(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表示画面を有する表示パネルと、前記表示画面の前方に位置して前記表示画面の一部を区画する窓部を有する複数の区画部材と、少なくとも1個の区画部材を前記表示画面の前方で移動させる駆動機構とを有し、
前記駆動機構によって、2個の区画部材が、前記表示画面に沿って間隔を空けて位置する離間姿勢と、前記窓部が重なる重複姿勢とに設定され、前記重複姿勢に移行するときに、第1の区画部材が前記表示画面から離れる前進姿勢へ移動させられ、前記重複姿勢では、前進姿勢の第1の区画部材と前記表示画面との間に第2の区画部材が位置することを特徴とする車両用表示装置。
前記変換機構は、第2の区画部材に設けられたラックと、前記ラックの移動力で回転させられる中間歯車と、前記中間歯車によって移動させられる切換え部材と、前記切換え部材に設けられてこの切換え部材の移動力を第1の区画部材を前進姿勢に移動させる移動方向に変換する変換カムとを有している請求項2記載の車両用表示装置。
第1の区画部材が前記表示画面に接近する後退姿勢のときに、第1の区画部材と第2の区画部材は、共に前記表示画面に接触し、または前記表示画面から同じ距離だけ離れている請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載されているように、液晶表示パネルの前方にリング状の立体的な部材を配置することで、表示に立体感を与えることができ、リング状の部材で囲まれている領域に目盛りを表示することで、計器を直感的に視認しやすくなる。
【0008】
しかし、特許文献1に記載された車両用表示装置は、液晶ディスプレイの前方に設けられた1つのリング状の表示仕切り部材が横方向にわずかな距離移動するだけであるため、表示内容を多様に変化させることができない。
【0009】
特許文献2に記載された車両用表示装置は、実体メータを表示装置の内方へ向けて倒して収納する構造であるため、装置の奥行きが大きくなり実用的ではない。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、表示内容を種々に変化させることができ、特に計器類などを表示するための立体的な区画部材を2つ表示するモードと1つだけ表示するモードに切換えることができ、しかも奥行き寸法を小さく構成することができる車両用表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、表示画面を有する表示パネルと、前記表示画面の前方に位置して前記表示画面の一部を区画する窓部を有する複数の区画部材と、少なくとも1個の区画部材を前記表示画面の前方で移動させる駆動機構とを有し、
前記駆動機構によって、2個の区画部材が、前記表示画面に沿って間隔を空けて位置する離間姿勢と、前記窓部が重なる重複姿勢とに設定され
、前記重複姿勢に移行するときに、第1の区画部材が前記表示画面から離れる前進姿勢へ移動させられ、前記重複姿勢では、前進姿勢の第1の区画部材と前記表示画面との間に第2の区画部材が位置することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の車両用表示装置は、表示画面の前方に2つの区画部材を設けて、窓部に囲まれた立体的な計器類などの表示を2箇所に配置する態様と、区画部材を1つにして立体的な計器類などの表示を1箇所にする態様とに切換えることができる。立体的な計器類などの表示を1箇所にする態様は、2つの区画部材を表示画面の前方で重ねることで実現できるため、区画部材を表示画面の前方から退避させる必要がなくなり、駆動機構の構造を簡単にでき、車両用表示装置の奥行き寸法も短くできる。
【0014】
本発明は、第2の区画部材が重複姿勢へ向けて移動するときに、その移動力を第1の区画部材を前進姿勢へ移動させる力に変換する変換機構が設けられているものが好ましい。
【0015】
例えば、前記変換機構は、第2の区画部材に設けられたラックと、前記ラックの移動力で回転させられる中間歯車と、前記中間歯車によって移動させられる切換え部材と、前記切換え部材に設けられてこの切換え部材の移動力を第1の区画部材を前進姿勢に移動させる移動方向に変換する変換カムとを有している。
【0016】
