(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記顕微鏡の最高分解能の値が前記撮像部の分解能の値以上の場合に、前記可変光学素子の前記開口数を最大にさせるとともに前記画像補正部に前記画像を処理させる請求項1に記載の顕微鏡システム。
前記可変光学素子が、光源からの照明光を標本に向かって通過させる開口を有し該開口の開口径を変化させることにより開口数が可変であるコンデンサである請求項1または請求項2に記載の顕微鏡システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、顕微鏡の観察像をデジタルカメラで撮影する場合、デジタルカメラに入射する顕微鏡の観察像が低質であると、デジタルカメラで取得された画像に対して特許文献1,2のような画像処理を施したとしても向上できる画質には限界がある。顕微鏡の観察像を良質なものとするためには、顕微鏡に装着されている対物レンズやコンデンサ等の仕様を見極めてこれらの光学素子を適切に調整する必要がある。
【0005】
しかし、例えば、使用する対物レンズを切り替える度に他の光学素子の最適な調整値を算出して調整し直すことは操作者にとって大きな負担であるとともに、知識や技術が必要とされるため顕微鏡に不慣れな操作者にとっては難しい。さらに、光学素子の最適な調整値や画像処理の要否または条件は使用するデジタルカメラの性能によって異なる。したがって、顕微鏡およびデジタルカメラの両方の性能を十分に発揮した高質な画像を得ることが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、顕微鏡に不慣れな操作者であっても顕微鏡および撮像部の性能を十分に発揮した高質な画像を容易に取得することができる顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、開口数が可変な可変光学素子を有し前記開口数を変更することにより分解能を調節可能な顕微鏡と、該顕微鏡の観察像を撮影して画像を取得する撮像部と、該撮像部によって取得された画像を処理する画像補正部と、前記可変光学素子の開口数に基づく前記顕微鏡の最高分解能の値と前記撮像部の分解能の値と
を比較し、その比較結果に応じて前記可変光学素子
の開口数を設定すると共に前記画像補正部
に前記画像を処理させるか否かを制御する制御部とを備える顕微鏡システムを提供する。
【0008】
本発明によれば、顕微鏡の最高分解能の値と撮像部の分解能の値とを比較し、顕微鏡および撮像部のうちどちらの分解能がより優れているかが制御部によって判断され、その判断結果に応じて顕微鏡の分解能と撮像部によって取得された画像の処理の要否が制御部によって決定される。これにより、顕微鏡に不慣れな操作者であっても顕微鏡および撮像部の性能を十分に発揮した高質な画像を容易に取得することができる。
【0009】
上記発明においては、前記制御部は、前記顕微鏡の最高分解能の値が前記撮像部の分解能の値以上の場合に、前記可変光学素子の前記開口数を最大にさせるとともに前記画像補正部に前記画像を処理させることとしてもよい。
顕微鏡
の最高分解能の値が撮像部の分解能の値以上の場合、すなわち顕微鏡の最高分解能が撮像部の分解能以下と低い場合、顕微鏡の観察像の分解能が最高となるように可変光学素子の開口数が最大に設定され、撮像部によって取得された画像の画質が画像補正部による処理によって補われる。
【0010】
このように、顕微鏡および撮像部のうちどちらの分解能がより優れているかが制御部によって判断され、その判断結果に応じて顕微鏡の分解能と撮像部によって取得された画像の処理の要否が制御部によって決定される。これにより、顕微鏡に不慣れな操作者であっても顕微鏡およびカメラの性能を十分に発揮した高質な画像を容易に取得することができる
【0011】
また、上記発明においては、前記可変光学素子が、光源からの照明光を標本に向かって通過させる開口を有し該開口の開口径を変化させることにより開口数が可変であるコンデンサであることとしてもよい。
