特許第5959172号(P5959172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959172変性共役ジエン系重合体及びその製造方法、変性共役ジエン系重合体組成物及びその製造方法、並びにタイヤ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959172
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体及びその製造方法、変性共役ジエン系重合体組成物及びその製造方法、並びにタイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20160719BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20160719BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20160719BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20160719BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160719BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   C08C19/25
   C08F8/42
   C08L21/00
   C08L9/00
   C08K3/36
   B60C1/00 A
   B60C1/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-199759(P2011-199759)
(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公開番号】特開2013-60525(P2013-60525A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義博
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−051406(JP,A)
【文献】 特開昭56−026910(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/156788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/25
C08F 8/00− 8/50
B60C 1/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタン系列金属化合物を開始剤に用いて、共役ジエン系単量体を重合させて共役ジエン系重合体を得る工程と、
前記共役ジエン系重合体と、下記式(1)で表されるアミノ基含有化合物とを反応させる工程と、
を有する変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R5とR6は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R7は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。mは1〜3の整数であり、nは1〜3の整数である。)
【請求項2】
ランタン系列金属化合物を開始剤に用いて、共役ジエン系単量体を重合させて共役ジエン系重合体を得る工程と、
前記共役ジエン系重合体と、下記式(1)で表されるアミノ基含有化合物とを反応させて変性共役ジエン系重合体を得る工程と、
前記変性共役ジエン系重合体を10質量部以上含有するゴム成分100質量部と、シリカ系無機充填材0.5〜300質量部と、を配合する工程と、
を有する変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法。
【化2】
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R5とR6は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R7は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。mは1〜3の整数であり、nは1〜3の整数である。)
【請求項3】
ランタン系列金属化合物を開始剤に用いて、共役ジエン系単量体を重合させて共役ジエン系重合体を得る工程と、
前記共役ジエン系重合体と、下記式(1)で表されるアミノ基含有化合物とを反応させて変性共役ジエン系重合体を得る工程と、
前記変性共役ジエン系重合体を10質量部以上含有するゴム成分100質量部と、シリカ系無機充填材0.5〜300質量部と、を配合して変性共役ジエン系重合体組成物を得る工程と、
前記変性共役ジエン系重合体組成物を加硫する工程と、
を有するタイヤの製造方法。
【化3】
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R5とR6は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R7は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。mは1〜3の整数であり、nは1〜3の整数である。)
【請求項4】
下記式(1)で表されるアミノ基含有化合物が結合した変性共役ジエン系重合体であって、
1,4−結合量が80%以上である、変性共役ジエン系重合体。
【化4】
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R5とR6は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R7は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。mは1〜3の整数であり、nは1〜3の整数である。)
【請求項5】
請求項4に記載の変性共役ジエン系重合体を10質量部以上含有するゴム成分100質量部と、
シリカ系無機充填剤0.5〜300質量部と、
を含む変性共役ジエン系重合体組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の変性共役ジエン系重合体組成物を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系重合体の製造方法、及び変性共役ジエン系重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的な要請に関連して、自動車の低燃費化に対する要求はより厳しいものとなりつつある。このような要求に応えるため、タイヤ性能についても転がり抵抗性の更なる低減が求められている。タイヤの転がり抵抗性を低減する手法としては、タイヤ構造を最適化するといった手法があり、ゴム組成物としてより発熱性の少ない材料を用いる手法が最も一般的である。
【0003】
このような発熱性の少ないゴム組成物を得るために、一般的にゴム状重合体にシリカ充填剤を配合することが行われている。しかしながら、通常、ゴム状重合体とシリカとの相互作用は非常に弱いため、シリカが分散し難く、混練り加工に際してトルクが大きくかかり加工しにくいという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するゴム状重合体として、有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、共役ジエン単量体をアニオン重合して得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端を変性した変性共役ジエン系重合体が提案されている。
