【実施例】
【0113】
本発明の好ましい態様を例示するため、以下の実施例を含める。これらの態様は、得られる反応体を商業工程または工業工程に提供し、使用することにより、および/またはエネルギーをリサイクルすることにより、発電所からの二酸化炭素および他の汚染物質を減らす、または実質的になくすための実現可能な経済的解決手段を提供する。
【0114】
以下の実施例で開示される技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって見いだされた技術を表し、したがって、その実施のための好ましい形態を構成するものとみなすことができることが当業者によって理解されよう。しかし、当業者は、本開示を鑑みて、開示される特定の態様に多くの変更を加えることができ、そのような変更が、本発明の本質および範囲を逸することなく、同様または類似した結果をもたらすということを理解すべきである。
【0115】
実施例1
グラフ法によるCO
2/NaOHバブルカラムリアクタ設計
この実施例のために設計されたバブルカラムリアクタでは、四つの主要な流れがある、すなわち
(1) 所与の体積流量でバブルカラムの流体中に流れ込む液体(V1=時間あたりの流体の立方体積);選択したケースでは、入ってくる体積流量は、出てゆく体積流量に等しい。したがって、いずれもV1である)。この例では、V1=0.001m
3/sec。
(2) Vg0=吸収性流体によって部分的または完全に吸収される、入ってくるガスの体積流量。この例では、Vg0=0.05m3/sec。
(3) Vg=出てゆくガスの体積流量。この例では、Vg=0.02m3/sec。
【0116】
バブルカラムリアクタは、上記条件によって束縛されるように設計した。濃縮水酸化ナトリウム中に気泡にして通すことにより、煙道ガス中の入ってくるCO
2の60%を除去するものであった。反応は物質移動制限される。この実施例の目的は、二酸化炭素を99.9%除去するために必要なリアクタサイズ(高さおよび直径)を計算することであった。P=2気圧、T=298K。
図8で利用可能なグラフデータを使用して、この実施例は、高いリアクタ(2.36m)および低いリアクタ(0.41m)の設計を記載する。
図8は、バブルカラム中のCO
2吸収率vs流体深さvs低界面速度におけるガス界面速度を示すチャートである(Schumpe et al., 1979)。
【0117】
高さ2.36mカラムの解
転換は約0.04m/sの界面速度(Ug0)で100%に接近する。この速度はバブル流範囲にある(水のような溶液中では、これは約0.05m/sである)。体積ガス流要件(Vg0)がわかったところで、カラムの直径を計算した。
【0118】
したがって、入ってくる60% CO
2の99%の転換には、高さ2.36m、面積1.25m
2、直径1.26mおよび全容積2.95m
3のカラムを要する。
【0119】
高さ0.41mカラムの解
高さ0.41mカラムにおける転換には、約0.02m/sの界面ガス速度を要する。上記と同様である。
【0120】
したがって、入ってくる60%CO
2の99%の転換には、高さ0.41m、面積2.50m
2、直径1.78mおよび全容積1.03m
3のカラムを要する。
【0121】
要約すると、この実施例を通じて、煙道ガスから二酸化炭素を取り除くのには、短めのカラムが容積ベースでより効率的であり;この実施例では3倍の効率であることが実証される。したがって、本発明の好ましい態様の場合、設計は、短い段および/または短い段で構成された多段リアクタを目標とする。
【0122】
実施例2
物質移動係数解によるCO
2/NaOHバブルカラム設計
この実施例の目的は、理論的増大から物質移動係数kla(モル/秒/体積)を決定することであった。この実施例から、この相関法が非決定的な結果を招くおそれがあることがわかった;すなわち、この実施例は、重要なパラメータのいくつかを計測する不確定さのせいで、理論から実際の結果を予想する難しさを強調する。したがって、実験的スケーリングだけが大きな脱炭酸塩化ユニットの結果を結論的に決定することができる。
【0123】
ガスホールドアップ(εg)およびモル移動(kLa)の以下の式は、AkitaおよびYoshida(1973)からの相関からであり、比較的大きなカラム高さおよび直径(すなわち>0.1m)での二酸化炭素および水系に関して有効である。
ガスホールドアップ
であり、
物質移動係数
kLa(1/sec)=[Cco2*Dco2-h20/Dc2]*[vL/Dco2-h20]0.2*
[g*Dc2*ρL/σ]0.62*[g*Dc3/vl2]*ε11
である。
式中、
εg=ガスホールドアップ係数
Cco2=煙道ガス中のCO
2濃度
Dc=カラムの直径
vL=0.0001m2/sec
σ=1cP=0.1Pa*sec
ρL=998kg/m3
であり、Dco2-h20P=1.661m2*Pa/secであるため、
よって、Dco2-HO=1.661/5.067*10(5)=3.278*10(-6)m2/sec
である。
【0124】
駆動力は、二酸化炭素の平衡濃度(Cco2*)と二酸化炭素の実際の液相濃度(Cco2)との差であり、この例では、ゼロと仮定する;すなわち、存在する水酸化ナトリウムが瞬時に水性二酸化炭素「酸」を中和する。したがって、リアクタ容積あたりのモル移動の率は以下のように書くことができる。
Nco2=kLa*[Cco2*-Cco2]=kLa(Cco2*)
煙道ガス中の二酸化炭素を99.99%除去するのに必要なモル移動率。CO
2は、カラムの条件下で理想的なガスであると仮定される。
立体体積/sec:
Vg0=0.05m3/sec∴Vco2=0.6*Vg0=0.03m3/s
モル/sec:
Vco2*P/RT=[0.03M3/sec*5Atm]/
[0.082m3atm/kmolK*298]*1000gmmole/1kmole=6.14mole/sec
Nco2(mole/sec)=0.999(moleCO2removed/molesCO2in)*6.14mole/sec=6.13mole/sec
【0125】
モデル相関に必要な他の流体性質
初期界面速度をバブルフロー限界にセットして(Vg0=0.05m/s)、カラムの面積および直径を計算した。
【0126】
