(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のコネクタ1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態のコネクタ1を、コネクタ1にケーブルコネクタ8が接続されると共にコネクタ1が回路基板9に実装された状態で示す斜視図である。
図2は、
図1に示すコネクタ1を示す斜視図である。
図3は、
図2に示すコネクタ1を差し込み口5側から視た斜視図である。
図4(a)及び(b)は、コンタクト2を異なる角度から視た斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のコネクタ1は、回路基板9に実装される基板実装型のコネクタである。コネクタ1には、相手方のケーブルコネクタ8が接続される。
【0013】
なお、本実施形態の説明では、コネクタ1が回路基板9に実装され且つケーブルコネクタ8が接続された状態(
図1に示す状態)において、回路基板9の厚み方向D12のうち、回路基板9の実装面91から裏面95に向かう方向を「下方向D1」といい、下方向D1とは反対向きの方向を「上方向D2」という。回路基板9の側縁に沿う方向を「横方向D34」といい、厚み方向D12及び横方向D34に直交する方向を「前後方向D56」という。前後方向D56のうち、回路基板9の外側から内側に向かう方向を「前方向D5」といい、前方向D5とは反対向きの方向を「後ろ方向D6」という。横方向D34のうち、前方向D5に向かって左向きを「左方向D3」といい、右向きを「右方向D4」という。
【0014】
回路基板9は、金属板などの導電部材を主体として形成され、実装面91に絶縁処理が施された回路基板である。導電部材の素材としては、例えば、アルミニウムを主体とした金属板が挙げられる。絶縁処理は、例えば、金属板の外面に絶縁処理膜を形成することによって行われる。
回路基板9は、例えば、金属板の少なくとも実装面91に絶縁処理を施した後、実装面91にプリント配線(不図示)及び電極92を形成し、プリント配線の一部を被覆するように更に絶縁処理が施されて形成される。
【0015】
回路基板9は、面方向(D34−D56平面が拡がる方向)の端部(後ろ方向D6の端部)に、回路基板9の厚み方向D12に刳り抜かれた刳り抜き部93を有する。本実施形態においては、刳り抜き部93は、後ろ方向D6に開放した略矩形状である。刳り抜き部93を形成する回路基板9の厚み方向D12の断面(「導電断面」ともいう)94には、絶縁処理が施されていない。
【0016】
その理由は以下の通りである。金属製の回路基板において低背化のために刳り抜き部を形成する場合には、一般的に、金属製の回路基板における主として実装面91に絶縁処理を施した後に、回路基板9を刳り抜いて刳り抜き部93を形成する。その場合には、刳り抜き部93を形成する断面94は、絶縁処理が残存しない導電断面となる。導電断面94に対しては、一般的に、コストダウンのために、再度の絶縁処理は行われない。
【0017】
本実施形態のコネクタ1は、回路基板9における刳り抜き部93に配置されて実装される。本実施形態のコネクタ1は、
図1〜
図4に示すように、コンタクト2と、ハウジング3と、固定部材7と、を主体として構成される。本実施形態のコネクタ1は、
図1及び
図5に示す相手方のケーブルコネクタ8が接続されて、使用される。
図5は、ケーブルを省略した状態でケーブルコネクタ8を示す斜視図である。
【0018】
コンタクト2は、良導電性の導電部材からなる板状部材の打ち抜き・折曲加工によって形成される。
図1及び
図6に示すように、コンタクト2は、横方向D34に所定間隔で離間して複数配列しており、回路基板9の実装面91の電極92に、機械的に且つ電気的に接続される。
図6は、
図1に示すコネクタ1を、ベース連結部23及び舌片28を通るように回路基板9の厚み方向D12に切断した縦断面斜視図である。
図7は、
図1に示すコネクタ1を、コンタクトベース24が露出するように回路基板9の厚み方向D12に切断した縦断面図である。
