特許第5959209号(P5959209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959209
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】内部熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/00 20060101AFI20160719BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F28D7/00 A
   F28F1/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-11662(P2012-11662)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-152032(P2013-152032A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000158
【氏名又は名称】日軽熱交株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 崇雄
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−299932(JP,A)
【文献】 特開2011−021757(JP,A)
【文献】 特開2007−071426(JP,A)
【文献】 特開2007−255872(JP,A)
【文献】 特開2003−106793(JP,A)
【文献】 特開2002−098424(JP,A)
【文献】 特開2004−125340(JP,A)
【文献】 特開2004−177041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/00
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が蒸発、圧縮、凝縮、膨張の4行程で循環する冷凍サイクルに用いられ、高圧側の冷媒流路を列設した高圧側扁平管と、低圧側の冷媒流路を列設した低圧側扁平管と、を具備する内部熱交換器であって、
上記高圧側扁平管はU字状に屈曲されると共に、両端側の冷媒流入口側端部及び冷媒流出側端部が共に同一方向に円弧部を介して直状に傾斜して設けられ、
上記低圧側扁平管はU字状に屈曲されると共に、両端側の冷媒流入口側端部及び冷媒流出側端部が反対方向に円弧部を介して直状に傾斜して設けられ、
上記高圧側扁平管が上記低圧側扁平管に対して内側に配置され、上記高圧側扁平管及び低圧側扁平管のそれぞれの冷媒流入口側端部及び冷媒流出口側端部がヘッダーパイプに設けられたスリットを介してヘッダーパイプ内に挿入され、上記高圧側扁平管の冷媒流入口側端部に接続されるヘッダーパイプと、上記低圧側扁平管の冷媒流出口側端部に接続されるヘッダーパイプが、略同一線上に位置して膨張弁に取付可能なコネクタによって連結され、上記高圧側扁平管の冷媒流出口側端部に接続されるヘッダーパイプと、上記低圧側扁平管の冷媒流入口側端部に接続されるヘッダーパイプが、略同一線上に位置して膨張弁に取付可能なコネクタによって連結され、上記高圧側扁平管、低圧側扁平管ヘッダーパイプ及びコネクタがろう材を介して一体接合されてなり、
上記高圧側扁平管及び低圧側扁平管の冷媒流入口側端部の上記ヘッダーパイプ内への差し込み量が、ヘッダーパイプの内径の15%〜35%であり、
上記高圧側扁平管及び低圧側扁平管の厚さが8mm以下で、かつ、上記扁平管の厚さと幅の比が、1:4〜1:6であり、
上記高圧側扁平管の屈曲半径(R)、上記高圧側扁平管の厚さ(t1)及び上記低圧側扁平管の厚さ(t2)との関係が、2.5≦R/(t1+t2)/2≦4.5、かつ、1≦t2/t1≦3/2である、
ことを特徴とする内部熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の内部熱交換器において、