【0012】
また、上記発明においては、前記制御部は、前記顕微鏡の最高分解能の値が前記撮像部の分解能の値よりも小さい場合に、前記コンデンサの開口数を
、前記顕微鏡に装着されている対物レンズの開口数
の0.8倍としたときの前記顕微鏡の分解能である基準分解能の値と前記撮像部の分解能の値とを比較し、前記基準分解能の値が前記撮像部の分解能の値よりも大きい場合に、前記コンデンサの開口数を前記対物レンズの開口数の0.8倍にさせ、前記基準分解能の値が前記撮像部の分解能の値以下の場合に、前記コンデンサの開口数を前記顕微鏡の分解能が前記撮像部の分解能と一致する開口数にさせるとともに前記画像補正部に前記画像を処理させることとしてもよい。
【0013】
顕微鏡の観察像の分解能とコントラストとのバランスは、対物レンズの開口数NA
OBJとコンデンサの開口数NA
CONとの比がNA
OBJ:NA
CON=1:0.8であるときに最良になるとされている。撮像部の分解能の値がこの条件における顕微鏡の基準分解能の値よりも小さい場合、すなわち撮像部の分解能が顕微鏡の基準分解能よりも高い場合は、顕微鏡の分解能を基準分解能とすることにより、画像補正部によって画質を補正せずとも十分に良質な画像を取得することができる。一方、撮像部の分解能の値が顕微鏡の基準分解能の値以上の場合、すなわち撮像部の分解能が顕微鏡の基準分解能以下と低い場合は、顕微鏡の分解能を撮像部の分解能に一致させることにより観察像の分解能を撮像部の性能に対して必要十分としつつ、観察像のコントラストを向上することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記画像補正部が、前記観察像のコントラストを強調するように前記画像を処理することとしてもよい。
顕微鏡の分解能を最高とするためにコンデンサの開口径を最大としたときに、顕微鏡の観察像のコントラストが低下する。したがって、画像処理部が画像内の観察像のコントラストを強調することにより、より効果的に画質を向上することができる。
【0018】
また、本発明は、開口数が可変な可変光学素子を有し前記開口数を変更することにより分解能を調節可能な顕微鏡と、該顕微鏡による観察像の画像を取得する撮像部と、該撮像部によって取得された画像を処理する画像補正部と、前記可変光学素子の開口数に基づく前記顕微鏡の最高分解能の値と前記撮像部の分解能の値と
を比較し、その比較結果に応じて前記可変光学素子の開口数を演算するとともに前記画像補正部
に前記画像を処理させるか否かを制御する制御部と、該制御部によって演算された前記開口数を操作者に対して提示する表示部とを備える顕微鏡システムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、顕微鏡に不慣れな操作者であっても顕微鏡および撮像部の性能を十分に発揮した高質な画像を容易に取得することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡システム1について
図1〜
図4を参照して説明する。
本実施形態に係る顕微鏡システム1は、
図1に示されるように、顕微鏡2と、該顕微鏡2の観察像を撮影して画像を取得するカメラ(撮像部)3と、該カメラ3によって取得された画像を処理する画像補正ユニット(画像補正部)4と、顕微鏡2に装着されている光学素子およびカメラ3の仕様情報を取得する操作部5と、顕微鏡2および画像補正ユニット4を制御する制御ユニット(制御部)6とを備えている。
【0022】
顕微鏡2は、ステージ21上の標本Aからの観察光を集光する対物レンズ22と、コンデンサ(可変光学素子)23と、対物レンズ22によって集光された観察光の像を変倍する中間変倍装置24と、カメラ3が接続されるアダプタ25を備えている。対物レンズ22は、レボルバ26によって倍率や開口数などの仕様が異なるものが複数保持され、該レボルバ26の作動によって光路に配置される対物レンズ22が切り替えられるようになっている。
【0023】
