特許第5959238号(P5959238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959238
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】車両制御装置、及び、車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B60R16/02 650J
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-49084(P2012-49084)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-184494(P2013-184494A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】富士通テン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小宮 基樹
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−132098(JP,A)
【文献】 特開2003−167681(JP,A)
【文献】 特開2000−018082(JP,A)
【文献】 特開平08−247011(JP,A)
【文献】 特開2002−323902(JP,A)
【文献】 米国特許第06243627(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源が供給される電源ラインにヒューズを介して接続される車両制御装置であって、
イグニッションスイッチがオンされると所定時間経過後に起動する制御手段と、
車両データを記憶する不揮発性の記憶手段と、
前記電源ライン上に設けられた着脱可能なヒューズ後段の電圧を検出する電圧検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記イグニッションスイッチのオンから前記所定時間経過後の該制御手段の起動時に、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧が検出された場合は、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去すること、
を特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記所定値未満の電圧は、定格以上の大電流から自装置を保護するために前記電源ラインに設けられた前記ヒューズの取り外しによって生じる電圧である
こと、
を特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両制御装置において、
イグニッションスイッチのオン又はオフを検出するIG検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧検出され、かつ、前記IG検出手段によりイグニッションスイッチのオン検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去すること、
を特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両制御装置において、
イグニッションスイッチがオンされると駆動するリレーから供給される電圧を検出する
リレー電圧検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧検出され、かつ、前記リレー電圧検出手段により所定値以上の電圧検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去することを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
電源が供給される電源ラインにヒューズを介して接続される車両制御装置によるデータ処理方法であって、
(a)イグニッションスイッチがオンされると所定時間経過後に起動する工程と、
(b)前記電源ライン上に設けられた着脱可能なヒューズ後段の電圧を検出する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記イグニッションスイッチのオンから前記所定時間経過後の制御手段の起動時に、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧が検出された場合は、不揮発性の記憶手段に記憶された車両データを消去すること、
を特徴とするデータ処理方法。
【請求項6】
電源が供給される電源ラインにヒューズを介して接続される車両制御装置であって、
イグニッションスイッチがオンされると起動する制御手段と、
車両データを記憶する不揮発性の記憶手段と、
前記電源ライン上に設けられた着脱可能なヒューズ後段の電圧を検出する電圧検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧が検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去し、
前記所定値未満の電圧は、定格以上の大電流から自装置を保護するために前記電源ラインに設けられた前記ヒューズの取り外しによって生じる電圧であること、
を特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
電源が供給される電源ラインにヒューズを介して接続される車両制御装置であって、
