特許第5959245号(P5959245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959245レーンマーク検出装置およびレーンマークの信頼度算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959245
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】レーンマーク検出装置およびレーンマークの信頼度算出方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20060101AFI20160719BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G06T7/60 200J
   G08G1/16 C
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-57155(P2012-57155)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-191040(P2013-191040A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年9月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆行
(72)【発明者】
【氏名】棟方 康介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重之
(72)【発明者】
【氏名】大場 裕樹
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−186722(JP,A)
【文献】 特開平04−299799(JP,A)
【文献】 特開平05−314396(JP,A)
【文献】 特開2003−337950(JP,A)
【文献】 特開平11−070884(JP,A)
【文献】 特開平07−244717(JP,A)
【文献】 特開2007−179386(JP,A)
【文献】 特開2011−065338(JP,A)
【文献】 特開平08−087700(JP,A)
【文献】 特開平08−219786(JP,A)
【文献】 特開平06−215291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 − 7/60
G06T 1/00
G08G 1/16
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置より入力される撮影画像に写っている被写体がレーンマークの形状をしているか否かに関する形状の評価値を算出する形状評価値算出部と、
上記撮影画像に写っている被写体が上記撮像装置からどの程度の距離に存在するかに関する距離の評価値を算出する距離評価値算出部と、
上記形状の評価値および上記距離の評価値に基づいて、上記被写体がレーンマークであるか否かの信頼度を算出する信頼度算出部と、
過去に検出されたレーンマークの位置から今回のレーンマークの位置を推定するレーンマーク位置推定部と、
上記信頼度算出部により算出された信頼度に基づいて、上記撮影画像に写っている被写体の中からレーンマーク候補を抽出するレーンマーク候補抽出部と、
上記レーンマーク位置推定部により推定されたレーンマークの位置と、上記レーンマーク候補抽出部により抽出されたレーンマーク候補の位置と、上記信頼度算出部により上記レーンマーク候補について算出された信頼度とに基づいて、上記推定されたレーンマークの位置または上記レーンマーク候補の位置を補正し、当該補正した位置をレーンマークの位置として検出するレーンマーク検出部と
上記撮影画像を水平方向に1ラインずつスキャンしていったときに周囲との輝度差が大きくなる水平部分をスライスとして抽出し、垂直方向に隣接するスライスどうしで水平方向の座標値の少なくとも一部が重複している複数のスライスをグルーピングする線分抽出部とを備え、
上記距離評価値算出部は、上記線分抽出部によってグルーピングされたグループ内での複数のスライスの数に関する評価値を算出するスライス数評価値算出部と、
上記撮影画像をX軸方向およびY軸方向の2次元平面とし、上記撮像装置から上記被写体のエッジまでのX軸方向の距離の評価値を算出するX軸方向距離評価値算出部と、
上記撮像装置から上記被写体のエッジまでのY軸方向の距離の評価値を算出するY軸方向距離評価値算出部と
を備えたことを特徴とするレーンマーク検出装置。
【請求項2】
