(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
家畜の糞尿を含む堆肥と叩解処理した木質微細モルダー粉体と混合し、乾燥処理して自燃焼可能な複合バイオマス燃料を製造し、前記乾燥処理用の熱源として当該複合バイオマス燃料を使用する家畜糞尿処理システムであって、
堆肥と木質微細モルダー粉体を混合して供給する混合システムAと、
パドルドライヤーを用いて前記混合原料物を乾燥させて自燃焼可能な複合バイオマス燃料を製造する乾燥システムBと、
混合システムA又は乾燥システムBにフィードバックするバイオマス燃料含有水分測定装置を投入部に具備する複合バイオマス燃料を貯蔵するシステムCと、
複合バイオマス燃料を燃料源とするボイラーであって、乾燥システムBへの熱供給と給湯用熱を製造するボイラーと、乾燥システムへの熱径路の温度を計測し、乾燥システムとの中間に火の粉止め器と外気取り入れ器を介在させて、発火防止機構と温度制御機構を具備
するボイラーシステムDと、
を備えた家畜糞尿処理システムであって、
フィードバックに基づいて、混合システムAの堆肥と木質微細モルダー粉体の混合比、パドルドライヤー内の混合物の攪拌と移送を調整し、ボイラーシステムDの温度制御機構を制御して、複合バイオマス燃料の含水率を一定以下にコントロールする自己完結することを特徴とする家畜糞尿処理システム。
混合システムAは、木質微細モルダー粉体サイロ、堆肥サイロ、混練機を備えており、木質微細モルダー粉体サイロから供給される木質微細木質モルダー粉体と、堆肥サイロから供給される堆肥が混練機にて混合されることを特徴とする請求項1記載の家畜糞尿処理
システム。
混合システムAの混合供給機構として、堆肥供給用のスクリューコンベアと木質微細モルダー粉体供給用のスクリューコンベアを備えており、堆肥供給用のスクリューコンベアの中間に木質微細モルダー粉体供給用のスクリューコンベアの先端を開口させた構造としたことを特徴とする請求項1又は2記載の家畜糞尿処理システム。
水分測定装置は、ホッパー状のバケットに水分測定センサーが取り付けられており、測定用の複合バイオマス燃料を貯留し、測定後に排出をする機構を備えていることを特徴とす請求項1〜3のいずれかに記載の家畜糞尿処理システム。
パドルドライヤーは、ケーシングの長手方向に回転軸が設けられており、該回転軸にパドルを取り付け、パドル形状、設定角度、設定間隔によって、乾燥機内の混合物の攪拌と移送を調整するものであって、混合原料物投入側から乾燥用熱源をケーシング内に取りこみ、乾燥物の取り出し側から熱源を放出することを特徴する請求項1〜4のいずれかに記載の家畜糞尿処理システム。
【背景技術】
【0002】
従来、わが国では、家畜糞尿等の処理は、大筋堆肥製造により畑地・牧草地等に散布・施用されているが、堆肥製造工程での発酵完熟に時間とコストがかかるだけでなく、悪臭の拡散・水質汚染等の環境汚染が大きな問題となっている。農産品は海外との競争に曝されており、牛や豚の飼育頭数を増加させる規模拡大による競争力強化が進められている。
一方では、環境問題があって、増加する糞尿の処理がネックとなっている。
糞尿の処理としては、旧来から堆肥化、肥料化、燃料化などが検討されている。 例えば、特許文献1(特開昭54−117145号公報)には、家畜糞尿にオガ屑を投入して水分調整して、完熟堆肥として耕地へ散布する方法が開示されている。大規模飼育から発生する糞尿を堆肥化しても、過剰な田畑への散布は窒素分の過剰化を招くこととなるので田畑への散布限度を超える糞尿が発生し、解決には不十分である。
特許文献2には、家畜糞尿にパルプ滓などの助材を投入し、脱水して固形化して燃料や肥料にする方法が開示されている。
特許文献3には、セルロース廃棄物に水分調整材として乾燥ペレットの一部を混入して用い、造粒後に乾燥する手段が開示されている。
特許文献4には、微細粉と家畜糞尿を機械撹拌して摩擦熱で水分を蒸発させて乾燥する方法が開示されている。
特許文献5には、植物性有機物の粉砕処理が開示されている。
特許文献6には、家畜糞尿と木質系の炭化物もしくは半炭化物を所定の重量比で混合し、これを乾燥させ燃焼させる手段が開示されている。
その他にも、吸水性高分子を使用した処理剤(特許文献7:特許第3288317号公報)、おが屑を水分調整材として使用した例(特許文献8:特許第3981021号公報)など、多数の提案が試みられている。
一方、本発明者らは、家畜糞尿を燃料化して畜産廃棄物の処理と畜舎の熱源確保を飼育システムに組み込むことに着目して研究開発を継続している。木質系材料(オガ屑)と家畜糞尿を混合し乾燥することによって、家畜糞尿の有機物から水分を25%程度まで乾燥させ、石油代替燃料とする提案(特許文献9:特許第3981021号公報)をした。研究を続けて、家畜糞尿をバイオマス化して循環処理できるシステムを特特許文献10(特開2010−75772号公報)、特許文献11(特開2011−137071号公報)として提案した。本発明者らは、更に研究開発を続け循環処理システムの改善を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、家畜糞尿を自燃焼性可能なバイオマス燃料とし、このバイオマス燃料を熱源として新たな家畜糞尿をバイオマス燃料化する循環型の家畜糞尿処理システムを提案する。特に、バイオマス燃料の品質を安定化する技術を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は次のとおりである。