イグニッションスイッチがオンされると起動する制御手段と、
車両データを記憶する不揮発性の記憶手段と、
前記電源ライン上に設けられた着脱可能なヒューズ後段の電圧を検出する電圧検出手段と、
イグニッションスイッチがオンされると駆動するリレーから供給される電圧を検出する
リレー電圧検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧が検出され、かつ、前記リレー電圧検出手段により所定値以上の電圧が検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去すること、
を特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられている不揮発性の記憶手段に記憶されたデータを消去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両にはエンジンの燃料噴射装置を制御する制御装置が備えられている。この制御装置は、過去の制御結果を用いて制御パラメータ等を修正する、いわゆる学習制御を行っている。例えば、前記制御装置は、噴射タイミングや噴射量等の制御値を学習値として記憶し、次回の制御の際に用いている。また、エンジンを制御するセンサーの故障を自己診断する機能が設けられている場合には、診断結果(ダイアグコード)を記憶する場合もある。
【0003】
これら学習値やダイアグコードは、RAM(Random Access Memory)に記憶させている。RAMは揮発性メモリであるため、イグニッションスイッチをオフにした後にもデータを保持し続けるための保持用電源が設けられている。この保持用電源は、バッテリから電源が供給されているので、何らかの要因でバッテリが外されるとRAMへの電力供給が途絶え、RAMに記憶されていたデータは消去されてしまう。
【0004】
逆にこれを利用して、学習値やダイアグコードを消去したい場合に、バッテリを外して消去することがある。例えば、ダイアグコードを消去する場合には、一般的には専用のツールが必要となるが、そのようなツールがない場合であっても単にバッテリを外して再度接続するだけでデータを消去することが可能になる。
【0005】
一方で、保持用電源は高価であるため、コストダウンを目的としてフラッシュROMやEEPROM等のROM(Read Only Memory)を用いることがある。ところが、ROMは不揮発性メモリであるため、バッテリを外しただけではデータは消去されない。このため、データを消去したい場合であっても、専用のツールがないと消去できないことになる。このような問題を回避するために、専用のツールを使わずにROMのデータを消去する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-247011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、故障診断モードにするために専用の端子を別に設ける必要があり、汎用性に欠けるとともにコストアップにつながる。また、故障診断モードにして、かつ、スタートキーをACC位置とIG位置との間において、所定の時間内に所定の回数だけ反復切替え操作を行わなければ消去できず、データ消去のための操作及び処理が煩雑である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フラッシュROM等の不揮発性メモリを用いた場合であっても、新たな構成を追加することなく簡単な操作でデータの消去が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、電源が供給される電源ラインにヒューズを介して接続される車両制御装置であって、イグニッションスイッチがオンされると所定時間経過後に起動する制御手段と、車両データを記憶する不揮発性の記憶手段と、前記電源ライン上に設けられた着脱可能なヒューズ後段の電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記イグニッションスイッチのオンから前記所定時間経過後の該制御手段の起動時に、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧が検出された場合は、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去する。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の車両制御装置において、前記所定値未満の電圧は、定格以上の大電流から自装置を保護するために前記電源ラインに設けられた前記ヒューズの取り外しによって生じる電圧である。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の車両制御装置において、イグニッションスイッチのオン又はオフを検出するIG検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧検出され、かつ、前記IG検出手段によりイグニッションスイッチのオン検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去する。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1または2に記載の車両制御装置において、イグニッションスイッチがオンされると駆動するリレーから供給される電圧を検出するリレー電圧検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧検出され、かつ、前記リレー電圧検出手段により所定値以上の電圧検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去する。