コンデンサ23は、図示しない絞りを有し、該絞りを通過した図示しない光源からの照明光をステージ21上の標本Aに集光する。標本Aを透過した観察光は対物レンズ22によって集光され、中間変倍装置24によって変倍され、アダプタ25に接続されたカメラ3に導かれる。
【0024】
ここで、コンデンサ23の絞りの開口径は可変であり、駆動部9によって絞りの開口径が変更されることにより標本Aに照射する照明光の光量が調節されるようになっている。以下、この絞りの開口径をコンデンサ23の開口径ともいう。コンデンサ23は、開口径が大きいほどその開口数が大きくなりカメラ3に導かれる観察像の分解能は高くなるが、観察像のコントラストは低下する。一方、コンデンサ23の開口径が小さいほどその開口数が小さくなりカメラ3に導かれる観察像の分解能は低くなるが、観察像のコントラストは高くなる。駆動部9は、コンデンサ23の開口数と開口径とを対応付けて記憶し、制御ユニット6が備える演算部63(後述)から指示された開口数となるようにコンデンサ23の開口径を変更する。
【0025】
カメラ3は、COMSイメージセンサやCCDイメージセンサのような撮像素子31と、前処理部32と、増幅部33と、AD変換部34とを備えている。撮像素子31は、顕微鏡2の観察像を光電変換し、得られた画像の電気信号を前処理部32に出力する。前処理部32を介して増幅部33に入力された画像の電気信号は、増幅部33において増幅された後、AD変換部34においてデジタル信号に変換されて画像補正ユニット4に出力される。
【0026】
画像補正ユニット4は、カメラ3から入力された画像内の観察像のコントラストを強調するコントラスト強調部41と、画像内の観察像のエッジを強調する鮮鋭化処理部42とを備えている。コントラスト強調部41および鮮鋭化処理部42は、制御ユニット6から指示された補正パラメータに従ってそれぞれ画像に対して処理を施す。コントラスト強調部41および鮮鋭化処理部42よって処理された画像Gは、
図2に示されるように、表示部8に表示される。
【0027】
操作部5は、グラフィカルユーザインタフェイス(GUI)51を備え、該GUI51を表示部8に表示する。GUI51には、例えば、
図2に示されるように、各光学素子22〜25およびカメラ3の仕様情報が予め登録されたプルダウンリストが設定されている。操作者は、図示しないキーボードやマウス等の入力手段を使用し、プルダウンリストから該当する仕様情報を選択することにより、各光学素子22〜25およびカメラ3の仕様情報を操作部5に入力することができるようになっている。操作部5は、入力された仕様情報を記憶部7に記憶する。
【0028】
仕様情報としては、コンデンサ23の種類および開口数NA
CON、対物レンズ22の種類、倍率Z
OBJおよび開口数NA
OBJ、中間変倍装置24の種類および倍率Z
vma、アダプタ25の種類および倍率Z
AD、カメラ3の種類および撮像素子31の画素ピッチPが挙げられる。
【0029】
制御ユニット6は、記憶部7に記憶された仕様情報に基づいて顕微鏡2の分解能およびカメラ3の分解能をそれぞれ算出する顕微鏡分解能算出部61および撮像部分解能算出部62と、これら算出部61,62によって算出された2つの分解能に基づいて画像補正部4の補正パラメータおよび顕微鏡2の制御信号を演算する演算部63とを備えている。
【0030】
顕微鏡分解能算出部61は、記憶部7から光学素子22〜25の仕様情報を取得し、下記の数1に基づいて顕微鏡2の最高分解能の値R
MSmaxを算出する。数1において、NAは、対物レンズ22の開口数NA
OBJとコンデンサ23の最大開口数NA
CONmaxのうち小さい方である。また、λは、撮像素子31の撮像面に照射される光の波長である。
【0032】
また、顕微鏡分解能算出部61は、下記の数2に基づいて顕微鏡2の基準分解能の値R
MS0.8を算出する。この基準分解能の値R
MS0.8は、対物レンズ22の開口数NA
OBJとコンデンサ23の開口数NA
CONとの比が、NA
OBJ:NA
CON=1:0.8となるときの顕微鏡2の分解能の値である。一般に、これら2つの開口数NA
OBJ,NA