レーンマーク検出装置の線分抽出部が、撮像装置より入力される撮影画像を水平方向に1ラインずつスキャンしていったときに周囲との輝度差が大きくなる水平部分をスライスとして抽出し、垂直方向に隣接するスライスどうしで水平方向の座標値の少なくとも一部が重複している複数のスライスをグルーピングする第1のステップと、
上記レーンマーク検出装置の形状評価値算出部が、上記撮影画像に写っている被写体がレーンマークの形状をしているか否かに関する形状の評価値を算出する第のステップと、
上記レーンマーク検出装置の距離評価値算出部が、上記撮影画像に写っている被写体が上記撮像装置からどの程度の距離に存在するかに関する距離の評価値を算出する第のステップと、
上記レーンマーク検出装置の信頼度算出部が、上記形状の評価値および上記距離の評価値に基づいて、上記被写体がレーンマークであるか否かの信頼度を算出する第のステップとを有し、
上記第3のステップにおいて、上記距離評価値算出部は、上記線分抽出部によってグルーピングされたグループ内での複数のスライスの数に関する評価値を算出し、
上記撮影画像をX軸方向およびY軸方向の2次元平面とし、上記撮像装置から上記被写体のエッジまでのX軸方向の距離の評価値を算出し、
上記撮像装置から上記被写体のエッジまでのY軸方向の距離の評価値を算出する
ことを特徴とするレーンマークの信頼度算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーンマーク検出装置およびレーンマークの信頼度算出方法に関し、特に、カメラにより撮影された画像の処理によって路上のレーンマークを検出する装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラにより撮影された画像の処理によって路上のレーンマーク(車線境界線)を検出するレーンマーク検出装置およびこれを用いた車線逸脱警報装置が提供されている。この種のレーンマーク検出装置では一般的に、撮影画像の中から画像処理によってレーンマーク候補を抽出し、抽出したレーンマーク候補の中から信頼度が高いものをレーンマークとして検出するようになされている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、画像から抽出した±エッジ点(レーンの両側に持つ符号の異なるエッジ点)より成る直線が平行で、直線の傾きが所定範囲内である場合に、白線検出成功と判断している。特許文献2に記載の技術では、エッジ画像から抽出した縦エッジの連続長さが破線レーンマークを構成する複数の白線部分の長さに相当する範囲内であって、連続した横エッジと繋がっている場合に、破線レーンマークであると判断している。
【0004】
特許文献3に記載の技術では、白線候補点の数、白線候補点を検出する際に用いたエッジ画像の極大値および極小値の強度、白線候補周囲の輝度のコントラストなどから確信度を算出し、確信度が高いものを白線として検出している。特許文献4に記載の技術では、撮影した画像から認識したレーンマークに基づいて画像を複数のエリアに分割し、分割されたエリア毎にレーンマークの信頼度を算出し、エリア別信頼度情報を出力するようにしている。
【0005】
以上のようなレーンマーク検出装置を用いた車線逸脱警報装置では、レーンマーク検出装置により検出されたレーンマークを跨いで車両が車線から逸脱するおそれがある場合に、警報を発するようになされている。従来、この警報を適切に行うために、レーンマークを確実かつ正確に検出することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−78234号公報
【特許文献2】特開2004−326214号公報
【特許文献3】特開2005−18148号公報
【特許文献4】特開2011−73529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜3に記載の技術では、撮影画像内から抽出した被写体がレーンマークの形状をしているか否か、周囲との輝度のコントラストが大きいか否かを判定しているため、形状やコントラストに関する信頼度は高くなる。これにより、形状やコントラストに関して信頼度が高い部分を画像内からレーンマークとして検出することが可能である。
【0008】
しかしながら、特にカメラからの撮影距離(被写界距離)が長くなる画像エリアでは、画像内に写っているレーンマークの先端が路面のノイズと連結したり、レーンマークの一部がボケて周囲の風景と連結したりして、レーンマークの一部が変形していることがある。この場合、形状やコントラストに関する信頼度が高いためにレーンマークとして検出はされるものの、一部が変形しているために検出位置の精度が低下してしまう。形状等の信頼度は高いが検出位置の精度が低いレーンマークは、誤警報の原因になりやすいという問題があった。
