(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特徴適合判定ステップでは、前記基準画像のパワースペクトルと前記入力画像のパワースペクトルを求め、当該パワースペクトル間の誤差が小さいほど適合度合いが高いと判定することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の記号識別方法。
前記2次元温度データ取得ステップでは、前記対象物を測定した2次元温度データにおいて前記個体識別用の記号が存在すると想定される領域から、位置を変えて複数の2次元温度データを抽出し、
前記2値化処理ステップでは、前記複数の2次元温度データそれぞれを所定の温度閾値で2値化して複数の入力画像を生成し、
前記特徴適合判定ステップでは、前記個体識別用の記号すべての種類の前記基準画像それぞれを前記複数の入力画像と照合して、最も適合度合いの高い基準画像の記号を認識することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の記号識別方法。
前記2値化処理ステップでは、前記2次元温度データの平均温度を求め、当該平均温度から値を下げていきその値より低い温度のデータ数が一定数になる値を温度閾値に定めて2値化することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の記号識別方法。
前記特徴適合判定ステップでは、前記基準画像と前記入力画像のパワースペクトル間の誤差に基づく判定に加え、前記基準画像と前記入力画像のパターンマッチに基づく判定を組み合わせて、適合度合いを判定することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の記号識別方法。
前記対象物の移動経路と前記対象物以外の異物の移動経路とが一部重なる場合に、前記赤外線カメラが出力する2次元温度データの、前記異物の移動経路に相当する位置に異物判定領域を設定し、当該異物判定領域において所定の異物判定温度以上の温度データ群が所定面積以上になった場合に異物と判定する異物検出ステップを備え、
前記データ取得タイミング判定ステップでは、前記異物検出ステップで異物を検出した場合にデータ取得タイミングの判定処理を中断することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の記号識別方法。
前記判定領域設定ステップで設定した前記2つの判定領域に前記所定の判定温度以上の温度データが出現する順番に基づいて、前記対象物の移動方向を判定する移動方向判定ステップを備える請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の記号識別方法。
前記データ取得タイミング判定ステップで判定したタイミングの前記2次元温度データを、前記所定の判定温度以上の温度データ群が中心位置になるようセンタリングするセンタリング補正ステップを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の記号識別方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1に示す記号識別システム1は、取鍋2の鉄皮表面の温度分布を赤外線カメラ4で測定し、記号識別装置10がその温度分布データから取鍋2の鉄皮表面に描かれた個体識別用の記号3を認識して、取鍋2の個体識別を行うものである。
【0013】
取鍋2の鉄皮表面には、割り振られた個体識別用の記号3が耐熱塗料で描かれている。
図1の例では、個体識別用の記号3として数字が描かれているが、文字、図形などどのような記号でもよい。
【0014】
赤外線カメラ4は、取鍋2が次工程へ移動する移動経路に向けて設置されており、取鍋2が通るタイミングで、この取鍋2の個体識別用の記号3を含む所定の領域を測定し、その領域の温度分布を表す2次元温度データを出力する。この赤外線カメラ4は赤外線放射エネルギを温度に変換しているため、鉄皮と記号3が実際には同じ温度だったとしても、鉄皮と耐熱塗料の放射率の違いから測定結果には温度差が生じる。
なお、この赤外線カメラ4は、記号識別専用に用意する必要はなく、例えば上記特許文献1の漏鋼予知に用いる赤外線カメラと兼用可能である。
【0015】
記号識別装置10はコンピュータで構成され、2次元温度データ取得部11、フィルタ処理部12、2値化処理部13、基準画像保持部14、および特徴適合判定部15の処理内容を記述している記号識別プログラムをコンピュータのメモリに格納し、コンピュータのCPUがメモリに格納されている記号識別プログラムを実行する。
【0016】
2次元温度データ取得部11は、赤外線カメラ4の入力インタフェースであり、赤外線カメラ4の測定した2次元温度データを取得し、そのうちの個体識別用の記号3を含む所定のデータ範囲(以下、記号識別領域と称す)を抽出してフィルタ処理部12へ出力する。
図2に、2次元温度データ20と記号識別領域21の一例を示す。この図では、温度が高い領域を白色で表し、温度が低くなるほど黒くなる。
【0017】
フィルタ処理部12は、2次元温度データ取得部11から入力された記号識別領域21の温度データをフィルタ処理して、ノイズを除去する。ここで言うノイズとは、赤外線カメラ4の設置環境に由来するノイズ(赤外線カメラ4の撮像領域に存在する物体の写り込み等)、取鍋2の形状に由来するノイズ(取鍋2の凹凸に起因した影等)であり、赤外線カメラ4の2次元温度データに毎回同じように生じるノイズである。このノイズは予め出現場所が特定できるので、フィルタ処理により記号3に影響しない範囲で除去しておく。
