特許第5959222号(P5959222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959222
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0612 20160101AFI20160719BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20160719BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20160719BHJP
【FI】
   H01M8/06 G
   H01M8/04 J
   H01M8/04 N
   H01M8/12
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-30167(P2012-30167)
(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公開番号】特開2013-168264(P2013-168264A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】若林 卓
(72)【発明者】
【氏名】大八木 晋輔
(72)【発明者】
【氏名】小野 孝
(72)【発明者】
【氏名】松井 栄造
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−276616(JP,A)
【文献】 特開2007−080761(JP,A)
【文献】 特開2008−135300(JP,A)
【文献】 特開2006−252982(JP,A)
【文献】 特開2005−294000(JP,A)
【文献】 特開2006−179386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セルを有するセルスタックと、前記セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部とを容器の内部に備え、
前記容器の内部から外部へ排出される排ガスが有する熱を用いて、前記燃料電池セルに供給する酸素、及び、前記改質器に供給する原燃料、及び、前記改質器に供給する水のうちの少なくとも何れか一つを加熱する加熱装置を、前記容器の外部に、前記容器と一体に備え
前記加熱装置で加熱された酸素を前記容器の内部に導入する酸素導入路を備え、
前記酸素導入路は、前記容器の外面と接触する位置に設けられ、前記加熱装置で加熱された酸素が前記容器から熱の伝達を受けながら前記容器の内部に導入されるように構成されている固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記容器と前記加熱装置とは、それらの間に伝熱量調整部材を挟んで隣接して配置される請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記加熱装置は、前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水とを前記排ガスの熱を用いて加熱するとともに混合することで、前記改質器に供給する前記原燃料と水蒸気との混合気体を生成する請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記加熱装置は、前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水との加熱に用いられた後の前記排ガスの熱を用いて前記燃料電池セルに供給する酸素を加熱する請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記加熱装置は、前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水とを前記排ガスの熱を用いて加熱するとともに混合する第1加熱器と、前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水との加熱に用いられた後の前記排ガスの熱を用いて前記燃料電池セルに供給する酸素を加熱する第2加熱器とを有する請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器と、改質器で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セルを有するセルスタックと、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部とを備える固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池は、他のタイプの燃料電池に比べて高温(例えば、650℃〜800℃)で運転される燃料電池であるので、燃料電池からの排熱も高温となる。そのため、高温の熱が必要な熱利用機器や低温の熱で構わない熱利用機器など、幅広い機器にその高温の排熱を利用できる。
【0003】
特許文献1には、筐体(500)の内部に、改質用水の気化を行う気化部及び原燃料の水蒸気改質を行って燃料ガスを生成する改質部を有する改質器(200)と、改質器で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セル(120)を有するセルスタック(100、110)と、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部とを備える固体酸化物形燃料電池(1000)が記載されている。
