(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959251
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】円柱状材料に形成した溝の開口縁角部分のR面取り工具
(51)【国際特許分類】
B24B 39/02 20060101AFI20160719BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
B24B39/02 Z
B24B9/00 601K
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-62631(P2012-62631)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-193164(P2013-193164A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中條 隆
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−220225(JP,A)
【文献】
実開平03−109763(JP,U)
【文献】
特開2010−159689(JP,A)
【文献】
米国特許第6497022(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 39/00−39/04
B24B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状材料の外周面に長手軸線方向で開口し該外周面から半径方向に延びるように形成された溝の開口縁角部分にR面取りをするためのR面取り工具であって、
該溝内に該溝の該開口から挿入される突出部と、
該突出部の根本部分においてその両側面からそれぞれ凹状に湾曲しながら次第に側方に延びるR面取り用面、及び、該R面取り用面に続いて側方に延びる変形押圧面であって、該突出部を該溝内に挿入し、該R面取り用面を該開口縁角部分に押圧してR面取りを行ったときに、該突出部から側方に離れるに従って該円柱状材料に近づいて該面取りした部分よりも側方に離れた位置で該外周面に接するように角度付けられた変形押圧面、を有する工具本体と、
を有する溝の開口縁角部分のR面取り工具。
【請求項2】
該突出部の両側面を平滑な面とし、該両側面間の間隔が、該溝の幅よりも大きく、該突出部が該溝内に挿入されたときに、該両側面が該溝両側壁面を押圧して該溝側壁面を平滑にするようにした請求項1に記載のR面取り工具。
【請求項3】
該突出部の先端部を先細りとし、その先端面の幅を該溝の幅より小さくなるようにした請求項2に記載のR面取り工具。
【請求項4】
該R面取り工具が、
中心軸線を中心にした円形外周面を有する工具本体と、
該工具本体の該円形外周面の幅方向中央部分から当該工具本体の半径方向外側に突出して環状とされた該突出部と
を有し、
該環状とされた突出部の根本部分においてその両側面から側方に延びる該円形外周面に、該R面取り用面と該変形押圧面とを形成した、請求項1乃至3のいずれかに記載のR面取り工具。
【請求項5】
該変形押圧面が、該開口縁角部と平行に延びる線に沿って該円柱状材料の外周面と接するようにされた請求項1乃至4のいずかに記載のR面取り工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状のベーンを半径方向で可動に保持しながら回転するロータを備えるベーン式エアモータなどの回転流体装置に関し、特に、ロータ素材としての円柱状材料に形成されるベーン収納溝の開口縁角部分に対してR面取りを行う工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ベーン式エアモータは、円筒状内周面によって画定されるロータ室を有するロータハウジングと、ロータ室に対し偏心させて回転可能に取り付けられたベーン付きロータと、を有し、ロータ室に圧搾空気を供給してベーン付きロータを回転し、当該エアモータの回転駆動力を生じるようになっている(特許文献1)。
【0003】