気相ホールドアップ反応の場合、この実施例は、C=0.2に設定し、界面速度(Ug)が進入速度および退出速度の平均であると仮定し;Ug=0.035m/s=平均(0.05m/s、0.02m/s)、この求解子を使用して、εg=0.055であることがわかった。
【0127】
次に、モル移動率定数を求めた。
駆動力の式に戻り、リアクタ容積(V)を求めた。
V=Nco2/[(kLa)(Cco2*)]=6.13mole/sec/(0.386/sec*(103.6mole/m3))=0.15m3、および
Hc=0.15m3/1m2=0.15M。
【0128】
したがって、バブルカラムの寸法は、Dc=1.13mおよびHc=0.15mであり、実際のバブルカラムにおける実際の結果とは有意な差が出る。
【0129】
いくつかの仮定が相関モデル(この挙動の最良モデルと考えられる)および実際の結果における差を説明することができる:
(1)水酸化ナトリウムは、水の性質(密度、表面張力等)を有すると仮定した。
(2)溶液中のCO2の濃度は、ゼロと特徴づけるには十分でなかったかもしれない;これは、より尤度の高いオペランドである;たとえば、CO2有効濃度がゼロではないならば、駆動力はより小さく、より高いカラムが必要である。
【0130】
また、この理論的相関は、その強度でもある条件下で欠点があるということが注目されるべきである:(vL=0.0001m2/sec)のような項は、多くの場合、分母で二乗されるため、これらの数値の小さな変動が大きな効果を生じさせる。このタイプの理論的増大は、遡及的な曲線の当てはめには良好であるが、設計目的で物質移動を良好に予想するものではない。さらには、異なる漸進的スケールにおける設計が指示されるようなCO
2の吸収/転換速度に対する顕著な流体流動効果がある。
【0131】
実施例3
実験データからのCO
2/NaOHバブルカラム設計(深さ)
本明細書に記載する「短段効率理論」(>90%吸収を達成するための、3mまたはそれ以下の気液接触距離または流体段高さ)への本発明の特定の態様の依存が、実施される化学エンジニアリング設計と合致する二つの異なる計算技術によって確認されることに注目すること。しかし、特定の場合(上記のような場合)、特定の簡素化仮定がこれらの設計計算で実施されており、そのような実験的立証が
図2Bおよび2Cで示される結果とともに示され、実施された(以下さらに詳細に説明する)。
【0132】
これらの処理実験それぞれは、特定の気液接触距離(すなわち、非充填開放バブルカラムケースの流体の高さ)で特定のCO
2吸収率;たとえば流体30cmで20%の吸収率を得た。
【0133】
その後、ガスを同じ設計および条件の第二のカラムに通すならば、再び同じ吸収が起こるであろう;すなわち、最初のCO
2の残り80%のうち20%が再び吸収されるであろう。この関係は最後には減衰する;しかし、吸収性流体の高い吸収特性および煙道ガス中の希釈CO
2の強力な吸収に固執する化学吸着の傾向を与えられると、この実施例に関してこの効果は無視され、90%除去の設計が実現される。
【0134】
所望の吸収レベル(この場合、90%)を達成するために十分なパスが達成されるまで吸収流体を通過する流体のさらなるパスが残りのCO
2を再び20%等減らすということがわかる。
【0135】
これは、90%を達成するために必要である流体の深さ(高さ30cmの段の多数の深さ)を決定する「ベース段の数」設計を生じさせる。各段がその前の段と同じ% CO
2/距離を吸収すると仮定すると、
図2Bおよび2Cの結果が得られており、
図2Dおよび2Eにグラフで表される。
【0136】
図2Aは、本発明の脱炭酸塩化部分の一つの態様の主要な特徴を観察するための装置を示す。
図2Aの装置(または同様な効果を有する装置)は、以下に記す手順にしたがって作動させることができる:
(1) 炭酸塩化ユニット801に試験負荷のNaOH(たとえば25℃の水中1M NaOH)を30cmの深さまで充填する、充填または非充填。
(2) この場合は典型的な石炭燃焼煙道ガス排気(16% CO2、84% N2、SOx/NOx <1%または自然なppmレート)の場合の煙道ガス(シミュレーションまたは実物)を炭酸塩化ユニット801に導入し、非充填カラム中に効果的に散布し、充填カラム中に効果的に散布または分散させ、流体中を通過させ、排気する。ガスは25℃であり、CO2は2L/分であり、他のガスがは比例的に混合し、直径4インチのカラムに通して上に流す;システム圧は1atm psigまたはそれより少なくてあり得る。
(3) 入ってくるCO
2濃度を計測することにより(たとえばガスクロマトグラフサンプリングより、またはCO
2濃度のインライン計測を用いて)、CO
2が流体によって吸収されており、温度が上昇しており(発熱反応)、液体アッセイサンプリングが炭酸塩/炭酸水素塩/水酸化物平衡の存在を示し、CO
2の吸収が起こっているだけでなく、炭酸塩または炭酸水素塩形態へのその転換が進行していることを認めることができる。実際の作業経験は、これらの主要「移行点」がpH平衡中に存在することを示す:
a. pH<=8.3では、炭酸水素塩の形成が優勢である。
b. pH>=10では、炭酸塩の形成が優勢である。
(4) 炭酸塩反応への吸収/転換が強力かつ発熱的に進行したのち、ガスの流動動力学を与えられて、CO
2が吸収され/転換されていた速度で、反応の発熱段階が終了し、温度がはじめに横ばいであり、次いで低下し、OHイオン濃度が低下するとともに低下する流体の吸収能力がこの点で事実上ゼロになる。吸収レベルが低下しはじめると、pHは一般に8.3に近くなるか、その付近になる;pH>8.3で、吸収は比較的強力になる。
(5) 流体は炭酸水素塩化カラム803に移され、煙道ガスが再び流体に導入される。CO
2の吸収は停止し、場合によっては、負であることが示されるであろう(流体は、一部のCO
2をその中を通過するガス流に与える)。流体の温度は、一部には移動するガス流への偶発的な蒸発のせいで、また、先に作製された炭酸ナトリウムと、流体中に溶解している残りの「オーファン」CO
2との間で起こる炭酸水素塩化反応のせいで、低下し続ける。
(6) 平衡は、炭酸水素塩の方向にシフトし続け、純粋な炭酸水素塩(99%+)を製造する点まで出発水酸化物濃度、流体およびガス温度、圧力、流量および速度、くねり等の最適化を達成することができる。
【0137】
図2Bおよび2Cは、充填負荷で実施したいくつか試験シリーズの結果を示す(指定の濃度のNaOHを、