1.家畜の糞尿を含む堆肥と叩解処理した木質微細モルダー粉体と混合し、乾燥処理して自燃焼可能な複合バイオマス燃料を製造し、前記乾燥処理用の熱源として当該複合バイオマス燃料を使用する家畜糞尿処理システムであって、
堆肥と木質微細モルダー粉体を混合して供給する混合システムAと、
パドルドライヤーを用いて前記混合原料物を乾燥させて自燃焼可能な複合バイオマス燃料を製造する乾燥システムBと
、
混合システムA又は乾燥システムBにフィードバックするバイオマス燃料含有水分測定装置を投入部に具備する複合バイオマス燃料を貯蔵するシステムCと、
複合バイオマス燃料を燃料源とするボイラーであって、乾
燥システム
Bへの熱供給と給湯用熱を製造するボイラー
と、乾燥システムへの熱径路の温度を計測し、乾燥システムとの中間に火の粉止め器と外気取り入れ器を介在させて、発火防止機構と温度制御機構を具備
するボイラーシステムDと、
を備えた家畜糞尿処理システム
であって、
フィードバックに基づいて、混合システムAの堆肥と木質微細モルダー粉体の混合比、パドルドライヤー内の混合物の攪拌と移送を調整し、ボイラーシステムDの温度制御機構を制御して、複合バイオマス燃料の含水率を一定以下にコントロールする自己完結することを特徴とする家畜糞尿処理システム。
2.混合システムAは、木質微細モルダー粉体サイロ、堆肥サイロ、混練機を備えており、木質微細モルダー粉体サイロから供給される木質微細木質モルダー粉体と、堆肥サイロから供給される堆肥が混練機にて混合されることを特徴とする1.記載の家畜糞尿処理
システム。
3.混合システムAの混合供給機構として、堆肥供給用のスクリューコンベアと木質微細モルダー粉体供給用のスクリューコンベアを備えており、堆肥供給用のスクリューコンベアの中間に木質微細モルダー粉体供給用のスクリューコンベアの先端を開口させた構造としたことを特徴とする1.
又は2.記載の家畜糞尿処理システム。
4.水分測定装置は、ホッパー状のバケットに水分測定センサーが取り付けられており、測定用の複合バイオマス燃料を貯留し、測定後に排出をする機構を備えていることを特徴とす
1.〜3.のいずれかに記載の家畜糞尿処理システム。
5.パドルドライヤーは、ケーシングの長手方向に回転軸が設けられており、該回転軸にパドルを取り付け、パドル形状、設定角度、設定間隔によって、乾燥機内の混合物の攪拌と移送を調整するものであって、混合原料物投入側から乾燥用熱源をケーシング内に取りこみ、乾燥物の取り出し側から熱源を放出することを特徴する
1.〜4.のいずれかに記載の家畜糞尿処理システム。
6.ボイラーシステムDは、温水ボイラー、灰出し装置、火の粉止め装置、温水貯蔵タンクから構成されることを特徴とする1.〜
5.のいずれかに記載の家畜糞尿処理システム。
7.パドルドライヤーからの排気は除塵サイクロン、消音排気筒、ガス測定器を具備していることを特徴とする1.
〜6.のいずれかに記載の家畜糞尿処理システム。
【発明の効果】
【0006】
1.家畜の糞尿を自燃焼可能なバイオマス燃料化することができ、家畜糞尿廃棄量を減量化することができる。
2.家畜糞尿を木質微細モルダー粉体と混合して自燃焼性可能な複合バイオマス燃料とし、この複合バイオマス燃料を熱源として新たな家畜糞尿をバイオマス燃料化する循環型の家畜糞尿処理システムを実現した。製造される複合バイオマス燃料の含水率を測定し、また、熱源の熱風の温度を測定して、システム全体の管理とバイオマス燃料の品質向上を図った。
3.複合バイオマス燃料水分を測定して、品質の安定化をはかった。
4.具体的な手段として、複合バイオマス燃料に含まれる水分を測定して、ドライヤーに投入する混合原料の水分調整を行い、不均一な堆肥を主原料とする混合原料の乾燥性能を高めるパドルドライヤーを採用して、品質の安定したバイオマス燃料を実現した。乾燥に供する熱風の温度を測定して、熱源の温度管理を行いバイオマス燃料の品質向上及びシステム運用管理を行う。
5.品質の安定した複合バイオマス燃料を製造し、本システムの自家使用熱源として使用することにより、補助熱源として用いる化石燃料の使用量を削減でき、家畜糞尿処理システム運用の省エネルギーが実現できる。
6.木質微細モルダー粉体による臭気の吸着および高温乾燥によって発生する排気臭の低減によって本システム全体から発生する臭気を極めて少なくすることができる。
7.家畜の飼育現場にお湯や温風を簡便に供給することができ、家畜の環境や労働環境を改善することができる。特に、幼畜の初期生存率の改善に有効であり、畜産業の生産性を向上させることができる。また、臭気や衛生環境が改善されることにより、住宅地が近接する日本の畜産業の立地制約を緩和する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.概略
