特許第5959146号(P5959146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959146ゲッター材料の処理方法およびゲッター材料の封止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959146
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ゲッター材料の処理方法およびゲッター材料の封止方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/26 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   H01L23/26
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-226463(P2010-226463)
(22)【出願日】2010年10月6日
(65)【公開番号】特開2011-82521(P2011-82521A)
(43)【公開日】2011年4月21日
【審査請求日】2013年8月16日
【審判番号】不服2015-5997(P2015-5997/J1)
【審判請求日】2015年4月1日
(31)【優先権主張番号】0956997
(32)【優先日】2009年10月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ザヴィエル・バイリン
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・ラグート
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ロドリゲス
【合議体】
【審判長】 森川 幸俊
【審判官】 酒井 朋広
【審判官】 井上 信一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−075170(JP,A)
【文献】 特開2008−084987(JP,A)
【文献】 米国特許第3408130(US,A)
【文献】 国際公開第01/091210(WO,A1)
【文献】 特表2006−521688(JP,A)
【文献】 特開2004−031276(JP,A)
【文献】 特表2007−537040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−2mbarより高い圧力及び50℃から120℃の間の温度で、1分から10分の間の期間にわたって、二窒素の乾燥雰囲気下で、薄層が堆積されたゲッター材料(104)を窒化する段階を含み、前記ゲッター材料(104)の窒化物から構成され、且つ前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の上で1nmから10nmの間の厚さを有する保護層(106)を形成する、薄層が堆積されたゲッター材料(104)の処理方法。
【請求項2】
前記窒化段階より前に、前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)を含む環境を真空化するかまたは真空状態に維持する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窒化段階を実施する前に前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)が外気に曝露された場合、前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の前記窒化段階より前に、その熱活性化温度付近の温度及び二次真空下で、前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の熱処理する段階をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱処理段階を1時間から10時間の間の期間にわたって実施する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)がチタン及び/またはジルコニウム及び/またはバナジウムから構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)が200nm以下の粒径を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
キャビティ(114)の壁を形成するよう意図された層(102)の1面上に少なくともゲッター材料(104)を薄層として堆積する段階と、
請求項1から6のいずれか一項に記載の薄層が堆積されたゲッター材料(104)の処理方法を実施する段階と、