図2Aに示すような脱炭酸塩化システム中に配置した)。いくつかの要点が
図2Bおよび2Cのデータによって実証される:
(1) 条件は、純粋な炭酸塩(実験4および14)または純粋な炭酸水素塩(実験28および32)を再現可能に形成するのに十分なように変更することができ、様々な結果(または1.0〜2.0の両極間の「イオン比」)を達成するように変調することもできる。
(2) この実験から得られるリアクタ寸法は、有意な吸収のすべてのケースに関し、一般に3m未満の気液接触距離が入ってくるガスの90%吸収を達成するのに十分であるということがわかる。したがって、熱力学的効率の限界と合致した高い吸収率を達成するためには短い低抵抗段が設計可能であることが示される。換言するならば、CO
2を除去する物理的工程は、システムの熱力学的効率に明らかに見合うまたはそれを超えることができる吸収レベルで作動する。このような高い吸収率(ガス入、ガス出)は、エネルギー、ひいてはCO
2製造の原因ではない。したがって、混乱を回避するために、CO
2吸収率(流体からの)およびプラントの熱力学的効率を二つの明らかに異なる尺度として維持することが重要である。
【0138】
図2Bおよび2Cからの結果(流体によるCO
2吸収)および生成物イオン比(1.0=炭酸水素塩、2.0=炭酸塩)が
図2Dおよび2Eに示されている。
図2Bおよび2Cからいくつか重要な結論を導くことができる:
(1) 入ってくるCO
2の単一吸収段での98%の高さの瞬間的な吸収率が注目される。
a. 純粋な炭酸水素塩(NaHCO
3)を、溶液中、0.30m流体深さ/気液接触距離の単段バブルカラム気液接触器で入ってくるCO
2の25%を吸収する条件で製造した。90%吸収まで補外すると、3メートルの接触距離が、入ってくるCO
2の90%を吸収するのに十分である。
b. 純粋な炭酸水素塩(Na2CO3)を、溶液中、0.30m流体深さ/気液接触距離の単段バブルカラム気液接触器で入ってくるCO2の70%を吸収する条件で製造した。90%吸収まで補外すると、<2メートルの接触距離が、入ってくるCO2の90%を吸収するのに十分である。
c. 生成物における様々な吸収vs炭酸イオン比は、これらの両極間に溶液の連続体が存在することを示す。
(2) 吸収性流体は、工業的に価値ある期間(たとえば、これらの例では15〜240分)にわたってその吸収特性を保持する。
(3) リアクタ入力変量(濃度、温度、圧力、ガス流量、接触時間等)は、純粋な炭酸水素塩、純粋な炭酸塩またはその間の任意の混合物を製造するように変調することができる。
(4) これらの実験結果を使用して90% CO
2リアクタを設計すると、3mの気液接触距離(たとえばおよそ流体深さ、カラム高さ)および多くの工業的に価値ある工程コーナにおける1mの下、溶液が得られる。
【0139】
実施例4
種々の化学的条件でのLVEの解析
図5は、様々な化学的条件の場合の低電圧電気分解操作線を示すチャートである。このチャートは、膜塩素アルカリセルを非標準条件下で作動させるいくつかの典型的な実験結果を示す、すなわち
(1) 1.0、2.5および5.0のpHのHCl(水中塩酸)の閉ループpH調整添加によって陽極流体(プロトン化ブライン)のpHを調節する;
(2) 電気ヒータによって加熱される閉ループ流体回路によって陽極流体の温度を設定点に維持する;ならびに
(3) 流体/プロトン化/温度条件ごとに電圧を変調し、0.01m
2塩素アルカリセルによって達成された電流を記録する。
【0140】
図5では、温度および陽極ブライン流体のプロトン化の程度(この実験シリーズでは、ブラインループへのHCl(l)添加の閉ループph調節によって制御した)の種々の組み合わせで作動する0.01m
2電気分解セル、13mmギャップの場合の実際の実験電圧vs電流(チャートに示すような電流密度kA/m
2に変換可能)をプロットする典型的な実験データのセットが記されている。
【0141】
図5のこれら典型的な結果に関して以下に注目すること:
(1) このようなセルの塩素アルカリ用途で通常に使用されるような高い電圧(5V)で最大電流(したがって、所与のセルの場合、最大電流密度)が達成される。
(2) 同じpHでより高温のブラインは、所与の電圧で優れた電流密度を有する。
(3) より低いpHのブラインは、所与の電圧で、より高いpHのブラインに比べ、優れた電流密度を有する。
(4) これらの一般的な傾向(高めの温度、高めの酸濃度)を個々の電気化学セル幾何学/構成要素設計に関して標準的実験設計技術によって最適化して、そのセルに最適な値(kA/m2V)を出すことができる。増大した作動圧を用いる任意の塩素アルカリセルに対する同様な実験は、作動圧の増大が(kA/m2V)を高めるという結論を出す。
(5) ラインの傾き(△V/△A)は、はじめは大きく、比較的大きな電圧降下が電流/電流密度の比較的小さな低下とともに起こるが;変曲点に達したのち(約(2.5V、10A/.01m2)さらなる電圧低下が、電流、ひいては電流密度のより極端な低下を生じさせる。
(6) 作動条件のこの変曲点およびその近くは、経済的な効率の意味で最適な電圧vs電流密度のトレードオフを表す。標準的実験設計最適化は、本発明の任意の物理的セル態様に関して最適な低電圧条件を達成することができる。
(7) この実施例の状況だけでも、1.0pH、90℃の陽極液条件は、優れた電流/電圧特性を有し、したがって、これら様々な実証された操作線の中で表される最適な操作線である。
(8) 低電圧電気分解の主要な欠点は、それに伴う電流密度の低下である;kA/m2は電圧の低下とともに低下する。システムは、同じ量の二酸化炭素を吸収するために同じ数のNa+イオンを製造しなければならないため、膜表面のm2面積は比例して増大しなければならない;たとえば、電流密度が50%低下するならば、十分な吸収性流体を製造するために2倍の膜面積が必要になるであろう。塩素アルカリプラントは膜面積にほぼ比例するコストを有するため、これはプラントコストに対して深刻な影響を及ぼす。低電圧電気分解は、本発明の特定の態様で、大面積要件の欠点を有意または完全に補正する低電圧線に沿った最適化を可能にすることができるいくつかの利点を提供する。すなわち、セルおよび/または膜寿命を延ばすことができる、より穏和/非活動的な作動条件で作動する膜および電気分解セル構成要素の寿命を経験することができる。特に低めの電圧条件の場合の設計は、低い電圧を使用する態様で本質的ではない特定の材料および性能基準を緩和する能力を伴うかもしれない。これらの設計自由度のいくつかは、低電圧/低電流密度運転によって元々こうむるセル膜コスト増を部分的または完全に吸収する低廉なセルを生じさせるかもしれない。これらおよび多くの他の方法で、LVEシステムは、同じ量のNaOHの製造のために標準的塩素アルカリセルよりも大きな膜面積を要しながらも、その追加コストおよび運用費用の一部を完全または部分的に軽減することができる。
