(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959213
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】シャッター
(51)【国際特許分類】
E06B 9/56 20060101AFI20160719BHJP
E06B 9/17 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
E06B9/56 A
E06B9/17 M
E06B9/17 W
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-16213(P2012-16213)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-155515(P2013-155515A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096448
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】上田 正
(72)【発明者】
【氏名】相馬 剛
(72)【発明者】
【氏名】岩田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】平井 万美子
(72)【発明者】
【氏名】山本 理史
【審査官】
佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−344330(JP,A)
【文献】
特開2007−146382(JP,A)
【文献】
特開2010−77721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00− 9/92
A47H 1/00− 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ製の天板を備えたケース内に巻取軸を設け、その巻取軸でシャッターカーテンを巻き上げ、繰り下げるようにしたシャッターであって、
前記ケース内の天板と巻取軸との間にアルミの融点以上の融点の材料より製作した補強材を設け、
前記補強材の室内側部を、前記ケースの室内側部における前記天板と巻取軸との間の部位に、その補強材の室外側部が前記巻取軸の中心よりも室外側に延び、かつ通常時は当該補強材が最大限巻き上げた状態のシャッターカーテンと干渉しない上方位置に保持され、前記天板が溶融したときは当該補強材の室外側部が室内側部よりも低く、下向き斜めの姿勢に変位するように固着したことを特徴とするシャッター。
【請求項2】
前記補強材の室内側部を天板の室内側部に第1の固着具で固着すると共に、その補強材の室外側寄りを天板の室外側寄りに第2の固着具で固着することで、前記補強材を、通常時は最大限巻き上げた状態のシャッターカーテンと干渉しない上方位置に保持され、前記第2の固着具による固着部が溶融したときは室外側部が室内側部よりも低く、下向き斜めの姿勢に変位するように取り付け、
前記天板が溶融する際に熱膨張して少なくとも前記第1の固着具を覆う熱膨張性耐火材を設けた請求項1記載のシャッター。
【請求項3】
前記ケースに、補強材の下向き斜めの姿勢を規制して当該補強材が巻取軸と接しないようにする支持部材を設けた請求項2記載のシャッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッターカーテンを巻き上げ、繰り下げることで開口部を開閉するシャッター、例えば、建物の外壁に取り付けられ、サッシ窓の室外側部を開閉するシャッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャッターとしては、左右のガイドレールに沿ってシャッターカーテンを上下動自在とし、そのガイドレールの上方に設けたケース内に巻取軸を設け、この巻取軸でシャッターカーテンを巻き上げることで建物の開口部を開放し、巻取軸でシャッターカーテンを繰り下げることで建物の開口部を閉鎖するようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−5510
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のシャッターにおけるケースは、アルミ材により製作されるのが一般的であり、火災時やシャッターの防火試験の際に、ケースの天板(ルーフ板)が溶融することがある。
このように、シャッターカーテンが閉じた状態で天板が溶融すると、その溶融したアルミがシャッターカーテンよりも室内側に落下して種々の不具合が発生することがある。
例えば、シャッターカーテンが建物の開口部を開閉する場合には、落下した溶融アルミが開口部から室内に飛散することがある。