加えて、特許文献1に記載の固体酸化物形燃料電池(1000)において、筐体(500)の内部は、その上面部、側面部、底面部の各壁面を板で仕切って多重構造とし、そこに、外部から導入する空気を流すための流路や、燃焼部での燃焼後のガスを含む高温の排ガスを流すための流路を隣り合わせて設けている。筐体の内部をこのような多重構造にすることで、高温の排ガスと空気との間で熱交換が行われ、その排ガスからの排熱回収が行われるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−225454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の固体酸化物形燃料電池では、上述したような筐体内部の多重構造による熱交換を行っているが、その熱交換が行われている部位は単に筐体の内部が板で仕切られた部位である。つまり、専用の熱交換器で熱交換を行うのではないため、排熱回収が充分に行われないという問題がある。
尚、筐体からの排ガスの出口に新たに専用の熱交換器を設け、その熱交換器で排ガスの熱を回収することも可能である。しかし、そのような専用の熱交換器を設けた場合、装置が大幅に大型化するという問題がある。更に、排ガスを筐体の外部に引き出して熱交換器へと導入するまでの配管部分での放熱が大きくなるので、排熱回収量が充分に得られないという問題もある。
【0006】
更に、特許文献1では、改質器での水蒸気改質に用いる水を蒸発させるための気化器の下方に、燃焼器やその燃焼器で燃焼されるアノード排ガスを排出する燃料電池セルを設けている。そのため、気化器によって大きな熱が奪われると、局所的に温度が低下したコールドスポットが発生してその近傍での燃料電池セルの性能低下や燃焼器での失火が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池セルや燃焼部の性能低下を抑制し、且つ、排熱回収性能を高めることができる固体酸化物形燃料電池を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池の特徴構成は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セルを有するセルスタックと、前記セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部とを容器の内部に備え、
前記容器の内部から外部へ排出される排ガスが有する熱を用いて、前記燃料電池セルに供給する酸素、及び、前記改質器に供給する原燃料、及び、前記改質器に供給する水のうちの少なくとも何れか一つを加熱する加熱装置を、前記容器の外部に、前記容器と一体に備え
前記加熱装置で加熱された酸素を前記容器の内部に導入する酸素導入路を備え、
前記酸素導入路は、前記容器の外面と接触する位置に設けられ、前記加熱装置で加熱された酸素が前記容器から熱の伝達を受けながら前記容器の内部に導入されるように構成されている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、改質器及びセルスタック及び燃焼部が設けられる容器からの排ガスが有する熱によって、燃料電池セルに供給する酸素、及び、改質器に供給する原燃料、及び、改質器に供給する水のうちの少なくとも何れか一つを加熱する加熱装置が、容器の外部に設けられているので、即ち、加熱装置は容器の外部で熱消費を行うように構成されているので、容器の内部での温度低下を抑制できる。その結果、容器の内部において、燃料電池セルの性能低下や燃焼部での失火といった問題の発生を抑制できる。
更に、加熱装置が容器と一体に備えられているので、容器の内部から外部へ排出される排ガスからの放熱を抑制して、排熱回収性能を高めることができる。
従って、燃料電池セルや燃焼部の性能低下を抑制し、且つ、排熱回収性能を高めることができる固体酸化物形燃料電池を提供できる。
加えて、加熱装置で加熱された酸素が容器から熱の伝達を受けて更に加熱された上で容器の内部に導入されるので、容器からの排熱を更に有効に利用できる。
【0010】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の別の特徴構成は、前記容器と前記加熱装置とは、それらの間に伝熱量調整部材を挟んで隣接して配置される点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、伝熱量調整部材を設けることで、容器を構成する部材から加熱装置を構成する部材への熱伝達を調整或いは制限することができる。つまり、伝熱量調整部材として、容器を構成する部材から加熱装置を構成する部材への熱伝達を制限するような構成を採用すれば、容器から加熱装置への熱伝達を、主に排ガスを媒体とした熱伝達によって行うことができる。或いは、伝熱量調整部材として、容器を構成する部材から加熱装置を構成する部材への熱伝達を促進するような構成を採用すれば、容器から加熱装置への熱伝達を、排ガスを媒体とした熱伝達と、容器を構成する部材から加熱装置を構成する部材への熱伝達とによって行うことができる。その結果、加熱装置において、容器からの排熱の有効利用を図ることができる。
