(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1基板と前記第1偏光板の間又は前記第2基板と前記第2偏光板の間の少なくとも一方に配置された視角補償板、を更に含む、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【背景技術】
【0002】
垂直配向型液晶表示装置は、電圧無印加時における正面観察時リタデーションがほぼゼロであることから、各偏光板をクロスニコル配置することにより非常に良好な暗表示が得られるという特徴をもつ。この垂直配向型液晶表示装置は、さらに液晶層と各偏光板の相互間の少なくとも一方に視角補償板を配置することにより、電圧無印加時における視角特性が良好であるノーマリーブラック表示を実現することができる。
【0003】
また、上下基板間における液晶層の液晶分子のねじれ角が180°〜240°程度に設定されたSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示装置は、光学補償用セルを設けた積層構造とし、各偏光板をクロスニコル配置することにより正面観察時において良好な暗表示が得られるという特徴をもつ。ここでいう光学補償用セルとは、上記のSTN型液晶表示装置と基本的に同様の構造を有し、相対的に液晶層のねじれ方向が互いに逆で、かつ液晶層の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向が互いに直交して配置される液晶セルである。なお、上記の光学補償用セルは、同様な光学特性を有する液晶性高分子フィルムに代替させることもできる。また、上記のようなSTN型液晶表示装置において、液晶層と各偏光板の相互間に正の一軸異方性を有する位相差板を配置するフィルム補償STN型液晶表示装置も知られている。いずれのタイプのSTN型液晶表示装置においてもノーマリーブラック表示を実現できる。
【0004】
また、液晶層の液晶分子が略水平配向しており、一方の基板上に設けられた櫛歯状電極を用いて基板面と平行な電界を生じさせることにより液晶層内の配向状態を変化させるインプレーンスイッチング型液晶表示装置が知られている。このインプレーンスイッチング型液晶表示装置は、各偏光板をクロスニコル配置とし、かつ電圧無印加時の液晶層の配向方向と一方の偏光板の吸収軸とを平行にすることにより、電圧無印加時における良好な暗表示と電圧印加時の明表示を得られるノーマリーブラック表示を実現することができる。
【0005】
上記した種々のタイプの液晶表示装置のいずれにおいても、上下基板の間隙を保持して液晶層を均一な層厚とするために、上下基板間に球状のスペーサーが配置される。このような球状のスペーサーは、液晶表示装置の製造過程において、例えば特開2001−21899号公報(特許文献1)に示される乾式散布法などにより一方の基板に均等かつランダムに散布される。しかし、この手法においては、一方の基板上でランダムにスペーサーが配置されていることから表示領域にもスペーサーが入り込む。このように表示領域に入り込んだスペーサーは、電圧無印加時あるいは電圧印加時における液晶層内の配向状態に不均一性を誘発し、液晶表示装置の表示品位の低下を招く場合がある。
【0006】
これに対して、球状のスペーサーに代えて、感光性樹脂を用いた柱状のスペーサーを用いて上下基板の間隙を保持する構造の液晶表示素子が提案されている。このような構造の液晶表示装置においては、表示領域における配向不良が発現しないような位置にスペーサーを意図的に配置できることから、電圧無印加時あるいは電圧印加時における表示品位の低下を防ぐことができる。このような柱状のスペーサーは、主に、矩形状画素がマトリクス状に形成されたドットマトリクス型液晶表示装置において用いられる。この場合には、有効画素外に配置されるブラックマスク下に柱状のスペーサーを配置し、有効画素内には柱状のスペーサーを配置しない構造が広く知られている。
【0007】
