(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セメント、アルミノケイ酸カルシウムガラス、石膏、凝結遅延剤、表面に炭酸カルシウムを被覆した樹脂中空微小球、及び減水剤を含有してなる急硬性セメント組成物であって、石膏が、アルミノケイ酸カルシウムガラスと石膏からなる急硬成分100質量部中、30〜60質量部であり、前記急硬成分が、セメントと前記急硬成分からなる急硬セメント100質量部中、25〜30質量部であり、前記樹脂中空微小球が、前記急硬セメント100質量部に対して、0.1〜0.7質量部であり、前記減水剤が、リグニンスルホン酸系高性能減水剤又はポリカルボン酸系高性能減水剤である急硬性セメント組成物を封入してなる易破壊性で吸水性の、材質が紙又は不織布であるアンカー素子定着用カプセルを、3〜7分間、水に浸漬後、穿孔内に充填し、破壊し、アンカー素子定着用カプセル内の急硬性セメント組成物を混合することを特徴とするアンカー素子定着方法。
前記凝結遅延剤が、アルカリ金属炭酸塩と、アルカリ金属炭酸塩100質量部に対して、5〜200質量部の有機酸類からなり、前記凝結遅延剤が、前記急硬セメント100質量部に対して、0.1〜5質量部であることを特徴とする請求項1に記載のアンカー素子定着方法。
【背景技術】
【0002】
日本は、山間部が多く、その中に道路、建物、及び設備等が建設されている。道路から外れた山間部等の工事では、運搬の便が悪いために掘削機械の搬入が容易でない場合や、作業機械を人がかついで現場まで長時間かけて搬入し、かつ、搬出しなければならない場合があり、作業機械を使用することなく人力で、簡便に設置できることが要請されている。特に、山中や斜面が急峻な場所で、網やロープをアンカー固定する作業等には簡便に設置できることが必要である。
また、寒冷地の冬季においては、気温が零下になり、積雪も多いので、落雪や人の作業性が悪くなり危険であった。
【0003】
一般に、建築、土木分野のコンクリート、石材、レンガ、ブロック、及び岩盤等の硬質部材を削孔し、鉄筋、アンカーボルト、及びロックボルトを固定する定着材が使用されている。
本発明では、所要定着力が得られるようなロックボルト工法やアンカーボルト工法用のボルトをアンカー素子といい、アンカー素子用の定着材をアンカー素子定着材といい、アンカー素子定着材を利用したロックボルト工法やアンカー工法をアンカー素子定着工法という。
定着材としては、金属系アンカー素子のように、アンカー素子埋設時にその先端部分が拡張し固定するものと、アンカー素子の周りを接着系の材料で固定するものに分かれる。
接着系の材料を使用する場合、昜破壊性の容器に、セメント質物質と、カルシウムアルミネートと、アルカリ硝酸塩類とを主成分とするセメント組成物を昜破壊性の容器に収納してなる素子の定着材が公知である(特許文献1参照)。
また、アルカリ金属炭酸塩、アルミン酸塩、水酸化カルシウム、カルシウムアルミネート、保水性物質、オキシカルボン酸塩類、及び細骨材を昜破壊性のカプセルに封入したアンカー素子定着材が公知である(特許文献2参照)。
さらに、セメント、アルミノケイ酸カルシウムガラス、石膏、骨材、ミクロフィブリル化した繊維状セルロース、水、及び凝結遅延剤を、易破壊性の容器に含有する素子定着用カプセルが公知である(特許文献3参照)。
【0004】
しかし、これら、従来のカプセル型のボルト定着材の場合、急硬性ボルト定着材はあるものの、人力で作業できる作業性、急硬性、及び冬季における耐久性の三つの条件を満足できるものは無かった。
そのため、気温が零下になる冬季の寒冷地において、早期にアンカー素子を固定し、耐久性があり、作業性が良好な急硬性のアンカー素子定着材が求められていた。
【0005】
一方、屋外環境で供用された場合でも卓越した耐久性や耐候性を有する、中空微小球を含有する水硬性スラリー又は水硬性モルタルの硬化体が公知である(特許文献4参照)。 しかしながら、特許文献4には、アルミノケイ酸カルシウムガラスと石膏からなる急硬成分を併用してアンカー素子を定着することについては全く記載がない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明における部や%は、特に断わらない限り質量基準である。
【0011】
本発明は、セメント、アルミノケイ酸カルシウムガラス、石膏、凝結遅延剤、表面に炭酸カルシウムを付着させた樹脂中空微小球、及び減水剤
