(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対のブラシは、固定子が有する一対の磁極の中心を結んだ線に対して、前記整流子と接触する位置が所定の回転方向において遅角側となるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載のモータの使用方法。
前記整流子は、該整流子と前記回転子との相対位置がモータ位相における中性となる固定位置に対して、遅角側となるように前記シャフトに固定されていることを特徴とする請求項2に記載のモータの使用方法。
前記一対のブラシは、固定子が有する一対の磁極の中心を結んだ線に対して、前記整流子と接触する位置が所定の回転方向において遅角側となるように配置されていることを特徴とする請求項6に記載のモータ。
前記整流子は、該整流子と前記回転子との相対位置がモータ位相における中性となる固定位置に対して、遅角側となるように前記シャフトに固定されていることを特徴とする請求項6に記載のモータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このモータ停止後の電源供給により、モータが振動して異音(高周波ノイズ)が発生する場合がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回転がロックしたモータに通電した状態で発生する異音などを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のモータの使用方法は、ブラシを備えたモータの回転を機械的に停止させる停止機構とともに用いるモータの使用方法である。この方法は、モータを駆動し、該モータの回転によって所定の部材を第1の位置から第2の位置へ移動させ、移動する所定の部材を、モータに通電されている状態で停止機構によって機械的に第2の位置で停止させ、第2の位置で所定の部材が固定されることで所定の機能を実現する、装置に使用し、モータは、所定の部材を第2の位置へ向けて移動させて固定する場合にはモータ位相が遅角となるように、その装置にて使用される。
【0007】
この態様によると、所定の部材を第2の位置へ向けて移動させる場合にモータ位相が遅角となるように構成されているモータを用いる。そのため、所定の部材を停止機構によって機械的に第2の位置で停止させた場合に、整流が切り替わる回転位置近傍でモータがロックしたときは、その際の反力でモータが逆転しても、モータ位相が進角となるモータと比べて、発生するトルクの大きさが小さい。そのため、再度モータが回転する可能性が小さく、モータのロックと再回転とが繰り返されることにより発生するモータの振動(異音)を抑制することができる。
【0008】
モータは、筒状のハウジングと、ハウジングの内面に沿って設けられ、一対以上の磁極を有する固定子と、ハウジングの軸線に沿って設けられ、回転軸となるシャフトと、シャフトに固定され、固定子に対向配置された回転子と、シャフトに固定され、回転子とともに回転する整流子と、整流子の外周面を摺動するように設けられている一対のブラシと、を備えてもよい。このようなモータを使用した場合であっても、前述のモータの使用方法により、整流子によって電流の流れが切り替わる際に発生する火花が減少し、電気ノイズの発生が抑制される。
【0009】
一対のブラシは、固定子が有する一対の磁極の中心を結んだ線に対して、整流子と接触する位置が所定の回転方向において遅角側となるように配置されていてもよい。これにより、モータ位相が遅角となる構成を簡便に実現できる。
【0010】
整流子は、該整流子と回転子との相対位置がモータ位相における中性となる固定位置に対して、遅角側となるようにシャフトに固定されていてもよい。これにより、整流子の固定位置を少しずらすだけで、モータ位相が遅角となる構成を簡便に実現できる。
【0011】
固定子は、回転子と対向する面に着磁中心を有する少なくとも一対のマグネット片を備えてもよい。一対のマグネット片は、互いに異なる極の着磁中心が対向するように配置され、該一対のマグネット片の中心同士を結んだ線に対して、異なる極の着磁中心同士を結んだ線が遅角側となるように、着磁中心が形成されていてもよい。これにより、各部材の配置や形状を変えることなく、モータ位相が遅角となる構成を簡便に実現できる。
【0012】