ロータが回転する際、ベーンはロータに設けられたベーン収納溝内で半径方向に動き、ロータ室の内周面との摺動係合を保つ。従って、ベーンはベーン収納溝の側壁面、特に、ベーン収納溝の開口縁角部分との接触による大きな摩耗を受ける。下記特許文献2は、そのような摩耗を低減するために開口縁角部分にバニシング加工によってR面取りをする技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−159689号
【特許文献2】特開2009−220225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2は、具体的には、回転可能とされた円筒状ローラと、該ローラの円筒状外周面の幅方向中央に設けられた環状の突出部とを備え、該突出部の側面と円筒状外周面とが凹状の曲面でつながるようにしたR面取り工具を開示している。この工具により、R面取りを行う場合、突出部を円柱状材料の溝に挿入して当該工具の上記凹状の曲面を溝の開口縁角部分に押圧しながら、当該工具を溝に沿って転動して、上記曲面によるR面取りを行うようになっている。
【0006】
この処理方法では、R面取りのために凹状曲面によって溝の開口縁角部分が押圧されると、該部分の材料が側方へ押しやられるために、それがロータの外周面から盛り上がってしまう虞がある。本願発明者は、エアモータの性能の向上を図るため、偏心量をなるべく大きくしてロータの外周面をロータ内周面になるべく近づける設計を試みた結果、上述のロータ外周面での盛り上がりが微小ではあるが支障となることを知見した。
【0007】
本発明は、このような知見に基づきなされたものであり、ロータ外周面での材料の盛り上がりを極力小さくするためのR面取り工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
円柱状材料の外周面に長手軸線方向で開口し該外周面から半径方向に延びるように形成された溝の開口縁角部分にR面取りをするためのR面取り工具であって、
該溝内に該溝の該開口から挿入される突出部と、
該突出部の根本部分において両側面からそれぞれから凹状に湾曲しながら次第に側方に延びるR面取り用面、及び、該R面取り用面に続いて側方に延びる変形押圧面であって、該突出部を該溝内に挿入し、該R面取り用面を該開口縁角部分に押圧してR面取りを行ったときに、該面取りした部分よりも側方に離れた位置で該外周面に接するように延びる変形押圧面、を有する工具本体と、
を有する溝の開口縁角部分のR面取り工具を提供する。
【0009】
この工具により開口縁角部分のR面取り処理をおこなうとき、開口縁角部分が溝から離れる方向で側方に変形され円柱状材料の外周面から盛り上がろうとしても、その盛り上がり部分は、円柱状材料の外周面と接するようになる押圧面と該外周面との間の空間内に閉じ込められた状態で該押圧面により押圧され、一定以上の盛り上がることが阻止される。ここで外周面と接するとは、物理的に完全に接することを必ずしも意味せず、押圧面によって押圧される盛り上がり部分が当該工具の押圧面と円柱状材料の外周面の間の空間から押し出されるのを実質的に防止する程度に接近した状態をも含むものである。このようなR面取り工具を用いて前述のようなロータが作られた場合、その外周面に一定以上の盛り上がり部分が生じるのを防止できるので、そのような防止ができない場合に較べて、該ロータをロータ室内でより大きく偏心設定し、ロータの外表面をロータ室の円筒状内周面により近づけることができ、当該ロータを用いた回転流体装置の性能を向上させることが可能となる。
【0010】
具体的には、
該突出部の両側面を平滑な面とし、該両側面間の間隔が該溝の幅よりも大きく、該突出部が該溝内に挿入されたときに、該両側面が該溝両側壁面を押圧して該溝側壁面を平滑にするようにすることができる。
【0011】
この場合、該突出部の先端部を先細りとし、その先端面の幅を該溝の幅より小さくなるようにして、突出部を溝へ挿入するときに、開口縁角部分を溝内に押し込む方向で変形させたりするのを回避することができるようにすることが好ましい。
【0012】
更に、
該R面取り工具が、
中心軸線を中心にした円形外周面を有する工具本体と、
該工具本体の該円形外周面の幅方向中央部分から当該工具本体の半径方向外側に突出して環状とされた該突出部と
を有し、
該環状とされた突出部の根本部分においてその両側面から側方に延びる該円形外周面に、該R面取り用面と該変形押圧面とを形成するようにすることができる。
【0013】
このようにした場合、当該R面取り工具は、その突出部を溝に挿入し、工具本体の円形外周面を円柱状部材の外周面に押し付けるようにしながらその長手方向で転がすことにより、開口縁角部分のR面取りを行うことができる。
