特許第5959204号(P5959204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959204実装状態判別装置および実装状態判別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959204
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】実装状態判別装置および実装状態判別方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20160719BHJP
   G01R 31/02 20060101ALI20160719BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G01R31/28 X
   G01R31/02
   G01R27/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-4068(P2012-4068)
(22)【出願日】2012年1月12日
(65)【公開番号】特開2013-142665(P2013-142665A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】村山 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】塩入 章弘
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−142202(JP,A)
【文献】 特開平11−142451(JP,A)
【文献】 特開2007−221443(JP,A)
【文献】 特開2003−203958(JP,A)
【文献】 特開2006−23138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 31/02
G01R 27/02
G01R 31/28
H03H 11/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサが並列接続される判別対象の回路に対する交流信号の供給に伴って検出される検出信号に基づいて当該判別対象の回路についての電気的パラメータを当該交流信号の周波数毎に測定する測定部と、当該測定された電気的パラメータの周波数特性に基づいて前記各コンデンサが実装状態であるか非実装状態であるかを判別する判別処理を実行する処理部とを備えた実装状態判別装置であって、
抵抗、コンデンサおよびオペアンプを備えると共に当該抵抗および当該コンデンサの少なくとも一方が可変型に形成された疑似インダクタ回路と、前記判別対象の回路と前記測定部との間への前記疑似インダクタ回路の接続および非接続を切り替えるスイッチとを備え、
前記スイッチに対する操作による前記疑似インダクタ回路の接続および非接続の切り替えによって前記判別対象の回路における前記各コンデンサを含んでそれぞれ構成される各共振回路の各共振周波数を変更可能に構成されると共に、前記疑似インダクタ回路を接続した状態における前記少なくとも一方に対する操作によっても前記各共振周波数を変更可能に構成されている実装状態判別装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記判別処理において、前記周波数の上昇に伴って前記電気的パラメータが上昇に転じる転換点の有無を特定し、当該特定した転換点の数と前記回路に実装されるべき前記コンデンサの数とが同数のときに前記各コンデンサが実装状態であると判別する請求項1記載の実装状態判別装置。
【請求項3】
複数のコンデンサが並列接続される判別対象の回路に対する交流信号の供給に伴って検出される検出信号に基づいて当該判別対象の回路についての電気的パラメータを当該交流信号の周波数毎に測定し、当該測定した電気的パラメータの周波数特性に基づいて前記各コンデンサが実装状態であるか非実装状態であるかを判別する判別処理を実行する実装状態判別方法であって、
前記電気的パラメータを測定する際に、抵抗、コンデンサおよびオペアンプを備えると共に当該抵抗および当該コンデンサの少なくとも一方が可変型に形成された疑似インダクタ回路と、前記判別対象の回路と前記測定部との間への前記疑似インダクタ回路の接続および非接続を切り替えるスイッチとを用いて、前記スイッチに対する操作による前記疑似インダクタ回路の接続および非接続の切り替えによって前記判別対象の回路における前記各コンデンサを含んでそれぞれ構成される各共振回路の各共振周波数を変更し、前記疑似インダクタ回路を接続した状態における前記少なくとも一方に対する操作によっても前記各共振周波数を変更する実装状態判別方法。
【請求項4】
前記判別処理において、前記周波数の上昇に伴って前記電気的パラメータが上昇に転じる転換点の有無を特定し、当該特定した転換点の数と前記回路に実装されるべき前記コンデンサの数とが同数のときに前記各コンデンサが実装状態であると判別する請求項記載の実装状態判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコンデンサが並列接続される回路におけるコンデンサの実装状態および非実装状態を判別する実装状態判別装置および実装状態判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の実装状態判別方法として、特開2004−221574号公報において出願人が開示したバイパスコンデンサの実装・非実装検査方法(以下、「実装検査方法」ともいう)が知られている。