特許第5959265号(P5959265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5959265-プリント配線基板への端子の実装構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959265
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】プリント配線基板への端子の実装構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/51 20110101AFI20160719BHJP
   H01R 12/79 20110101ALI20160719BHJP
【FI】
   H01R12/51
   H01R12/79
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-77405(P2012-77405)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-206842(P2013-206842A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100120053
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一乗
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0022561(US,A1)
【文献】 米国特許第7097482(US,B1)
【文献】 特開2009−176426(JP,A)
【文献】 特開2007−294299(JP,A)
【文献】 特開2008−300193(JP,A)
【文献】 特開2009−081073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00〜12/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板上に固定されたコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに保持された複数の端子とを備え、前記複数の端子の端部が前記プリント配線基板上の複数の導体パターンに半田付けされたプリント配線基板への端子の実装構造において、
前記プリント配線基板上に載置された前記コネクタハウジングには、仕切り壁により仕切られて形成され複数の溝が設けられ、該溝内には、前記端子の端部がそれぞれ配置されてなり、
前記端子の半田付けされる端面は、前記仕切り壁が前記プリント配線基板と接する端面よりも前記溝の奥側に配置され、前記端子の端部と前記溝の内面との間には、溶融した半田が流れ込む空隙が形成されていることを特徴とするプリント配線基板への端子の実装構造。
【請求項2】
前記溝の底部の溝幅は、前記端子の端部の横幅よりも小さく形成され、
前記仕切り壁は、前記溝の断面が台形となる傾斜面を有して形成されることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板への端子の実装構造。
【請求項3】
前記溝の底部の溝幅は、前記端子の端部の横幅よりも小さく形成され、
前記仕切り壁は、前記端子が当接する段部を有して形成されることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板への端子の実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板への端子の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器や電気機器の相互接続には、配線スペースを低減し、又は配線経路の自由度を向上させるなどのため、例えば、フレキシブルフラットケーブル(FFC)や、フレキシブル配線基板(FPC)などのフレキシブル集約配線が用いられている。このフレキシブル集約配線を各種の電気部品が取り付けられるプリント配線基板へ接続する場合、プリント配線基板に電気的接続がなされて固定されるコネクタが用いられる。
【0003】
この種のコネクタは、フレキシブル集約配線の端末部が導入される樹脂製のコネクタハウジングと、コネクタハウジングに保持される複数の端子から構成される。これらの端子は、コネクタハウジングの幅方向、つまりフレキシブル集約配線の幅方向に所定間隔で配列して設けられ、フレキシブル集約配線の端末部がコネクタハウジングの正面の挿入穴から導入されたときに、この端末部に配列された複数の導体とそれぞれ接続されるようになっている。また、これらの端子は、コネクタハウジングの背面から外側に出された端部がプリント配線基板上に配列された複数の導体パターンと半田付けされるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−204509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1では、コネクタハウジングの外側に延在する複数の端子の端部がプリント配線基板上の導体パターンに半田付けされるが、今後はコネクタの小型化や回路パターンの高密度化などが進むにつれて、これらの端子間の間隔(ピッチ)がより狭くなることが予想される。そうした場合、溶融した半田が、隣接する端子間や導体パターン間でブリッジを形成し、端子や導体パターンが互いに短絡するおそれがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、コネクタハウジングに保持された端子をプリント配線基板上の導体パターンに接続するに際して、溶融した半田により隣接する端子や導体パターンが互いに短絡するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、プリント配線基板上に固定されたコネクタハウジングと、このコネクタハウジングに保持された複数の端子とを備え、複数の端子の端部がプリント配線基板上の複数の導体パターンに半田付けされたプリント配線基板への端子の実装構造において、プリント配線基板上に載置されたコネクタハウジングには、仕切り壁により仕切られて形成され複数の溝が設けられ、この溝内には、端子の端部がそれぞれ配置され、端子の半田付けされる端面は、仕切り壁がプリント配線基板と接する端面よりも溝の奥側に配置され、端子の端部と溝の内面との間には、溶融した半田が流れ込む空隙が形成されていることを特徴とする。