モータにおける、中性位相に対して遅らせる位相角は、10°〜20°であってもよい。より好ましくは、モータにおける、中性位相に対して遅らせる位相角は、12°〜18°であってもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、モータである。このモータは、ブラシを備えたモータの一方の回転を機械的に停止させる停止機構とともに用いられるモータであって、筒状のハウジングと、ハウジングの内面に沿って設けられ、一対以上の磁極を有する固定子と、ハウジングの軸線に沿って設けられ、回転軸となるシャフトと、シャフトに固定され、固定子に対向配置された回転子と、シャフトに固定されて、回転子とともに回転する整流子と、整流子の外周面を摺動するように設けられている一対のブラシと、を備える。また、モータは、一方の回転の際にはモータ位相が遅角となるように構成されている。
【0014】
この態様によると、モータを一方の回転方向において停止機構とともに用いる場合にモータ位相が遅角となるように構成されている。そのため、モータの回転によって移動する部材が停止機構によって機械的に所定の位置で停止し、通電も継続されている場合に、整流が切り替わる回転位置近傍でモータがロックしたときは、その際の反力でモータが逆転しても、モータ位相が進角となるモータと比べて、発生するトルクの大きさが小さい。そのため、再度モータが回転する可能性が小さく、モータのロックと再回転とが繰り返されることにより発生するモータの振動(異音)を抑制することができる。
【0015】
一対のブラシは、固定子が有する一対の磁極の中心を結んだ線に対して、整流子と接触する位置が所定の回転方向において遅角側となるように配置されていてもよい。これにより、モータ位相が遅角となる構成を簡便に実現できる。
【0016】
一対のブラシのそれぞれを支持し、ブラシを整流子に向けて押圧するようにバネ性を有するブラシアームを更に備えてもよい。ブラシアームは、ブラシを支持している支持部と、支持部から、一対の磁極の中心を結んだ線を挟んで反対側の領域に向かうように設けられているアーム部と、アーム部の支持部とは反対側の端部であって、ハウジング又はハウジングと連結されている他の部材に固定される固定部と、を有してもよい。これにより、アーム部は、ブラシと整流子とが接触する位置から回転方向上流側に位置することになり、ブラシが整流子との摩擦力により回転方向に引き摺られる力によって引っ張られることになる。そのため、ブラシアームのびびりの発生を抑えられる。
【0017】
整流子は、該整流子と回転子との相対位置がモータ位相における中性となる固定位置に対して、遅角側となるようにシャフトに固定されていてもよい。これにより、整流子の固定位置を少しずらすだけで、モータ位相が遅角となる構成を簡便に実現できる。
【0018】
固定子は、回転子と対向する面に着磁中心を有する少なくとも一対のマグネット片を備えてもよい。一対のマグネット片は、互いに異なる極の着磁中心が対向するように配置され、該一対のマグネット片の中心同士を結んだ線に対して、異なる極の着磁中心同士を結んだ線が遅角側となるように、着磁中心が形成されていてもよい。これにより、各部材の配置や形状を変えることなく、モータ位相が遅角となる構成を簡便に実現できる。
【0019】
モータにおける、中性位相に対して遅らせる位相角は、10°〜20°であってもよい。より好ましくは、モータにおける、中性位相に対して遅らせる位相角は、12°〜18°であってもよい。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回転がロックしたモータに通電した状態で発生する異音を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0024】
(第1の実施の形態)
[メカユニット]
図1(a)は、本発明を適用することのできる停止機構付メカユニットのウォーム減速機部分を断面で示す全体図、
図1(b)は、停止機構部を拡大して示す断面図である。
図1(a)に示すウォーム減速機部分100において、モータ12は、減速機部104に取り付けられている。モータ12のモータシャフト106の先端部は、減速機部104の軸受108で軸止されている。ウォーム110は、モータシャフト106に固定される。ウォーム110にはウォームホイール112が噛み合わされて、モータ12から出力された駆動トルクは、モータシャフト106からウォーム110に伝達され、減速機部104においてウォーム110からウォームホイール112に駆動トルクが伝わり、出力軸114から外部にトルクが取り出される構成となっている。
