(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンにより走行可能で、前記エンジンを自動的に始動及び停止することができるエンジン自動始動停止機能を有するエンジン自動始動停止機能部を備えた車両に搭載されるものであって、
前記エンジンを動力源として駆動されると共に冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮した冷媒を減圧膨張する減圧膨張装置、及び、減圧膨張した冷媒を蒸発する蒸発器を適宜配管接合して構成される冷凍サイクルと、
前記蒸発器の温度を検出する蒸発器温度検出手段と、
前記圧縮機の運転状態を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記蒸発器温度検出手段で検出する蒸発器の温度に基づき前記圧縮機の駆動の要否を判定し、
前記エンジンが前記エンジン自動始動停止機能によって停止されている場合は、
前記蒸発器温度検出手段で検出した蒸発器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度よりも低いと前記エンジン自動始動停止機能部へエンジンの始動要求信号を発信せず、前記検出した蒸発器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度と同じか当該第1の圧縮機駆動判定温度よりも高いと前記エンジン自動始動停止機能部へ前記エンジンの始動要求信号を発信し、且つ、前記圧縮機の駆動をONし、
前記エンジンが前記エンジン始動要求信号の発信によらず前記エンジン自動始動停止機能によって始動された場合は、
前記蒸発器温度検出手段で検出した蒸発器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度よりも低いと前記圧縮機の駆動をOFFし、前記検出した蒸発器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度と同じか当該第1の圧縮機駆動判定温度よりも高いと前記圧縮機の駆動をONすること
を特徴とする車両用空調装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧縮機の駆動のONを車両のエンジンの始動と常に連動させると、本願の
図5で示されるように、信号機の信号が青に移行することに伴って停止していたエンジンを始動させ、車両が走行を開始するにあたり車両を加速していく加速時に、圧縮機の駆動をエンジンの始動に連動してONすると車両の加速性が悪化し、車両の燃費も悪くなるという不都合が生ずる。
【0005】
そこで、本発明は、エンジンの自動的な始動と圧縮機の駆動のONとを必ずしも連動させないことで、車両の加速性の悪化を防止できる車両用空調装置及びかかる車両用空調装置を搭載した車両を提供することを第1の目的とする。
【0006】
ところで、信号機の信号が青に移行することに伴って停止していたエンジンを始動させた後、蒸発器の温度が通常の断続運転での圧縮機ON設定温度よりも高い所定温度に達したときに圧縮機の駆動をONするよう構成すると、エンジンの始動に連動して圧縮機の駆動をONする場合よりも冷凍サイクルの運転の開始が相対的に遅くなるので、蒸発器の温度の低下の開始も相対的に遅くなる。
【0007】
従って、停車前の車両の走行時間が短いと、車両の停止時における蒸発器の温度が十分に下がりきらず、車両の停止している間に蒸発器の温度が早期に所定温度に到達しやすくなるので、エンジンのアイドル停止時間が相対的に短くなるという課題が発生するおそれがあり、適切に解決しておく必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、停車前の走行時間が短くてもエンジンのアイドル停止時間を相対的に延ばすことが可能な車両用空調装置及びかかる車両用空調装置を搭載した車両を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る車両用空調装置は、エンジンにより走行可能で、前記エンジンを自動的に始動及び停止することができるエンジン自動始動停止機能を有するエンジン自動始動停止機能部を備えた車両に搭載されるものであって、前記エンジンを動力源として駆動されると共に冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮した冷媒を減圧膨張する減圧膨張装置、及び、減圧膨張した冷媒を蒸発する蒸発器を適宜配管接合して構成される冷凍サイクルと、前記蒸発器の温度を検出する蒸発器温度検出手段と、前記圧縮機の運転状態を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記蒸発器温度検出手段で検出する蒸発器の温度に基づき前記圧縮機の駆動の要否を判定し、前記エンジンが前記エンジン自動始動停止機能によって停止されている場合は、
前記蒸発器温度検出手段で検出した蒸発器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度よりも低いと前記エンジン自動始動停止機能部へエンジンの始動要求信号を発信せず、前記検出した蒸発器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度と同じか当該第1の圧縮機駆動判定温度よりも高いと前記エンジン自動始動停止機能部へ前記エンジンの始動要求信号を発信し、且つ、前記圧縮機の駆動をONし、前記エンジンが前記エンジン始動要求信号の発信によらず前記エンジン自動始動停止機能によって始動された場合は、
前記蒸発器温度検出手段で検出した蒸発器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度よりも低いと前記圧縮機の駆動をOFFし、前記検出した蒸発器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度と同じか当該第1の圧縮機駆動判定温度よりも高いと前記圧縮機の駆動をONすることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
ここで、圧縮機には、固定容量型の圧縮機と可変容量型の圧縮機との双方が含まれる。また、蒸発器温度検出手段とは、例えば蒸発器温度センサである。更に、制御手段は、例えば車両側コントロールユニットと空調側コントロールユニットとの双方を含む上位概念としてのコントロールユニットである。また、圧縮機が固定容量型の場合には、圧縮機の駆動がONになっていても蒸発器の凍結防止のための通常の断続運転としての圧縮機の駆動のON/OFFは行われる。
【0011】
これにより、エンジン始動要求信号によらないエンジンの自動的な始動と圧縮機の駆動のONとを必ずしも連動させないことが可能であるので、エンジン自動始動直後の車両加速時における圧縮機の駆動率を下げて、車両の加速性の悪化を防止しやすくできると共に、車両の燃費の低減を図ることができる。
【0012】