第2の区画部材の移動力を利用して、第1の区画部材を前進姿勢へ向けて移動させることで、第1の区画部材を前後進させるためのモータなどの駆動源が不要になる。
【0017】
本発明は、第1の区画部材が前記表示画面に接近する後退姿勢のときに、第1の区画部材と第2の区画部材は、共に前記表示画面に接触し、または前記表示画面から同じ距離だけ離れていることが好ましい。
【0018】
上記構成により、表示画面の前方に2つの区画部材が位置しているときに、2つの区画部材を同じ立体感で目視することができる。
【0019】
本発明は、第1の区画部材が、前記表示画面に沿って移動可能であるものとして構成できる。この場合に、前記駆動機構によって、重複姿勢となっている第1の区画部材と第2の区画部材とを一緒に移動させることができる。
【0020】
ただし、本発明は、第1の区画部材が前進姿勢と後退姿勢との間で前後方向へのみ移動し、第1の区画部材が表示画面に沿う方向へ移動しないものであってもよい。
【0021】
本発明は、前記区画部材は、前記窓部を囲む枠体と、前記枠体から延びて前記駆動機構に連結される支持体とを有しており、前記枠体は非透明または半透明であり、前記支持体は透明であることが好ましい。さらに、前記支持体の表面に反射防止処理が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、窓部を有する区画部材を表示画面の前方に2つ備えたので、計器類などの表示内容を種々に変化させることができる。特に、計器類などを表示するための立体的な区画部材を2つ表示と1つ表示とに切換えることができため、必要に応じて計器類以外の種々の表示も可能である。また、区画部材を表示画面から外れる位置へ退避させる必要がないので、装置の奥行き寸法を過大にする必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1と
図3などに示す本発明の実施の形態の車両用表示装置1は、表示パネル2を有している。表示パネル2は枠部3とこの枠部3で囲まれた表示画面4を有している。車両用表示装置1は、自動車などの各種車両の運転席の前方に配置され、表示画面4がY1方向へ向けられる。運転者が目視する視線の向きはY2方向である。表示パネル2はバックライトを有する液晶表示パネルまたはエレクトロルミネッセンス表示パネルなどである。
【0025】
車両用表示装置1は、運転席の前方に設けられたダッシュボードに埋設されている。ダッシュボードの表示窓に表示画面4が現れ、表示画面4以外の部分はダッシュボードに埋設されている。よって、運転者は主に表示画面4の領域を目視でき、表示画面4以外の部分は、運転席から見えないように隠されている。
【0026】
以下の説明では、車両用表示装置1のY1方向を前方、Y2方向を後方、X1方向を左方向、X2方向を右方向、Z1方向を上方、Z2方向を下方とする。
【0027】
車両用表示装置1は筐体5を有している。筐体5は金属板を折り曲げて形成されている。筐体5には、上下方向(Z1−Z2方向)と左右方向(X1−X2方向)に延びる背板部5aと、左側(X1側)で背板部5aの上端から前方(Y1方向)に向けて直角に折り曲げられた上部支持板部5bと、左側で背板部5aの下端から前方に向けて直角に折り曲げられた下部支持板部5cとが設けられている。筐体5には、さらに背板部5aの上端から前方に向けて折り曲げられた2つの上部支持片5d,5eが設けられている。
【0028】
図1に示すように、筐体5の背板部5aには、複数の支持ブラケット6が固定されており、表示パネル2の背部が前記支持ブラケット6の先部に固定されている。その結果、表示パネル2は、筐体5の背板部5aよりも前方に離れた位置に固定されて設置されている。
【0029】
表示パネル2の前方に第1の区画部材10と第2の区画部材20とが設けられている。第1の区画部材10は、輪形状の枠体11を有し、枠体11で囲まれた部分が円形の窓部12である。枠体11の上端から上部支持体13が上向きに一体に形成され、枠体11の下端から下部支持体14が下向きに一体に形成されている。第2の区画部材20は、輪形状の枠体21を有し、枠体21で囲まれた部分が円形の窓部22である。枠体21の上端から上部支持体23が上向きに一体に形成され、枠体21の下端から下部支持体24が下向きに一体に形成されている。
【0030】
第1の区画部材10の枠体11と第2の区画部材20の枠体21の外径と内径は同じであり、