【0012】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の更に別の特徴構成は、前記加熱装置は、前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水とを前記排ガスの熱を用いて加熱するとともに混合することで、前記改質器に供給する前記原燃料と水蒸気との混合気体を生成する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、改質器に供給する原燃料と水蒸気との混合気体が加熱装置で生成された上で容器の内部に供給される。つまり、改質器に供給する原燃料と水とは容器の外部で加熱されて混合気体とされた上で容器の内部に導入されるので、容器の内部で水に気化熱が奪われることもない。その結果、容器の内部において原燃料と水との加熱のために奪われる熱を小さくできるので、容器の内部での温度低下を抑制できる。
【0014】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の更に別の特徴構成は、前記加熱装置は、前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水との加熱に用いられた後の前記排ガスの熱を用いて前記燃料電池セルに供給する酸素を加熱する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、加熱装置において、先ず高温の排ガスが、改質器に供給する原燃料と水との加熱に用いられ、その後、相対的に温度が下がった排ガスが、燃料電池セルに供給する酸素の加熱に用いられる。つまり、高温の排ガスと、相対的に温度が下がった排ガスとを複数の用途に応じて供給することで、排ガスが有する熱の有効利用を図ることができる。
【0016】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の更に別の特徴構成は、前記加熱装置は、前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水とを前記排ガスの熱を用いて加熱するとともに混合する第1加熱器と、前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水との加熱に用いられた後の前記排ガスの熱を用いて前記燃料電池セルに供給する酸素を加熱する第2加熱器とを有する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、排ガスが、先ず相対的に高温の熱を必要とする第1加熱器において原燃料と水とを加熱するために利用され、その後、排ガスが保有する相対的に低温の熱を用いて第2加熱器において酸素が加熱される。このように、排ガスが保有する熱を高温側から低温側へと段階的に回収して、熱の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態固体酸化物形燃料電池の容器及び加熱装置の概略的な構成を示す図である。
図2】第2実施形態固体酸化物形燃料電池の容器及び加熱装置の概略的な構成を示す図である。
図3】第3実施形態固体酸化物形燃料電池の容器及び加熱装置の概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して第1実施形態の固体酸化物形燃料電池について説明する。
図1は、固体酸化物形燃料電池の容器及び加熱装置の概略的な構成を示す図である。
固体酸化物形燃料電池は、容器1の内部に、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器3と、改質器3で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セル14を有する燃料電池部(セルスタック)9と、燃料電池部9からのオフガスを燃焼する燃焼部10とを備える。
以下、容器1の内部の空間(「内部空間4」と記載する)に収容している、改質器3及び燃料電池部9及び燃焼部10などの構成について具体的に説明する。
【0022】
容器1の内部空間4に設けられる燃料電池部9は、改質器3で生成された燃料ガスが通流する燃料通流部(図示せず)と空気(即ち、酸素)が通流する空気通流部(図示せず)とを備えた複数の固体酸化物形の燃料電池セル14を電気的に直列接続した状態で備えたセルスタックにて構成されている。図示は省略するが、燃料電池セル14は、燃料極と空気極との間に固体電解質層を備えた固体酸化物形に構成される。各燃料電池セル14では、燃料通流部を燃料ガスが上向きに通流することで燃料極の全体に燃料ガスが供給され、空気通流部を上向きに空気が通流することで空気極の全体に酸素(空気)が供給される。つまり、各燃料電池セル14は、燃料通流部における燃料ガスの排出口及び空気通流部における排出口が上向きになる姿勢で横方向に並ぶ状態で、容器1の内部空間4に設置されている。
【0023】
加えて、改質器3から供給される燃料ガスを受け入れるガスマニホールド15が設けられる。複数の燃料電池セル14は、ガスマニホールド15の上方側に上述のように並ぶ状態で配置され、ガスマニホールド15と複数の燃料電池セル14における燃料通流部の下端のガス導入口とが連通接続されている。そして、ガスマニホールド15に供給された燃料ガスが複数の燃料電池セル14夫々の燃料通流部に対して下端のガス導入口から供給されて、各燃料通流部を下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供された後の排燃料ガスは、燃料電池セル14夫々の燃料通流部の上端に設けられる排出口から排出される。
【0024】