CONが上記の比率となるように設定されたときに、顕微鏡2の観察像の分解能とコントラストとのバランスが最良となり、高質な観察像が得られるとされている。
【0034】
撮像部分解能算出部62は、記憶部7から撮像素子31の仕様情報を取得し、下記の数3に基づいてカメラ3の分解能である撮像素子31の分解能の値R
CAMを算出する。
【0036】
演算部63は、顕微鏡分解能算出部61および撮像部分解能算出部62によってそれぞれ算出された2つの分解能の値R
MSmaxとR
CAMとを比較する。演算部63は、R
MSmax≧R
CAMであった場合、コンデンサ23の開口数を最大にするように駆動部9に指示する。これとともに、演算部63は、コントラスト強調部41による補正パラメータを算出し、算出された補正パラメータをコントラスト強調部41に出力する。
【0037】
すなわち、顕微鏡2の最高分解能がカメラ3の分解能と同等またはカメラ3の分解能に対して劣っている場合、顕微鏡2は設定可能な分解能の範囲内において最高の分解能に設定される。そして、カメラ3によって取得された画像に強調処理が施されることにより、カメラ3の性能に対して不十分であった画像の画質が改善される。このときに、コンデンサ23の開口径の拡大に伴って観察像のコントラストが低下する。そこで、画像の強調処理としてコントラストを強調する処理が採用されることにより、画質が効果的に改善される。
【0038】
一方、演算部63は、R
MSmax<R
CAMであった場合、続いて顕微鏡2の基準分解能の値R
MS0.8とカメラ3の分解能の値R
CAMと比較する。演算部63は、R
MS0.8≦R
CAMであった場合、顕微鏡2の分解能がカメラ3の分解能と同一となるコンデンサ23の開口数NA
CONsetを下記の数4に基づいて算出し、コンデンサ23の開口数を算出された開口数NA
CONsetとするように駆動部9に指示する。これとともに、演算部63は、鮮鋭化処理部42による補正パラメータを算出し、算出された補正パラメータを鮮鋭化処理部42に出力する。
【0040】
顕微鏡2の最高分解能がカメラ3の分解能よりも優れている場合、カメラ3の分解能を超過した分の顕微鏡2の分解能は、カメラ3により取得される画像の画質の分解能の向上に寄与しない。したがって、この超過した分の顕微鏡2の分解能を差し引くようにコンデンサ23の開口径を絞ることにより、カメラ3の性能に対して観察像の分解能を必要十分としつつコントラストを向上することができる。このときに、カメラ3によって取得される画像の画質は顕微鏡2の性能に対して劣ったものとなるが、画像にエッジを強調する処理が施されることにより顕微鏡2の性能に対して不十分であった画像の画質が向上され、顕微鏡2の最高分解能と同等の精細さを有するようになる。
【0041】
一方、演算部63は、R
MS0.8>R
CAMであった場合、コンデンサ23の開口数を、対物レンズ22の開口数NA
OBJを0.8倍した開口数とするように駆動部9に指示する。これにより、分解能とコントラストの両方が十分に良好な顕微鏡2の観察像が撮像素子31によって撮影される。
【0042】
次に、このように構成された顕微鏡システム1の作用について
図3を参照して説明する。
操作者は、顕微鏡システム1の電源を投入したときや、レボルバ26を操作して光路に配置する対物レンズ22を切り替えたとき、カメラ3やコンデンサ23などを交換したときに、顕微鏡2に装着されている各光学素子22〜25およびカメラ3の仕様情報を操作部5に入力する(ステップS1)。
【0043】
次に、操作者は、例えば、操作部5に設けられた図示しないスイッチなどを操作することにより、顕微鏡システム1による画質の自動調整機能を有効とする(ステップS2)。これにより、顕微鏡システム1は、以下に説明するコンデンサ23の開口数および画像補正ユニット4による画像処理条件の最適化を実行する。
【0044】
顕微鏡システム1は、まず、顕微鏡2の最高分解能の値R
MSmaxとカメラ3の分解能の値R
CAMとを算出してこれらR
MSmaxとR
CAMとを比較する(ステップS3)。R