上記高圧側扁平管に列設される冷媒流路の面積(A1)と、上記低圧側扁平管に設けられる冷媒流路の面積(A2)とが、1≦A2/A1≦4である、ことを特徴とする内部熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内部熱交換器において、
上記ヘッダーパイプはろう材がクラッドされている、ことを特徴とする内部熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷媒を蒸発、圧縮、凝縮、膨張の4行程で循環する冷凍サイクルにおける内部熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置の冷媒回路によって例えば二酸化炭素等の冷媒を蒸発、圧縮、凝縮、膨張の4行程で循環する冷凍サイクルが形成されている。この冷媒回路において、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とを熱交換する内部熱交換器が使用されている。この内部熱交換器は、凝縮器で凝縮された高温高圧冷媒と、圧縮機に戻される低温低圧冷媒との間で熱交換を行うものである。
【0003】
従来のこの種の内部熱交換器には、それぞれ冷媒流路を列設した高圧側扁平管と低圧側扁平管とを積層してろう付けしたものが使用されている。また、この種の内部熱交換器において、限られたスペース内で冷媒流路を長くするために、高圧側扁平管と低圧側扁平管をU字型に形成して、高圧側扁平管と低圧側扁平管の冷媒流入口側端部と冷媒流出口側端部をヘッダータンクに接合している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
このうち、特許文献1に記載のものにおいては、U字型がヘッダータンク内の冷媒流通方向に対して直角な平面で切った断面が、3つの直線部とこれらを繋ぐ曲線からなる形状に形成されており、高圧側帯板チューブを低圧側帯板チューブの内側に配置して成型されている。
【0005】
また、特許文献2に記載のものにおいては、それぞれ冷媒流路を列設した高圧側の第1流路層と低圧側の第2流路層とをろう付けしたチューブ体をU字状に折り曲げて内部熱交換器を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−340485号公報(請求項4、段落0016,0035、図3
【特許文献2】特開2002−98486号公報(段落0090、図8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のU字型の内部熱交換器においては、U字型がヘッダータンク内の冷媒流通方向に対して直角な平面で切った断面が、3つの直線部とこれらを繋ぐ曲線からなる形状に形成されるため、冷媒流路を長くするためには、占有スペースを広くする必要がある。また、冷媒流路が3つの直線部とこれらを繋ぐ曲線からなるため、冷媒の圧力損失が生じる虞ある。
【0008】
また、特許文献2に記載のU字状の内部熱交換器においては、特許文献1に記載のものに比べて曲線部が少ないため、冷媒の圧力損失を抑制することができる。しかし、特許文献2の熱交換器は、高圧側の第1流路層と低圧側の第2流路層とをろう付けしたチューブ体をU字状に折り曲げて成形するため、曲げ加工により屈曲部に歪みが蓄積され、この歪みが起因して破損や流路変形による圧力損失増大が生じる虞がある。
【0009】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、圧力損失を抑制した小型で熱交換効率の優れた内部熱交換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、この発明の内部熱交換器は、冷媒が蒸発、圧縮、凝縮、膨張の4行程で循環する冷凍サイクルに用いられ、高圧側の冷媒流路を列設した高圧側扁平管と、低圧側の冷媒流路を列設した低圧側扁平管と、を具備する内部熱交換器であって、 