容器1の内部空間4には空気が供給される。本実施形態では、後述する加熱装置2で加熱された後の空気が、酸素導入路8を通って容器1の内部空間4に供給される。複数の燃料電池セル14夫々における空気通流部の下端部近傍には、内部空間4と燃料電池セル14の空気通流部の内部とを連通する空気供給孔(図示せず)が設けられている。複数の燃料電池セル14夫々の空気通流部には内部空間4の空気がこの空気供給孔を通して供給されて、各空気通流部を下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供された後の排空気は、燃料電池セル14の夫々の空気通流部の上端に設けられる排出口から排出される。
【0025】
燃料電池部9の上方には、各燃料電池セル14の燃料通流部から排出される排燃料ガスと空気通流部から排出される排空気(即ち、酸素)とを燃焼させる燃焼空間(即ち、燃焼部10)が形成される。つまり、燃料電池部9により燃焼部10が実現される。加えて、改質器3が、燃焼部10として機能する燃料電池部9の上方の燃焼空間に隣接して設けられている。その結果、燃焼部10で発生する燃焼熱によって、改質器3が加熱される。改質器3には原燃料ガスと水蒸気との混合ガスが供給され、改質器3において原燃料ガスの水蒸気改質が行われる。図示は省略するが、改質器3の内部には改質触媒が充填されており、この改質触媒の触媒作用によって原燃料ガスが改質処理される。
【0026】
以上のように、容器1の内部空間4には、燃料電池部9での発電反応により生じる高温の熱、及び、燃焼部10での排燃料ガスの燃焼により生じる高温の熱が存在している。そして、この高温の熱は排ガスとして、容器1の下方のガス排出部6を通って、容器1の外部に設けられ且つ容器1と一体に設けられる加熱装置2に供給される。
【0027】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池が備える加熱装置2は、容器1の内部から外部へ排出される排ガスが有する熱を用いて、燃料電池セル14に供給する酸素、及び、改質器3に供給する原燃料、及び、改質器3に供給する水のうちの少なくとも何れか一つを加熱する。
【0028】
加熱装置2は、例えばプレート型熱交換器などの種々の熱交換器を用いて構成できる。そして、加熱装置2では、容器1の内部空間4からガス排出部6を通って供給される排ガスと、空気(酸素)とが熱交換して、空気が加熱される。また、容器1と加熱装置2とは、それらの間に伝熱量調整部材5を挟んで隣接して配置される。伝熱量調整部材5を設けることで、容器1を構成する部材から加熱装置2を構成する部材への熱伝達を調整或いは制限することができる。つまり、伝熱量調整部材5として、容器1を構成する部材から加熱装置2を構成する部材への熱伝達を制限するような構成を採用すれば、容器1から加熱装置2への熱伝達を、主に排ガスを媒体とした熱伝達によって行うことができる。或いは、伝熱量調整部材5として、容器1を構成する部材から加熱装置2を構成する部材への熱伝達を促進するような構成を採用すれば、容器1から加熱装置2への熱伝達を、排ガスを媒体とした熱伝達と、容器1を構成する部材から加熱装置2を構成する部材への熱伝達とによって行うことができる。その結果、加熱装置2において、容器1からの排熱の有効利用を図ることができる。
【0029】
例えば、伝熱量調整部材5によって容器1を構成する部材から加熱装置2を構成する部材への熱伝達を制限するような場合、断熱材料を板状又はシート状に形成した構成や、断熱シートを袋状に形成し、その袋状の断熱シートの内部に粒状の断熱材料を充填した構成や、直接の接触を極力排した空間層の構成や、真空断熱層の構成などを伝熱量調整部材5として採用できる。或いは、伝熱量調整部材5によって容器1を構成する部材から加熱装置2を構成する部材への熱伝達を促進するような場合、板状に構成した金属材料などを伝熱量調整部材5として採用できる。
【0030】
また、加熱装置2で空気の加熱に利用された後の排ガスは、加熱装置2から排出され、気水分離器16に供給される。気水分離器16では、排ガス中に含まれている水蒸気が加熱装置2から排出されるまでの間に凝縮して発生した水を排ガスと分離する。気水分離器16によって水が分離された後の排ガスは排気される。気水分離器16で排ガスから分離された水は、例えば、回収して貯留された後で改質器3へ供給する水(即ち、改質用水)として再利用される。
【0031】
加熱装置2で加熱された後の空気は、酸素導入路8を通って容器1の内部空間4に導入される。この酸素導入路8は、容器1の外面から放出される熱を受けることができる位置関係(例えば、酸素導入路8の外面と容器1の外面とが接触するような位置関係など)に設けられているので、酸素導入路8を流れる空気は、容器1から熱の伝達を受けながら容器1の内部に導入される。つまり、加熱装置2で加熱された空気が容器1から熱の伝達を受けて更に加熱された上で容器1の内部に導入されるので、容器1からの排熱を更に有効に利用できる。尚、加熱装置2で加熱された空気が容器1からの熱の伝達を受けて内部空間4に導入されればよく、酸素導入路8を容器1の内側に設け、加熱装置2で加熱された後の空気が、容器1からの熱の伝達を受けながら内部空間4に導入されるようにすることもできる。また、本実施形態では、燃料電池セル14に供給される空気(酸素)が加熱装置2によって加熱される例を示すが、改質器3に供給する原燃料、又は、改質器3に供給する水が加熱されるような設計変更を行ってもよい。
【0032】