MSmax≧R
CAMであった場合、すなわち顕微鏡2の最高分解能がカメラ3の分解能以下と低
い場合(ステップS3のYES)、コンデンサ23の開口数を最大にすることにより顕微鏡2の分解能の値を最高分解能の値R
MSmaxに設定する(ステップS4)。このときに、カメラ3によって撮影される観察像のコントラストは、顕微鏡2が有する性能に対して最高ではなくなる。そこで、顕微鏡システム1は、カメラ3が取得した画像に対してコントラスト強調部41によりコントラストを強調する処理を施してから、画像を表示部8に表示する。
【0045】
一方、顕微鏡システム1は、R
MSmax<R
CAMであった場合、すなわち顕微鏡2の最高分解能がカメラ3の分解能よりも高い場合(ステップS3のNO)、続いて顕微鏡2の基準分解能の値R
MS0.8とカメラ3の分解能の値R
CAMとを比較する(ステップS5)。R
MS0.8≦R
CAMであった場合、すなわち顕微鏡2の基準分解能がカメラ3の分解能以上と高い場合(ステップS5のYES)、顕微鏡システム1は、顕微鏡2の分解能をカメラ3の分解能に一致させる(ステップS6)。このときに、カメラ3によって撮影される観察像の分解能は、顕微鏡2が有する性能に対して最高ではなくなる。そこで、顕微鏡システム1は、カメラ3が取得した画像に対して鮮鋭化処理部42により鮮鋭化処理を施してから表示部8に表示する。
【0046】
一方、R
MS0.8>R
CAMであった場合、すなわち顕微鏡2の基準分解能がカメラ3の分解能よりも低い場合(ステップS5のNO)、顕微鏡システム1は、コンデンサ23の開口数が対物レンズ22の開口数NA
OBJの0.8倍となるようにコンデンサ23の開口数を調節する(ステップS7)。このときに、カメラ3によって撮影される観察像は顕微鏡2の性能が最高に発揮された高質なものであり、カメラ3によって取得された画像は画像補正ユニット4により画像処理を施さずとも十分に高質なものとなる。
【0047】
このように、本実施形態によれば、光学素子22〜25やカメラ3が交換されたときに、カメラ3の分解能に対して顕微鏡2の有する光学性能が常に十分に発揮されるようにコンデンサ23の開口数が最適化され、顕微鏡2の光学性能がカメラ3の性能に劣っている場合には画像処理によって画質が改善される。さらに、コンデンサ23を最適化した結果低下した顕微鏡2の観察像のコントラストはコントラスト強調部41によって適切に補償される。このように、操作者がコンデンサ23の開口数や画像処理ユニット4による画像処理の種類および補正パラメータを調整せずとも、顕微鏡2およびカメラ3が有する光学性能を十分に発揮した画像を容易に得ることができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、顕微鏡2に装着されている光学素子22〜25およびカメラ3の仕様情報を操作者が操作部5に入力することとしたが、これに代えて、
図4に示されるように、顕微鏡2に装着されている光学素子22〜25およびカメラ3を認識してこれら22〜25,3からその仕様情報を取得する光学素子認識部10を備えることとしてもよい。この場合、各光学素子22〜25およびカメラ3はその仕様情報が記録されたバーコードなどの識別部(図示略)を有する。
【0049】
光学素子認識部10は、例えば、各光学素子22〜25およびカメラ3が顕微鏡2に装着されたときに識別部と対応する位置に設けられたバーコードリーダである。光学素子認識部10は、識別部に記憶されている仕様情報を読み取り、読み取った仕様情報を記憶部7に記憶する。
このように構成された第1の変形例に係る顕微鏡システム1’によれば、操作者に必要とされる操作をさらに減らすことができる。
【0050】
また、本実施形態においては、演算部63がコンデンサ23の最適な開口数を算出した後、駆動部9がコンデンサ23の開口数を調整することとしたが、これに代えて、演算部63は、算出されたコンデンサ23の開口数または該開口数に対応する開口径を表示部8に表示することとしてもよい。