【0019】
図1〜
図4、
図6及び
図7に示すように、コンタクト2は、ハウジング3に保持されるコンタクトベース24と、コンタクトベース24に連結され且つ実装面91の電極92に接触する基板側コンタクトピン21と、コンタクトベース24に連結され且つ相手方のケーブルコネクタ8の雌型コンタクト端子(不図示)に接触する相手側コンタクトピン25と、コンタクトベース24に連結され且つハウジング3に保持される舌片28と、を備える。
本明細書において「保持する」には、ガタを有しているが被保持物の移動範囲をある程度の範囲に規制する場合や、被保持物を挟んで(挟持して)実質的に移動不能とする場合などが含まれる。
【0020】
コンタクトベース24は、D12−D56平面に拡がる略矩形板状を有する。コンタクトベース24は、その中央部に、「コ」字状の刳り抜き孔部29を備える。
舌片28は、「コ」字状の刳り抜き孔部29の内側に設けられる。舌片28は、後ろ方向D6においてコンタクトベース24に連結されている。舌片28は、D12−D56平面に拡がり且つ前方向D5に突出した状態(不図示)から、左方向D3に突出する方向に折曲加工されて形成される。舌片28は、コンタクト2の前後方向D56の位置を決めるために設けられる。
【0021】
基板側コンタクトピン21は、その基板部側においてコンタクトベース24との連結部を形成するベース連結部23と、その先端部側において回路基板9の電極92と接触する端子部22と、を備える。
基板側コンタクトピン21(端子部22を含む)は、ベース連結部23を除いた部分において、実装面91が拡がる方向(D34−D56平面)に沿って拡がっており、前方向D5に向けて延びている。端子部22は、回路基板9の電極92に半田付けにて機械的に且つ電気的に接続される。
基板側コンタクトピン21(端子部22を含む)は、ベース連結部23を除いた部分において、先端部側(端子部22の側)及び基端部側(ベース連結部23の側)が下方向D1の側に偏倚し且つ長手方向の中央部が上方向D2の側に偏倚した略凸形状を有する。
【0022】
ベース連結部23は、基板側コンタクトピン21の基端部を構成し、コンタクトベース24の上端部に連結する。
図7は、
図1に示すコネクタ1を、コンタクトベース24が露出するように回路基板9の厚み方向D12に切断した縦断面図である。
【0023】
ベース連結部23は、D12−D56平面に拡がり且つ上方向D2に突出した状態から、左方向D3に突出する方向に折曲加工されて形成される。つまり、コンタクト2においては、基板側コンタクトピン21の面方向は、コンタクトベース24の面方向(D12−D56平面)に対して折れ曲がっている。
【0024】
相手側コンタクトピン25は、D12−D56平面に拡がり、その基端部27においてコンタクトベース24の下端部の最前部に連結されている。相手側コンタクトピン25は、後ろ方向D6に向けて延びており、後ろ方向D6側の先端部に接点部26を有する。接点部26は、相手方のケーブルコネクタ8の雌型コンタクト端子(不図示)へ差し込むことできるように、先を尖らせて槍状に形成されている。相手側コンタクトピン25は、相手方のケーブルコネクタ8に設けられた複数の雌型コンタクト端子(不図示)とそれぞれ接触して、機械的に且つ電気的に接続される。
【0025】
ハウジング3は、合成樹脂などの絶縁部材を主体として形成され、コンタクト2を直接的に又は間接的に保持する。「絶縁部材を主体として形成される」とは、大部分が絶縁部材から形成されていることであり、ハウジングの機能を阻害しない範囲で一部に導電部材が用いられていてもよい。「コンタクト2を直接的に保持する」とは、他の部材を介在させずにハウジング3がコンタクト2を保持することである。「コンタクト2を間接的に保持する」とは、他の部材を介在させてハウジング3がコンタクト2を保持することである。
【0026】
図1〜
図3に示すように、ハウジング3は、コンタクト2を保持し、相手方のケーブルコネクタ8のソケットハウジング80と嵌合して接続される。
