り付ける作業や、鋼板3に孔5を形成する作業は、現場で容易に行えるため、製作費も低減できる。さらに、ねじ節鉄筋1と鋼板3を組み立てる前の状態で現場に運搬することができるため、運搬に関わる費用も低減できる。
【0051】
第1の実施の形態では、フック加工11の曲げ内面27と帯鉄筋19とが当接するようにナット7の締め込み位置を調整し、ねじ節鉄筋1を鋼板3に固定する。そのため、帯鉄筋19の組立て精度が悪く、上下の帯鉄筋19の位置が水平方向に揃わずに配置されている場合にも、ナット7を回すだけで、ねじ節鉄筋1のフック加工11を確実に帯鉄筋19に掛けることができる。
【0052】
また、ナット7と固定用ナット9とで鋼板3を挟み込むことで、ねじ節鉄筋1と鋼板3との固定が確実なものとなり、コンクリート打設時に、ナット7と鋼板3との間の隙間の発生を防ぐことができる。
【0053】
さらに、ねじ節鉄筋1のフック加工11の内側には帯鉄筋19が当接し他方の端部には鋼板3があって定着効率に優れるために、ねじ節鉄筋1の長さは、
図7(c)および
図7(d)の従来の座屈抑制部材の鉄筋113よりも短くなり、鉄筋かご内部に鉄筋のない空間が広く取れ、施工における作業性が向上する。
【0054】
座屈抑制部材13を用いれば、変断面橋脚15においても、ねじ節鉄筋1を水平に配置することができる。そのため、コンクリート21を所定の高さ毎に打設する場合に、ねじ節鉄筋1が打継ぎ面から突出することがなく、打継ぎ面の処理が容易である。
【0055】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図3は、鉄筋コンクリート部材33の帯鉄筋19を含む面での断面図である。第2の実施の形態では、第1の実施の形態で用いた座屈抑制部材13の他に、座屈抑制部材13aを用いる。
【0056】
座屈抑制部材13aは、保持部材である山形鋼材3a、ねじ節鉄筋1、ナットおよび固定用ナット(図示せず)等からなる。山形鋼材3aは、座屈抑制部材13の鋼板3と同様に、複数の孔(図示せず)を有する。
【0057】
座屈抑制部材13aでは、山形鋼材3aを構成する2方向の板材31に、それぞれねじ節鉄筋1が取り付けられる。ねじ節鉄筋1は、山形鋼材3aに設けられた孔(図示せず)に、直線側の端部が挿入される。そして、ねじ節鉄筋1にねじ込んだナットおよび固定用ナット(図示せず)で板材31を挟み込むことにより、ねじ節鉄筋1が山形鋼材3aに固定される。
【0058】
鉄筋コンクリート部材33の帯鉄筋19を含む断面では、座屈抑制部材13のねじ節鉄筋1が、所定の間隔をおいて設置される。また、座屈抑制部材13aが4ヶ所の隅角部29に設置される。
【0059】
鉄筋かごに座屈抑制部材13、座屈抑制部材13aを設置するには、第1の実施の形態と同様に2つの方法がある。1つ目の方法では、鉄筋かごの組み立てと並行して、座屈抑制部材13、座屈抑制部材13aを、地上で組み立てる。座屈抑制部材13、座屈抑制部材13aを組み立てるには、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を鋼板3の孔5、山形鋼材3aの板材31の孔に挿通する。そして、ねじ節鉄筋1にねじ込んだナット7と固定用ナット9とで鋼板3、山形鋼材3aの板材31を挟みこむ。このとき、ナット7と固定用ナット9の締め込みは、座屈抑制部材13、座屈抑制部材13aがばらけない程度でよい。
【0060】
次に、組み立てた状態の座屈抑制部材13、座屈抑制部材13aを、クレーン等を用いて鉄筋かごの内部に吊り込む。そして、ねじ節鉄筋1を鉄筋かごの帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に掛ける。また、鋼板3、山形鋼材3aを鉄筋かごの内部に配置して、座屈抑制部材13、座屈抑制部材13aを鉄筋かごに任意の手段で固定する。その後、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とが当接するようにナット7を微調整して締め込む。さらに、固定用ナット9も締め込んで、ねじ節鉄筋1と鋼板3とを固定する。
【0061】