前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)を含む前記キャビティ(114)を閉鎖する段階と、
を少なくとも含む、キャビティ(114)内に薄層が堆積されたゲッター材料(104)を封止する方法。
【請求項8】
前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の処理方法と前記キャビティ(114)の閉鎖段階との間に、前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の活性化温度と比較して50℃から150℃低い温度及び二次真空下で実施する前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の熱処理段階をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の処理方法と前記キャビティ(114)の閉鎖段階との間に実施される前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の熱処理段階を、数分から数十分の間の期間にわたって実行する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の処理方法を実行した後、または、前記方法が前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の処理方法と前記キャビティ(114)の閉鎖段階との間に実施される前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の熱処理段階を含む場合は前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の熱処理段階の後に、前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の熱活性化段階をさらに含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の熱活性化段階を前記キャビティ(114)の閉鎖段階の間に実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)の熱活性化段階を、前記薄層が堆積されたゲッター材料(104)を200℃から450℃の間の温度まで加熱することによって実施する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
マイクロエレクトロニクス及び/またはナノエレクトロニクスデバイス(100)をさらに前記キャビティ(114)中に封止する、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイクロエレクトロニクス及び/またはナノエレクトロニクスデバイスを封止する閉鎖キャビティにおいて、気体吸収及び/または吸着を生じさせるゲッター材料の分野に関する。本発明は特に、このようなゲッター材料の保護処理の実施に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2に開示されているように、例えばMEMS(電気機械マイクロシステム)及び/またはNEMS(電気機械なのシステム)及び/またはMOEMS(光電気機械マイクロシステム)及び/またはNOEMS(光電気機械ナノシステム)タイプのマイクロエレクトロニクス及び/またはナノエレクトロニクスデバイスの封止を密閉キャビティにおいて実施する場合、デバイスの側またはキャビティのカバーに対してのいずれかのキャビティ内部に、ゲッター材料の薄層を堆積することが知られている。ゲッター材料は、本質的に、且つ/またはそのマイクロスケールまたはナノスケールの形態を介して、気体分子に対して吸収性及び/または吸収特性を有し、閉鎖空間に置かれた場合に化学的ガスポンプを形成することができる材料である。従って、このようなゲッター材料は、マイクロエレクトロニクス及び/またはナノエレクトロニクスデバイスを封止するキャビティ内の圧力を制御する。非蒸発性ゲッター材料は例えば、チタン、ジルコニウム、バナジウム、またはこれらの金属の金属合金、もしくはその他の適合する金属などである。
【0003】
薄層に形成されたゲッターの欠点は、外気と強い反応性を有することである。そのため、薄層のゲッター材料が形成された後に外気に曝露されると、ゲッター材料は外気(酸素、窒素、一酸化炭素及び二酸化炭素)から気体だけでなく、外気中に存在する蒸気も吸収する。例えば、ゲッター材料がチタンから構成される場合、ゲッター材料と水蒸気の化学反応は、以下の通りである。
Ti(固体)+HO(気体)→TiO+yH (1)
【0004】