【0025】
ブラシモータを有するウォーム減速機部分とともに用いられる停止機構115は、出力軸114に固定されて出力軸114とともに回転するロック用ギヤ116と、ロック用ギヤ116の歯車に噛み合う歯車を有して、回転軸118を中心として揺動する係合部120と、係合部120の揺動を規制して所定位置で停止させるストッパ122とから構成されている。そして、ブラシモータは、例えば自動車ドアロックのようなモータ機能を達成した後、電源がオフされる前に、機械的なストッパ122により停止する。すなわち、モータが機械的なストッパ122により停止(モータロック)した後、わずかの時間後に、電源がオフされるように、モータ電源オン期間は設定されている。
【0026】
あるいは、ブラシモータは、例えば、車両用灯具でハイビーム用配光パターンを形成する際のシェードの移動のように、モータ機能を達成した後、機械的なストッパにより停止した状態でモータへの通電が継続するものもある。すなわち、モータが機械的なストッパにより停止(モータロック)した後も、モータの電源がオンの状態を維持するようなメカユニットもある。
【0027】
なお、図示の停止機構は、モータ回転を減速機部を介してロックさせるものとして例示したが、モータ回転を所定位置でロックする構成であれば、いかなる停止機構も採用しうるものであって、減速機部は必ずしも必要ではない。
【0028】
[モータの異音発生メカニズム]
例えば自動車用ドアロック開閉装置、電動ミラー格納装置など、自動車用電装機器に広く使われている小型モータの中には、所定時間のみ電源がオンされて駆動されるモータがある。このような小型モータは、例えば自動車ドアロックのようなモータ機能を達成した後、電源がオフされる前に、機械的なストッパにより停止する。通常、種々の条件の中でも確実にモータ機能を達成できるように、モータが機械的なストッパにより停止(モータロック)した後、わずかの時間後に電源がオフされるように、モータ電源オン期間は設定されている。言い換えると、小型モータがストッパにより停止後、依然として電源が供給される期間がある。そして、このモータ停止後の電源供給により、モータが振動して異音(高周波ノイズ)が発生することが分かった。発生した異音は、モータ電源がオフとなるまで継続する。
【0029】
このような異音発生のメカニズムを、以下に説明する。
図2(a)〜
図2(d)は、モータの各回転角度位置での動作を説明するための模式図である。
図2(a)に示すモータ30は、3個の回転子巻線32a,32b,32cのそれぞれの両端が、対応する隣接した整流子片34a,34b,34c間に接続されることを示している。一対のブラシ36は、180°間隔の対向配置で、整流子片に接触している。ただし、このブラシ36は摩耗していると仮定している。
図2(a)に示す位置から矢印方向に進み、
図2(b)に示す位置で、モータの回転軸と連結している部材がストッパに当たり、モータ30がロックしたとする。この状態では、依然として電源はオンになっている。次に、
図2(c)に示すように、樹脂製ギヤ等を含む停止機構が有する弾性に基づく反力でモータはわずかに逆転する。
図2(c)の状態は、
図2(a)の状態と同じであり、
図2(d)に示すように再びトルクが上がって回転する。そして、
図2(b)と同じく、ストッパに当たりモータは再びロックする。この状態は、
図2(b)に示した状態である。そして、前述の動作を繰り返す。
【0030】
このように、電源オンの間、モータは
図2(b)、
図2(c)、
図2(d)の状態を繰り返し、磁力は変化し、モータは振動して異音を発生することになる。つまり、モータがロックして、反力で逆転するとトルクが上昇し、再度ロックするまで回転する、といった上記状態を繰り返すことになる。すなわち、モータロック時のモータ回転角度位置が、高トルク位置であると、モータはその角度位置でそのまま停止するので異音は発生しないが、モータロック時のモータ回転角度位置が低トルク位置であると反力で逆転し、モータ回転角度位置が高トルク位置に達すると再度回転する。この際、上述の理由により異音が発生する。また、整流の切替えで発生する火花によって電気ノイズが生じることもあり、ラジオノイズとして車両の乗員に認知されてしまう場合もある。
【0031】
図3(a)、
図3(b)、
図4(a)及び
図4(b)は、モータの角度位置の変化によるトルク上昇について説明するための模式図である。
図3(a)に示すように、3個の整流子片34a,34b,34cが互いの間にスリット38を設けて配置されている。今、