2つ目の方法では、軸方向鉄筋17と帯鉄筋19とからなる鉄筋かごを組み立てた後、鋼板3、山形鋼材3aを鉄筋かごの内部に吊りこんで配置し、任意の手段で固定する。次に、鉄筋かごの内部から、ねじ節鉄筋1のフック加工11を一本ごとに帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に引っ掛ける。そして、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を鋼板3の孔5、山形鋼材3aの板材31の孔に挿入し、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とを当接させ、ナット7および固定用ナット9を締め込んで、ねじ節鉄筋1と鋼板3や山形鋼材3aの板材31とを固定する。この場合、クレーンなどを必要とせず、人力での施工も可能である。
【0062】
鉄筋かごに座屈抑制部材13、座屈抑制部材13aを設置した後、コンクリート21を所定の高さ毎に打設する。
【0063】
第2の実施の形態では、鉄筋コンクリート部材33の断面の隅角部29において、山形鋼材3aを用いた座屈抑制部材13aを使用することで、2方向のねじ節鉄筋1を一度に配置することができる。座屈抑制部材13aを使用すれば、隅角部29のコンクリート21は、ねじ節鉄筋1と帯鉄筋19により4辺閉鎖の状態となる。そのため、ねじ節鉄筋1と帯鉄筋19による拘束効果によって圧縮強度とじん性の向上が期待でき、隅角部29の圧縮特性が向上する。
【0064】
第2の実施の形態においても、鉄筋コンクリート部材33が大きな塑性曲げ変形を受けた場合でも、鋼板3や山形鋼材3aが座屈することがなく、かぶりコンクリートの損傷が生じることがない。また、ナット7の位置でねじ節鉄筋1が破断するようなことがない。
【0065】
第2の実施の形態においても、座屈抑制部材13、座屈抑制部材13aを鉄筋かごの内部から設置するため、鉄筋かごの外周の足場を一旦解体するような作業を必要としない。
また、座屈抑制部材13、座屈抑制部材13aを使用することにより、従来の座屈抑制エレメントを用いた場合と比較して、材料費、製作費、運搬に関わる費用を低減できる。
さらに、ナット7を回すだけで、ねじ節鉄筋1のフック加工11を確実に帯鉄筋19に掛けることができる。
【0066】
また、ナットと固定用ナットとで鋼板3や山形鋼材3aを挟み込むことで、ねじ節鉄筋1と鋼板3や山形鋼材3aとの固定が確実なものとなり、コンクリート打設時に、ナット7と鋼板3や山形鋼材3aとの間の隙間の発生を防ぐことができる。
【0067】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図4は、座屈抑制部材13bを用いた例を示す図である。
図4(a)は、鉄筋コンクリート部材35の帯鉄筋19を含む面での断面図である。
図4(b)は、座屈抑制部材13bの構成部材を示す図である。第3の実施の形態では、第2の実施の形態で用いた座屈抑制部材13aの他に、座屈抑制部材13bを用いる。
【0068】
座屈抑制部材13bは、保持部材である鋼板3b、第1のねじ節鉄筋1、第2のねじ節鉄筋1、ナット7および固定用ナット9等からなる。鋼板3bは、複数の孔5bを有する。鋼板3bでは、表裏から第1のねじ節鉄筋1、第2のねじ節鉄筋1を挿入するために、2つの孔5bが、断面欠損による強度の低下が問題とならない程度に近接させて設けられる。なお、
図4(b)では、上下2段のねじ節鉄筋1および孔5bを示したが、座屈抑制部材13bを形成するねじ節鉄筋1および孔5bの段数はこれに限らない。
【0069】
座屈抑制部材13bでは、表裏の2面に、それぞれ第1のねじ節鉄筋1、第2のねじ節鉄筋1が取り付けられる。第1のねじ節鉄筋1、第2のねじ節鉄筋1の直線側の端部は、
図4(b)の矢印Cおよび矢印Dに示すように、鋼板3bの表裏から孔5bに挿入される。そして、表裏から挿入された2本のねじ節鉄筋1の端部が交差した状態で、それぞれのねじ節鉄筋1にねじ込んだナット7および固定用ナット9で鋼板3bを挟み込むことにより、ねじ節鉄筋1が鋼板3bに固定される。
【0070】
鉄筋コンクリート部材35の帯鉄筋19を含む断面では、第2の実施の形態と同様に、座屈抑制部材13aが、4ヶ所の隅角部29に設置される。また、座屈抑制部材13bのねじ節鉄筋1が、所定の間隔をおいて設置される。
【0071】