上記高圧側扁平管はU字状に屈曲されると共に、両端側の冷媒流入口側端部及び冷媒流出側端部が共に同一方向に円弧部を介して直状に傾斜して設けられ、上記低圧側扁平管はU字状に屈曲されると共に、両端側の冷媒流入口側端部及び冷媒流出側端部が反対方向に円弧部を介して直状に傾斜して設けられ、上記高圧側扁平管が上記低圧側扁平管に対して内側に配置され、上記高圧側扁平管及び低圧側扁平管のそれぞれの冷媒流入口側端部及び冷媒流出口側端部がヘッダーパイプに設けられたスリットを介してヘッダーパイプ内に挿入され、上記高圧側扁平管の冷媒流入口側端部に接続されるヘッダーパイプと、上記低圧側扁平管の冷媒流出口側端部に接続されるヘッダーパイプが、略同一線上に位置して膨張弁に取付可能なコネクタによって連結され、上記高圧側扁平管の冷媒流出口側端部に接続されるヘッダーパイプと、上記低圧側扁平管の冷媒流入口側端部に接続されるヘッダーパイプが、略同一線上に位置して膨張弁に取付可能なコネクタによって連結され、上記高圧側扁平管、低圧側扁平管ヘッダーパイプ及びコネクタがろう材を介して一体接合されてなり、上記高圧側扁平管及び低圧側扁平管の冷媒流入口側端部の上記ヘッダーパイプ内への差し込み量が、ヘッダーパイプの内径の15%〜35%であり、上記高圧側扁平管及び低圧側扁平管の厚さが8mm以下で、かつ、上記扁平管の厚さと幅の比が、1:4〜1:6であり、上記高圧側扁平管の屈曲半径(R)、上記高圧側扁平管の厚さ(t1)及び上記低圧側扁平管の厚さ(t2)との関係が、2.5≦R/(t1+t2)/2≦4.5、かつ、1≦t2/t1≦3/2である、ことを特徴とする(請求項1)。
【0011】
このように構成することにより、高圧側扁平管及び低圧側扁平管は予めU字状に屈曲され、曲げ加工によって屈曲部に歪みが蓄積されるが、予めU字状に屈曲された高圧側扁平管及び低圧側扁平管をろう付けする際の加熱による焼鈍効果により歪みが除去される。
【0012】
この発明において、上記差し込み量が、ヘッダーパイプの内径の15%より少ないと、扁平管の冷媒流路にろう材が流れ込んで目詰まりが生じる。また、差し込み量が、ヘッダーパイプの内径の35%より大きいと、ヘッダーパイプから扁平管へ流入する部分では冷媒が乱流を起こして圧力損失が増大し、その圧力損失が、一般的な円形管によって生じる圧力損失を超えて増大する。
【0013】
請求項記載の発明によれば、扁平管の冷媒流路にろう材が流れ込んで目詰まりを生じることが無く、また、ヘッダーパイプから扁平管へ流入する部分の冷媒の乱流を抑制することができる。
【0015】
また、この発明において、高圧側扁平管及び低圧側扁平管の厚さが8mmを超えると、高圧側及び低圧側扁平管同士が接触する面から離れた位置に存在する冷媒が雰囲気温度と熱交換する等外乱が大きくなり、目標通りの熱交換性能を得ることが難しくなり、性能のバラツキが大きくなる。また、扁平管の厚さが幅の4倍より近いと外乱が大きくなって性能のバラツキが大きくなる。扁平管の厚さが幅の6倍より遠くなると、扁平管の各流路への冷媒の分流が上手くいかずに特定の流路に冷媒が集中し熱交換能力が下がる。
【0016】
請求項記載の発明によれば、熱交換性能のバラツキを抑制し、熱交換性能を安定させることができる。
【0018】
また、この発明において、高圧側扁平管の屈曲半径(R)と高圧側扁平管の厚さ(t1)及び低圧側扁平管の厚さ(t2)との比率が2.5より小さい場合、比率が2.5より小さくなるほど扁平管外側の伸び率が高くなり、クラックや流路潰れが生じ圧力損失が増大する。また、上記比率が4.5より大きいと、サイズが巨大化し、加工効率が低下する。
【0019】
請求項記載の発明によれば、圧力損失を抑制することができると共に、装置の小型化及び加工効率の向上が図れる。
【0020】
また、この発明において、上記高圧側扁平管に列設される冷媒流路の面積(A1)と、上記低圧側扁平管に設けられる冷媒流路の面積(A2)とが、1≦A2/A1≦4である方がよい(請求項)。
【0021】