図3(a)に示すように、一対のブラシ36a,36bはそれぞれ、異なる整流子片34a,34bの上に位置している。一対のブラシ36a,36bの間には、直列接続された2つの巻線32a,32bと、別の1つの巻線32cが並列接続されることになる。
図3(b)は、この状態を示す等価回路図であり、各巻線抵抗をRとすると、2つのブラシ間の合成抵抗は、2/3Rとなる。
【0032】
次に、モータが
図4(a)に示す状態まで回転したとする。このとき、対向配置されている一方のブラシ36aが、2つの整流子片34a,34cの間のスリット38の上に位置しているとする。このとき、ブラシ36aが摩耗していると、1つの巻線32bは、このブラシ36aによって短絡されているので、一対のブラシ36a,36bの間には、2つの巻線が並列接続された状態にある。
図4(b)は、この状態を示す等価回路図である。各巻線抵抗をRとすると、2つのブラシ間の合成抵抗は、1/2Rとなる。このように、
図4(a)に示すモータの角度位置の方が、
図3(a)に示すモータの角度位置よりも、2つのブラシ間の合成抵抗は小さく、逆に、流れる電流、すなわちトルクは大きい。
【0033】
モータがストッパでロックした時、一方のブラシが2つの整流子片の間のスリットの上に位置していると、大きなトルクが発生して逆転は起こり難いのに対して、モータがストッパでロックした後の反力で逆転した時、一方のブラシが2つの整流子片の間のスリットの上に位置していると、大きなトルクで、再び回転を始めることになる。反力で逆転した時のブラシ位置が、整流子片の間のスリットの上になければ、トルクは上がらず異音は発生しない。しかし、モータがストッパでロックした時、あるいは反力で逆転した時のブラシ位置は、確率的なものであり、ロックした時に整流子間のスリットの上に位置させ、あるいは逆転時に整流子片間のスリットの上を避けるようにモータ回転を制御することは事実上困難である。
【0034】
そこで、このような知見に基づいて、本実施の形態に係る停止機構付メカユニットに適したモータを考案した。
【0035】
図5は、モータ12の概略構成を示す部分断面図である。以下の説明において、2極(一対)の固定子磁極(マグネット40)及び3極の回転子磁極42を有するモータを例に挙げるが、本発明は、4極(二対)の固定子磁極及び6極の回転子磁極を有するモータに対しても適用することができる。この場合、例示した角度を、1/2倍することにより、4極の固定子磁極及び6極の回転子磁極を有するモータにも当てはまる。言い換えると、以下に例示する角度は、固定子磁極対数当たりの角度を示している。金属材料により有底中空筒状に形成されたケース44の内周面には、偶数極(例えば2極)の対構成のマグネット40が取り付けられている。このケース44の開口部は、絶縁材料で成形された(合成樹脂製)エンドベル(ケース蓋)46が嵌着されており、これによってケース44の内部が封止される。エンドベル46の中央部には、モータシャフト48を回転可能に支持する軸受50が収容されている。
【0036】
モータシャフト48の他端は、有底中空筒状のケース44の底部中央に設けられた軸受52によって支持されている。このモータシャフト48には、積層コア上に巻線を巻回することにより構成される回転子磁極42と、整流子54とが固定されており、モータシャフト48、回転子磁極42及び整流子54により有ブラシモータの回転子を構成している。そして、この整流子54に接触する一対のカーボンブラシ56のそれぞれは、エンドベル46に固定されているブラシ装置に取り付けられている。
【0037】
図6(a)は、有ブラシモータのエンドベルの一例を内部側から見た図、
図6(b)は、一方のブラシ及びブラシアームを取り出して示した図である。図示のエンドベルが嵌着されるケースの内周面に取り付けられる2極のマグネットは、
図6(a)の水平方向に配置されている。図示したように、ブラシ装置は、整流子(不図示)に摺動接触する一対のカーボンブラシ56と、これをそれぞれ圧入保持する一対のブラシアーム(支持手段)58と、このブラシアーム58とかしめ等により結合された一対のブラシベース60と、このブラシベースと接続(あるいは一体形成)されている一対のリセプタクル端子62とから構成される。ただし、図示の例においては、一方のリセプタクル端子62とカーボンブラシ56との間に直列に、PTC(正特性サーミスタ)64のような過電流を検出して焼損を防止する素子が接続されるものとして例示している。