鉄筋かごに座屈抑制部材13a、座屈抑制部材13bを設置するには、第1の実施の形態と同様に2つの方法がある。1つ目の方法では、鉄筋かごの組み立てと並行して、座屈抑制部材13a、座屈抑制部材13bを、地上で組み立てる。座屈抑制部材13a、座屈抑制部材13bを組み立てるには、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を山形鋼材3aの板材31の孔、鋼板3bの孔5bに挿通する。そして、ねじ節鉄筋1にねじ込んだナット7と固定用ナット9とで山形鋼材3aの板材31、鋼板3bを挟みこむ。このとき、ナット7と固定用ナット9の締め込みは、座屈抑制部材13a、座屈抑制部材13bがばらけない程度でよい。
【0072】
次に、組み立てた状態の座屈抑制部材13a、座屈抑制部材13bを、クレーン等を用いて鉄筋かごの内部に吊り込む。そして、ねじ節鉄筋1を鉄筋かごの帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に掛ける。このとき、座屈抑制部材13bでは、第1のねじ節鉄筋1のフック加工11、第2のねじ節鉄筋1のフック加工11を、それぞれ矩形の環状の帯鉄筋19の対向する部分に掛ける。また、山形鋼材3aの板材31、鋼板3bを鉄筋かごの内部に配置して、座屈抑制部材13a、座屈抑制部材13bを鉄筋かごに任意の手段で固定する。その後、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とが当接するようにナット7を微調整して締め込む。さらに、固定用ナット9も締め込んで、ねじ節鉄筋1と鋼板3とを固定する。
【0073】
2つ目の方法では、軸方向鉄筋17と帯鉄筋19とからなる鉄筋かごを組み立てた後、山形鋼材3aの板材31、鋼板3bを鉄筋かごの内部に吊りこんで配置し、任意の手段で固定する。次に、鉄筋かごの内部から、ねじ節鉄筋1のフック加工11を一本ごとに帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に引っ掛ける。このとき、座屈抑制部材13bでは、第1のねじ節鉄筋1のフック加工11、第2のねじ節鉄筋1のフック加工11を、それぞれ矩形の環状の帯鉄筋19の対向する部分に掛ける。そして、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を山形鋼材3aの板材31の孔、鋼板3bの孔5bに挿入し、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とを当接させ、ナット7および固定用ナット9を締め込んで、ねじ節鉄筋1と山形鋼材3aの板材31や鋼板3bとを固定する。この場合、クレーンなどを必要とせず、人力での施工も可能である。
【0074】
鉄筋かごに座屈抑制部材13a、座屈抑制部材13bを設置した後、コンクリート21を所定の高さ毎に打設する。
【0075】
第3の実施の形態では、表裏から挿通した2本のねじ節鉄筋1が交差した状態でナット7および固定用ナット9で定着することにより、1枚の鋼板3bで、2本のねじ節鉄筋1を定着できる。
【0076】
第3の実施の形態においても、鉄筋コンクリート部材35が大きな塑性曲げ変形を受けた場合でも、山形鋼材3aや鋼板3bが座屈することがなく、かぶりコンクリートの損傷が生じることがない。また、ナット7の位置でねじ節鉄筋1が破断するようなことがない。
【0077】
第3の実施の形態においても、座屈抑制部材13a、座屈抑制部材13bを鉄筋かごの内部から設置するため、鉄筋かごの外周の足場を一旦解体するような作業を必要としない。
また、座屈抑制部材13a、座屈抑制部材13bを使用することにより、従来の座屈抑制エレメントを用いた場合と比較して、材料費、製作費、運搬に関わる費用を低減できる。
さらに、ナット7を回すだけで、ねじ節鉄筋1のフック加工11を確実に帯鉄筋19に掛けることができる。
【0078】
また、ナット7と固定用ナット9とで山形鋼材3aや鋼板3bを挟み込むことで、ねじ節鉄筋1と山形鋼材3aや鋼板3bとの固定が確実なものとなり、コンクリート打設時に、ナット7と山形鋼材3aや鋼板3bとの間の隙間の発生を防ぐことができる。
【0079】
次に、第4の実施の形態について説明する。
図5は、座屈抑制部材13cを用いた例を示す図である。
図5(a)は、中間帯鉄筋25と、座屈抑制部材13cの構成部材を示す図である。