前記制御手段は、車走行状態を検出する車両走行状態検出手段からの出力信号に基づき前記車両が停止中か走行中かを判定し、前記車両が走行中と判定したときは、前記蒸発器温度検出手段で検出した蒸発器の温度が第2の圧縮機駆動判定温度よりも低いと前記圧縮機の駆動をOFFし、前記検出した蒸発器の温度が前記第2の圧縮機駆動判定温度と同じか当該第2の圧縮機駆動判定温度よりも高いと前記圧縮機の駆動をONすると共に、前記第2の圧縮機駆動判定温度は、前記第1の圧縮機駆動判定温度よりも低く、且つ、前記蒸発器の凍結防止のための前記圧縮機のON/OFF駆動時における前記圧縮機の駆動をONする圧縮機ON設定温度よりも高く設定されたことを特徴としている(
請求項2)。車両走行状態検出手段は、例えば車速検出手段やアクセル開閉状態検出手段である。
【0013】
これにより、車両が走行中は、第1の圧縮機駆動判定温度よりも低い第2の圧縮機駆動判定温度になったときに圧縮機の駆動をONにするので、圧縮機の駆動が停車時よりも相対的に早めに開始し、早期に蒸発器が冷却され、渋滞時のように車両が走行と停止とを頻繁に繰り返しているときも、アイドル停止時における圧縮機の停止時間を十分に確保することができる。
【0014】
また、前記制御手段は、アクセルの開閉状態を検出するアクセル開閉状態検出手段からの出力信号に基づき前記アクセルの開閉状態を判定し、前記エンジンが前記エンジン自動始動停止機能によって始動されてから所定時間が経過する間、前記アクセルが開状態にあることを判定したときは、前記蒸発器温度検出手段で検出した蒸発器の温度が前記第2の圧縮機駆動判定温度よりも低いと前記圧縮機の駆動をOFFすることを特徴としている(
請求項3)。
【0015】
これにより、アクセルの開度状態から車両が加速していることを判定し、蒸発器の温度が第2の圧縮機駆動判定温度よりも低い段階で圧縮機の駆動をONすることで車両の加速性を損ねてしまうこと、及び車両の燃費が悪化してしまうことを防止することができる。
【0016】
また、前記制御手段は、前記アクセル開閉状態検出手段からの出力信号に基づき前記アクセルの閉閉状態を判定し、前記エンジンが前記エンジン自動始動停止機能によって始動されてから前記所定時間が経過する間、前記アクセルが開状態にあることを判定しなかったときは、前記所定時間の経過後に前記圧縮機の駆動をONすることを特徴としている(
請求項4)。
【0017】
これにより、渋滞時において、車両の加速に要する時間を通じて車両が加速中かどうかを判定し、車両が加速中でないと判定したときには圧縮機の駆動をONにすることにより、エンジンの負荷が低いときに圧縮機の駆動を相対的に早めにONにするので、車両の燃費の悪化なく早期にエンジンのアイドル停止に備えることが可能となる。
【0018】
ここで、前記蒸発器は、所定の温度範囲で相変化して蓄冷又は放冷することが可能な蓄冷剤を備え、前記第1の圧縮機駆動判定温度は、前記蓄冷剤の前記所定の温度範囲よりも高くなるように設定されたことを特徴としている(
請求項5)。
【0019】
これにより、第1の圧縮機駆動判定温度は蓄冷剤が相変化する温度範囲よりも高く設定されているので、蒸発器が第1の圧縮機駆判定動温度まで温度上昇する間に蓄冷剤に蓄積された冷熱を放冷することが可能となり、エンジンの始動要求信号の発信を遅らせて、圧縮機の停止時間を十分に確保することができる。
【0020】
これに対し、前記蒸発器は、所定の温度範囲で相変化して蓄冷又は放冷することが可能な蓄冷剤を備え、前記第2の圧縮機駆動判定温度は、前記蓄冷剤の前記所定の温度範囲の上限温度よりも低くなるように設定されたものとしても良い(
請求項6)。
【0021】
これにより、第2の圧縮機駆動判定温度は蓄冷剤が相変化する温度範囲の上限温度よりも低く設定されているので、車両の走行中は、蓄冷剤に蓄積された冷熱をすべて放冷する前に蒸発器の温度の低下を開始することが可能となり、速やかに蒸発器を冷却して、エンジンのアイドル停止に備えることができる。
【0022】
更に、前記第2の圧縮機駆動判定温度は、前記蓄冷剤の前記所定の温度範囲の下限温度よりも低くなるように設定されたものとしても良い(
請求項7)。
【0023】
これにより、第2の圧縮機駆動判定温度は蓄冷剤が相変化する温度範囲の下限温度よりも低く設定されているので、車両の走行中は、蓄冷剤に蓄積された冷熱を放冷する前に蒸発器の温度の低下を開始することがより一層可能となり、速やかに蒸発器を冷却して、エンジンのアイドル停止に備えることができる。
【0024】
もっとも、このことは、第2の圧縮機駆動判定温度は、蓄冷剤が相変化する温度範囲の上限温度よりも低く下限温度よりも高く、すなわち蓄冷剤が相変化する温度範囲に収まるように、設定されることを妨げることを意味するものではなく、第2の圧縮機駆動判定温度について蓄冷剤が相変化する温度範囲内に設定されても、車両の走行中は、蓄冷剤に蓄積された冷熱をすべて放冷する前に蒸発器の温度の低下を開始することが可能となり、速やかに蒸発器を冷却して、エンジンのアイドル停止に備えることができる。
【0025】
また、前記制御手段は、熱負荷が大きいほど前記第1の圧縮機駆動判定温度及び/又は前記第2の圧縮機駆動判定温度を相対的に低く設定することを特徴としている(
請求項8)。
【0026】
これにより、熱負荷が大きいほど第1の圧縮機駆動判定温度及び/又は第2の圧縮機駆動判定温度を相対的に低く設定したので、熱負荷の大きいときに圧縮機の駆動率を上げて乗員の快適性の維持を優先し、熱負荷の大きくないときに圧縮機の駆動率を下げて車両の燃費の低減を優先することが可能となり、熱負荷に応じたきめ細かな制御ができる。
【0027】
前記熱負荷は、前記車両の外気と、前記車両の室内空気温度と、前記車両の乗員により設定される空調設定温度と、日射量と、から少なくとも演算される空調総合信号であることを特徴としている(
請求項9)。
【0028】
このように、熱負荷を空調総合信号としたので、冷凍サイクルに要求される作動要求能力に対応した圧縮機の駆動制御を行うことが可能となり、乗員からの要請を加味したきめ細かな空調制御ができる。
【0029】
これに対し、前記熱負荷は、前記車両の外気温度であることとしても良い(
請求項10)。このように、熱負荷を車両の外気温度としたので、複雑な制御を用いずに、きめ細かな空調制御ができる。
【0030】
また、この発明に係る車両用空調装置は、前記蒸発器よりも空気流の下流側に備えられると共に前記蒸発器によって冷却された空気により冷却可能な蓄冷熱交換器と、前記蓄冷熱交換器の温度を検出する蓄冷熱交換器温度検出手段とを備え、前記制御手段は、前記蒸発器温度検出手段で検出する蒸発器の温度に代えて前記蓄冷熱交換器温度検出手段で検出する蓄冷熱交換器の温度に基づき前記圧縮機の駆動の要否を判定し、前記エンジンが前記エンジン自動始動停止機能によって停止されている場合は、前記蓄冷熱交換器温度検出手段で検出する蓄冷熱交換器の温度が第1の圧縮機駆動判定温度に達すると、前記エンジン自動始動停止機能部へ前記エンジンの始動要求信号を発信し、前記エンジンが前記エンジン自動始動停止機能によって始動された場合は、前記蓄冷熱交換器温度検出手段で検出する蓄冷熱交換器温の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度に達するまで、前記圧縮機の駆動のONを保留することが可能なことを特徴としている(
請求項11)。
【0031】