上記面積比が1未満で低圧側扁平管に設けられる冷媒流路の面積(A2)の方が大きくなってしまうと、同一冷媒質量の流量下で高圧側扁平管を基準にとった時、扁平管を通過しようとする冷媒の体積に対して流路断面積が小さいため、冷媒と扁平管の摩擦が増して圧力損失が増大し冷凍サイクルの効率を低下させる。また、低圧側扁平管を基準にとった時、高圧側扁平管の流路断面積が大きすぎて冷媒が体積膨張した分圧力低下を起こし、結果的に圧力損失を引き起こして冷凍サイクルの効率を低下させる。また、上記面積比が4を超えて高圧側扁平管に列設される冷媒流路の面積(A1)が大きい場合は、上述とは逆のことが起こって冷凍サイクルの効率を低下させる。
【0022】
また、この発明において、上記ヘッダーパイプはろう材がクラッドされている方が好ましい(請求項)。これにより、ヘッダーパイプと高圧側及び低圧側扁平管とのろう付けを容易、かつ、確実にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明は、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0024】
(1)請求項1記載の発明によれば、高圧側扁平管及び低圧側扁平管は予めU字状に屈曲され、曲げ加工によって屈曲部に歪みが蓄積されるが、予めU字状に屈曲された高圧側扁平管及び低圧側扁平管の冷媒流入口側端部及び冷媒流出口側端部に接続されるヘッダーパイプがコネクタによって連結された状態で一体ろう付けすることができ、ろう付けする際の加熱による焼鈍効果により歪みは除去されるので、耐久性を向上し小型化を図ることができる。
【0025】
(2)また、請求項1記載の発明によれば、扁平管の冷媒流路にろう材が流れ込んで目詰まりを生じることが無く、また、ヘッダーパイプから扁平管へ流入する部分の冷媒の乱流を抑制することができるので、更に冷媒の圧力損失を抑制することができると共に、熱交換効率の向上を図ることができる。
【0026】
(3)また、請求項1記載の発明によれば、熱交換性能のバラツキを抑制し、熱交換性能を安定させることができるので、更に熱交換効率の向上を図ることができる。
【0027】
(4)また、請求項1記載の発明によれば、更に圧力損失を抑制することができると共に、装置の小型化及び加工効率の向上が図れる。
【0028】
(5)請求項記載の発明によれば、上記(1)〜(4)に加えて更に内部熱交換器を備えた冷凍サイクルの効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】この発明に係る内部熱交換器の配管状態を示す概略構成図である。
図2】この発明に係る内部熱交換器の一例を示す正面図である。
図3】上記内部熱交換器の平面図である。
図4】上記内部熱交換器の右側面図である。
図5図2のI部拡大図(a)及び図2のII部拡大図(b)である。
図6】この発明における高圧側扁平管と低圧側扁平管の屈曲部を示す拡大正面図である。
図7図2のIII−III線に沿う拡大断面図である。
図8】この発明における高圧側扁平管の拡大断面図(a)及び低圧側扁平管の拡大断面図(b)である。
図9】上記高圧側扁平管と低圧側扁平管との接合前の状態を示す正面図である。
図10】この発明に係る内部熱交換器の配管構造の一例を示す配管図である。
図11】この発明に係る内部熱交換器の別の配管構造の例を示す配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、この発明に係る内部熱交換器の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る内部熱交換器を車両用空調装置の冷媒回路に適用した場合について説明する。
【0031】
車両用空調装置は、低温側の熱を高温側に移動させて冷熱及び温熱を空調に利用するもので、図1に示すように、蒸発器1、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4が配管5によって冷媒を循環可能に接続される一般的な冷凍サイクルに、この発明に係る内部熱交換器6への冷媒の循環が付加されるものである。
【0032】