【0014】
更に、該工具の変形押圧面が、該開口縁角部と平行に延びる線に沿って該円柱状材料の外周面と接するようにすることができる。ただし、変形押圧面は上述の機能を奏するためのものであり、必ずしも上記平行に延びる線に沿って上記外周面と接触するようにする必要は無い。
【0015】
以下、本発明に係るR面取り工具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るR面取り工具の加工対象となるロータを備えたベーン式エアモータの縦断側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿って見た図である。
【
図4】
図1のベーン式エアモータにおけるベーンと、該ベーンを収納するためにロータに形成されたベーン収納溝とを示す要部拡大断面図である。
【
図6】
図5の円で囲んだ部分の拡大断面図であり、環状突出部及びその根本から側方に側方に延びるR面取り用面及びそれに続く変形押圧面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すベーン式エアモータ(回転流体装置)10は、円筒状内周面11(
図2)を有する筒状体14及び該筒状体の両端に設けられた第1及び第2端壁16,18を有し、内部にロータ室19が形成されたロータハウジング20と、該ロータ室内で偏心して設けられたロータ22と、該ロータに取り付けられた複数のベーン24と、ロータの両端から該ロータの回転軸線に沿って延び、それぞれ第1及び第2の端壁によって支持される支持軸部28及び出力軸部26とを有し、該支持軸部28の端部にはガバナー30が取り付けられている。出力軸部26はベベルギア34を介して円盤状の研磨部材32の回転シャフト36に駆動連結されている。
【0018】
回転シャフト36、ベーン式エアモータ10、及び、ガバナー30は当該空気式グラインダの複数のケーシング部品38−1〜38−3からなるケーシング38内に収納されている。ケーシング部品38−3は、図示しないエアポンプに連結されたホース40を介して圧搾空気を受け入れるようにされており、受け入れた圧搾空気は、ケーシング部品38−2を貫通する連通孔42を介して、ケーシング部品38−2と第1端壁16とによってガバナー30の周りに形成された圧搾空気供給室44に供給され、この圧搾空気は、更に、第1端壁16及び筒状体14の、
図1で見て上方位置に設けられた給気孔46,48を介してロータ室に供給されてベーン24に作用してロータ22を回転させ、研磨部材32を回転駆動するようになっている。ベーン24に作用した圧搾空気は、排気孔49及び図示しないケーシングに設けられた排気通路を介してケーシング外へ排出されるようになっている。
【0019】
図1においては給気孔48と排気孔49とは、説明上、直径方向で相互に対向するように描かれているが、実際には、
図2及び
図3から分かるように、給気孔48は、筒状体の周方向において間隔をあけて複数設けられており、また、排気孔49は、直径方向の対向する位置からは、ずれた位置に複数設けられている。給気孔48は、筒状体14の軸線方向の略中央位置において、周方向に延びるように設けられた1つの空気供給開口61(
図2)を介してロータ室19に連通されている。
【0020】
排気孔49の空気排出開口50は、
図2で見て、空気供給開口61の設けられている略右半部ではなく、左半部に
図3に示す如き配列で設けられている。すなわち、これら空気排出開口50は、筒状体14の軸線方向の略中央位置で、
図3で見て上方の位置に大径の空気排出開口50−1が1つ設けられ、その左右両側にそれぞれ3つの小径の空気排出開口50−2が全体として雁行形となるように配置され、更に、中央位置の
図3で見て下方位置には追加の大径の空気排出開口50‐3が形成されている。
【0021】
図4に示すように、ベーン24の耐久性をよくするために、ロータ22に形成したベーン収納溝21の開口縁角部分21−1はR面取りがしてある。すなわち、このエアモータにおいて圧搾空気が供給されてロータが矢印B方向で示す方向に回転されるとベーンはロータハウジングの円筒状内周面11と摺動しながら回転するので矢印Aで示す方向での力を受ける。このため、ベーンは僅かではあるが傾斜した状態でベーン収納溝21内を半径方向で出入りする。従って、ベーンの側面は、ベーン収納溝の開口縁角部分21−1に対し押圧された状態で摺動することになり、該側面に磨耗が生じ、同側面に僅かではあってもえぐれが生じることになる。そのようなえぐれが生じると、回転によって該ベーンにかかる衝撃の影響をうけ亀裂が生じやすくなる。開口縁角部分21−1のR面取りは、そのような磨耗によるえぐれを低減するものである。