【0013】
また、請求項5の発明は、電源が供給される電源ラインにヒューズを介して接続される車両制御装置によるデータ処理方法であって、(a)イグニッションスイッチがオンされると所定時間経過後に起動する工程と、(b)前記電源ライン上に設けられた着脱可能なヒューズ後段の電圧を検出する工程と、を備え、前記工程(b)は、前記イグニッションスイッチのオンから前記所定時間経過後の制御手段の起動時に、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧が検出された場合は、不揮発性の記憶手段に記憶された車両データを消去する。
また、請求項6の発明は、電源が供給される電源ラインにヒューズを介して接続される車両制御装置であって、イグニッションスイッチがオンされると起動する制御手段と、車両データを記憶する不揮発性の記憶手段と、前記電源ライン上に設けられた着脱可能なヒューズ後段の電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧が検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去し、前記所定値未満の電圧は、定格以上の大電流から自装置を保護するために前記電源ラインに設けられた前記ヒューズの取り外しによって生じる電圧である。
また、請求項7の発明は、電源が供給される電源ラインにヒューズを介して接続される車両制御装置であって、イグニッションスイッチがオンされると起動する制御手段と、車両データを記憶する不揮発性の記憶手段と、前記電源ライン上に設けられた着脱可能なヒューズ後段の電圧を検出する電圧検出手段と、イグニッションスイッチがオンされると駆動するリレーから供給される電圧を検出するリレー電圧検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記電圧検出手段により所定値未満の電圧が検出され、かつ、前記リレー電圧検出手段により所定値以上の電圧が検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両データを消去する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし5の発明によれば、バッテリ電源が直接供給される電源ライン上に設けられた着脱可能な電気機器後段の電圧を検出することで、電気機器が取り付けられている際の電圧と、取り外されている際の電圧とを個別に検出することができる。このため、制御手段は、検出結果から電気機器の着脱状態を判断することができ、電気機器が取り外された場合等、検出結果に応じた車両データの消去を行うことが可能となる。
【0015】
また、特に請求項2の発明によれば、制御手段が起動している状態で、電圧検出手段が所定値以下の電圧を検出することで、電気機器が取り外された状態であることを容易に検出することができる。
【0016】
また、特に請求項3及び4の発明によれば、電圧検出手段の検出結果に加えて、制御手段が起動していることを示す他の検出結果を用いることで、電気機器の着脱状態をより精度よく判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、車両制御システムの概要構成を示すブロック図である。
図2図2は、車両制御システムの処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、車両制御システムの各種信号の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る車両制御システムは、車載装置を制御する車両制御装置を含むシステムであり、イグニッションスイッチがオンされるとバッテリからの電源が供給されるものを基本構成としている。また、本発明の車両制御システムは、特に、バッテリから供給される電源電圧を監視して、この電圧値をフラッシュROMのデータ消去の判定条件に用いるシステムである。本発明の車両制御システムは、例えば、燃料噴射装置を制御する車両制御装置に用いることができる。以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
<1.システムの構成>
図1は、第1の実施の形態に係る車両制御システム100の概略構成を示す図である。図1に示すように、車両制御システム100は、バッテリ1と、イグニッションスイッチ2と、メインリレー3と、ヒューズ4と、車両制御装置5とを備えている。
【0020】
バッテリ1は、車両各部の電気負荷に電源を供給するものである。このバッテリ1には電源ライン6が接続されており、この電源ライン6にはイグニッションスイッチ2や、メインリレー3、ヒューズ4、車両制御装置5が各々設けられた接続ラインが接続されている。なお、以下においては、バッテリ1から直接車両制御装置5に供給される電圧を「BATT」と記載し、バッテリ1からメインリレー3を介して車両制御装置5に供給される電圧を「+B」と記載する。
【0021】
