特許第5959155号(P5959155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959155
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】胴縁材の製造方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
   B27F 1/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B27F1/00 B
   B27F1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-75108(P2011-75108)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-206447(P2012-206447A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】509289825
【氏名又は名称】横田 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】横田 潔
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−021204(JP,A)
【文献】 実開平01−098806(JP,U)
【文献】 特開2001−349035(JP,A)
【文献】 実開昭47−004595(JP,U)
【文献】 特開2003−311702(JP,A)
【文献】 実開昭58−045004(JP,U)
【文献】 特開平08−039504(JP,A)
【文献】 特開2010−275806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

回転する円盤状の回転刃にて複数の板材に通気凹部を切削して胴縁材を製造する方法において、板材の裏面に形成する通気凹部の略半分部位に対して自らの刃先を接触させるように延在する第1切削刃と、第1切削刃の刃先に対して所定の間隙を介して自らの刃先を、通気凹部の略半分部位に接触させるように延在する第2切削刃と、を交互に配した回転刃を、板材支持台の板材設置面が上向きとなる方向に、垂直方向から10度から20度の範囲で傾斜した状態で移動可能に配し、板材を上下方向に多数配した状態で前記回転刃の移動方向と平行となる位置で支持する板材支持台と、多数の板材を手前側から板材支持台側へ押圧する押圧機構と、を配し、板材を上下多数配した後、押圧機構により個々の板材を板材支持台側へ押圧、支持し、その後回転刃の第1切削刃および第2切削刃を回転させた状態で、回転刃を板材配置表面が上向きとなる方向に、垂直方向から10度から20度の範囲で傾斜させた状態で下降させ、板材支持台上の板材の裏面に通気凹部を、その表面積において上方を大きく、下方を小さくして放射状に広がるように切削した後、押圧機構を元の位置へ返戻させて板材への押圧力を解除し、板材支持台に沿って板材をスライド機構によりスライド移動させて回転刃による切削位置に次回の板材裏面を導いて切削するようにしたことを特徴とする胴縁材の製造方法。
【請求項2】

前記板材支持台上に凸条を板材と同数配し、この凸条により個々の板材表面を上向きに傾斜させると共に、多数配した板材表面が上向きとなるように板材支持台を傾斜させ、多数の板材をスライド可能とし、大なる上方の深さを深く、小なる下方の深さを浅くして放射状に広がるように切削することを特徴とする請求項1記載の胴縁材の製造方法。
【請求項3】

押圧機構において、多数の板材を板材支持台側へ押圧、支持させる際、個々の板材の上部に対応する個所に大径のブッシュを、下部に対応する個所に小径のブッシュを、それぞれ回転刃による切削個所の表面両に位置するように配することにより、個々の板材表面が上向きとなるように押圧、支持することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の胴縁材の製造方法。
【請求項4】

通気凹部の形状を、通気抜け側方向からの平面視略円弧状としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一に記載の胴縁材の製造方法。
【請求項5】