【0022】
図5は、上述のベーン収納溝21の開口縁角部分21−1のR面取りを行うための本発明に係る面取り工具60を示している。この面取り工具60は、全体としては略円盤状又は円筒状とされた工具本体62と、工具本体62の外周面63の幅方向中央から突出する環状突出部64とを有する。この面取り工具60は、図示しない加圧移動装置により工具本体62の中心軸線Cを中心に回転可能に支持され、(鋼材からなる円柱状のロータ材料に対して、その外周面に長手軸線方向で開口し該外周面から半径方向に延びるように形成されたベーン収納溝21を形成して用意された)ロータ材料X(
図6)に対して、該ベーン収納溝21に沿って当該面取り工具を転動し、該ベーン収納溝21の開口縁角部分21−1を押圧して上述のR面取りをするためのものである。
【0023】
具体的には、環状突出部64は、ベーン収納溝21の両側壁面21−2間の幅に実質的に等しい間隔が開けられた相互に平行な一対の平滑側面64−1を有し、その先端部分64−2は先細りとされ、当該環状突出部64がベーン収納溝21内に入りやすいようにしてある。工具本体62の外周面63は、環状突出部64の根本部分の両側の平滑側面64−1からそれぞれ次第に凹状に湾曲しながら側方に延びるR面取り用面63−1と、該R面取り用面に続いて側方に延びる変形押圧面63−2とを有する。
【0024】
変形押圧面63−2は、平滑側面64−1に対して該平滑側面64−1から離れるに従ってロータ材料Xの方に近づくように僅かに角度付けられており、R面取り面63−1によって押圧され変形される開口縁角部分21−1の材料が、側方に押し出されロータ材料Xの円筒状外周面X−2に生じようとする盛上りX−1を押圧して、その盛り上がりを抑制するようにする。これは前記特許文献2に開示されているバニシング工具とされるR面取り工具においては、工具本体の外周面が平滑側面64−1に対して直角とされているのとは異なる特徴である。
【0025】
要するに、本発明に係る面取り工具60においては、R面取りに伴って変形されロータ材料Xの円筒状外周面X−2に生じようとする盛上りX−1を、該円筒状外周面X−2と変形押圧面63−2との間にできる微小な間隙内で当該盛り上がり部分を押圧し、過度の盛り上がりを抑制するものである。このようにすることにより、そのような盛り上がりを抑えられない場合に較べて、当該ロータをロータ室の内周面により近づけて設定することが可能となり、従って、該ロータを備えた回転流体装置の性能を向上させることが可能となる。
【0026】
R面取りを行う場合、変形される材料がベーン収納溝21内に押し出されてベーン収納溝21の側壁面に凹凸が生じる場合もある。このよう凹凸を防ぐためには、環状突出部64の幅を、ベーン収納溝21の幅より僅かに大きくして、該環状突出部64がベーン収納溝21内に押し入れられたときに、平滑側面64−1でベーン収納溝の側壁面21−2を押圧することが好ましい。
【0027】
以上、本発明に係る開口縁角部分のR面取りを行うための工具を、ベーン付きロータのベーン収納溝に用いる場合を例として説明したが、本願発明がこれに限定されるものではなく、長手方向に延びる溝を備える円柱状のロータ材料の開口縁角部分のR面取りに使用することができる。
【符号の説明】
【0028】
ベーン式エアモータ(回転流体装置)10:円筒状内周面11;筒状壁14;第1端壁16;第2端壁18;ロータ室19;モータハウジング20;ベーン収納溝21;開口縁角部分21−1;ロータ22;ベーン24;出力軸部26;支持軸部28;ガバナー30;研磨部材32;ベベルギア34;回転シャフト36;ケーシング部品38−1〜38−3;ケーシング38;ホース40;連通孔42;圧搾空気供給室44;給気孔46,48;排気孔49;空気排出開口50、50−2,50−2、50−3;面取り工具60;工具本体62;外周面63;環状突出部64;平滑側面64−1;先端部分64−2;R面取り用面63−1;変形押圧面63−2;ロータ材料の盛上りX−1;ロータ材料の円筒状外周面X−2