ところで、一般に上記したような液晶表示装置に用いられる球状のスペーサーまたは柱状のスペーサーは、光学的な異方性を有する材料である液晶材料とは異なり、光学的な等方性を有する材料を用いて形成されている。したがって、スペーサーの配置された領域においては、液晶層と補償板間のリタデーションを相殺出来ないため、当該領域に対して少なくとも一方の基板に遮光膜を配置しない限り、正面観察時や斜め方向観察時に、スペーサーの配置された領域において光抜けが生じ、液晶表示装置の表示品位を低下させる。なお、予め配置される位置が定まっている柱状のスペーサーに対応して遮光膜を設けることは可能であるが、乾式散布法等により基板面内にランダムに配置される球状のスペーサーの場合にはそれらの位置に応じて遮光膜を設けることは困難である。他方で、柱状のスペーサー自体に遮光性能を持たせることも考えられる。具体的には、例えばカーボン粒子を分散した感光性樹脂を用いて柱状のスペーサーを形成することが考えられる。しかし、この種の感光性樹脂は膜厚を厚くすることにより感光性が低下してパターニング性が低下する傾向が見られることから、現状では2μmよりも厚い膜厚とすると、十分な遮光性能を有する柱状のスペーサーを得ることは困難である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、一実施形態の液晶表示装置の構成を模式的に示す平面図である。
図1に示すように本実施形態の液晶表示装置は、時計表示を行うことを目的としたセグメント表示型の液晶表示装置であり、点線により示した有効表示領域4内に複数のセグメント表示部3を備えている。ここでいう「有効表示領域」とは、液晶表示装置が種々の機器等に組み込まれる際にその機器筐体から外部へ露出される部分として定義される。また、液晶表示装置には、セグメント表示部3の明暗表示を制御するために外部取り出し電極端子部2が設けられている。この外部取り出し電極端子部2は裏側基板より張り出している。
【0019】
図2は、第1実施形態の液晶表示装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2に示す断面図は
図1に示したA−B線方向の断面に対応している(後述する
図5も同様)。
図2に示す第1実施形態の液晶表示装置は、対向配置された第1基板11および第2基板12と、両基板の間に配置された液晶層19を主に備える。第1基板11の外側には第1偏光板31が配置され、第2基板12の外側には第2偏光板32が配置され、第2基板12と第2偏光板32の間には視角補償板33が配置されている。液晶層19の周囲はシール材(図示省略)によって封止されている。
【0020】
第1基板12および第2基板22は、それぞれ、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。第1基板11と第2基板12との相互間には複数の柱状スペーサー20が規則的又は不規則的に配置されている。これらの柱状スペーサー20により、第1基板11と第2基板12との間隙が所定距離(例えば数μm程度)に保たれる。
【0021】
液晶層19は、第1基板11と第2基板12の相互間に設けられている。この液晶層19は、例えば、誘電率異方性Δεが負(Δε<0)の液晶材料(ネマティック液晶材料)を用いて構成されており、モノドメインの垂直配向に配向制御されている。
【0022】
第1偏光板31および第2偏光板32は、例えば、各々の吸収軸が互いに略直交するように配置されている。また、第1偏光板31および第2偏光板32は、いずれか一方の吸収軸が有効表示領域4の左右方向に対して時計回りに45°、他方の吸収軸が反時計回りに45°に配置されている。視角補償板33は、例えば負の二軸光学異方性を有する光学板であり、第2基板12と第2偏光板32の間に配置されている。なお、この視角補償板33は、第1基板11と第1偏光板31の間に配置されていてもよい。また、第1基板11と第1偏光板31の間、第2基板12と第2偏光板32の間の双方に視角補償板が配置されてもよい。
【0023】
電極13および引き回し線14は、それぞれ第1基板11の一面上に設けられている。また、電極16および引き回し線17は、それぞれ第2基板2の一面上に設けられている。各電極13、16および各引き回し線14、17は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。ここでは、電極13と電極16とが対向する領域がセグメント表示部3に相当する。
【0024】
配向膜15は、第1基板11の一面側に電極13および引き回し線部14を覆うようにして設けられている。同様に、配向膜18は、第2基板12の一面側に、電極16および引き回し線部17を覆うようにして設けられている。本実施形態においては、配向膜15および配向膜18として液晶層19の初期状態(電圧無印加時)における配向状態を垂直配向状態に規制するもの(垂直配向膜)が用いられている。各配向膜15、18にはラビング処理等の配向処理が施されており、各配向膜15、18は液晶層19の液晶分子に対して90°に近い角度のプレティルト角を付与する。
【0025】