回転する円盤状の回転刃にて複数の板材に通気凹部を切削して胴縁材を製造する装置において、板材の裏面に形成する通気凹部の略半分部位に対して自らの刃先を接触させるように延在する第1切削刃と、第1切削刃の刃先に対して所定の間隙を介して自らの刃先を、通気凹部の略半分部位に接触させるように延在する第2切削刃と、を交互に配した回転刃を前記板材支持台の板材設置面が上向きとなる方向に、垂直方向から10度から20度の範囲で傾斜した状態で移動可能に配し、板材を上下方向に多数配した状態で前記回転刃の移動方向と平行となる位置で支持する板材支持台を設け、板材支持台に配した多数の板材をスライド機構によりスライド可能とし、多数の板材を手前側から板材支持台側へ押圧する押圧機構を配してなることを特徴とする胴縁材の製造装置。
【請求項6】
前記板材支持台上に個々の板材表面を上向きに傾斜させるための凸条を板材と同数配し、多数配した個々の板材表面を上向きに傾斜させ、押圧、支持することを特徴とする請求項5記載の胴縁材の製造装置。
【請求項7】
通気凹部の形状を、通気抜け側方向からの平面視略円弧状としたことを特徴とする請求項又は請求項6記載の胴縁材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造家屋の通気性や住宅の寿命を低下させる原因となる結露や湿気を抑制するための胴縁材を製造するための方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の胴縁材等の木製板材へ通気凹部を切削する装置は、凹部(溝)厚に対応する円盤状チップソーにより切削することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
その使用方法は、垂直方向に回転するように円盤状チップソーを配し、その下方で水平に板材を搬送して、板材に均一に凹部(溝)を切削、形成させるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−243839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された従来の切削装置によれば、回転刃が凹部(溝)に対応する厚さの1枚刃により凹部(溝)を1回で切削するので、切削時の接触摩擦力が大きくなり、そのため、回転刃への動力、出力を大きくする、換言すれば大電力、大出力が必要となり、ひいては回転刃自体も高耐久性が必要であった。
【0006】
さらに、平行に配した複数の板材の一カ所に凹部(溝)を切削するには問題はないが、所定間隔を隔てて複数の凹部(溝)を切削する場合、複数の板材を前後方向において元の位置まで戻した上、直交する左右方向に移動させ、加えてチップソー側へ移動させて切削する必要があり、非常に煩雑であった。
【0007】
本発明はこのような欠点に鑑み、胴縁材として優れた効果を奏するように、板材の表面積において一方が大きく、他方が小さい通気凹部を容易に一度に切削、形成することができ、作業性を格段に向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る胴縁材の製造方法およびその装置は、回転する円盤状の回転刃にて複数の
板材に通気凹部を切削して胴縁材を製造する方法において、板材の裏面に形成する通気凹
部の略半分部位に対して自らの刃先を接触させるように延在する第1切削刃と、第1切削
刃の刃先に対して所定の間隙を介して自らの刃先を、通気凹部の略半分部位に接触させる
ように延在する第2切削刃と、を交互に配した回転刃を板材支持台の板材設置面が上向きとなる方向に、垂直方向から10度から20度の範囲で傾斜した状態で移動可能に配し、板材を上下方向に多数配した状態で前記回転刃の移動方向と平行となる位置で支持する板材支持台を設け、多数の板材をスライド機構によりスライド可能とし、多数の板材を手前側から板材支持台側へ押圧する押圧機構を配し、板材を板材支持台に上下多数配した後、押圧機構により個々の板材を板材支持台側へ押圧、支持し、その後回転刃の第1切削刃および第2切
削刃を回転させた状態で回転刃を板材表面が上向きとなる方向に、垂直方向から10度から20度の範囲で傾斜させた状態で下降させ、板材支持台上の板材の裏面に通気凹部を、その表面積において上方を大きく、下方を小さく、かつ大なる上方の深さを深く、小なる下方の深さを浅くして放射状に広がるように切削した後、押圧機構を元の位置へ返戻させて板材への押圧力を解除し、板材支持台に沿って板材をスライド移動させて回転刃による切削位置に次回の板材裏面を導いて切削するようにしたことを特徴とするもの、または、この板材支持台上に凸条を板材と同等数配し、この凸条により個々の板材表面を上向きに傾斜させると共に、多数配した板材の板材表面が上向きとなるように板材支持台を傾斜させるようにしたことを特徴とするもの、または、押圧機構において、多数の板材を板材支持台側へ押圧、支持させる際、個々の板材の上部に対応する個所に大径のブッシュを、下部に対応する個所に小径のブッシュを、それぞれ回転刃による切削個所の表面両側に位置するように配することにより、個々の板材表面が上向きとなるように傾斜させて押圧、支持することを特徴とするもの、または、通気凹部の形状を、通気抜け側方向からの平面視略円弧状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る胴縁材の製造方法およびその装置によれば、多数上下平行、かつ板材表面が上向きとなる方向に、垂直方向から10度から20度の範囲で傾斜させた状態で配設支持させた板材の裏面側に対して、上方から第1切削刃、第2切削刃からなる回転刃を接触させることにより、通気凹部を切削、形成するため、切削時の接触摩擦力を小さくすることができ、回転刃への動力、回転刃の出力、を小さくすることができるばかりか、回転刃自体の耐久性もさほど高くする必要がなく、コスト低減を図ることができる。

【0010】
加えて、通気凹部を切削後、板材を前方にスライド移動させるため、従前の如く板材を元の位置に戻し、さらに左右方向に移動させる等の作業が一切不要となり、作業性が格段に向上する。
【0011】
また、押圧機構において、個々の板材の上部に対応する個所に大径のブッシュを、下部に対応する個所に小径のブッシュを、それぞれ回転刃による切削個所の表面両側に位置するように配することにより、個々の板材表面を上向きに傾斜させて押圧、支持することができ、表面積において上方を大きく、下方を小さく、かつ大なる上方の深さを深く、小なる下方の深さを浅くして放射状に広がる形状の通気効率が高い通気凹部を、板材を確実に支持した状態で、切削することができる。