車両用空調装置は、以下のように動作する。すなわち、蒸発器1から帰還された冷媒は、内部熱交換器6を介して圧縮機2に吸引されて高圧圧縮される。次いで、圧縮機2から吐出された冷媒は、凝縮器3に送られる。凝縮器3に送られた冷媒は、外気との間で熱交換されて液化して、内部熱交換器6を介して膨張弁4に至る。次いで、蒸発温度及び流量を電子制御可能な膨張弁4において、冷媒は減圧される。その後、冷媒は蒸発器1に至る。最後に、蒸発器1に供給された液体冷媒は、吸熱して気体冷媒となる。冷媒の吸熱によって蒸発器1を設けた空間が独立して冷却されることになる。そして、冷媒は、蒸発器1から内部熱交換器6を介して圧縮機2に吸引されて帰還して循環運転が繰り返される。
【0033】
上記のように、凝縮器3と膨張弁4との間、蒸発器1と圧縮機2との間にこの発明に係る内部熱交換器6が接続されている。内部熱交換器6は上記冷凍サイクルの膨張弁4に流入する高圧側冷媒と圧縮機2に吸引される低圧側冷媒とを熱交換を行うためのものである。ここで、高圧側冷媒とは、凝縮器3の流出側から膨張弁4の流入側を流れる冷媒であり、また、低圧側冷媒とは、蒸発器1の流出側から圧縮機2の流入側を流れる冷媒である。
【0034】
次に、内部熱交換器6について、図2ないし図9を参照して説明する。内部熱交換器6は、図9に示すように、それぞれ予めU字状に屈曲形成された高圧側扁平管10と低圧側扁平管20とを具備し、高圧側扁平管10が低圧側扁平管20に対して内側に配置されると共に、高圧側扁平管10及び低圧側扁平管20のそれぞれの冷媒流入口側端部13,23及び冷媒流出口側端部14,24のうちの少なくとも冷媒流入口側端部13,23がヘッダーパイプ30A〜30Dに設けられたスリット31を介してヘッダーパイプ30A〜30D内に挿入された状態で、これら高圧側扁平管10、低圧側扁平管20及びヘッダーパイプ30A〜30Dをろう付けしてなる。なお、ヘッダーパイプ30A〜30Dには、ろう材がクラッドされているものを用いる方が好ましい。
【0035】
この場合、高圧側扁平管10の冷媒流入口側端部13を接続するヘッダーパイプ30Aと、低圧側扁平管20の冷媒流出口側端部24を接続するヘッダーパイプ30Dが取付孔41を有するアルミニウム合金製のコネクタ40によって垂直方向に配列されている。また、高圧側扁平管10の冷媒流出口側端部14を接続するヘッダーパイプ30Bと、低圧側扁平管20の冷媒流入口側端部23を接続するヘッダーパイプ30Cがコネクタ40によって水平方向に配列されている。
【0036】
上記高圧側扁平管10と低圧側扁平管20は、それぞれアルミニウム合金製押出形材にて形成されており、高圧側扁平管10は、仕切壁12を介して6個の冷媒流路11が形成され、低圧側扁平管20は、仕切壁22を介して8個の冷媒流路21が形成されている(図7及び図8参照)。なお、高圧側扁平管10の冷媒流路11の内壁面には凹凸細条が設けられている。このように凹凸細条を設けることによって接触面積を広げることができるので、熱伝達の効率を高めることができる。
【0037】
また、高圧側扁平管10は、U字状に屈曲された両端側の冷媒流入口側端部13と冷媒流出口側端部14は共に同一方向(図において左方向)に円弧部を介して直状に傾斜して設けられており、冷媒流入口側端部13と冷媒流出口側端部14はそれぞれヘッダーパイプ30A,30Bに設けられたスリット31を介してヘッダーパイプ30A,30B内に挿入されている。
【0038】
一方、低圧側扁平管20は、U字状に屈曲された両端側の冷媒流入口側端部23と冷媒流出口側端部24は反対方向に円弧部を介して直状に傾斜して設けられており、冷媒流入口側端部23と冷媒流出口側端部24はそれぞれヘッダーパイプ30C,30Dに設けられたスリット31を介してヘッダーパイプ30C,30D内に挿入されている。
【0039】
この場合、高圧側扁平管10の冷媒流入口側端部13のヘッダーパイプ30A内の内への差し込み量S1は、ヘッダーパイプ30Aの内径D1の15%〜35%に設定されている(図5(a)参照)。また、低圧側扁平管20の冷媒流入口側端部23のヘッダーパイプ30C内の内への差し込み量S2は、ヘッダーパイプ30Cの内径D2の15%〜35%に設定されている(図5(b)参照)。
