(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959122
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】エレベータ用操作盤
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20160719BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20160719BHJP
B66B 1/46 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
B66B11/02 N
B66B3/00 D
B66B1/46 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-102768(P2014-102768)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-218028(P2015-218028A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2014年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門並 秀樹
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−033875(JP,U)
【文献】
実開昭60−180272(JP,U)
【文献】
特開2001−139240(JP,A)
【文献】
特開2004−115151(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3060818(JP,U)
【文献】
特開2009−280387(JP,A)
【文献】
特開2011−195225(JP,A)
【文献】
実開昭56−158461(JP,U)
【文献】
米国特許第5417574(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00 − 11/08
B66B 1/46
B66B 3/00
G09B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路内を昇降する乗りかごに出入りするために開閉する乗りかごドアパネルと、
前記乗りかごドアパネルに隣接し、前記乗りかごの室内の一部を構成する袖壁と、
前記袖壁に設置され、前記乗りかごを操作する操作ボタンを設けたメイン操作盤と、
前記乗りかごドアパネルを間に挟んで互いに対向配置し、前記乗りかごの室内の一部を構成するかご室壁と、
前記かご室壁に水平に取着した手摺と、
前記手摺の上側に設けた点字と、
を備えた前記乗りかご内に設置されている、エレベータ用操作盤であって、
前記乗りかご内から操作可能に設置されたサブ操作盤を備え、
前記サブ操作盤には、前記点字より下側の位置に、前記点字に触れた状態で前記乗りかごを前記点字と同内容の操作を可能とする操作ボタンを設置した、エレベータ用操作盤。
【請求項2】
前記サブ操作盤の操作ボタンは、点字内容と対応する下方側に配置した、請求項1記載のエレベータ用操作盤。
【請求項3】
前記サブ操作盤の操作ボタンは、該サブ操作盤の操作面と同一か下がった位置とした、請求項1または2記載のエレベータ用操作盤。
【請求項4】
前記サブ操作盤の操作ボタンは、該操作ボタン毎に前記サブ操作盤の操作面と同一か下がった位置に設けた、請求項3記載のエレベータ用操作盤。
【請求項5】
前記手摺に設けた点字は、該手摺の長手方向を行として並べて設けた、請求項1乃至4の何れか一項記載のエレベータ用操作盤。
【請求項6】
前記サブ操作盤は、前記手摺より突出しない状態で取着された、請求項1乃至5の何れか一項記載のエレベータ用操作盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータ用操作盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ用操作盤は、視覚障害者の操作性を考慮して操作ボタンの横に点字が設けられている。操作者は、操作対象の点字を探し、その点字に対応の操作ボタンの操作を行っている。
【0003】
しかしながら、エレベータ用操作盤は、エレベータにより設置場所、設置位置、操作盤の形状もことなっている。このため視覚障害者には、操作盤の操作が極めて煩雑である、という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−280387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、視覚障害者の操作性向上を図ることのできるエレベータ用操作盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータ用操作盤は、エレベータの昇降路内を昇降する乗りかごに出入りするために開閉する乗りかごドアパネルと、前記乗りかごドアパネルに隣接し、前記乗りかごの室内の一部を構成する袖壁と、前記袖壁に設置され、前記乗りかごを操作する操作ボタンを設けたメイン操作盤と、前記乗りかごドアパネルを間に挟んで互いに対向配置し、前記乗りかごの室内の一部を構成するかご室壁と、前記かご室壁に水平に取着した手摺と、前記手摺
の上側に設けた点字と、
を備えた前記乗りかご内に設置されている、エレベータ用操作盤であって、前記乗りかご内から操作可能に設置されたサブ操作盤を備え、前記サブ操作盤には、前記点字より下側の位置に、前記点字に触れた状態で前記乗りかごを前記点字と同内容の操作を可能とする操作ボタンを設置した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】エレベータ用操作盤に関する第1の実施形態について説明するための斜視図である。
【
図3】
図1のサブ操作盤を示す要部の斜視図である。
【
図6】エレベータ用操作盤に関する第2の実施形態について説明するための斜視図である。
【
図8】エレベータ用操作盤に関する第3の実施形態について説明するための正面図である。