本願発明は、畜産業の大規模化に伴う畜産廃棄物である糞尿の減容化、資源化、無害化を図る技術である。家畜の飼育環境の改善、労働環境の改善、飼育施設の周辺の環境改善に資する発明である。さらに、畜産業の立地の自由度を高め、飼育コストを低下させて、産業競争力を向上させる発明である。
本願発明は、家畜糞尿を自燃焼可能なバイオマス燃料にし、そのバイオマス燃料から得られた熱を利用して家畜糞尿を乾燥させてバイオマス燃料にするという循環式の処理システムである。
家畜の糞尿は水分が多く、敷き藁と絡まって堆肥化した糞尿は、密度と含水率が一定でなく、取り扱いが容易でない。本発明は、この堆肥化した家畜糞尿と木質微細モルダー粉体を混ぜて水分調整を図り、自燃焼可能な状態までドライヤーで乾燥させて複合バイオマス燃料を製造し、ボイラーでこの複合バイオマス燃料を燃焼させて熱を回収し、ドライヤーの熱源および畜舎で利用する温水などの熱源に利用する循環処理システムである。この基本的な処理システムは先行特許文献10、11として本出願人が提案したとおりである。
本発明は、複合バイオマス燃料の品質を安定化させた。すなわち、複合バイオマス燃料の水分を管理して、ドライヤーに投入する前段階の水分量の調整を図ることと、ドライヤーの機構を開発することによって、システム全体の改善を図ったものである。
主な具体的な手段として、ドライヤーから排出された後の複合バイオマス燃料の含水率を測定して、ドライヤーに投入する前の水分調整行程にフィードバックすること、ドライヤーとしてパドル式ドライヤーを採用して、ドライヤー内での攪拌性および滞留時間を調整するようにしたことである。
【0009】
本発明の家畜糞尿処理システムの概略は、
図1に示されている。
堆肥と木質微細モルダー粉体を混ぜ合わせて混合原料物を製造する混合システムA、
混合原料物を乾燥して自発燃焼可能な複合バイオマス燃料を製造する乾燥システムB、
得られた複合バイオマス燃料を貯蔵するシステムCと、
複合バイオマス燃料を燃料源とし、本システムに使用する熱を回収するボイラーシステムDと、からなる家畜糞尿処理システムである。本システムは、これらの各システム間は行程順に搬送系で連結されており、また、熱の回収、供給系および必要な制御機器を備えている。
複合バイオマス燃料の含水率を測定する水分測定装置は、ドライヤーの排出口の後ろの搬送経路あるいは貯蔵システムの投入口付近に設置されている。水分測定装置の設置箇所は複合バイオマス燃料の温度がドライヤー排出直後よりも下がった貯蔵システム投入口付近に設置することが適している。ドライヤーとしては、攪拌翼の角度を調整できるパドル式ドライヤーが適している。
【0010】
2.用語の定義
本発明で使用される主な用語の定義は次のとおりである。
(1)家畜の糞尿を含む堆肥とは、家畜の糞尿そのものと敷き藁などが混ざった混合物である。堆肥は、畜舎から排出された直後の状態から貯蔵された状態まで含む状態を指し、発酵状態とは無関係である。
【0011】
(2)木質微細モルダー粉体とは、木質系の微細な粉体あるいは片体である。木材の表面仕上げ研削に使用されるモルダー加工から排出される削片に代表される。木質系微粉体は、吸水性能と吸臭性能に優れている。微粉体の形状としては、鋸屑のような粒状、かんな屑のような薄い削片体、パルプ用のチップのような塊、あるいは木質系ファイバーボード用に用いられるようなファイバー状の粉体が存在する。
特に、かんな屑のような薄く、ひねりやカールなどの変形している削片体が適している。さらに、叩解処理を施して、柔らかくして木質構造を構成するセルロースファイバー同士の結合を緩ませて水分吸着能力を高めたものが適している。具体的には、鉛筆の軸とする木材の削り片、木材のカンナ屑片、木材の表面仕上げであるモルダー加工によって削出された研削片などを利用することができる。これを更に叩解して、柔軟化処理、細片化処理を施して、吸水性を向上させることにより、機能性を向上させることができる。叩解装置としては、ターボファンタイプの回転体を通過させて揉み込みを入れるなどの装置を使用することができる。回転体タイプとしては、チェーンやワイヤを回転させて通過させる。また、二枚の網を対向配置して、相対的に回転させ、その中間に素材を供給して軽く擦り合わせて叩解する方法などがある。
【0012】
具体的に望ましい形状や性状は次のとおりである。
厚さ0.02〜0.2mm、横幅1〜10mm、長さ2〜20mm、カサ密度0.1〜0.3g/cm
3(150℃、30分乾燥)であり、木質微細モルダー粉体は、常温での水分吸収能力(150℃、30分乾燥した木質微細モルダー粉体1g当たりの吸収水)が、1.0g水分/g粉体(5分)〜1.5g水分/g粉体(10分)、かつ水分蒸発能力(150℃雰囲気)が、5〜10分で吸収水分を全量放出する。
水分含有率が50〜70重量%の堆肥への木質微細モルダー粉体の混合比率は、30重量%〜80重量%。堆肥の水分含量によって、混合比率を調整するが、混合比率が小さいと乾燥負荷が大きくなり、混合比率が大きいと自燃焼性に問題はないが、有効利用できる割合が少なくなる。