この実装検査方法では、2つのハンダパッド間にバイパスコンデンサ(以下、単に「コンデンサ」ともいう)が実装されているか否かを検査する際に、電圧発生部に接続されているプローブ(以下、「第1プローブ」ともいう)をGNDパターン側のハンダパッドに接触させ、電圧計に接続されている2つのプローブの一方(以下、「第2プローブ」ともいう)を電源パターン側のハンダパッドに接触させる。次いで、電圧計に接続されている2つのプローブの他方(以下、「第3プローブ」ともいう)を、電源パターン側のハンダパッドに接続されているスルーホールや導体パターン上における第2プローブの接触位置から離間した位置に接触させる。続いて、電圧発生部に電圧を発生させて、第1プローブを介してGNDパターン側のハンダパッドに電圧を供給させる。この場合、コンデンサが各ハンダパッド間に実装されているときには、コンデンサを介して第2プローブおよび第3プローブの間に電流が流れるため、その間の電圧が電圧計によって測定される。すなわち、電圧計の読み値VがV≠0となる。一方、コンデンサが各ハンダパッド間に実装されていないときには、第2プローブおよび第3プローブの間に電流が流れないため、電圧計の読み値VはV=0となる。つまり、この実装検査方法では、電圧計の読み値からコンデンサの実装および非実装を把握することが可能となっている。また、この実装検査方法では、複数のコンデンサが並列接続されている場合において、各コンデンサについて上記の手順で検査することで、各コンデンサの実装および非実装を個別に把握することが可能となっている。
【0003】
一方、この方法では、各コンデンサを実装させるためのハンダパッド、およびハンダパッドに接続されているスルーホールや導体パターンに各プローブを接触させる必要があるため、並列接続されている複数のコンデンサの全ての実装および非実装を個別に把握するためには、これらのハンダパッド、スルーホールおよび導体パターンが基板の表面に露出している必要がある。このため、これらが露出していない基板(例えば、コンデンサや導体パターンが内装されている内装基板)に対してこの実装検査方法による検査を行うのは困難なことがある。
【0004】
このような、課題を解決可能な技術として、出願人は、次のような新たな実装状態判別方法を開発している。この実装状態判別方法では、複数のコンデンサが並列接続された判別対象の回路に対して周波数を変化させつつ交流信号を供給し、その際に検出される検出信号および交流信号に基づいて、両信号の位相差を各周波数毎に測定する。次いで、各コンデンサが正しく実装された良品の回路について同じ手順で測定した各周波数毎の測定値に予め決められた値を加算した上限値、および各測定値から予め決められた値を減算した下限値で画定される基準範囲を規定して、判別対象の回路について測定した各測定値がこの基準範囲内であるか否かを判別する。ここで、複数のコンデンサが並列接続された回路では、各コンデンサと各コンデンサに等価的に接続されたインダクタンス成分(コンデンサに接続された導体パターン等がこれに相当する)とによってコンデンサの数と同数の共振回路が構成される。また、コンデンサの容量やインダクタンスの値が異なるときには各共振回路の共振周波数が異なる。
【0005】
一方、このような複数の共振回路を有する回路に対して、上記したように周波数を変化させつつ交流信号を供給したときには、各共振回路の各共振周波数に近い周波数において位相差が急激に上昇に転じる(反転する)点(以下、この点を「転換点」ともいう)が現れることが知られている。このため、例えば、回路に実装されるべき各コンデンサの1つが非実装の状態では、そのコンデンサによって構成される共振回路の共振周波数に近い周波数において転換点が現れずに、測定値が基準範囲外となる。このため、この新たな実装状態判別方法では、転換点が現れるべき周波数(共振周波数に近い周波数)における位相差の測定値が基準範囲内であるか否かを判別することで、各コンデンサを実装させるためのハンダパッドなどが基板の表面に露出していない場合においても実装および非実装を判別することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−221574号公報(第6−7頁、第4−5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、出願人が開発している新たな実装状態判別方法には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、この実装状態判別方法では、転換点が現れるべき周波数(判別対象の回路に含まれる各共振回路に固有の各共振周波数に近い周波数)の全てにおける位相差を測定する必要がある。しかしながら、位相差を測定する測定部の測定可能周波数範囲には限界があるため、判別対象の回路の構成によっては、共振周波数が測定可能周波数範囲外となることがあり、このような回路についての実装状態および非実装状態の判別を正確に行うことが困難であるという課題が存在し、この点の改善が望まれている。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、複数のコンデンサが並列接続される回路における各コンデンサの実装状態および非実装状態を正確に判別し得る実装状態判別装置および実装状態判別方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の実装状態判別装置は、複数のコンデンサが並列接続される判別対象の回路に対する交流信号の供給に伴って検出される検出信号に基づいて当該判別対象の回路についての電気的パラメータを当該交流信号の周波数毎に測定する測定部と、当該測定された電気的パラメータの周波数特性に基づいて前記各コンデンサが実装状態であるか非実装状態であるかを判別する判別処理を実行する処理部とを備えた実装状態判別装置であって、抵抗、コンデンサおよびオペアンプを備えると共に当該抵抗および当該コンデンサの少なくとも一方が可変型に形成された疑似インダクタ回路と、前記判別対象の回路と前記測定部との間への前記疑似インダクタ回路の接続および非接続を切り替えるスイッチとを備え、前記スイッチに対する操作による前記疑似インダクタ回路の接続および非接続の切り替えによって前記判別対象の回路における前記各コンデンサを含んでそれぞれ構成される各共振回路の各共振周波数を変更可能に構成されると共に、前記疑似インダクタ回路を接続した状態における前記少なくとも一方に対する操作によっても前記各共振周波数を変更可能に構成されている。