【0040】
上記のように、高圧側扁平管10と低圧側扁平管20の冷媒流入口側端部13,23のヘッダーパイプ30A,30C内への差し込み量S1,S2をヘッダーパイプ30A,30Cの内径D1,D2の15%〜35%に設定する理由は、表1に示す評価実験に基づくものである。
【0041】
すなわち、ヘッダーパイプ内径に対する扁平管の差し込み量を10%,15%,20%,25%,30%,35%,40%,50%にし、扁平管の目詰まりの有無(○,×)と同面積円管を基準にした場合の圧力損失の増大の有無(○,×)について調べたところ、表1に示す結果が得られた。なお、実験では、車両時速10Km/hr相当の条件で行った。
【表1】
【0042】
上記結果より、差し込み量S1,S2が、ヘッダーパイプ30A,30Cの内径D1,D2の15%より少ないと、高圧側及び低圧側扁平管10,20の冷媒流路11,21にろう材が流れ込んで目詰まりが生じる。また、差し込み量S1,S2が、ヘッダーパイプ30A,30Cの内径D1,D2の35%より大きいと、ヘッダーパイプ30A,30Cから高圧側及び低圧側扁平管10,20へ流入する部分では冷媒が乱流を起こして圧力損失が増大し、その圧力損失が、一般的な円形管によって生じる圧力損失を超えて増大することが判った。
【0043】
また、本実施形態においては、高圧側扁平管10の厚さt1及び低圧側扁平管20の厚さt2が8mm以下で、かつ、両扁平管10,20の厚さt1,t2と幅の比が、1:4〜1:6に設定されている。
【0044】
上記のように、高圧側及び低圧側扁平管10,20の厚さt1,t2を8mm以下にし、かつ、両扁平管10,20の厚さt1,t2と幅の比を、1:4〜1:6に設定する理由は、表2、表3に示す評価実験に基づくものである。
【0045】
すなわち、扁平管の厚さを2mm,5mm,7mm,8mm,10mmにした場合の熱交換性能のバラツキを調べたところ、表2に示すような結果が得られた。なお、実験では、車両時速10Km/hr相当の条件で行った。
【表2】
【0046】
上記結果より、扁平管10,20の厚さが8mmを超えた10mmであると、高圧側及び低圧側扁平管同士が接触する面から離れた位置に存在する冷媒が雰囲気温度と熱交換する等外乱が大きくなり、目標通りの熱交換性能を得ることが難しくなり、性能のバラツキが大きくなることが判った。
【0047】
次に、扁平管10,20の厚さt1,t2と幅の比を、1:3,1:4,1:5,1:6,1:6,1:8にした場合の熱交換性能のバラツキを調べたところ、表3に示すような結果が得られた。なお、実験では、車両時速10Km/hr相当の条件で行った。
【表3】
【0048】
上記結果より、扁平管10,20の厚さt1,t2と幅の比が1:4(4倍)より近い1:3であると外乱が大きくなって性能のバラツキが大きくなることが判った。また、扁平管10,20の厚さt1,t2と幅の比が1:6(6倍)より遠い1:7や1:8になると、扁平管10,20の各流路への冷媒の分流が上手くいかずに特定の流路に冷媒が集中し熱交換能力が下がることが判った。
【0049】
また、図6に示すように、高圧側扁平管10の屈曲半径をRとし、高圧側扁平管10の厚さt1及び低圧側扁平管の厚さt2との関係で、扁平管の破損の有無(○、×)と加工効率やサイズの評価実験を行ったところ、表4,表5に示すような結果が得られた。
【0050】
すなわち、R/(t1+t2)/2が1,2,2.5,3,4,4.5,5,6の場合について扁平管の破損の有無(○、×)と加工効率・サイズの可否(○、×)について評価実験を行ったところ、表4に示すような結果が得られた。なお、実験では、車両時速10Km/hr相当の条件で行った。
【表4】
【0051】
上記結果より、高圧側扁平管の屈曲半径Rと高圧側扁平管10の厚さt1及び低圧側扁平管20の厚さt2との比率が2.5より小さい場合、比率が2.5より小さくなるほど扁平管外側の伸び率が高くなり、クラックや流路潰れが生じ圧力損失が増大することが判った。また、上記比率を4.5より大きくすると、加工が容易な形状となるが、サイズが巨大化する。また、所定の熱交換率で曲げRを大きくすると、ヘッダーパイプ分岐のための曲げ加工が困難性を増し加工効率が低下することが判った。