そして、前記制御手段は、前記エンジンが前記エンジン自動始動停止機能によって停止されている間は、前記蓄冷熱交換器温度検出手段で検出した蓄冷熱交換器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度よりも低いと前記エンジンの始動要求信号を発信せず、前記検出した蓄冷熱交換器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度と同じか当該第1の圧縮機駆動判定温度よりも高いと前記エンジン自動始動停止機能部へ前記エンジンの始動要求信号を発信し、且つ、前記圧縮機の駆動をONし、前記エンジンが前記エンジン始動要求信号の発信によらず前記エンジン自動始動停止機能によって始動されたときは、前記蓄冷熱交換器温度検出手段で検出した蓄冷熱交換器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度よりも低いと前記圧縮機の駆動をOFFし、前記検出した蓄冷熱交換器の温度が前記第1の圧縮機駆動判定温度と同じか当該第1の圧縮機駆動判定温度よりも高いと前記圧縮機の駆動をONすることを特徴としている(
請求項12)。
【0032】
これにより、蒸発器の温度に代えて、蒸発器の下流側に備えられた蓄冷熱交換器の温度を用いて圧縮機の駆動のON/OFFを判定することもでき、これにより車両用空調装置の設計自由度を高めることができる。
【0033】
最後に、この発明に係る車両は、請求項1から請求項13のいずれかに記載の車両用空調装置が搭載されたことを特徴としている(
請求項13)。
【0034】
これにより、
請求項1から請求項12のいずれかの車両用空調装置を備えた車両としたので、エンジンの自動的な始動と圧縮機の駆動のONとが必ずしも連動しておらず、エンジンの自動始動直後の車両加速時における圧縮機の駆動率が低くなっており、車両の加速性の悪化の防止が図られると共に、燃費の低減が図られた車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、この発明によれば、制御手段について、エンジン始動要求信号によらないエンジンの自動的な始動と圧縮機の駆動のONとを必ずしも連動しないようにすることが可能であるので、エンジン自動始動直後の車両加速時における圧縮機の駆動率が下がり、車両の加速性の悪化を防止しやすくなると共に、車両の燃費の低減を図ることができる。
【0036】
特に
請求項2に記載の発明によれば、車両が走行中は、第1の圧縮機駆動判定温度よりも低い第2の圧縮機駆動判定温度になったときに圧縮機の駆動をONするので、圧縮機の駆動を停車時よりも相対的に早めに開始し、早期に蒸発器を冷却することができることから、渋滞時のように車両が走行/停止を頻繁に繰り返しているときも、エンジンのアイドル停止時における圧縮機の停止時間を相対的に長くすることが可能となる。
【0037】
特に
請求項3に記載の発明によれば、アクセルの開度状態から車両が加速していることを判定し、蒸発器の温度が第2の圧縮機駆動判定温度よりも低い段階で圧縮機の駆動をONすることで車両の加速性を損ねてしまうこと、及び車両の燃費が悪化してしまうことを防止することができる。
【0038】
特に
請求項4に記載の発明によれば、渋滞時において、車両の加速に要する時間を通じて車両が加速中かどうかを判定し、車両が加速中でないと判定したときには圧縮機の駆動をONすることにより、エンジンの負荷が低いときに圧縮機の駆動を相対的に早めにONするので、車両の燃費の悪化なく早期にエンジンのアイドル停止に備えることが可能となる。
【0039】
特に
請求項5に記載の発明によれば、第1の圧縮機駆動判定温度は蓄冷剤が相変化する温度範囲よりも高く設定されているので、蒸発器が第1の圧縮機駆判定動温度まで温度上昇する間に蓄冷剤に蓄積された冷熱を放冷することが可能となり、エンジンの始動要求信号の発信を遅らせて、圧縮機の停止時間を十分に確保することができる。
【0040】
特に
請求項6に記載の発明によれば、第2の圧縮機駆動判定温度は蓄冷剤が相変化する温度範囲の上限温度よりも低く設定されているので、車両の走行中は、蓄冷剤に蓄積された冷熱をすべて放冷する前に蒸発器の温度の低下を開始することが可能となり、速やかに蒸発器を冷却して、エンジンのアイドル停止に備えることができる。
【0041】
特に
請求項7に記載の発明によれば、第2の圧縮機駆動判定温度は蓄冷剤が相変化する温度範囲よりも低く設定されているので、車両の走行中は、蓄冷剤に蓄積された冷熱を放冷する前に蒸発器の温度の低下を開始することがより一層可能となり、速やかに蒸発器を冷却して、エンジンのアイドル停止に備えることができる。
【0042】
特に
請求項8に記載の発明によれば、熱負荷が大きいほど第1の圧縮機駆動判定温度及び/又は第2の圧縮機駆動判定温度を相対的に低く設定したので、熱負荷の大きいときに圧縮機の駆動率を上げて乗員の快適性の維持を優先し、熱負荷の大きくないときに圧縮機の稼働率を下げて車両の燃費の低減を優先することが可能となり、熱負荷に応じたきめ細かな制御ができる。
【0043】
特に
請求項9に記載の発明によれば、熱負荷を空調総合信号としたので、冷凍サイクルに要求される作動要求能力に対応した圧縮機の駆動制御を行うことが可能となり、乗員からの要請を加味したきめ細かな空調制御ができる。
【0044】
特に
請求項9に記載の発明によれば、熱負荷を車両の外気温度としたので、複雑な制御を用いずに、きめ細かな空調制御ができる。
【0045】
特に
請求項10又は請求項11に記載の発明によれば、蒸発器の温度に代えて、蒸発器の下流側に備えられた蓄冷熱交換器の温度を用いて圧縮機の駆動のON/OFFを判定することもでき、これにより車両用空調装置の設計自由度を高めることができる。
【0046】
特に
請求項12に記載の発明によれば、エンジンの自動的な始動と圧縮機の駆動のONとが必ずしも連動しておらず、エンジンの自動始動直後の車両加速時における圧縮機の駆動率が低くなっており、車両の加速性の悪化の防止が図られると共に、燃費の低減が図られた車両を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、この発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0049】
図1では、この発明に係る車両用空調装置1の一例が示されており、この
図1に示される車両用空調装置1は、HVACユニット2と、冷凍サイクル22と、エアコンを制御するエアコン側コントロールユニット29とを有して構成され、エアコン側コントロールユニット29は車両側コントロールユニット30と共に制御手段35を成している。
【0050】
HVACユニット2は、車両のエンジンルームとキャビンルームとを仕切るファイヤーボード(図示せず。)よりも、キャビンルーム側に配置されているもので、
図1に示されるように、内部に空気流路3が形成されたケース4に、後述する冷凍サイクル22の一部を構成する冷却用熱交換器たる蒸発器5、例えば後述するエンジン31の冷却水を熱源とする加熱用熱交換器たる加熱器6が収納されると共に、蒸発器5に対して空気流路3の上流側に送風機7が配置されている。
【0051】
そして、送風機7より更に上流側、すなわち空気流路3の最上流側には、
図1に示されるように、インテーク装置8が配置されている。このインテーク装置8は、送風機7の回転により内気又は外気がインテークドア9の位置(開度)に応じて内気導入口10及び/又は外気導入口11から導入されるようになっている。インテークドア9は図示されないアクチュエータにより駆動され、送風機7はモータにより駆動される。