木質微細モルダー粉体は、その大きさが前記範囲外では、家畜糞尿との混合が適度の隙間を確保できず、乾燥有機物の水分含有率にバラツキを生じ、乾燥有機物の自燃焼性の劣化を生じる等の問題があり、そのカサ密度は、木質系微細粉体を150℃、30分乾燥してから測定したものであるから、カサ密度が小さいのは、木質微細モルダー粉体がふわふわでよじれ曲がっているためで、家畜糞尿との混合が適度の隙間を有する状態を保ち、乾燥時に蒸散促進等の効果を発揮する。
また、木質微細モルダー粉体1gを150℃、30分乾燥した後、5分間・10分間で吸収する水分量の範囲が1g〜1.5gで、水分を吸収した該木質微細モルダー粉体1gが、150℃雰囲気で吸収した水分を全量放出するまでの時間の範囲が5〜10分であることを示す。
なお、水分吸収量の測定は、木質微細モルダー粉体が家畜糞尿と接する際の条件に近似した、すなわち、木質微細モルダー粉体を水中に所定時間没した後、吸水性の良い紙類(トイレット紙)で水分を十分拭き取り後、その重量増加分を測定したものである。
本発明では、上記水分吸収能力及び水分蒸発能力を有することによって、家畜糞尿との混合時に家畜糞尿からの水分移行が効果的に行われ、ドライヤーまでの搬送が容易になり、乾燥時の水分蒸発がスムーズに行われるなどの効果がある。
上記水分吸収能力、水分蒸発能力の範囲外では、家畜糞尿からの水分移行が不十分で、べたつきが生じ、ドライヤー装置までの搬送が困難で、乾燥時においても装置内で均一な攪拌を困難にするなどのトラブルを生じ、水分含有率が不均一な複合バイオマス燃料となる。
【0013】
(3)複合バイオマス燃料
本発明で得られる複合バイオマス燃料は、家畜糞尿を含む堆肥と木質微細モルダー粉体を混合して乾燥させて自燃焼可能な固形燃料としたものである。自燃焼とは、着火させた状態で他からの加熱が無くとも自己燃焼を維持できる状態を指すこととする。含水率が高い場合は、燃焼性が悪くなる。本複合バイオマス燃料でも着火させるまでは、石油バーナーなどの補助燃焼手段が必要である。品質にバラツキがあると石油バーナーなどの追加使用が必要となるので、システムの維持には品質の維持が重要となる。
本発明から得られる複合バイオマス燃料は、本システム内で自己消費する外、余剰に生産された物は外販などのシステム外の使用が可能である。
過乾燥状態では、摩擦による自然発火の恐れもあるので、取扱い性を考慮して、15%前後の含水率に調整する。好ましくは、15〜25%の含水率に制御する。
なお、乾燥温度が低く、乾燥が不十分な場合には、堆肥が発酵し、臭いおよび発酵熱により自然発火する危険があるので、十分に乾燥させることは、燃料としての品質以外のリスクをも防止する上で重要である。
結果的に複合バイオマス燃料の品質、燃焼効率の向上、給湯用のボイラーが燃焼停止するなどの運転のバラツキ改善、補助バーナーの消費油量低減も実現できる。さらに、ボイラーから乾燥装置へ安定した温風を送ることができるので、乾燥装置にバーナーなどの補助加熱装置も大幅に低減が可能である。乾燥装置内の温度を高温に保つことができるので排気臭の無臭性も向上する。
【0014】
3.システムについて
詳細なシステムの系統図の例を
図2、全体の機器構成を
図3に示す。
全体システムは、
図1に述べたとおりである。ストックしてある木質微細モルダー粉体と堆肥を特定の水分状態になるように供給して混合する混合システムAと、ボイラーから供給される熱を利用して混合物を乾燥して複合バイオマス燃料とする乾燥システムBと、複合バイオマス燃料をストックする貯蔵システムCと、複合バイオマス燃料を燃焼させて熱と湯を回収するボイラーシステムDから構成されている。各システムを構成する主な装置は次のとおりである。
混合システムAは、混練機を用いる手段であるA1タイプの混合システム10と、スクリューコンベアを用いる手段A2タイプがある。A1あるいはA2タイプは、季節や設置環境によって使い分けるなど、適宜選択する。
混合システム10は、木質微細モルダー粉体供給系と堆肥供給系および両者を混合する系から構成される。堆肥供給系は、畜舎81から排出される堆肥を一旦堆肥貯蔵装置(堆肥サイロ)12に溜め、堆肥供給装置18を経由して混合供給装置11へ送る。木質微細モルダー粉体供給系は、木材加工工場などで発生するかんな屑82を原料とし、モルダー精製機17で叩解して木質モルダー粉体貯蔵サイロ16に溜め、木質モルダー粉体供給装置15を経由して混合供給装置11へ送る。
A2タイプは、堆肥供給用のスクリューコンベアの途中に木質微細モルダー粉体の供給用のスクリューコンベアを合流させて、堆肥供給用のスクリューコンベアに木質微細モルダー粉体を混入させる方式である。
混合システム10タイプは混練することによって、木質微細モルダー粉体と堆肥が良く混合して均一性が向上する。一方、低温時や粘性の高い堆肥では搬送性が悪く、能率が低くなるときがある。他方、スクリューコンベアによる搬送は強制搬送であるので、粘性の影響を受けることなく搬送でき、木質微細モルダー粉体を途中から堆肥搬送用のスクリューコンベア内に強制的に供給するので、両者は一定量を連続して確実に乾燥機へ投入できる利点がある。
乾燥システム20は、強制攪拌できるパドルドライヤー21を採用する。乾燥に使用した後の排気熱は、集塵サイクロン51を経由して煙突から排気される。
貯蔵システム30は、複合バイオマス燃料貯蔵サイロ31に一旦貯留後、次のボイラーの燃料として供給される。あるいは、余剰の複合バイオマス燃料は、袋詰め装置39によって袋詰めされて外販される(外販83)。