【0011】
また、請求項記載の実装状態判別装置は、請求項1記載の実装状態判別装置において、前記処理部は、前記判別処理において、前記周波数の上昇に伴って前記電気的パラメータが上昇に転じる転換点の有無を特定し、当該特定した転換点の数と前記回路に実装されるべき前記コンデンサの数とが同数のときに前記各コンデンサが実装状態であると判別する。
【0012】
また、請求項記載の実装状態判別方法は、複数のコンデンサが並列接続される判別対象の回路に対する交流信号の供給に伴って検出される検出信号に基づいて当該判別対象の回路についての電気的パラメータを当該交流信号の周波数毎に測定し、当該測定した電気的パラメータの周波数特性に基づいて前記各コンデンサが実装状態であるか非実装状態であるかを判別する判別処理を実行する実装状態判別方法であって、前記電気的パラメータを測定する際に、抵抗、コンデンサおよびオペアンプを備えると共に当該抵抗および当該コンデンサの少なくとも一方が可変型に形成された疑似インダクタ回路と、前記判別対象の回路と前記測定部との間への前記疑似インダクタ回路の接続および非接続を切り替えるスイッチとを用いて、前記スイッチに対する操作による前記疑似インダクタ回路の接続および非接続の切り替えによって前記判別対象の回路における前記各コンデンサを含んでそれぞれ構成される各共振回路の各共振周波数を変更し、前記疑似インダクタ回路を接続した状態における前記少なくとも一方に対する操作によっても前記各共振周波数を変更する。
【0014】
また、請求項記載の実装状態判別方法は、請求項記載の実装状態判別方法において、前記判別処理において、前記周波数の上昇に伴って前記電気的パラメータが上昇に転じる転換点の有無を特定し、当該特定した転換点の数と前記回路に実装されるべき前記コンデンサの数とが同数のときに前記各コンデンサが実装状態であると判別する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の実装状態判別装置および請求項記載の実装状態判別方法では、複数のコンデンサが並列接続される判別対象の回路における各コンデンサの実装状態および非実装状態を判別する判別処理に用いる電気的パラメータの周波数特性を測定する際に、判別対象の回路と測定部との間への疑似インダクタ回路の接続および非接続の切り替えによって各コンデンサを含んでそれぞれ構成される各共振回路の各共振周波数を変更する。このため、この実装状態判別装置および実装状態判別方法によれば、疑似インダクタ回路の接続および非接続を切り替えることで、測定部よる電気的パラメータの測定が可能な測定可能周波数範囲内に各共振周波数を収めることができる。したがって、この実装状態判別装置および実装状態判別方法によれば、共振周波数(または、共振周波数に近い周波数)における電気的パラメータを確実に測定することができる結果、共振周波数(または、共振周波数に近い周波数)における電気的パラメータの周波数特性に基づいて行う判別処理において、各コンデンサの実装状態および非実装状態を正確に判別することができる。
【0016】
また、請求項記載の実装状態判別装置および請求項記載の実装状態判別方法によれば、抵抗、コンデンサおよびオペアンプを備えると共に抵抗およびコンデンサの少なくとも一方が可変型の疑似インダクタ回路を用いることにより、疑似インダクタ回路を接続した状態において、可変型の抵抗および可変型のコンデンサの少なくとも一方を操作して各電気的パラメータ(抵抗値または静電容量)を変更するだけで、疑似インダクタ回路のインダクタンスを任意に変更することができる。このため、この実装状態判別装置および実装状態判別方法によれば、例えば、複数種類の判別対象の回路について判別処理を実行する際に、判別対象の回路の種類に応じてインダクタンスの異なるインダクタに交換する構成および方法と比較して、インダクタの交換が不要な分、処理効率を十分に向上させることができる。
【0017】
また、請求項記載の実装状態判別装置および請求項記載の実装状態判別方法では、判別処理において、周波数の上昇に伴って電気的パラメータが上昇に転じる転換点の有無を特定し、特定した転換点の数と回路に実装されるべきコンデンサの数とが同数のときに各コンデンサが実装状態であると判別する。このため、この実装状態判別装置および実装状態判別方法によれば、例えば、転換点が現れるべき周波数(共振周波数に近い周波数)における電気的パラメータの測定値とコンデンサが正しく実装されているときにその周波数において測定されるべき位相差の値(予め規定された基準値)とを比較する構成および方法とは異なり、基準値を規定する必要がないため、複数種類の回路について判別処理を実行する際の処理効率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実装状態判別装置1の構成を示す構成図である。
図2】回路基板13の斜視図である。
図3図2におけるW−W線断面図である。
図4】回路基板13の導体パターン11,12およびコンデンサ21a〜21cによって構成される回路Cを等価的に表す等価回路図である。
図5】疑似インダクタ回路2aの回路図である。