【0052】
ケース4内には、
図1に示されるように、蒸発器5を通過して冷却された空気について加熱器6をバイパスして空気流路3の下流側に導く冷風流路12と、加熱器6を通過した空気を空気流路3の下流側に導く温風流路13とが当該空気流路3の一部として構成されている。そして、これらの冷風流路12を通過する空気と温風流路13を通過する空気の割合は、
図1に示されるエアミックスドア14の開度により調節され、冷風流路12から流れてきた空気と温風流路13から流れてきた空気とは、空気流路3のエアミックスドア14及び加熱器6よりも下流側の部位で適宜混合されて、デフ空気吹出口15、ベント吹出口16、フット吹出口17から車室内空間に適宜吹き出される。これらの吹出口15、16、17は、この実施例1では、これらの吹出口の開口直近に配置された吹出モード切換ドア18、19、20の回動により適宜選択されるようになっている。各ドア14、18、19、20は、図示しないアクチュエータにより駆動される。
【0053】
そして、この実施例では、
図1に示されるように、蒸発器5の表面に当該蒸発器5の表面温度を測定することで蒸発器温度を検出する蒸発器温度検出手段21が配置されている。もっとも、この蒸発器5の表面に配置される蒸発器温度検出手段21に代えて、図示しないが、蒸発器5よりも空気の下流域となる蒸発器5の出口側において、蒸発器5の出口側の空気温度を測定することで蒸発器温度を検出する蒸発器温度検出手段21を配置するようにしても良い。尚、蒸発器温度検出手段21自体は、サーモスタッド、その他の温度センサ等の公知のものであるので、その構成の説明は省略する。このような蒸発器温度検出手段21の蒸発器5に対する配置や構成については、
図9に示される蒸発器温度検出手段21についても同様である。
【0054】
冷凍サイクル22は、
図1に示されるように、圧縮機23、凝縮器24、気液分離器25、減圧膨張装置26、及び蒸発器5を、配管27で適宜接合することにより構成されている。
【0055】
圧縮機23は、冷媒を吸引して圧縮した後に吐出するもので、当実施例においては固定容量型と呼ばれる吐出容量が一定のものが用いられており、エンジン31の動力がVベルト等の伝達装置32を介して伝達されるようになっている。但し、この圧縮機23はクラッチ型等のように、エンジン31の動力が伝達装置32を介して伝達されても圧縮作用を行わないようにすることが可能なものであり、圧縮機23による圧縮作用が可能な状態を圧縮機の駆動ON、圧縮機23による圧縮作用が不可能な状態を圧縮機の駆動OFFと称する。
【0056】
この圧縮機23から吐出された高温・高圧の冷媒は、凝縮器24に流入して、冷却ファン28により送風される外気と熱交換されて凝縮される。凝縮器24で凝縮された冷媒は、気液分離器25に流入して冷媒が気液分離され、冷凍サイクル22内の余剰冷媒が気液分離器25内に貯められると共に、この気液分離器25から減圧膨張装置26に送られた液冷媒は、当該減圧膨張装置26において減圧されて、低圧の気液二相状態となる。そして、減圧膨張装置26から送出された低圧冷媒は、蒸発器5内に流入して、空気流路3を流れる空気から吸熱して蒸発した後、圧縮機23に戻される。
【0057】
蒸発器5は、
図2及び
図3に示されるように、蓄冷機能を備えたものが用いられている。この蒸発器5は、基本的には長手方向の両側にそれぞれ一対のタンク38、38が配されたチューブ39を、コルゲートフィン40を介在させつつ積層してなる積層型熱交換器であって、チューブ39の積層方向の両側端にはサイドプレート41、42を備えたチューブ39’が配置されたものとなっている。
【0058】
チューブ39は、当該チューブ39の長手方向の一方端側のタンク38と長手方向の他方端側のタンク38とを連通する冷媒通路が内部に形成されているもので、例えば、
図3(a)に示される成形プレート39aと、
図3(b)に示される成形プレート39bと、
図3(c)に示される成形プレート39cとを組み付けて構成される。
【0059】
成形プレート39aと成形プレート39cとは、チューブ39のタンク38、38を形成するためのタンク形成用膨出部38a、38aを当該成形プレート39a、39cの長手方向の両側に一対ずつ有すると共に、チューブ39の冷媒通路を形成するための冷媒通路形成用膨出部44が波状に2つ形成されている。冷媒通路形成用膨出部44の両端はタンク形成用膨出部38aと連続している。そして、各タンク形成用膨出部38aには、隣り合う他のチューブ39のタンク38と連通するための通孔381が形成されている。
【0060】
更に、成形プレート39aと成形プレート39cとは、2つの冷媒通路形成用膨出部44、44の間及び冷媒通路形成用膨出部44と成形プレート39a、成形プレート39cの側縁との間において、蓄冷剤保持部形成用膨出部45が形成されている。この蓄冷剤保持部形成用膨出部45と冷媒通路形成用膨出部44とは仕切り壁46により明確に分かれている。また、この実施例では、2つの冷媒通路形成用膨出部44、44の間に位置する蓄冷剤保持部形成用膨出部45の長手方向の両側に蓄冷剤を供給するための供給孔451が形成されている。
【0061】
成形プレート39bは、成形プレート39aと成形プレート39cとの間に介在されるもので、タンク38、38を形成するための通孔38b、38bを当該成形プレート39bの長手方向の両側に有すると共に、成形プレート39aの蓄冷剤保持部形成用膨出部45と成形プレート39cの蓄冷剤保持部形成用膨出部45とを連通させるための連通孔47が複数形成されている。また、成形プレート39bは、成形プレート39a、39cの供給孔451に対応する位置に通孔452が形成されている。
【0062】
このような構成から、成形プレート39aと成形プレート39cとについて、成形プレート39bを介在しつつ組み付けた場合には、チューブ39は冷媒通路とは別に蓄冷剤保持部が配置された構成となる。そして、蓄冷剤保持部形成用膨出部45は、冷媒通路形成用膨出部44、44の間と、成形プレート39a、成形プレート39cの側縁との間とが、成形プレート39bの連通孔47を介して連通され、更に供給孔451とも連通された構成となる。
【0063】
サイドプレート41は、図示しない出入口パイプと接続するための出入口43、43が設けられているもので、成形プレート39bを介在しつつ、成形プレート39cと組み付けられ、またサイドプレート42は、成形プレート39bを介在しつつ、成形プレート39aと組み付けられて、タンク38’、タンク38’間を連通する冷媒通路、冷媒通路の近傍に配置された蓄冷保持部から成るチューブ39’、39’をそれぞれ形成する。また、サイドプレート41は、蓄冷剤を供給するための供給孔453が、成形プレート39a、39cに形成されている供給孔451及び成形プレート39bに形成されている通孔452と対応する位置に形成されている。
【0064】
しかるに、複数のチューブ39をコルゲートフィン40を介在しつつ適宜に積層し、積層された両側をコルゲートフィン40を介在しつつ更にチューブ39’、39’を積層し、ろう付けした後、所定の温度範囲で相変化して蓄冷又は放冷することが可能な蓄冷剤を供給孔453から蓄冷剤保持部に供給し、この供給孔453を適宜封止することで、蓄冷機能を備えた蒸発器5が構成される。尚、蓄冷剤の相変化温度域T3は、例えば5℃から6℃の範囲である。