なお、設置環境および取鍋2の形状に由来する固有のノイズを除去する以外にも、例えば所定温度以下のデータをノイズと見なして除去する等のフィルタ処理を行ってもよい。
【0018】
2値化処理部13は、ノイズを除去した記号識別領域21の温度データを、個体識別用の記号3の表面温度と鉄皮の表面温度の境界に相当する所定の温度閾値で2値化して、白黒画像に変換する。例えば1つの温度測定値が1ピクセルを成す32×32ピクセルの記号識別領域21について、2値化処理部13は先ずその記号識別領域21の平均温度を計算し、これを仮の温度閾値とする。続いて2値化処理部13は、仮の温度閾値を低い値へΔT(例えば、1度)ずつ下げていき、記号識別領域21のうち、仮の温度閾値より低い温度領域がNピクセルになった時点で温度閾値を固定し、この温度閾値より温度が低い領域をON(黒)にし、残りの領域をOFF(白)にした白黒画像を生成する。この時点の温度閾値が、個体識別用の記号3の表面温度と鉄皮の表面温度の境界に相当し、相対的に温度の低い記号3の領域が黒、相対的に温度の高い鉄皮の領域が白に変換される。
なお、このNは、個体識別用の記号3の数字によらず同値とし、記号識別領域21に占める記号3の面積に基づいて予め適切な値を設定しておく。
【0019】
基準画像保持部14は、後段の特徴適合判定部15で記号を識別するために用いる基準画像を記憶している記憶装置である。ここでは、予め全ての取鍋2の個体識別用の記号3を赤外線カメラ4で測定し、2次元温度データ取得部11、フィルタ処理部12および2値化処理部13により処理した白黒画像を作成して、基準画像として基準画像保持部14に格納しておく。
図3に、基準画像保持部14が保持している個体識別用の記号3の基準画像の例を示す。
また、後にオペレータが識別結果を確認できるように、2値化処理部13が記号識別領域21の温度データをグレースケールの画像に変換し、基準画像保持部14などの記憶装置に保存しておいてもよい。
【0020】
特徴適合判定部15は、個体識別対象の取鍋2を測定した2次元温度データから生成された白黒画像(以下、入力画像と称す)を、基準画像保持部14が保持する各基準画像と比較して、一番適合度の高い基準画像を探す。そして、その基準画像の記号を、入力画像の記号識別結果とする。
ここで、判定方法の例として、(1)パワースペクトル誤差による判定、(2)パターンマッチによる判定を説明する。
【0021】
(1)パワースペクトル誤差による判定
図4は、2次元温度データを1次元のデータ列に変換する一例を示す図である。特徴適合判定部15は、記号識別対象の入力画像を、
図4に示すように1次元のデータ列に変換し、高速フーリエ変換してパワースペクトルを計算する。同様に、特徴適合判定部15は基準画像保持部14の保持する各基準画像を1次元のデータ列に変換し、高速フーリエ変換してパワースペクトルを計算する。
なお、特徴適合判定部15は
図4に示すように画像横方向にデータ列を生成するのではなく、画像縦方向にデータ列を生成してもよい。また、画像横方向と画像縦方向にそれぞれデータ列を生成して1組のパワースペクトルを計算してもよい。あるいは、2次元温度データを1次元のデータ列に変換せず、2次元のままパワースペクトルを計算してもよい。
さらに、特徴適合判定部15は、予め基準画像のパワースペクトルを計算して基準画像保持部14に格納しておいてもよい。
【0022】
「38」の個体識別用の記号3が付与された取鍋2を温度測定した場合の入力画像を
図5(a)に示す。
図5(b)は、この入力画像のデータ列(実線)と記号「38」の基準画像のデータ列(破線)を示し、
図5(c)に各データ列のパワースペクトルを示す。記号「38」の基準画像は、
図3に示す。
特徴適合判定部15は、入力画像と基準画像のパワースペクトルの2乗誤差を求め、2乗誤差が低い基準画像を適合度が高いと判定する。
同一の記号「38」を撮像した入力画像と基準画像を比較した場合、記号識別領域21における記号3の位置ずれがあるため、
図5(b)のデータ列では波形パターンが一致しないように見えるが、
図5(c)のパワースペクトルで比較すると2乗誤差が22.7程度と小さく、適合度が高い。このように、パワースペクトル誤差による判定は、ON(黒)とOFF(白)の位置ずれがあっても高精度に判定できる。
【0023】
一方、
図6(a)に、「36」の個体識別用の記号3が付与された取鍋2を温度測定した場合の入力画像を示す。
図6(b)は、この入力画像のデータ列(実線)と記号「38」の基準画像のデータ列(破線)を示し、
図6(c)に各データ列のパワースペクトルを示す。
記号「36」を撮像した入力画像と、記号「38」を撮像した基準画像を比較した場合、数字の形状が似ているため、
図6(b)のデータ列では波形パターンが似ているが、
図6(c)のパワースペクトルで比較するとピークがずれており、2乗誤差が28.4と大きく適合度が低い。
【0024】
(2)パターンマッチ
特徴適合判定部15は、ON(黒)の領域とOFF(白)の領域それぞれについて、入力画像と基準画像とで一致する面積および一致しない面積を求め、一致面積と不一致面積の比率が高い基準画像は適合度が高いと判定する。
画像にノイズが少ない場合、パターンマッチにより高精度に判定できる。
【0025】
特徴適合判定部15は、(1)と(2)のいずれか一方の方法を用い、入力画像との適合度が最も高かった(または規定以上の適合度合いだった)基準画像の記号を、記号識別結果とする。あるいは、(1)と(2)を組み合わせて、判定精度をより向上させてもよい。組み合わせる場合、特徴適合判定部15は、例えば(2)のパターンマッチの比率が所定値以上になった基準画像の中で、(1)の2乗誤差が最も低い基準画像の記号を、記号識別結果とする。
