(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959257
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】プローブ用キャップ及びプローブ
(51)【国際特許分類】
G01N 21/01 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
G01N21/01 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-67570(P2012-67570)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-200165(P2013-200165A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 健二
(72)【発明者】
【氏名】中岡 豊人
【審査官】
比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−125723(JP,A)
【文献】
特開昭63−198834(JP,A)
【文献】
特開2000−121567(JP,A)
【文献】
特開2004−024856(JP,A)
【文献】
特開昭61−292043(JP,A)
【文献】
米国特許第06111653(US,A)
【文献】
特開平09−212573(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0145048(US,A1)
【文献】
米国特許第04866258(US,A)
【文献】
特開昭64−017177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−37/00
G01B 1/00−21/32
G01J 1/00−11/00
A61B 5/00− 5/22
A61B 9/00−10/06
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被探査物を探査するためのプローブに取り付けられるプローブ用キャップであって、
キャップ本体と、
前記キャップ本体の端部に形成された接触面と、
前記キャップ本体の内部に形成された導光路と、を備え、
前記接触面は、一方方向に沿って湾曲するとともに、前記一方方向に直交する方向には湾曲しておらず、
前記導光路は、前記接触面に向かって延び、当該接触面で開口する開口部を備え、当該開口部における前記接触面の法線方向に沿って直線状に延びている、プローブ用キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブ用キャップを備えるプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被探査物を探査するためのプローブ及びプローブ用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体(例えば塗料が塗布された壁、自動車のボディー、及び、浴槽等)の物理的、電気的又は機械的な特性を非破壊で測定するために、物体の表面にプローブを接触させて探査をすることが一般的に行われている。このような、物体を探査するためのプローブとしては、例えば、特許文献1に記載のプローブが公知になっている。
【0003】
図5は、従来のプローブの断面図である。
図5に示すように、従来のプローブ100は、円筒状のプローブ本体101と、このプローブ本体101の先端部に形成された接触面102とを備えており、接触面102を被探査物103の表面に接触させ、被探査物103を探査するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11‐125723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のプローブ100では、接触面102を被探査物103の表面に接触させたときに、被探査物103に対するプローブ100の角度を調整することができず、被探査物103に対してプローブ100を適切に接触させることが難しかった。また、被探査物103の表面が湾曲している場合には、その表面と接触面102とを適切に接触させることができず、プローブ100を被探査物103に適切に接触させることが更に難しくなっていた。そのため、被探査物103を正確に探査することが難しくなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、正確な探査を容易にすることができるプローブ用キャップ及びプローブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、被探査物を探査するためのプローブに取り付けられるプローブ用キャップであって、キャップ本体と、前記キャップ本体の端部に形成された接触面と、前記キャップ本体の内部に形成された導光路と、を備え、前記接触面は、一方方向に沿って湾曲しており、前記導光路は、前記接触面に向かって延び、当該接触面で開口する開口部を備え、当該開口部における前記接触面の法線方向に沿って直線状に延びている。