【0065】
車両側コントロールユニット30は、エンジン31の総合的な制御を行うための制御装置であり、図示しないが、入出力装置、記憶装置、及び中央演算処理装置を有して構成され、この車両側コントロールユニット30の入力側には、車両の速度を検出する車速センサ等の車速検出手段51、アクセル開閉状態を検出するアクセル開閉状態検出手段52や、図示しない各種検出手段、更には下記のエアコン側コントロールユニット29が電気的に接続されており、前記検出手段51、52等からの検出情報やエアコン側コントロールユニット29からの要求信号等が適宜入力されるようになっている。また、車両側コントロールユニット30の出力側にはエンジン31及びエアコン側コントロールユニット29が電気的に接続されている。
【0066】
これにより、車両側コントロールユニット30は、各種検出手段からの検出情報が入力されて、かかる検出情報に基づいて車両の走行状態やエンジン31の稼動状況を演算してエアコン側コントロールユニット29に出力信号として送る。
【0067】
エアコン側コントロールユニット29は、車両用空調装置1の総合的な制御を行うための制御装置であり、車両側コントロールユニット30と同様に、入出力装置、記憶装置、及び中央演算処理装置を有して構成されている。エアコン側コントロールユニット29の入力側には、車両側コントロールユニット30、エアコンのON/OFF、内外気導入モードの切換え、吹出空気モード切換え、室内温度の目標設定等を行う各種スイッチを備えたエアコンコンソール部53、日射量を検出する日射センサ等の日射量検出手段54、外気温度を検出する外気温度センサ等の外気温度検出手段55、車両の室内温度を検出する室内温度検出手段56、蒸発器温度を検出する温度センサ等の蒸発器温度検出手段21等が電気的に接続されており、外気温度や日射量や蒸発器温度等の各種検出手段からの検出情報、エアコンコンソール部53の設定温度等の設定情報、車両やエンジン31の稼動状態等が入力される。
【0068】
そして、エアコン側コントロールユニット29の出力側は、圧縮機23や、送風機7のモータ、インテークドア9の図示しないアクチュエータ、エアミックスドア14の図示しないアクチュエータ、吹出モード切換ドア18から20の図示しないアクチュエータと電気的に接続され、また、車両側コントロールユニット30とも電気的に接続されている。
【0069】
これにより、エアコン側コントロールユニット29は、エアコンコンソール部53からの設定情報、外気温度検出手段55からの検出情報、車両の走行若しくは停車状況及びエンジン31の稼動状況に基づいて空調総合信号を演算し、この空調総合信号として得られた熱負荷を圧縮機23や送風機7のモータ等に出力して、この空調総合信号として得られた熱負荷に応じて圧縮機23の駆動をON/OFFし、或いは車両側コントロールユニット30にエンジン31の稼動要求信号を発信する。
【0070】
また、エアコン側コントロールユニット29は、圧縮機23の駆動をON/OFFするにあたって、圧縮機23の駆動を原則的にONにした状態において、蒸発器5の凍結防止のために圧縮機23を断続的にON/OFFする制御を行うものとなっている。すなわち、この蒸発器5の凍結防止のための圧縮機23のON/OFF制御は、
図5及び
図8の特性線で示されるように、蒸発器温度検出手段21で検出された蒸発器の温度が圧縮機停止温度Teoff以下となった場合に圧縮機23の駆動をOFFし、その結果、蒸発器温度検出手段21で検出された蒸発器の温度が上昇し、圧縮機停止温度Teon以上となった場合には蒸発器5の凍結のおそれがなくなったとして、圧縮機23の駆動をONすることで行われる。尚、圧縮機駆動温度Teonは例えば2℃であり、圧縮機停止温度Teoffは例えば1℃である。
【0071】
更に、エアコン側コントロールユニット29は、蒸発器の温度制御として、蒸発器温度検出手段21により検出される蒸発器5の温度が相対的に高くなるように、圧縮機23の駆動を制御する通常モードと、蒸発器温度検出手段21により検出される蒸発器5の温度が通常モードで制御される温度以下となるように、圧縮機23の駆動を制御する蓄冷モードとの切り替えも可能としているものである。
【実施例1】
【0072】
上記エアコン側コントロールユニット29及び車両側コントロールユニット30を備えた制御手段35において、車両を停車又はクリープ走行状態から走行させる際に、圧縮機23の駆動のONをエンジン31の始動(再稼動)に連動させないようにする圧縮機23の駆動の制御を、
図4のフロチャートに基づいて説明する。尚、クリープ走行とは、エンジン31がアイドリングしている状態で、運転者がアクセルペダルを踏むことなく発生する車両の走行のことである。
【0073】
メインルーチンからステップ100に入り、次のステップ101では車両は走行中か否(車両停止中若しくはクリープ走行中)かが判定され、否であると判定された場合には、ステップ102に進み、このステップ102では自動始動停止機能によりエンジン31を自動的に停止しているか否か、すなわち、バッテリー電力の不足または不足が予見されエンジン31を始動させて発電装置を起動する必要性、信号機の信号が赤から青に移行しエンジン31を始動させて車両を走行させる必要性の両方が無く、エンジン31を停止させているか否か、が判定される。尚、ステップ101で車両は走行中と判定された場合にはステップ101に戻って車両は走行中か否かについて再度判定される。
【0074】
ステップ102で、自動始動停止機能によりエンジン31を自動的に停止していない、すなわち、エンジン31は稼動中であると判定された場合には、ステップ103に進んで蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上か否かが判定され、その結果、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上ではない、すなわち蒸発器5が相対的に低温であると判定された場合には、ステップ104に進んで制御手段35は圧縮機23の駆動をOFFした後、ステップ105からメインルーチンに戻る。これに対し、ステップ103で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上である、すなわち蒸発器が相対的に高温であると判定された場合には、ステップ106に進んで制御手段35は圧縮機23の駆動をONした後、ステップ107で圧縮機23について蒸発器の凍結防止のための通常の断続運転、すなわち、蒸発器5の温度が、圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に収まるように、圧縮機の駆動をON/OFFする制御を行ない、しかる後に、ステップ105からメインルーチンに戻る。尚、圧縮機駆動判定温度T1は例えば10℃であり、圧縮機駆動温度Teonは例えば2℃であり、圧縮機停止温度Teoffは例えば1℃であり、これらの温度値は以下においても同様である。
【0075】