ハウジング3は、略箱形状を有し、ハウジング3の上部を形成するハウジング本体部31と、コンタクト2が配置されるコンタクト配置溝部4と、相手方のケーブルコネクタ8のソケットハウジング80の挿入部81(
図5参照)が差し込まれるコネクタ差し込み口5と、を備える。
【0027】
図2、
図3及び
図6に示すように、ハウジング本体部31は、側壁部32と、断面被覆部35と、介在部36と、を備える。
側壁部32は、ハウジング本体部31の横方向D34の壁部を形成する。
断面被覆部35は、刳り抜き部93の導電断面94に対向し、導電断面94を被覆する。断面被覆部35は、本実施形態においては導電断面94から離間している。なお、断面被覆部35は、導電断面94に当接していてもよい。
介在部36は、断面被覆部35と連続し、実装面91とコンタクト2の基板側コンタクトピン21との間に介在するように設けられる。介在部36の厚み方向D12の厚みは、例えば、0.1〜0.8mm、好ましくは0.1〜0.2mmである。
【0028】
図1〜
図3及び
図6に示すように、コンタクト配置溝部4は、ハウジング本体部31の上部に、複数のコンタクト2に対応して複数設けられている。複数のコンタクト配置溝部4は、横方向D34に所定間隔で設けられる。
コンタクト配置溝部4は、ハウジング3の上部に上方向D2に開放して設けられ且つ基板側コンタクトピン21が配置される上部溝部41と、コンタクトベース24が配置されるベース溝部42と、舌片28が配置されて保持される舌片溝部43と、を備える。
【0029】
図2及び
図3に示すように、コネクタ差し込み口5は、ハウジング本体部31の下方に位置し、矩形状の底板部51と、底板部51の外周囲から立設する側板部52,52及び前板部53と、矩形状の天板部54と、を備える。天板部54は、側板部52,52及び前板部53の頂部を連結して繋ぎ、底板部51と厚み方向D12に対向する。コネクタ差し込み口5は、底板部51、側板部52,52、前板部53及び天板部54によって囲まれて、後ろ方向D6側が開放するように形成される。コネクタ差し込み口5には、後ろ方向D6から相手方のケーブルコネクタ8のソケットハウジング80の挿入部81が差し込まれる。
【0030】
ハウジング3(ハウジング本体部31)は、その側壁部32の上部に、固定部材7の基端側の被保持片部72(後述)を挟持して保持する固定部材保持部61を備える。また、ハウジング3は、その側壁部32の下部(コネクタ差し込み口5に対して横方向D34の外側)に、コネクタ側係合部62を備える。
【0031】
固定部材7は、金属材料からなる矩形の板状部材から形成され、補強金具、補強タブ等とも呼ばれる。固定部材7は、固定片部71と、被保持片部72とを備え、略L字形状を有する。固定片部71は、コネクタ1を回路基板9の実装面91に固定する際に半田付けにより結合される。被保持片部72は、ハウジング3の固定部材保持部61に挟持されて保持される。これにより、固定部材7は、ハウジング3に連結されると共に、ハウジング3を回路基板9の実装面91に固定する。
【0032】
図1及び
図5に示すように、相手方のケーブルコネクタ8は、複数の雌型コンタクト端子(不図示)が設けられた雄型コネクタからなる。なお、相手方の部材は、雄型コネクタに限定されず、他のコネクタ、フレキシブル基板、合成樹脂製基板、紙基材フェノール樹脂積層板などでもよい。その場合、相手方の部材に応じてハウジング3の差し込み口5の形状は変更される。
【0033】
フレキシブル基板としては、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit;FPC)や、フレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable;FFC)等の柔軟性及び可撓性を備え、所定の肉厚及び幅長を有するフラットな基板が挙げられる。
合成樹脂製基板としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂製基板が挙げられる。