図5(b)は、組み立て後の座屈抑制部材13cの鋼板3付近の拡大図を示す。
図5(b)は、
図5(c)に示す範囲Eの拡大図である。
図5(c)は、鉄筋コンクリート部材37の帯鉄筋19を含む面での断面図である。第4の実施の形態では、座屈抑制部材13cを用いる。
【0080】
図5(a)、
図5(b)に示すように、座屈抑制部材13cは、保持部材である鋼板3、ねじ節鉄筋1、ナット7等からなる。鋼板3は、複数の孔5を有する。なお、
図5(a)では、上下2段のねじ節鉄筋1および孔5を示したが、座屈抑制部材13cを形成するねじ節鉄筋1および孔5の段数はこれに限らない。
【0081】
座屈抑制部材13cでは、鋼板3にねじ節鉄筋1が取り付けられる。ねじ節鉄筋1は、鋼板3に設けられた孔5に、直線側の端部が挿入される。そして、ねじ節鉄筋1にねじ込んだナット7が鋼板3に当接した状態でナット7と鋼板3とを点溶接23することにより、ねじ節鉄筋1が鋼板3に固定される。
【0082】
図5(c)に示すように、鉄筋コンクリート部材37の帯鉄筋19を含む断面では、矩形の環状の帯鉄筋19の対向する部分を連結する中間帯鉄筋25が設けられる。また、座屈抑制部材13cのねじ節鉄筋1が、所定の間隔をおいて設置される。
【0083】
鉄筋かごに座屈抑制部材13cを設置するには、2つの方法がある。1つ目の方法では、中間帯鉄筋25を有する鉄筋かごの組み立てと並行して、座屈抑制部材13cを、地上で組み立てる。座屈抑制部材13cを組み立てるには、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を鋼板3の孔5に挿通する。そして、ねじ節鉄筋1にナット7をねじ込む。
【0084】
次に、組み立てた状態の座屈抑制部材13cを、クレーン等を用いて鉄筋かごの内部に吊り込む。そして、ねじ節鉄筋1を鉄筋かごの中間帯鉄筋25および帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に掛ける。また、鋼板3とねじ節鉄筋1の接合部39付近を中間帯鉄筋25に掛けて鋼板3を鉄筋かごの内部に配置し、座屈抑制部材13cを鉄筋かごに任意の手段で固定する。その後、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とが当接するように、ナット7を微調整して締め込む。さらに、点溶接23により、ねじ節鉄筋1と鋼板3とを固定する。
【0085】
2つ目の方法では、中間帯鉄筋25を有する鉄筋かごを組み立てた後、鋼板3のみを鉄筋かごの内部に吊りこんで配置し、中間帯鉄筋25付近に任意の手段で固定する。次に、鉄筋かごの内部から、ねじ節鉄筋1を一本ごとに中間帯鉄筋25および帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に引っ掛ける。そして、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を鋼板3の孔5に挿入し、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とが当接するようにナット7を締め込む。さらに、点溶接23により、ねじ節鉄筋1と鋼板3とを固定する。この場合、クレーンなどを必要とせず、人力での施工も可能である。
【0086】
鉄筋かごに座屈抑制部材13cを設置した後、コンクリート21を所定の高さ毎に打設する。
【0087】
第4の実施の形態では、直交する中間帯鉄筋25に、座屈抑制部材13cの鋼板3を掛けて定着する。これにより、鋼板3によるねじ節鉄筋1の定着がより確実なものとなるため、鋼板3の幅や板厚を減じることができる。また、コンクリート21の打設に対して鋼板3を容易に固定できる。
【0088】
第4の実施の形態においても、鉄筋コンクリート部材37が大きな塑性曲げ変形を受けた場合でも、鋼板3が座屈することがなく、かぶりコンクリートの損傷が生じることがない。また、ナット7の位置でねじ節鉄筋1が破断するようなことがない。
【0089】
第4の実施の形態においても、座屈抑制部材13cを鉄筋かごの内部から設置するため、鉄筋かごの外周の足場を一旦解体するような作業を必要としない。
また、座屈抑制部材13cを使用することにより、従来の座屈抑制エレメントを用いた場合と比較して、材料費、製作費、運搬に関わる費用を低減できる。