を含有してなる急硬性セメント組成物を封入してなる易破壊性で吸水性のアンカー素子定着用カプセ
ルを用いたアンカー素子定着方法である。
【0012】
本発明で使用するセメントは、通常市販されている普通、早強、中庸熱、低熱、及び超早強等の各種ポルトランドセメント、これらのポルトランドセメントに、フライアッシュや高炉スラグなどを混合した各種混合セメント、並びに、エコセメントなどが挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能である。
セメントの粒度は、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で3,000cm
2/g以上が好ましく、4,000cm
2/g以上がより好ましい。3,000cm
2/g未満では急硬性や初期強度発現性が低下する場合がある。
【0013】
本発明で使用するアルミノケイ酸カルシウムガラス(以下、CASガラスという)は、カルシア(CaO)を含む原料と、アルミナ(Al
2O
3)を含む原料、及びケイ酸(SiO
2)を含む原料等を混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理をして得られるもので、CaO、Al
2O
3、及びSiO
2を主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称である。
CASガラスは、例えば、熱処理をして得られた溶融体を圧縮空気や高圧水等により急冷することによって得られるガラス質である。
CASガラス中のCaO、Al
2O
3、及びSiO
2の割合は特に限定されるものではないが、CaO 30〜60部、Al
2O
3 20〜60部、及びSiO
21〜25部が好ましく、CaO 30〜55部、Al
2O
3 30〜60部、及びSiO
25〜20部がより好ましい。CaOが30部未満、あるいは、Al
2O
3が60部を超えると急硬性が劣る場合があり、CaOが60部を超えるか、あるいは、Al
2O
3が20部未満では凝結遅延剤を多量に併用しても瞬結する場合がある。また、SiO
2が1部未満では長期的な強度の伸びが期待できない場合があり、25部を超えると初期強度が小さい場合がある。
また、CASガラス中のガラス質は80%以上が、強度発現性が良好であることから好ましい。
CASガラスの粒度は、ブレーン値で3,000cm
2/g以上が好ましく、4,000〜7,000cm
2/gがより好ましい。3,000cm
2/g未満では急硬性や初期強度発現性が低下する場合がある。
【0014】
本発明で使用する石膏は、CASガラス、水、セメントの水和物である水酸化カルシウムと反応し初期強度を得るもので、市販のいずれの石膏も使用できるが、強度発現性の面で、II型無水石膏及び/又は天然無水石膏の使用が好ましい。
石膏の粒度は、ブレーン値で3,000cm
2/g以上が好ましく、4,000〜7,000cm
2/gがより好ましい。3,000cm
2/g未満では初期強度発現性が低下する場合がある。
石膏の使用量は、CASガラスと石膏からなる急硬成分100部
中、30〜60部
である。30部未満では長期強度発現性が低下する場合があり、70部を超えると初期強度発現性が低下する場合がある。
【0015】
本発明において、急硬成分は、CASガラスと石膏を含有する。
急硬成分の使用量は、セメントと急硬成分からなる急硬セメント100部中、
25〜30部であ
る。10部未満では寒冷地での初期強度発現性が小さい場合があり、30部を超えると長期強度が小さい場合がある。
【0016】
本発明で使用する凝結遅延剤は、施工時の作業性保持を可能とするものである。粉状で使用する場合と、アンカー素子定着用カプセル浸漬水に溶解させ使用する場合がある。
凝結遅延剤としては、有機酸類やアルカリ金属炭酸塩類等が挙げられる。これらの中では、硬化時間をコントロールでき、硬化後の強度発現性が良好な点で、有機酸類とアルカリ金属炭酸塩類を併用することが好ましい。
【0017】
有機酸類とは、有機酸又はその塩であり、具体的には、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、及びリンゴ酸等のオキシカルボン酸又はこれらの塩の一種又は二種以上であり、その塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩が好ましい。これらの中では、使用量と比例して凝結時間が長くなり、施工時の作業時間のコントロールがしやすく、凝結遅延剤をスラリー化した場合に、カルシウム成分と化学反応を起こしにくい有機酸塩が好ましく、オキシカルボン酸塩がより好ましい。