図6】疑似インダクタ回路2aを接続していない状態で測定した回路Cにおける位相差およびインピーダンスの周波数特性を示す周波数特性図である。
図7】疑似インダクタ回路2aのインダクタンスL0を100nHに設定した状態で測定した回路Cの位相差およびインピーダンスの周波数特性を示す周波数特性図である。
図8】疑似インダクタ回路2aのインダクタンスL0を10nHに設定した状態で測定した回路Cの位相差およびインピーダンスの周波数特性を示す周波数特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、実装状態判別装置および実装状態判別方法の実施の形態について説明する。
【0020】
最初に、実装状態判別装置1の構成について図1を参照して説明する。
【0021】
実装状態判別装置1は、図1に示すように、測定部2、疑似インダクタ回路2a、スイッチ2b、記憶部3、処理部4および表示部5を備え、図2に示す回路基板13における一対の導体パターン11,12によって互いに並列接続されるべき複数(本例では一例として3個)のコンデンサ21a〜21c(以下、区別しないときには「コンデンサ21」ともいう)の実装状態(各コンデンサ21a〜21cが実装状態であるか非実装状態であるか)を判別する。この場合、各導体パターン11,12は、同図に示すように、予め規定されたパターン形状で回路基板13に形成されている。本例では一例として、導体パターン11は、回路基板13の内層グランドパターンとして平面状のパターン形状に形成されている。一方、導体パターン12は、電源ラインとして直線状のパターン形状に形成されている。また、各コンデンサ21a〜21cは、図2,3に示すように、各導体パターン11,12における予め規定された位置に接続されている。この場合、各コンデンサ21a〜21cは、一例として、導体パターン11にはビア14aおよびランド15を介して接続され、導体パターン12にはビア14bおよびランド15を介して接続されている。以下、ビア14a,14bを特に区別しないときには、「ビア14」ともいう。
【0022】
測定部2は、図1,2に示すように一対のプローブ6,7を介して、各導体パターン11,12上に1つずつ規定された一対の測定点P1,P2(本例では、図2に示すように、ビア14a,14bを介して導体パターン11,12に接続されたランド15上に規定された測定点P1,P2)に接続される。また、測定部2は、各プローブ6,7から各導体パターン11,12間に、つまり導体パターン11,12とコンデンサ21a〜21cとによって構成される回路C(図2,3参照)に対して、周波数をスイープ(変化)させつつ測定用の交流信号(一例として、交流定電流であって、以下「測定用信号S1」ともいう)を供給すると共に、これに伴って各導体パターン11,12間に発生する検出信号S2(この例では、交流電圧)をプローブ6,7を介して検出する。また、測定部2は、測定用信号S1の位相と検出信号S2の位相との位相差を周波数毎に測定する。つまり、測定部2は、測定用信号S1の周波数の変化に伴う位相差の変化(位相差の周波数特性)を測定する。また、測定部2は、周波数毎に測定した位相差(位相差の周波数特性)を示す特性データD1を処理部4に出力する。
【0023】
疑似インダクタ回路2aは、擬似的にインダクタとして機能する回路(シミュレーテッドインダクタ)であって、図5に示すように、一例として、固定抵抗31、可変抵抗32(可変型の抵抗)、可変コンデンサ33(可変型のコンデンサ)およびオペアンプ34を備えて構成されている。この場合、この疑似インダクタ回路2aでは、可変抵抗32および可変コンデンサ33の少なくとも一方を操作して各電気的パラメータ(抵抗値または静電容量)を変更することによってインダクタンスL0を変更することが可能となっている。
【0024】
スイッチ2bは、図1に示すように、例えば、測定部2と疑似インダクタ回路2aとの間に配置されて、切り替え操作がされたときに、測定部2と回路Cとの間(具体的には、測定部2とプローブ6との間)への疑似インダクタ回路2aの接続および非接続を切り替える。
【0025】
記憶部3は、一例として半導体メモリやハードディスク装置を用いて構成されて、処理部4のための動作プログラムなどを記憶する。
【0026】
処理部4は、一例としてCPUを用いて構成され、上記した周波数特性の測定を測定部2に対して実行させる測定処理を実行する。また、処理部4は、測定部2から出力される特性データD1に基づいて各コンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別する判別処理を実行する。この場合、処理部4は、この判別処理において、周波数特性における後述する転換点Pt1〜Pt3の有無を特定する特定処理を実行し、特定処理の結果に基づいて各コンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別する。また、処理部4は、判別処理の結果を表示部5に表示させる表示処理を実行する。
【0027】
次に、回路Cについての位相差の周波数特性(測定用信号S1の周波数の変化に伴う位相差の変化)について、具体的に説明する。
【0028】
図2,3に示すように、複数(本例では3個)のコンデンサ21a〜21cが各導体パターン11,12間に実装されている回路Cは、図4に示す等価回路として表される。なお、この等価回路において、L1〜L3は、各導体パターン11,12、および各コンデンサ21a〜21cと各導体パターン11,12とを接続する各ビア14のインダクタンス(コンデンサに等価的に接続されたインダクタンス成分)を表している(以下、これらのインダクタンスL1〜L3、および上記した疑似インダクタ回路2aのインダクタンスL0を区別しないときには「インダクタンスL」ともいう)。