図8に示すように枠体11と枠体21の断面形状と断面積も同じである。したがって、第1の区画部材10の窓部12の開口径および開口面積と、第2の区画部材20の窓部22の開口径および開口面積とが同じである。
【0031】
第1の区画部材10と第2の区画部材20は透明な合成樹脂材料で形成されている。第1の区画部材10の枠体11と第2の区画部材20の枠体11の表面は塗装や無電解メッキによって金属色などに着色されて、枠体11と枠体21が非透明または半透明である。一方、第1の区画部材10の上部支持体13と下部支持体14および第2の区画部材20の上部支持体23と下部支持体24は着色処理がされておらず、合成樹脂材料のままであり透明である。
【0032】
本明細書での透明とは、例えば全光線透過率が80%以上であることを意味し、非透明は全光線透過率がほぼ0%、半透明は全光線透過率が20〜60%程度を意味している。
【0033】
図3に示すように、表示画面4の前方(Y1方向)に非透明または半透明の立体的な枠体11と枠体21の全体が位置していると、窓部12と窓部22の開口領域の全域において、表示画面4の表示内容を目視することができる。さらに、枠体11と枠体21よりも外側の領域も、表示内容を目視することができる。
【0034】
図3に示すように、第1の区画部材10の上部支持体13と下部支持体14の一部ならびに第2の区画部材20の上部支持体23と下部支持体24の一部が、表示画面4に重ねられているが、上部支持体13,23と下部支持体14,24が透明であるため、この部分で表示画面4の映像を目視することができる。特に、上部支持体13,23と下部支持体14,24のY1方向に向く表面に反射防止処理を施しておくと、表示画面4の前方に枠体11と枠体21のみが存在しているように見え、上部支持体13,23と下部支持体14,24がほとんど見えなくなる。
【0035】
車両用表示装置1に、第1の区画部材10を移動させる第1の駆動機構30が搭載されている。
【0036】
図1と
図2に示すように、第1の駆動機構30に移動支持体31が設けられている。移動支持体31は金属板を折り曲げて形成されており、左右方向(X1−X2方向)および上下方向(Z1−Z2方向)に沿って延びる垂直板部31aと、垂直板部31aの上端から前方に向けて直角に折り曲げられた上端部31bと、下端から前方に向けて直角に折り曲げられた下端部31cとを有している。
【0037】
図1と
図7に示すように、移動支持体31の上端部31bは筐体5の上部支持板部5bの下面に重ねられ、移動支持体31の下端部31cは筐体5の下部支持板部5cの上に重ねられている。
【0038】
図1に示すように、移動支持体31の上端部31bには上方へ突出する上部制御ピン32aが固定されている。筐体5の上部支持板部5bには前後方向(Y1−Y2方向)に延びる支持長穴5fが形成されており、上部制御ピン32aが支持長穴5fに摺動自在に挿入されている。
図3に示すように、移動支持体31の下端部31cには下方へ突出する2つの下部制御ピン32b,32bが固定されている。
図1に示すように、筐体5の下部支持板部5cの2箇所に、前後方向(Y1−Y2方向)に延びる支持長穴5g,5gが形成されており、下部制御ピン32b,32bがそれぞれ支持長穴5g,5gに摺動自在に挿入されている。
【0039】
よって、移動支持体31は、筐体5の上部支持板部5bと下部支持板部5cとの間に挟まれて、前後方向(Y1−Y2方向)へのみ移動できるように支持されている。
【0040】
図2に示すように、移動支持体31の垂直板部31aには矩形状の切欠き部31dが形成され、
図1に示す表示パネル2の左側部は切欠き部31dの内部に位置している。よって、移動支持体31は、表示パネル2に当たることなく前後方向へ移動可能である。
【0041】
図2に示すように、移動支持体31の上端部31bの下面に第1の案内部材33が固定されている。
図7に示すように、第1の案内部材33には下向きに開放された案内溝33aが形成されている。案内溝33aは左右方向(X1−X2方向)に直線状に延びている。第1の区画部材10の上部支持体13には上方に突出する摺動突起13aが一体に形成されており、この摺動突起13aが前記案内溝33aに摺動自在に挿入されている。
【0042】