【0009】
なお、上記特許文献4に記載の技術では、撮影画像を複数のエリアに分割し、分割されたエリア毎にレーンマークの信頼度を算出している。そのため、被写界距離が長いエリアと、被写界距離が短いエリアとで、レーンマークの信頼度を変えることが可能である。しかしながら、同じエリア内では同じ信頼度になるため、同じエリア内に写っている画像については被写界距離の影響を考慮することができない。
【0010】
仮に、特許文献4に記載の技術を用いて信頼度の精度を上げるためには、分割するエリアの数を多くしなければならなくなる。しかしながら、エリアの数を多くすると、信頼度の計算が煩雑となり、計算負荷が大きくなってしまうという問題が生じる。また、分割したエリアで信頼度を区分すると、エリアの境界線付近で不具合が生じやすくなる。すなわち、境界線を跨いでレーンマークが写っていると、同じレーンマークであっても、どちらのエリアに写っている部分かによって信頼度が大きく変わってしまうという問題が生じる。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、計算負荷を大きくすることなく、レーンマークの位置精度も考慮した信頼度を算出し、車線逸脱の誤警報を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明では、撮影画像に写っている被写体がレーンマークの形状をしているか否かに関する形状の評価値を算出するとともに、撮像装置からどの程度の距離に存在するかに関する距離の評価値を算出し、形状の評価値および距離の評価値に基づいて、被写体がレーンマークであるか否かの信頼度を算出するようにしている。距離の評価値を算出するに際して、本発明では、撮影画像を水平方向に1ラインずつスキャンしていったときに周囲との輝度差が大きくなる水平部分をスライスとして抽出し、垂直方向に隣接するスライスどうしで水平方向の座標値の少なくとも一部が重複している複数のスライスをグルーピングする。そして、グルーピングされたグループ内での複数のスライスの数に関する評価値を算出する。また、撮影画像をX軸方向およびY軸方向の2次元平面とし、撮像装置から被写体のエッジまでのX軸方向の距離の評価値を算出し、撮像装置から被写体のエッジまでのY軸方向の距離の評価値を算出するようにしている。
【0013】
さらに、本発明では、上述のようにした算出した信頼度に基づいてレーンマーク候補を抽出し、当該抽出したレーンマーク候補の位置と、過去に検出されたレーンマークの位置から推定された今回のレーンマークの位置と、レーンマーク候補について算出された信頼度とに基づいて、レーンマークの推定位置またはレーンマーク候補の位置を補正し、当該補正位置をレーンマークの位置として検出するようにしている。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成した本発明によれば、レーンマークの形状に関する評価値に加え、撮像装置からレーンマークまでの距離に関する評価値に基づいて信頼度が算出されるので、レーンマークの検出位置精度に影響を与える要因となる被写界距離に応じた信頼度を算出することができる。しかも、本発明では、撮影画像を領域分割して領域毎に信頼度を変える方式ではなく、レーンマークの被写界距離をダイレクトに評価する方式なので、信頼度の計算負荷が小さくて済む。このように、本発明によれば、計算負荷を大きくすることなく、レーンマークの位置精度も考慮した信頼度を算出することができる。
【0015】
また、本発明によれば、上述のようにレーンマークの位置精度を考慮して算出された信頼度に基づいてレーンマーク候補が抽出されるだけでなく、レーンマークの推定位置が、レーンマーク候補の位置およびその信頼度との関係を考慮してより適正な位置に補正されることとなる。あるいは、レーンマーク候補の位置が、レーンマークの推定位置およびレーンマーク候補の信頼度との関係を考慮してより適正な位置に補正されることとなる。そして、補正された位置でレーンマークが検出されることとなるので、より適正な位置でレーンマークを検出することができ、車線逸脱の誤警報を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態によるレーンマーク検出装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態によるレーンマーク候補抽出部の機能構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態によるレーンマーク位置推定部の動作を説明するための図である。