【0018】
アルカリ金属炭酸塩類(以下、炭酸アルカリという)としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムなどの炭酸塩や、炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムなどの重炭酸塩が挙げられ、これらのうち、硬化後の強度発現性が良好な面で、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。
【0019】
有機酸類と炭酸アルカリを併用する場合の有機酸類の使用量は、炭酸アルカリ100部に対して、5〜200部が好ましく、10〜100部がより好ましい。5部未満では硬化時間をコントロールしにくく、施工がしにくい場合があり、200部を超えると強度発現性が低下する場合がある。
【0020】
凝結遅延剤の使用量は、施工の作業時間、温度、及び凝結遅延剤の組成等により幅があるため、一義的に決定することは難しいが、本発明では、急硬セメント100部に対して、0.1〜5部が好ましく、0.3〜3部がより好ましい。0.1部未満では硬化時間が短くて施工しにくい場合があり、5部を超えると強度発現性が低下する場合がある。
【0021】
本発明では、寒冷地において、耐凍結融解性等の耐久性が優れるセメント硬化体を得るなどのために、炭酸カルシウムを被覆した中空微小球(以下、本中空微小球という)を使用する。
【0022】
本中空微小球の材質は、アクリロニトリル、フェノール、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、塩化ビニリデン、及びポリフェノールなどがあり、共重合物や架橋体であっても特に限定されるものではなく、高分子球形弾性体からできており、その径は300μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。径が300μmを超えると使用量が同じでも凍結融解の耐久性劣る場合がある。
本中空微小球の含水率は、0.5〜10%が好ましく、0.5〜5%がより好ましい。0.5%未満では飛散しやすく、10%を超えると急硬性セメント組成物に混合した場合、急硬性セメント組成物が硬化し、使用できない場合や、中空微小球が分散せず、アンカー素子が容易に挿入ができない場合がある。
本中空微小球の密度は、0.10〜0.30g/cm
3が好ましく、0.10〜0.25g/cm
3がより好ましい。0.10g/cm
3未満では急硬性セメント組成物に混合した場合、飛散や均等に分散しない場合や、輸送中に分離する場合がある。0.30g/cm
3を超えると、アンカー素子が容易に挿入ができない場合や凍結融解の耐久性が得られない場合がある。
本発明で使用する本中空微小球は、適度の密度と、急硬セメントとの付着性を得るため、高分子球形弾性体である中空微小球の表面に、炭酸カルシウムを被覆したものである。
本発明で使用する本中空微小球は、例えば、中空微小球の材質中に液状炭化水素を含有したものを、微粉炭酸カルシウムとともに170℃程度まで加熱し、所定のサイズになるまで、均一に温度が伝わるようにして製造することができる。
本中空微小球の樹脂と炭酸カルシウムの質量比率は、本中空微小球の樹脂100部に対して、炭酸カルシウム100〜500部が好ましく、200〜500部がより好ましい。100部未満では飛散しやすく、均一分散されず、偏析傾向になり、耐久性が劣る場合があり、500部を超えると、耐久性が得られない場合がある。
中空微小球の使用量は、気象条件、中空微小球の密度、配合(モルタル、コンクリート)により異なる。本中空微小球の使用量は、セメントと急硬成分からなる急硬セメント100部に対して、0.10〜
0.70部である。0.02部未満ではアンカー素子が容易に挿入ができないなどの作業性が得られない場合や耐久性が得られない場合があり、2部を超えると強度の低下が大きくなり、引き抜き強度が得られない場合がある。
【0023】
本発明では骨材を使用することが可能である。通常は5mm以下の細骨材が使用される。
骨材としては、天然砂、珪砂、及び石灰砂等が挙げられる。