ボイラー型温水発生装置40は、複合バイオマス燃料を主燃料として乾燥用熱源とお湯を発生させる、湯は温水循環装置70を経由して畜舎81へ供給される。ボイラーは、炊き始めおよび複合バイオマス燃料不足に備えて補助燃料タンク49を備えている。
【0015】
さらに、本例では、複合バイオマス燃料の含水率を測定する。水分測定は、手動でサンプリングすることができるが、きめ細かなフィードバックをするには自動的な水分測定装置を設けることが適している。例えば、ホッパー型バケットに一時貯留して 30分間隔等の一定間隔でサンプリング測定して、混合システムあるいは乾燥システムへフィードバックする。そのため、燃料貯蔵サイロ内に水分測定装置を配置し、含水率が安定した状態を生成して測定する。バケットの底部に開閉体を設けるかあるいはバケットを傾ける傾動機構を設けて、サンプルの排出をして次のサンプリングとする機構を採用している。傾動機構では堆肥に含まれる藁の詰まりが生じないので適している。センサーの取付け位置は、貯留された複合バイオマス燃料に接触する箇所であれば良いが、複合バイオマス燃料が溜まる底部に水分センサーを配置するのが適している。
さらに、本家畜糞尿処理システムには、乾燥用温風を運ぶ熱供給系、水を運ぶ給湯系、制御系、システム間の物流供給系が存在する。
【0016】
主な、装置について説明する。
(1)混合システム
図6に混合システム10を示す。堆肥は、堆肥サイロ12から堆肥供給装置18を通して供給機11にて木質微細モルダー粉体と混載して混練機19に供給する。木質微細モルダー粉体は、木質モルダー粉体貯蔵サイロ16から木質モルダー粉体供給装置15を通して供給機11にて堆肥と混載して混練機19に供給する。
堆肥供給系は、畜舎から発生する堆肥を一次ピット13に受け入れ、堆肥選別破砕機14にて、藁などの大きさを一定長以下の大きさに揃えて、堆肥搬送コンベア14cにて、堆肥サイロ12の投入口12aから本体12bに投入する。堆肥サイロ12は、架台12c上に本体12bが設置されており、本体12bの上部の一端に堆肥の投入口12aが設けられている。本体12bの他端下部には堆肥の取り出し口18bが設けられている。本体12bの底部にはスクリューコンベア18aが設置されており、取り出し口18bに連なっている。堆肥を搬出するスクリューコンベア18cで次工程へ送られる。堆肥供給装置18は、堆肥の水分状態や複合バイオマスの水分状態によって、供給量をコントロールする。堆肥に含まれる藁には長いものが含まれており、後工程の混練や乾燥において均一にすることが困難になるので、堆肥選別破砕機14にて、細かく切断する。また糞も大きな塊では、攪拌性が阻害されるので、堆肥選別破砕機14で分離処理される。
木質微細モルダー粉体供給系は、木材加工工場などで発生するかんな屑を原料とするモルダー精製機で叩解して精製した木質微細モルダー粉体を、木質モルダー粉体貯蔵サイロ16に一旦貯留し、このサイロの底部に設けたスクリューコンベア15aによって取り出し口15bから供給する。木質モルダー粉体貯蔵サイロ16は、投入筒16aが設けられた本体16bが架台16cに設置されている。本体16bの底部にはスクリューコンベア15aが配置され、本体の下部の一端に設けた取り出し口15bが設けられ、混練機19へ供給するスクリューコンベア15cによって搬出される。木質モルダー粉体供給装置15は、堆肥の水分状態や複合バイオマスの水分状態によって、供給量をコントロールする。
木質微細モルダー粉体を貯蔵サイロから搬出する装置として、ベルトコンベアを使用した場合は、ふわふわした木質微細モルダー粉体に片寄りが生じ小山状になり、供給量が変動して堆肥との混合が乱れてしまうので、ベルトコンベアの上面に均平具を設置して、平にならして供給量を一定にする。均平具は、ならし板、すだれ状のチェーンやロープ、ブラシなどである。
一定の搬送量とされた堆肥と木質微細モルダー粉体は、供給機11にて混練機19に搬入され、搬出される。
図6では、供給機11が堆肥搬出用のスクリューコンベア18cと木質モルダー粉体搬出用のスクリューコンベア15cと上下に離れているように図示されているが、これは工程を模式的に表現したものである。この家畜糞尿処理システムの設置場所の制約を加味して実際には近接して配置される。
供給機11は、混練機19に投入する混載物コンベア11aにて堆肥と木質微細モルダー粉体は混載状態になって搬送される。混練機19は、2軸又は3軸のスクリュー型の羽を備えた撹拌型の混練装置を備えており、堆肥と木質微細モルダー粉体は混ぜ合わされて、摺り合わされて均一な混合状態となる。堆肥に含まれる水分が木質微細モルダー粉体に吸収され、同時に臭いも吸着される。混練機から混合物コンベア11bによって搬出されて、乾燥工程へ送られる。乾燥工程の高温に曝されることによって、臭い成分が分解されて消臭する。
木質微細モルダー粉体は、ふわふわした状態なので混載状態でも均平具を備えることが好ましい。