【0005】
また、シス1,4−ポリブタジエンはゴム組成物の原料ゴムとして一般的に用いられている。例えば、タイヤのトレッドには耐摩耗性、機械的特性、低温での柔軟性改良のために用いられ、また、耐屈曲亀裂性に優れる性能を有するのでサイドウォールにも原料ゴムとして広く使用されている。
【0006】
しかし、タイヤのサイドウォール用ゴムやトレッド用ゴムやカーカス用ゴム等で特に重要なシス1,4−ポリブタジエン構造を有する変性共役ジエン系重合体を含有するゴム組成物を適用した例は少ない。また、シリカを配合したゴム組成物における変性効果は必ずしも十分ではない。特に、シス1,4−ポリブタジエン構造を有する変性共役ジエン系重合体を含有するゴム組成物については、シリカを配合することによる変性効果が殆どないのが実情である。
【0007】
そこで、このような欠点を解決するために、希土類触媒を用いて得られたシス含量の高い共役ジエン系重合体の活性末端を、充填剤と相互作用する官能基を有するアルコキシシラン誘導体と反応させることにより、末端変性された変性共役ジエン系重合体を得る試みや、アルコキシシラン誘導体による変性にあたり、反応系に縮合促進剤を添加する試みがなされている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/046020号パンフレット
【特許文献2】特開2005−008870号公報
【特許文献3】特開2010−121086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3をはじめとする従来の技術では、変性共役ジエン系重合体の変性率を十分に高くすることはできず改善の余地がある。特に、共役ジエン系重合体の重合反応において開始剤としてランタン系列金属化合物を用いた場合、高い変性率とすることは特に困難な傾向にある。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造のアミノ基含有
化合物を変性剤として用いることで、1,4−構造の割合が高い共役ジエン系重合体に官能基を効率的に導入でき、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ランタン系列金属化合物を開始剤に用いて、共役ジエン系単量体を重合させて共役ジエン系重合体を得る工程と、
前記共役ジエン系重合体と、シリル基に結合したアルコキシ基と、エステル基とをそれぞれ少なくとも1個有するアミノ基含有化合物とを反応させる工程と、
を有する変性共役ジエン系重合体の製造方法。
〔2〕
前記アミノ基含有化合物が、下記式(1)で表される化合物である〔1〕記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R5とR6は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R7は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。mは1〜3の整数であり、nは1〜3の整数である。)
〔3〕
〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法によって得られる変性共役ジエン系重合体。
〔4〕
〔3〕に記載の変性共役ジエン系重合体を10質量部以上含有するゴム成分100質量部と、
シリカ系無機充填剤0.5〜300質量部と、
を含む変性共役ジエン系重合体組成物。
〔5〕
〔4〕に記載の変性共役ジエン系重合体組成物を含むタイヤ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得ることができる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、ランタン系列金属化合物を開始剤に用いて、共役ジエン系単量体を重合させて共役ジエン系重合体を得る工程(重合工程)と、前記共役ジエン系重合体と、シリル基に結合したアルコキシ基と、エステル基とをそれぞれ少なくとも1個有するアミノ基含有化合物とを反応させる工程(変性工程)と、を有する。ランタン系列金属化合物を開始剤として用い、エステル基とシリル基に結合したアルコキシ基が少なくとも1個以上ある化合物を変性剤として用いることにより、1,4−構造の割合が高い共役ジエン系重合体の末端に官能基の導入を行うことが可能となり、変性率の高い変性共役ジエン系重合体を簡便に製造することができる。
【0016】
(開始剤)
本実施形態において、共役ジエン系単量体を重合させる開始剤として、ランタン系列金属化合物を用いる。ランタン系列金属化合物を開始剤として用いることにより、1,4−構造の割合が高い共役ジエン系重合体を得ることができる。使用するランタン系列金属化合物は、共役ジエン系単量体の重合反応を開始させることができるものであればよく、特に限定されないが、(a)ランタン系列元素の有機化合物、(b)有機アルミニウム化合物、及び(c)ハロゲン含有ルイス酸化合物からなる複合触媒であることが好ましい。この複合触媒存在下に、共役ジエン系単量体を塊状重合又は炭化水素溶媒中で溶液重合することにより、共役ジエン系重合体を得ることができる(重合工程)。
【0017】
(a)ランタン系列元素の有機化合物としては、例えば、式LnY3(式中、Lnは、ランタン系列元素を表し、Yは酸の残基を表す。)で表される化合物が挙げられる。
ここでLnはランタン系列元素を表し、具体的には、原子番号が57〜71の周期律表のランタン系列元素として、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロジウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムが挙げられる。これらの中でも、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム及びガドリニウムが重合活性の観点から好ましく、ネオジムが、重合活性及び工業的入手のし易さのバランスの観点からより好ましい。
また、Yは酸の残基を表し、アルコール、フェノール、チオアルコール、チオフェノール、アミン、カルボン酸、有機リン酸、有機亜リン酸のいずれかの塩であることが有機溶剤への溶解性の観点から好ましい。これらのランタン系列元素の有機化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0018】
(a)ランタン系列元素のアルコール化合物(アルコキサイド)及びフェノール化合物(フェノキサイド)としては、例えば、式Ln−(ORa3で表される化合物が挙げられる。ここで、Raは、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。アルコキサイド及びフェノキサイドに用いられる好ましいアルコール及びフェノールの具体例としては、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ノニルフェノール、ベンジンアルコール等が挙げられる。
【0019】