ステップ102で、自動始動停止機能によりエンジン31を自動的に停止している、すなわちエンジン31は自動停止中であると判定された場合には、ステップ108に進んで蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上であるかどうかが判定され、ステップ108で蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上ではない、すなわち蒸発器5が相対的に低温であると判定された場合には、ステップ109に進んで制御手段35はエンジン31の始動要求信号を発信しないで、ステップ105からメインルーチンに戻る。これに対し、ステップ108で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上である、すなわち蒸発器が相対的に高温であると判定された場合には、ステップ110に進んで制御手段35はエンジンの始動要求信号を発信し、更にステップ111で制御手段35は圧縮機23の駆動をONした後、ステップ112で圧縮機23について蒸発器の凍結防止のための通常の断続運転、すなわち、蒸発器5の温度が、圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に収まるように、圧縮機の駆動をON/OFFする制御を行ない、しかる後に、ステップ105からメインルーチンに戻る。
【0076】
このような
図4のフロチャートで示される制御手段35による制御を行うことを可能としたことによる実施例1の一例として、信号機の信号が赤に移行した段階より再び青に移行する際におけるエンジン31の状況、車両の状況、圧縮機23の駆動といった車両/装置の動作の変化及び蒸発器5の温度の変化について、
図5を用いて従来例と比較しつつ説明する。
【0077】
信号機の信号が赤に移行する前(信号が青)の状態にあっては、エンジン31は稼動中(稼動1)であり、車両は走行中(走行1)であり、更に圧縮機23の駆動もON(ON1)となっている一方で、蒸発器5の温度が圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲で変化するように、圧縮機23が通常の断続運転をしている点で、従来例と実施例1とは同様である。
【0078】
そして、信号機の信号が赤に移行することにより、車両は停止(停車1)し、エンジン31は停止(停止1)すると共に、バッテリー電圧の不足や、乗員による空調設定温度と室内空気温度との大きな乖離が無い場合、圧縮機23もエンジン31の停止(停止1)に連動して駆動がOFF(OFF1)となり、これに伴い冷凍サイクル22の運転もOFFになって、蒸発器5の温度が上昇する点でも、従来例と実施例1とは同様である。
【0079】
続いて、信号機の信号が赤から青に移行した場合には、従来例では、車両を走行させる必要性があるとしてエンジン31は自動始動停止機能により再稼動(稼動2)し、車両は走行(走行2)を開始するとともに、蒸発器5の温度が通常の断続運転で制御する温度(TeonとTeoffとの温度範囲)より高いことから、圧縮機23は、エンジン31の再稼動(稼動2)に連動して駆動がON(ON2)され、冷凍サイクル22が運転されて、蒸発器5の温度が下降する。
【0080】
ここで、実施例1では、信号機の信号が赤から青に移行した場合、エンジン31は自動始動停止機能により再稼動(稼動2)し、車両は走行(走行2)を開始する一方で、圧縮機23は、エンジン31の再稼動(稼動2)に連動せずに、蒸発器5の温度が上昇を続けて圧縮機駆動判定温度T1以上となるまでは圧縮機の駆動のOFF(OFF1)が維持され、蒸発器5の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上となったときに圧縮機の駆動がON(ON2)になり、冷凍サイクル22の運転もONになって、蒸発器5の温度が圧縮機駆動判定温度T1よりも下降するようにしている。
【0081】
このように信号機の信号が青に移行した後の圧縮機23の駆動を制御することにより、信号機の信号が青に移行し、エンジン31が始動してから車両の加速が終了するまでの加速時間(例えば10秒間)の範囲において、圧縮機23の駆動がONになることが回避されるので、停止状態またはクリープ走行から加速が終了するまでの間の車両の加速性が悪化することが防止され、ひいては車両の燃費も向上することとなる。
【実施例2】
【0082】
上記エアコン側コントロールユニット29及び車両側コントロールユニット30を備えた制御手段35において、車両を停止又はクリープ走行状態から走行させる際に、圧縮機23の駆動のONをエンジン31の再稼動に連動させない場合、及び車両の停止又はクリ−プ走行状態と走行状態とが繰り返される場合における、圧縮機23の駆動の制御を、
図6及び
図7のフロチャートに基づいて説明する。
【0083】
図6では、制御手段35が圧縮機23の駆動を蒸発器5の温度に基づいてONするにあたって、前記圧縮機駆動判定温度T1と新たな圧縮機駆動判定温度T2との2つの圧縮機駆動判定温度基準を用い、アクセルの開閉と関係しない場合を説明する。圧縮機駆動判定温度T2は、圧縮機駆動判定温度T1より低い値、例えば8℃である。もっとも、圧縮機駆動判定温度T1は、前述したように例えば10℃であって、蒸発器5の蓄冷剤の温度範囲T3(例えば5℃から6℃の範囲)の上限温度よりも高くなっているところ、圧縮機駆動判定温度T2は、蒸発器5の蓄冷剤の前記温度範囲T3の下限温度よりも低い値、例えば4℃とすることも可能である。更には、蒸発器5の蓄冷剤の温度範囲T3が例えば1℃から6℃の範囲という前記5℃から6℃の範囲よりも広い範囲の場合に、圧縮機駆動判定温度T2は、図示しないが蒸発器5の蓄冷剤の温度範囲T3の上限温度より低い値であってもよく、蒸発器5の蓄冷剤の温度範囲T3の範囲内とすることも可能である。
【0084】
メインルーチンからステップ200に入り、ステップ201では信号機の信号が青に移行するとドライバーはペダルを操作するので、ステップ202に示されるように自動始動停止機能によりエンジン31は自動的に始動される。そして、エンジン31が始動したらステップ203に進み車両は走行中か否(車両停止中若しくはクリープ走行中)かが判定される。
【0085】
ステップ203において、車両が走行中ではない、すなわち車両停止中又はクリープ走行中であると判定された場合には、ステップ204に進んで制御手段35は圧縮機駆動判定温度T1の温度を設定した後、ステップ205に進んで蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上か否かが判定される。ステップ205で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上ではない、すなわち蒸発器5が相対的に低温であると判定された場合には、ステップ206に進んで制御手段35は圧縮機23の駆動をOFFした後、ステップ207からメインルーチンに戻る。これに対し、ステップ205で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上である、すなわち蒸発器が相対的に高温であると判定された場合には、ステップ208に進んで制御手段35は圧縮機23の駆動をONした後、ステップ209で圧縮機23について蒸発器の凍結防止のための通常の断続運転、すなわち、蒸発器5の温度が圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に収まるように、圧縮機の駆動をON/OFFする制御を行ない、しかる後に、ステップ207からメインルーチンに戻る。