【0008】
これによれば、端子の端部をプリント配線基板上の導体パターンに半田付けする際、溶融する半田が端子の端部の周囲へ流れたとしても、溝内には、端子の端部の周囲に空隙が形成されるから、半田をその空隙内に導いて固化させることができる。したがって、半田を溝内に留めることができるため、隣接する溝や導体パターンへ半田が流れ込むのを防ぐことができ、端子や導体パターンの短絡を防ぐことができる。
【0009】
この場合において、仕切り壁は、端子の端部よりも突出してなるものとする。
【0010】
また、端子の半田付けされる端面は、仕切り壁がプリント配線基板と接する端面よりも溝の奥側に配置されるから、溶融する半田を収容できる空間を溝内により多く確保することができ、溝の外側へ判断が流れ出すのを確実に防ぐことができる。
【0011】
また、溝の底部の溝幅は、端子の端部の横幅よりも小さく形成され、仕切り壁は、溝の断面が台形となる傾斜面を有して形成されてなるものとする。
【0012】
これによれば、仕切り壁の傾斜面に端子を当接させることができるため、溝内で端子を位置決めすることができ、しかも、溝内の所定位置で端子を保持することができる。これにより、端子の位置のばらつきに伴う半田の流れ方向の変動を防ぐことができるから、半田をより確実に空隙に流し込むことができる。
【0013】
また、これに代えて、溝の底部の溝幅は、端子の端部の横幅よりも小さく形成され、仕切り壁は、端子が当接する段部を有して形成されてなるものとしてもよい。
【0014】
これによれば、端子を段部に当接させて支持することができるため、仕切り壁の断面を台形にした場合と同様に、端子の位置のばらつきに伴う半田の流れ方向の変動を防ぐことができ、半田をより確実に空隙に流し込むことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コネクタハウジングに保持された端子をプリント配線基板上の導体パターンに接続するに際して、溶融した半田により隣接する端子又は導体パターンが互いに短絡するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態に係るコネクタの外観の斜視図である。
図2図1のA部(溝)を拡大して示す図である。
図3図2の溝内に配置されるテール部を拡大して示す図である。
図4】第1の実施の形態に係るコネクタを分解して表した図である。
図5】第2の実施の形態に係るコネクタの溝を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明のプリント配線基板(以下、基板と略す。)への端子の実装構造の第1の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
図4は、本発明が適用されるコネクタを分解して表した斜視図である。図4に示すように、コネクタ11は、樹脂製のコネクタハウジング13と、複数の端子15とを備える。
【0019】
コネクタハウジング13は、幅方向を長手とする直方体状に形成され、複数の端子が挿入される溝(後述)と、フレキシブル集約配線17が挿入される挿入口19とを備える。挿入口19は、コネクタハウジング13の一方の側面(図4の正面)に形成され、溝は、コネクタハウジング13の他方の側面(図4の背面)に形成される。
【0020】
端子15は、互いに対向する一対の突出部21を備え、具体的には、L字状に形成される板材の一方の側面から他方の側面と対向する面を有する板状の部材を突出させることにより、互いに対向する一対の突出部21を形成している。端子15は、一対の突出部21を挿入方向に向けてコネクタハウジング13の溝内に挿入(圧入)されることにより、コネクタハウジング13に保持される。
【0021】
フレキシブル集約配線17は、箔状の複数本の導体を挿入方向と直交する方向に所定の間隔で配列し、両面を絶縁フィルムで挟んで形成される。本実施形態では、フレキシブル集約配線17として、その挿入方向の端部に一方の面(図4の下面)の絶縁フィルムを切り欠いて各導体の端末を露出させた端末部23を形成するフレキシブルフラットケーブルを例として示す。
【0022】
複数の端子15が保持されたコネクタハウジング13には、挿入口19からフレキシブル集約配線17が挿入される。これにより、各端子15の一対の突出部21のうち少なくとも一方とフレキシブル集約配線17の端末部23の導体とが接続される。
【0023】
図1は、コネクタ11を背面側(溝側)から見た図である。コネクタハウジング13には、幅方向の両端に固定具25が接続されている。コネクタ11は、図示しない基板上に載置され、コネクタハウジング13に保持された端子15の端部がそれぞれ図示しない基板上に配列された導体パターンと半田付けされる。また、コネクタハウジング13は、固定具25を介して基板上に固定される。このようにすることで、コネクタ11は、基板上に搭載される。
【0024】
図2は、図1のA部の拡大図である。図2に示すように、コネクタハウジング13には、基板と対向する下面27と、この下面27から直交して立ち上がる背面29とが交わる角部に沿って、下面27と直交する方向に延在する複数の溝31が所定の間隔で設けられている。
【0025】
溝31は、下面27に開口する開口部33と、背面29に開口する開口部37とを有し、開口部33は、溝31の深さ方向の断面をなして形成される。開口部37には、その長手方向に沿って端子15が収容され、開口部33には、基板の導体パターンと半田付けされる端子15の端部(以下、テール部39という。)が配置される。なお、溝31内には、端子15の一対の突出部21が収容される図示しない空間が形成され、この空間を介して溝31が挿入口19と連通するようになっている。
【0026】
テール部39は、溝31の深さ方向を長手とする矩形の断面をなして形成され、少なくとも背面29側に位置する2箇所の角部に面取りが施されている。
【0027】
各溝31は、仕切り壁41によって互いに仕切られている。つまり、隣り合う溝31と溝31との間には、仕切り壁41が設けられている。仕切り壁41は、深さ方向の断面が台形に形成され、上端面が背面29と面一になっている。各溝31の溝底面43の溝幅は、テール部39の横幅よりも小さくなっている。