(a)ランタン系列元素のチオアルコール化合物(チオアルコキサイド)及びチオフェノール化合物(チオフェノキサイド)としては、例えば、式Ln(SRb3で表される化合物が挙げられる。ここで、Rbは、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換もしくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。
【0020】
(a)ランタン系列元素のアミン化合物としては、例えば、式Ln(NRc23で表される化合物が挙げられる。ここで、Rcは、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。
【0021】
(a)ランタン系列元素のカルボン酸化合物としては、例えば、式Ln(OCORd3で表される化合物が挙げられる。ここで、Rdは、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。カルボキシル基は、炭化水素に対して、第1級、第2級及び第3級のいずれの結合であってもよい。好ましいカルボン酸の具体例としてはオクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸(2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクタン酸)、安息香酸、ナフテン酸、炭素数10を中心とするバーサチック酸(市販品としては、例えば、シェル化学社製、商品名「バーサチック酸10」)が挙げられる。溶解性の観点からα位に分岐のあるカルボン酸が好ましく、具体例としては、2−エチル−ヘキサン酸、イソステアリン酸、2−イソプロピル−5−メチルヘキサン酸、バーサチック酸が挙げられる。
【0022】
(a)ランタン系列元素の有機リン酸化合物としては、例えば、式Ln(OPORef3で表される化合物が挙げられる。ここで、Re、Rfは、各々独立して炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。重合活性の観点から、好ましい有機リン酸化合物の具体例として、トリス(リン酸ジ−2−エチルヘキシル)、トリス(リン酸ジノニルフェニル)が挙げられる。
【0023】
(a)ランタン系列元素の有機亜リン酸化合物としては、例えば、式Ln(OPRgh3で表される化合物が挙げられる。ここで、Rg、Rhは、各々独立して炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキルもしくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。重合活性の観点から、好ましい有機亜リン酸化合物の具体例として、トリス(亜リン酸ジ−2−エチルヘキシル)、トリス(亜リン酸ジノニルフェニル)が挙げられる。
【0024】
上記した(a)ランタン系列元素の有機化合物の中では、有機溶剤への溶解性の観点から、カルボン酸化合物及び有機リン酸化合物が好ましく、カルボン酸化合物がより好ましい。また、ランタン系列元素の有機化合物としては、上記した化合物2種以上の複合塩であってもよく、例えば、上記したカルボン酸化合物と有機リン酸化合物との複合塩であってもよい。
【0025】
(b)有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、重合活性の観点から好ましくは式AlRi(3-m)mで表される化合物である。ここで、Riは、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜8の、脂肪族炭化水素基若しくは脂環族炭化水素基;又は炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12の、アルキル置換若しくはアルケニル置換芳香族炭化水素基を表す。mは0、1又は2であり、好ましくは0又は1であり、Hは水素原子を表す。また、有機アルミニウム化合物は、アルモキサン化合物(炭素とアルミニウムの直接結合を有し、酸素とアルミニウムの直接結合も持つ化合物)であってもよい。
【0026】
好ましい有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムジハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、オクチルアルモキサン等が挙げられ、より好ましい具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t−ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、オクチルアルモキサンが挙げられる。これらは1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0027】
(c)ハロゲン元素含有ルイス酸化合物としては、周期律表のIIIb族、IVb族又はVb族に属する元素のハロゲン化合物が挙げられ、重合活性の観点から、好ましくはアルミニウムのハロゲン化物及び有機金属ハロゲン化物が挙げられる。
【0028】
アルミニウムのハロゲン化物のハロゲン元素としては、重合活性の観点から塩素又は臭素が好ましい。アルミニウムのハロゲン化物の具体例としては、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、アルミニウムトリブロマイドが挙げられる。
【0029】
有機金属ハロゲン化物の具体例としては、ジブチル錫ジクロライド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン及び四塩化錫が挙げられる。
【0030】
これらの中でも、入手の容易さの観点から、アルミニウムのハロゲン化物が好ましく、その中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド及びエチルアルミニウムジブロマイドがより好ましい。
【0031】
本実施形態の製造方法において使用される複合触媒の各成分量や組成比は、特に限定されず、その目的によって適宜選択することができる。共役ジエン系単量体1モルに対する成分(a)の使用量は、通常、0.005〜2.5ミリモルであり、好ましくは0.025〜0.5ミリモルの範囲である。共役ジエン系単量体1モルに対する成分(b)の使用量は、通常、0.05〜25ミリモルであり、好ましくは0.25〜5ミリモルの範囲である。共役ジエン系単量体1モルに対する成分(c)の使用量は、その分子中に含まれるハロゲン原子数で異なるものとなり、ランタン系列元素(Ln)1モルに対するハロゲン原子数で表し、通常、ハロゲン原子/Ln=1〜6、好ましくは2〜4の範囲である。
【0032】
(単量体)
本実施形態の製造方法によって用いることのできる共役ジエン系単量体としては、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン(ピペリレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の炭素数4〜8の範囲の共役ジエン化合物あるいはその混合物が挙げられる。これらの中でも、重合活性及び得られるポリマー有用性の観点から、ブタジエンが好ましい。
【0033】