図2に示すように、移動支持体31の垂直板部31aの下部に一対の軸受体34a,34bが固定されており、この軸受体34a,34bに第1のスクリュー軸35が回転自在に支持されている。第1のスクリュー軸35は軸中心が左右方向(X1−X2)に延びており、表面にスクリュー溝35aが形成されている。第1の区画部材10の下部支持体14の下端部に雌ねじ穴14aが形成されており、雌ねじ穴14aに第1のスクリュー軸35が挿通されている。
【0043】
第1のスクリュー軸35の左端部は、左側の軸受体34aの外側へ突出しており、この左端部にウオームホイール36が固定されている。移動支持体31の垂直板部31aに第1のモータ37が固定されており、第1のモータ37の出力軸に固定されたウオームがウオームホイール36に噛み合っている。移動支持体31に搭載されている第1のモータ37を動作させることで、移動支持体31上において、第1の区画部材10を左右方向(X1−X2方向)へ移動させることができる。
【0044】
車両用表示装置1に第2の区画部材20を移動させる第2の駆動機構40が設けられている。
【0045】
図1に示すように、第2の駆動機構40では、筐体5の上部支持片5d,5eの下面に第2の案内部材41が固定されている。
図7と
図8に示すように、第2の案内部材41に下向きに開放された案内溝41aが形成されている。案内溝41aは左右方向(X1−X2方向)へ直線的に延びている。
図8に示すように、第2の区画部材20の上部支持体23の上端部に摺動突起23aが一体に形成されており、摺動突起23aが案内溝41aに摺動自在に挿入されている。
【0046】
図1に示すように、筐体5の下部では、背板部5aに一対の軸受体42a,42bが固定されており、第2のスクリュー軸43が軸受体42a,42bに回転自在に支持されている。第2のスクリュー軸43は軸中心が左右方向(X1−X2方向)に延びており、表面にスクリュー溝43aが形成されている。第2の区画部材20の下部支持体24の下端部に雌ねじ穴24aが形成されており、第2のスクリュー軸43が雌ねじ穴24aに挿通されている。
【0047】
図1に示すように、第2のスクリュー軸43の右端部は右側の軸受体42bよりも右方向へ突出しており、この右端部にウオームホイール44が固定されている。筐体5の背板部5aに支持ブラケット45が固定され、支持ブラケット45に第2のモータ46が固定されている。第2のモータ46の出力軸にウオーム47が固定されており、このウオームがウオームホイール44と噛み合っている。第2のモータ46の動力により、第2の区画部材20を左右方向(X1−X2方向)へ移動させることができる。
【0048】
図1に示すように、車両用表示装置1には、第2の区画部材20の左右方向(X1−X2方向)の移動力を、移動支持体31の前後方向(Y1−Y2方向)への移動力に変換する変換機構50が設けられている。
【0049】
図1に示すように、変換機構50では、筐体5の上部支持板部5bの上面に上部切換え部材51が設置されている。上部切換え部材51には、左右方向に延びる一対の長穴52a,52bが形成されている。筐体5の上部支持板部5bに上方に向けられた一対の支持ピン53a,53bが固定されている。長穴52a,52bがそれぞれ支持ピン53a,53bに挿通されて、上部支持板部5bの上で上部切換え部材51が左右方向(X1−X2方向)へ直線的に往復移動できるようになっている。
【0050】
図1に示すように、筐体5の下部支持板部5cの下面に下部切換え部材55が設置されている。
図2に示すように、下部切換え部材55に、左右方向(X1−X2方向)へ直線的に延びる長穴56a,56bが形成されている。
図3に示すように、筐体5の下部支持板部5cには、下向きに設けられた一対の支持ピン57a,57bが固定されている。長穴56a,56bがそれぞれの支持ピン57a,57bに挿通されて、下部支持板部5cの下で下部切換え部材55が左右方向(X1−X2方向)へ直線的に往復移動できるようになっている。
【0051】
図2と
図7に示すように、筐体5の左側では背板部5aの前方に連結レバー61が設けられている。連結レバー61の中心部に軸受部62が設けられており、背板部5aの前面に固定された支持軸63に軸受部62が挿通され、連結レバー61が支持軸63を中心として回動自在に支持されている。
【0052】