(9) 実施例7に記載された技術により、利点(低めの電圧、ひいては低めの電力)と欠点(大きめの面積および低下する電流密度)とのトレードオフを最適化することができる。
図5に示す1.0/90℃操作線(この小さな実施例セットの場合、LVE動作にとって優れたV/I特性である)の場合、Voptlveを計算することができ、上記関係から、Ioptlveを得ることができる。したがって、所与の電気分解セル幾何学設計の場合、温度、圧力、ブライン濃度、プロトン化度、膜選択等の条件をすべて実施して優れたV/I曲線または操作線を作成したのち、その曲線上の最適点を実施例7の方法によって計算することができる。この場合、Voptlveは2.88Vであり、電流密度Ioptlveは1.04kA/m2である。
(10) 実施例7では、軽度にプロトン化および/または低温のケースで、Vopt=2.88Vにおける電流は約5Aである。この実施例でだけ、その電流(ひいては電流密度)は2倍を超える10.4Aに達した。
(11) ブラインのさらなるプロトン化、温度、圧力、濃度、セルの構成要素の幾何学的配置、電場および条件を同様に最適化して、優れた(kA/m2V)計量を得ることができるが、プロトン化そのものは、製造される化学量論的水素の量を増し、それにより、システムのエネルギー回収を増す。特定の設計の所与の物理的電気化学セルに関し、システムの(kA/m2V)を最適化して吸収性流体を製造するために要するエネルギーを下げることによって最低エネルギーCO2吸収/転換の最適化を達成することができるが、エネルギー回収に利用可能な水素を同時に最適化する(次いで、効率を最適化し、それによって利用可能なエネルギーを回収する)と、工程のための全エネルギーをその最低電位に最適化することができることに注目することが重要である。
(12) 本発明の態様が、塩素アルカリ製造で通常に製造される濃縮水酸化物(一般には33〜35重量%、その後、蒸発によってさらに濃縮)に比較してきわめて希薄な水酸化物(0.2Mおよびそれより以下が実証されている)中にCO2を効率的に吸収することができるとすると、低濃度運転(および低電圧運転)のための塩素アルカリセルの設計は、これらの非標準的条件における設計最適化のための新たな自由度を提供することができる。
【0142】
本発明の態様は、水素を作るために消費されたよりも多くの水素エネルギーを作ることはできない。できるとしたら、熱力学第二法則に違反することになるであろう。これは、電気化学セルに印加することができる最低電圧に制限を課す。水素帰還における効率を100%と仮定し、39000kw-hr/トンのH
2エネルギー量(EIA基準値)を使用するならば、結果として、1.55Vの最低電圧が得られるであろう。当業者は、所与の水素/電力帰還効率およびシステムのエネルギー量の選択値を有する任意のシステムに関し、そのシステムに関して達成可能な最低電圧を計算することができる。
【0143】
実際に、熱力学的非効率性(I2R損失、セルにおける電流非効率性、廃熱損失などを含むが、これらに限定されない)および作動するためのわずかな過電圧の必要性が、所与のセルに関して達成可能な最低電圧を高める。上記数値は、エネルギー回収に利用可能な水素の量を変化させるプロトン化比の値「a」に依存してわずかに異なる。
【0144】
ということは、低電圧における電流密度が、一定量の苛性アルカリを製造するために必要な電気分解面積の量(資本経費の良好なスカラ)を決定し、最低電圧では、所要面積はきわめて大きい。したがって、最低電圧を超えるいくらかの電圧が作動のために必要であり、その量は、設計で選択される資本経費/エコロジー効率のトレードオフに依存する。電流効率(製品を製造する際に消費される電流の割合)は低い電圧で低下し、したがって、低電圧電気分解処理を最適化することは、単一の低電圧作動条件を達成することと同じではない。現在の工程は、LVE領域(5V未満)で作動するように設計されており、5V未満の電圧では、電力消費は従来技術に対して有意に高められる。
【0145】
実施例5
大規模プラント設計の熱力学
この実施例では、フルスケール運用プラント挙動を示すモデルプラント(本発明の特定の態様を取り入れたもの)を説明し、以下を含む手段および方法によって所与の量のCO
2を抽出するために必要なエネルギーを定量し、統計的限界内に画定する:
(1) 熱力学的効率(∂CO
2/∂E)は、十分に短い範囲のE(エネルギー)の間隔でΔCO
2/ΔEとして近似することができる。
(2)
図9Aに表すようなプラント設計に関して特定の簡素化仮定を行うことができる、中でも、
a. 消費される一次エネルギーは電気分解工程にある;ポンピング、圧縮、制御等は、反応体製造(電気分解)および水素エネルギー回収に消費されるエネルギーに比べて僅少であると考慮される。これらの値は、ゼロまたは電気分解処理で消費される電力の<0.1%と推定される。
b. 消費される電気分解エネルギーは、以下の式によっておおよそ表すことができる:
Eout=V*I*EFF電流
式中、
V=作動電気分解セルの電圧
I=ブラインのプロトン化によって生じる1:1を超える化学量論比を含む、電気化学的半反応によって薬品を製造するために必要な電流。この実施例では、電気分解で消費されるプロトン化イオンの0.05HCl/NaCl比を使用する。
EFF電流=化学種の実際の製造で使用される電流の量を定義する電流効率、残りはI2R損失等で損失。97%が実施例で使用した値である;各電気分解セルは、セルの寿命にわたって低下し、変化するそれ固有の電流効率を有するであろう。
c. 以下のように示される、水素燃焼から回収されるエネルギー(何らかの手段によって、ボイラガスとしての燃焼、燃料セル中の燃焼等):
Ein=39000kw-hr/ton圧縮 H2*Ton H2*EFFdc
式中、