【
図10】エレベータ用操作盤に関する第4の実施形態について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1〜
図5は、エレベータ用操作盤にかかる第1の実施形態を示す。
図1は、エレベータかご内を示す斜視図である。
図2は、
図1のメイン操作盤の一例を示す図である。
図3は、
図1要部の斜視図である。
図4は、
図3の正面図である。
図5は、
図4のAa−Ab線断面図である。
【0010】
図1において、エレベータ昇降路内を昇降する乗りかご11は、建築物の各階のエレベータ乗り場に設けられている。乗りかご11は、図示しない乗り場のドアに対向する乗りかごドアパネル12a,12bが乗り口13を塞ぐように設置されている。乗りかごドアパネル12aの隣には、袖壁14aが設けられている。乗りかごドアパネル12bの隣には、乗りかご用のメイン操作盤15等が設置された袖壁14bが設けられている。
【0011】
乗りかごドアパネル12a,12bを間に挟んで乗りかご11の両側に互いに対向するように設けられたかご室壁16aおよび16bは、所定の高さを有する幅木17aおよび17bを介してかご室の床18に立設されている。かご室壁16aおよび16bには、所定の高さに円柱状の手摺19aおよび19bがそれぞれ水平に取り付けられている。
【0012】
乗りかご11の天井部20には、照明装置21が設置されている。なお、
図1は、この発明におけるエレベータのかごの代表図を示したものである。また、乗りかご11は、床18、天井部20、かご室壁16a、16bそれに図示しない乗りかごドアパネル12a,12bと対向位置に設けられたかご室壁、袖壁14a,14b、乗りかごドアパネル12a,12bによって内部空間が形成されている。
【0013】
図2に示すように、メイン操作盤15には、エレベータを操作するための各操作ボタンを設けられている。例えば、メイン操作盤15の下側には、エレベータの階床数や乗りかごドアパネル12a,12bを開くための開ボタン151、閉じるための閉ボタン152が設けられている。メイン操作盤15には、階床を示す階ボタン153が縦方向に並べて設けられている。さらに、メイン操作盤15の上側には、非常電話ボタン154が設けられている。各押ボタンの横には、対応する内容の点字155が併設されている。
【0014】
視覚障害者は、点字155を読み取り、階ボタン153、開ボタン151、閉ボタン152の中から所望のボタンを操作する。階ボタン153が操作されると、操作された階床に対応する図示しないエレベータ制御部に信号が送られる。エレベータ制御部は、送られてきた信号に基づく階床に乗りかご11を走行させる。
【0015】
詳述しないが、点字155を利用して操作が行われた場合は、点字操作による登録を行う。そして、階ボタン153、開ボタン151、閉ボタン152の中から操作されたボタンの情報や到着階、乗りかごドアパネル12a,12bの開閉等について、音声によって通知を行う。音声メッセージの例としては、例えば「点字の下側に操作ボタンがありますので、点字内容のボタンを操作してください。」のメッセージを音声で発するようにしてもよい。これにより、視覚障害者に対する操作性を、より向上させることに寄与する。
【0016】
操作ボタンの操作状態の音声による通知は、点字155と操作ボタンが同時に接触した場合に限り通知するようにする。これにより、必要以上に操作ボタンの操作に基づく音声による通知を軽減することができる。
【0017】
手摺19aおよび19bには、長手方向の上面に点字191が設けられている。点字191としては、例えば
図2の開ボタン151、閉ボタン152それに階ボタン153対応の点字155と同内容とする。点字191は、視覚障害者が手摺19aまたは19bを握ったまま摺らせることで、点字情報の認識が可能となる。なお、点字191は、手摺19aおよび19bの長手方向を行として並べて設けられている。
【0018】
さらに、手摺19aおよび19bの下側には、サブ操作盤22が、かご室壁16a、16bの内面16a1,16b1に取着した状態で配置されている。サブ操作盤22には、エレベータを操作するための各操作ボタンを設けられている。操作ボタンとしては、例えば点字191に対応するエレベータの階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194が設けられている。階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194は、
図5に示すように、点字191に接触した状態でも操作可能な位置に配置される。
【0019】
サブ操作盤22の配線は、例えばかご室壁16a、16bに形成された配線孔を介して、メイン操作盤15との電気的な接続を実現することができる。
【0020】
なお、手摺19a,19bの点字191
は、点字情報が長くなったりすること等を考慮し、昇降に最低限必要なボタンとしたが、
図2に示すメイン操作盤15と同じ内容であってもよい。また、サブ操作盤22は、手摺19aおよび19bに配置したが、何れか一方に配置してもよい。
【0021】
手摺19a,19bは、乗り口13から入って乗りかご11の左右に配置され、視覚障害者にあっても、その設置場所がわかりやすい。点字191は、手摺19a,19b上に設けられている。そして、階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194は、点字191の情報に対応した位置に設けられている。点字191に触れた状態での操作が可能であることから、点字191とそれに階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194の位置関係が極めてわかりやすいものとなる。
【0022】
この実施形態では、手摺に点字を設けるとともに、点字に触れた状態で点字内容に対応した操作ボタンを配置した。これにより視覚障害者がエレベータかご内の操作性の向上を図ることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図6、
図7は、エレベータ用操作盤にかかる第2の実施形態を示す。
図6は、要部の正面図である。