柱状スペーサー20は、第2基板12の配向膜18上に設けられ、かつ第1基板11と第2基板12の間に配置されている。これらの柱状スペーサー20は、第1基板11と第2基板12の間隙を保持するために設けられたものである。本実施形態の各柱状スペーサー20は、液晶性を有する感光性樹脂を用いて形成されている。これら柱状スペーサー20は、その形成材料の屈折率異方性が液晶層19に用いる液晶材料の屈折率異方性と略等しいことが好ましく、また導電性を有しないことも好ましい。
【0026】
各柱状スペーサー20は、液晶層19の電圧無印加時における配向状態とほぼ等しい配向状態を有する。このような分子配向状態は、柱状スペーサー20の形成時に、第2基板12上に設けられた配向膜18による配向規制力を利用することで実現できる。具体的には、各柱状スペーサー20は、所定の材料液を第2基板12の配向膜18上に塗布し、所定領域のみが感光される様に遮光膜でパターニングされたフォトマスクに略密着された状態で紫外線を露光後、アルカリ水溶液にて現像、焼成することによりパターン形成される。このとき、配向膜18上に塗布されることでこの配向膜18による配向規制力を受ける。
【0027】
各柱状スペーサー20の厚さをd1、屈折率異方性をΔn1、液晶層19の厚さをd2、液晶材料の屈折率異方性をΔn2とすると、Δn1とΔn2を略等しくすることにより、各柱状スペーサー20が配置された領域のリタデーションΔn1d1と液晶層19におけるそれ以外の領域のリタデーションΔn2d2をほぼ等しくすることができる。
【0028】
次に、各柱状スペーサー20の面内の配置パターンについて説明する。
図1に示した液晶表示装置の有効表示領域4には、電極13と電極16が重畳した領域である「表示部」と、一方の基板にのみ引き回し線14または引き回し線17が存在する「引き回し線部」と、両基板ともに電極も引き回し線も存在しない「非表示部」とが含まれる。このような電極および引き回し線の具体例を以下に説明する。
図3(A)は第1基板11に設けられる電極13および引き回し線14の一例を示す平面図であり、
図3(B)は第2基板12に設けられる電極16および引き回し線17の一例を示す平面図である。ここでは、液晶表示装置をスタティック駆動にて動作させる場合の電極パターン例を示している。
図3(A)に示す第1基板11は、セグメント電極外部取り出し端子24、コモン電極外部取り出し端子25、導通パッド部26、セグメント電極引き回し線27、枠状シール部28を備えている。また、
図3(B)に示す第2基板12は、コモン電極引き回し線29と導通バッド部30を備えている。
【0029】
ここで、従来の液晶表示装置の多くはドットマトリクス型電極構造を有しており、表示部以外で、かつ遮光膜を配置した領域に柱状スペーサーを配置することが行われてきた。しかし、本実施形態の液晶表示装置は、遮光膜を有しておらず、かつ表示部の1画素における面積が複数の表示部で等しいドットマトリクス型電極構造だけでなく、文字や数字等の所望の形状の表示を実現する表示部が複数存在する場合を想定していることから、表示部内にも柱状スペーサーを配置しなければ第1基板11と第2基板を略平行に支持することが困難になり、液晶層の層厚ムラによる表示品位の低下を引き起こすと考えられる。したがって、
図3(A)に示す第2基板12のセグメント電極パターンにおいては、例えば、右側に注入口を備える枠状シール部28内の電極配置部および非配置部の全領域に対して規則的、又は不規則的な間隔で各柱状スペーサー20を配置することが有効である。
【0030】
図4(A)〜
図4(D)は、それぞれ各柱状スペーサー20の形状および配置パターンを例示する平面図である。ここでは第2基板12の法線方向から観察したときの各柱状スペーサー20の形状および配置パターンの一例が示されている。
図4(A)に示す各柱状スペーサー20は、それぞれが正方形状に形成されており、上下左右の各方向に等間隔に配置されている。
図4(B)に示す各柱状スペーサー20は、それぞれがひし形状に形成されており、上下左右の各方向に等間隔に配置されている。同様に、
図4(C)に示す各柱状スペーサー20は、それぞれが円形状に形成されており、上下左右の各方向に等間隔に配置されている。
図4(D)に示す各柱状スペーサー20は、左右方向に対して長い矩形状(帯状)に形成されており、左右方向について間欠的に配置され、上下方向に対して等間隔に配置されている。なお、矩形状の柱状スペーサー20は、左右方向に対して一続きに形成されていてもよい。なお、必ずしもシール枠部28内の全域で同じパターンが用いられなくてもよく、
図4(A)〜
図4(D)に示す各形状および配置パターンのうち2つ以上のパターンが用いられてもよい。