【0029】
ここで、この回路Cのように、複数のコンデンサ21a〜21cが並列接続されているときには、各コンデンサ21a〜21cと各コンデンサ21a〜21cに接続されたインダクタンス成分(上記の等価回路におけるインダクタンスL1〜L3)とによってコンデンサ21a〜21cと同数(この例では、3つ)の共振回路が構成される。また、コンデンサの容量やインダクタンスLの値が異なるときには各共振回路の共振周波数fs(fs1〜fs3)が異なる(図6参照)。
【0030】
また、各コンデンサ21a〜21cの静電容量が同一の場合にも、各測定点P1,P2から各コンデンサ21a〜21cまでの導体パターン11,12の長さが相違して、インダクタンスLが相違するため、これに起因して、各コンデンサ21a〜21cと各インダクタンス成分とによって構成される各共振回路の共振周波数fsが異なることとなる。
【0031】
共振周波数fsが互いに異なる複数の共振回路を有する上記の回路Cに対して周波数を変化させつつ測定用信号S1としての交流信号を供給し、測定用信号S1の供給に伴って発生する検出信号S2の位相と測定用信号S1の位相との位相差(回路Cについての電気的パラメータ)を測定した場合、その位相差の周波数特性(測定用信号S1の周波数の変化に伴う位相差の変化)には、各共振回路の各共振周波数fsに近い周波数において位相差が急激に(予め決められた上昇率以上の上昇率で)上昇に転じる転換点Pt1〜Pt3(図6参照:以下、区別しないときには「転換点Pt」ともいう)が現れる。つまり、位相差の周波数特性には、コンデンサの数(共振回路の数)と同数の転換点Ptが現れる。
【0032】
図6に示す周波数特性図(同図における実線で示す波形曲線CL1)は、上記の等価回路においてコンデンサ21aの静電容量が1μF、コンデンサ21bの静電容量が220nF、コンデンサ21cの静電容量が100nFで、インダクタンスL1〜L3がそれぞれ12nH、3nH、2nHのときに、測定部2によって測定される測定用信号S1の位相と検出信号S2の位相との位相差の周波数特性を表している。
【0033】
図6の周波数特性図から明らかなように、コンデンサ21a〜21cが正しく実装されている回路C(図4の等価回路)についての位相差の周波数特性には、コンデンサ21a〜21cの数と同数(この例では、3つ)の転換点Pt1〜Pt3が各共振周波数fs1〜fs3に近い周波数(具体的には、各共振周波数fs1〜fs3よりもそれぞれやや低い周波数)において現れている。なお、本例のように各コンデンサ21a〜21cの静電容量が互いに相違する場合には、原則として、静電容量の小さなコンデンサ21ほど対応する共振周波数fsが高くなる。
【0034】
なお、上記した上昇率をR1、測定用信号S1の周波数をfm(Hz)、位相差をθ(°)とすると、上昇率R1は、一例として、次の式(1)で規定することができる。
R1=α×Δθ/Δ(log10fm)・・・・式(1)
(αは係数であって、図6の例では0.0067:Δは上昇分を示す符号)
この場合、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法では、一例として、この上昇率R1が1.73(tan60°)以上のとき、つまり、図6に示すように、周波数を「log10」(常用対数)で示す座標軸(X軸)と位相差を「°」で示す座標軸(Y軸)とによって規定されるXY平面に周波数の変化に伴う位相差の変化を示す波形曲線CL1を描いたときに、波形曲線CL1における接線の傾きが60°以上となる波形曲線CL1上の点を転換点Ptとしている。
【0035】
また、各コンデンサ21a〜21cのいずれかが非実装状態のときの位相差の周波数特性には、実装状態のコンデンサ21に対応する転換点Ptのみが現れ、非実装状態のコンデンサ21に対応する転換点Ptは現れない。このため、位相差の周波数特性における転換点Ptを特定し、特定した転換点Ptの数(以下「特定数」ともいう)と実装されるべきコンデンサ21の数(以下「規定数」ともいう)とを比較することで、各コンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別することができる。具体的には、特定数と規定数とが同数のときには、各コンデンサ21が実装状態であると判別し、特定数数が規定数よりも少ないときには、その差分値の数と同じ数のコンデンサ21が非実装状態であると判別する。
【0036】
ここで、上記したように、コンデンサ21の静電容量が小さいほど共振周波数fsが高くなるため、回路Cの構成によっては、転換点Ptが現れる周波数(共振周波数fsに近い周波数)が測定部2による位相差(電気的パラメータ)の測定が可能な周波数範囲(以下、「測定可能周波数範囲A」ともいう:図6参照)を超えることがあり、このような回路Cについては、転換点Ptの数を特定して規定数と比較する上記の方法での判別処理が困難となる。この場合、共振周波数fsは、インダクタンスLが大きいほど低くなる。このため、この実装状態判別装置1では、この特性を利用して、測定部2の測定可能周波数範囲A内に各共振周波数fsが収まるように、各共振周波数fsを変更することが可能となっている。具体的には、実装されるべき各コンデンサ21が正しく実装されている良品の回路基板13を対象として測定した周波数特性に基づいて処理部4が特定処理を実行した際に、転換点Ptの特定数が規定数よりも少なかったときや、転換点Ptが特定されなかったとき(特定数が0のとき)には、共振周波数fsが測定部2の測定可能周波数範囲Aを超えている可能性がある。このようなときには、スイッチ2bを操作することによってプローブ6を介して測定部2と回路Cとの間に疑似インダクタ回路2aを接続して共振周波数fsの高さを低下させ(変更し)、これによって測定部2の測定可能周波数範囲Aに共振周波数fsが収められる。