図7に示すように、連結レバー61の上端部に連結ピン64が固定され、この連結ピン64が上部切換え部材51に回転自在に挿通されている。連結レバー61の下端部に連結ピン65が固定され、この連結ピン65が下部切換え部材55に回転自在に挿通されている。上部切換え部材51と下部切換え部材55は連結レバー61を介して連結されており、
図2において、下部切換え部材55が右方向(X2方向)へ移動すると、連結レバー61が支持軸63を中心として反時計回りに回動し、上部切換え部材51が左方向(X1方向)へ移動させられる。下部切換え部材55が左方向(X1方向)へ移動すると、連結レバー61が時計回りに回動し、上部切換え部材51が右方向(X2方向)へ移動させられる。
【0053】
図1と
図2に示すように、上部切換え部材51には上部変換カム58が形成されている。上部変換カム58は、右方向(X2方向)に向かうしたがって前方(Y1方向)へ延びる傾斜長穴である。移動支持体31の上端部31bから上方へ突出する前記上部制御ピン32aは、筐体5の上部支持板部5bに形成された前記支持長穴5fを通過して、上部変換カム58に摺動自在に挿通されている。
【0054】
図2に示すように、下部切換え部材55に一対の下部変換カム59,59が形成されている。下部変換カム59,59は、左方向(X1方向)に向かうにしたがって前方(Y1方向)へ延びる傾斜長穴である。移動支持体31の下端部31cから下方へ突出する一対の前記下部制御ピン32b,32bは、筐体5の下部支持板部5cに形成された前記支持長穴5g,5gを通過して、それぞれが下部切換え部材55の下部変換カム59,59に挿入されている。
【0055】
図2に示すように、下部切換え部材55に、左右方向に間隔を空けて一対のロック凹部66a,66bが形成されている。筐体5にはロック板ばね67が固定されており、その先部がロック凹部66aとロック凹部66bに選択的に嵌合できるようになっている。なお、ロック凹部66a,66bとロック板ばね67とから成るロック機構は、
図2のみに図示し他の図では図示を省略している。
【0056】
図2では、右側のロック凹部66aがロック板ばね67と嵌合して、下部切換え部材55が左方向(X1方向)へ移動して停止している。よって、下部切換え部材55と連結レバー61を介して連結されている上部切換え部材51が右方向(X2方向)へ移動した位置で停止している。このとき、上部切換え部材51に形成された上部変換カム58で上部制御ピン32aがY2方向へ移動させられ、下部切換え部材55に形成された下部変換カム59,59で下部制御ピン32b,32b(
図3参照)がY2方向へ移動させられて、移動支持体31とこれに搭載された第1の区画部材10が表示画面4に接近する後退姿勢となっている。
【0057】
下部切換え部材55が右方向(X2方向)へ移動して、左側のロック凹部66bがロック板ばねに嵌合して下部切換え部材55が停止すると、下部切換え部材55の移動力が連結レバー61を介して上部切換え部材51に伝達され、上部切換え部材51が左方向(X1方向)へ移動して停止する。このとき、上部切換え部材51に形成された上部変換カム58で上部制御ピン32aがY1方向へ移動させられ、下部切換え部材55に形成された下部変換カム59,59で下部制御ピン32b,32bがY1方向へ移動させられて、移動支持体31とこれに搭載された第1の区画部材10が表示画面4から前方に離れた前進姿勢となる。
【0058】
図1と
図3に示すように、筐体5の背板部5aの前面に支持軸71が固定され、支持軸71にピニオン歯車である中間歯車72が回転自在に支持されている。第2の区画部材20の下部支持体24の下端に第2のラック73が設けられ、下部切換え部材55の右端部に第1のラック74が設けられている。
図1と
図3に示すように、第1のラック74は中間歯車72と常に噛み合っている。
【0059】
第2の区画部材20が左方向(X1方向)へ移動すると、その移動途中で、第2のラック73が中間歯車72と噛み合い中間歯車72が回転させられ、第1のラック74に移動力が伝達されて、移動支持体31が右方向へ移動させられる。
【0060】
次に、前記車両用表示装置1の動作を説明する。
車両用表示装置1には、表示パネル2の表示画面4に表示される映像を変化させる表示用制御部と、第1の駆動機構のモータ37と第2の駆動機構40のモータ46を制御する切換え制御部とが設けられている。表示用制御部と切換え制御部は、主制御装置によって互いに連動して動作するように制御される。