【0031】
ここで、上記したように液晶表示装置には、「表示部」、「引き回し線部」および「非表示部」が存在する。例えば、各電極や引き回し線のシート抵抗が10Ω/sq.であるとすると、それらの膜厚は略250nmとなることから、電極や引き回し線の有無により液晶層の層厚が変化する懸念がある。従来の球状スペーサーを用いる液晶表示装置の場合においても、単位面積当たりのスペーサー配置数によって上下基板の間隔が変化する傾向があり、配置量が少ないと上下基板間が狭くなり、ある一定数値まではスペーサー個数が増加するに従って上下基板間が広くなる傾向が観察される。これは上記で示した乾式散布法で基板全面に球状スペーサーを散布してスペーサーを配置する手法で見られる傾向である。このような不都合に対しては、上記した「表示部」、「非表示部」、「引き回し部」のそれぞれで柱状スペーサーの配置間隔を変化させることにより、各部における上下基板間距離を制御できると考えられる。すなわち、「表示部」において最も配置間隔が狭く、次に「引き回し線部」、「非表示部」が最も広くなるように各柱状スペーサー20を配置すれば、電極の有無による段差によって生じる上下基板間距離の差を緩和することができると考えられる。また、上記した「表示部」、「非表示部」、「引き回し部」のそれぞれで、基板法線方向から観察した時の各柱状スペーサー20の形状および配置パターンを異なるようにすることも可能と考えられる。特に「表示部」以外の「引き回し線部」と「非表示部」は、各柱状スペーサー20の配置面積をより大きくしたとしても「表示部」がスイッチングした時への影響がないことからそのような措置をとりやすい。
【0032】
図5は、第2実施形態の液晶表示装置の構成を模式的に示す断面図である。第2実施形態の液晶表示装置は、柱状スペーサー20の構成材料の屈折率異方性Δn1が液晶層19の液晶材料の屈折率異方性Δn2よりも大きい場合に適した構造を有する。なお、第1実施形態の液晶表示装置(
図2参照)と共通する構成要素については同一符号を付しており、それらについては詳細な説明を省略する。第2実施形態の液晶表示装置は上記した第1実施形態の液晶表示装置との比較では、第2基板12上に、各柱状スペーサー20にそれぞれ対応付けて透光性樹脂からなる突起部21が設けられた点が主に異なっている。
【0033】
各突起部21は、第2基板12の一面側において各柱状スペーサー20のそれぞれとの間に配置されている。これらの突起部21は、光学的に等方性の透明樹脂を用いて形成されている。
【0034】
配向膜18は、第2基板12の一面側において電極16、引き回し線17および各突起部21を覆って形成されている。
【0035】
各柱状スペーサー20は、第2基板12の配向膜18上に設けられ、かつ第1基板11と第2基板12の間に配置されている。第2実施形態における各柱状スペーサー20は、液晶層19の液晶材料よりも屈折率異方性が大きく、かつその分子配向状態が液晶層とほぼ等しく形成されている。
【0036】
このように、各柱状スペーサー20に対応づけて各突起部21を設けることで、各突起部21の存在しない領域の液晶層19の厚さd2と、各柱状スペーサー20の厚さd1に差を与えることができる。すなわち、各柱状スペーサー20の屈折率異方性をΔn1、液晶層19の液晶材料の屈折率異方性をΔn2とし、Δn1>Δn2である場合には、各柱状スペーサー20の厚さd1と液晶層19の厚さd2の関係を適宜調整することにより、Δn1d1とΔn2d2を略等しくすることができる。
【0037】
以上のような各実施形態によれば、液晶性樹脂からなり液晶層と略同等な分子配向状態の複数の柱状スペーサーを用いて第1基板と第2基板の間隙を保持する構造を採用することにより、各柱状スペーサーと液晶層の光学特性(具体的にはリタデーション)をほぼ等しくすることができる。このため、液晶層への電圧無印加時においては、外観上はほぼ同等に観察され、電圧印加時においても液晶層の表示部以外と同じ光学特性を示すことから、従来の光学的に等方性の樹脂を用いた柱状スペーサーを用いた場合における表示品位の低下を抑制することが可能になる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した各実施形態では垂直配向型の液晶表示装置を例示したが、前述したようなSTN型液晶表示装置やインプレーンスイッチング型液晶表示装置など種々の液晶表示装置において本発明を適用することが可能である。また、液晶表示装置の駆動方法については、スタティック駆動法のほか、マルチプレックス駆動法、アクティブマトリクス駆動法などいずれであってもよい。液晶表示装置の表示部の形式についても、セグメント表示、セグメント表示とドット表示の混合、ドットマトリクス表示のいずれであってもよい。