図4】本実施形態のレーンマーク候補抽出部により行われるスライスの抽出処理を説明するための図である。
図5】本実施形態のレーンマーク候補抽出部により行われるスライスのグルーピング処理を説明するための図である。
図6】本実施形態のレーンマーク候補抽出部により行われる線分の抽出処理を説明するための図である。
図7】本実施形態の縦横比評価値算出部により算出される縦横比評価値を説明するための図である。
図8】本実施形態のX軸方向距離評価値算出部により算出されるX軸方向距離評価値を説明するための図である。
図9】本実施形態のY軸方向距離評価値算出部により算出されるY軸方向距離評価値を説明するための図である。
図10】本実施形態のレーンマーク検出装置を適用した場合の効果を示す図である。
図11】本実施形態の変形例に係るレーンマーク検出装置を適用した場合の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるレーンマーク検出装置100の機能構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態のレーンマーク検出装置100は、カメラ等の撮像装置200に接続されている。撮像装置200は、例えば、車両の後方に設置されたリアカメラである。
【0018】
レーンマーク検出装置100は、その機能構成として、レーンマーク候補抽出部1、レーンマーク検出部2およびレーンマーク位置推定部3を備えている。なお、これらの各機能ブロック1〜3は、ハードウェア構成、DSP、ソフトウェアの何れによっても実現することが可能である。例えばソフトウェアによって実現する場合、上記各機能ブロック1〜3は、実際にはコンピュータのCPUあるいはMPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。
【0019】
図2は、本実施形態によるレーンマーク候補抽出部1の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態のレーンマーク候補抽出部1は、
その機能構成として、線分抽出部10、形状評価値算出部11、距離評価値算出部12および信頼度算出部13を備えている。また、形状評価値算出部11は、その更に具体的な機能構成として、直線性評価値算出部111、平行性評価値算出部112および縦横比評価値算出部113を備えている。また、距離評価値算出部12は、その更に具体的な機能構成として、スライス数評価値算出部121、X軸方向距離評価値算出部122およびY軸方向距離評価値算出部123を備えている。
【0020】
図1において、レーンマーク候補抽出部1は、撮像装置200より入力される撮影画像内からレーンマーク候補を抽出する。レーンマーク候補とは、撮影画像内に写っている被写体の輝度の違いや形状等をもとに、レーンマークの可能性がある部分として特定されるものである。なお、レーンマーク候補の抽出処理に関する詳細は後述する。
【0021】
レーンマーク検出部2は、撮影画像内に検索範囲を設定し、設定した検索範囲の中にあるレーンマーク候補からレーンマークを検出する。レーンマークを検出する際に、レーンマーク検出部2は、レーンマーク位置推定部3により推定されたレーンマークの位置と、レーンマーク候補抽出部1により抽出されたレーンマーク候補の位置と、レーンマーク候補抽出部1によりレーンマーク候補について算出された信頼度とに基づいて、レーンマークの推定位置を補正し、当該補正した位置をレーンマークの位置として検出する。なお、このレーンマーク検出部2によるレーンマーク検出処理についても、その詳細は後述する。
【0022】
レーンマーク位置推定部3は、レーンマーク検出部2により過去に検出されたレーンマークの位置から今回のレーンマークの位置を推定する。本実施形態において、レーンマーク位置推定部3は、レーンマーク検出部2による過去のレーンマークの検出結果に基づいて、レーンマークの横方向に対する単位時間当たりの移動量(Y軸方向の移動速度)を算出する。そして、当該算出したレーンマークの単位時間当たりの移動量と、レーンマーク検出部2により検出された過去のレーンマークの位置とに基づいて、次の単位時間後におけるレーンマーク位置を推定する。
【0023】
図3は、本実施形態によるレーンマーク位置推定部3の動作の概略を説明するための図である。図3(a)は、ある時間tにおいて撮影画像内から検出されたレーンマークの位置を示す。時間tにおける車両中心から左レーンマークまでの距離をDLt、車両中心から右レーンマークまでの距離をDRtとする。本実施形態では、レーンマークの位置を、車両中心からの距離で表すものとする。