【0061】
図1と
図2では、第1の区画部材10が左側(X1側)に位置し、第2の区画部材20が右側(X2側)に位置して、それぞれの区画部材10,20が第1の離間姿勢に設定されている。第1の離間姿勢では、第1の区画部材10の窓部12の全域が表示画面4と重なっており、第2の区画部材20の窓部22の全域が表示画面4と重なっている。
【0062】
図2に示すように、第1の離間姿勢では、第1の駆動機構30の下部切換え部材55に形成された右側のロック凹部66aがロック板ばね67に嵌合し、下部切換え部材55が左側へ移動した状態でロックされている。下部切換え部材55と連結レバー61を介して連結されている上部切換え部材51は右側へ移動した位置で動かないようにロックされている。したがって、下部切換え部材55に形成された下部変換カム59,59と上部切換え部材51に形成された上部変換カム51によって、移動支持体31がY2方向へ後退させられて保持されている。
【0063】
このとき、
図7に示すように、移動支持体31に搭載されている第1の区画部材10の枠体11は、表示画面4の表面に接触し、あるいは表示画面4の表面から前方にわずかに離れた後退姿勢に設定されている。
【0064】
第2の区画部材20は、表示画面4に沿って左右方向(X1−X2方向)へのみ移動するが、この第2の区画部材20の枠体21も、表示画面4の表面に接触し、あるいは表示画面4の表面から前方にわずかに離れた位置に設定されている。第1の区画部材10の枠体11と第2の区画部材20の枠体21が表示画面4から前方へ離れているものでは、枠体11と表示画面4との距離と、枠体21と表示画面4との距離が互いに等しい。
【0065】
第1の離間姿勢では、移動支持体31がY2方向へ後退しているが、
図7に示すように、第1の区画部材10の下部支持体14が第2のスクリュー軸43からわずかに離れており、第2のスクリュー軸43の回転が阻害されない。また、第1のスクリュー軸35と第2のスクリュー軸43が上下に離れて互いに干渉しないようになっている。
【0066】
図1と
図3に示すように、第1の区画部材10と第2の区画部材20とが第1の離間姿勢のとき、表示用制御部で表示パネル2の表示内容が制御され、表示画面4には、第1の区画部材10の窓部12の内部に計器画像81が表示され、第2の区画部材20の窓部22の内部に計器画像82が表示される。窓部12の内部に表示される計器画像81は速度計を表わしており、回転する指針画像81aと、この指針画像81aが指示する速度画像81bとが表示される。窓部22の内部に表示される計器画像82はエンジンの回転数計を表わしており、回転する指針画像82aと、この指針画像82aが指示する回転数画像82bが表示される。
【0067】
図1と
図3に示すように、計器画像81の前方に表示内容を囲む立体的な枠体11が配置され、計器画像82の前方に表示内容を囲む立体的な枠体21が配置されているため、立体的な機械式の計器類を目視しているのと同じ視覚を得ることができる。
【0068】
第1の区画部材10の枠体11の外側および第2の区画部材20の枠体の外側では、表示画面4に、冷却水温計や燃料計などの計器類の画像や、他の運転情報の画像を表示することができる。
【0069】
図1と
図3に示すように、第1の区画部材10と第2の区画部材20とが第1の離間姿勢のときに、切換え制御部において第1のモータ37と第2のモータ46を制御することで、枠体11と枠体21の左右の間隔を変えることができる。例えば、図示しない操作部を操作することで、枠体11と枠体21の間隔を広げたり狭めたりできる。このとき、切換え制御部と表示用制御部とが連動し、枠体11の移動に伴って計器画像81が窓部12の内部に位置できるように移動し、枠体21の移動に伴って計器画像82が窓部22の内分に位置できるように移動する。
【0070】
図6は、第1の区画部材10と第2の区画部材20が第2の離間姿勢となった状態を示している。
【0071】
第2の離間姿勢の設定は、第1のモータ37を動作させて第1のスクリュー軸35を回転させて、第1の区画部材10を左方向へ移動させ、第2のモータ46を動作させて第2のスクリュー軸43を回転させて、第2の区画部材20を右方向へ移動させることで設定される。
【0072】