【0012】
また、通気凹部の形状を、通気抜け側方向からの平面視略円弧状とすることにより、スムーズな通気性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る胴縁材の製造装置の要部斜視図である。
図2】同、正面図である。
図3】同、側面図である。
図4】同、使用状態を示す要部側面図である。
図5】同、拡大図である。
図6】同、切削工程を示す概略図である。
図7】回転刃を示す、(イ)は斜視図、(ロ)は使用状態を示す拡大平面図である。
図8】本発明の実施例1の胴縁材の製造装置によって製造される胴縁材を配設してなる木造家屋の斜視図である。
図9】(a)本発明の実施例1の胴縁材の製造装置によって製造される胴縁材の断面図、(b)本発明の実施例1の胴縁材の製造装置によって製造される胴縁材の側面図、(c)本発明の実施例1の胴縁材の製造装置によって製造される胴縁材の他の側面図、(d)本発明の実施例1の胴縁材の製造装置によって製造される胴縁材の部分拡大側面図である。
図10】本発明の実施例2の胴縁材の製造装置によって製造される胴縁材の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
胴縁材として優れた効果を奏するように、板材の裏面に、その表面積において一方が大きく、他方が小さくなる放射状の通気凹部を容易に切削、形成し、作業性を格段に向上させる目的を、通気凹部の略半分部位に対して自らの刃先を接触させるように延在する第1切削刃および第2切削刃を交互に配した回転刃と、多数上下に配設させた板材を傾斜立設支持し、かつ板材を前方に移動させる板材支持台と、多数の板材を手前側から板材支持台側へ押圧、支持する押圧機構と、により実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、図1−8を参照して本発明に係る胴縁材の製造装置について説明する。
本発明に係る胴縁材の製造装置は、回転刃11、板材支持台17、押圧機構25とからなるものである。
本例において、板材Pの裏面に形成する通気凹部Dは、優れた通気効果を奏するように、平面視略円弧状としてあり、さらには板材Pを垂直方向に立設させた状態で、その表面積において上方を大きく、下方を小さく、かつ大なる上方の深さを深く、小なる下方の深さを浅くして放射状に広がる形状としてある。
【0016】
回転刃11は、図6、7に示すように、以下の構成からなるものである。板材Pの裏面に形成する通気凹部Dの略半分部位に対して自らの刃先を接触させるように延在する第1切削刃13と、第1切削刃13の刃先に対して所定の間隙を介して自らの刃先を、通気凹部Dの略半分部位に接触させるように延在する第2切削刃15と、を交互に配してある。
【0017】
このように、回転刃11を第1切削刃13と第2切削刃15とにより多数刃構成とすることにより、板材Pに対する回転刃11の切削時の接触摩擦力を小さくすることができ、回転刃への動力、回転刃の出力、を小さくすることができるばかりか、回転刃自体の耐久性もさほど高くする必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0018】
この回転刃11を板材表面が上向きとなる方向に、垂直方向から10度から20度の範囲で傾斜した状態で移動可能に配してある。
この回転刃11の配設位置は、被切削体である板材Pの裏面を切削するため、後述の板材
支持台17の裏面側である。

【0019】

さらに、回転刃11は、板材表面が上向きとなる方向に、垂直方向から略15度傾斜させて移動させる。

このようにパネルソーを垂直方向から略15度板材表面が上向きとなる方向に傾斜させて被切断体の自重により、前方へ傾倒させて被切断体用指示枠からの脱落を防止するためである。