このように構成された第2の変形例によれば、操作者は、表示部8に提示された開口数または開口径に従ってコンデンサ23を調節するだけでよいので、顕微鏡2の操作に不慣れな操作者であっても簡単に顕微鏡2を最適な設定として高質な画像を取得することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、ステップS7において、カメラ3によって取得された画像に画像処理を施さずに表示部8に表示することとしたが、これに代えて、画像処理ユニット4によって画像処理を施してから表示部8に表示することとしてもよい。
このように構成された第3の変形例によれば、ステップS7において、例えば、鮮鋭化処理部42によって画像を鮮鋭化処理することにより、基準分解能と同等の精細さを有する画像を最終的に得ることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る顕微鏡システム1”について、
図5および
図6を参照して説明する。本実施形態においては、上述した第1の実施形態に係る顕微鏡システム1と異なる構成について主に説明し、共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施形態に係る顕微鏡システム1”は、
図5に示されるように、画像補正ユニット4から入力されてきた画像の画質の良否を判定する画質判定ユニット11を備えている点において、第1の実施形態に係る顕微鏡システム1と異なる。
画質判定ユニット11は、画像内のフレアの有無を判定するフレア判定部12と、画像内のケラレの有無を判定するケラレ判定部13と、画像内のゴミおよびキズの有無を判定するゴミ・キズ判定部14とを備えている。
【0054】
フレアは、顕微鏡2が備える光学素子からの反射光が観察光に混入することにより画像の一部が明るくなる現象である。フレア判定部12は、画像補正ユニット4から入力されてきた画像を複数の領域に区分し、各領域の平均輝度値と画像全体の平均輝度値とを算出する。そして、領域の平均輝度値から画像全体の平均輝度値を減算した差が所定の閾値α以上である場合に、当該領域においてフレアが発生していると判定する。フレア判定部12は、判定結果を演算部63に出力する。
【0055】
ケラレは、撮像素子31の周辺部において観察光の照射量が不足することにより画像の周辺部が他の部分に比べて暗くなる現象である。ケラレ発生部13は、画像補正ユニット4から入力されてきた画像を複数の領域に区分し、各領域の平均輝度値と画像全体の平均輝度値とを算出する。そして、画像全体の平均輝度値から領域の平均輝度値を減算した差が所定の閾値βより大きい場合に、当該領域においてケラレが発生していると判定する。ケラレ判定部13は、判定結果を演算部63に出力する。
【0056】
コンデンサ23の開口径を絞ったときに、光路の途中に配置された光学素子に付着したゴミや該光学素子に形成されたキズの像が観察像に映り込むことがある。ゴミ・キズ判定部14は、画像補正ユニット4から入力されてきた画像を複数の領域に区分し、各領域の平均輝度値と画像全体の平均輝度値とを算出する。そして、画像全体の平均輝度値と領域の平均輝度値との差の絶対値が所定の閾値γ以上である場合に、当該領域にゴミ・キズの像が存在していると判定する。ゴミ・キズ判定部14は、判定結果を演算部63に出力する。
【0057】
演算部63は、各判定部12,13,14による判定結果に基づいてコンデンサ23の開口数と画像補正ユニット4による補正パラメータを再演算する。
具体的には、演算部63は、フレア判定部12によってフレアが発生していると判定された場合に、下記の数5に基づいてコンデンサ23の開口数NA
CONfra_iを算出する。そして、演算部63は、コンデンサ23の開口数を算出された開口数NA
CONfra_iとするように駆動部9に指示する。数5において、pは一度の調節において変化させるコンデンサ23の開口数の量を示す係数であり、iはフレア判定部12による判定回数であり、NA
CON3はその時点におけるコンデンサ23の開口数である。
【0059】