【0086】
これに対し、ステップ203で車両が走行中であると判定された場合には、ステップ210に進んで制御手段35は圧縮機駆動判定温度T2の温度を設定した後、ステップ211に進んで蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T2以上か否かが判定される。
【0087】
ステップ211で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T2以上ではない、すなわち蒸発器5が相対的に低温であると判定された場合には、ステップ212に進んで制御手段35は圧縮機23の駆動をOFFにした後、ステップ207からメインルーチンに戻る。これに対し、ステップ211で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T2以上である、すなわち蒸発器が相対的に高温であると判定された場合には、ステップ213に進んで制御手段35は圧縮機23の駆動をONした後、ステップ214で圧縮機23について蒸発器の凍結防止のための通常の断続運転、すなわち、蒸発器5の温度が圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に収まるように、圧縮機の駆動をON/OFFする制御を行ない、しかる後に、ステップ207からメインルーチンに戻る。
【0088】
図7では、制御手段35が圧縮機23の駆動を蒸発器5の温度に基づいてONするにあたって、前記圧縮機駆動判定温度T1と前記圧縮機駆動判定温度T2との2つの判定温度基準を用いると共に、アクセルの開閉と関係して、蒸発器5の温度が圧縮機駆動判定温度T2に至らなくても圧縮機の駆動をONする場合を説明する。
【0089】
メインルーチンからステップ300に入り、次のステップ301で信号機の信号が青に移行するとドライバーはペダルを操作するので、ステップ302に示されるように自動始動停止機能によりエンジン31は自動的に始動される。そして、エンジン31が始動したらステップ303に進み車両は走行中か否(車両停止中若しくはクリープ走行中)かが判定される。
【0090】
ステップ303において、車両は走行中ではない、すなわち車両停止中又はクリープ走行中であると判定された場合には、ステップ304に進んで制御手段35は圧縮機駆動判定温度T1の温度を設定した後、ステップ305に進んで蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上か否かが判定される。ステップ305で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上ではない、すなわち蒸発器5が相対的に低温であると判定された場合には、ステップ306に進んで制御手段35は圧縮機23の駆動をOFFした後、ステップ307からメインルーチンに戻る。これに対し、ステップ305で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上である、すなわち蒸発器が相対的に高温であると判定された場合には、ステップ308に進んで制御手段35は圧縮機23の駆動をONした後、ステップ309で圧縮機23について蒸発器の凍結防止のための通常の断続運転、すなわち、蒸発器5の温度が圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に収まるように、圧縮機の駆動をON/OFFする制御を行ない、しかる後に、ステップ307からメインルーチンに戻る。
【0091】
これに対し、ステップ303で車両は走行中であると判定された場合には、ステップ310に進んで制御手段35は圧縮機駆動判定温度T2の温度を設定した後、ステップ311に進んで蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T2以上か否かが判定される。
【0092】
ステップ311で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T2以上である、すなわち蒸発器が相対的に高温であると判定された場合には、ステップ312に進んで制御手段35は圧縮機23の駆動をONした後、ステップ313で圧縮機23について蒸発器の凍結防止のための通常の断続運転、すなわち、蒸発器5の温度が圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に収まるように、圧縮機の駆動をON/OFFする制御を行ない、しかる後に、ステップ307からメインルーチンに戻る。
【0093】
ステップ311で、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T2以上ではない、すなわち蒸発器が相対的に低温であると判定された場合には、ステップ314に進んでアクセル開閉状態検出手段52からの検出情報に基づき、信号機の信号が青に移行しエンジン31が自動的に始動してから所定時間tが経過する間におけるアクセルの開閉状態が判定される。この所定時間tの長さは、エンジン31が再稼動してから車両の加速が終了するであろう加速時間を予め設定したもので、例えば10秒としている。これにより、エンジン31が再稼動してから所定時間tが経過する間に、アクセルが開状態にある、すなわちアクセル開と判定された場合(アクセル開と検出された場合)にはステップ315に進み、制御手段35は所定時間tの経過後もただちに圧縮機の駆動をONせず、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T2に到達した後にONし(α)、ステップ313で圧縮機23について蒸発器の凍結防止のための通常の断続運転、すなわち、蒸発器5の温度が圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に収まるように、圧縮機の駆動をON/OFFする制御を行ない、しかる後に、ステップ307からメインルーチンに戻る。
【0094】
ステップ314で、信号機の信号が青に移行してから所定時間tが経過する間にわたって、アクセルが開状態にあると判定されなかった、すなわちアクセル閉と判定された場合(アクセル開が検出されなかった場合)には、ステップ317に進み、制御手段35は所定時間tの経過後であれば蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T2以上でなくても圧縮機の駆動をONにした後(β)、ステップ316で圧縮機23について蒸発器の凍結防止のための通常の断続運転、すなわち、蒸発器5の温度が圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に収まるように、圧縮機の駆動をON/OFFする制御を行ない、しかる後に、ステップ307からメインルーチンに戻る。
【0095】
このような
図6及び
図7のフロチャートで示される制御手段35による制御を行うことを可能としたことによる実施例2の一例として、信号機が青に移行し、次の信号機が赤に移し、更に、次の信号機が青に移行する場合におけるエンジン31の状況、車両の状況、圧縮機23の駆動といった車両/装置の動作の変化及び蒸発器5の温度の変化について、