【0020】
板材支持台17は、図1−3に示すように、以下の構成からなるものである。板材Pを上
下方向に多数配した状態で板材表面が上向きとなる方向に垂直方向から10度から20度の範囲の角度で支持するための矩形状の長尺な平板からなるものであり、回転刃11の移動と同様、垂直方向から略15度後方に傾斜立設させてある。
【0021】
この板材支持台17上の板材P設置面に、個々の板材Pを板材表面を上向きに傾斜させるための凸条19を、板材Pと同数配してある。この凸条19により個々の板材Pを板材表面を上向きに傾斜させることができる。
【0022】
加えて、1回の切削後、所定間隔を隔てた位置に通気凹部Dを切削するため、多数の板材Pを前方(図2において左側)へスライド可能としてある。
【0023】
本例において、スライド機構は、自走式モーター21に、板材Pの後端(図2において右側端)部位を案内、支持するための支持枠23を、固定した構成とし、自走式モーター21によりこの支持枠23を前方へ移動させて多数の板材Pを移動させる。
【0024】
押圧機構25は、図4、5に示すように、以下の構成からなるものである。
多数の板材Pを手前側(図4において右側)から板材支持台17側(図4において左側)へ押圧する機構であり、板材支持台17の手前側で、前記回転刃11の設置位置と対応する、板材支持台17の手前側の位置としてある。
【0025】
本例において、押圧構造は、略垂直方向(略15度後方に傾斜させた状態で)立設させた上下動棒27の上下中央の3個所に移動アーム29を前方へ延出するように軸支させ、この移動アーム29前面(板材支持台17側の面)に押圧板41を軸支させ、上下動棒27を上方に移動させ、移動アーム29を前方へ延出させることにより、押圧板41を板材支持台17側へ移動させて板材支持台17に配した多数の板材Pを押圧、支持する構造としてある。
【0026】
加えて、多数の板材Pを板材支持台17側へ押圧、支持させる際、個々の板材Pの上部に対応する個所に大径のブッシュ43を、下部に対応する個所に小径のブッシュ45を、それぞれ回転刃11による切削個所の表面両側に位置するように、押圧板41の前面部位に配してある。
【0027】
このため、個々の板材Pの表面を上向きに傾斜させて押圧、支持することができ、表面積において上方を大きく、下方を小さく、かつ大なる上方の深さを深く、小なる下方の深さを浅くして放射状に広がる形状の通気効率が高い通気凹部Dを、板材Pを確実に支持した状態で、切削することができる。


【0028】
すなわち胴縁材の原材料となる板材Pを多数上下平行、かつ板材表面が上向きとなる方向に、垂直方向から10度から20度の範囲の角度で配設支持させ、その個々の板材Pの下部を手前側に傾斜させて配置させるため、板材の裏面の上下方向に通気凹部を切削する際、その表面積において上方が大きく、下方が小さい凹部、およびその深さにおいて上方が深く、下方が浅い通気凹部を一工程で(一度に)容易に形成することができる。
【0029】
本発明に係る胴縁材の製造装置により、胴縁材を製造する方法を以下に詳述する。

まず、板材Pを板材支持台17に上下平行に多数配設する。

この際、板材支持台17の凸条19により個々の板材Pを板材表面が上向きとなる方向に傾斜させることができる。

次に、押圧機構25により個々の板材Pを板材支持台側17へ押圧、支持する。




【0030】
この際、押圧機構25の押圧板41に配した大径のブッシュ43および小径のブッシュ45により、個々の板材Pの表面を上向きに傾斜させて押圧、支持することができ、表面積において上方を大きく、下方を小さく、かつ大なる上方の深さを深く、小なる下方の深さを浅くして放射状に広がる形状の通気効率が高い通気凹部Dを、板材Pを確実に支持した状態で、切削することができる。換言すれば、胴縁材としての品質を格段に向上させることができる。


【0031】
次に、回転刃11の第1切削刃13および第2切削刃15を回転させた状態で板材表面が上向きとなる方向に(略15度傾斜させた状態で)下降させ、板材支持台17上の板材Pの裏面に通気凹部Dを、その表面積において上方を大きく、下方を小さく、かつ大なる上方の深さを深く、小なる下方の深さを浅くして放射状に広がるように切削する。