【0037】
一方、インダクタンスLが大きいほど各共振周波数fsにおける位相差(特に高い周波数領域における位相差)の変化が小さくなり、転換点Ptの特定が困難となる。このため、インダクタンスL0を必要以上に大きな値に規定したときには、図7に実線で示すように、測定部2の測定可能周波数範囲A内に各共振周波数fsが収まっていたとしても、転換点Ptの特定が困難となって上記の方法での判別処理が困難となる。この実装状態判別装置1では、可変抵抗32および可変コンデンサ33を備えた疑似インダクタ回路2aを採用したことで、可変抵抗32および可変コンデンサ33の少なくとも一方を操作して疑似インダクタ回路2aのインダクタンスL0を変更することが可能となっている。このため、この実装状態判別装置1では、疑似インダクタ回路2aのインダクタンスL0を適度な大きさに変更することで、図8に実線で示すように、測定部2の測定可能周波数範囲A内に各共振周波数fsを収めさせ、かつ転換点Ptの特定が可能な程度に各共振周波数fsにおける位相差の変化を大きくすることが可能となっている。
【0038】
次に、3つのコンデンサ21a〜21cが実装されるべき回路C(図2参照)における各コンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを、実装状態判別装置1を用いて判別する実装状態判別方法について、図面を参照して説明する。
【0039】
なお、回路Cを構成する導体パターン11,12、ビア14および各コンデンサ21a〜21cは、上記したように、図4に示す等価回路で表され、また、同図に示される各コンデンサ21a〜21cの静電容量はそれぞれ1μF、220nF、100nFであり、各インダクタンスL1〜L3はそれぞれ12nH、3nH、2nHであるものとする。
【0040】
まず、実装状態判別装置1を用いて、3つのコンデンサ21a〜21cが正しく実装されている良品の回路基板13における回路Cを対象として予備試験を行う。この予備試験では、実装状態判別装置1に対して処理の開始を指示したときに、処理部4が、測定処理を実行する。この測定処理では、処理部4は、測定部2に対して周波数特性を測定させる。この場合、測定部2は、プローブ6,7を介して入出力される測定用信号S1の位相と検出信号S2の位相との位相差を測定用信号S1の周波数毎に測定し、測定したこの周波数特性を示す特性データD1を処理部4に出力する。
【0041】
次いで、処理部4は、判別処理を実行する。この判別処理では、処理部4は、測定部2から出力された特性データD1によって特定される位相差の周波数特性に基づき、回路Cにおいて、コンデンサ21a〜21cが実装状態であるか非実装状態であるかを判別する。具体的には、処理部4は、周波数の上昇に伴って位相差が予め決められた上昇率以上の上昇率で急激に上昇に転じる転換点Ptの有無を特定する特定処理を実行する。より具体的には、処理部4は、上記式(1)で規定される上昇率R1が1.73以上となる点、つまり、波形曲線CL1における接線の傾きが60°以上となる波形曲線CL1上の点を検索し、そのような点を検出したときには、その点を転換点Ptとして特定する。
【0042】
次いで、処理部4は、判別処理を実行して、特定した転換点Ptの数(特定数)と実装されるべきコンデンサ21a〜21cの数(規定数:この例では3)とを比較する。この場合、図6に示すように、3つの転換点Ptを特定したとき、つまり、特定数と規定数とが数と規定数とが同数のときには、処理部4は、各コンデンサ21a〜21cが実装状態であると判別する。次いで、処理部4は、表示処理を実行して、上記の判別結果を表示部5に表示させる。
【0043】
ここで、例えば、測定部2の測定可能周波数範囲Aが100kHz〜9.5MHzであるとすると、図6に示す転換点Pt3に対応する周波数が9.5MHzを超えているため、この転換点Pt3における位相差を測定部2が測定するのが困難となる。この結果、特定処理において処理部4が転換点Pt3を特定することができずに、特定数が「2」となるため、3つのコンデンサ21a〜21cが正しく実装されているにも拘わらず、各コンデンサ21a〜21cのうちの1つが非実装状態であると判別される可能性がある。
【0044】
この際には、使用者は、スイッチ2bを操作して、ローブ6を介して測定部2と回路Cとの間に疑似インダクタ回路2aを接続させ、各共振周波数fsの高さを低下させる(変更する)。次いで、処理部4に対して、上記した測定処理、特定処理および判別処理を再度実行させる。この場合、疑似インダクタ回路2aの接続によって各共振周波数fsが測定可能周波数範囲A内に収まったとしても、疑似インダクタ回路2aのインダクタンスL0が大きすぎるときには、図7に示すように、特に高い周波数領域(例えば、同図に示す領域B)の共振周波数fsにおける位相差の変化が小さくなる。このときには、再度実行した特定処理においても、処理部4が転換点Pt3を特定することができないこととなり、3つのコンデンサ21a〜21cが正しく実装されているにも拘わらず、処理部4は、判別処理において各コンデンサ21a〜21cのうちの1つが非実装状態であると判別する。
【0045】
このようなときには、使用者は、疑似インダクタ回路2aにおける可変抵抗32および可変コンデンサ33の一方または双方を操作して疑似インダクタ回路2aのインダクタンスL0を低下させ、次いで、処理部4に対して、測定処理、特定処理および判別処理を再度実行させる。この場合、インダクタンスL0の低下により、例えば、図8に示すように、各共振周波数fsが測定可能周波数範囲A内に収まり、かつ各転換点Pt1〜Pt3の特定が可能な程度に各共振周波数fsにおける位相差が変化しているときには、処理部4が、特定処理において3つの転換点Pt1〜Pt3を特定し、判別処理において各コンデンサ21a〜21cが実装状態であると判別する。以上により、予備試験が終了する。