イグニッションスイッチ2は、主として車両制御装置5をはじめとして図示せぬ各種制御装置にバッテリ1の電源電圧を供給するためのスイッチである。イグニッションスイッチ2がオンされると、バッテリ1と車両制御装置5とが接続され、オフされると接続が切断される。イグニッションスイッチ2は、例えば、キーシリンダーにキーを差し込んで回転させることによりスイッチをオンさせるメカ式のものを用いてもよく、スタートボタンを押すことでスイッチをオンさせるプッシュスタート式のものを用いてもよい。なお、以下においては、イグニッションスイッチ2を介して車両制御装置5に供給される電圧信号を「IGSW」と記載する。
【0022】
メインリレー3は、車両制御装置5に電源を供給するリレーである。具体的には、メインリレー3は、リレーコイル3aとリレースイッチ3bとを備えており、リレーコイル3aを通電すると対応するリレースイッチ3bがオンされるようになっている。これにより、メインリレー3が駆動して車両制御装置5にバッテリ1の電源が供給される。リレーコイル3aへの通電は、イグニッションスイッチ2がオンされた際に行われる。
【0023】
ヒューズ4は、定格以上の大電流から車両制御装置5を保護するものである。ヒューズ4は、バッテリ1と車両制御装置5との間の電源ライン6上に設けられた着脱可能な電気機器であり、ユーザによって取り付け及び取り外しが可能な構成となっている。
【0024】
車両制御装置5は、ECU(Electronic Control Unit)として構成されており、主たる構成要素として電源装置7と、マイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記載する)8と、電圧検出部9と、ダイオード10を備えている。車両制御装置5は、燃料噴射装置を制御する装置である場合には、電源装置7及びマイコン8の他に、燃料噴射を制御するための各種構成要素を含んでいるが、本実施の形態ではそれらの構成要素の図示及び説明は省略する。
【0025】
電源装置7は、バッテリ1から供給された電圧を所定の電圧に変換して車両制御装置5内部の各電気負荷に供給するものである。電源装置7は、イグニッションスイッチ2がオンされると、メインリレー3を駆動することでバッテリ電源が供給され、マイコン8に対して駆動のための電源を供給する。電源装置7は、この機能を実現するために、電源回路11と、IG検出部12と、リレー駆動部13とを備えている。
【0026】
電源回路11は、メインリレー3を介してバッテリ1から供給された電圧(+B)を所定の電圧に変換してマイコン8や電源装置7の各種電気負荷に供給するものである。電源回路11としては、例えば12Vを5Vに降圧するレギュレータ等を用いることができる。なお、この電源回路11は、マイコン8を駆動させるための電圧を生成するものである。本実施の形態では、マイコン駆動用の電源回路11は備えているが、データ記憶用メモリのデータ保持用電源としての電源回路は備えていない。
【0027】
IG検出部12は、イグニッションスイッチ2のオン又はオフを検出する。IG検出部12は、イグニッションスイッチ2を介してバッテリ1の電源ライン6に接続されており、イグニッションスイッチ2がオン状態の電圧とオフ状態の電圧とに応じてイグニッションスイッチ2のオン又はオフを検出する。IG検出部12は、検出結果を示す信号をリレー駆動部13及びマイコン8に出力する。
【0028】
IG検出部12は、イグニッションスイッチ2のオン又はオフを検出することができるものであればよく、その構成は限定されないが、本実施の形態におけるIG検出部12は、コンパレータ12aを備えている。コンパレータ12aの非反転入力端子は、イグニッションスイッチ2と接続されておりIGSWが入力される。また、コンパレータ12aの反転入力端子は、基準電源に接続されている。イグニッションスイッチ2がオンされると、コンパレータ12aはバッテリ1と接続されるため、非反転入力端子にはBATTが入力される。
【0029】
基準電源の電圧は、BATTと比較するための電圧に設定されており、バッテリ1と接続されているときにはコンパレータ12aからはハイ信号が出力され、接続されていないときはコンパレータ12aからはロー信号が出力される。すなわち、コンパレータ12aは、イグニッションスイッチ2がオンのときにはハイ信号を出力し、イグニッションスイッチ2がオフのときにはロー信号を出力する。コンパレータ12aから出力された信号は、リレー駆動部13及びマイコン8に入力される。なお、以下においては、コンパレータ12aから出力される信号を「IGSWO」と記載する。
【0030】
リレー駆動部13は、メインリレー3を駆動又は停止させるものである。リレー駆動部13は、メインリレー3を駆動させる際には、リレーコイル3aを通電させる信号を出力し、停止させる際には非通電の信号を出力する。リレー駆動部13には、IG検出部12からの出力信号の他に、後述するマイコン8からの出力信号が入力される。リレー駆動部13は、これら各信号に基づいてメインリレー3の駆動又は停止、すなわち通電の可否を決定する。
【0031】
リレー駆動部13は、入力した各信号に基づいてメインリレー3を駆動又は停止するものであればよく、その構成は限定されないが、本実施の形態におけるリレー駆動部13は、2入力のオア回路13aを備えている。オア回路13aの各入力端子には、コンパレータ12aからの出力信号と、マイコン8からの出力信号とが入力される。そして、これら入力信号の少なくとも1つが、イグニッションスイッチ2のオン信号か、メインリレー3の駆動を保持する信号である場合には、オア回路13aは、メインリレー3を駆動する。すなわち、オア回路13aは、リレーコイル3aを通電する旨の信号を出力する。
【0032】