【0032】
次に、押圧機構25を元の位置(図4において右側)へ返戻させて板材Pへの押圧力を解除し、板材支持台17に沿って板材Pを前方へスライド移動させて回転刃11による切削位置に次回の板材P裏面部位を導いて切削するようにする。
【0033】
この際、回転刃11は元の位置である上方に返戻し、次回の作業に備える。
なお、本発明に係る製造方法において、各機構の駆動、停止をコンピューター等の制御機構にて制御することにより、連続して板材Pに通気凹部Dを切削することができる。
【0034】
以上の本発明に係る胴縁材の製造装置によって図8及び図9に示す胴縁材1が製造される。
図8は水平方向に配設した胴縁材1には、角材の一面(内面)に通気凹部2を所定間隔をおいて設けた木造家屋3を示している。
【0035】
木造家屋3は柱等の骨材4の外表面に防風層5を付設してなる。この防風層5は必要に応じて通気材若しくは断熱材として機能させることができる。
この防風層5の外表面に所定間隔を置いて胴縁材1を付設し、この胴縁材1の外表面に外壁材6を付設する。
【0036】
以上の木造家屋3に用いられる木造家屋用胴縁材1は、骨材4で構成される木造家屋骨組の外表面に付設した防風層5とこの防風層5の外表面に付設される外壁材6との間に複数の胴縁材1を相互に間隔をおいて介存せしめてこの防風層5とこの外壁材6との間に通気空間7を形成せしめる木造家屋用胴縁材1である。
【0037】
胴縁材1の外壁材6に当接する表面及び防風層5に当接する裏面の少なくとも一方の面に通気凹部2を設ける。この通気凹部2は胴縁材1の短手方向すなわち長手方向と直交する方向の両側面に開口8及び開口9を有する。この両側面の開口8,9は一方が他方よりも大なる開口面積を備える。
木造家屋3では、胴縁材1は長手方向を水平方向と一致させて配設し、かつ防風層5に当接する裏面に設けられた通気凹部2の両開口8,9のうち小なる開口9が地面側、大なる開口8が天井側となるように通気凹部2が地面から天井方向に向かって放射状に広がるように配置する。
すなわち木造家屋3は、両側面の開口8,9が天井方向側面の開口8が地面方向側面の開口9よりも大なる通気凹部2を形成した胴縁材1を長手方向を水平方向と一致させて配設してなる。
【0038】
また胴縁材1の厚さは、開口8,9のうち小なる開口9側の厚さt2が、大なる開口8側の厚さt1よりも大となるようにされている。通気凹部2は内部にいくに従い開口面積が小さくなりかつ通気凹部2底部が平面部2aとなるようにされている。さらに通気凹部2の両開口8,9の輪郭は円弧状領域Aと直線状領域Bによって形成されている。
【0039】
なお、以上の胴縁材1を製造する実施例1の胴縁材の製造装置では回転刃11の移動、板材支持台17の立設、押圧機構25の立設、のそれぞれの角度を垂直方向から略15度後方に傾斜させた角度としてあるが、10度から20度の範囲の角度であればその角度は特に限定されることはない。
【0040】
また、押圧機構25の押圧板41に大径のブッシュ43および小径のブッシュ45を配してあるが、両ブッシュ43,45を省略しても、通気凹部Dをその表面積において上方が大きく、下方が小さい凹部、およびその深さにおいて上方が深く、下方が浅い通気凹部を一工程で(一度に)容易に形成できる効果を奏する。
【0041】
また、通気凹部Dの形状を通気抜け側方向からの平面視略円弧状としてあるが、必ずしもこの形状に限定されることはない。
【実施例2】
【0042】
以上の実施例1の胴縁材の製造装置では板材支持台17上の板材P設置面に、個々の板材
Pの上部を奥側に傾斜させるための凸条19を、板材Pと同数配し、押圧機構25の押
圧板41に大径のブッシュ43および小径のブッシュ45を配して、凸条19により個々
の板材Pを板材表面を上向きに傾斜させた。しかし実施例2の胴縁材の製造装置ではこの凸条19及び大径のブッシュ43および小径のブッシュ45を配することなく胴縁材の製造を行う。これにより図10(a)(b)に示す胴縁材32の製造を行うことができる。胴縁材32には、家屋の外壁材33に当接する表面若しくは断熱材31に当接する裏面に、両側面に開口36,37が露出し内部にいくに従い開口面積が小さくなるように設定された通気凹部38が設けられる。この通気凹部38によって、湿気が導かれ、断熱材31,外壁材33の腐食を防止する。

【0043】
以上本発明の実施例1,2について説明したが、本発明はこのような実施例1,2に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る胴縁材の製造方法および装置は、胴縁材の製造することのみならず、他用途に使用する木材または樹脂材への凹部(溝)の切削工程にも適用できる。
【符号の説明】
【0045】
11 回転刃
13 第1切削刃
15 第2切削刃
17 板材支持台
19 凸条
25 押圧機構
43 ブッシュ(大径)
45 ブッシュ(小径)
P 胴縁材
D 通気凹部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10