【0034】
ケーブルコネクタ8は、ソケットハウジング80と、ケーブル89と、雌型コンタクト端子(不図示)と、ロックアーム85と、を備える。
【0035】
ソケットハウジング80は、略直方体形状を有し、その前方向D5の側に略直方体形状の挿入部81を備える。挿入部81は、コネクタ1の差し込み口5の内側に対応する形状を有し、差し込み口5に挿入(差し込み)できる。
【0036】
雌型コンタクト端子(不図示)は、その基端部においてケーブル89の電線部分(不図示)に電気的に接続されている。雌型コンタクト端子は、ケーブルコネクタ8とコネクタ1とが接続された状態において、コネクタ1のコンタクト2の相手側コンタクトピン25に接触し、電気的に接続される。
【0037】
ロックアーム85は、前方向D5に延びるフック部86と、後ろ方向D6に延びる力点部87と、フック部86と力点部87の間に位置し且つソケットハウジング80の側壁に連接される支点部88と、を備える。ロックアーム85は、支点部88を中心にフック部86及び力点部87が回動可能に構成されている。力点部87を横方向D34の内側に押圧すると、支点部88を中心に、フック部86は横方向D34の外側に開く。フック部86の前方向D5の先端部は、横方向D34の内側に突出する係合突起86aを形成している。
【0038】
コネクタ1とケーブルコネクタ8との接続は、次のように行われる。(力点部87を押圧しない状態で、)ソケットハウジング80の挿入部81をコネクタ1の差し込み口5に挿入する。その過程で、フック部86の係合突起86aは、コネクタ1のハウジング3のコネクタ側係合部62に当たり、コネクタ側係合部62を横方向D34の外側に乗り越える。乗り越えた後、フック部86は、横方向D34の内側へ向かう付勢力により、横方向D34の内側に移動する。そして、フック部86の係合突起86aは、コネクタ側係合部62に係合する。これにより、コネクタ1とケーブルコネクタ8との接続がロックされる。
【0039】
以上の構成を有する本実施形態によれば、例えば、以下の効果が奏される。
本実施形態においては、
図6に示すように、ハウジング3は、刳り抜き部93の導電断面94を被覆する断面被覆部35と、断面被覆部35と連続し且つ実装面91とコンタクト2との間に介在するように設けられる介在部36と、を有する。そのため、回路基板9の導電断面94とコンタクト2との間に十分な沿面距離を確保することができる。
【0040】
また、コンタクト2においては、
図6及び
図7に示すように、基板側コンタクトピン21の面方向は、コンタクトベース24の面方向に対して折れ曲がっている。そのため、回路基板9及びコネクタ1を含むコネクタ実装回路基板の全体を更に低背化することができる。また、このように折り曲がっていることにより、端子部22と電極92との接触面積(半田面積)を大きく確保でき、端子部22と電極92との引き剥がし強度(ピール強度)を増大させることができる。
【0041】
また、
図6に示すように、基板側コンタクトピン21(端子部22)は、実装面91が拡がる方向(D34−D56平面)に沿って拡がっている。そのため、端子部22と電極92との接触面積(半田面積)を大きく確保でき、端子部22と電極92との引き剥がし強度(ピール強度)を増大させることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態においては、刳り抜き部93は、開放した形状であるが、これに制限されず、閉じた形状でもよい。
【0043】
コンタクト2の基板側コンタクトピン21は、前記実施形態においては、ベース連結部23を除いた部分において、先端部側及び基端部側が下方向D1の側に偏倚し且つ長手方向の中央部が上方向D2の側に偏倚した略凸形状を有しているが、これに制限されない。
図8は、変形例のコンタクト2Aを示す縦断面図(
図7対応図)である。
図8に示すように、変形例のコンタクト2Aにおける基板側コンタクトピン21Aは、横方向D34に視た場合に、矩形状を有している。