【0038】
カーボンブラシ56は、適度なブラシ圧を得るためにバネ性を有するブラシアーム58に取り付けて、回転子の整流子54に摺動するように構成されている。このような構成のブラシ装置は、合成樹脂製のエンドベル46において、それと一体に形成された柱状部により限定される凹所内に圧入保持される。このブラシ装置への電源供給は、一対の外部端子を、外部端子挿入口66を介してエンドベルの外部より挿入して、一対のリセプタクル端子62のそれぞれに電気的に接触させることにより行われる。
【0039】
図示のカーボンブラシ56は、
図6(b)中に矢印で示すように、ブラシが摺接する整流子の径方向Xとそれと直角の接線方向Yの2方向に移動可能に取り付けられている。これを可能にするために、ブラシアーム58は、その根本側に曲げ加工部(湾曲部68)を有している。すなわち、ブラシアーム58は、ブラシベース先端部70との固定(例えば、カシメ固定)側において、上記径方向Xと同一方向に略平行にして取り付け、その方向に所定距離だけ伸ばした後(
図6(b)中に延長部72として図示)、その固定部とは離れた位置で曲げ加工により形成した湾曲部68において、カーボンブラシ56方向に略直角に折り曲げられる。
【0040】
図5、
図6に示すように、本実施の形態に係るモータ12は、カーボンブラシ56を備えたモータの一方の回転を機械的に停止させる停止機構115(
図1参照)とともに用いられる。モータ12は、筒状のハウジングであるケース44と、ケース44の内面に沿って設けられ、一対以上の磁極を有する固定子としてのマグネット40と、ケース44の軸線に沿って設けられ、回転軸となるモータシャフト48と、モータシャフト48に固定され、マグネット40に対向配置された回転子磁極42と、モータシャフト48に固定されて、回転子磁極42ともに回転する整流子54と、整流子54の外周面を摺動するように設けられている一対のカーボンブラシ56と、を備える。
【0041】
そして、モータ12は、一方の回転の際にはモータ位相が遅角となるように構成されている。
【0042】
図7は、第1の実施の形態に係るモータにおける整流子の配置を説明するための模式図である。なお、
図7では、モータ位相の設定に関係のあるマグネット40、回転子磁極42、整流子54及びブラシアーム58について、その相対位置が分かるように他の部材を適宜省略して図示してある。
【0043】
図7に示すように、整流子54は、3つのスリット54aが等間隔に形成されている。そして、回転する回転子磁極42とともに移動するスリット54aがカーボンブラシ56を通過すると、電流の向きが切り替わる。本実施の形態に係るモータ12では、整流子54と回転子磁極42との相対位置がモータ位相における中性となる固定位置に対して、遅角側となるようにシャフトに固定されている。
【0044】
具体的には、回転子磁極42の磁極42aの中心線L1と、スリット54aと回転軸中心Cとを結ぶ直線L2とのなす角(位相角)が遅角αとなるように整流子54が固定されている。つまり、本実施の形態に係る整流子54は、回転子磁極42に対するスリット54aの位置が中性位置よりも遅角側にずれた状態でモータシャフト48に固定されている。なお、中心線L1に対して、回転子磁極42の回転方向Rの上流側にスリット54aがずれている場合にモータ位相は遅角となる。このように、整流子54の回転子磁極42に対する固定位置を少しずらすだけで、モータ位相が遅角となる構成を簡便に実現できる。
【0045】
図8は、モータの整流位相が遅角の場合のトルクリップルを模式的に示した図である。横軸は、時間(角度)を示し、縦軸は発生トルクを示している。モータの整流位相が遅角の場合、
図8に示すように、整流の切替えのタイミングに近付くにつれて、モータのトルクは大きく低下し、整流の切替えの直後にトルクが急激に増大する傾向がある。
【0046】
図2を参照して前述したように、確率的に決まることであるが、モータがストッパでロックした後の反力で逆転した時、摩耗したブラシの一方が2つの整流子片の間のスリットの上に位置していると、トルクの大きさによっては、再び回転を始めることになる。しかし、このような場合であっても、モータの整流位相を上述のように設定することにより、発生トルクの上昇を抑えることができる。
【0047】