Ton H2=ブラインのプロトン化によって生じる1:1を超える化学量論比によって製造される水素を含む、工程によって製造される水素のトン数。
EFFdc=水素ガスの初期エネルギーを直流電流に転換する際の水素回収工程の効率。生産される水素エネルギーの60%が直流電流に転換される。これは、水素/大気酸素燃料セルの現在の規格品直流効率である;水素を圧縮する工程に関しても同様な数値が得られ(達成するためにはその電力の15%を要する)、おそらくは、水素エネルギーの85%が、水素化工程、ガソリン再生工程などのような顧客側工程で帰還される。
d. 入ってくる煙道ガス流の熱から引き上げられた廃熱回収から帰還されるエネルギー。入ってくる加熱ガスは、ひとたび工程に入ると冷却される。本発明のいくつかの態様では、この冷却は、廃熱の吸収およびその熱の電気直流エネルギーへの転換によって達成され、それを使用して、本発明を構成する工程を補充/完全に駆動/過度に駆動することができる。この実施例では、補充的な廃熱回収は含まれない。
【0146】
この実施例のプラントモデルは、
図9Bに示すような通常作動条件下で発電所から出る煙道ガスのモデル化を含む。これは、燃料の組成、燃焼工程そのものの効率、燃焼工程における元素の相対的割合等に関する有意な仮定を含む。この実施例に関する仮定は、
図9Bに示され、10,000BTU/kw-hr熱消費率の典型的な亜歴青石燃焼発電所の煙道ガス産出と合致している。
【0147】
所与の煙道ガス産出量の場合、計算することができる水酸化物所要量がある。ここではいくつかの仮定が必要である。イオン比(「イオン比」とは、吸収/転換反応におけるNa/C比である)は、形成される固体生成物中のそれらの元素の比と同じである。純粋な炭酸水素塩の場合、その数値は1.0であり、純粋な炭酸塩の場合、その数値は2.0であり、炭酸水素塩と炭酸塩との混合物の場合、その数値は1.0〜2.0であろう。この実施例の苛性アルカリ要件の計算が
図9Cに示されている。
図9Cに示す実施例の場合、イオン比は1.0である。
【0148】
所与の水酸化物要件の場合、水の量、塩の量、膜表面の平方メートル(この種の電気化学セルのスカラ)および電流密度(それ自体がセル設計、化学反応および作動条件の関数である;ここでは、3kA/m
2の数値を使用)に基づく対応する電気分解要件がある。この実施例の電気分解要件のこれらの計算は
図9Dに示されている。
【0149】
プロトン化条件下の所与の電気分解量に関して、回収に利用可能な一定量のエネルギーを表す製造される水素ガスの所与の量があるか、水素はさらなる処理で化学的に使用される。この実施例では、水素は、EFFdc=60%で作動する燃料セルを使用して直流電気に転換される。
【0150】
処理される煙道ガスの所与の量に関して、直流電気への一定の転換効率でそれから抽出することができる一定の廃熱量があり、その回収された電気を使用して、電気分解における工程によって消費される直流電気を補充することができる。この実施例の場合の廃熱が
図9Eに示され、この場合に選択された効率は25%、すなわち、この分野に存在する種々の廃熱/直流生成技術によって超えられる数値である。
【0151】
エネルギー投入量および産出量のこれら個々の成分を与えられると、
図9Fにおけるように、これらのエネルギー移動の正味効果を合計することができる。ここで、エネルギーは、kw-hrs単位で、プラント電力ベースの%値として提示され、この実施例の場合のエコロジー効率の計算が示されている。
【0152】
本発明のいくつかの態様では、ブラインのプロトン化に使用されるHClをリサイクルするために、追加的なH
2/C1
2燃料セルを使用して水素および塩素ガスを燃焼させることもできる。特に、「超化学量論的」HClの量をリサイクルすることができ、理論上、原料薬品HClをシステムに加える必要性を除くことができる。実践では、一定量の補充HClを定期的にシステムに加えなければならない。Cl
2中のH
2の燃焼は、H
2/O
2 燃焼が含むよりも多くのエネルギーを含む。それによってわずかな追加エネルギーが達成される。しかし、燃料セルは本来、いくらか完全には満たない効率を有し、そのため、塩素を酸化体として使用することによるエネルギー「利得」よりも回収法に固有の損失のほうが大きい。したがって、この実施例では、これらの効果が互いを打ち消し、ゼロになるものとみなす。したがって、二つの効果はいくらか互いを相殺するが、それでもなお、正味の損失を生じさせる。しかし、電気分解におけるさらなるプロトンの存在の効果は、低い電圧およびそのような低い電圧における高い(kA/m
2V)でのNaOHの製造を劇的に触媒することである。したがって、任意の所与の装置の場合、所与の量のH
2/C1
2をHClにリサイクルし、入ってくるブラインをそのHClの量でプロトン化するための最適化を実施することができる。何らかの最適値(通常はa=0.05〜a=1.0Mの間またはpH=1の近くで9O℃で見いだされる)で、水素/塩素燃料セル損失(塩素によって提示される酸素酸化に対するわずかな利得を超える)および水酸化物エネルギー利益(より良いkA/m
2V)がシステム全体で同時に最適になるであろう。この実施例では、H
2/O
2燃焼だけが計算されていることが注目されるべきである;H
2/C1
2燃焼は、塩素酸化の余分な強さからのわずかな熱力学的利得を有するが、燃料セル非効率さの相殺効果が、わずかに負の、ただし僅少と考えられる効果を生じさせる。
【0153】
A. エコロジー効率の計算
この実施例の場合のエコロジー効率(∂CO
2/∂E)およびΔCO
2/ΔEの計算は、以下のようにして達成した。
(1) 三つのプラントがあると仮定した。
a. 基本発電所(
図9Bの煙道ガスモデルで例示)
b. CO
2吸収/転換プラント(基本発電所からの煙道ガスを処理するために補充的な電力を要し、水素燃焼からその電力の一部または水素が最終生成物であり、燃焼されない場合には水素に固有の計算上の電力を帰還する)。
c. CO
2吸収/転換プラントによって必要とされる電力を提供する第三の補充発電所。この実施例では、この発電所の特性は、基本プラントと同一であると仮定した。
(2) 次いで、CO
2および基本プラントの100%を処理するのに消費されるエネルギーに関する以下の局面を計算した。
a. 基本プラントからのCO
2(煙道ガスモデル)
b. 基本プラントによって生産されるエネルギー
c. CO
2吸収/転換工程によって必要とされる正味エネルギー