【0008】
このような構成によれば、被探査物の表面に対するプローブ用キャップの角度を調整するときに、接触面の一方方向への湾曲を利用して、プローブ用キャップを一方方向にのみ回転させることができる(プローブ用キャップを接触面の湾曲に沿って転動させることができる。)。これにより、被探査物の表面に対する導光路の角度を調整するときに、一方方向にのみ回転させればよい(湾曲面に沿って転動させればよい)ので角度調整を容易に行うことができる。よって、導光路を被探査物の表面に対して容易に直交させることができる。また、一方方向に直交する方向へのプローブ用キャップの回転(転動)を防ぐことができるので、被探査物の表面に対する導光路の角度を調整するときに、当該直交する方向への回転(転動)を規制することができ、手振れを防止することができる。これにより、導光路の角度調整を正確に行うことができ、導光路を被探査物の表面に対して正確に直交させることができる。以上より、本発明に係るプローブ用キャップによれば、導光路の角度調整を容易かつ正確に行うことができるので、被探査物を探査するときに、正確な探査を容易にすることができる。
【0009】
また、本発明は、上記のプローブ用キャップを備えるプローブであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプローブ用キャップ及びプローブによれば、正確な探査を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプローブの斜視図である。
【
図2】(a)
図1のA−A断面図、及び、(b)
図1のB−B断面図である。
【
図3】プローブ用キャップを被探査物に接触させた状態を示す図である。
【
図4】プローブ用キャップを被探査物に接触させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るプローブの斜視図であり、
図2は、(a)
図1のA−A断面図、及び、(b)
図1のB−B断面図であり、
図3及び
図4は、プローブ用キャップを被探査物に接触させた状態を示す図である。
【0013】
図1から
図4に示すように、プローブ10は、被探査物50を探査するためのものであり、被探査物50に接触させるプローブ用キャップ1と、このプローブ用キャップ1が取り付けられたプローブ本体11とを備えている。
【0014】
被探査物50としては、塗料が塗布された壁、自動車のボディー、及び、浴槽等を例示することができ、被探査物50の表面にプローブ10を接触させて探査を行うことにより、被探査物50の物理的、電気的又は機械的な特性を非破壊で把握することができる。
【0015】
プローブ用キャップ1は、プローブ10の一部を構成するものであり、キャップ本体2と、キャップ本体2の先端部21に形成された接触面3と、キャップ本体2の内部に形成された導光路4とを備えている。
【0016】
キャップ本体2は、基端側に位置する胴部20と、先端側に位置する先端部21とを備え、胴部20はプローブ本体11の先端部に着脱自在に固定されており、先端部21は接触面3を介して被探査物50に接触させることができる。このキャップ本体2は、例えばプラスチック樹脂を金型成型することにより製造することができる。また、キャップ本体2の胴部20をプローブ本体11に取り付ける構成は、特に限定されるものではなく、例えば、ネジにより取り付けることや、接着剤により取り付けることができる。
【0017】
接触面3は、一方方向(本実施形態では、第1の方向X)に沿って湾曲しており、キャップ本体2の先端方向に突出するように構成されている。この接触面3の曲率は、適宜変更可能であり、例えば、
図4に示すように、曲面状の被探査物50に接触面3を接触させる場合は、接触面3の曲率を大きくすることが好ましい。また、接触面3の曲率は、被探査物50の表面の曲率より大きく設定されていることが好ましい(接触面3の曲率半径は、被探査物50の表面の曲率半径を小さく設定されていることが好ましい)。また、接触面3は、前記一方方向に直交する方向(本実施形態では、第2の方向Y)には湾曲していない。
【0018】
導光路4は、キャップ本体2の中心部において、キャップ本体2を軸方向に貫通するように延びている。また、導光路4は、接触面3に向かって延びており、接触面3で開口する開口部40を備え、当該開口部40における接触面3の法線方向Zに沿って直線状に延びている。これにより、開口部40が被探査物50の表面に接触したときに、導光路4が被探査物50の表面の法線方向に延びるように構成されている。
【0019】
また、接触面3が上方を向くと共に導光路4が鉛直方向を向くようにキャップ本体2を配置したときに、接触面3において最も上方に位置する部分に直線状に延びる接触頂部30が形成されている。この接触頂部30は、接触面3の接線になっており、導光路4及び第1の方向Xの方向と直交するように延びている。また、
図2は、キャップ本体2を導光路4に沿った面で切断したときの断面を示しており、この