さらに、ナット7を回すだけで、ねじ節鉄筋1のフック加工11を確実に帯鉄筋19に掛けることができる。
【0090】
第4の実施の形態では、ナット7を締め込んで点溶接23することにより、ねじ節鉄筋1と鋼板3との固定が確実なものとなり、コンクリート打設時に、ナット7と鋼板3との間の隙間の発生を防ぐことができる。
【0091】
次に、第5の実施の形態について説明する。
図10は、鉄筋コンクリート部材41の帯鉄筋19を含む面での断面図である。
図10に示すように、鉄筋コンクリート部材41は、断面が円形の部材である。鉄筋コンクリート部材41では、帯鉄筋19が円形であり、帯鉄筋19の内側に軸方向鉄筋17が所定の間隔で配置される。第5の実施の形態では、第1の実施の形態で用いた座屈抑制部材13を用いる。
【0092】
鉄筋コンクリート部材41の帯鉄筋19を含む断面では、座屈抑制部材13のねじ節鉄筋1が、帯鉄筋19の8ヶ所に所定の間隔をおいて設置される。座屈抑制部材13は、ねじ節鉄筋1が放射状となるように、すなわち、ねじ節鉄筋1が帯鉄筋19と直交するように設置される。
【0093】
鉄筋かごに座屈抑制部材13を設置するには、第1の実施の形態と同様に2つの方法がある。1つ目の方法では、鉄筋かごの組み立てと並行して、座屈抑制部材13を、地上で組み立てる。座屈抑制部材13を組み立てるには、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を鋼板3の孔5に挿通する。そして、ねじ節鉄筋1にねじ込んだナット7と固定用ナット9とで鋼板3を挟みこむ。このとき、ナット7と固定用ナット9の締め込みは、座屈抑制部材13がばらけない程度でよい。
【0094】
次に、組み立てた状態の座屈抑制部材13を、クレーン等を用いて鉄筋かごの内部に吊り込む。そして、ねじ節鉄筋1を鉄筋かごの帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に掛ける。また、鋼板3を鉄筋かごの内部に配置して、座屈抑制部材13を鉄筋かごに任意の手段で固定する。その後、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とが当接するようにナット7を微調整して締め込む。さらに、固定用ナット9も締め込んで、ねじ節鉄筋1と鋼板3とを固定する。
【0095】
2つ目の方法では、軸方向鉄筋17と帯鉄筋19とからなる鉄筋かごを組み立てた後、鋼板3を鉄筋かごの内部に吊りこんで配置し、任意の手段で固定する。次に、鉄筋かごの内部から、ねじ節鉄筋1のフック加工11を一本ごとに帯鉄筋19の間に挿通し、フック加工11を帯鉄筋19に引っ掛ける。そして、ねじ節鉄筋1の直線側の端部を鋼板3の孔5に挿入し、ねじ節鉄筋1のフック加工11の曲げ内面27(
図1(b))と帯鉄筋19とを当接させ、ナット7および固定用ナット9を締め込んで、ねじ節鉄筋1と鋼板3とを固定する。この場合、クレーンなどを必要とせず、人力での施工も可能である。
【0096】
鉄筋かごに座屈抑制部材13を設置した後、コンクリート21を所定の高さ毎に打設する。
【0097】
このように、第5の実施の形態では、円形の帯鉄筋19を有する鉄筋コンクリート部材41に座屈抑制部材13を用いる。
図12を用いて説明したように、従来の中間帯鉄筋127は部材の断面を貫通するため、放射状に配置する場合の本数が偶数本となるが、第5の実施の形態のように座屈抑制部材13を用いれば、部材の断面を貫通する必要がないため、奇数本を含む任意の本数の座屈抑制部材13を放射状に設置できる。座屈抑制部材13を用いれば、設計上無駄のない配置が選択可能である。なお、
図10では、軸方向鉄筋17および帯鉄筋19を一段に配置した例を示したが、座屈抑制部材13は、軸方向鉄筋および帯鉄筋を二段に配置した部材にも適用できる。
【0098】
図11は、応力度とひずみとの関係の試算結果を示す図である。
図11では、従来の鉄筋コンクリート部材125(
図12)、10本の座屈抑制部材13を設置した鉄筋コンクリート部材について、二種類の地震動に対する応力度とひずみとの関係を試算した。鉄筋コンクリート部材は、直径を2.0m、コンクリートの設計基準強度を24MPa、軸方向鉄筋比を約2.19%(D35−36本×2段)とし、外側の帯鉄筋(D22)の配置直径を1700mm、内側の帯鉄筋(D22)の配置直径を1500mm、軸方向の配置間隔を150mmとした。