本実施形態では、上記した共役ジエン系単量体と、それ以外の他の単量体とを共重合させた共役ジエン系共重合体とすることもできる。共役ジエン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン等のビニル芳香族単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体等が挙げられる。共役ジエン系単量体と他の単量体との配合量比は、特に限定されないが、得られるポリマーの有用性の観点から、共役ジエン系単量体が50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。
【0034】
(単量体中の不純物)
共役ジエン系単量体には、一般にアセチレン類、アレン類、アルデヒド類等の不純物が含まれる場合がある。アセチレン類としては、1−ブチン、ビニルアセチレン等であり、アレン類としては、プロパジエン、1,2−ブタジエン等である。したがって、共役ジエン化合物の重合反応を行う前に、共役ジエン系単量体を精製する工程(精製工程)を行うことが好ましい。精製工程において、単量体中に不純物として含まれるアセチレン類及びアレン類の総量を、50ppm以下とすることが好ましく、20ppm以下とすることがより好ましい。精製方法は特に限定されず、例えば、水素化、蒸留等の方法を採用することができる。かかる精製工程によって重合体末端の活性率が一層高くなるとともに、変性反応の収率も一層高くなる。
【0035】
(溶媒)
本実施形態の製造方法は、通常、塊状重合もしくは溶液重合法によって実施される。溶液重合法を用いる場合に使用できる重合溶媒としては、一般には、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン(イソヘキサン)、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ベンゼン、トルエン等の沸点が200℃以下の直鎖状又は分岐状である、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素が好ましい。重合溶媒は、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。さらには、メチレンクロライドやクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素や、ケトン化合物や、エーテル化合物や、トリアルキルアミン化合物等の非プロトン性の極性有機溶媒を含む混合溶媒を用いることも可能であり、使用する触媒等に応じて溶媒を適宜選択することにより、複合触媒の重合溶媒への溶解性や重合活性を一層向上させることができる。
【0036】
(重合条件、温度)
本実施形態の製造方法における重合温度は、特に限定されず、通常、−30〜150℃であり、好ましくは10〜120℃であり、より好ましくは30〜100℃である。重合温度が高くなると、重合速度や重合率が高くなり、得られる重合体のミクロ構造はビニル結合量が増える傾向にある。一方、重合温度が低くなると、重合体末端の活性率が高くなり、後述する変性反応での変性率が高くなる傾向にある。
【0037】
重合反応形式は、特に限定されず、回分法或いは連続法のいずれにおいても利用できる。また、重合に先立って、共役ジエン系単量体の共存下あるいは非共存下に、触媒成分の一部の組合せ、あるいは全てを予備反応あるいは熟成反応させることも本実施形態の製造方法においては可能である。熟成条件としては、不活性溶媒中、重合すべき共役ジエン系単量体の共存下又は非共存下に(a)ランタン系列元素の有機化合物、(b)有機アルミニウム化合物、及び(c)ハロゲン含有ルイス酸化合物の各成分を混合する。熟成温度は−50〜80℃、好ましくは−10〜50℃であり、熟成時間は0.01〜24時間、好ましくは0.05〜5時間、特に好ましくは0.1〜1時間である。
【0038】
(ミクロ構造)
本実施形態の重合工程により得られる共役ジエン系重合体は、1,4−結合が主体であり、ビニル結合(すなわち1,2−結合及び3,4−結合)は少ない共役ジエン系重合体とすることができる。例えば、ここでいう1,4−結合が主体とは、重合体中の1,4−結合量が80%以上であることをいい、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。すなわち、得られる共役ジエン系重合体のミクロ構造は、好ましくは、1,4−結合量は90%以上、ビニル結合量は10%以下である。ミクロ構造は開始剤の組成、重合温度等の条件で変化する。特に、ネオジムを含む開始剤を用いる場合、1,4−結合の内、シス結合の割合が多くなる傾向があるので、ネオジムを含む開始剤を用いる場合、得られる共役ジエン系重合体の1,4−結合量は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、更に好ましくは98%以上である。本実施形態において、ここでいうミクロ構造は赤外分光光度計を用いて測定される。
【0039】
(変性剤)
本実施形態の製造方法において、上記した重合反応が所定の重合率を達成した後、得られた共役ジエン系重合体と、シリル基に結合したアルコキシ基と、エステル基とがそれぞれ少なくとも1個有するアミノ基含有化合物と反応させる(変性工程)。この工程により、変性共役ジエン系重合体を効率よく得ることができる。具体的には、1−[2−(メトキシカルボニル)エチル]−4−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1−[2−(エトキシカルボニル)エチル]−4−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1−[2−(メトキシカルボニル)エチル]−3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1−[2−(エトキシカルボニル)エチル]−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン等が挙げられる。
【0040】
共役ジエン系重合体とアミノ基含有化合物との反応は、上記所定の重合率を達成した後、共役ジエン系重合体とアミノ基含有化合物とを混合し、反応させる。この所定の重合率は、所望する変性共役ジエン系重合体の物性に応じて適宜設定することができるが、好ましくは90%以上の重合率、より好ましくは95%以上の重合率に達した後に、アミノ基含有化合物と反応させることがよい。かかる条件で反応させることにより、分子量分布が狭い均一な重合体が得られる傾向にある。また、必要に応じ、重合率30〜90%の間でアミノ基含有化合物を分割して又は連続して添加して反応させることもできる。その場合は分子量分布が広く、変性率は高い重合体が得られる傾向にある。
【0041】
好ましい変性剤としては、式(1)で表される化合物が挙げられる。式(1)で表される化合物を変性剤として用いることで、共役ジエン系重合体の活性末端と効率よく反応することができる。その結果、共役ジエン系重合体の末端に効率よく官能基の導入を行うことができ、変性率を増加させることができる。
【化2】
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R5とR6は、炭素数1〜20のアルキレン基を表す。R7は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。mは1〜3の整数であり、nは1〜3の整数である。)
【0042】