一方、入力信号が前記各信号のいずれでもない場合には、オア回路13aは、メインリレー3を駆動しない。すなわち、オア回路13aは、リレーコイル3aを非通電にする旨の信号を出力する。このように、オア回路13aは、2入力のいずれか1つでもハイ信号であればハイ信号を出力してメインリレー3を駆動し、全てロー信号であればロー信号を出力してメインリレー3を駆動しないこととなる。なお、以下においては、オア回路13aから出力される信号を「MRELO」と記載する。
【0033】
なお、オア回路13aとメインリレー3との間に、リレーコイル3aを通電するための駆動源を設けてもよい。オア回路13aからメインリレー3を駆動させるだけの出力が得られない場合などに有効である。また、バッテリ1からの電源ライン6を介して直接入力されるBATTは、上記各構成要素のほかにも電源装置7内に設けられている図示しない各種電気負荷にも供給される。
【0034】
電圧検出部9は、ヒューズ4が設けられた接続ラインに接続されており、ヒューズ4後段の電圧値を検出する。電圧検出部9は、ヒューズ4が取り付けられている場合には、BATTが入力されてBATT電圧を検出するが、ヒューズ4が取り外されている場合には、BATTが入力されず検出する電圧は略0Vとなる。
【0035】
電圧検出部9は、電圧を検出することのできる構成であればよいが、本実施の形態のおける電圧検出部9は、2つの抵抗を備え、抵抗分割した値を出力する構成である。具体的には、電圧検出部9は、第1の抵抗9a及び第2の抵抗9bの抵抗値が3:1となるように設定されており、各抵抗の接続点の電圧値を出力電圧値としている。すなわち、電圧検出部9は、入力した電圧値の1/4の電圧値を出力している。例えば、バッテリ1の電圧を12Vとすると、ヒューズ4が取り付けられている場合には、電圧検出部9の出力は3Vとなり、ヒューズ4が取り外されている場合には、電圧検出部9の出力は0Vとなる。
【0036】
なお、電圧検出部9が電圧を検出する検出点の後段にはダイオード10が設けられている。また、このダイオード10の後段には、図示していないが、イグニッションスイッチ2が設けられた接続ラインから分岐したラインがダイオードを介して接続されている。すなわち、ヒューズ4が設けられた接続ラインとイグニッションスイッチ2が設けられた接続ラインとは、いわゆるダイオードオアで接続されている。このため、仮にヒューズ4が取り外されてBATTが入力されない場合であっても、電源装置7にはイグニッションスイッチ2が設けられている接続ラインを介してバッテリ1からの電源が供給される。
【0037】
また、これと同様に、ダイオード10の後段には、図示していないが、メインリレー3から+Bが供給されるラインにおいても分岐したラインがダイオードを介して接続されている。すなわち、この場合も同様に、ヒューズ4が設けられた接続ラインと+Bが供給される接続ラインとが、いわゆるダイオードオアで接続されており、ヒューズが取り外されてBATTが入力されない場合であっても、電源装置7には+B電源が供給される。
【0038】
つまり、ヒューズ4が取り外された場合であっても、いずれかの入力により電源装置7は駆動が可能である。また、いずれかの入力により電源が入力される場合であっても、ヒューズ4が設けられている接続ラインにはダイオード10が設けられているため、これらの入力電流が電圧検出部9の検出点側に逆流することはない。従って、電圧検出部9がヒューズ4後段の電圧を誤検出することはない。
【0039】
マイコン8は、CPU14、RAM15、ROM16、ADC17及びデータ記憶部18を備え、車両制御装置5全体を制御する。マイコン8が備える各種機能は、ROM16に予め記憶されたプログラムに従ってCPU14が演算処理を行うことで実現される。このようなマイコン8が備える機能には、メインリレー3を駆動又は停止する機能や、データ記憶部18のデータを記憶又は消去する機能が含まれている。
【0040】
ADC(analog to digital converter)17は、入力したアナログデータをデジタルデータに変換する。すなわち、ADC17は、電圧検出部9から出力されたバッテリ電圧値のアナログデータをデジタルデータに変換する。
【0041】
データ記憶部18は、車両制御装置5が車両を制御する際に用いる学習値や、車両の自己診断の結果(ダイアグコード)等を記憶している。データ記憶部18としては、フラッシュROMやEEPROM等の不揮発性メモリが用いられている。
【0042】
マイコン8は、電源回路11から電圧が供給されると起動する。すなわち、マイコン8は、イグニッションスイッチ2がオンされてメインリレー3が駆動した場合に起動する。また、電源回路11から供給された電圧は、前記CPU14等の各構成要素のほかにマイコン8内に設けられている図示しない各種電気負荷に供給される。
【0043】
マイコン8は、イグニッションスイッチ2がオンされて起動すると、メインリレー3の駆動を保持する信号を出力する。また、マイコン8には、コンパレータ12aからの出力信号が入力されており、マイコン8は、起動するとイグニッションスイッチ2のオン又はオフを判断している。これは、メインリレー3の駆動を保持する信号の出力又は出力停止を判断するため等である。なお、以下においては、メインリレー3の駆動を保持する信号を「保持信号」又は「MRHOLD」と記載する。この保持信号はオア回路13aに入力される。
【0044】
マイコン8は、通常の制御において電圧検出部9から入力されるバッテリ電圧値に応じて各種補正を行なうが、特に起動時にはこのバッテリ電圧値に基づいてBATTが入力されているか否かを判断し、もってヒューズ4が取り外されているか否かを判断する。具体的には、マイコン8は、起動時に、電圧検出部9の電圧値をADC17でAD変換した出力値が所定値以上の場合には、BATTが入力されていると判断し、所定値未満の場合には、BATTが入力されていないと判断する。