なお、屋根付き堆肥サイロに貯蔵される堆肥の水分状態は、約50%を目標としているが、糞尿の片寄り分布、敷藁の状態や天候条件によって、ばらつくことは避けがたい。水分状態によって、木質微細モルダー粉体の添加比率を変えることによって調整する。その調整は、堆肥の状態を観察しておおよそ決定することができる。さらに、きめ細かな調整は、複合バイオマス燃料の水分を測定した結果をフィードバックして調整する。
【0017】
(2)堆肥と木質微細モルダー粉体のスクリューコンベア供給システム機
別形態として、堆肥サイロあるいは一次堆肥ピットから直接、堆肥を乾燥システムBへ直接供給する搬送用スクリューコンベアを設置する形態もある。木質微細モルダー粉体は、サイロからスクリューコンベアによって搬出し、前記の堆肥搬送スクリューコンベアの途中に合流させる。この結果、堆肥と木質微細モルダー粉体は、スクリューコンベア内搬送途中に堆肥と強制的に接触されて、吸水される。
【0018】
(3)パドル式ドライヤー
乾燥システムとして、パドル式ドライヤーを採用した。乾燥機内にボイラーからの熱風を引き込み乾燥熱源とする。パドル式ドライヤーは、固定された円筒の筐体内に回転軸を設け、該回転軸に攪拌翼を放射状に取り付け、攪拌翼の形状、取付け角度、取付間隔を調整することにより、攪拌性能、送り性能を調整することができる。ドライヤーの部位によって攪拌翼の取付け状態を調整することができる。例えば、投入口付近では送りだし機能よりも攪拌性を高める機能を重視して、バラケを良くして、中間部から排出口に向けて送り力を高めて、混合物の密度を低くして、乾燥を仕上げて排出する機構とする。
図4にパドルドライヤー21の例を示す。(a)は正面図、(b)は要部拡大図、(c)は側面図を示す。上部を平面とする半円筒状のケーシング22を有し、長手方向に回転軸23を備え、パドル26をこの回転軸に放射状に多数取付けてある。上面の一端側に混合物の投入口27を設け、他端下部側に乾燥物の取り出し筒28を設けてある。回転軸23の一方の軸端に駆動軸24bを設け、駆動モーター25に連結して回転駆動させる。回転軸23の他端はケーシング22の側壁に設けた軸受け24aに支持される。ボイラーから提供される乾燥熱64をケーシングの混合物投入端側から導入し、取り出し筒28側上部からの排気塔側へ連結する。ケーシング22は架台29に設置されている。
本例では、棒状の軸26bの先端側に広幅状のフィン26a板を取り付けてパドル26を構成している。フィンの大きさ、取付け角度、取付間隔を調整することにより、攪拌力および搬送速度を調整することができる。初期部分は、含水率が高く粘り塊があるので、細かく砕きながら熱風を通すために、フィンは小さく、薄く切り裂くような機能を持たせ、中間から徐々にフィンの広幅板を大きくして、混合物を大きく煽る様にして、乾燥の促進を図る。放出口側ほど乾燥が進み、細かくなっているので、乾燥のバラツキを小さくした複合バイオマス燃料を得ることができる。
取り出し筒28の先端に設けた取り出し口28aから出された複合バイオマス燃料は、高温であるので、次の貯蔵サイロまでは、搬送コンベアを使用して、温度を下げる。貯蔵サイロには60℃以下、好ましくは30℃以下で搬入することが望ましい。
乾燥条件は、第1に複合バイオマス燃料の含水率をほぼ20%程度にすることであるので、熱源の状態によって、パドルドライヤー内部の滞留時間、投入量によって調整する。第2は、堆肥を殺菌して、乾燥後の臭気の発生を防止する。例えば、乾燥条件は、温風の導入温度が280℃前後、放出温度が50〜100℃程度である。
パドルドライヤー内では、堆肥と木質微細モルダー粉体は乾燥機投入コンベア121にて混載状態で投入口27から取り入れられ、初期移送122、終期移送123と移送される間に攪拌と乾燥が進み、複合バイオマス燃料に加工されて取り出し口28aから複合バイオマス積み込み路103によって、複合バイオマス燃料貯蔵サイロ31へ移送される。パドルドライヤー21内部では、堆肥と木質微細モルダー粉体の混合物は低速の初期移送122から、出口に向けた終期移送123にかけて搬送速度を上げる。搬送速度の調整は、フィンの大きさ、角度、回転軸の回転数による。更に、乾燥時間は、取り出し筒に設けた取り出し口の開閉度合いの調整によって、パドルドライヤー内に滞留する時間を調整することができる。また、投入量を調整することによってパドルドライヤーの乾燥負荷を調整することができる。
複合バイオマス燃料の含水率は、燃料の着火性、発熱量に影響し、燃料の品質に影響するので上記要素を調整して、乾燥工程をコントロールする。
【0019】
本出願人の先願発明では、ロータリーキルン方式の乾燥機を採用したが、筒形の筐体を回転させるロータリーキルン方式では、混合物が自重によって回転して攪拌される機構であるので、粘性が高い塊部分では、バラケが悪く、複合バイオマス燃料の乾燥にバラツキが生じる原因となっていた。
パドル式ドライヤーは、攪拌翼によって塊を分割して、細分化することにより、乾燥物の品質を安定化させる。
【0020】
(4)複合バイオマス燃料貯蔵システムの例
複合バイオマス燃料貯蔵システムは、堆肥と木質微細モルダー粉体を混合して乾燥し、脱臭されて完成した複合バイオマス燃料を一時貯留する機能を果たしている。ボイラー燃料の貯蔵と外部への供給機能となる。本発明で得られる複合バイオマス燃料は、水分量によって燃焼性能、発熱量などの燃料品質に大きく影響するので、貯蔵される前に含水率を測定して、前工程にフィードバックして管理する。若干の水分変化は、この貯蔵時間内に平準化される。