d. 補充発電所によって必要とされる正味エネルギーは、CO
2吸収/転換工程によって必要とされる正味エネルギーと同一であると仮定する。
e. 補充発電所によって生成されるCO
2は、補充発電所によって生産されるエネルギーに比例し、基本プラントの同じΔCO
2/ΔEを有すると仮定する。
(3) 上記計算に関して以下の結果を得た。
a. 基本プラント−1年ベースで1Gwを連続生産する10,000熱消費率プラントは、年8.76Bkw-hrsを生産し、毎年CO
2 7,446,068トンのベースを生産し、平均1176kw-hr/トンのCO
2を生産する。
b. CO
2吸収/転換プラント−この実施例の計算(a=0.10、2.1V運転、純粋な炭酸水素塩を生産、水素エネルギーの15%が圧縮で消費。ポンピング/圧縮コストおよび廃熱回収利益は除外)の場合、ベースプラントの100%を吸収/転換するのに3.648BKw-hrが必要である。
c. 補充発電所−この実施例のプラントは、CO
2吸収/転換プラントによって必要とされる電力3.648Bkw-hrを生産し、そのものが(上記からのCO
21176Kw-hr/トンの数字により)大気中に放出されると仮定される合計3,101,209トンのCO
2を生産する。
d. したがって、生産される合計電力は12.48Gw-hrsである。したがって、供給される合計電力は8.76Gw-hrsである。したがって、生成される合計CO
2は10.55Mtonである。したがって、放出される合計CO
2は3.101Mtonである。合計電力の29.1%がCO
2吸収/転換工程で消費される。全CO
2の71.9%が消費される。
【0154】
上記計算によっていくつかの要点が例示される。
(1) 算術的に、以下の式があてはまるということが実証される。
%消費電力=1-%消費CO
2
%消費CO2=1-%消費電力
【0155】
これは、
図9Aに示す、一単位操作線と呼ばれる線を形成する。
(2) この実施例の場合、(∂CO2/∂E)とΔCO2/ΔEとは代数的に同一である。すなわち
ΔCO
2/ΔE=(∂CO
2/∂E)=0.291/0.719=0.41
【0156】
さらに補外されたケースをさらにモデル化することができ、その場合、補充発電所によって放出されるCO
2そのものが、相応に小さめの容量の別のCO
2吸収/転換処理ユニット#2によって処理され、その吸収/転換ユニット#2は、補充発電所#2等によって相応を駆動され、その結果、連続5回繰り返した場合の表2の結果のような結果が得られる。
【0157】
【表2】
【0158】
表2に関していくつかの点がモデルに有意である。
(1) 工程の効率が、基本ケースであろうと、連続的な反復ケースのいずれかであろうと、システムに関して同じ(∂CO
2/∂E)値を一貫して生産することに注目すること;この項は、このモデルの制約を近似するシステムに関しては一定と考えられ、その目的で、工程のエコロジー効率と呼ばれる。
(2) 値(∂CO
2/∂E)がすべての解で一定であることは明らかであり、したがって、反復回数が無限であると仮定される;すなわち、プラントが、そのプラントによって生成されるCO
2を100%消費するために運転されると仮定されるならば、以下の式を使用する簡単な手段によって解を導くことができる:
1/(∂CO
2/∂E)=生成するCO
2を100%吸収/捕捉するために必要なプラント電力の%
実施例の場合、これは41.6%と計算される。
(3) または、所与の工程条件に関して吸収/転換で消費される正味電力がゼロであるとき(廃熱回収を無視する)、吸収および転換されるCO
2 が同じくゼロであることは明白である。したがって、このタイプのプラントのすべての操作線は理論的には(0%電力、0% CO
2)で交差する。
(4) 線形システムで任意の二つの点を与えられると、以下の手段により、CO
2吸収/転換工程の作動特性を定義する、操作線のための直線解を構成することができる:
a. 作動条件ごとに、基本ケース解を達成し、得られる点一単位ケース解(%電力、% CO
2)を%CO
2(y軸)vs%正味消費電力(x軸)のグラフにプロットする;
b. その場合、(∂CO
2/∂E)を計算し、x座標に関してy=100%のケースを解く;および
c. すべての線が原点を通過して移動すると仮定する。実際のシステムでは、ゼロ吸収でさえいくらかの電力消費はあり(制御、環境等)、したがって、これは理想化されたケースである。実際には、これらの線はわずかにカーブし、原点で終端しないであろう。
(5) このようにして、このタイプのCO
2吸収/転換工程に関して一連の操作線を作成することができる。
(6) この同じタイプのプロットで、競合する技術を同じくプロットし、グラフ的に比較することができる、たとえば、
a. 競合するMEA(メチルエチルアミン)吸収技術は、プラント電力の30%を消費して、吸収が導入される前に放出されたCO
2の58%の吸収を達成する。
b. さらには、プラント電力の推定15%が、極端な圧力および冷却サイクリングを介してこのCO
2を液化するのに費やされる(45%電力/58% CO
2)。
c. その場合、これは、1.24の(∂CO
2/∂E)値を実証するであろう;しかし、CO
2を隔離場所に輸送/注入/維持するために必要な考慮されていないエネルギーがさらにある。
d. グラフ的に、この競合技術は、本発明の一つの態様である工程を運用する実施例のCO
2吸収/転換プラントよりも効率が低いことが示される;すなわち、このモデルは、競合技術が、そのCO
2生成量の100%を除去するために発電所の70%+を要することを示す。
図9Aにグラフで表されている、競合する技術に関するこれらの点に注目すること(チャート上の凡例を参照):
i. 2005EIAの推定によると、MEA技術によるCO
2の吸収は、生成される煙道ガスCO
2の58%を吸収するのにプラント電力の30%を要する。(吸収−処理のみのための
図9Aのチャート上の位置(30%、58%)に注目)
ii. 同じ推定により、CO
2の圧縮/液化がプラント電力のさらに15%を消費して、そのようなプラントの運転点を(45%、58%)に移動させる。
iii. 液状CO
2をパイプラインまたは他の輸送装置によって輸送するのに必要なエネルギー、それに関して、そのCO
2を種々の性質の炭素貯蔵所にポンピングまたは注入するために必要なエネルギーの量またはCO