第2の離間姿勢では、第1の区画部材10の枠体11の右半分が表示画面4の前方に位置し、左半分がダッシュボードなどの内部に入り込んで隠されている。第2の区画部材20の枠体21の左半分が表示画面4の前方に位置し、右半分がダッシュボードなどの内部に入り込んで隠されている。
【0073】
表示用制御部では、第2の離間姿勢が設定されると、表示画面4の中央部の表示領域83に車両の運行に必要な各種の情報が表示される。例えば、走行速度が数字画像で表示される。また第1の区画部材10の窓部12の内部の右半分の領域と、第2の区画部材20の窓部22の内部の左半分の領域に、冷却水温計や燃料計などを表わす画像、あるいはその他の各種情報を示す画像が表示される。
【0074】
図5は、第1の区画部材10と第2の区画部材20とが重なる重複姿勢が設定された状態を示しており、
図4は、
図3の第1の離間姿勢から
図5の重複姿勢に至る切換え動作を示している。
【0075】
重複姿勢を設定するときは、第1の区画部材10をいずれかの位置で停止させる。例えば、
図4に示すように、第1のモータ37を始動して第1の区画部材10を表示画面4の左側へ移動させて停止させる。次に、第2のモータ46を始動して、第2のスクリュー軸43を駆動し、第2の区画部材20を左方向へ移動させる。
図4に示すように、その移動過程で、第2の区画部材20の下部支持体24に設けられた第2のラック73が、中間歯車72に噛み合い、第2の区画部材20の左方向(X1方向)への移動力で中間歯車72が反時計方向へ回転させられる。
【0076】
中間歯車72が反時計方向へ回転すると、中間歯車72と噛み合っている第1のラック74がX2方向へ引かれ、下部切換え部材55が右方向(X2方向)へ移動させられる。また、下部切換え部材55と連結レバー61で連結されている上部切換え部材51が左方向(X1方向)へ移動させられる。下部切換え部材55に形成された下部変換カム59,59と上部切換え部材51に形成された上部変換カム58によって、移動支持体31がY1方向へ前進させられ、
図8に示すように、移動支持体31に搭載された第1の区画部材10の枠体11が表示画面4の表面から前方へ離れた前進姿勢に設定される。
【0077】
下部切換え部材55が右方向(X2方向)へ移動すると、
図2に示す左側のロック凹部66bがロック板ばね67に嵌合して、下部切換え部材55がロックされる。よって、第1の区画部材10の枠体11は、表示画面4から前方に離れた前進姿勢で保持される。
【0078】
さらに、第2のモータ46の動作が継続し、第2の区画部材20が左方向へ移動して、
図5と
図8に示すように、前進姿勢の第1の区画部材10と表示画面4との隙間の内部に第2の区画部材20が入り込み、その位置で第2の区画部材20が停止する。
図5に示すように、第1の区画部材10と第2の区画部材20とが重複姿勢になると、第1の区画部材10の枠体11と第2の区画部材20の枠体21とが重なり、第1の区画部材10の窓部12と第2の区画部材20の窓部22とが重なる。
【0079】
図5のように、前記重複姿勢では、表示画面4の前方にあたかも1個のリング状の枠体が存在しているように視認される。このとき、表示用制御部の制御動作で表示画面4に表示される画像が変化し、重複する窓部12,22の内部に、速度計またはエンジンの回転数計などが画像として表示される。また、表示画面4の右側の広い領域84に他の情報の画像が表示される。領域84には、例えばカーナビゲーション画像や速度を示す数字画像が表示される。
【0080】
図5に示すように第1の区画部材10と第2の区画部材20とが重複したまま、第1のモータ37と第2のモータ46を動作させると、枠体11と枠体21とを、前後に重なったまま一緒に左右に移動させることができる。
【0081】
図3に示す第1の離間姿勢、
図6に示す第2の離間姿勢および
図5に示す重複姿勢の設定は、運転者などが操作部材を操作することで人為的に設定してもよいし、または車両の速度が変化し、または車両が走行している道路のコンディションが変化したときなどに、主制御装置の判断で自動的に切り替わるようにしてもい。
【0082】
前記実施の形態では、表示画面4の前方に2つの区画部材10,20が設けられているが、表示画面4の前方に3つ以上の区画部材が設けられ、そのうちの2つが離間姿勢と重複姿勢とに変化させられるものであってもよい。