【0045】
BATTが入力されている状態とは、ヒューズ4が設けられた接続ラインにバッテリ1の電圧が供給されている状態であり、すなわちヒューズ4が取り付けられている状態を示している。一方、BATTが入力されていない状態とは、ヒューズ4が設けられた接続ラインにバッテリ1の電圧が供給されていない状態であり、すなわちヒューズ4が取り外されている状態を示している。
【0046】
前記所定値は、BATTの入力又は非入力を検出できる任意の値に設定すればよい。例えば、バッテリ1の電圧を12Vとすると、電圧検出部9から出力される電圧値は略0V〜3Vとなるため、電圧検出部9から出力された電圧値の1.5Vに対応するAD値を所定値として設定することができる。ただし、所定値は、これに限定されるものではなく、1.4Vや1.6V等適宜設定可能である。
【0047】
また、マイコン8は、起動後にADC17の出力に基づいてデータ記憶部18のデータを消去するか否かを判断する。ADC17の出力によりBATTが入力されていると判断した場合には、マイコン8は通常の起動であると判断してデータ記憶部18のデータの消去は行わない。すなわち、ヒューズ4が取り付けられた状態で起動した場合には、データの消去は行わない。
【0048】
一方、ADC17の出力によりBATTが入力されていないと判断した場合には、マイコン8はデータ記憶部18のデータの消去を実行する。すなわち、マイコン8自身が起動しているにも関わらず、BATTが入力されていないということから、ヒューズ4が外されている状態であると判断でき、このような場合には、マイコン8はデータ消去の処理を実行する。
【0049】
このように、本実施の形態に係る車両制御システム100は、ヒューズ4が取り外された状態でマイコン8が起動した場合に、マイコン8がそれを判断してデータ記憶部18のデータを消去するシステムである。
【0050】
<2.マイコンの処理>
次に、マイコン8の処理について図2を用いて説明する。図2は、マイコン8の処理を示すフローチャートである。
【0051】
マイコン8による処理は、車両制御装置5に+Bが入力されてマイコン8が起動することにより開始される。マイコン8は、電源が供給されて起動すると所定の起動処理を実行する(ステップS201)。本実施の形態では、マイコン8は、起動処理を開始するとデータ記憶部18のデータ消去の実行可否も判断する。
【0052】
マイコン8は、起動処理を開始するとBATTの入力があるか否かを判断する(ステップS202)。この判断は、マイコン8のADC17の出力値に基づいて行われる。マイコン8は、ADC17の出力値が所定値以上の場合には、BATTの入力ありと判断し(ステップS202でYes)、通常処理を継続する(ステップS203)。つまり、ヒューズ4が取り付けられた状態でマイコン8が起動した場合には、データ記憶部18のデータ消去は行わない。その後、マイコン8は、燃料噴射制御等通常の制御を実行した後に終了する。
【0053】
一方、マイコン8は、ADC17の出力値が所定値未満の場合には、BATTの入力なしと判断し(ステップS202でNo)、データ消去処理を実行する(ステップS204)。つまり、ヒューズ4が取り外された状態でマイコン8が起動した場合には、データ記憶部18のデータ消去を行う。その後、マイコン8は、データ消去処理を完了すると処理を終了する。この場合は燃料噴射制御等通常の制御は行なわない。なぜなら、ヒューズ4を取り外した状態でマイコン8を起動するのはデータ記憶部18のデータを消去するために行なうからである。
【0054】
<3.システムの動作>
次に、車両制御システム100の動作について図3を用いて説明する。図3は、通常の起動処理が行われた場合及びヒューズ4を取り外した状態でイグニッションスイッチ2をオンした場合における各種信号の変化を示すタイムチャートである。なお、各信号において高電圧状態を「ハイ」と記載し、低電圧状態を「ロー」と記載する。
【0055】
BATTは、ヒューズ4の出力信号を示している。BATTは、バッテリ1が接続されてヒューズ4も取り付けられている状態では例えば12Vであり、バッテリ1が接続されていない状態又は接続されているがヒューズ4が取り外された状態では0Vとなる。IGSWOは、コンパレータ12aの出力信号を示しており、イグニッションスイッチ2がオフの状態ではローであり、オンの状態でハイとなる。MRELOは、オア回路13aからの出力信号を示しており、ハイのときにリレーコイル3aが通電され、ローのときにはリレーコイル3aは通電されない。+Bは、メインリレー3を介して供給されるバッテリ1の電圧信号を示している。マイコン動作は、マイコン8の動作状況を示している。MRHOLDは、マイコン8からオア回路13aに出力される保持信号を示している。
【0056】
図3に示すタイムチャートの開始時点では、バッテリ1は取り外された状態であり(BATTがロー)、イグニッションスイッチ2もオフである(IGSWOがロー)。また、他の信号も全てローである。まず、この状態から、通常の起動処理が行われた場合について説明する。
【0057】
時点T1において、バッテリ1が接続されるとBATTが12Vになる。次に、時点T2において、イグニッションスイッチ2がオンされると(IGSWOがハイ)、オア回路13aにはハイ信号が入力されるため、オア回路13aからはハイ信号が出力される(MRELOがハイ)。すなわち、オア回路13aはリレーコイル3aを通電する信号を出力する。これにより、メインリレー3が駆動し、バッテリ1から供給される電圧が上昇する(+Bが上昇)。