ただし、(1)の2乗誤差が上限値より大きい場合は該当なしとする、(2)のパターンマッチの比率が下限値より小さい場合は該当なしとするといった例外処理を設定しておいてもよい。
【0026】
以上より、実施の形態1によれば、記号識別装置10は、鉄皮表面に放射率の異なる耐熱塗料を用いて付された個体識別用の記号3を有する取鍋2を赤外線カメラ4で測定した2次元温度データ20を2次元温度データ取得部11が取得して記号識別領域21を抽出する2次元温度データ取得ステップと、フィルタ処理部12が記号識別領域21の温度データのノイズを除去するフィルタ処理ステップと、2値化処理部13が記号識別領域21の温度データを所定の温度閾値で2値化して入力画像を生成する2値化処理ステップと、個体識別用の全ての種類の記号3について、赤外線カメラ4で測定して2値化した基準画像を予め基準画像保持部14に用意しておき、特徴適合判定部15がこれら基準画像それぞれを入力画像と照合して最も適合度合いの高い基準画像の記号を当該入力画像の記号3として認識する特徴適合判定ステップとからなる記号識別方法を実施するように構成した。このため、取鍋2の温度管理用の赤外線カメラ4を個体識別用に流用することができ、安価で付加価値の高い記号識別方法および記号識別装置を提供することができる。
【0027】
また、実施の形態1によれば、特徴適合判定部15は、特徴適合判定ステップで、基準画像のパワースペクトルと入力画像のパワースペクトルを求め、当該パワースペクトル間の誤差が小さいほど適合度合いが高いと判定するように構成した。このため、個体識別用の記号3の位置ずれに対して頑健な適合判定を行うことができる。
【0028】
また、実施の形態1によれば、2値化処理部13は、2値化処理ステップで、記号識別領域21の温度データの平均温度を求め、当該平均温度から値を下げていきその値より低い温度のデータ数が一定数(N)になる値を温度閾値に定めて2値化するように構成した。このため、取鍋2の温度の変動に対して頑健な適合判定を行うことができる。
【0029】
また、実施の形態1によれば、特徴適合判定部15は、特徴適合判定ステップで、基準画像と入力画像のパワースペクトル間の誤差に基づく判定に加え、基準画像と入力画像のパターンマッチに基づく判定を組み合わせて、適合度合いを判定するように構成した。このため、適合判定を高精度に行うことができる。
【0030】
実施の形態2.
本実施の形態2に係る記号識別システムは、図面上では
図1の記号識別システム1と同様のため、
図1を援用する。
取鍋2が所定位置で停止している最中に赤外線カメラ4で測定する場合はよいが、次工程へ移動している最中に測定する場合には、測定タイミングがずれると2次元温度データ20における個体識別用の記号3の位置もずれるため、識別精度が低下することがある。そこで、本実施の形態2では、記号識別装置10の2次元温度データ取得部11が、2次元温度データ20から記号識別領域21を抽出する際に、抽出位置を変えて複数の記号識別領域21を抽出し、特徴適合判定部15がそれぞれの記号識別領域21について基準画像との適合度を判定する。
【0031】
図7は、2次元温度データ20の9箇所から9個の記号識別領域21−1〜21−9を抽出する様子を示す図である。2次元温度データ取得部11は、2次元温度データ20のうち、個体識別用の記号3を含むと想定される所定のデータ範囲を抽出して記号識別領域21−1とする。また、この記号識別領域21−1に対して、上、下、右、左方向にそれぞれ所定量移動した領域のデータ範囲を抽出して記号識別領域21−2〜21−5とする。さらに、記号識別領域21−1に対して、斜め右上、斜め右下、斜め左上、斜め左下方向にそれぞれ所定量移動した領域のデータ範囲を抽出して記号識別領域21−6〜21−9とする。
なお、
図7は一例であり、記号識別領域を抽出する位置および数は任意でよい。
【0032】
フィルタ処理部12は、記号識別領域21−1〜21−9それぞれに対してフィルタ処理を行い、ノイズを除去する。2値化処理部13は、記号識別領域21−1〜21−9それぞれに対して温度閾値を決定し2値化した白黒画像(入力画像)を生成する。特徴適合判定部15は、記号識別領域21−1〜21−9の9枚の入力画像それぞれに対して、基準画像保持部14が保持する各基準画像との(1)パワースペクトル誤差および(2)パターンマッチのいずれか一方、またはその両方の判定を行う。そして、9枚の入力画像との適合度合いが一番高い基準画像の記号を、記号識別結果とする。
【0033】
以上より、実施の形態2によれば、2次元温度データ取得部11は、2次元温度データ取得ステップで、取鍋2の2次元温度データ20において個体識別用の記号3が存在すると想定される領域から、位置を変えて複数の記号識別領域21−1〜21−9の温度データを抽出し、2値化処理部13は、2値化処理ステップで、複数の記号識別領域21−1〜21−9の温度データそれぞれを所定の温度閾値で2値化して複数の入力画像を生成し、特徴適合判定部15は、特徴適合判定ステップで、基準画像保持部14の保持している基準画像それぞれを複数の入力画像と照合して、最も適合度合いの高い基準画像の記号を認識するように構成した。このため、取鍋2の移動中に赤外線カメラ4が測定するなどして個体識別用の記号3の位置ずれが生じた場合でも、高精度に適合判定を行うことができる。
【0034】
実施の形態3.