このようにゲッター材料が外気に曝露されることにより、ゲッター材料の層の表面上に厚さ数ナノメートルの酸化物の層が形成される。さらに、水素分子がゲッター材料中に溶解される。ゲッター材料がジルコニウムまたはいかなるその他のゲッター材料から構成される場合も同じ反応が起こる。ゲッター材料中に水素が存在すると、活性温度付近の温度及び約10−3mbarから10−7mbarの間の圧力である二次真空に曝露された場合に脱着現象を介してゲッター材料からこの水素が放出され、これらの条件は、デバイスの封止の間及び/またはゲッター材料の熱活性化の間に頻繁に発生するため、ゲッター材料中に水素が存在すると問題が生じる。このような脱気は、ゲッター材料における酸化物の分解と連続的及び/または同時に行うことが可能である。しかし、デバイスを封止するキャビティを閉鎖した後にこのような水素の脱気が生じると、デバイスの稼動に影響を及ぼし得る。さらに、外気との接触によるゲッター材料における酸化物の形成は、とりわけ任意の外気圧における水蒸気の分圧に依存するため、制御が困難である。
【0005】
ゲッター材料が外気に曝露された場合、デバイスの封止の前にゲッター材料の脱気を実施してゲッター材料を汚染する気体粒子を排除することができる。しかし、このような脱気は、ゲッター材料を数時間にわたって熱処理することによってしか得られず、封止方法を完了する場合に不都合である。
【0006】
特許文献3には、外気による汚染、例えばゲッター材料の酸化からゲッター材料を保護するための解決方法として、貴金属から構成される薄層をゲッター材料に堆積することが開示されている。この解決方法は、追加の費用が発生するだけでなく、貴金属の保護層の厚さの実質的な制御を必要とする追加の堆積を必要とし、フォトリソグラフィ及びエッチングによるゲッター材料の形成を困難なものとし、さらには封止されたマイクロデバイスを構成するために行われる技術的積層との適合問題が発生し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,897,551号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/087284号
【特許文献3】米国特許第6,923,625号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、例えば、マイクロエレクトロニクス及び/またはナノエレクトロニクスデバイスもまたその中に封止され得るキャビティ内に封止されるゲッター材料を、外気に対して、特に外気中に存在する水蒸気に対して効果的に保護するだけでなく、さらには外部気体によって引き起こされ得るいかなる化学的変質からも保護する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、二酸素及び/または二窒素の乾燥雰囲気下でゲッター材料を酸化及び/または窒化する段階の少なくとも一方を含み、ゲッター材料の酸化物及び/または窒化物から構成される保護層を形成するゲッター材料の処理方法を提供する。
【0010】
「二酸素及び/または二窒素の乾燥雰囲気」とは、水蒸気の分圧が低いかまたはゼロである雰囲気を意味する。
【0011】
従って、このような処理方法は、気体分子、例えば外気の気体分子を可逆的に吸収及び/または吸着して、これらの気体分子による変質からゲッター材料の全表面を保護することができる酸化物及び/または窒化物から構成される保護層を形成する。酸化物及び/または窒化物から構成される保護層によって吸収及び/または吸着された分子は、続く単純な脱気の実行によって脱着され得る。従って、このような処理方法によって、外気中の気体によって変質されずに連続してゲッター材料を外気に曝露することが可能となり、ゲッター材料が外気に曝露されないように、ゲッター材料を形成した直後にゲッター材料の封止を結び付け且つ実施しなければならないという技術的制約が排除される。
【0012】
ゲッター材料の外気への曝露によって生成されるゲッター材料の酸化物に関して、乾燥酸素及び/または乾燥二窒素を含む閉鎖環境で実施される酸化及び/または窒化では、水素分子はゲッター材料中に拡散しない。従って、ゲッター材料を封止する前に、これらの水素分子を特に除去するための脱気を必要としない。
【0013】
このような処理方法はまた、外気に曝露された保護されていないゲッター材料に対してゲッター材料のポンピング能力を強化する。
【0014】
最後に、この方法で保護されたゲッター材料は、外気に曝露された保護されていないゲッター材料の活性化温度よりも低い活性化温度、例えば約20℃から30℃未満から熱的に活性化される。
【0015】
有利には、水蒸気の低いまたはゼロ分圧を得るために、酸化及び/または窒化段階の前に、ゲッター材料を含む環境を真空化するまたは真空状態に維持する段階を含むことができる。従って、酸化及び/または窒化段階を真空環境で実施することができる。
【0016】