図9に複合バイオマス燃料貯蔵システム30の例が示されている。複合バイオマス燃料貯蔵サイロ31は、架台上に設置された筒状の容器であって、下限レベルセンサ32aと上限レベルセンサ32bが設けられ、上部に投入口35、下部に取り出し口33が設けられている。取り出し口33の下方は複合バイオマス燃料の受け部34となっており、受け部を介して複合バイオマス燃料供給路104又は図示していない袋詰め装置へ送られる。
本例では、投入口35の下方に水分測定センサー91が設置されている。上下限のレベルセンサーによって、サイロ31内の貯蔵状態を管理し、搬入、搬出を制限する。
【0021】
(5)水分計の例
本発明で得られる複合バイオマス燃料は含まれる水分によって性能が大きく影響されるので、水分を測定して複合バイオマス燃料が製造される乾燥工程の調整を行うことが重要である。水分量は、燃料としての性能のほか、臭いにも影響する、低含水率の方が、臭いが少なく、脱臭効果が大きい。
図7に水分測定装置90の例を示す。この例は回転型のバケット92の底部に水分測定センサー91を設けた形態である。ホッパー型のバケット92であって、下端が支軸93に取り付けられ、支軸93の基端部は回転軸94に軸着されている。前記複合バイオマス燃料貯蔵サイロ31に投入された複合バイオマス燃料をバケットで受けて、満たされた状態で水分を測定する。測定後反転させて、バケット95の状態にして、複合バイオマス燃料を放出し、空にした後復帰させる。この反転復帰のタイミングによって、測定タイミングを調整できる。
すり鉢状のバケットすることによって、複合バイオマス燃料の受けと放出をスムーズに行うことができ、残存による測定誤差の発生を防止できる。また、すり鉢状のバケットの底部にセンサーを設置することにより、バケットに収容した複合バイオマス燃料を確実にセンサーに接触させることができ、測定誤差を小さくすることができる。水分測定センサー自体は公知の装置を使用することができる。
【0022】
(6)ボイラーシステムの例
本発明の家畜糞尿処理システムでは、乾燥用の熱源と畜舎などへの給湯を行う熱源を発生させるボイラーを設ける。このボイラーは、乾燥工程で製造された複合バイオマス燃料を主燃料源として用いることによって、家畜糞尿処理システムとしてほぼ独立した系を完成させることができる。複合バイオマス燃料を燃焼させて温水発生と高温の熱風を作成して、家畜の糞尿を資源化して循環使用する装置である。
図5にボイラー型温水発生装置40の例を示す。(a)は全体図であり、(b)は要部図である。
ボイラー41は、架台の上に燃焼炉48を設け、その上に湯沸かし器44と熱風生成器45を設ける。燃焼炉には、バイオマス燃料供給機42と補助のバーナー49bが設けられる。燃焼炉の下部には灰出し装置43を設ける。灰出し装置43は自動搬出装置を設けることができる。燃焼炉48には空気の供給調整器具が設けられる。運転管理は、乾燥用の熱風として適切な温度と風量が得られることを目処に行われる。
補助バーナー49bは、着火用あるいは複合バイオマス燃料が不足した場合の追い焚き用に使用される。補助バーナー49は、重油などを燃料とするので補助燃料タンク49を備えている。
燃焼炉48の上部には、多数の水管が配置された湯沸かし器44が備えられている。この水管には温水を送り源湯73系と還り湯系74が連結されており、保温タンク72を介して給湯システムに連なっている。また、この水管には水位計72aによって、水量が減少すると給水器72から新しい水が補給される。
また、燃焼炉48の上部には、熱風生成器45が設けられている。湯沸かし器用の水管に接触した熱風は、冷却されて温度が低下し、蒸気濃度が高くなるので、その部分は放蒸口46から排出する。燃焼炉の中央部を上昇した高温の熱風には、燃えかすなどが混じっているので除塵器47へ引き込み排除する。この除塵器47からさらに火の粉止め器63を経由して乾燥熱64に精製する。火の粉止め器63は、除塵器47をすり抜けた微少な高温物質を落下させて、発火などの事故を防止する安全装置である。
除塵器はサイクロン機構を備えており、熱風に含まれる煤塵を落下させて回収する機能を果たしている。高温の灰や燃え滓を落として、安全性と煤の蓄積を押さえる機能である。さらに、火の粉止め器を設けて、高温な固体の回収と送風過程での失火などを防止する安全装置である。
【0023】
(7)乾燥熱系および排気系
本発明の家畜糞尿処理システムは、乾燥および給湯に使用する熱を本システム内でほぼまかなう設計であるので、乾燥熱の経路を説明する。ボイラーで複合バイオマス燃料を燃焼させて得られた熱風は、乾燥機の乾燥熱に利用した後に排気される。
乾燥熱源系の例は
図8に示され、排気系の例は
図9に示されている。全体は
図3に記載されている。
ボイラー41の上部に設けられた熱風生成器45から発生したボイラー熱61は、除塵器47にて、高温で大きな塵埃はトラップされて除かれ、サイクロン熱62となって火の粉止め器63に導かれて高温煤などの微少塵埃が補修されて乾燥熱64となって乾燥機へ投入される。火の粉止め器63への主計路62aの外、開閉バルブを備えたバイパス経路62bを設けて、火の粉止め器63が使用できない場合の迂回路を設ける。