骨材の使用量は、急硬セメント100部に対して、400部以下が好ましく、300部以下がより好ましい。400部を超えると施工がしにくく、所定の性能が得られない場合がある。
【0024】
本発明では、さらに、減水剤を使用する。
減水剤とは作業性の改善を得るものであり、液体や粉体いずれも使用でき、具体的には、リグニンスルホン酸塩やその誘導体、高性能減水剤等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。吸水が小さい場合は、作業性の改善が大きい減水剤の使用が好ましい。また、アンカー素子定着材中に混和できる粉体の減水剤が、施工する作業が簡便になる面から好ましい。
【0025】
高性能減水剤としては、ポリエチレングリコールなどのポリオール誘導体、リグニンスルホン酸系高性能減水剤、芳香族スルホン酸系高性能減水剤、ポリカルボン酸系高性能減水剤、エチレングリコール鎖やスルホン酸基を含有するポリエーテル系高性能減水剤、メラミン系高性能減水剤、及びこれらの混合物等が挙げられ
るが、
本発明では、凝結遅延効果や流動性が大きい点で、リグニンスルホン酸系高性能減水剤
又はポリカルボン酸系高性能減水剤
を使用する。
【0026】
減水剤の使用量は、急硬セメント100部に対して、固形分換算で0.05〜3部が好ましく、0.1〜2.5部がより好ましい。0.05部未満では所定の作業性が得られない場合があり、3部を超えると凝結が不良となり、初期強度発現性が小さい場合がある。
【0027】
本発明では、セメント、アルミノケイ酸カルシウムガラス、石膏、凝結遅延剤、表面に炭酸カルシウムを付着させた樹脂中空微小球、及び減水剤含を有してなる急硬性セメント組成物をアンカー素子定着用カプセルに封入する。
【0028】
本発明のアンカー素子定着用カプセルは、易破壊性で、吸水性のものであり、材質としては、ガラス、陶器、磁器、プラスチック、不織布、及び紙等が挙げられ、紙又は不織布が好ましい。
アンカー素子定着用カプセルの大きさとしては、特に限定されるものではないが、通常、長さ800mm以下、外径40mm以下が好ましい。長さが800mmを超え、外経が40mmを超えたものでは、アンカー素子定着用カプセルに充分な量の水を吸収させるのに時間がかかり、取り扱い時の、作業性が低下する場合がある。
【0029】
本発明のアンカー素子定着用カプセルは、水に浸漬した後、アンカー素子用の定着材を定着するために窃孔形成した空洞部に挿入してアンカー素子
を挿入してアンカー素子定着用カプセルを破壊して、アンカー素子を定着する方法や、窃孔形成した空洞部にアンカー素子定着用カプセルを挿入し、水を吸収させて、アンカー素子
を挿入してアンカー素子定着用カプセルを破壊して、アンカー素子を定着する方法が可能である。
【0030】
アンカー素子定着用カプセルに水を充分に吸収させるための時間は、
3〜7分であり、3〜5分が好ましい。2分未満ではアンカー素子定着用カプセルの吸水が不充分となり、作業性が悪く、所定の定着力が得られない場合がある。また、7分を超えても、吸水は飽和状態となり、凝結遅延剤が混合されず、作業性が悪くなり、所定の定着力が得られない場合がある。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実験例にて詳細に説明するが、本発明はこれら実験例に限られるものではない。
【0032】
実験例1
本発明のアンカー素子定着用カプセルに、使用する各材料の配合割合を決定するための予備試験を行った。
表1に示すセメント、CASガラス、及び石膏から調製した急硬セメント100部に対して、本中空微小球0.7部、凝結遅延剤0.5部、減水剤を固形分換算で0.25部、及び水40部を配合し、アンカー素子定着材を調製し、JIS R 5201 セメントの物理試験方法に準拠して、低速で20秒間練り混ぜて供試体を作製し、硬化時間、3時間(3H)と28日の圧縮強度を測定した。結果を表1に併記する。
使用材料温度、練り混ぜ時の室温、及び3時間養生温度は、5℃とし、3時間養生以降の養生は、0℃で行なった。
【0033】
<使用材料>
セメント :早強ポルトランドセメント、太平洋セメント社製、住友大阪セメント社製、及び電気化学工業社製の3種混合品、ブレーン値4,470cm
2/g、密度3.12g/cm
3
CASガラス:CaO/Al
2O
3/SiO
2質量比=50/45/5、ガラス化率100%、ブレーン値4,650m
2/g