【0046】
次いで、判別対象の回路基板13における回路Cについての測定処理、特定処理および判別処理を実行させる。この場合、上記したように、インダクタンスL0を変更した疑似インダクタ回路2aを接続することで、判別対象の回路Cにおける各共振周波数fsが測定可能周波数範囲A内に収まり、かつ各転換点Pt1〜Pt3の特定が可能な程度に各共振周波数fsにおける位相差が変化する。このため、特定処理において全ての転換点Pt1〜Pt3の有無が正確に特定される結果、判別処理において各コンデンサ21a〜21cの実装状態および非実装状態が正確に判別される。
【0047】
なお、転換点Ptの数が規定の数(回路Cに配設されるコンデンサ21の数)と同じときに各コンデンサ21が実装状態であると判別する構成および方法について上記したが、各コンデンサ21に対応する共振周波数fs(疑似インダクタ回路2aを接続したときの共振周波数fs)が予め判っているときには、転換点Ptを特定する処理を実行することなく、予め判っているその共振周波数fsにおける位相差の測定値と、予め規定された基準値とを比較して、例えば、測定値が基準値以下のときにその共振周波数fsに対応するコンデンサ21が実装状態であると判別する構成および方法を採用することもできる。
【0048】
このように、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法では、複数のコンデンサ21が並列接続される回路Cにおける各コンデンサ21の実装状態および非実装状態を判別する判別処理に用いる測定用信号S1と検出信号S2との位相差(電気的パラメータ)の周波数特性を測定する際に、回路Cと測定部2との間へのインダクタ(疑似インダクタ回路2a)の接続および非接続の切り替えによって各コンデンサ21を含んでそれぞれ構成される各共振回路の各共振周波数fsを変更する。このため、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法によれば、インダクタの接続および非接続を切り替えることで、
測定部2による位相差(電気的パラメータ)の測定が可能な測定可能周波数範囲A内に各共振周波数fs(各転換点Ptが現れる各共振周波数fsに近い各周波数)を収めることができる。したがって、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法によれば、各転換点Pt(共振周波数fsに近い周波数)における位相差を確実に測定することができる結果、各転換点Ptにおける位相差の周波数特性に基づいて行う判別処理において、各コンデンサ21の実装状態および非実装状態を正確に判別することができる。
【0049】
また、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法によれば、可変抵抗32、可変コンデンサ33およびオペアンプ34を備えた疑似インダクタ回路2aをインダクタとして用いることにより、可変抵抗32および可変コンデンサ33の少なくとも一方を操作して各電気的パラメータ(抵抗値または静電容量)を変更するだけで、疑似インダクタ回路2aのインダクタンスL0を任意に変更することができる。このため、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法によれば、例えば、複数種類の回路Cについて判別処理を実行する際に、回路Cの種類に応じてインダクタンスの異なるインダクタに交換する構成および方法と比較して、インダクタの交換が不要な分、処理効率を十分に向上させることができる。
【0050】
また、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法では、判別処理において、周波数の上昇に伴って電気的パラメータが上昇に転じる転換点Ptの有無を特定し、特定した転換点Ptの数と回路Cに実装されるべきコンデンサ21の数とが同数のときに各コンデンサ21が実装状態であると判別する。このため、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法によれば、例えば、転換点Ptが現れるべき周波数(共振周波数fsに近い周波数)における位相差(電気的パラメータ)の測定値とコンデンサ21が正しく実装されているときにその周波数において測定されるべき位相差の値(予め規定された基準値)とを比較する構成および方法とは異なり、基準値を規定する必要がないため、複数種類の回路Cについて判別処理を実行する際の処理効率をさらに向上させることができる。
【0051】
なお、実装状態判別装置1および実装状態判別方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、インダクタンスL0を変更可能な疑似インダクタ回路2aを用いる例について上記したが、インダクタンスL0が予め1つの値に規定(固定)されている疑似インダクタ回路の接続および非接続を切り替えることにより、各コンデンサ21を含んでそれぞれ構成される各共振回路の各共振周波数fsを変更する構成および方法を採用することもできる。また、疑似インダクタ回路2aに代えて、インダクタンスが固定のコイル(インダクタの他の一例)を用いる構成および方法を採用することもできる。
【0052】