【0052】
次に、t2/t1が0.5,1,1.5,2,3の場合について高圧側扁平管10(厚さt1)と低圧側扁平管20(厚さt2)の破損の有無(○、×)について評価実験を行ったところ、表5に示すような結果が得られた。なお、実験では、車両時速10Km/hr相当の条件で行った。
【表5】
【0053】
上記評価実験の結果、高圧側扁平管10の屈曲半径R、高圧側扁平管10の厚さt1及び低圧側扁平管の厚さt2との関係は、2.5≦R/(t1+t2)/2≦4.5、かつ、1≦t2/t1≦3/2である、ことが好ましいことが判った。
【0054】
また、高圧側扁平管10に列設される冷媒流路11の面積(A1)と、低圧側扁平管20に設けられる冷媒流路21の面積(A2)との関係で、圧力損失の有無(○、×)を調べたところ、表6に示すような結果が得られた。
【0055】
すなわち、高圧側扁平管10に列設される冷媒流路11の面積(A1)と、低圧側扁平管20に設けられる冷媒流路21の面積(A2)との面積比(A2/A1)が、0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,5の場合についての圧力損失の有無(○、×)の評価実験を行ったところ、表6に示すような結果が得られた。
【0056】
なお、実験では、車両時速10Km/hr相当の条件で行った。
【表6】
【0057】
上記評価実験の結果、上記面積比(A2/A1)が1よりも小さい0.5の場合と、上記面積比(A2/A1)が4よりも大きい5の場合において、圧力損失が生じることが判った。すなわち、上記面積比(A2/A1)が1よりも小さいと、同一冷媒質量の流量下で高圧側扁平管10を基準にとった時、扁平管10,20を通過しようとする冷媒の体積に対して流路断面積が小さいため、冷媒と扁平管10,20の摩擦が増して圧力損失が増大し熱交換効率を低下させる。また、低圧側扁平管20を基準にとった時、高圧側扁平管10の流路断面積が大きすぎて冷媒が体積膨張した分圧力低下を起こし、結果的に圧力損失を引き起こして熱交換効率を低下させる。また、上記面積比(A2/A1)が4を超えて大きい場合は、上述とは逆のことが起こって熱交換効率を低下させることが判った。よって、1≦A2/A1≦4である方が好ましい。
【0058】
上記実施形態の内部熱交換器6を作製するには、まず、図9に示すように、高圧側扁平管10と低圧側扁平管20を別々に屈曲してU字状に曲げ加工すると共に、高圧側扁平管10と低圧側扁平管20の両端部を上述のように傾斜状に屈曲して冷媒流入口側端部13,23と冷媒流出口側端部14,24を加工する。この場合、高圧側扁平管10と低圧側扁平管20を曲げ加工する方法として、例えばロールベンダーの方法がある。ロールベンダーとは、3本のロールを三角形に配置し、その間を通過する高圧側扁平管10又は低圧側扁平管20にロールを圧下、回転させることで連続的に曲げを与える方法である。
【0059】
次に、図9に示すように、上記のようにしてU字状に曲げ加工された高圧側扁平管10を低圧側扁平管20に対して内側に配置する。そして、高圧側扁平管10の冷媒流入口側端部13をヘッダーパイプ30Aに設けられたスリット31を介してヘッダーパイプ30A内に挿入し、高圧側扁平管10の冷媒流出口側端部14をヘッダーパイプ30Bに設けられたスリット31を介してヘッダーパイプ30B内に挿入する。この際、高圧側扁平管10の冷媒流入口側端部13のヘッダーパイプ30A内への差し込み量S1は、ヘッダーパイプ30Aの内径D1の15%〜35%に設定される(図5(a)参照)。
【0060】