【0024】
図3(b)は、次の単位時間後における時間t+d(d:単位時間)において撮影画像内から検出されたレーンマークの位置(車両中心からの距離)を示す。時間t+dにおける車両中心から左レーンマークまでの距離をDLt+d、車両中心から右レーンマークまでの距離をDRt+dとする。図3(c)は、更に次の単位時間後における時間t+2dにおいて撮影画像内から検出されるレーンマークの位置を示す。
【0025】
レーンマーク位置推定部3は、時間t+2dにおいてレーンマークを検出する際に、レーンマーク検出部2により時間tにおいて検出されたレーンマークの位置DLt,DRtと、時間t+dにおいて検出されたレーンマークの位置DLt+d,DRt+dとに基づいて、レーンマークの横方向に対する単位時間当たりの移動量を算出する。この場合、左レーンマークの単位時間当たりの移動量は、車両が左レーンマークに近づく方向に(DLt−DLt+d)/{(t+d)−t}である。一方、右レーンマークの単位時間当たりの移動量は、車両が右レーンマークから遠ざかる方向に(DRt+d−DRt)/{(t+d)−t}である。
【0026】
レーンマーク位置推定部3は、レーンマーク検出部2により時間t+dにおいて検出されたレーンマークの位置DLt+d,DRt+dと、時間t+2dにおいて算出されたレーンマークの単位時間当たりの移動量(DLt−DLt+d)/{(t+d)−t},(DRt+d−DRt)/{(t+d)−t}とに基づいて、時間t+2dにおけるレーンマーク位置を推定する。
【0027】
具体的には、時間t+dにおいて検出された左レーンマークの位置DLt+dから、左レーンマークの単位時間当たりの移動距離(DLt−DLt+d)/{(t+d)−t}×dを減算することにより得られる位置を、時間t+2dにおける左レーンマークの推定位置とする。また、時間t+dにおいて検出された右レーンマークの位置DRt+dに、右レーンマークの単位時間当たりの移動距離(DRt+d−DRt)/{(t+d)−t}×dを加算することにより得られる位置を、時間t+2dにおける右レーンマークの推定位置とする。図3(c)において、21が左レーンマークの推定位置、21が右レーンマークの推定位置である。
【0028】
以下に、図2に示したレーンマーク候補抽出部1の機能構成を具体的に説明していく。まず、線分抽出部10は、撮像装置200より入力された撮影画像から、グレースケールの輝度画像を生成する。そして、線分抽出部10は、図4に示すように、輝度画像を水平方向にスキャンして、閾値以上の輝度が一定間隔続く水平部分をラインとして取り出す。これを撮影画像の全体に対して行う。なお、取り出したラインの1つ1つを「スライス」という。
【0029】
次に、線分抽出部10は、図5に示すように、取り出した各スライスに対して、垂直方向に隣接するスライスどうしで水平方向の座標値の少なくとも一部が重複している複数のスライスをグルーピングする。図5に示す例では、撮影画像内からスライスの3つのグループ1〜3が抽出されている。
【0030】
さらに、線分抽出部10は、図6に示すように、各グループ1〜3のスライスを3次元座標の路面(Z=0)に投影した後、各スライスの中点から、最小2乗法でレーンマーク候補となる線分の直線式Y=aX+b(Z=0)を抽出する。ここで、aは線分の傾き、bは線分のY切片である。なお、3次元座標の路面への投影とは、撮像装置200より入力した撮影画像を、車両上方の仮想視点から見た真上からの画像に視点変換することをいう。3次元座標の原点は、車両中心の位置である。また、X軸において車両の前方がプラス、Y軸において車両の左側がプラスで右側がマイナスである。
【0031】
スライスのグループ1から抽出される線分の直線式はY=a1X+b1、グループ2から抽出される線分の直線式はY=a2X+b2、グループ3から抽出される線分の直線式はY=a3X+b3である。
【0032】
ここで、線分抽出部10は、以上のように各グループ1〜3について算出した線分の直線式のうち、傾きaおよびY切片bの値がある範囲内に入る複数の直線式がある場合は、それらの直線式に該当するグループを1つにまとめる。図6の例では、グループ2とグループ3を1つのグループにまとめている。そして、線分抽出部10は、1つにまとめたグループについて、その中に含まれる各スライスの情報から1本の線分を再度抽出する。その結果、まとめた線分の直線式はY=a4X+b4となる。
【0033】