石膏 :天然無水セッコウの粉砕品、ブレーン値4,780cm
2/g
中空微小球a:塩化ビニリデンアクリロニトリル共重合物製、炭酸カルシウム被覆品(中空微小球表面に、樹脂100部に対して、炭酸カルシウム300部を被覆したもの)、含水率1%、粒径38μm、密度0.16g/cm
3
凝結遅延剤:グルコン酸ナトリム/炭酸カリウムの質量比2/8の混合物
減水剤α :リグニンスルホン酸塩系高性能減水剤、市販品、粉体
水 :水道水
【0034】
<測定方法>
含水率 :試料5gを1/1000gまで測定可能な秤を使用し質量測定。50℃、6時間乾燥し、その後デシケータ中で室温まで冷却し、重量測定。
硬化時間 :測定温度が1℃上昇したときの、混合からの時間(分)
圧縮強度 :JIS R 5201セメントの物理試験方法に準じて測定、材齢3時間と28日
【0035】
【表1】
【0036】
実験例2
セメント75%、CASガラス12.5%、及び石膏12.5%からなる急硬セメント100部と、表2に示す本中空微小球と減水剤、凝結遅延剤0.5部、及び水40部を混和したアンカー素子定着材を調製し、硬化時間、3時間(3H)と28日の圧縮強度を測定した。
一方、水を除く急硬性セメント組成物を、幅58mm(外径37mm)、長さ700mmの不織布袋に740g充填し、充填口を、急硬性セメント組成物が漏れないように、ホッチキス止めしアンカー素子定着用カプセルとした。このアンカー素子定着用カプセルを1℃の水に5分間吸水させ塩ビパイプに挿入し、作業性試験を行った。作業性試験24時間前にアンカー素子定着用カプセルを、ポリ袋に密封し、5℃で保管した。
なお、使用材料温度、練り混ぜ時の室温は、5℃とし、作業性を確認した。結果を表2に併記する。
【0037】
<使用材料>
中空微小球b:塩化ビニリデンアクリロニトリル共重合物製、含水率1%、粒径38μm、密度0.04g/cm
3、表面無処理品
減水剤β :ポリカルボン酸塩系高性能減水剤、市販品、粉体
減水剤γ :ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤、市販品、粉体
【0038】
<測定方法>
作業性 :アンカー素子定着用カプセルを、1℃の水に5分間吸水させ、垂直に固定したΦ44mm×長さ700mmの塩ビパイプに挿入し、長さ1mの、挿入端を45°にカットした呼び名D22異形鉄を人力で挿入し、上下させてアンカー素子定着用カプセルを破壊し、アンカー素子定着材を混合し、作業性を測定した。作業性の評価は、鉄筋の挿入が軽く、挿入回数が5回以下で安定し、楽な施工である場合を「良」、鉄筋の挿入回数が5〜14回で安定し、若干労力を必要とする場合を「可」、鉄筋はなんとか挿入できるが、重く、挿入回数が15回以上と多く、労力を必要とする場合を「不良」、鉄筋を底まで挿入できない場合を「不可」とした。
【0039】
【表2】
【0040】
実験例3
実験例2で作業性を確認した後、塩ビパイプ中のアンカー素子定着材を、塩ビパイプから取り出し、不織布を除いて混合し、4×4×16cmの供試体を作製した。接水から3時間後に凍結融解試験を開始した。凍結融解試験の結果と、サイクル終了時の圧縮強度結果を表3に示す。
【0041】
<測定方法>
凍結融解試験:JIS A1148コンクリートの凍結融解試験方法
【0042】
【表3】
【0043】
実験例4
セメント75%、CASガラス12.5%、及び石膏12.5%からなる急硬セメント100部と、本中空微小球0.7部、凝結遅延剤0.5部、及び減水剤αを0.25部を混和したアンカー素子定着材を調製し、幅58mm(外径37mm)、長さ700mmの不織布袋に740g充填し、充填口を、急硬性セメント組成物が漏れないように、ホッチキス止めしアンカー素子定着用カプセルとした。
このアンカー素子定着用カプセルを、表4に示す時間、水に浸漬し、その後、試験用に穿孔した孔に充填した。アンカー素子を用いて、人力で充填したアンカー素子定着用カプセルを破壊し、そのなかのアンカー素子定着材を混合してアンカー素子を定着した。その結果を表4に併記する。
【0044】
【表4】
【0045】
実験例5
穿孔した孔に、アンカー素子定着用カプセルを充填し、注水してから、5分後にアンカー素子を用いて人力で充填したアンカー素子定着用カプセルを破壊し、そのなかのアンカー素子定着材を混合してアンカー素子を定着したこと以外は実験例4と同様に行った。その結果、実験例と同様の結果が得られた。