2をその貯蔵所中に永久的に維持するために必要であるかもしれないエネルギーの量の確実な推定はない。しかし、これらの追加的なエネルギーは推定可能ではないが、それらが非ゼロであると推定することが妥当であると思われる。したがって、そのような装置のエコロジー効率は、理論的には、特定のC0
2削減利益を確保するために消費される電力における(45%/58%)トレードオフよりも悪い。これを100%軽減ケースまで補外すると、MEA/液化/隔離技術はプラント電力の70%超を消費するであろう。典型的な競合吸収技術は100%吸収に近づくことができない;すなわち58% CO
2吸収の数値は、出てゆく煙道ガスの100%を処理したプラントのための数値であったことに注目すべきである。
【0159】
B. エコロジー効率の限界[(∂CO
2/∂E)max]の計算
実際には、CO
2を吸収することにより、製造されたすべてのNaOHを効果的にNaHCO
3に転換する所与のシステムの場合、主なエネルギー成分はkw-hr/moleNaOHである。モルNaOHあたりの電力は、電圧および電流の両方に比例し、電流は、化学反応の化学量論的比によって固定される。したがって、モルCO
2あたり費やされる電力は、主として、水酸化物を効率的に製造する最低電圧条件を達成することによって最適化される。
【0160】
本発明の態様の電気分解システムが作動する最低電圧(変化する濃度、幾何学的寸法、流量などで設定)は、システムの電流密度(kA/m
2)vsV特性を観察し、生成物を製造するのに十分な非ゼロ電流密度が得られる最低電圧を決定することによって決定することができる。物理的寸法、電場発生装置、セル寸法大きさ、材料の組成および処理条件を変化させてこの特性計量(kA
2/m
2V)を最適化することが、これらのシステムを最適化するための第一の手段であり、所与の物理的プラントの工業工程を最適化するためには典型的な実験設計技術が有用である。
【0161】
実施上の制限は別として、すべてのシステムに所与のH/Na比(プロトン化比)を適用する一つの根本的な制限がある、すなわち、
(1) 電気分解中のシステムに投入されるよりも多くのエネルギーを水素エネルギー回収を介して生産する装置は作動することができない。熱力学原理の当業者は、これが「第二法則違反」になることに気付くであろう。
(2) この事実の結果として、陽極液消費で使用されるH/Na比の選択を与えられると、根本的な熱力学的限界を画定することができる。
a. この実施例の場合、H/Naは0.10と仮定した。
b. 水素エネルギー帰還効率は100%に設定した。
c. システムによって消費される正味エネルギーがゼロであるところ(すなわち、電気分解コストが推定100%の水素帰還効率に等しい点)の、動作が起こることができる最低電圧(「Vmintheo」)を計算した。
d. この実施例では、その低い電圧は1.5526Vである。この数値は、Na/C比、H/C比および水素エネルギー帰還効率の強い関数である。この最適なケースでは、Na/Cは1.0であり、H/Cは1.0である。
e. この計算をそのエコロジー効率までたどると、単一単位解は、93%CO
2吸収/転換の場合で約7%である。
f. この理論的最小値よりも効率的な運転点で処理することは、以下によって可能である:
i. 電力消費を廃熱回収によって補充し、
ii. 生産の際にCO
2放出を生じさせない電力(水力、太陽光、風力、原子力等)で吸収/転換工程を部分的または完全のいずれかに駆動する。
【0162】
同様に、上記のような理想的な水素帰還効率等を仮定して、運転が「エコロジー的」になるところの最大電圧(「Vmaxeco」)(すなわち、CO
2吸収/転換工程が、それが生成するよりも多くのCO
2を除去するところ)を計算した。
a. H/Na、Na/Cおよび水素帰還エネルギー効率は、上記のように、それぞれ1.0、1.0および100%に設定した。
b. CO
2除去率が50%になる電圧を計算した。
c. この実施例では、そのVmaxecoは4.457Vである。この電圧および条件では、工程は、エコロジー的に利益のある運転とエコロジー的に有害な運転との間の境界線である∂CO
2=∂E線上で作動する。
【0163】
したがって、エコロジー的に有益な運転は、電気分解システムをVmintheo(1.5526V)とVmaxeco(4.457V)との間で作動させたときに起こるであろう。これらの2点の間での作動は、多くの典型的な電気分解システムで再現することができる。2.1Vまたは未満での実験室結果は、このようにして設計された電気化学セルの形状大きさ、濃度、温度、圧力、流量等を操作することにより、容易に再現することができる。
【0164】
C. エコロジー効率に対する非温室効果生成性プラントの影響
補充電力(工程を駆動する電力)が非温室効果ガス(GHG)放出電力(たとえば風力、水力、太陽光、原子力等)によって生産される場合、補充的CO
2放出はゼロであり、本発明のエコロジー効率は大きく改善する。この実施例の場合、表2のCO
2の項3101209トンは、すべての後続する反復等とともに除かれて、この簡素化された結果を残す:すべてのCO
2が吸収/転換され(7,446,069トン)、所要総電力は単に基本8,760,000,000+その基本量のCO
2を吸収/転換するために必要な仕事を達成するために必要とされる3,648,448,267kw-hrsであり、GHG駆動工程でCO
2放出の100%を確保するために要する総電力の41%に比べ、非GHG駆動工程でCO
2放出の100%を確保するのに総電力の29%しか要しない。これは、工程が非GHG放出によって駆動される場合、本発明の態様が有意な「てこ入れ」係数を提供することを意味する。非GHG電力を使用してGHG生成電力を1%:1%のベースで置換する代わりに、非GHG電力を使用して、本発明のいくつかの態様である工程を駆動するならば、本明細書に記載するGHG生成電力を超える場合でさえ、非GHG生成電力の1%がGHG生成を多重倍だけ置換する。所与の国、州または事業体に関し、非GHG生成電力の一定の割合が、このように倍増的に使用される場合、任意のCO
2削減目標をより効率的に達成することができる;すなわち、「クリーン」な電力を高度にてこ入れされたやり方で使用して他の「汚い電力」の放出を浄化することができるケースを容易に想定することができる。