線分抽出部10は、各スライスの中点から線分を抽出したのと同様に、各スライスの左端および右端についても最小2乗法により線分をそれぞれ抽出する。これにより、スライスの中点から抽出した線分と平行な線分を両側に引き、スライスの幅を算出する。図6の例では、グループ1の線分Y=a1X+b1についてスライス幅を算出するとともに、グループ2,3をまとめた1つのグループの線分Y=a4X+b4についてスライス幅を算出する。
【0034】
形状評価値算出部11、距離評価値算出部12および信頼度算出部13は、以上のようにして線分抽出部10により抽出された各線分について、レーンマークとしての確からしさを示す信頼度を算出する。信頼度の算出に際して、形状評価値算出部11は、撮像装置200より入力される撮影画像に写っている被写体(線分抽出部10によりレーンマーク候補として抽出された線分)がレーンマークの形状をしているか否かに関する形状評価値を算出する。具体的には、直線性評価値算出部111、平行性評価値算出部112および縦横比評価値算出部113により、3つの観点から形状評価値を算出する。
【0035】
直線性評価値算出部111は、線分抽出部10により抽出された線分の直線性に関する評価値を算出する。具体的には、図6のように求めた線分の直線式Y=aX+bと各スライスの中点とのずれの大きさから線分の直線性を評価する。その直線性評価値MatchingValueは、例えば以下の算出式で求められ、0.0〜1.0の何れかの値をとる。
【0036】
MatchingValue=1.0−Diffrence/MaxDiffrence
ただし、
Diffrence:直線式と各スライスの中点との距離の平均値
MaxDiffrence:距離誤差の閾値
平行性評価値算出部112は、線分抽出部10により抽出された線分の両側のエッジの平行性に関する評価値を算出する。具体的には、図6に示したように各スライスの左端および右端から最小2乗法により抽出した2本の線分の平行性を評価する。その平行性評価値EdgeMatchValueは、例えば以下の算出式で求められ、これも0.0〜1.0の何れかの値をとる。
【0037】
EdgeMatchValue=EdgeDiffrence/MaxEdgeDiffrence
ただし、
EdgeDiffrence:2本の線分の傾きの差
MaxEdgeDiffrence:各スライスの左端および右端の差の最大値
縦横比評価値算出部113は、線分抽出部10により抽出された線分の縦方向の長さと横方向の長さとの比に関する評価値を算出する。具体的には、図7に示すように、抽出された線分の縦方向(X軸方向)の上端から下端までの長さと、横方向(Y軸方向)の左端から右端までの長さとの比を評価する。その縦横比評価値AspectMatchValueは、例えば以下の算出式で求められ、これも0.0〜1.0の何れかの値をとる。
【0038】
AspectMatchValue=(AspectRato−MinAspectRatio)/(MaxAspectRatio−MinAspectRatio)−1.0
ただし、
AspectRato:線分の縦横比
MaxAspectRatio:撮影画像内から抽出された各線分に関する縦横比の最大値
MinAspectRatio:撮影画像内から抽出された各線分に関する縦横比の最小値
形状評価値算出部11は、直線性評価値算出部111、平行性評価値算出部112および縦横比評価値算出部113により算出された3つの観点の評価値を用いて、以下の算出式により形状評価値を算出する。
【0039】
形状評価値=(直線性評価値+平行性評価値+縦横比評価値)/3
距離評価値算出部12は、撮像装置200より入力される撮影画像に写っている被写体(線分抽出部10によりレーンマーク候補として抽出された線分)が撮像装置200からどの程度の距離に存在するかに関する距離評価値を算出する。具体的には、スライス数評価値算出部121、X軸方向距離評価値算出部122およびY軸方向距離評価値算出部123により、3つの観点から距離評価値を算出する。
【0040】
スライス数評価値算出部121は、線分に含まれるスライスの数に関する評価値を算出する。具体的には、スライス数評価値算出部121は、例えば以下の算出式でスライス数評価値SliceNumMatchValueを算出する。このスライス数評価値SliceNumMatchValueも、0.0〜1.0の何れかの値をとる。
【0041】
SliceNumMatchValue=SliceNum/MaxSliceNum×100
ただし、
SliceNum:スライス数
MaxSliceNum:撮影画像内から抽出された各線分に関するスライス数の最大値