従来では、ランタン系列金属化合物を開始剤に用いて得られる共役ジエン系重合体は、リビング重合体(リビングポリマー)であるが、その活性末端の失活によりリビング率が十分でないことに加え、活性末端の周囲の配位化合物の影響により、変性工程で導入すべき官能基に対する反応性が十分でない。そのため、変性剤の官能基の種類が、変性反応の変性率に影響するという問題があった。しかし意外にも、変性工程において特定構造のアミノ基含有化合物を変性剤として用いることにより、高変性率の変性共役ジエン系重合体を簡便に得ることができることを本発明者らは見出した。
【0043】
本実施形態において変性剤として用いるアミノ基含有化合物は、シリル基に結合したアルコキシ基と、エステル基とをそれぞれ少なくとも1個有する構造であり、共役ジエン系重合体の重合活性末端と非常に反応性が高いエステル基を有している。このため、従来から用いられている変性剤と比べて、本実施形態のアミノ基含有化合物と共役ジエン系重合体の活性末端とがより結合しやすいため、シリカ系無機充填剤と親和性の高いシリル基に結合したアルコキシ基を高変性率で導入した変性共役ジエン系重合体を得ることができる。したがって、本実施形態の変性共役ジエン系重合体とシリカ系無機充填剤の組成物をタイヤ用の原料ゴム等として用いた場合、フィラーの分散性、省燃費性及び耐磨耗性に優れたものになる。その中でも特に、式(1)で表される変性剤が好ましい。
【0044】
式(1)で表される化合物としては、例えば、N−(2−メトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノメチルトリメトキシシラン、N−(2−メトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−メトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−エトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノメチルトリエトキシシラン、N−(2−エトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノエチルトリエキシシラン、N−(2−エトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−エトキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、N−(2−エトキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシランで変性された変性共役ジエン系重合体は、スチームストリッピング等による脱溶媒で重合体を回収することでN−トリメチルシリル基が加水分解して2級アミノ基が生成するので、シリカ系無機充填剤やカーボンとの相互作用が更に強くなるので好ましい。
【0045】
アミノ基含有化合物の使用量は、特に限定されないが、共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対して、0.5〜1モルであることが、得られる変性共役ジエン系重合体の分子量増加から、好ましい。もちろん、所望の変性割合に応じて、変性剤の添加量を適宜に調整することができる。
【0046】
アミノ基含有化合物は、単独で添加してもよいし、不活性炭化水素等に溶解させた溶液として添加してもよい。またアミノ基含有化合物は一度に添加してもよいし、分割してあるいは連続的に添加してもよい。変性反応は、通常、重合温度に近い温度で、数分間〜数時間行う。好ましくは5分間〜2時間の反応時間である。
【0047】
本実施形態の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体は、高い変性率を有する。ここでいう変性率は、シリカ系ゲルを充填剤としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)カラムに変性重合体が吸着する特性を利用して、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたGPCとの比較で測定される。本実施形態の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体の変性率は、特に限定されず、所望する物性に応じて適宜調整することができるが、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上とすることができる。
【0048】
(油展)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、脱溶媒工程前に、必要に応じてプロセスオイルを加え、油展重合体としてもよい。プロセスオイルとしては、特に限定されないが、相容性の観点から、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油、IP346法による多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油等が好ましい。これらの中でも、多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油を用いることが、環境安全上の観点とオイルブリード防止、さらにウェットグリップ特性の観点から好ましい。アロマ代替油としては、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTreated Distilled Aromatic Extract(TDAE)、Mildly or Medium Extracted Solvate(MES)等の他、Residual Aromatic Extract(RAE)、Safety or Special Residual Aromatic Extract(SRAE)等が挙げられる。これらの伸展油の使用量は、特に限定されず、通常は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、10〜60質量部であり、製品のオイルブリード防止や加工性の観点から、20〜37.5質量部であることが好ましい。
【0049】
(仕上げ)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、必要により重合停止剤、安定剤を反応系に加え、共役ジエン系重合体の製造で用いられる公知の脱溶媒、乾燥操作、例えば、スチームストリッピングによる脱溶媒、スクリュー押出機式絞り脱水機等の圧縮水絞機、エキスパンダー脱水機、熱風乾燥機等の方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等により重合体を回収できる。重合停止剤は、水もしくはプロトン性の極性有機化合物等から選ぶことができる。後者の例としては、各種のアルコール、フェノール、カルボン酸化合物を挙げることができる。また安定剤は公知の共役ジエン系重合体の安定剤,酸化防止剤から選ぶことができる。これらの特に好ましい例としては2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール、N,N’−ジアルキルジフェニルアミン、N−アルキルジフェニルアミン等が挙げられる。得られる重合体は通常、ベールに成形される。
【0050】