また、演算部63は、ケラレ判定部13によってケラレが発生していると判定された場合に、下記の数6に基づいてコンデンサ23の開口数NA
CONkrr_jを算出する。そして、演算部63は、コンデンサ23の開口数を算出された開口数NA
CONkrr_jとするように駆動部9に指示する。数6において、qは一度の調節において変化させるコンデンサ23の開口数の量を示す係数であり、jはケラレ判定部13による判定回数であり、NA
CON4はその時点におけるコンデンサ23の開口数である。
【0061】
また、演算部63は、ゴミ・キズ判定部13によってゴミ・キズの像が存在していると判定された場合に、下記の数7に基づいてコンデンサ23の開口数NA
CONgmkz_kを算出する。そして、演算部63は、コンデンサ23の開口数を算出された開口数NA
CONgmkz_kとするように駆動部9に指示する。数7において、rは一度の調節においてコンデンサ23の開口数を変化させる量を示す係数であり、kはゴミ・キズ判定部14による判定回数であり、NA
CON5はその時点におけるコンデンサ23の開口数である。
【0063】
演算部63は、以上のようにコンデンサ23の開口数NA
CONfra_i,NA
CONkrr_j,NA
CONgmkz_kの演算を繰り返していく過程で、開口数NA
CONfra_i,NA
CONkrr_j,NA
CONgmkz_kがコンデンサ23の最大開口数NA
CONmax以上となった場合には、コンデンサ23の開口数を最大開口数NA
CONmaxにするように駆動部9に指示する。これとともに、演算部63は、画像補正ユニット4から画質判定ユニット11への画像の出力を停止させて判定部12,13,14による画質の判定を終了させる。
【0064】
次に、このように構成された顕微鏡システム1”の作用について
図6を参照して説明する。
本実施形態に係る顕微鏡システム1”は、ステップS1〜ステップS7までは第1の実施形態と同様に動作する。
【0065】
顕微鏡システム1”は、ステップS1〜S7によって最適化された条件で得られた画像について、フレア発生部12によりフレアの有無を判定し(ステップS8)、ケラレ判定部13によりケラレの有無を判定し(ステップS10)、ゴミ・キズ判定部14によりゴミ・キズの有無を判定する(ステップS12)。
【0066】
そして、フレアまたはケラレの発生、もしくはゴミ・キズの像の存在が画像内に確認された場合(ステップS8,10,12のYES)、顕微鏡システム1”はコンデンサ23の開口径を一定量p,q,rずつ拡大し、このコンデンサ23の開口径の拡大に伴う画質の低下を補うようにコントラスト強調部41および鮮鋭化処理42によって画像に処理を施す(ステップS9,11,13)。コンデンサ23の開口径が拡大されることにより、画像内に発生していたフレアまたはケラレは低減し、もしくはゴミ・キズの像は目立たなくなる。顕微鏡システム1”は、画像内からフレア、ケラレまたはゴミ・キズの像が十分に消失するまで(ステップS8,10,12のNO)ステップS9,S11,S13を繰り返す。
【0067】
このように、本実施形態によれば、コンデンサ23の開口数を最適化したときに、フレアやケラレが発生したり、光路に配置されているレンズ等に付着したゴミ・キズの像が観察像に映り込んだりすることがある。このような場合には、コンデンサ23の開口数を、最適化された開口数から徐々に変化させていくことにより、観察像のコントラストの低下を最小限に抑えながらフレア、ケラレまたはゴミ・キズの像を画像内から除去することができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、最初にフレアの発生の有無を判定し、2番目にケラレの発生の有無を判定し、3番目にゴミ・キズの像の有無を判定することとしたが、これらの判定の順番は適宜変更可能である。また、本実施形態においては、第1の実施形態に係る顕微鏡システム1の構成をベースとした顕微鏡システム1”について説明したが、第1の実施形態において説明した第1〜第3の変形例を適用することもできる。