図2に示すように、接触面3は、第1の方向Xに沿った断面形状が湾曲していると共に、第1の方向Xに直交する第2の方向Yに沿った断面形状が直線状となるように形成されている。このとき、第2の方向Yは、接触頂部30の延在方向と平行になっている。
【0020】
プローブ本体11は、内部に配置された光ファイバー12を備えている。この光ファイバー12は、コア及びクラッドを備えた公知の構成であり、キャップ本体2がプローブ本体11に固定された状態で導光路4に接続されており、導光路4に向かって光を照射するように構成されている。これにより、光ファイバー12からの光を、導光路4を通して被探査物50に照射することができる。また、プローブ本体11は、図示しない受光センサーを備えており、被探査物50に照射した光が被探査物50で反射して、反射光として導光路4を通してプローブ本体11に戻ってきたときに、この反射光を受光センサーにより検出できるように構成されている。
【0021】
次に、上述のような構成を備えるプローブにより被探査物を探査する方法について説明する。
【0022】
被探査物を探査するときは、まず、
図3の(a)に示すように、プローブ用キャップ1の接触面3を被探査物50の表面に接触させた状態で、プローブ10を左右に動かすことにより、接触面3の湾曲を利用してプローブ用キャップ1を回転させる(接触面3の湾曲に沿ってプローブ用キャップ1を転動させる。)。これにより、プローブ用キャップ1は、被探査物50に接触している部分の中心点を含む軸(
図1のY方向に平行な軸)を中心に回転(転動)をする(
図1の法線方向Zを中心とした回転ではない。)。プローブ用キャップ1が回転(転動)すると、被探査物50の表面に対するプローブ用キャップ1の接触角度が調整される。そして、プローブ用キャップ1の接触角度の調整により、被探査物50に対する導光路4の角度を調整し、導光路4が被探査物50の表面の法線方向に延びるように(導光路4が被探査物50の表面に対して直交するように)角度調整をする。このとき、接触面3が一方方向には湾曲しているが、当該一方方向に直交する方向には湾曲していないので、
図3の(b)及び(c)に示すように、湾曲しない方向にはプローブ用キャップ1が回転(転動)しない。そして、導光路4が被探査物50の表面に対して直交した状態で、光ファイバー12からの光を、導光路4を通して被探査物50に照射する。これにより、光ファイバー12からの照射光が被探査物50の表面に対して垂直に照射される。また、被探査物50で反射した反射光が導光路4を通してプローブ本体11に戻ってゆく。このようにして、被探査物50を探査することができる。
【0023】
上述のようなプローブ用キャップ1及びプローブ10によれば、プローブ用キャップ1の接触面3が一方方向(第1の方向X)に沿って湾曲すると共に、導光路4が接触面3に向かって延び、当該接触面3で開口する開口部40を備え、当該開口部40における接触面3の法線方向Zに沿って直線状に延びているため、被探査物50の表面に対するプローブ用キャップ1の角度を調整するときに、接触面3の一方方向(第1の方向X)への湾曲を利用して、プローブ用キャップ1を一方方向(第1の方向X)にのみ回転させることができる(プローブ用キャップ1を接触面3の湾曲に沿って転動させることができる。)。これにより、被探査物50の表面に対する導光路4の角度を調整するときに、一方方向(第1の方向X)にのみ回転させればよい(湾曲面に沿って転動させればよい)ので角度調整を容易に行うことができる。よって、導光路4を被探査物50の表面に対して容易に直交させることができる。また、一方方向(第1の方向X)に直交する方向(第2の方向Y)へのプローブ用キャップ1の回転(転動)を防ぐことができるので、被探査物50の表面に対する導光路4の角度を調整するときに、当該直交する方向(第2の方向Y)への回転(転動)を規制することができ、第2の方向Yへの手振れを防止することができる。これにより、導光路4の角度調整を正確に行うことができ、導光路4を被探査物50の表面に対して正確に直交させることができる。以上より、本発明に係るプローブ用キャップ1及びプローブ10によれば、導光路4の角度調整を容易かつ正確に行うことができるので、被探査物50を探査するときに、正確な探査を容易にすることができる。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適宜実施形態を変更することができる。
【0025】
例えば、上記実施形態では、プローブ本体11は、光ファイバー12を備える構成であったが、プローブ用キャップ1の導光路4を通して被探査物50に光を照射することができるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。
また、本発明の上記実施形態に係るプローブ用キャップ1をプローブ本体11から取り外して、他のプローブ用キャップ(例えば、先端部が平面状や球面状のプローブ用キャップ)に交換することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 プローブ用キャップ
2 キャップ本体
3 接触面
4 導光路
10 プローブ
11 プローブ本体
12 光ファイバー
20 胴部
21 先端部
30 接触頂点
40 開口部
50 被探査物