図7は、
図6のBa−Bb線断面図である。
【0024】
図6、
図7において、サブ操作盤61は、
図3のサブ操作盤22と同一機能を備えている。サブ操作盤61の操作面611には、階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194を除くほぼ全面に、例えばアルミニウム製の取付ベルト62の一端621が取着されている。取付ベルト62の他端622は、手摺19bを巻きながらサブ操作盤61の非操作面612と対向する位置にくるように成形されている。
【0025】
手摺19bを巻かれた状態で手摺19bの上面に位置する取付ベルト62の上面には点字191が形成されている。点字191は、例えばプレス加工により形成可能である。点字191は、点字191に接触した状態で階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194が操作可能な位置関係に形成させている。
【0026】
他端622と非操作面612は、間隔が開けられている。ネジ63は、他端622を介して非操作面612にねじ込まれている。ネジ63は、非操作面612にねじ込む力で、他端622と非操作面61との間隔を狭めながら、取付ベルト62を手摺19bに固定する。
【0027】
サブ操作盤61の配線64は、かご室壁16bに開けた配線孔65を介して、例えばメイン操作盤15に電気的に接続する。
【0028】
このように、サブ操作盤61は、取付ベルト62を取り付けるだけで、手摺19bに点字191および点字191に対応の階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194を備えることができる。そして、階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194は、点字191に触れたままの操作が可能である。視覚障害者にとっては、操作性の高いエレベータ用操作盤を提供することができる。
【0029】
この実施形態では、手摺にサブ操作盤が取着された取付ベルトを取り付けるだけで、視覚障害者の利用性を向上させることが可能となる。また、既存のエレベータの手摺にも配線用の
穴あけや簡単な配線工事程度で取付けることも可能である。
【0030】
(第3の実施形態)
図8、
図9は、エレベータ用操作盤にかかる第3の実施形態を示す。
図8は、要部の正面図である。
図9は、
図8のCa−Cb線断面図である。
【0031】
サブ操作盤22の設置場所では、エレベータ利用者の出入りが頻繁に行われる。出入り時は、場合によって、サブ操作盤22の階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194に不用意に触れて操作してしまう可能性がある。
【0032】
そこで、この実施形態では、階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194を、サブ操作盤22の盤面221よりもボタン取付面222を低くした。ボタン取付面222は盤面221よりもやや低くした。
【0033】
これにより、エレベータ利用が不用意に階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194を操作してしまう弊害を抑制することができる。
【0034】
なお、この実施形態では、第1の実施形態のサブ操作盤22に対応した例を挙げたが、第2の実施形態のサブ操作盤61にも適用可能である。また、階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194は、同一のボタン取付面222としたが、階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194を個別に、盤面221より低くしてもよい。この場合は、階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194の周辺に盤面221による土手が形成されることになり、より不用意なボタン操作を抑制することができる。
【0035】
(第4の実施形態)
図10は、エレベータ用操作盤にかかる第4の実施形態について説明するための断面図である。
【0036】
この実施形態は、かご室壁16aの内面16b1に取り付けられたサブ操作盤61の頂点223までの高さh1と内面16b1から手摺19bの反対面までの高さ(距離)h2の関係を、h2>h1とした。そして、階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194の位置は、点字191に接触した状態で操作可能な位置とした。
【0037】
これにより、サブ操作盤61には、手摺19bがガイドとなってエレベータ利用者がぶつかったり、階ボタン192、開ボタン193、閉ボタン194を不用意に操作したりすることを抑制することができる。
【0038】
この実施形態では、サブ操作盤が手摺よりもエレベータ利用者側に突出してしまうことを防止可能となり、安全性の向上を図ることができる。また、手摺がガイドとなって不用意な操作ミスなどの発生も抑制することができる。
【0039】
上記した実施形態に限定されるものではない。例えば第1の実施形態でのサブ操作盤22は、かご室壁16a、16bに取着したが、手摺19aおよび19bに直接取着しても構わない。点字191は、手摺19a,19bの上面(上方)に設けたが、サブ操作盤の位置によっては、上面に限定されるものではない。要は、点字191に触れた状態でボタン操作ができる状態であればよい。
【0040】
また、第2〜第4の実施形態では、手摺19bへの適用について説明したが、手摺19aにも適用可能である。手摺19b側だけのみ適用してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
11 乗りかご
12a,12b 乗りかごドアパネル
15 メイン操作盤
151,193 開ボタン
152,194 閉ボタン
153,192 階ボタン
155,191 点字
16a,16b かご室壁
19a,19b 手摺
61 サブ操作盤
62 取付ベルト
63 ネジ
221 盤面
222 ボタン取付面