(配合)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、一般に、ゴム工業で通常用いられる方法で加工されゴム製品として使用される。この場合、本実施形態で得られる変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と、充填剤とを含む変性共役ジエン系重合体組成物とすることが好ましい。上記ゴム成分100質量部中の変性共役ジエン系重合体の含有量は、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上が更に好ましい。充填剤だけでなく、必要に応じて他のゴム材料とブレンドし、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤、加硫剤、加硫助剤、その他の添加剤を加えて加工することができる。配合に際しては、バンバリーミキサー、ロールミル等の種々の機械的混合機が用いられ、本実施形態の変性共役ジエン系重合体は配合時のトルクが小さく、しかも混練り時間が短くても充填剤の分散がよいという利点を有する。さらに、配合生地のタックも優れており、ゴム製品の加工に好適である。
【0051】
(他のゴム材料)
ブレンド可能な他のゴム材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴムや合成ゴムが挙げられる。合成ゴムとしては、例えば、ローシスポリブタジエン、ビニル・シス・ブタジエンゴム(VCR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。
【0052】
ブレンド可能な他のゴム材料の添加量は、特に限定されないが、得られるエラストマーの要求性能に応じ、変性共役ジエン系重合体100質量部に対して、0〜900質量部であることが好ましく、10〜400質量部であることがより好ましく、50〜300質量部であることが更に好ましい。
【0053】
(シリカ系無機充填剤)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物に用いられるシリカ系無機充填剤としては、SiO2、又はSi3Alを、構成単位の主成分とする固体粒子が使用できる。例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も使用できる。これらの中でも、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。
【0054】
シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が使用できるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウェットスキッド抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
【0055】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物において、実用上良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、170〜300m2/gであることが好ましく、200〜300m2/gであることがより好ましい。
【0056】
また、シリカ系無機充填剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対し、0.5〜300質量部が好ましく、5〜200質量部がより好ましく、20〜100質量部が更に好ましい。シリカ系無機充填剤の配合量を0.5質量部以上とすることにより添加効果が発現でき、300質量部以下とすることにより分散性の劣化が生じず、組成物において良好な加工性、高い機械強度が得られる。
【0057】
(その他の成分)
<カーボンブラック>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、上述したシリカ系無機充填剤以外の補強性充填剤として、カーボンブラックを添加してもよい。カーボンブラックは、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用でき、窒素吸着比表面積が50m2/g以上、DBP(ジブチルフタレート)吸油量が80mL/100gのカーボンブラックが好ましい。
【0058】
カーボンブラックの配合量は、変性共役ジエン系重合体を10質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、0.5〜100質量部が好ましく、3〜100質量部がより好ましく、5〜50質量部が更に好ましい。ドライグリップ性能や導電性等のタイヤ等の用途に求められる性能を発現するためには0.5質量部以上添加することが好ましく、分散性の観点から100質量部以下とすることが好ましい。
【0059】
<金属酸化物、金属水酸化物>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、上述したシリカ系無機充填剤やカーボンブラック以外に金属酸化物や金属水酸化物を、さらに添加してもよい。
【0060】
金属酸化物とは、化学式Mxy(Mは金属原子、x、yは各々1〜6の整数)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。また金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物も使用できる。
【0061】
金属水酸化物とは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0062】
これらの補強剤は、要求性能に合わせて任意に選択できる。また、必要に応じ2種以上を混合して用いることができる。
【0063】
金属酸化物及び/又は金属水酸化物の配合量は、加工性と得られる組成物の性能の観点から、変性共役ジエン系重合体を10質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、0.5〜100質量部が好ましく、3〜100質量部がより好ましく、5〜50質量部が更に好ましい。
【0064】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤は、上述したゴム成分とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性を有する化合物である。シランカップリング剤としては、一般的に、硫黄結合部分と、アルコキシシリル基部分を一分子中に有する化合物が用いられる。
【0065】
使用できるシランカップリング剤は、特に限定されず、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
【0066】
シランカップリング剤の添加量は、特に限定されないが、効果と経済性の観点から、シリカ系無機充填剤100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
【0067】
(ゴム用軟化剤)
ゴム用軟化剤としては、鉱物油又は液状若しくは低分子量の合成あるいは植物性の軟化剤が好適に用いられる。ゴム用軟化剤の種類は特に限定されないが、相容性と環境安全上の観点から、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油、IP346法による多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油等であることが好ましい。
【0068】