また、枠体の下枠まで溶融アルミが落下し、下枠に穴があき、枠体の内部と外部を連通する貫通孔が発生してしまう。
【0005】
本発明は、シャッターカーテンが閉じた状態でケースの天板が溶融したときに、その溶融アルミがシャッターカーテンよりも室外側に落下し、シャッターカーテンよりも室内側には落下しないようにしたシャッターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルミ製の天板を備えたケース内に巻取軸を設け、その巻取軸でシャッターカーテンを巻き上げ、繰り下げるようにしたシャッターであって、
前記ケース内の天板と巻取軸との間にアルミの融点以上の融点の材料より製作した補強材を設け、
前記補強材の室内側部を、前記ケースの室内側部における前記天板と巻取軸との間の部位に、その補強材の室外側部が前記巻取軸の中心よりも室外側に延び、かつ
通常時は当該補強材が最大限巻き上げた状態のシャッターカーテンと干渉しない
上方位置に保持され、前記天板が溶融したときは当該補強材の室外側部が室内側部よりも低く、下向き斜めの姿勢に変位するように固着したことを特徴とするシャッターである。
【0007】
本発明においては、
前記補強材の室内側部を天板の室内側部に第1の固着具で固着すると共に、その補強材の室外側寄りを天板の室外側寄りに第2の固着具で固着することで、前記補強材を、通常時は最大限巻き上げた状態のシャッターカーテンと干渉しない上方位置に保持され、前記
第2の固着具による固着部が溶融したときは室外側部が室内側部よりも低く、下向き斜めの姿勢に変位
するように取り付け、
前記天板が溶融する際に熱膨張して少なくとも前記第1の固着具を覆う熱膨張性耐火材を設けることができる。
このようにすれば、通常時に補強材は上方位置に保持されるので、シャッターカーテンの巻き上げ、繰り下げに支障を来すことがない。
また、天板が溶融したときには補強材が下向き斜めの姿勢に変位するので、溶融アルミを補強材に沿ってスムーズに落下することができる。
また、天板が溶融したときに第2の固着具による固着部が溶融するが、第1の固着具が耐火材で熱から保護されて溶融しないので、補強材の室内側部を天板の室内側部に固着した状態を維持して下向き斜めの姿勢に変位するので、溶融アルミを補強材に沿ってスムーズに落下することができる。
また、補強材を天板に取り付けできるので、既存のケースを利用して補強材を有するケースとすることができる。
【0010】
本発明においては、前記ケースに、補強材の下向き斜め姿勢を規制して当該補強材が巻取軸と接しないようにする支持部材を設けることができる。
このようにすれば、溶融アルミが巻取軸に付着堆積することなしにスムーズに落下することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シャッターカーテンが閉じた状態で、火災時や耐火試験時に天板が溶融したときに、その溶融アルミは補強材によってシャッターカーテンの室外側面に向けて落下するので、その溶融アルミはシャッターカーテンよりも室外側に落下し、室内側には落下することはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態を示すシャッターの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、枠体1に設けた左右のガイドレール2に沿ってシャッターカーテン3が上下動自在に支承され、このシャッターカーテン3は複数のスラット3aを揺動可能に連結してある。
前述した枠体1の上部にはケース4が設けてある。このケース4内に巻取軸5を設け、この巻取軸5でシャッターカーテン3を巻き上げ、繰り下げることで枠体1の開口部を開閉する。
【0014】
前述した枠体1は、
図2、
図3に示すように、左右の縦枠10,10と、下枠11と、上枠(まぐさ)12を備え、左右の縦枠10の室外側にガイドレール2が取り付けてある。
縦枠10、下枠11、上枠12は建物の外壁13の開口部13aの周縁に取り付けられ、その枠体1には図示しない障子が開閉自在に取り付けられてサッシ窓としてある。
【0015】
前述したケース4は、左右の端面板20,20と、この左右の端面板20間に渡って取り付けした前面板21、天板22と、前述した上枠12と、天板22と上枠12に渡って取り付けした後面板23とで箱形状で、前面板21の下端部と上枠12の室外側部との間に隙間24を有している。
前述した巻取軸5はケース4内において左右の端面板20間に渡って回転自在に取り付けてある。
前述したシャッターカーテン3はケース4の隙間24を通してケース4内に入り込み、巻取軸5に連結され、その巻取軸5を正転、逆転することでシャッターカーテン3が巻き上げ、繰り下げられる。
このシャッターカーテン3を最大限巻き上げすると、
図3に仮想線で示す状態となる。
【0016】
前述した天板22は
図3、