また、低圧側扁平管20の冷媒流入口側端部23をヘッダーパイプ30Cに設けられたスリット31を介してヘッダーパイプ30C内に挿入し、低圧側扁平管20の冷媒流出口側端部24をヘッダーパイプ30Dに設けられたスリット31を介してヘッダーパイプ30D内に挿入する。この際、低圧側扁平管20の冷媒流入口側端部23のヘッダーパイプ30C内の内への差し込み量S2は、ヘッダーパイプ30Cの内径D2の15%〜35%に設定される(図5(b)参照)。
【0061】
次に、コネクタ40によってヘッダーパイプ30Aと30Dを連結し、コネクタ40によってヘッダーパイプ30Bと30Cを連結した状態で、図示しない炉内に搬入して所定の温度で加熱して高圧側扁平管10,低圧側扁平管20及びヘッダーパイプ30A,30B,30C,30Dを一体ろう付けして内部熱交換器6を作製する。
【0062】
上記実施形態の熱交換器によれば、高圧側扁平管10及び低圧側扁平管20は予めU字状に屈曲され、曲げ加工によって屈曲部に歪みが蓄積されるが、予めU字状に屈曲された高圧側扁平管10及び低圧側扁平管20をろう付けする際の加熱による焼鈍効果により歪みが除去される。したがって、扁平管10,20を流れる冷媒の圧力損失を抑制することができ、小型で熱交換効率の向上を図ることができる。また、ヘッダーパイプ30A,30B,30C,30Dは、ろう材がクラッドされているので、ろう付けを容易、かつ、確実にすることができる。
【0063】
また、少なくとも高圧側扁平管10及び低圧側扁平管20の冷媒流入口側端部13,23のヘッダーパイプ30A,30C内への差し込み量S1,S2は、ヘッダーパイプ30A,30Cの内径D1,D2の15%〜35%に設定されているので、扁平管10,20の冷媒流路11,21にろう材が流れ込んで目詰まりを生じることが無く、また、ヘッダーパイプ30A,30Cから扁平管10,20へ流入する部分の冷媒の乱流を抑制することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、高圧側扁平管10及び低圧側扁平管20の冷媒流入口側端部13,23及び冷媒流出口側端部14,24をヘッダーパイプ30A〜30Dに設けられたスリット31を介してヘッダーパイプ30A〜30D内に挿入して接合する場合について説明したが、少なくとも高圧側扁平管10及び低圧側扁平管20の冷媒流入口側端部13,23をヘッダーパイプ30A,30Cに設けられたスリット31を介してヘッダーパイプ30A,30C内に挿入し、その差し込み量S1,S2が、ヘッダーパイプ30A,30Cの内径D1,D2の15%〜35%に設定されていればよい。
【0065】
また、上記実施形態の内部熱交換器6によれば、高圧側扁平管10の冷媒流入口側端部13を接続するヘッダーパイプ30Aと、低圧側扁平管20の冷媒流出口側端部24を接続するヘッダーパイプ30Dがコネクタ40によって連結され、高圧側扁平管10の冷媒流出口側端部14を接続するヘッダーパイプ30Bと、低圧側扁平管20の冷媒流入口側端部23を接続するヘッダーパイプ30Cがコネクタ40によって連結されているので、取付孔41を介して挿入される取付ねじ(図示せず)によってコネクタ40を膨張弁4に直接取り付けることができる。
【0066】
例えば、図10に示すように、運転室CとエンジンEを搭載するエンジンルームE.Rとの境界に配置される膨張弁4にコネクタ40を介して内部熱交換器6を直接取り付け、運転室Cに配置される蒸発器1と、エンジンルームE.Rに配置される圧縮機2及び凝縮器3とを配管5を介して接続することができ、従来の取付工程と殆ど同じ作業で取り付けることができる。また、配管5を図11に示すように代えることで、異なる車種に対応させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 蒸発器
2 圧縮機
3 凝縮器
4 膨張弁
5 配管
6 内部熱交換器
10 高圧側ヘッダーパイプ
11 冷媒流路
13 冷媒流入口側端部
14 冷媒流出口側端部
20 低圧側ヘッダーパイプ
21 冷媒流路
23 冷媒流入口側端部
24 冷媒流出口側端部
30A〜30D ヘッダーパイプ
31 スリット
40 コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11