乾燥熱64を送風する経路の途中に外気ダンパー65を設けて、温度調節する。パドルドライヤー21内に導入されて、堆肥と木質微細モルダー粉体の混合物を十分に乾燥させた後のドライヤー廃熱66は、除塵サイクロン51に導かれて微粉塵が除去され、外気ファン52にて煙突59から大気中へ放出される。煙突には消音器58を取り付けて騒音を防止する。排気の二酸化炭素測定器55を取り付けて、排気の状態を監視する。除塵サイクロン51でトラップされた粉塵は、除塵回収路105を介して、複合バイオマス積み込み経路103に戻される。
ボイラーで発生した高温の熱風は、そのまま乾燥機へ供給すると発火の恐れがあるので、温度が測定されて、コントロールされる。パドルドライヤーへ導入する温度を280℃前後、乾燥後に排出される廃熱の温度は、100℃未満を想定している。これにあわせて、各経路に炉内温度計TC−1、ボイラー出口温度計TC−2、パドルドライヤー入り口温度計TC−3、パドルドライヤー出口温度計TC−4を配置して、それぞれの温度を計測して、ボイラーの燃焼炉48と外気ダンパー65をコントロールする。
【0024】
(8)給湯系
本発明の家畜糞尿処理システムでは、畜舎81へ給湯を供給して飼育環境の改善に寄与できる。湯を発生させて供給する系統は
図5および
図3に概略が記載されている。
ボイラー41の上部に取り付けられた多数の水管を備えている湯沸かし器44にて発生した源湯73は保温タンク71に貯留される。保温タンク71から豚舎などの給湯循環75に提供される。利用されて低温となった湯は保温タンク71(符号は同じであるが、還りタンクを別に備えてもよい)に戻し、タンク下部から還り湯74を引き出して湯沸かし器44へ導入する。湯沸かし器44の水位が低下した場合は、水位計72aにて検知して給水器72から新しい水を補給する。
【0025】
(9)物流系
本発明では、堆肥と木質微細モルダー粉体を混合し、高温の熱風で乾燥させて、消臭された複合バイオマス燃料を製造し、この複合バイオマス燃料を燃やして、乾燥の熱源と給湯の熱源として利用する自己完結型のシステムが提案されている。
物流系を主に
図3にしたがって説明する。
物流系は100番台で示してある。堆肥サイロ12と木質微細モルダー粉体貯蔵サイロ16から供給された堆肥と木質微粉モルダー粉体は、別々の状態(101a、102b)で原材料供給路101を経て混練機19に投入され、両者は混ぜ合わされ、水分と臭いが木質微細モルダー粉体に吸収された状態となって混合原料供給路102を経てパドルドライヤー21に投入される。パドルドライヤー内では攪拌と乾燥処理条件によって初期移送122から終期移送123に条件設定がされて搬送される。パドルドライヤー21から放出された状態では、自燃焼可能な複合バイオマス燃料が完成し、搬送コンベア123にて構成される複合バイオマス積み込み路103にて温度を下げながら複合バイオマス燃料貯蔵サイロ31の投入口に運ばれる。複合バイオマス積み込み路103あるいはサイロ31の投入前後に含水率を測定して、システムの工程管理データとする。貯蔵された複合バイオマス燃料は、サイロ31から取り出されて複合バイオマス燃料供給路104を経由してボイラー41の燃料として利用される。サイロ31から取り出された複合バイオマス燃料の一部は袋詰めされて本システムの外部へ提供される。燃焼後は燃焼灰と燃焼ガスとなって搬出される。
【0026】
本発明の家畜糞尿処理システムは、複合バイオマス燃料の含水率を一定以下にコントロールするために、堆肥と木質微細モルダー粉体の混合比率、乾燥熱の温度管理など行う制御機能及び安全管理機能を備えており、システム全体を管理する集中コントロール機能を設けることができる。
【0027】
4.作用、機能についての説明
畜舎から排出される家畜の糞尿と敷藁が混ざった堆肥と木質微細モルダー粉体とを混ぜ合わせて一定の含水量の調整をし、この調整した混合物をパドルドライヤー乾燥機に投入して、含水率約20%に乾燥させて、複合バイオマス燃料とし、貯蔵サイロを経由してこの複合バイオマス燃料を、ボイラーの燃料として供給し、パドルドライヤーに供給する乾燥用熱源及び畜舎に供給する給湯の熱源を発生させる。畜舎廃棄物の減量および熱源として有効活用して再資源化する。さらに、複合バイオマス燃料は外販も可能である。
パドルドライヤーに供給する熱は、ドライヤーの排気ガスを直接使用する形態であり、ボイラーから火の粉が入り込まないように、サイクロンと火の粉止め器を経由して、乾燥機に供給する。さらに、外気を取りこむ機構を追加して、高温過ぎないように注意する。排ガスを直接乾燥源とすることは、熱の有効利用と、低酸素であるので発火の危険性が低いこと、燻製作用もあって臭気の低減化にも有効である。
水分調整材として用いる木質微細モルダーは、叩解処理を加えて水分吸収性能及び脱臭性能を高めて使用する。木材加工から発生する廃棄物を活用することができる。
畜舎の熱源が確保され、飼育環境を改善することができるので、幼畜の生存率が上がり、家畜の成長が早く、飼育効率及び作業環境が改善される。そして、迷惑度が改善し、立地の自由度が高くなる。