ゴム用軟化剤の添加量は、特に限定されないが、効果と経済性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、5〜150質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましい。
【0069】
(加硫剤他)
加硫剤としては、ラジカル開始剤、硫黄、硫黄化合物等が用いられる。ラジカル開始剤としては、ペルオキシケタール類、ジアルキルペルオキシド類等の過酸化物等が挙げられる。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等が挙げられる。硫黄化合物としては、一塩化硫黄、二塩化硫黄、有機ポリサルファイド等が挙げられる。
【0070】
さらに必要に応じて、加硫助剤や加硫促進剤も併用することができる。加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等が用いられる。加硫促進剤としては、公知の各種の加硫促進剤が用いられ、グアニジン系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤等が用いられる。
【0071】
その他の添加剤として、老化防止剤、ワックス、導電剤、着色剤等が用いられる。老化防止剤としては、例えば、p−フェニレンジアミン系、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、キノリン系、フェノール系等が挙げられる。ワックスとしては、例えば、パラフィン系の石油系ワックス等が挙げられる。導電剤としては、例えば、金属粉末、黒鉛、炭素繊維等が挙げられる。着色剤としては、例えば、顔料、染料等が挙げられる。
【0072】
(加硫ゴム製品の製造)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、必要に応じて、上記した成分等を配合して組成物とし、加硫して種々のゴム製品の製造に供される。特に、タイヤ用の原料ゴムとして最適に使われ、好ましくは本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含むタイヤとすることができる。例えば、サイドウォールに用いた場合では、耐屈曲亀裂性、低発熱性に優れ、トレッドに用いた場合では、省燃費性と耐摩耗性、低温での柔軟性に優れ、カーカスに用いた場合では低発熱性、耐屈曲亀裂性に優れるため、いずれにおいても好ましく用いられる。それ以外の用途として、各種工業用品、靴底等の材料としても好適に用いられる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、分析方法は次に示す方法によって行った。
(1)1,4−シス含有量
赤外分光光度計を用いて測定し、モレロ法にてデータ処理して求めた。
(2)ムーニー粘度
JIS K6300−1に従い、L型ローターを用い、予熱を1分間行い、その4分後の粘度を測定した。なお、測定温度は、100℃で行った。
【0074】
(3)数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラム3本連結して用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用してクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により得られる保持容量と分子量の関係から、常法に従い、各分子量範囲の全ピーク面積に対する頻度を算出し、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布を計算した。
溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用した。
カラムは、ガードカラム;東ソー社製、「TSK guard column HHR−H」、カラム;東ソー社製「TSK−Super H 7000」、「TSK−Super H 6000」、「TSK−Super H 5000」、オーブン温度:40℃、THF流量0.6mL/分、東ソー製:HLC−8020、検出器;RIを使用した。
測定用試料は、10mgを20mLのTHFに溶解したものを用い、20μL注入して測定した。
【0075】
(4)変性率
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した成分が吸着する特性を応用し、試料及び低分子量内部標準ポリスチレン分子量5000(ポリスチレンは吸着しない)を含む試料溶液を用い、上記(3)で用いたポリスチレン系ゲル(東ソー社製:TSK)のGPC(東ソー社製:HLC−8020)と、シリカ系カラム(ガードカラム;「DIOL」 4.6×12.5mm 5micron、カラム;「Zorbax PSM−1000S」、「PSM−300S」、「PSM−60S」、オーブン温度:40℃、THF流量0.5mL/分)のGPC(東ソー社製:「CCP8020」シリーズ ビルドアップ型GPCシステム;「AS−8020」、「SD−8022」、「CCPS」、「CO−8020」、「RI−8021」)の両クロマトグラムを測定し、内部標準ポリスチレンピークを基準として、それらの差分より、シリカカラムへの吸着量を測定し、カップリング反応率を求めた。
測定用試料としては、共通して、測定対象10mgを、標準ポリスチレン5mgとともに20mLのTHFに溶解したものを用い、200μL注入して測定を行った。
具体的には、ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピークの面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2とし、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、それぞれ求め、変性率は、下記式により算出した。
変性率(%)=〔1−(P2×P3)/(P1×P4)〕×100
【0076】
〔実施例1〕
十分に乾燥した300mL耐圧ミニボンベの内部を乾燥窒素で十分に置換した。そこに、1,3−ブタジエン20gを含む20質量%のシクロヘキサン溶液130mL、及び、予めイソステアリン酸(和光純薬工業社製、2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクタン酸)のナトリウム塩と塩化ネオジムを反応させて得られたイソステアリン酸ネオジム2.7mmolを含む30質量%のシクロヘキサン溶液11.7mLを挿入して、室温で5分間振とうした。続いて、ジイソブチルアルミニウムハイドライド22.5mmolを含む1モル濃度のヘキサン溶液22.5mLを更に加えて振とうした後、5分間静置した。エチルアルミニウムセスキクロライドの1モル濃度のヘキサン溶液8.1mLを、Cl/Nd(モル比)=3となるように加えて振とうした後、20分間静置することで開始剤溶液を調製した。
次に、十分に乾燥した内容積11Lの攪拌機付き耐圧オートクレーブの内部を乾燥窒素で十分置換した。そこに、900gの1,3−ブタジエンを含む6kgのシクロヘキサン混液をオートクレーブ内に仕込み、あらかじめ調製した開始剤溶液を170mL加えて,50℃で2時間重合を行った。重合反応後、変性剤としてN−(2−エトキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシランを3.8ミリモル添加し、50℃で1時間反応させた。その後、2,6−ビス(tert−ブチル)−4−メチルフェノール5gを含むメタノール/シロクヘキサン混合溶液(30/70)100mLを加えて反応を停止させた。ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、重合体Aを得た。得られた重合体Aの分析結果を表1に示す。