【0058】
次に、時点T3において、+Bが一定の電圧に達するとマイコン8が起動して動作を開始する(マイコン動作が動作中)。マイコン8は、動作を開始するとメインリレー3の駆動を保持するために保持信号を出力する(MRHOLDがハイ)。また、マイコン8は、動作を開始すると起動処理時において、ADC17の出力を確認する。
【0059】
すなわち、マイコン8は、起動するとBATTが所定値以上であるか、所定値未満であるかを確認する。時点T3においてはBATTが12Vであり、AD変換された出力値は所定値以上となるであるため、マイコン8は、BATTが入力されている(ヒューズが取り付けられ、バッテリ1から電源が供給されている)と判断して通常の起動処理を継続し、データ記憶部18のデータを消去する処理は実行せず、燃料噴射制御等通常の制御を実行する。
【0060】
その後、時点T4において、車両の走行等の通常の処理が終了してイグニッションスイッチ2がオフになると(IGSWOがロー)、マイコン8は所定の終了処理を実行する。そして、時点T5において、マイコン8は、終了処理を実行した後にメインリレー3の駆動を停止するために保持信号の出力を停止する(MRHOLDがロー)。オア回路13aに入力される全ての信号がローとなり、オア回路13aはロー信号を出力する(MRELOがロー)。これにより、メインリレー3の駆動が停止されてバッテリ1から供給される電圧が低下する(+Bが低下)。
【0061】
そして、時点T6において、+Bが一定の電圧まで低下するとマイコン8が動作を停止し、通常処理を終了する。
【0062】
次に、データ記憶部18のデータを消去する処理が行われる場合について説明する。まず、時点T7において、データ消去の処理を行うためにヒューズ4を取り外した状態にする。これにより、電圧検出部9の検出点にBATT電圧が供給されず、BATTは0Vとなる。
【0063】
次に、時点T8において、イグニッションスイッチ2をオンにすると(IGSWOがハイ)、オア回路13aにはハイ信号が入力されるため、オア回路13aからはハイ信号が出力される(MRELOがハイ)。すなわち、オア回路13aはリレーコイル3aを通電する信号を出力する。これにより、メインリレー3が駆動し、バッテリ1から供給される電圧が上昇する(+Bが上昇)。
【0064】
次に、時点T9において、+Bが一定の電圧に達するとマイコン8が起動して動作を開始する(マイコン動作が動作中)。マイコン8は、動作を開始するとメインリレー3の駆動を保持するために保持信号を出力する(MRHOLDがハイ)。また、マイコン8は、動作を開始すると起動処理時において、ADC17の出力を確認する。
【0065】
すなわち、上記と同様に、マイコン8は起動するとBATTが所定値以上であるか、所定値未満であるかを確認する。時点T9においてはBATTが0Vであり、AD変換された出力値は所定値未満となるあるため、マイコン8は、BATTが入力されていない(ヒューズが取り外され、バッテリ1から電源が供給されていない)と判断し、データ記憶部18のデータを消去する処理の実行を開始する。
【0066】
このとき、マイコン8がデータ記憶部18のデータ消去の処理を完了していない状態で、イグニッションスイッチ2がオフになったとしても、マイコン8からは、保持信号が出力されているため(MRHOLDがハイ)、メインリレー3の駆動状態は保持されており、マイコン8自体は動作の継続が可能である。
【0067】
その後、マイコン8がデータ記憶部18のデータ消去の処理を完了すると、燃料噴射制御等通常の制御は実行せず待機状態となる。その後、時点T10において、イグニッションスイッチ2がオフになると(IGSWOがロー)、時点T11において、メインリレー3の駆動を停止するために保持信号の出力を停止する(MRHOLDがロー)。オア回路13aに入力される全ての信号がローとなり、オア回路13aはロー信号を出力する(MRELOがロー)。これにより、メインリレー3の駆動が停止されてバッテリ1から供給される電圧が低下する(+Bが低下)。
【0068】
そして、時点T12において、+Bが一定の電圧まで低下するとマイコン8が動作を停止し、データ消去に関する処理を終了する。尚、マイコン8がデータ記憶部18のデータ消去の処理を完了する前にイグニッションスイッチ2がオフになった場合は、マイコン8は保持信号をしばらく出力しておき、消去処理が完了した段階で保持信号の出力を停止する。
【0069】
このように、ヒューズ4が設けられた接続ラインの電圧値をデータ消去の可否判断の条件とすることにより、着脱が容易なヒューズ4を取り外した状態で、イグニッションスイッチ2をオンにするだけでデータ消去を実行することが可能となり、専用のツールがない場合であっても容易にデータ消去を行うことが可能となる。
【0070】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施の形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
【0071】
上記の実施の形態では、ヒューズ4が設けられた接続ラインの電圧値をデータ消去の可否判断の条件としていたが、これに限定されるものではなく、他の条件と組み合わせてもよい。例えば、ヒューズ4が設けられた接続ラインの電圧値と、イグニッションスイッチ2のオン又はオフとの組み合わせを可否判断の条件としてもよい。この場合、マイコン8は、BATTの電圧値をAD変換した出力値が所定値未満であり、かつ、イグニッションスイッチ2がオンの場合にデータ消去の処理を実行する。イグニッションスイッチ2のオン又はオフの判断は、マイコン8に入力されるコンパレータ12aの出力信号(IGSWO)に基づいて行うことができる。