図8は、本実施の形態3に係る記号識別システム1の構成を示す図であり、
図1と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。本実施の形態3では、記号識別装置10の2次元温度データ取得部11が、赤外線カメラの測定対象領域に移動してきた取鍋2を検出して、適切なタイミングで2次元温度データを取得する構成を実現する。なお、
図8では2次元温度データ取得部11の内部構成のみ示し、フィルタ処理部12、2値化処理部13、基準画像保持部14および特徴適合判定部15の図示は省略している。
【0035】
本実施の形態3の2次元温度データ取得部11は、判定領域設定部31、接近検出部32、充/空鍋判定部(移動方向判定部)33、データ取得タイミング判定部34、2次元温度データ記憶部35および位置補正部36から構成されている。
【0036】
図8に示す記号識別システム1は、赤外線カメラ4の測定対象領域に入った取鍋2を検出して、この取鍋2の鉄皮表面の温度分布を測定するものである。図示例では取鍋2がクレーン5によって吊り上げられた状態で、矢印A,Bへ移動可能である。空の取鍋2は、矢印Aの方向へ移動して転炉または電気炉へ行き、精錬された溶鋼を受鋼する。溶鋼を収容した取鍋2は、矢印Bの方向へ移動して取鍋精錬設備へ行き、次工程として溶鋼の二次精錬が実施される。なお、取鍋2は、溶鋼の有無にかかわらず、周囲より十分に高い温度に維持されている。また、取鍋2の移動方法は、クレーン5に限定されるものではなく、任意の方法でよい。
【0037】
赤外線カメラ4は、取鍋2の移動経路に向けて設置されており、測定対象となる領域の温度分布を表す2次元温度データを出力する。
図9に、赤外線カメラ4の測定対象領域40を示す。この測定対象領域40を赤外線カメラ4が撮像して、1つの温度測定値が1ピクセルを成す2次元温度データに変換する。なお、
図9の第1判定領域41および第2判定領域42は後述する。
【0038】
判定領域設定部31は、赤外線カメラ4の測定する2次元温度データを受け付けて、この2次元温度データに対して、取鍋2の接近、取鍋2の移動方向、溶鋼の有無(即ち、充/空)、およびデータ取得タイミングを判定するための判定領域を設定する。例えば、取鍋2が測定対象領域40上を左右方向に移動する場合を想定して、判定領域設定部31が
図9に示すように赤外線カメラ4の測定した2次元温度データの中心より左側に第1判定領域41を設定し、中心より右側に第2判定領域42を設定する。
第1判定領域41と第2判定領域42を設定した2次元温度データは、判定領域設定部31から接近検出部32および充/空鍋判定部33へ出力される。
【0039】
接近検出部32は、第1判定領域41および第2判定領域42の少なくとも一方において、取鍋2の表面温度に相当する温度(以下、判定温度T1)以上のピクセルが占める割合がM%以上になるタイミングを判定し、取鍋2が赤外線カメラ4の測定対象領域40に到着したと判断する。Mは任意の値でよい。
接近検出結果は、接近検出部32からデータ取得タイミング判定部34へ出力される。
【0040】
充/空鍋判定部33は、判定温度T1以上のピクセルが、第1判定領域41と第2判定領域42のどちらから先に現れたかを判断し、取鍋2の移動方向と溶鋼の有無を判定するこの充/空鍋判定部33には、取鍋2の移動方向と充/空との対応関係が予め設定されており、
図9の例では、矢印Aの方向のとき空、矢印Bの方向のとき充である。
判定温度T1以上のピクセルが第1判定領域41、第2判定領域42の順に現れた場合、取鍋2が矢印Aの方向へ移動していると考えられるため、充/空鍋判定部33は取鍋2が空であると判定する。反対に、判定温度T1以上のピクセルが第2判定領域42、第1判定領域41の順に現れた場合、取鍋2が矢印Bの方向へ移動していると考えられるため、充/空鍋判定部33は取鍋2が溶鋼を収容している、即ち、充であると判定する。
充/空判定結果は、充/空鍋判定部33からデータ取得タイミング判定部34へ出力される。
【0041】
なお、第1判定領域41と第2判定領域42に同時に判定温度T1以上のピクセルが現れた場合、充/空鍋判定部33は、判定温度T1以上のピクセル数が多い方の判定領域を先と判断して、充/空判定を行えばよい。