【0099】
図11(a)、
図11(b)は、それぞれ、従来の鉄筋コンクリート部材125(
図12)について、タイプI地震動、タイプII地震動に対して発生する応力度とひずみとの関係を示す。
図11(c)、
図11(d)は、それぞれ、10本の座屈抑制部材13を設置した鉄筋コンクリート部材について、タイプI地震動、タイプII地震動に対して発生する応力度とひずみとの関係を示す。
【0100】
図12に示す従来の鉄筋コンクリート部材125では、中間帯鉄筋126が十文字に配置されており、横拘束鉄筋の体積比は、0.607%となる。これに対し、座屈抑制部材13を10本配置した鉄筋コンクリート部材では、横拘束鉄筋の体積比を、設計上認められる上限値である1.8%まで高めることができる。
【0101】
図11(a)、
図11(b)に示すように、従来の鉄筋コンクリート部材125の圧縮強度が32N/mm
2であるのに対し、
図11(c)、
図11(d)に示すように、横拘束鉄筋の体積比を上限値まで高めた場合には、コンクリート21の圧縮強度は、47.6N/mm
2に向上する。(円形断面では帯鉄筋による拘束効果が高いため、設計基準強度24N/mm
2のコンクリートで中間帯鉄筋がなくとも、設計では32N/mm
2まで考慮できる。)
【0102】
また、終局ひずみは、
図11(a)、
図11(c)に示すように、タイプIの地震動に対して、0.00488から0.1054にほぼ倍増している。また図(b)、
図11(d)に示すように、タイプIIの地震動に対しても、0.00696から0.01970にほぼ倍増している。このように、座屈抑制部材13を使用すると、部材の耐震性能が著しく向上する。鉄筋コンクリート部材41が大きな塑性曲げ変形を受けた場合でも、鋼板3が座屈することがなく、かぶりコンクリートの損傷が生じることがない。また、ナット7の位置でねじ節鉄筋1が破断するようなことがない。
【0103】
第5の実施の形態においても、座屈抑制部材13を鉄筋かごの内部から設置するため、鉄筋かごの外周の足場を一旦解体するような作業を必要としない。
また、座屈抑制部材13を使用することにより、従来の座屈抑制エレメントを用いた場合と比較して、材料費、製作費、運搬に関わる費用を低減できる。
さらに、ナット7を回すだけで、ねじ節鉄筋1のフック加工11を確実に帯鉄筋19に掛けることができる。
【0104】
また、ナットと固定用ナットとで鋼板3を挟み込むことで、ねじ節鉄筋1と鋼板3との固定が確実なものとなり、コンクリート打設時に、ナット7と鋼板3との間の隙間の発生を防ぐことができる。
【0105】
第5の実施の形態では、座屈抑制部材13のねじ節鉄筋1の一端を保持部材である鋼板3に固定したが、保持部材は鋼板3に限らない。例えば、
図10に示す点線43の位置に、適切な位置に孔を有する鋼管を保持部材として配置し、ねじ節鉄筋1の一端を鋼管に設けられた孔に挿通してナット7および固定用ナット9を用いて鋼管に固定する場合もある。
【0106】
なお、第1から第5の実施の形態では、ねじ節鉄筋1のフック加工11を半円形としたが、フック加工11の形状はこれに限らない。
図6は、フック加工11aの形状を示す図である。フック加工11は、鉄筋かごの内部から帯鉄筋19に掛けることができ、先端がコアコンクリート(帯鉄筋よりも内部側)に位置するような形状であればよい。フック加工11は、例えば、
図6に示すように、鋭角に加工される場合もある。
【0107】
第1から第3、第5の実施の形態では、ナットおよび固定用ナットを用いてねじ節鉄筋1を各種の保持部材に固定したが、固定方法はこれに限らない。第4の実施の形態と同様に、点溶接によって、ねじ節鉄筋1を各種の保持部材に固定してもよい。
【0108】
また、第4の実施の形態では、点溶接23を用いてねじ節鉄筋1を鋼板3に固定したが、固定方法はこれに限らない。第1から第3の実施の形態の座屈抑制部材と同様に、ナット7および固定用ナットで鋼板3を挟み込むことにより、ねじ節鉄筋1を鋼板3に固定してもよい。
【0109】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。