また、測定用信号S1の位相と検出信号S2の位相との位相差(電気的パラメータの一例)を測定用信号S1の周波数毎に測定し、周波数の変化に伴う位相差の変化(位相差の周波数特性)に基づいて判別処理を実行する構成および方法について上記したが、測定点P1,P2間のインピーダンス(電気的パラメータの他の一例)を測定用信号S1の周波数を変化させつつ各周波数毎に(インピーダンスの周波数特性を)測定して、周波数の変化に伴うインピーダンスの変化に基づいて判別処理を実行する構成および方法を採用することもできる。以下、この構成および方法について説明する。なお、以下の説明において、上記した実装状態判別装置1および実装状態判別方法と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0053】
まず、回路Cについてのインピーダンスの周波数特性(測定用信号S1の周波数の変化に伴うインピーダンスの変化)について説明する。図6に示す周波数特性図(同図に破線で示す波形曲線CL2)は、上記の等価回路(図4参照)の測定点P1,P2において測定部2によって測定されるインピーダンスの周波数特性を表している。この周波数特性図から明らかなように、コンデンサ21a〜21cが正しく実装されている回路Cについてのインピーダンスの周波数特性には、各共振回路の各共振周波数fsに近い周波数において、インピーダンスが急激に(予め決められた上昇率以上の上昇率で)上昇に転じる3つ(コンデンサ21a〜21cの数と同数)の転換点Pt4〜Pt6(図6参照:以下、区別しないときには「転換点Pt」ともいう)が現れている。
【0054】
なお、上記した上昇率をR2、測定用信号S1の周波数をfm(Hz)、インピーダンスをZ(Ω)とすると、上昇率R2は、一例として、次の式(2)で規定することができる。
R2=β×Δ(log10Z)/Δ(log10fm)・・・・式(2)
(βは係数であって、図6の例では3.29、図7の例では6.62、図8の例では4.45:Δは上昇分を示す符号)
この場合、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法では、一例として、この上昇率R2が1.73(tan60°)以上のとき、つまり、図6に示すように、周波数を「log10」(常用対数)で示す座標軸(X軸)とインピーダンスを「log10」で示す座標軸(Y軸)とによって規定されるXY平面に周波数の変化に伴うインピーダンスの変化を示す波形曲線CL2を描いたときに、波形曲線CL2における接線の傾きが60°以上となる波形曲線CL2上の点を転換点Ptとしている。
【0055】
また、各コンデンサ21a〜21cのいずれかが非実装状態のときのインピーダンスの周波数特性には、実装状態のコンデンサ21に対応する転換点Ptのみが現れ、非実装状態のコンデンサ21に対応する転換点Ptは現れない。このため、インピーダンスの周波数特性における転換点Ptを特定し、特定した転換点Ptの数(特定数)と実装されるべきコンデンサ21の数(規定数)とを比較することで、各コンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別することができる。
【0056】
また、この構成および方法においても、図6に示すように、転換点Ptが現れる周波数(共振周波数fsに近い周波数)が測定部2によるインピーダンス(電気的パラメータ)の測定が可能な測定可能周波数範囲Aを超えるときには、測定部2と回路Cとの間に疑似インダクタ回路2aを接続して共振周波数fsを低下させることで、測定部2の測定可能周波数範囲Aに転換点Ptが現れる周波数を収めることができる。
【0057】
また、図7に破線で示すように、インダクタンスL0を必要以上に大きな値に規定したことによって転換点Ptが現れるべき周波数におけるインピーダンスの変化が小さくなり、転換点Ptの特定が困難なときには、可変抵抗32および可変コンデンサ33の少なくとも一方を操作して疑似インダクタ回路2aのインダクタンスL0を適度な大きさに変更することで、図8に破線で示すように、測定部2の測定可能周波数範囲A内に各転換点Ptが現れるべき周波数(共振周波数fsに近い周波数)を収めさせ、かつ転換点Ptの特定が可能な程度にその周波数におけるインピーダンスの変化を大きくすることができる。したがって、この構成および方法においても、特定処理において全ての転換点Pt1〜Pt3の有無を正確に特定さすることができる結果、判別処理において各コンデンサ21a〜21cの実装状態および非実装状態を正確に判別することができる。
【0058】
なお、インピーダンスの周波数特性に基づいてコンデンサ21の実装状態および非実装状態を判別するこの例においても、各コンデンサ21に対応する共振周波数fs(疑似インダクタ回路2aを接続したときの共振周波数fs)が予め判っているときには、転換点Ptを特定する処理を実行することなく、予め判っているその共振周波数fsにおけるインピーダンスの測定値と、予め規定された基準値とを比較して、例えば、測定値が基準値以下のときにその共振周波数fsに対応するコンデンサ21が実装状態であると判別する構成および方法を採用することもできる。
【0059】
また、上記の各例では、可変抵抗32および可変コンデンサ33を備えた疑似インダクタ回路2a、つまり、抵抗およびコンデンサの双方が可変型の疑似インダクタ回路2aを用いているが、抵抗およびコンデンサのいずれか一方のみが可変型の疑似インダクタ回路を用いる構成および方法を採用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 実装状態判別装置
2 測定部
2a 疑似インダクタ回路
2b スイッチ
4 処理部
21a〜21c コンデンサ
32 可変抵抗
33 可変コンデンサ
34 オペアンプ
A 測定可能周波数範囲
C 回路
fm 周波数
fs 共振周波数
L0 インダクタンス
Pt1〜Pt6 転換点
S1 測定用信号
S2 検出信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8