周知のように、モータ巻線には、一定値の電源電圧と、逆起電力との差電圧が印加される。ブラシが第1の整流子片に接触し始めるとき、逆起電力が低いために、実質的に大きな電圧がモータ巻線に印加される。しかし、モータ巻線はインダクタンスを有しているために、電流は、所定の時定数で立ち上がることになる。立ち上がった後の電流は、逆起電力が大きくなるにつれて低下する。トルクもまた電流に比例して低下することになる。そして、ブラシ接触線が、整流子片間のスリットに到達すると、第1の整流子片を介しての電流はオフとなり、次の第2の整流子片に対して接触をし始め、また、同様な経過をたどる。
【0048】
しかしながら、
図8に示すように、整流位相が遅角のモータがストッパでロックされた際の反力で逆転し、回転位置が戻された時、トルク上昇は生じるが、その上昇幅は小さく、発生トルクの大きさ自体も小さい。このように、遅角で整流作用が行われているモータの場合には、モータがストッパでロックした後の反力で逆転した時、一方のブラシが2つの整流子片の間のスリットの上に位置しているような状況であっても、発生トルクは小さく、それゆえに、再び回転を始めることにはならない。
【0049】
そこで、本実施の形態に係るモータ12の使用方法は、カーボンブラシ56を備えたモータ12の回転を機械的に停止させる停止機構115とともに用いるモータの使用方法である。この方法は、モータ12を駆動し、モータ12の回転によって係合部120を初期位置(第1の位置)から停止位置(第2の位置)へ移動させ、移動する係合部120を、モータ12に通電されている状態で停止機構115によって機械的に停止位置で停止させ、停止位置で係合部120が固定されることで所定の機能を実現する、ウォーム減速機部分100に使用する。
【0050】
前述のように、モータがストッパでロックした後の反力で逆転した時の発生トルクの上昇は、位相角に関係があることが分かる。そこで、モータ12は、係合部120を停止位置へ向けて移動させて固定する場合にはモータ位相が遅角となるように、ウォーム減速機部分100にて使用される。
【0051】
これにより、係合部120を停止機構115によって機械的に停止位置で停止させた場合に、整流が切り替わる回転位置近傍でモータ12がロックしたときは、その際の反力でモータが逆転しても、モータ位相が進角となるモータと比べて、発生するトルクの大きさが小さい。そのため、再度モータが回転する可能性が小さく、モータのロックと再回転とが繰り返されることにより発生するモータの振動(異音)を抑制することができる。また、カーボンブラシ56を有するモータ12を使用した場合であっても、前述のモータの使用方法により、整流子54によって電流の流れが切り替わる際に発生する火花が減少し、電気ノイズの発生が抑制される。
【0052】
なお、本実施の形態に係るモータ減速機部分100は、停止機構115によって回転が停止しているモータ12への通電が解除されると、係合部120を停止位置から初期位置へ移動させる復帰手段を備えている。復帰手段は、例えば、ばね等の弾性手段(機械的な手段)が好適である。
【0053】
つまり、初期位置にある係合部120は、モータ12に通電されると回転軸118を中心に回転し、ストッパ122に当接することで回転が停止する。そして、モータ12への通電が継続されている間は、係合部120は停止位置に留まる。その後、モータ12への通電が解除されると、係合部120は復帰手段により初期位置に戻される。このような復帰手段により、モータ12に通電されていない場合には、簡易な構成で係合部120を停止位置から初期位置に確実に復帰させることができる。
【0054】
図9は、位相角度と異音発生時間の関係を示すグラフである。試験は、各サンプル5個ずつ(遅角12°ではサンプル60個)のモータ(4.9mNm負荷時:電流0.6A:回転数10600r/min定格)について行い、グラフに示している。本試験は、1サイクルを、0.2秒正転−2.3秒オフ−0.2秒逆転−2.3秒オフとして、2分中における異音発生時間(ミリ秒:ms)を測定した。試験条件(耐久試験の条件)は、端子間電圧13.5V(DC CONSTANT)、負荷4.9mNm、試験環境:常温常湿(およそ25°60%RH)である。
【0055】
上述したように、異音発生は、確率的なものであり、グラフに示すようにバラツキはあるが、測定個数全590個のうち、位相角度が−12°(遅角)〜8°(進角)のモータでは問題となるレベルの異音の発生は無かった。特に位相が遅角12°に設定されているモータは60個測定を行い、異音の発生はほとんどないレベル(OKレベル)であることが確認された。また、モータ位相が遅角から中性、進角になるにつれ、OKレベルを超えるものが急激に増加している。