【0039】
(実施例1)
以下、Δn1とΔn2が略等しく、かつ液晶層が垂直配向である液晶表示装置の実施例を説明する。
【0040】
厚さ0.7mmの青板ガラスの一方の面を研磨した後にSiO
2膜によるアンダーコートを施し、さらにITO(インジウム錫酸化物)からなる透明導電膜を基板全面に成膜してなるシート抵抗30Ω/sq.の基板(下基板)を用意した。そして、この下基板の透明導電膜に対してフォトリソグラフィー工程およびウェットエッチング工程を行うことにより、セグメント表示部に対応したパターンの透明電極を形成した。
【0041】
次に、透明電極を形成した下基板に、表面自由エネルギーが37.5mN/mを示す垂直配向膜をフレキソ印刷にてパターン形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の上方向に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0042】
次いで、一方の基板上に、屈折率異方性が約0.1であり液晶性を示す感光性樹脂を含有する溶液をスピンナーにて塗布し、60℃で120秒間のプリベーク後、所望のパターンのフォトマスクを介して密着露光機にて高圧水銀ランプ光源による紫外線を1000mJ露光した。露光後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)0.1%水溶液にて浸漬現像を行い、純水リンスすることにより現像液と純水を置換し、下基板を乾燥させ、240℃のオーブンにて20分間焼成した。なお、フォトマスクには一辺20μmのひし形状パターン(
図4(B)参照)を上下左右それぞれに100μm間隔にてシール枠内全面に配置した。なお、触針式段差計の測定結果から樹脂膜の膜厚は約3.0μmであった。
【0043】
上基板も下基板と同様にして所定パターンの透明電極を形成した後に垂直配向膜を形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の下方向に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0044】
次に、下基板側に粒径が3.2μmのシリカ粒子が2wt%混入したシール材を両基板が重なる面内領域外形枠より1mm小さく枠状にディスペンサーにて塗布した。ただし、下基板側にある導通パッド部では粒径3.5μmの金コートプラスティック粒子が2wt%、上記シリカ粒子に加えて混入されている。また、液晶表示装置の右側辺の一部に真空注入用の注入口を配置した。上基板と下基板を基板端面にて位置合わせして貼り合わせ、一定の圧力でプレスした状態にて150℃で60分間焼成した。
【0045】
次に、注入口から上基板と下基板の間にΔεが負でΔnが約0.1の液晶材料を真空注入にて注入し、注入口を紫外線硬化樹脂で封止した後、120℃で60分間焼成した。
【0046】
その後、上基板と下基板の合体物であるセルを中性洗剤で洗浄し乾燥させた後、下基板の外側に、面内位相差55nmで厚さ方向位相差が220nmの負の二軸光学異方性を有する視角補償板が一体となっている偏光板をその吸収軸方向が液晶層の層厚方向の略中央における分子配向方向に対して略45°になるようにして貼り合わせた。同様に、上基板の外側に、偏光板をその吸収軸方向が下基板側の偏光板の吸収軸方向と略直交するようにして貼り合わせた。以上により実施例1の液晶表示装置が完成した。
【0047】
実施例1の液晶表示装置にリードフレームを介して駆動回路に接続して液晶表示装置を動作させ、その正面観察時の動作を確認したところ、
図1に示した表示パターンが得られていることが確認できた。電圧無印加時および電圧無印加領域はともに、正面観察時はもちろんのこと、液晶表示装置の表示面法線方向から斜めより観察したとしても柱状スペーサーによる光抜けが観察されないことから、液晶性を有する感光性樹脂からなる各柱状スペーサーの分子配向状態が液晶層の配向状態とほぼ一致しており、リタデーション自体もほぼ同等であり、上下基板内のリタデーションと視角補償板によるリタデーションが良好に相殺されていることが分かった。
【0048】
(実施例2)
以下、Δn1とΔn2が略等しく設定されたインプレーンスイッチング型液晶表示装置の実施例を説明する。
【0049】