【0028】
図3は、下面27に形成される溝31の開口部33を拡大して示す図である。図3に示すように、溝31に収容されるテール部39の側面と、この側面と対向する仕切り壁41の斜面との間には、溝31の深さ方向に渡って、断面が三角状の空隙45が形成されている。
【0029】
仕切り壁41は、溝31の深さ方向において、テール部39の上端面よりも突出して形成される。つまり、テール部39は、溝31の開口部37から背面29よりも外側に突出することなく、溝31内に収容された状態となっている。
【0030】
また、図2に示すように、仕切り壁41は、溝31の長手方向の端部において、テール部39よりも突出して形成される。つまり、テール部39は、溝31の開口部33から下面27よりも外側に突出することなく、溝31内に収容された状態となっている。
【0031】
本実施形態では、コネクタハウジング13に保持された複数の端子15のテール部39をそれぞれ基板上に配列された複数の導体パターンの上面と対峙させ、例えばリフロー方式によって導体パターンに固着された半田を溶融させることにより、テール部39を導体パターンに半田付けする。ここで、例えば、溶融した半田にテール部39が浸漬された状態になると、溶融した半田は、テール部39の周囲に押し流される。しかし、テール部39は、導体パターンの上面と対向する溝31(開口部33)に収容されており、その溝31内には、空隙45が設けられているから、溶融した半田は、溝31内の空隙45に流れ込み、固化される。したがって、溶融した半田は、溝31内に留まって固化されるため、テール部39と導体パターンの半田付けを確実に行うことができる。また、溶融した半田が、隣接する溝31や導体パターンへ流れ込むのを防ぐことができるため、隣り合う端子15間や導体パターン間でブリッジによる短絡を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、仕切り壁41は、溝31の深さ方向において、テール部39の上端面よりも突出して形成され、更に、仕切り壁41は、溝31の長手方向の端部において、テール部39よりも突出して形成されることから、テール部39は溝31内に完全に収容された状態となる。これにより、端子15同士が直接接触するのを防ぐことができる。また、溝31内で溶融した半田を収容可能な空間を広く確保することができるから、半田を確実に溝31内に留めることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、各溝31の溝底面43の溝幅は、端子15の横幅よりも小さく形成され、かつ、仕切り壁41は、その断面が台形に形成されるから、仕切り壁41の傾斜面にテール部39の角部を当接させて配置することができる。これにより、溝31内でテール部39の位置決めを行うことができ、しかも、テール部39を溝31内の所定位置に保持することができる。したがって、テール部39の位置のばらつきに伴う半田の流れ方向の変動などを防ぐことができ、半田をより確実に空隙45に流し込むことができる。
【0034】
ところで、今後、コネクタ11が小型化されて、端子15が小さくなると、テール部39と基板上の導体パターンとの接続面積が減少して、両者を接続する半田の量が減少することにより、導通性能が低下するおそれがある。この点、本実施形態によれば、テール部39を導体パターンに半田付けする際、端子間の短絡や導体パターンの短絡を防止できるため、テール部39と導体パターンとの接続面積が減少しても、半田の量を比較的多く使用することができ、導通性能の低下を抑制することができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の基板への端子の実装構造の第2の実施の形態について、図面を用いて説明する。特に言及しない限り、第2の実施の形態の基板への端子の実装構造は、第1の実施の形態と同様である。
【0036】
図5は、本実施の形態の基板への端子の実装構造における溝の一例を示した図である。図5に示すように、溝47は、溝底面43の溝幅が端子15の横幅よりも小さくなっており、仕切り壁49は、端子15が当接する段部51が形成された段付き形状となっている。また、溝47に収容されるテール部39の側面と、この側面と対向する仕切り壁49との間には、溝47の深さ方向に渡って、断面が矩形の空隙53が形成される。
【0037】
このように、仕切り壁49を台形に代えて、段付き形状としても、テール部39を導体パターンに半田付けする際は、溶融する半田が空隙53に流れ込み、固化される。したがって、第1の実施の形態と同様に、溶融する半田が溝47内に留まって固化されるため、テール部39と導体パターンを確実に半田付けすることができる。また、溶融した半田が、隣接する溝31や導体パターンへ流れ込むのを防ぐことができるため、隣り合う端子15間や隣り合う導体パターン間でブリッジによる短絡を防止することができる。
【0038】
また、仕切り壁49には段部51が形成されるため、テール部39を段部51に当接させて配置することができる。これにより、溝31内でテール部39の位置決めを行うことができ、しかも、テール部39を溝31内の所定位置に保持することができる。したがって、第1の実施の形態と同様に、テール部39の位置のばらつきに伴う半田の流れ方向の変動などを防ぐことができ、半田をより確実に空隙53に流し込むことができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0040】
例えば、上記の実施の形態では、フレキシブル集約配線17と端子を接続するコネクタ11について説明したが、コネクタについては、この例に限られるものではなく、要は、基板上に配列された導体パターンと半田付けされる複数の端子を保持するコネクタであれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
11 コネクタ
13 コネクタハウジング
15 端子
17 フレキシブル集約配線
27 下面
29 背面
31 溝
39 テール部
41 仕切り壁
43 溝底面
45 空隙
47 溝
49 仕切り壁
51 段部
53 空隙
図1
図2
図3
図4
図5