また、本実施の形態3では取鍋2が矢印A,Bの左右方向に移動する場合を想定しているが、上下方向に移動する取鍋2に対して移動方向を判定することも可能である。これは、予め、測定対象領域40において第1判定領域41と第2判定領域42を上下方向にずらして配置しているためである。取鍋2が上下方向に移動する場合、充/空鍋判定部33は、判定温度T1以上のピクセルが第1判定領域41、第2判定領域42の順に現れると、取鍋2が下から上方向へ移動していると判定する。一方、判定温度T1以上のピクセルが第2判定領域42、第1判定領域41の順に現れると、取鍋2が上から下方向へ移動していると判定する。また、充/空鍋判定部33に対して、上下の移動方向に応じた充/空の設定をしておき、充/空鍋判定部33がその設定に基づいて充/空の判定を行えばよい。
【0042】
データ取得タイミング判定部34は、接近検出部32から取鍋2の接近を通知された時点から2次元温度データを一時的に保持していく。また、データ取得タイミング判定部34は、第1判定領域41および第2判定領域42の両方において判定温度T1以上のピクセルがLピクセル以上になるタイミングを判定し、このタイミングの2次元温度データを2次元温度データ記憶部35に記憶する。Lは、取鍋2が赤外線カメラ4の測定対象領域40(即ち、2次元温度データ)の中心位置に存在するときの値を目安に設定しておけばよい。なお、充/空鍋判定部33の判定結果に従って、取鍋2が空のときと充のときとでLの値を可変にしてもよい。
【0043】
ただし、データ取得タイミング判定部34は、上記の条件に至らなかった場合、接近検出部32が取鍋2の接近を検出したタイミングから所定時間t1の経過後にタイムアウトする。この場合、データ取得タイミング判定部34は、一時的に保持している2次元温度データのうち、第1判定領域41と第2判定領域42の判定温度T1以上の合計ピクセル数が一番大きい2次元温度データを採用して、2次元温度データ記憶部35に記憶する。さらに、2次元温度データの正常な取得に失敗した旨をデータ取得タイミング判定部34から外部出力してもよい。
【0044】
また、データ取得タイミング判定部34は、上記の条件に至った後、第1判定領域41および第2判定領域42の両方において判定温度T1以上のピクセルがLピクセル以下になる時間が所定時間t2連続した場合、取鍋2が赤外線カメラ4の測定対象領域40を通り過ぎたと判断して、判定処理を終了すると共に2次元温度データの一時保持も終了する。また、この場合に、データ取得タイミング判定部34から接近検出部32へ指示を出して接近検出処理を所定時間t2だけ中断させ、この取鍋2を接近検出部32で誤って再検出しないようにしてもよい。
【0045】
また、データ取得タイミング判定部34は、上記の条件に至った後、第1判定領域41および第2判定領域42の少なくとも一方において判定温度T1以上のピクセルがLピクセル以上の時間が所定時間t3連続した場合、取鍋2が移動していないと判断するようにしてもよい。また、この場合に、データ取得タイミング判定部34から接近検出部32へ指示を出し、次の取鍋2の接近検出処理を中断するようにしてもよい。
【0046】
位置補正部36は、2次元温度データ記憶部35が記憶している2次元温度データをセンタリング補正して、取鍋2の表面温度を表すデータ群を2次元温度データの中心に揃える。
図10は、2次元温度データ50に対する上下方向のセンタリング補正を説明する図であり、
図11は左右方向のセンタリング補正を説明する図である。
図10および
図11において、2次元温度データ50は、温度が高い領域を白色で表し、温度が低くなるほど黒くなる。
【0047】
(1)上下センタリング
図10(a)に示すように、位置補正部36は、2次元温度データ50の中心に左右幅Pピクセルの判定スリット51を設定して、上方向および下方向へそれぞれ移動させていく。上方向への移動中に、この判定スリット51に含まれるPピクセルのうち、判定温度T1×α(例えば、α=0.7〜1.5)より低い温度のピクセル数がP/3になるY軸を、Y1とする。同様に、下方向への移動中に、判定スリット51に含まれるPピクセルのうち、判定温度T1×αより低い温度のピクセル数がP/3になるY軸を、Y2とする。最後に、位置補正部36は、Y1とY2の中間点が2次元温度データ50の中心になるようセンタリングして、
図10(b)の2次元温度データ50aにする。なお、
図10(b)の斜線領域は、2次元温度データ50をセンタリングした際に補間したデータ領域である。
【0048】
(2)左右センタリング