図4に示すように、横向板22aと、この横向板22aの室内側端に一体に設けた縦向板22bで略倒T字形状で、その横向板22aの室外側寄りの下面に取付片25を有している。この取付片25は縦片25aと横片25bで鉤形状で、縦片25aが横向板22aの下面に一体に設けてある。
この天板22はアルミ材で製作してある。例えば、アルミ押出形材で製作してある。
前述した後面板23は縦板23aと上横板23bと下横板23cでコ字形状の長尺材で、左右の端面板20の縦取付片20a、上横取付片20b、下横取付片20cに固着具、例えばリベット26で固着して取り付けてある。
そして、天板22の縦向板22bが建物の外壁13に固着具、例えばねじ27で固着して取り付けてある。
【0017】
前記ケース4内には、融点がアルミの融点(781℃)以上の材料で製作した補強材30が取り付けてある。
この補強材30は天板22が溶融しても溶融することがなく、その溶融アルミを閉じ状態のシャッターカーテン3の室外側面に向けて落下するように設けてある。
これにより、天板22が溶融したときに、その溶融アルミはシャッターカーテン3よりも室外側に落下し、そのシャッターカーテン3よりも室内側には落下しないので、前述したような不具合が発生することはない。
【0018】
前述の補強材30の取り付けの一例を
図3、
図4に基づいて説明する。
この補強材30の室内外側方向の長さ(見込み寸法)は天板22の室内外側方向の長さ(見込み寸法)とほぼ同一で、通常時には最大限巻き上げた状態のシャッターカーテン3と干渉しない上方位置に保持され、シャッターカーテン3の巻き上げ、繰り下げに支障を来すことがないようにしてある。
【0019】
また、火災時や防火試験時など天板22が溶融した場合には、
図3に仮想線で示すように、室外側部が室内側部よりも低く、その室内側部が巻取軸5に接近した下向き斜めの姿勢に変位し、巻取軸5と天板22の室内側部との間を補強材30で閉塞する。
これにより、シャッターカーテン3が閉じた状態で天板22が溶融した場合、その溶融アルミは補強材30に沿って下方に流れ、シャッターカーテン3の室外側面に沿ってシャッターカーテン3よりも室外側に落下し、その溶融アルミがシャッターカーテン3よりも室内側に落下することがない。
【0020】
前述の補強材30は
図3、
図4に示すように、その横板31の室内側端と連続した立上り片32を有し、その立上り片32を天板22の室内側部、例えば縦向板22bの横向板22aよりも下方の部分に第1の固着具、例えば第1のリベット33で固着すると共に、横板31の室外側寄りが天板22の室外側寄り、例えば取付片25の横片25bに第2の固着具、例えば第2のリベット34で固着することで、補強材30を前述の上方位置に保持している。
【0021】
そして、前述の第1リベット33の付近、例えば横板31の立上り片32寄りに熱膨張性耐火材、例えば熱膨張性黒鉛35を設け、天板22が溶融する温度となると熱膨張性黒鉛35が
図3に仮想線で示すように熱膨張して第1のリベット33と、その周辺を覆うことで熱から保護するようにしてある。
【0022】
このようであるから、火災時や防火試験時に天板22の付近の温度が天板22が溶融する温度となると熱膨張性黒鉛35が熱膨張して第1のリベット33と、その周辺を覆うことで熱から保護し、溶融しないので、補強材30の室内側部は天板22の室内側部に固着された状態が維持され、第2のリベット34による固着がなくなるので、補強材30は自重等で、室内側部を支点として
図3に矢印で示すように下方に回動し、前述の下向き斜めの姿勢に変位する。
このとき、補強材30は後面板23の上横板23bの室外側端部23b−1に接して下向き斜めの姿勢が規制される。つまり、補強材30の室外側端が巻取軸5に接しても良いが、そのようにすると溶融アルミが巻取軸5に付着堆積し易いので、補強材30の室外側端を巻取軸5と離隔するために上横板23bの先端部23b−1に接して下向き姿勢を規制している。なお、後面板23の上横板23bとは別に支持部材をケース4内に設けても良い。
前述の後面板23はスチール材で製作してある。
【0023】
このようであるから、補強材30を天板22に取り付けることができ、従来のケースを利用して補強材30を有するケースとすることが可能である。
【0024】
前述の実施の形態では、ガイドレール2を枠体1の縦枠10に取り付けしたが、ガイドレール2を建物の外壁に取り付けても良い。
また、補強材30の室内側寄りを後面板23にブラケット等を用いて取り付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0025】
1…枠体、2…ガイドレール、3…シャッターカーテン、4…ケース、5…巻取軸、22…天板、30…補強材、32…第1のリベット(第1の固着具)、33…第2のリベット(第2の固着具)、35…熱膨張性黒鉛(熱膨張性耐火材)。