特にゲッター材料がチタン及び/またはジルコニウムから構成される場合、酸化段階は、約10−2mbarより高い圧力及び/または約50℃から120℃の間の温度及び/または約1分から10分の間の期間にわたって実施することができる。これらのパラメータは、この温度範囲におけるチタンの酸化の反応速度が同じであるという事実に対応する。また、表面は、1分間程度の曝露時間にわたって約10−2mbarから吸着された種で飽和されるようである。従って、約50℃から120℃の間、有利には100℃の温度を選択することによって、ゲッター材料が曝露される気体分子を吸収及び/または吸着するのに十分な厚さを有し、ゲッター効果に対する障壁を形成せず、ゲッター材料の熱活性化温度の上昇並びに吸収及び/または吸着性能の制限に寄与しない程度に優れた保護層が形成される。結果として得られた保護層は、約1から数ナノメートルの間、例えば約10ナノメートル未満の厚さを有し得る。
【0017】
特にゲッター材料がチタン及び/またはジルコニウムから構成される場合、窒化段階は、上記で示したパラメータ、好ましくは約100℃から120℃の間の温度及び/または約1分から10分の間の時間及び/または約10−2mbarより高い圧力によって実施することができる。
【0018】
上記で示したパラメータをチタンまたはジルコニウム以外のゲッター材料に適用することもできる。
【0019】
酸化及び/または窒化段階を実施する前にゲッター材料が外気に曝露された場合、本方法はさらに、ゲッター材料の酸化及び/窒化段階より前に、活性化温度に近い温度、例えば活性化温度とほぼ等しい温度で、二次真空下でゲッター材料を熱処理する段階を含むことができる。このような熱処理は、酸化物及び/または窒化物から構成される保護層を形成する熱処理を未だ施されていないゲッター材料によって吸着及び/または酸化物及び/または窒化物に転換された気体種を脱着及び/または分解する。この場合、熱処理段階は、約1時間から10時間の間の期間にわたって実施することができる。
【0020】
熱処理は、あらゆるタイプのゲッター材料に対して実施することができる。ゲッター材料は特に、薄層として作製され、且つ/またはチタン及び/またはジルコニウム及び/またはバナジウムから構成され得る。
【0021】
ゲッター材料は、約200nm以下の粒径を有し得る。
【0022】
本発明はまた、ゲッター材料をキャビティ内に封止する方法に関し、
キャビティの壁を形成するように意図された層の1面上に少なくともゲッター材料を堆積する段階と、
ゲッター材料に上記で説明したような処理を実施する段階と、
ゲッター材料を含むキャビティを閉鎖する段階と、
を少なくとも含む。
【0023】
キャビティは、カバーを基板に移動すること、または基板上に犠牲層を堆積した後にカバー層(または閉鎖層)を堆積し、後に犠牲層を除去することによって得ることができる。この第2の例では、閉鎖段階は、カバー層に形成された犠牲層を除去するための除去孔を閉鎖する段階からなり得る。この場合、ゲッター材料の保護層は、水分からゲッターを保護するだけでなく、犠牲層を作製及び除去する段階からもゲッターを保護する。
【0024】
本方法はさらに、ゲッター材料の処理方法とキャビティの閉鎖段階との間に、ゲッター材料の活性化温度に対して約50℃から150℃低い温度で、二次真空下でゲッター材料を熱処理する段階を含むことができる。このような熱処理は特に、保護層が形成された後にゲッター材料が外気に曝露されたときに保護層によって吸着及び/または吸収された気体分子を脱着し、同時にこの脱気段階の間にゲッター材料が活性化されることを防ぐ。
【0025】
ゲッター材料の処理方法とキャビティの閉鎖段階との間に実施されるゲッター材料の熱処理段階は、約数分から数十分、例えば約2分から50分の間の期間にわたって実施することができる。
【0026】
本方法は、ゲッター材料の処理方法を実施した後、またはゲッター材料の処理方法とキャビティの閉鎖段階との間に実施されるゲッター材料の熱処理段階を含む場合は、ゲッター材料の前記熱処理段階の後に、ゲッター材料の熱活性化段階をさらに含むことができる。ゲッター材料の熱活性化以外に、この段階によってゲッター材料が保護層の酸化物及び/または窒化物粒子を形成する酸素及び/または窒素分子を吸収することが可能となり、均一なゲッター材料が生成され、その結果保護層が除去される。このゲッター材料の熱活性化段階は、キャビティの閉鎖段階の間に実施することができる。
【0027】
ゲッター材料の熱活性化は、ゲッター材料を約200℃から450℃の間の温度に加熱することによって達成することができる。
【0028】
マイクロエレクトロニクス及び/またはナノエレクトロニクスデバイスを、キャビティ内に封止することもできる。
【0029】
少なくとも1つのゲッター材料の非自然酸化物及び/または窒化物からなる少なくとも1つの保護層を基板上に備えるゲッター材料が提案される。「非自然酸化物」との用語は、外気において自然に形成される酸化物ではなく、例えば前述のような二酸素及び/または二窒素の乾燥雰囲気下での酸化段階によって形成される酸化物を示す。