図11(a)に示すように、位置補正部36は、2次元温度データ50aの左端および右端にそれぞれ上下幅Qピクセルの判定スリット52,53を設定して、右方向および左方向へ移動させていく。判定スリット52の左方向への移動中に、この判定スリット52に含まれるQピクセルのうち、判定温度T1×αより高い温度のピクセル数がQ/3×2以上になるX軸を、X1とする。同様に、判定スリット53の右方向への移動中に、この判定スリット53に含まれるQピクセルのうち、判定温度T1×αより高い温度のピクセル数がQ/3×2以上になるX軸を、X2とする。最後に、位置補正部36は、X1とX2の中間点が2次元温度データ50aの中心になるようセンタリングして、
図11(b)の2次元温度データ50bにする。
なお、P,Q等の各種の数値は任意でよい。
【0049】
なお、2次元温度データ取得部11は、以上の処理を終えた2次元温度データ50bから、上記実施の形態1,2で説明したように個体識別用の記号3を含む所定のデータ範囲(記号識別領域21)を抽出して、フィルタ処理部12へ出力する。
【0050】
以上より、実施の形態3によれば、記号識別装置10は、取鍋2の移動経路に向けて設置された赤外線カメラ4から入力される2次元温度データに対して、判定領域設定部31がこの移動経路に相当する位置に第1判定領域41および第2判定領域42を設定する判定領域設定ステップと、データ取得タイミング判定部34が第1判定領域41および第2判定領域42の両方において所定の判定温度T1以上の温度データ群が所定面積(Lピクセル)以上になるタイミングを判定するデータ取得タイミング判定ステップと、データ取得タイミング判定ステップで判定したタイミングの2次元温度データを2次元温度データ記憶部35に記憶するデータ取得ステップとからなる取鍋検出方法を実施するように構成した。このため、2次元温度データに設定した2つの判定領域を監視して、取鍋2の表面温度に相当する温度データ群の面積に基づいて取鍋2が赤外線カメラ4に対して適切な位置に移動したことを検出することができ、適切なタイミングで2次元温度データを取得し記憶することができる。これにより、移動中の取鍋2に相当する温度データ群が毎回同じ位置に出現する2次元温度データを用いて、取鍋2の個体識別を行ったり、溶鋼の漏洩の可能性を予測したりすることが可能となる。
【0051】
また、実施の形態3によれば、充/空鍋判定部33が、判定領域設定ステップで設定した第1判定領域41および第2判定領域42に判定温度T1以上の温度データが出現する順番に基づいて、取鍋2の移動方向を判定し、移動方向に応じて溶鋼の有無を判定する移動方向判定ステップを実施するように構成した。このため、赤外線カメラ4の測定する2次元温度データを流用して、取鍋2が空か充かの状態判定を行うことができる。
【0052】
また、実施の形態3によれば、位置補正部36が、データ取得タイミング判定ステップで判定したタイミングの2次元温度データを、判定温度T1以上の温度データ群が中心位置になるようセンタリングするセンタリング補正ステップを実施するように構成した。このため、2次元温度データを取得するタイミングが多少ずれたとしても、位置補正して、移動中の取鍋2に相当する温度データ群が毎回同じ位置に出現する2次元温度データを提供することができる。
【0053】
なお、第1判定領域41と第2判定領域42の設定例は
図9に限定されるものではない。以下に、
図12を参照して別の設定例を説明する。
赤外線カメラ4の測定対象領域40に対して左右方向に移動する取鍋2を検出する場合、判定領域設定部31は、
図12(a)に示すように、第1判定領域41と第2判定領域42を左右に並べた状態に設定する。この設定例の場合、充/空鍋判定部33は、判定温度T1以上のピクセルが、第1判定領域41と第2判定領域42のどちらから先に現れたかを判断し、取鍋2が左右どちらの方向に移動しているか判定する。
【0054】
一方、赤外線カメラ4の測定対象領域40に対して上下方向に移動する取鍋2を検出する場合、判定領域設定部31は、
図12(b)に示すように、第1判定領域41と第2判定領域42を上下に並べた状態にする。この設定例の場合、充/空鍋判定部33は、判定温度T1以上のピクセルが、第1判定領域41と第2判定領域42のどちらから先に現れたかを判断し、取鍋2が上下どちらの方向に移動しているか判定する。
【0055】
あるいは、
図12(c)に示すように、第1判定領域41と第2判定領域42を上下に並べ、かつ、左右にずらした状態にしてもよい。この場合、
図9と同様、赤外線カメラ4の測定対象領域40に対して上下方向、左右方向および斜め方向に移動する取鍋2を検出することが可能である。
【0056】
実施の形態4.