図8を用いて実施例1と比較しつつ説明する。
【0096】
信号機の信号が赤に移行する前(信号が青)の状態にあっては、エンジン31は稼動中(稼動1)であり、車両は走行中(走行1)であり、更に圧縮機23の駆動もON(ON1)となっている一方で、蒸発器5の温度が圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲で変化するように、圧縮機23が通常の断続運転をしている点で、実施例1と実施例2とは同様である。
【0097】
そして、信号機の信号が赤に移行することにより、車両は停止(停車1)し、エンジン31は停止(停止1)すると共に、バッテリー電圧の不足や、乗員による空調設定温度と室内空気温度との大きな乖離が無い場合、圧縮機23もエンジン31に連動して駆動がOFF(OFF1)となり、これに伴い冷凍サイクル22の運転もOFFになって、蒸発器5の温度が上昇する点でも、実施例1と実施例2とは同様である。
【0098】
続いて、信号機の信号が青に移行した場合に、エンジン31が稼動(稼動2)し、車両が走行(走行2)する点も実施例1と実施例2とは同様であるが、圧縮機の駆動にあっては、実施例1では圧縮機駆動判定温度T1以上となってから圧縮機の駆動がON(ON2)になるのに対し、実施例2では圧縮機駆動判定温度T1よりも低い圧縮機駆動判定温度T2以上になれば圧縮機の駆動がON(ON2)になる。このため、実施例1を単純に用いた場合には、破線で示されるように、次の信号機の信号が赤に移行して車両が停止(停車2)を開始する際において、蒸発器の温度は圧縮機が断続運転する圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に至らない可能性があるのに対し、実施例2では、次の信号機の信号が赤に移行して車両が停止(停車2)する前の段階で、蒸発器の温度は圧縮機が断続運転する圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に至ることが可能である。これに伴い、信号機の信号が青に移行して車両が走行(走行2)を開始してから次の信号機の信号が赤に移行して車両が停止(停車2)する場合のように、車両が停止中又はクリープ走行中の状態から走行状態を経て車両が再度停止するまでの時間が相対的に短い場合であっても、エンジン31の稼動が停止(停止2)するアイドル停止時間を相対的に長くすることが可能となる。
【0099】
そして、実施例2では、車両が走行を比較的長い時間停止(停車2)して、エンジン31が停止(停止2)し、圧縮機23も停止(OFF2)して、冷凍サイクルの運転が停止して蒸発器5の温度が上昇する場合には、蒸発器5の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上となったときに圧縮機23の駆動がON(ON3)され、これに伴いエンジンも稼動(稼動3)を開始する。
【0100】
更に、実施例2では、例えば次回における信号機の信号が赤に移行して車両が停止(停車2)した後、信号機の信号が青に移行して車両が走行(走行3)する際において、蒸発器の温度は圧縮機が断続運転する圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に至らない場合が考えられるところ、この場合には、エンジン31が再稼動してから所定時間tが経過する間、アクセルが開状態にあるかどうかで、圧縮機23の駆動のON(ON4)が制御される。すなわち、信号機の信号が青に移行してエンジンが稼動(稼動3)し、車両が走行(走行3)する場合でも、圧縮機23は駆動がOFF(OFF3)であり、所定時間tが経過する間にアクセルが開状態にあると検出されると、圧縮機23は圧縮機駆動判定温度T2以上となるまで駆動のONが保留(ON4:
図8のα)され、一方所定時間tが経過する間にアクセルが開状態にないと検出されないと、圧縮機23は圧縮機駆動判定温度T2以上でなくても所定時間tを経過したら駆動がON(
図8のβ)になる。
【0101】
これにより、信号機の信号が青に移行してから車両を加速する加速時間(例えば10秒間)の範囲において、圧縮機23の駆動がONになることが回避されるので、停止状態またはクリープ走行から加速が終了するまでの間の車両の加速性が悪化することが防止されて、車両の燃費も向上することができると共に、アクセルが開かれずにエンジン31の負荷が低い場合に早期に蒸発器5の温度を下降することができ、次回のエンジンのアイドル停止に備えることができる。
【0102】
図9では、この発明に係る車両用空調装置1の変形例が示されている。以下、この車両用空調装置1の他の例について
図9を用いて説明する。但し、先の実施例1、2として示される車両用空調装置1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、且つ実施例1、実施例2と同様の制御についても基本的にはその説明を省略する。
【0103】
この変形例では、蒸発器5は蓄冷剤を備えないものとし、その替わりに、蓄冷熱交換器57が空気流路3のうち蒸発器5よりも下流側に配置されている。このように蒸発器5と蓄冷熱交換器57とが配置されているので、蓄冷熱交換器57は、蒸発器5を通過して冷却された空気によって冷却されることができる。更に、この蓄冷熱交換器57の表面に当該蓄冷熱交換器57の表面温度を測定することで蓄冷熱交換器温度を検出する蓄冷熱交換器温度検出手段58が配置されている。そして、エアコン側コントロールユニット29の入力側は、蓄冷熱交換器温度検出手段58と電気的に接続されており、蓄冷熱交換器温度検出手段58から蓄冷熱交換器の温度が検出情報としてエアコン側コントロールユニット29に入力される。尚、蓄冷熱交換器57自体は公知のものであるので、その構成の説明は省略する。
【0104】
これにより、
図4、
図6、
図7のフロチャートにおいて、蒸発器の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上かどうか、或いは圧縮機駆動判定温度T2以上かどうかを判定する替わりに、蓄冷熱交換器57の温度が圧縮機駆動判定温度T1以上かどうか、或いは圧縮機駆動判定温度T2以上かどうかを判定し、更に蓄冷熱交換器57の温度が圧縮機駆動温度Teon以下、圧縮機停止温度Teoff以上の範囲に収まるように、圧縮機の駆動をON/OFFする制御を行うことによって、蓄冷剤を備えた蒸発器5を用いる場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0105】
以上のように、この発明の実施形態として示してきた実施例1、実施例2、及びこれらの実施例1、2の変形例において、圧縮機駆動判定温度T1、圧縮機駆動判定温度T2を、予め設定した温度として説明してきたが、圧縮機駆動判定温度T1、圧縮機駆動判定温度T2が熱負荷の大きさに応じて変動するようにしてもよい。例えば圧縮機駆動判定温度T1を下記する数式1に基づいて、圧縮機駆動判定温度T2を下記する数式2に基づいて設定する。このように、外気温度が高いときほどT1、T2を低く設定することで、乗員の快適性の悪化を防止することができる。なお、数式1、数式2で外気温度の代わりに、演算により得られた空調総合信号を用いてもよい。外気温度だけでなく、より乗員からの要請を加味したきめ細やかな空調制御ができる。
【数1】
【数2】