インプレーンスイッチング型液晶表示装置は、一方の基板上にセグメント電極およびコモン電極が配置され、上下基板を導通させるパッドは配置されない。具体的には、表示部では、それぞれ櫛歯状に形成されたセグメント電極が液晶表示装置の上側から下側へ、コモン電極が下側から上側へ延在する電極構造を有する。液晶層は、Δε<0の液晶材料を用いて形成されており、電圧無印加時において液晶分子が液晶表示装置の左右方向に水平配向するよう配向制御されている。上下偏光板の一方の吸収軸を液晶分子の配向方向と略平行に配置し、他方の吸収軸を略直交に配置した。なお、櫛歯状の電極は、コモン電極とセグメント電極間距離が略20μm、各電極枝の幅が15μmで、延在方向に対して±3°交互に屈曲した構造とした。
【0050】
厚さ0.7mmの青板ガラスの一方の面を研磨した後にSiO
2膜によるアンダーコートを施し、さらにITO(インジウム錫酸化物)からなる透明導電膜を基板全面に成膜してなるシート抵抗10Ω/sq.の基板(下基板)を用意した。そして、この下基板の透明導電膜に対してフォトリソグラフィー工程およびウェットエッチング工程を行うことにより、セグメント電極およびコモン電極に対応したパターンの透明電極を形成した。
【0051】
次に、透明電極を形成した下基板に、水平配向膜をフレキソ印刷にてパターン形成し、この水平配向膜に対して、櫛歯状電極の延在方向と直交する方向へのラビング処理により液晶表示装置の左方向に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0052】
次いで、一方の基板上に、屈折率異方性が約0.1であり液晶性を示す感光性樹脂を含有する溶液をスピンナーにて塗布し、60℃で120秒間のプリベーク後、所望のパターンのフォトマスクを介して密着露光機にて高圧水銀ランプ光源による紫外線を1000mJ露光した。露光後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)0.1%水溶液にて浸漬現像を行い、純水リンスすることにより現像液と純水を置換し、下基板を乾燥させ、240℃のオーブンにて20分間焼成した。なお、フォトマスクには一辺20μmのひし形状パターン(
図4(B)参照)を上下左右それぞれに100μm間隔にてシール枠内全面に配置した。なお、触針式段差計の測定結果から樹脂膜の膜厚は約3.0μmであった。
【0053】
上基板については透明電極を形成せずに、水平垂直配向膜を形成し、この水平配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の右方向に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0054】
次に、下基板側に粒径が3.2μmのシリカ粒子が2wt%混入したシール材を両基板が重なる面内領域外形枠より1mm小さく枠状にディスペンサーにて塗布した。また、液晶表示装置の右側辺の一部に真空注入用の注入口を配置した。上基板と下基板を基板端面にて位置合わせして貼り合わせ、一定の圧力でプレスした状態にて150℃で60分間焼成した。
【0055】
次に、注入口から上基板と下基板の間にΔεが正でΔnが約0.1の液晶材料を真空注入にて注入し、注入口を紫外線硬化樹脂で封止した後、120℃で60分間焼成した。
【0056】
その後、上基板と下基板の合体物であるセルを中性洗剤で洗浄し乾燥させた後、下基板の外側に、厚さ方向位相差が略0nmである、正の一軸又は二軸光学異方性を有する視角補償板が一体となっている偏光板をその吸収軸方向が液晶層の分子配向方向に対して吸収軸が略平行となるようにして貼り合わせた。同様に、上基板の外側に、偏光板をその吸収軸方向が下基板側の偏光板の吸収軸方向と略直交するようにして貼り合わせた。以上により実施例2の液晶表示装置が完成した。
【0057】
実施例2の液晶表示装置にリードフレームを介して駆動回路に接続して液晶表示装置を動作させ、その正面観察時の動作を確認したところ、
図1に示した表示パターンが得られていることが確認できた。電圧無印加時および電圧無印加領域はともに、正面観察時はもちろんのこと、液晶表示装置の表示面法線方向から斜めより観察したとしても柱状スペーサーによる光抜けが観察されないことから、液晶性を有する感光性樹脂からなる各柱状スペーサーの分子配向状態が液晶層の配向状態とほぼ一致しており、リタデーション自体もほぼ同等であり、上下基板内のリタデーションと視角補償板によるリタデーションが良好に相殺されていることが分かった。
【0058】
(実施例3)
以下、Δn1>Δn2であり、かつ液晶層が垂直配向である液晶表示装置の実施例を説明する。
【0059】
厚さ0.7mmの青板ガラスの一方の面を研磨した後にSiO