本実施の形態4に示す2次元温度データ取得部11は、上記実施の形態3の
図8と図面上では同様の構成であるため、以下では
図8を援用して説明する。
複数台の赤外線カメラ4を用いて取鍋2の表面温度を測定する場合、2次元温度データ取得部11が赤外線カメラ4それぞれについて上記実施の形態3の処理を行ってもよいし、あるいは、1台の赤外線カメラ4に対してのみ上記実施の形態3の処理を行い、残りの赤外線カメラ(以下、連動用赤外線カメラ4aと称す)は赤外線カメラ4に連動した処理を行ってもよい。本実施の形態4では、連動した処理の例として、(1)接近トリガ連動モードおよび(2)データ取得トリガ連動モードの2通り説明する。なお、赤外線カメラ4がメインカメラに相当し、連動用赤外線カメラ4aが連動用カメラに相当する。
【0057】
(1)接近トリガ連動モード
判定領域設定部31は、赤外線カメラ4および連動用赤外線カメラ4aそれぞれの2次元温度データを受け付け、カメラ毎に第1判定領域41および第2判定領域42を設定する。
接近検出部32は、赤外線カメラ4の2次元温度データに設定した第1判定領域41および第2判定領域42に基づいて取鍋2の接近を検出し、赤外線カメラ4および連動用赤外線カメラ4aの両方の接近検出結果としてデータ取得タイミング判定部34に通知する。データ取得タイミング判定部34は、接近検出部32から取鍋2の接近を通知された時点から、カメラ毎にデータ取得タイミングの判定処理を開始し、カメラ毎の2次元温度データを2次元温度データ記憶部34に記憶させる。
【0058】
接近トリガ連動モードの場合、赤外線カメラ4への取鍋2の接近を、連動用赤外線カメラ4aへの接近とも見なすため、例えば、連動用赤外線カメラ4aが取鍋2の接近を誤検出しやすい環境に設置されていてもその動作を補助することができる。そのため、接近検出に続く2次元温度データの取得タイミング判定処理を確実に実施でき、連動用赤外線カメラ4aの2次元温度データの取得失敗を防止できる。
【0059】
(2)データ取得トリガ連動モード
判定領域設定部31は、赤外線カメラ4および連動用赤外線カメラ4aそれぞれの2次元温度データを受け付け、赤外線カメラ4の2次元温度データにのみ第1判定領域41および第2判定領域42を設定する。
接近検出部32は、赤外線カメラ4の2次元温度データに設定した第1判定領域41および第2判定領域42に基づいて取鍋2の接近を検出し、データ取得タイミング判定部34に通知する。データ取得タイミング判定部34は、接近検出部32から取鍋2の接近を通知された時点から赤外線カメラ4のデータ取得タイミングの判定処理を開始し、このデータ取得タイミングで赤外線カメラ4および連動用赤外線カメラ4aの各2次元温度データを2次元温度データ記憶部34に記憶させる。
【0060】
データ取得トリガ連動モードの場合、赤外線カメラ4のデータ取得タイミングを、連動用赤外線カメラ4aのデータ取得タイミングとも見なすため、例えば、連動用赤外線カメラ4aが取鍋2の接近を誤検出しやすい、またはデータ取得タイミングを誤判定しやすい環境に設置されていてもその動作を補助することができる。そのため、連動用赤外線カメラ4aの2次元温度データをより確実に取得できる。また、(1)接近トリガ連動モードに比べて、記号識別装置10の処理をより軽減できる。
【0061】
なお、充/空鍋判定部33は、複数カメラのうち、代表してメインの赤外線カメラ4のみ充/空判定を行えばよい。一方、位置補正部36は、2次元温度データ記憶部34に記憶されたカメラ毎の2次元温度データに対してそれぞれセンタリング補正を行う。これにより、連動用赤外線カメラ4aの2次元温度データの取得タイミングが最適なタイミングから多少ずれたとしても、取鍋2の表面温度を表すデータ群が中心位置に配置された2次元温度データを得ることができる。
【0062】
以上より、実施の形態4によれば、記号識別装置10は接近トリガ連動モードにおいて、取鍋2の移動経路に向けて設置された複数の赤外線カメラのうちの1台を赤外線カメラ4、残りを連動用赤外線カメラ4aとし、判定領域設定部31が当該赤外線カメラ4から入力される2次元温度データの移動経路に相当する位置に第1判定領域41および第2判定領域42を設定すると共に、当該連動用赤外線カメラ4aから入力される2次元温度データの移動経路に相当する位置に第1判定領域41および第2判定領域42を設定する判定領域設定ステップと、接近検出部32が赤外線カメラ4の2次元温度データに対して設定された第1判定領域41および第2判定領域42の少なくとも一方に、所定の判定温度T1以上の温度データの(M%以上の)出現を検出して赤外線カメラ4への取鍋2の接近を判定する接近検出ステップと、接近検出ステップで接近を判定した場合に、データ取得タイミング判定部34が赤外線カメラ4の2次元温度データに対して設定された第1判定領域41および第2判定領域42の両方において判定温度T1以上の温度データ群が所定面積(Lピクセル)以上になるタイミングを判定すると共に、連動用赤外線カメラ4aの2次元温度データに対して設定された第1判定領域41および第2判定領域42の両方において判定温度T1以上の温度データ群が所定面積(Lピクセル)以上になるタイミングを判定するデータ取得タイミング判定ステップと、データ取得タイミング判定ステップで判定した各タイミングの赤外線カメラ4の2次元温度データおよび連動用赤外線カメラ4aの2次元温度データをそれぞれ2次元温度データ記憶部34に記憶するデータ取得ステップとを実施するように構成した。このため、取鍋2の接近を誤検出しやすい環境に設置された連動用赤外線カメラ4aを補助することができるようになり、赤外線カメラ4だけでなく連動用赤外線カメラ4aの2次元温度データも適切なタイミングで取得し記憶することができる。