以上のように、本実施形態では、加熱装置2を、改質器3及びセルスタック及び燃焼部10が設けられる容器1の内部に設けていない。つまり、加熱装置2は、容器1の外部で空気の予熱を開始し、容器1に入る時点での空気温度を上昇させることにより、容器1およびその内部の燃料電池セル14および燃焼部10の温度を上昇させる。その結果、容器1の内部において、燃料電池セル14の性能低下や燃焼部10での失火といった問題の発生を抑制できる。更に、加熱装置2が容器1と一体に備えられているので、容器1の内部から外部へ排出される排ガスからの放熱を抑制して、排熱回収性能を高めることができる。従って、燃料電池セル14や燃焼部10の性能低下を抑制し、且つ、排熱回収性能を高めることができる固体酸化物形燃料電池を提供できる。
【0033】
<第2実施形態>
第2実施形態の固体酸化物形燃料電池は、加熱装置の機能が第1実施形態で説明した固体酸化物形燃料電池と異なっている。以下に、第2実施形態の固体酸化物形燃料電池について説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0034】
図2は、第2実施形態固体酸化物形燃料電池の容器及び加熱装置の概略的な構成を示す図である。
図示するように、加熱装置2は、改質器3に供給する原燃料ガスと改質器3に供給する水とを、容器1から排出される排ガスの熱を用いて加熱するとともに混合することで、改質器3に供給する原燃料ガスと水蒸気との混合気体を生成する。本実施形態でも、加熱装置2は、例えばプレート型熱交換器などの種々の熱交換器を用いて構成される。加熱装置2の内部の一つの流路には、原燃料ガスと水との気液混合流体が供給され、加熱装置2の内部の別の流路には、排ガスが供給される。そして、加熱装置2の内部で、気液混合流体が排ガスによって加熱されて、原燃料ガスと水蒸気との混合気体が生成される。
その後、加熱装置2で生成された原燃料ガスと水蒸気との混合気体は、容器1の内部に供給される。
【0035】
以上のように、改質器3に供給する原燃料ガスと水とは容器1の外部で加熱されて(水は気化されて)、混合気体とされた上で容器1の内部に導入されるので、容器1の内部で水に気化熱が奪われることもない。その結果、容器1の内部での温度低下を抑制できる。
【0036】
<第3実施形態>
第3実施形態の固体酸化物形燃料電池は、加熱装置の機能が上記実施形態で説明した固体酸化物形燃料電池と異なっている。以下に、第3実施形態の固体酸化物形燃料電池について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0037】
図3は、第3実施形態固体酸化物形燃料電池の容器及び加熱装置の概略的な構成を示す図である。
図示するように、加熱装置2は、改質器3に供給する原燃料と改質器3に供給する水との加熱に用いられた後の排ガスの熱を用いて燃料電池セル14に供給する酸素を加熱する。具体的には、加熱装置2は、改質器3に供給する原燃料と改質器3に供給する水とを排ガスの熱を用いて加熱するとともに混合する第1加熱器2Aと、改質器3に供給する原燃料と改質器3に供給する水との加熱に用いられた後の排ガスの熱を用いて燃料電池セル14に供給する酸素を加熱する第2加熱器2Bとを有する。本実施形態でも、第1加熱器2A及び第2加熱器2Bは、例えばプレート型熱交換器などの種々の熱交換器を用いて構成される。また、容器1と加熱装置2(第1加熱器2A及び第2加熱器2B)とは、それらの間に伝熱量調整部材5を挟んで隣接して配置される。
【0038】
本実施形態では、容器1から排出される高温の排ガスが、先ず第1加熱器2Aに供給される。第1加熱器2Aには改質器3に供給する原燃料ガス及び水との気液混合流体も供給される。そして、第1加熱器2Aでは、排ガスによって原燃料ガスと水との気液混合流体が加熱されて、原燃料ガスと水蒸気との混合気体が生成される。
第2加熱器2Bには、第1加熱器2Aでの加熱に用いられた後の排ガスと、燃料電池セル14に供給する空気(酸素)とが供給される。そして、第2加熱器2Bでは、第1加熱器2Aで用いられた後の排ガスによって燃料電池セル14に供給する空気が加熱される。
【0039】
以上のように、改質器3に供給する原燃料ガスと水とは容器1の外部で加熱されて(水は気化されて)混合気体とされた上で容器1の内部に導入され、及び、燃料電池セル14に供給する空気は容器1の外部で加熱された上で容器1の内部に導入されるので、容器1の内部での温度低下を抑制できる。
更に、第3実施形態では、加熱装置2において、先ず高温の排ガスが、改質器3に供給する原燃料と水との加熱に用いられ、その後、相対的に温度が下がった排ガスが、燃料電池セル14に供給する酸素の加熱に用いられる。つまり、高温の排ガスと、温度が下がった排ガスとを複数の用途に応じて供給することで、即ち、排ガスが保有する熱を高温側から低温側へと段階的に回収することで、熱の有効利用を図ることができる。
【0040】
<別実施形態>
上記実施形態において、固体酸化物形燃料電池の容器1の内部空間4に収容している改質器3及び燃料電池部9及び燃焼部10の構成や、加熱装置2の構成などについて概略的に説明したが、それらの構成は適宜設計可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、燃料電池セルや燃焼部の性能低下を抑制し、且つ、排熱回収性能を高めることができる固体酸化物形燃料電池に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 容器
2 加熱装置
2A 第1加熱器
2B 第2加熱器
3 改質器
5 伝熱量調整部材
8 酸素導入路
9 燃料電池部(セルスタック)
10 燃焼部
14 燃料電池セル
図1
図2
図3