2膜によるアンダーコートを施し、さらにITO(インジウム錫酸化物)からなる透明導電膜を基板全面に成膜してなるシート抵抗30Ω/sq.の基板(下基板)を用意した。そして、この下基板の透明導電膜に対してフォトリソグラフィー工程およびウェットエッチング工程を行うことにより、セグメント表示部に対応したパターンの透明電極を形成した。
【0060】
この下基板に、ネガ型透光性感光性樹脂をスピンナーで塗布し、ホットプレート上で100℃、120秒間仮焼成した後、所望のパターンのフォトマスクを介して密着露光機にて200mJ露光した。露光後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)1%水溶液にて浸漬現像を行い、純水リンスすることにより現像液と純水を置換し、基板を乾燥させ、220℃のオーブンにて30分間焼成した。なお、触針式段差計の測定結果から、この透光性感光性樹脂からなる突起部の厚さは約1.0μmであった。
【0061】
次に、透明電極を形成した下基板に、表面自由エネルギーが37.5mN/mを示す垂直配向膜をフレキソ印刷にてパターン形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の上方向に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0062】
次いで、下基板に、屈折率異方性が約0.1であり液晶性を示す感光性樹脂を含有する溶液をスピンナーにて塗布し、60℃で120秒間のプリベーク後、上記した透光性感光性樹脂からなる突起部を形成したときと同じパターンのフォトマスクを介して密着露光機にて高圧水銀ランプ光源による紫外線を1000mJ露光した。露光後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)0.1%水溶液にて浸漬現像を行い、純水リンスすることにより現像液と純水を置換し、下基板を乾燥させ、240℃のオーブンにて20分間焼成した。なお、フォトマスクには一辺20μmのひし形状パターン(
図4(B)参照)を上下左右それぞれに100μm間隔にてシール枠内全面に配置した。なお、触針式段差計の測定結果から樹脂膜の膜厚は約3.0μmであった。
【0063】
上基板も下基板と同様にして所定パターンの透明電極を形成した後に垂直配向膜を形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の下方向に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0064】
次に、下基板側に粒径が3.2μmのシリカ粒子が2wt%混入したシール材を両基板が重なる面内領域外形枠より1mm小さく枠状にディスペンサーにて塗布した。ただし、下基板側にある導通パッド部では粒径3.5μmの金コートプラスティック粒子が2wt%、上記シリカ粒子に加えて混入されている。また、液晶表示装置の右側辺の一部に真空注入用の注入口を配置した。上基板と下基板を基板端面にて位置合わせして貼り合わせ、一定の圧力でプレスした状態にて150℃で60分間焼成した。
【0065】
次に、注入口から上基板と下基板の間にΔεが負でΔnが約0.0914の液晶材料を真空注入にて注入し、注入口を紫外線硬化樹脂で封止した後、120℃で60分間焼成した。
【0066】
その後、上基板と下基板の合体物であるセルを中性洗剤で洗浄し乾燥させた後、下基板の外側に、面内位相差55nmで厚さ方向位相差が220nmの負の二軸光学異方性を有する視角補償板が一体となっている偏光板をその吸収軸方向が液晶層の層厚方向の略中央における分子配向方向に対して吸収軸が略45°になるようにして貼り合わせた。同様に、上基板の外側に、偏光板をその吸収軸方向が下基板側の偏光板の吸収軸方向と略直交するようにして貼り合わせた。以上により実施例3の液晶表示装置が完成した。
【0067】
実施例3の液晶表示装置にリードフレームを介して駆動回路に接続して液晶表示装置を動作させ、その正面観察時の動作を確認したところ、
図1に示した表示パターンが得られていることが確認できた。電圧無印加時および電圧無印加領域はともに、正面観察時はもちろんのこと、液晶表示装置の表示面法線方向から斜めより観察したとしても柱状スペーサーによる光抜けが観察されないことから、液晶性を有する感光性樹脂からなる各柱状スペーサーの分子配向状態が液晶層の配向状態とほぼ一致しており、リタデーション自体もほぼ同等であり、上下基板内のリタデーションと視角補償板によるリタデーションが良好に相殺されていることが分かった。