【0072】
具体的には、マイコン8は、起動処理時において、ADC17の出力を確認するとともに、IGSWOを確認する。図3のタイムチャートを例に挙げて説明すると、時点T9において、BATTが0VであるためAD変換された出力値は所定値未満となり、IGSWOがハイであるため、マイコン8は、BATTは入力されておらず、かつ、イグニッションスイッチ2がオンであると判断し、データ記憶部18のデータ消去の処理の実行を開始する。すなわち、この場合においても、ヒューズ4を取り外した状態でイグニッションスイッチ2をオンすることでデータの消去が可能になる。
【0073】
また、例えば、ヒューズ4が設けられた接続ラインの電圧値と、+Bの入力の有無との組み合わせをデータ消去の可否判断の条件としてもよい。この場合、マイコン8は、BATTの電圧値をAD変換した出力値が所定値以下であり、かつ、+Bがマイコン8の最低動作電圧以上である場合に、データ消去の処理を実行する。+Bがマイコン8の最低動作電圧以上であるか否かの確認は、+Bの電圧信号に基づいて行うことができる。
【0074】
具体的には、マイコン8は、起動処理時において、ADC17の出力を確認するとともに、+Bを確認する。図3のタイムチャートを例に挙げて説明すると、時点T9以降において、BATTが0VであるためAD変換された出力値は所定値未満となり、+Bはマイコン8が動作可能なレベル以上の値であるため、マイコン8は、BATTは入力されておらず、かつ、+Bがマイコン8の最低動作電圧以上であると判断し、データ記憶部18のデータ消去の処理の実行を開始する。すなわち、この場合においても、ヒューズ4を取り外した状態でマイコン8を起動する(イグニッションスイッチ2をオンにする)ことでデータの消去が可能になる。
【0075】
さらに例えば、ヒューズ4が設けられた接続ラインの電圧値と、イグニッションスイッチ2のオン又はオフと、+Bの入力の有無との組み合わせをデータ消去の可否判断の条件としてもよい。この場合、マイコン8は、BATTの電圧値をAD変換した出力値が所定値以下であり、かつ、イグニッションスイッチ2がオンであり、かつ、+Bがマイコン8の最低動作電圧以上である場合に、データ消去の処理を実行する。この場合における各判断も上述と同様にして行うことができる。
【0076】
このように、データ消去の可否判断に用いる条件を適宜組み合わせることにより、データ消去の可否判断をより精度よく行うことができる。
【0077】
なお、上記の実施の形態では、BATTの入力又は非入力を検出する際の処理として、バッテリ電圧値をAD変換した出力値を所定値と比較していたが、所定値は1つである場合に限定されず、所定値を2つ設定してもよい。この場合、例えば、BATTが入力されていることを検出するための第1の所定値と、BATTが入力されていないことを検出するための第2の所定値とを設定すればよい。
【0078】
第1の所定値は、BATTが入力されていることを検出できる値に設定すればよい。例えば、バッテリ1の電圧を12Vとすると、電圧検出部9から出力される電圧値は略3Vとなるため、3Vに対応するAD値を第1の所定値として設定することができる。ただし、電圧の変動を考慮すると、より精度よく検出するためにある程度の範囲を持たせることが好ましい。このため、例えば、電圧検出部9から出力される電圧値の2.8V、2.5V、2.0V等に対応するAD値を第1の所定値として適宜設定してもよい。
【0079】
また、第2の所定値は、BATTが入力されていないことを検出できる値に設定すればよい。この場合には、電圧検出部9から出力される電圧値は略0Vとなるため、0Vに対応するAD値を第2の所定値として設定することができる。ただし、この場合においても上記と同様に、電圧検出部9から出力される電圧値の0.2V、0.5V、1.0V等に対応するAD値を第2の所定値として適宜設定してもよい。
【0080】
なお、上記の実施の形態では、イグニッションスイッチ2がオンされている間はメインリレー3が駆動しているためマイコン8は動作可能であるが、イグニッションスイッチ2をオフにするとメインリレー3の駆動が停止するためマイコン8は停止する。従って、データ消去処理の場合には、マイコン8によるデータ消去の処理が完了した後にイグニッションスイッチ2をオフにする必要がある。
【0081】
具体的には、データ消去が完了した旨をユーザに報知するランプ等の手段を設け、ユーザがこれを確認した後にイグニッションスイッチ2をオフにすればよい。これにより、データ消去処理完了後にメインリレー3の駆動が停止して+Bが低下し、マイコン8が動作を停止することになり、正常に終了することができる。
【0082】
また、上記実施の形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されると説明したが、これら機能のうちの一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。また逆に、ハードウェア回路によって実現されるとした機能のうちの一部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 バッテリ
2 イグニッションスイッチ
3 メインリレー
4 ヒューズ
5 車両制御装置
6 電源ライン
7 電源装置
8 マイコン
9 電圧検出部
10 ダイオード
11 電源回路
12 IG検出部
13 リレー駆動部
14 CPU
17 ADC
18 データ記憶部
100 車両制御システム
図1
図2
図3