【0030】
保護層は、約1nmから10nmの間の厚さを有し得る。
【0031】
前記ゲッター材料は、薄層で形成され、且つ/またはチタン及び/ジルコニウム及び/またはバナジウムから構成され得る。
【0032】
本発明はまた、上記のようなゲッター材料を含む少なくとも1つのキャビティを備えた封止構造体に関する。
【0033】
封止構造体は、キャビティ内に封止された少なくとも1つのマイクロエレクトロニクス及び/またはナノエレクトロニクスデバイスをさらに備え得る。
【0034】
本発明は、添付の図面を参照し、実施形態の説明からより深く理解されるが、これらの実施形態は単に表示及び非限定的な目的で与えられたものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】特定の実施形態による本発明のゲッター材料の封止方法の段階を図示する。
図2】特定の実施形態による本発明のゲッター材料の封止方法の段階を図示する。
図3】特定の実施形態による本発明のゲッター材料の封止方法の段階を図示する。
図4】ゲッター材料の熱活性化温度に応じて酸化または窒化層によって保護されたゲッター材料または保護されていないゲッター材料の窒素のポンプ性能を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下で説明される異なる図面の同一、類似、または同等の部分には、全ての図面を容易に参照するために、同一の参照符号が付される。
【0037】
図面をより見やすくするために、図面に示される異なる部分は必ずしも均一な縮尺で示されているとは限らない。
【0038】
異なる可能性(変形例及び実施形態)は、互いに排他的であると理解されてはならず、組み合わせることが可能である。
【0039】
特定の実施形態によるゲッター材料104の封止方法並びにマイクロエレクトロニクス及び/またはナノエレクトロニクスデバイス100、例えばMEMS及び/またはNEMS及び/またはMOEMS及び/またはNOEMSタイプの封止方法の段階を図示する図1から3を参照する。
【0040】
図1に示すように、ゲッター材料104及びデバイス100を封止するためのキャビティのカバーを形成するよう意図された基板102上にゲッター材料104を堆積する。ゲッター材料104(ここではチタンである)を、例えばリフトオフ堆積(基板102上に作製された犠牲マスクを通した堆積)または厚さが約10μm以下である薄層の形態のステンシルを通した堆積によって形成する。ゲッター材料104をリソグラフィ及びエッチングによって形成することもできる。
【0041】
次いで、ゲッター材料104が特に外気から保護されるように処理を実施する。これには、乾燥二酸素(O)及び/または乾燥二窒素(N)を、約50℃から120℃の間の温度、例えば約100℃の温度で堆積チャンバ内に導入し、堆積チャンバ内の圧力は例えば最低約10−2mbarと等しい。ゲッター材料104を数分間の期間、例えば約1分から10分の間にわたって二酸素及び/または二窒素の存在下に配置することによって、ゲッター材料104の乾燥酸化及び/または窒化が実施され、図2に示すようにゲッター材料104の表面上にチタン酸化物及び/またはチタン窒化物から構成される保護層106が形成される。保護層106の厚さは、例えば約1nmから数ナノメートルの間、例えば約10nmである。チタンの酸化及び窒化反応は、以下の式に対応する。
Ti(固体)+O(気体)→Ti(固体) (2)
Ti(固体)+N(気体)→Ti(固体) (3)
【0042】
添え字x、y、w及びzは、予想される化合物、具体的にはTiO及びTiNに対して、不定比化合物を含む可能性を示す。続いてゲッター材料が外気に曝露される場合、存在する気体、特に外気中の気体はゲッター材料104を汚染することなくその後保護層106だけでなくフォトリソグラフィで使用された化学製品によっても吸収及び/または吸着されるため、結果として保護層106が、これらの気体によって引き起こされ得る化学変性からゲッター材料を保護する。従って、デバイス100及びゲッター材料104を封止するよう意図されたキャビティを形成するための基板102を使用する前に基板102およびゲッター材料104を外気中に保管することが可能である。
【0043】
図3に示すように、基板102は、そこにデバイス100が作製されるように第2基板110と組立てられ、封止構造体200が形成される。この組立ては、シーリングビード112を利用して基板102を第2基板110と接続することによってなされ、デバイス100及びゲッター材料114を封止する密封キャビティ114を形成する。この組立てを通して、外気に曝露されたときに保護層106によって吸着及び/または吸収された気体を脱着させるために、二次真空下での熱処理を実施し、例えばゲッター材料の活性化温度に対して約50℃から150℃低い温度で、約数分から数十分の間にわたって実施する。従って、これらの気体は、キャビティ114が密閉される前に排気される。