【0077】
〔実施例2〕
変性剤であるN−(2−エトキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を2.8mmolに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で重合体Bを得た。得られた重合体Bの分析結果を表1に示す。
【0078】
〔比較例1〕
イソステアリン酸ネオジム2.2mmol、ジイソブチルアルミニウムハイドライド18mmolとし、変性剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−403」)11mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で重合体Cを得た。得られた重合体Cの測定結果を表1に示す。エステル基のない変性剤では、重合体の末端が全く変性されず、変性率は0であった。
【0079】
〔比較例2〕
十分に乾燥した300mL耐圧ミニボンベの内部を乾燥窒素で十分に置換した。そこに、1,3−ブタジエン20gを含む20質量%のシクロヘキサン溶液130mL、及び、予めイソステアリン酸(和光純薬工業社製、2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクタン酸)のナトリウム塩と塩化ネオジムを反応させて得られたイソステアリン酸ネオジム2.1mmolを含む30質量%のシクロヘキサン溶液9.1mLを挿入して、室温で5分間振とうした。続いて、ジイソブチルアルミニウムハイドライド22.5mmolを含む1モル濃度のヘキサン溶液22.5mLを更に加えて振とうした後、5分間静置した。エチルアルミニウムセスキクロライドの1モル濃度のヘキサン溶液6.3mLを、Cl/Nd(モル比)=3となるように加えて振とうした後、20分間静置することで開始剤溶液を調製した。
次に、十分に乾燥した内容積11Lの攪拌機付き耐圧オートクレーブの内部を乾燥窒素で十分置換した。そこに、900gの1,3−ブタジエンを含む6kgのシクロヘキサン混液をオートクレーブ内に仕込み、あらかじめ調製した開始剤溶液167mLを加えて,50℃で2時間重合を行った。重合反応後、2,6−ビス(tert−ブチル)−4−メチルフェノール5gを含むメタノール/シロクヘキサン混合溶液(30/70)100mLを加えて反応を停止させた。ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、重合体Dを得た。得られた重合体Dの分析結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
〔配合評価〕
下記の表2に示す割合で原材料を配合し、槽温度130℃に設定して、モリヤマ社製、加圧型ニーダー「D0.3−3型」を用いて、第一段混練りとして、原料ゴム(共役ジエン系重合体、スチレン・ブタジエン(SBR;旭化成ケミカルズ社製、「アサプレンE15」天然ゴム(素練りによりムーニー粘度60に調整したもの))、SRAEオイル、シリカ(エボニックデグサ社製、「ウルトラジルVN3」)、シランカップリング剤(エボニックデグサ社製、「Si75」)の順に投入して4分間混練りした。その後、約160℃でダンプアウトし、ロール通しして冷却した。
【0082】
続いてその、第二段混練りとして、硫黄と加硫促進剤を除く残りの原材料を投入して3分間混練りした。約160℃でダンプアウトし、ロール通しして、冷却した。
【0083】
冷却後、ロールを用いて、70℃で硫黄(細井化学社製)及び加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーCZ−G」及び「ノクセラーDP」)を加え、170℃、12分間の条件で加硫を行い、加硫ゴムを得た。各実施例及び比較例における配合例(S−1〜S−5)を表2に示し、各実施例及び各比較例において得られた加硫ゴムの性能の評価結果を表3及び表4に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
なお、評価方法は、次に示す方法によって行った。
(1)配合物ムーニー粘度
上述した加硫前のゴム配合物のムーニー粘度を、ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1に従い、L型ローターを用い、100℃で、予熱を1分間行った後に、毎分2回転で回転させ、4分後の粘度を測定した。ムーニー粘度が小さい値であると、混練時に消費エネルギーが小さく加工性が良好であると判断した。
【0086】
(2)バウンドラバー量
第2段混練工程の終了後の配合物:約0.2グラムを約1mm角状に裁断し、ハリスかご(100メッシュ金網製)へ入れ、重量を測定した。その後、トルエン中に24時間浸せき後、乾燥処理を施し、重量を測定した。非溶解成分の量から充填剤に結合したゴム(変性共役ジエン系重合体、SBR、天然ゴム)の量を計算し、最初の配合物中のゴム量に対する充填剤と結合したゴムの割合を求めた。数値が大きいほどバウンドラバー量が多いことを示す。
【0087】
(3)引張強さ
加硫試験片を、JIS K6251の引張試験法により測定した。数値が大きいほど耐破壊性に優れることを示す。
【0088】
(4)粘弾性
TAインスツルメント社製、「ARES粘弾性試験機」を使用し、ねじり方式によって、低温(0℃)の場合と高温(50℃)の場合のそれぞれにおいて歪を変化させて、測定周波数10Hzでのtanδを測定した。低温(0℃)の場合、歪1%でtanδを測定し、高温(50℃)の場合、歪0.1%、3%、10%でtanδを測定した。
低温(0℃)、歪1%で測定したtanδ(損失正接)の高いものほど、ウェットスキッド抵抗性(すなわちグリップ性能)が優れているものと判断した。そして、高温(50℃)、歪3%で測定したtanδ(損失正接)の低いものほどヒステリシスロスが少なく、タイヤの低転がり抵抗性(すなわち省燃費性)に優れているものと判断した。
高温(50℃)での歪が小さい場合(0.1%)のG’と歪が大きい場合(10%)のG’の差ΔG’をもって、フィラーの分散性を評価した。ΔG’が小さいほどフィラーの分散性が良いと判断した。
【0089】
(5)耐磨耗性
耐摩耗性は、安田精機製作所製、「アクロンゴム摩耗試験機」を使用し、JIS K6264−2に従い、試験方法A、荷重44.1N、3000回転の摩耗量を測定した。表3では比較例4、表4では比較例5を100とする指数で評価した。指数が高いほど摩耗量が少なく、耐摩耗性が良好であると判断した。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
表3及び表4に示されるように、各実施例は、省燃費性、フィラーの分散性、及び耐磨耗性に優れていることが確認された。一方、各比較例は、省燃費性、フィラーの分散性、及び耐摩耗性の少なくともいずれかが劣っていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体は、タイヤ用の原料ゴム等として用いることができ、これを含むゴム組成物は、タイヤトレッド、サイドウォール他タイヤの部材として用いることができ、またホース、ベルト、靴底、窓用をはじめとする各種シール、振動減衰用ゴム及び他の工業製品の原料等として用いることも可能である。