【0063】
また、実施の形態4によれば、記号識別装置10はデータ取得トリガ連動モードにおいて、取鍋2の移動経路に向けて設置された複数の赤外線カメラのうちの1台を赤外線カメラ4、残りを連動用赤外線カメラ4aとし、判定領域設定部31が当該赤外線カメラ4から入力される2次元温度データの移動経路に相当する位置に第1判定領域41および第2判定領域42を設定する判定領域設定ステップと、データ取得タイミング判定部34が赤外線カメラ4の2次元温度データに対して設定された第1判定領域41および第2判定領域42の両方において判定温度T1以上の温度データ群が所定面積(Lピクセル)以上になるタイミングを判定するデータ取得タイミング判定ステップと、データ取得タイミングで判定したタイミングの赤外線カメラ4の2次元温度データおよび連動用赤外線カメラ4aの2次元温度データをそれぞれ2次元温度データ記憶部34に記憶するデータ取得ステップとを実施するように構成した。このため、取鍋2の接近の誤検出およびデータ取得タイミングを誤判定しやすい環境に設置された連動用赤外線カメラ4aを補助することができるようになり、赤外線カメラ4だけでなく連動用赤外線カメラ4aの2次元温度データも適切なタイミングで取得し記憶することができる。
【0064】
実施の形態5.
図13は、本実施の形態5に係る記号識別装置10のうち、2次元温度データ取得部11の内部構成を示すブロック図である。なお、
図13において
図8と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。また、
図14に、本実施の形態5に係る記号識別装置10が用いる赤外線カメラ4の測定対象領域40を示す。本実施の形態5では、
図14に示すように取鍋2が矢印Cの上下方向に移動する場合を想定し、さらに、この取鍋2の移動経路上に取鍋2以外の異物(検出対象外の別の取鍋など)の移動経路が一部重なる場合を想定する。例として、異物の移動経路は矢印Dの左右方向とする。
【0065】
図13に示す記号識別装置10において、判定領域設定部31aは、
図14に示すように取鍋2の接近、充/空判定およびデータ取得タイミングを判定するための判定領域となる第1判定領域41および第2判定領域42を、赤外線カメラ4の測定対象領域40に設定する。これに加え、判定領域設定部31aは異物を検出するための判定領域となる異物判定領域43,44を、測定対象領域40に設定する。異物判定領域43,44は、想定される異物の移動経路上に少なくとも1箇所設定すればよい。
【0066】
異物検出部37は、異物判定領域43,44の少なくとも一方において、異物に相当する温度(以下、判定温度T2)以上のピクセルがRピクセル以上になった場合、異物が赤外線カメラ4の測定対象領域40を移動中であると判定して、データ取得タイミング判定部34aに通知する。Rは任意の値でよい。
【0067】
データ取得タイミング判定部34aは、接近検出部32から取鍋2の接近を通知された時点からデータ取得タイミングの判定を開始するが、異物検出部37から異物検出が通知された場合は所定時間t4だけこの判定を中断する。よって、所定時間t4の間、2次元温度データ記憶部35が2次元温度データを記憶しない。これにより、取鍋2以外の異物が第1判定領域41および第2判定領域42に入っている最中に測定された2次元温度データを、誤って取得し記憶することを防止できる。
【0068】
以上より、実施の形態5によれば、判定領域設定部31aは、取鍋2の移動経路と異物の移動経路とが一部重なる場合に、赤外線カメラ4が出力する2次元温度データの、異物の移動経路に相当する位置に異物判定領域43,44を設定し、異物検出部37がこれら異物判定領域43,44において所定の判定温度T2以上の温度データ群が所定面積(Rピクセル)以上になった場合に異物と判定する異物検出ステップを備え、データ取得タイミング判定部34aは、異物検出ステップで異物を検出した場合にデータ取得タイミングの判定処理を中断するように構成した。このため、取鍋2と誤って異物の表面温度を測定した2次元温度データを、2次元温度データ記憶部34に取得し記憶することを防止できる。
【0069】
なお、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上述した実施の形態の構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれることは言うまでもない。
また、本発明の記号識別方法を、取鍋の個体識別に用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、取鍋以外の対象物に対しても適用可能である。