【0044】
その後、例えば約200℃から450℃の間の温度でゲッター材料の性質に応じて選択し、ゲッター材料104のアニーリングを利用したゲッター材料104の熱活性化を実施することによって封止が達成される。ゲッター材料104の熱活性化以外では、このアニーリングはまた保護層106を“分解”し、酸化物及び/または窒化物粒子の形態で保護層106中に存在し、すべてのゲッター材料104に吸収される酸素及び/窒素分子を有する保護層106を除去し、ここではチタンから構成される均一なゲッター材料104を生成する。
【0045】
図1から3とあわせて上記で説明した実施例では、堆積されたときにゲッター材料104が基板102上に直接形成され、次いで乾燥二酸化物及び/または乾燥二窒素によって酸化及び/または窒化される。変形例では、最初に、基板102を完全に被覆する薄層の形態でゲッター材料を形成することも可能である。その後、ゲッター材料は乾燥二酸化物及び/または乾燥二窒素によって酸化及び/または窒化され、保護層106を形成し、フォトリソグラフィ及び乾式、反応的かどうかにかかわらず、または湿式エッチングによって形成される。形成された酸化物及び/または窒化物層106は、完成したエッチングに対してゲッター材料104の挙動を変更しない。
【0046】
前述の方法において、酸化物及び/窒化物から構成される保護層106の形成は、ゲッター材料104の堆積チャンバ内においてインサイチューで実施される。しかし、保護層106を形成する方法を、事前に外気に曝露されたゲッター材料に適用することもできる。この場合、保護層106の形成より前に、二次真空下で例えば約350℃で数時間に及ぶ熱処理が実施される。この熱処理が完了すると、次いで、ゲッター材料が外気に曝露しないようにゲッター材料の真空下での封止を維持して、保護層106を形成するための前述のような乾燥酸化及び/窒化が実施される。保護層106を形成する間、封止体内に形成される真空は、約10−2mbarより高い圧力に調整され、温度は約50℃から120℃の間、好ましくは約100℃に調整される。
【0047】
酸化物及び/窒化物から構成される保護層106の形成によってさらに、ゲッター材料のポンプ性能が増強される。図4に描かれた曲線10は、保護層106がチタン酸化物(ゲッター材料104の乾燥酸化によって形成される)から構成される場合の、ゲッター材料104の熱活性化温度(℃)に応じたゲッター材料104のポンプ性能(mbar・cm/cm)を表す。曲線12は、同一のゲッター材料104のポンプ性能を表すが、保護層106がチタン窒化物(ゲッター材料104の乾燥窒化によって形成される)から構成される場合である。最後に、曲線14は、保護層を有さない同一のゲッター材料104のポンプ性能を表す。
【0048】
図4は、酸化物または窒化物から構成される保護層の存在により、保護層を有さず、外気に曝露されたゲッター材料と比較して、ゲッター材料のポンプ性能が増強されたことを明確に示している。さらに、曲線14では、保護層を有さないゲッター材料の熱活性化の最後より前に、350℃から375℃の間で、保護されていないゲッター材料が脱気を行うこと(ポンプ性能の降下によって図4から解釈される)が明らかであり、ゲッター材料及びデバイスが封止されるキャビティの閉鎖の後であるゲッター材料の熱活性化の間に現われるこのような脱気は、キャビティ内の圧力を上昇させ、デバイスの稼動を不安定にする可能性があるため、主な欠点を構成する。比較すると、曲線10及び12では、ゲッター材料が酸化物または窒化物から構成される保護層によって保護されている場合はそのような脱気が起こらないことが明らかである(ゲッター材料の熱活性化の間に曲線10及び12ではポンプ性能の降下が現われない)。
【0049】
その間にゲッター材料の乾燥酸化及び/または窒化によって保護層が形成される前述の封止方法は、特にMEMS、NEMS、MOEMS、NOEMS型のマクロシステムもしくはナノシステム、または制御された雰囲気を必要とする赤外検出器に適用される。また、前述のゲッター材料104の封止及びデバイス100の封止が2つの基板の組立てによってなされるとしても、密閉キャビティにおけるデバイス100及びゲッター材料104のこの封止は、基板110上にキャビティのカバーを薄層として堆積することによってなすことができる(この場合、ゲッター材料104はデバイス100の側に形成される)。
【0050】
変形例では、ゲッター材料を基板102上に堆積せず、例えばデバイス100の側に配置された第2基板110上に堆積することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
100 デバイス
102 基板
104 ゲッター材料
106 保護層
110 第2基板
112 シーリングビード
114 密封キャビティ
200 封止構造体
図1
図2
図3
図4