【0056】
そこで、ブラシの摩耗を考慮し、初期段階を遅角にすることで、摩耗してもNGレベル(異音の発生が看過できないレベル)に達することのないように初期のモータ位相を設定する。具体的には、モータにおける、中性位相に対して遅らせる位相角は、10°〜20°が好ましい。より好ましくは、モータにおける、中性位相に対して遅らせる位相角は、12°〜18°であってもよい。モータの位相角度を遅角側に設定することは、効率や寿命等を悪化させる可能性があるためにモータにとって好ましくない状態であるとして、通常は行われない。しかしながら、モータ位相を遅角に設定することでモータの異音の発生を十分抑制できるため、効率や寿命を満たせるような用途にこのようなモータを使用するのであれば、十分有用である。
【0057】
(第2の実施の形態)
図10は、第2の実施の形態に係るモータにおける整流子の配置を説明するための模式図である。なお、
図10では、モータ位相の設定に関係のあるマグネット40、回転子磁極42、整流子54及びブラシアーム58について、その相対位置が分かるように他の部材を適宜省略して図示してある。
【0058】
図10に示すように、第2の実施の形態に係るモータ80においては、一対のカーボンブラシ56は、固定子であるマグネット40(40a,40b)が有する一対の磁極(N,S)の中心を結んだ線L3に対して、整流子54と接触する位置が所定の回転方向Rにおいて遅角側(回転方向Rの下流側)となるように配置されている。これにより、モータ位相が遅角となる構成を簡便に実現できる。
【0059】
具体的には、マグネット片40a,40bの一対の磁極(N,S)の中心を結んだ線L3と、カーボンブラシ56が整流子54に接触する位置と回転軸中心Cとを結ぶ直線L4とのなす角(位相角)が遅角αとなるようにカーボンブラシ56が配置されている。つまり、本実施の形態に係るカーボンブラシ56は、中性位置よりも遅角側にずれた状態で整流子54に接触している。なお、遅角αの好ましい範囲は、第1の実施の形態と同様である。
【0060】
また、ブラシアーム58は、カーボンブラシ56を支持し、カーボンブラシ56を整流子54に押圧するようにバネ性を有するような形状である。ブラシアーム58は、カーボンブラシ56を支持している支持部58aと、支持部58aから、固定子を構成するマグネット40(40a,40b)の一対の磁極(N,S)の中心を結んだ線L3を挟んで反対側の領域に向かうように設けられているアーム部58bと、アーム部58bの支持部58aとは反対側の端部であって、ケース44又はケース44と連結されている他の部材に固定される固定部58cと、を有している。
【0061】
これにより、アーム部58bは、カーボンブラシ56と整流子54とが接触する位置から回転方向Rの上流側に位置することになり、カーボンブラシ56が整流子54との摩擦力により回転方向に引き摺られる力によって引っ張られることになる。そのため、ブラシアーム58のびびりの発生を抑えられる。
【0062】
(第3の実施の形態)
図11は、第3の実施の形態に係るモータにおける整流子の配置を説明するための模式図である。なお、
図11では、モータ位相の設定に関係のあるマグネット40、回転子磁極42、整流子54及びブラシアーム58について、その相対位置が分かるように他の部材を適宜省略して図示してある。
【0063】
図11に示すように、第3の実施の形態に係るモータ90において、固定子であるマグネット140は、回転子磁極42と対向する面に着磁中心を有する一対のマグネット片140a,140bを備えている。マグネット片140a,140bは、互いに異なる極の着磁中心が対向するように配置され、一対のマグネット片140a,140bの中心同士を結んだ線L5に対して、異なる極の着磁中心同士を結んだ線L6が遅角側となるように、着磁中心142a,142bが形成されている。これにより、各部材の配置や形状を変えることなく、モータ位相が遅角となる構成を簡便に実現できる。
【0064】
具体的には、一対のマグネット片140a,140bの中心同士を結んだ線L5と、マグネット片140a,140bの一対の磁極(N,S)の中心を結んだ線L6とのなす角(位相角)が遅角αとなるように、各マグネット片の磁極中心を形成する。なお、遅角αの好ましい範囲は、第1の形態と同様である。
【0065】
以上、本発明を各実施の形態をもとに説明した。これら各実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。