X軸方向距離評価値算出部122は、図8に示すように、撮像装置200から線分のエッジまでのX軸方向の距離の評価値を算出する。具体的には、X軸方向距離評価値算出部122は、例えば以下の算出式でX軸方向距離評価値DistXMatchValueを算出する。このX軸方向距離評価値DistXMatchValueも、0.0〜1.0の何れかの値をとる。
【0042】
DistXMatchValue=(MaxDistX−DistX)/MaxDistX
ただし、
DistX :撮像装置200から線分のエッジまでのX軸方向の距離
MaxDistX:撮像装置200から線分のエッジまでのX軸方向の距離の限界値
Y軸方向距離評価値算出部123は、図9に示すように、撮像装置200から線分のエッジまでのY軸方向の距離の評価値を算出する。具体的には、Y軸方向距離評価値算出部123は、例えば以下の算出式でY軸方向距離評価値DistYMatchValueを算出する。このY軸方向距離評価値DistYMatchValueも、0.0〜1.0の何れかの値をとる。
【0043】
DistYMatchValue=(MaxDistY−DistY)/MaxDistY
ただし、
DistY :撮像装置200から線分のエッジまでのY軸方向の距離
MaxDistY:撮像装置200から線分のエッジまでのY軸方向の距離の限界値
距離評価値算出部12は、スライス数評価値算出部121、X軸方向距離評価値算出部122およびY軸方向距離評価値算出部123により算出された3つの観点の評価値を用いて、以下の算出式により距離評価値を算出する。
【0044】
距離評価値=(スライス数評価値+X軸方向距離評価値+Y軸方向距離評価値)/3
信頼度算出部13は、形状評価値算出部11により算出された形状評価値と、距離評価値算出部12により算出された距離評価値とに基づいて、線分抽出部10により抽出された線分がレーンマークであるか否かの信頼度を算出する。具体的には、信頼度算出部13は、形状評価値×距離評価値なる算出式によってレーンマークの信頼度を算出する。
【0045】
図2に示すレーンマーク候補抽出部1は、線分抽出部10によりレーンマーク候補として抽出された各線分と、各線分について信頼度算出部13により算出された信頼度とをレーンマーク検出部2に出力する。レーンマーク検出部2は、上述したように、レーンマーク位置推定部3により推定されたレーンマークの位置と、レーンマーク候補抽出部1より出力されたレーンマーク候補の位置および信頼度とに基づいて、レーンマークの推定位置を補正し、当該補正した位置をレーンマークの位置として検出する。
【0046】
例えば、レーンマーク候補抽出部1の信頼度算出部13により算出された信頼度を、以下に示すようなカルマンフィルタの算出式に対してカルマンゲインKとして与える。
【0047】
[レーンマークの補正推定位置]=[レーンマークの推定位置]+K*[レーンマーク候補の実測位置]
そして、この算出式によって求められる補正推定位置を、レーンマークの位置として検出する。
【0048】
このようなカルマンフィルタの算出式において、信頼度算出部13により算出される信頼度をカルマンゲインKとして用いた場合、信頼度が低くなるほど、レーンマーク候補抽出部1により抽出されるレーンマーク候補の実測位置がレーンマークの検出位置に対して与える影響度は小さくなっていく。その結果、信頼度が低い場合には、レーンマーク候補の実測位置よりもレーンマークの推定位置が優先された状態で、レーンマークの位置が検出される。この場合の信頼度は、レーンマークの検出位置精度に影響を与える被写界距離の評価値を含めて算出されているため、レーンマークの検出位置精度に悪影響を与えるような信頼度の低いレーンマーク候補の実測位置を極力使わない状態で、より的確なレーンマーク位置を検出することができるようになる。
【0049】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、撮影画像に写っている被写体がレーンマークの形状をしているか否かに関する形状評価値を形状評価値算出部11にて算出するとともに、被写界距離に関する距離評価値を距離評価値算出部12にて算出し、信頼度算出部13が形状評価値および距離評価値に基づいて信頼度を算出するようにしている。
【0050】
これにより、レーンマークの検出位置精度に影響を与える要因となる被写界距離に応じた信頼度を算出することができる。しかも、本実施形態では、撮影画像を領域分割して領域毎に信頼度を変える方式ではなく、レーンマークの被写界距離をダイレクトに評価する方式なので、信頼度の計算負荷が小さくて済む。したがって、本実施形態によれば、計算負荷を大きくすることなく、レーンマークの位置精度も考慮した信頼度を算出することができる。