【0165】
いくつかの用途で非GHG生成発電がときには散在形態(たとえば太陽熱、風力「ファーム」等)で利用可能であるとすると、オフピーク期間にその電力を利用して多量の吸収剤を作る能力はきわめて有意である。
【0166】
実施例6
種々のモデル化発電所のエコロジー効率
図10は、本発明の態様を取り入れた様々なモデル化発電所のエコロジー効率を示し、エコロジー効率(∂CO2/∂E)を決定する際の主要因である種々の条件を示す。
【0167】
これらの計算から一般に以下のことを結論づけることができる。
(1) 炭酸ナトリウムを形成し、標準的塩素アルカリ条件を使用すると、工程は>1のエコロジー効率を有し、そのような運転は経済的に存立可能であるかもしれないが、それが吸収するよりも多くのCO
2を生成する。
(2) 炭酸水素ナトリウムの生産を優先するように生成物平衡を変化させることが工程のエコロジー効率を改善する。事実上純粋な炭酸水素ナトリウムを生産するように条件を変更する場合、この利点は最大限に最適化される。
(3) 低電圧電気分解実施の採用は、1.0未満のエコロジー効率を特徴とする作動領域に工程を着実に移動させる(すなわち、エコロジー的に有益なCO
2吸収および転換工程)。最適な(kA/m
2V)および最大限の水素エネルギー生産のために電気分解システムの各物理的エミュレーションを最適化することがエコロジー効率のさらなる改善につながる。
(4) 本発明の態様の吸収/転換工程を、廃熱を直流電気に転換する任意の数の利用可能または専用機械と組み合わせると、直流電気分解および交流ポンピング等における初期エネルギー投資を廃熱回収によって補充または完全にまかなうことができる。
【0168】
非温室効果ガス放出性発電装置からの電力を本発明に供給すると、工程は100%のCO
2吸収のすぐ近くまで達することができることが注目されるべきである(実施例5の記載を参照)。
【0169】
実施例7
最適化LVE塩素アルカリセルのためのV/I特性操作線を与えられた場合のVoptlve(セル容量または面積に対する最適な低電圧作動電圧)およびIoptlve (その作動電圧における電流)の決定
本明細書では、低電圧運転が、吸収性流体として使用される水酸化ナトリウムを製造するために必要とされる電力を減らすことを実証した。表3は、
図5における1.0/90℃陽極液の場合のVI操作線から導いた計算を示す(先に実施例4で論じた)。
【0170】
表3の内容に関していくつか点に注目すべきである。
(1) 電流効率(無次元)としての三列目は、生成薬品を製造するために使用される、生成された電流の割合を表す;損失、たとえばI2R損失および電気分解流体の無駄な加熱が非効率さの主要な原因である。電流効率は電圧の低下とともに低下する。
(2) セル面積は3.975Vケース(電流密度、ひいては工程の面積要件が、3.0kA/m
2特性で作動する標準5V電気分解と同一である場合)に関して正規化されている。A2/A1(無次元)を計算する。
【0171】
無次元面積あたり節約される電力の%として最後の項目が
図11にプロットされている。このような関数の場合、最大傾き(電圧の変化あたり電力使用の変化)が最適値を表す;すなわち、低い電圧(たとえば2.1〜2.5V)では、傾き(Δpower/Δm2)は比較的低く、次いで、より高い電圧(たとえば2.5〜約3)で、傾き(Δpower/Δm2)はより大きな値まで増大し、次いで、電圧が増大し続けるにつれ、より低い傾きまで低下する。これは、両側が低い傾きの領域によって画定された高い傾きの領域がある;すなわち、そのVoptlve点のいずれの側でも、電圧Δあたりの電力使用の変化がさほど効果的ではないことを示す。
【0172】
はじめに、実際の挙動を近似する関数を達成した(最小二乗当てはめによって作成された多項式傾向線の式に注目)。この例では、y=-10.164x3+88.256x2-235.06x+198.37が概数である。次いで、多項式の典型的処理によってこの関数の第一導関数を計算した:dy/dx=(3)(-10.164)x2+(2)(88.256)x-235.06=max。x(ボルト)の値を反復して、その第一導関数の最大値を見いだすことができ、それは、種々の技術によって達成されて、2.894Vを解として出すことができる。
【0173】
2.894V未満の電圧を使用することもでき、さらなる省力が得られるであろうことに注目すること。いくつかの好ましい態様は、この「自然な最適点」未満の低電圧運転を最適化する。そのような場合、膜で使用されるさらなる面積が「最適未満」の電気分解システムを生じさせるが、脱炭酸塩化工程全体の低電力運転は、所与の電気分解サブシステムに関してこの自然な最適値未満で運転することによってさらに利を得ることができる。しかし、その際、電圧/電力の利点はその後、減衰し、その一方で、面積係数が比例的に運転を面積あたりより非効率的にし続ける。
【0174】
電流およびこのVoptlveに対応する電流密度は、VおよびIに関して同様な最小二乗関係を形成することによって決定することもできるし、それとも作動曲線をグラフで使用してIoptlveを決定することによって決定することもできる。この例では、計算値は10.419A (または、このケースにおけるように0.01m
2セル面積の場合)、1.042kA/m
2である。
【0175】
【表3】
【0176】
本明細書で開示し、特許請求するすべての方法および装置は、本開示を鑑みると、過度な実験を行うことなく成し、実行することができる。好ましい態様に関して本発明の方法および装置を説明したが、当業者には、本発明の概念、本質および範囲を逸することなく、本明細書に記載する方法および装置ならびに方法の工程の順序に変更を加えることができることが明らかであろう。より具体的には、化学的に関連する特定の組成物を本明細書に記載する組成物に代えて用いても、同じまたは類似した結果が達成されるということが明らかであろう。当業者には明らかであるそのような同様な代用および変形はすべて、請求の範囲によって定義される発明の本質、範囲および概念に入るものとみなされる。
【0177】
参考文献
以下の参考文献が、本明細書に述べるものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
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