【0051】
また、本実施形態では、レーンマーク候補抽出部1により抽出したレーンマーク候補の位置と、当該抽出したレーンマーク候補について上述のようにして算出した信頼度と、レーンマーク位置推定部3により推定されたレーンマークの位置とに基づいて、レーンマーク検出部2がレーンマークの推定位置を補正し、当該補正位置をレーンマークの位置として検出するようにしている。
【0052】
このような構成により、レーンマークの推定位置が、レーンマーク候補の位置と、上述のようにレーンマークの位置精度を考慮して算出した信頼度との関係を考慮してより適正な位置に補正されることとなる。そして、補正されたレーンマークの推定位置でレーンマークが検出されることとなるので、より適正な位置でレーンマークを検出することができる。その結果、レーンマークを跨いで車両が車線から逸脱する恐れがないのに発せられる車線逸脱の誤警報を抑制することができる。
【0053】
図10は、本実施形態による効果を示す図である。これは、実際に道路を走行して撮影した車両後方の撮影画像を入力して本実施形態のレーンマーク検出装置100を動作させた場合における誤警報の発生回数を示したものである。図10(a)は、距離評価値を含めて信頼度を算出した場合の結果を示す(本実施形態の適用例)。図10(b)は、距離評価値を含めずに信頼度を算出した場合の結果を示す(従来例)。
【0054】
図10(a)に示すように、本実施形態の場合は1時間当たりの誤警報の発生回数は25.1回であった。これに対して、従来例の場合は1時間当たりの誤警報の発生回数は33.2回であった。これから分かるように、本実施形態のレーンマーク検出装置100を適用すると、1時間当たりの誤警報の発生回数を従来比で20%程度も低減できている。
【0055】
なお、上記実施形態では、距離評価値算出部12は、スライス数評価値、X軸方向距離評価値およびY軸方向距離評価値の3つの観点から距離評価値を算出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、スライス数評価値の1点のみから距離評価値を算出するようにしてもよい。図11は、この場合における誤警報発生の低減効果を示す図である。図11に示すように、スライス数評価値の1点のみから距離評価値を算出した場合、1時間当たりの誤警報の発生回数は30.6回であった。これを図10(b)の結果と比較すれば分かるように、1時間当たりの誤警報の発生回数を10%程度低減できている。
【0056】
また、上記実施形態では、カルマンフィルタのカルマン係数Kとして信頼度を用い、レーンマーク位置推定部3により推定されたレーンマークの位置と、線分抽出部10により抽出されたレーンマーク候補の位置と、信頼度算出部13によりレーンマーク候補について算出された信頼度とに基づいて、レーンマークの推定位置を補正し、当該補正した推定位置をレーンマークの位置として検出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0057】
例えば、カルマン係数Kの逆数として信頼度を用い、レーンマーク位置推定部3により推定されたレーンマークの位置と、線分抽出部10により抽出されたレーンマーク候補の位置と、信頼度算出部13によりレーンマーク候補について算出された信頼度とに基づいて、以下の算出式に示すようにしてレーンマーク候補の位置を補正し、当該補正したレーンマーク候補の位置をレーンマークの位置として検出するようにしてもよい。
【0058】
[レーンマーク候補の補正位置]=[レーンマーク候補の実測位置]+1/K* [レーンマークの推定位置]
また、上記実施形態では、カルマンフィルタを用いてレーンマーク位置の補正を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、信頼度算出部13により算出される信頼度が低くなるほど、補正結果に対するレーンマーク候補の位置の影響度が小さくなるような補正方法であれば、カルマンフィルタ以外の方法を適用してもよい。
【0059】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 レーンマーク候補抽出部
2 レーンマーク検出部
3 レーンマーク位置推定部
10 線分抽出部
11 形状評価値算出部
12 距離評価値算出部
13 信頼度算出部
121 スライス数評価値算出部
122 X軸方向距離評価値算出部
123 Y軸方向距離評価値算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11